特許第6169531号(P6169531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6169531-自転車用駆動ユニット 図000002
  • 特許6169531-自転車用駆動ユニット 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169531
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】自転車用駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/55 20100101AFI20170713BHJP
【FI】
   B62M6/55
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-105684(P2014-105684)
(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2015-217928(P2015-217928A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2014年5月23日
【審判番号】不服2016-12766(P2016-12766/J1)
【審判請求日】2016年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西川 裕輔
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 出口 昌哉
【審判官】 平田 信勝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−84019(JP,A)
【文献】 特開2003−104264(JP,A)
【文献】 特開2014−19181(JP,A)
【文献】 特開2014−51193(JP,A)
【文献】 特開2000−142539(JP,A)
【文献】 特開2005−239139(JP,A)
【文献】 特開2001−180565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車をアシスト駆動するための駆動ユニットであって、
クランク軸と、
それぞれが前記クランク軸を支持する合成樹脂製の第1部分および第2部分、および実質的に両側が開口した中空部材であり、前記第1部分および前記第2部分の間に配置され、前記第1部分および前記第2部分と共に内部空間を形成する金属製の第3部分を、有するハウジングと、
前記クランク軸の回転が伝達され、前記クランク軸と同軸に設けられる出力部と、
前記第3部分に接触するように前記ハウジングの前記内部空間に設けられ、前記出力部に回転を伝達可能な電動モータと、
前記ハウジングの前記内部空間に配置され、前記電動モータを制御する制御基板と、
を備え、
前記第1部分は、前記クランク軸の一端側を回転自在に支持し、玉軸受または針状コロ軸受から構成される第1軸受部を、有し、
前記第2部分は、前記クランク軸の他端側に設けられる前記出力部を、回転自在に支持し、玉軸受または針状コロ軸受から構成される第2軸受部を、有し、
前記制御基板は、前記第3部分に設けられる、
自転車用駆動ユニット。
【請求項2】
前記ハウジングの前記内部空間に配置され、前記電動モータの出力を減速する減速機構、
をさらに備える請求項1に記載の自転車用駆動ユニット。
【請求項3】
前記ハウジングの前記内部空間に配置され、且つ前記制御基板と前記電動モータとの間に配置され、前記クランク軸と前記出力部との間の伝達経路に設けられる変速機構、
をさらに備える請求項1又は2に記載の自転車用駆動ユニット。
【請求項4】
前記変速機構は、前記第1部分および前記第2部分に、支持されている、
請求項に記載の自転車用駆動ユニット。
【請求項5】
前記第3部分は、自転車のフレームに取り付け可能な取付部を、有する、
請求項1からのいずれか1項に記載の自転車用駆動ユニット。
【請求項6】
前記第1部分および前記第2部分を構成する合成樹脂は、ポリアミドを含む、
請求項1からのいずれか1項に記載の自転車用駆動ユニット。
【請求項7】
前記第1部分および前記第2部分を構成する合成樹脂は、ガラス繊維を含む、
請求項1からのいずれか1項に記載の自転車用駆動ユニット。
【請求項8】
前記第3部分を構成する金属は、アルミニウム合金である、
請求項1からのいずれか1項に記載の自転車用駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用駆動ユニット、特に、自転車をアシスト駆動するための駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動アシスト自転車に用いられる自転車用駆動ユニットは、合成樹脂で成型されたケーシングを、有していたり(引用文献1を参照)、金属製のケーシングを有していたりしている。ケーシングの内部には、電動モータ等の駆動機構が収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−180565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の駆動ユニットでは、金属製のケーシングが用いられると、ケーシングの重量が大きくなる。また、合成樹脂製のケーシングが用いられると、合成樹脂製のケーシングは、金属製のケーシングより軽量に形成することができるが、モータなどから発生する熱が放出されにくい。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、自転車用駆動ユニットの軽量化を図るとともに、自転車用駆動ユニットが発生する熱を放出しやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に関する自転車用駆動ユニットは、自転車をアシスト駆動するための駆動ユニットである。本発明の自転車用駆動ユニットは、クランク軸と、ハウジングと、出力部と、電動モータと、制御基板とを、備える。
【0007】
ハウジングは、合成樹脂製の第1部分および第2部分と、金属製の第3部分とを、有する。合成樹脂製の第1部分および第2部分それぞれは、クランク軸を支持する。金属製の第3部分は、実質的に両側が開口した中空部材であり、合成樹脂製の第1部分および第2部分の間に配置される。金属製の第3部分は、第1部分および第2部分と共に内部空間を形成する。出力部は、クランク軸と同軸に設けられる。出力部には、クランク軸の回転が伝達される。電動モータは、第3部分に接触するようにハウジングの内部空間に設けられ、出力部に回転を伝達可能である。制御基板は、ハウジングの内部空間に配置され、電動モータを制御する。
【0008】
第1部分は、クランク軸の一端側を回転自在に支持する第1軸受部を、有する。第1軸受部は、玉軸受または針状コロ軸受から構成される。第2部分は、クランク軸の他端側に設けられる出力部を、回転自在に支持する第2軸受部を、有する。第2軸受部は、玉軸受または針状コロ軸受から構成される。制御基板は、第3部分に設けられる。
【0009】
本発明の自転車駆動ユニットのハウジングでは、金属製の第3部分が、合成樹脂製の第1部分および第2部分の間に配置される。このように、本発明の自転車用駆動ユニットのハウジングでは、第3部分が金属製であるので、従来技術と比較して、放熱性を向上させることができる。
【0010】
本発明の自転車用駆動ユニットは、制御基板をさらに備える。制御基板は、ハウジングの内部空間に配置される。制御基板は、電動モータを制御する。この場合、ハウジングの内部空間に配置された制御基板によって、電動モータの出力を適切に制御することができる。
【0011】
本発明の自転車用駆動ユニットの制御基板は、金属製の第3部分に設けられる。この場合、制御基板を金属製の第3部分に設けることによって、放熱効果を期待することができる。すなわち、制御基板の温度の上昇を、抑制することができる。
【0012】
本発明の自転車用駆動ユニットは、次のように構成されていてもよい。本発明の自転車用駆動ユニットは、減速機構をさらに備える。減速機構は、ハウジングの内部空間に配置される。減速機構は、電動モータの出力を減速する。この場合、ハウジングの内部空間に配置された減速機構によって、電動モータの出力を適切に減速することができる。
【0013】
本発明の自転車用駆動ユニットは、次のように構成されていてもよい。本発明の自転車用駆動ユニットは、変速機構をさらに備える。変速機構は、ハウジングの内部空間に配置される。また、変速機構は、制御基板と電動モータとの間に配置される。さらに、変速機構は、クランク軸と出力部との間の伝達経路に設けられる。この場合、熱源となる制御基板および電動モータが、変速機構を介して、互いに離れた状態で、ハウジングの内部空間に配置される。これにより、ハウジングの内の温度を分散させることができる。また、制御基板および電動モータの間の空間に変速機構を配置することによって、電動モータの熱が制御基板に直接的に伝達されることを抑制することができる。
【0014】
本発明の自転車用駆動ユニットは、次のように構成されていてもよい。変速機構は、合成樹脂製の第1部分および第2部分に、支持されている。
【0015】
本発明の自転車用駆動ユニットは、次のように構成されていてもよい。金属製の第3部分は、自転車のフレームに取り付け可能な取付部を、有する。この場合、合成樹脂製の第1部分および第2部分より剛性の高い金属製の第3部分が、取付部を有しているので、ハウジングを自転車のフレームに確実に取り付けることができる。
【0016】
本発明の自転車用駆動ユニットは、次のように構成されていてもよい。第1部分および第2部分を構成する合成樹脂は、ポリアミドを含む。
【0017】
本発明の自転車用駆動ユニットは、次のように構成されていてもよい。第1部分および第2部分を構成する合成樹脂は、ガラス繊維を含む。
【0018】
本発明の自転車用駆動ユニットは、次のように構成されていてもよい。第3部分を構成する金属は、アルミニウム合金である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、自転車用駆動ユニットの軽量化を図るとともに、自転車用駆動ユニットが発生する熱を放出しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る駆動ユニットを組み込んだ電動補助自転車の側面図。
図2図1の切断線II−IIによって切断した駆動ユニットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明に係る駆動ユニット10を組み込んだ電動補助自転車の一例を表す左側面図である。図1では、駆動部分に関連する部分のみを示している。この電動補助自転車は、ペダル100に作用する踏力を、次の伝達経路を経て、後車輪の車軸まわりに設けられるハブ体106に伝達する。伝達経路は、「第1クランクアーム101aおよび第2クランクアーム101b→クランク軸14→駆動ユニット10→フロントスプロケット38→第1チェーン104→リヤスプロケット105」である。
【0022】
この過程で、駆動ユニット10は、モータ出力を補助動力として人力駆動力に合成し、走行をアシストする。駆動ユニット10および駆動ユニット10を駆動するバッテリ(図示しない)は、自転車のフレームに取り付けられる。
【0023】
〔駆動ユニットの全体構成〕
図1に示すように、駆動ユニット10は、自転車をアシスト駆動するためのユニットである。詳細には、駆動ユニット10は、電動モータ30によってアシスト可能なユニットである。駆動ユニット10は、クランク101の近傍に、配置される。クランク101は、第1クランクアーム101aおよび第2クランクアーム101bを備える。
【0024】
図2に示すように、駆動ユニット10は、ハウジング12と、クランク軸14と、電動モータ30と、制御基板33と、変速機構32と、減速機構34と、動力伝達部36(出力部の一例)と、フロントスプロケット38とを、有する。また、ハウジング12は、第2チェーン28と、第1回転伝達部材16と、第2回転伝達部材20と、支持軸22と、第3回転伝達部材24とを、有する。
【0025】
図2に示すように、ハウジング12は、本体部50(第3部分の一例)と、第1カバー部51(第1部分の一例)と、第2カバー部52(第2部分の一例)とを、有する。本体部50は、自転車のフレームに取り付けられる。詳細には、本体部50は、自転車のフレームに取り付け可能な取付部50aを、有する。たとえば、取付部50aは、本体部50に一体に形成されている。取付部50aは、図示しないフレームのシートチューブの下端部とフレームのダウンチューブの後端部との連結部近傍に、固定部材によって、取り付けられる。固定部材は、たとえばボルトである。取付部50aは、本体部50と別体に設けてもよい。
【0026】
本体部50は、金属製であり、たとえば、アルミニウム合金によって形成される。本体部50は、第1カバー部51および第2カバー部52の間に配置される。本体部50は、第1カバー部51および第2カバー部52と共に、内部空間Sを形成する。詳細には、本体部50は、実質的に両側が開口した中空部材である。本体部50の開口に第1カバー部51及び第2カバー部52を取り付けることによって、上記の内部空間Sが形成される。
【0027】
内部空間Sには、クランク軸14と、電動モータ30と、制御基板33と、変速機構32と、減速機構34と、動力伝達部36とが、配置される。また、内部空間Sには、第2チェーン28と、第1回転伝達部材16と、第2回転伝達部材20と、支持軸22と、第3回転伝達部材24とが、配置される。このように、ハウジング12は、フロントスプロケット38を除く駆動系の構成を、収容する。
【0028】
第1カバー部51は、合成樹脂製であり、たとえば、ポリアミド及び/又はガラス繊維を含む合成樹脂によって形成される。第1カバー部51は、クランク軸14を回転自在に支持する。第1カバー部51は、第1孔部51aと、第1軸受51b(第1軸受部の一例)とを、有する。第1孔部51aには、クランク軸14が挿通される。第1孔部51aとクランク軸14との間には、後述する第1回転伝達部材16が配置される。
【0029】
第1軸受51bは、第1孔部51aとクランク軸14との間に配置される。第1軸受51bは、クランク軸14を回転自在に支持する。詳細には、第1軸受51bは、クランク軸14の一端部を回転自在に支持する。たとえば、第1軸受51bは、第1回転伝達部材16を介して、クランク軸14の一端部を回転自在に支持する。たとえば、第1軸受51bは、玉軸受または針状コロ軸受から構成される。
【0030】
第1カバー部材51は、第1固定部51cを有する。第1固定部51cは、第1カバー部材51を本体部50に着脱可能に固定するためのものである。第1固定部51cは、第1カバー部材51の外周部に設けられている。詳細には、複数の第1固定部51cが、第1カバー部材51の外周部において、間隔を隔てて設けられる。各第1固定部51cには、第1貫通孔51dが形成される。
【0031】
ここで、本体部50において第1固定部51cに対応する位置には、第1被固定部50bが形成されている。第1被固定部50bには、第1ネジ孔50cが形成される。たとえば、第1ボルト151は、第1固定部51cの第1貫通孔51dを通過し、第1被固定部50bの第1ネジ孔50cに螺合する。これにより、第1固定部51cと第1被固定部50bとは、固定される。このように、金属製の本体部50に第1ネジ孔50cを形成することによって、第1カバー部材51の着脱時に、第1ボルト151を繰り返し緩めたり締め付けたりしても、第1ボルト151を安定して固定することができる。
【0032】
なお、第1カバー部51と本体部50とが接触する部分には、シール部材を設けてもよい。シール部材は、たとえばゴムまたは可撓性を有する金属材料によって、形成される。
【0033】
第2カバー部52は、合成樹脂製であり、たとえば、ポリアミド及び/又はガラス繊維を含む合成樹脂製によって形成される。第2カバー部52は、クランク軸14を回転自在に支持する。第2カバー部52は、第2孔部52aと、第2軸受52b(第2軸受部の一例)とを、有する。第2孔部52aには、クランク軸14が挿通される。第2孔部52aとクランク軸14との間には、後述する動力伝達部36が配置される。
【0034】
第2軸受52bは、第2孔部52aとクランク軸14との間に配置される。第2軸受52bは、クランク軸14の他端部を回転自在に支持する。たとえば、第2軸受52bは、動力伝達部36を介して、クランク軸14の他端部を回転自在に支持する。たとえば、第2軸受52bは、玉軸受または針状コロ軸受から構成される。
【0035】
第2カバー部材52は、第2固定部52cを有する。第2固定部52cは、第2カバー部材52を本体部50に着脱可能に固定するためのものである。第2固定部52cは、第2カバー部材52の外周に設けられている。詳細には、複数の第2固定部52cが、第2カバー部材52の外周部において、間隔を隔てて設けられる。各第2固定部52cには、第2貫通孔52dが形成される。
【0036】
ここで、本体部50において第2固定部52cに対応する位置には、第2被固定部50dが形成されている。第2被固定部50dには、第2ネジ孔50eが形成される。たとえば、第2ボルト152は、第2固定部52cの第2貫通孔52dを通過し、第2被固定部50dの第2ネジ孔50eに螺合する。これにより、第2固定部52cと第1第2被固定部50dとは、固定される。このように、金属製の本体部50に第2ネジ孔50eを形成することによって、第2カバー部材52の着脱時に、第2ボルト152を繰り返し緩めたり締め付けたりしても、第2ボルト152を安定して固定することができる。
【0037】
なお、第2カバー部52と本体部50とが接触する部分には、シール部材を設けてもよい。シール部材は、たとえばゴムまたは可撓性を有する金属材料によって、形成される。
【0038】
クランク軸14は、たとえば、鉄またはステンレスなどの金属製の軸部材である。図2に示すように、クランク軸14の両端は、第1カバー部51(第1孔部51a)および第2カバー部52(第2孔部52a)からそれぞれ突出して、配置される。
【0039】
クランク軸14は、第1軸受51bおよび第2軸受52bによって、ハウジング12に回転自在に支持される。詳細には、クランク軸14には、第1回転伝達部材16が一体回転可能に固定される。クランク軸14の一端部は、第1回転伝達部材16を介して、第1軸受51bによって、第1カバー部51に回転自在に支持される。また、クランク軸14の他端部が、後述する動力伝達部36を介して、第2軸受52bによって、第2カバー部52に回転自在に支持される。
【0040】
クランク軸14における第1カバー部51側の端部には、第1クランクアーム101aが、クランク軸14に対して、一体回転可能かつ着脱可能に取り付けられる。クランク軸14における第2カバー部52側の端部には、第2クランクアーム101bがクランク軸14に対して、一体回転可能かつ着脱可能に取り付けられる。
【0041】
電動モータ30は、その回転を動力伝達部36に伝達可能である。たとえば、電動モータ30は、インナーロータ式のモータである。電動モータ30は、ハウジング12の本体部50に接触するように設けられる。具体的には、電動モータ30は、本体部50に接触し固定される。このように、電気モータ30を本体部50に接触させて固定することによって、電気モータ30の熱を、本体部50を介して、放出することができる。
【0042】
電動モータ30は、ハウジング12の内部空間Sに配置される。電動モータ30は、クランク軸14に沿う方向(軸方向)において、第1カバー部51と第2カバー部52との間に配置される。詳細には、電動モータ30は、クランク軸14に沿う方向において、第1カバー部51と減速機構34との間に配置される。
【0043】
電動モータ30は、モータケース30aと、ロータ30bと、ステータ30cと、を備える。ロータ30bは、モータケース30aに回転自在に支持される。ロータ30bは、クランク軸14の外周部に配置される。また、ロータ30bは、クランク軸14と同芯(同軸)に配置される。さらに、ロータ30bの外周部には、図示しない複数の磁石が、設けられている。ステータ30cは、モータケース30aの内周部に固定される。ステータ30cは、ロータ30bの外周側において、ロータ30bと対向して配置される。ステータ30cは、図示しない複数のコイルを、有する。
【0044】
制御基板33は、ハウジング12の内部空間Sに配置される。制御基板33は、ハウジング12の内部空間Sにおいて、本体部50に設けられる。具体的には、制御基板33は、内部空間Sにおいて、本体部50に接触し固定される。また、制御基板33は、クランク軸14から離れる方向(半径方向)において、電動モータ30から間隔を隔てて、本体部50に設けられている。制御基板33と電動モータ30との間には、変速機構32が配置される。すなわち、制御基板33および電動モータ30が、変速機構32を介して、互いに離れた状態で、ハウジング12の内部空間Sに配置される。
【0045】
制御基板33は、電動モータ30を制御する。たとえば、制御基板33は、主に、図示しない制御部及びインバータを、有する。制御部は、インバータを制御する。たとえば、制御部は、踏力および自転車の速度に応じて、インバータを制御する。インバータは、電動モータ30を駆動する。
【0046】
上述したように、制御基板33を本体部50に接触させ固定することによって、制御基板33の熱を、本体部50を介して、放出することができる。
【0047】
変速機構32は、ハウジング12の内部空間Sに配置される。変速機構32は、制御基板33と電動モータ30との間に配置される。詳細には、変速機構32は、クランク軸14から離れる方向(半径方向)において、制御基板33と電動モータ30との間に配置される。
【0048】
また、変速機構32は、クランク軸14と動力伝達部36との間の伝達経路に設けられる。伝達経路は、たとえば、「第1回転伝達部材16→第2回転伝達部材20→第3回転伝達部材24→(変速機構32)→動力伝達部36」である。変速機構32は、第1カバー部51および第2カバー部52に、支持されている。
【0049】
変速機構32は、変速モータユニット32aと、変速機構本体32bと、を備える。変速モータユニット32aは、ハンドルに装着された変速操作部(図示せず)における乗り手の指示により駆動され、変速機構本体32bを所定のギア比に設定する。
【0050】
変速機構本体32bは、複数(たとえば、8つ)のギア比を選択可能な変速機である。変速機構本体32bは、支持軸22に回転自在に支持される。変速機構本体32bには、後述する第3回転伝達部材24の回転が伝達される。変速機構本体32bは、第3回転伝達部材24から伝達された回転を、直結を含めて複数段階(たとえば、8段階)に、変速する。そして、変速機構本体32bは、変速後の回転を、動力伝達部36に出力する。詳細には、変速機構本体32bには、第1ギア部材76が装着されている。変速機構本体32bにおいて変速された回転は、第1ギア部材76を介して、動力伝達部36に出力される。
【0051】
ここで、第2回転伝達部材20及び第3回転伝達部材24の説明を行っておく。第2回転伝達部材20は、第1回転伝達部材16の回転が伝達される部材である。第2回転伝達部材20は、ハウジング12及び電動モータ30に、回転自在に支持される。詳細には、第2回転伝達部材20は、ハウジング12の第1カバー部51および電動モータ30のモータケース30aに、回転自在に支持される。
【0052】
第3回転伝達部材24は、第2回転伝達部材20の回転が伝達される部材である。第3回転伝達部材24は、支持軸22に回転自在に支持される。第2回転伝達部材20の回転は、第2チェーン28によって、第3回転伝達部材24に伝達される。第2チェーン28は、第2回転伝達部材20および第3回転伝達部材24に巻回される。
【0053】
このようにして、第2回転伝達部材20及び第3回転伝達部材24は、第1回転伝達部材16の回転を、変速機構32に伝達する。
【0054】
減速機構34は、ハウジング12の内部空間Sに配置される。減速機構34は、電動モータ30の出力を減速する。詳細には、減速機構34は、クランク軸14に沿った方向において、電動モータ30と動力伝達部36との間に配置される。
【0055】
減速機構34は、電動モータ30の回転を減速し、減速後の回転を動力伝達部36に伝達する。より具体的には、減速機構34は、電動モータ30のロータ30bの回転を減速し、減速後の回転を、トルク伝達部材70を介して、動力伝達部36に伝達する。
【0056】
減速機構34は、1つ以上のギアから構成される。たとえば、減速機構34は、第1遊星歯車機構34aと、第2遊星歯車機構34bとを、有する。第1遊星歯車機構34aは、電動モータ30たとえばロータ30bに、連結される。第2遊星歯車機構34bは、第1遊星歯車機構34aに連結される。第2遊星歯車機構34bの出力、すなわち減速機構34の出力は、トルク伝達部材70を介して、動力伝達部36に伝達される。なお、トルク伝達部材70は、後述する動力伝達部36の第2ギア部材36bに、回転可能に支持される。
【0057】
動力伝達部36には、クランク軸14の回転及び電動モータ30の回転が、伝達される。また、動力伝達部36は、クランク軸14の回転及び電動モータ30の回転を、フロントスプロケット38に伝達する。
【0058】
詳細には、動力伝達部36は、第1回転伝達部材16、第2回転伝達部材20、第3回転伝達部材24、変速機構32、および第1ギア部材76を介して、クランク軸14の回転を、フロントスプロケット38に伝達する。また、動力伝達部36は、減速機構34及びトルク伝達部材70を介して、電動モータ30の回転をフロントスプロケット38に伝達する。
【0059】
動力伝達部36は、クランク軸14と同軸に設けられる。動力伝達部36は、クランク軸14に沿う方向(軸方向)において、フロントスプロケット38と減速機構34との間に、配置される。
【0060】
動力伝達部36とクランク軸14の他端部との間には、第3軸受36aが配置される。すなわち、動力伝達部36は、第3軸受36aを介して、クランク軸14の他端部に回転自在に支持される。また、動力伝達部36とハウジング12の第2カバー部52との間には、第2軸受52bが配置される。すなわち、動力伝達部36は、第2軸受52bを介して、第2カバー部52に回転自在に支持される。
【0061】
詳細には、動力伝達部36は、第2ギア部材36bと、ワンウェイクラッチ36cとを、有する。第2ギア部材36bは、変速機構32の第1ギア部材76に噛み合う。第2ギア部材36bは、第2軸受52bを介して、ハウジング12の第2カバー部52に回転自在に支持される。また、第2ギア部材36bは、第3軸受36aを介して、クランク軸14の他端部を回転自在に支持する。これにより、クランク軸14の他端部は、第2ギア部材36bを介して、ハウジング12の第2カバー部52に回転自在に支持される。なお、たとえば、第3軸受36aは、玉軸受または針状コロ軸受から構成される。
【0062】
ワンウェイクラッチ36cは、電動モータ30における一方向の回転だけを、第2ギア部材36bに伝達する。電動モータ30における一方向の回転は、自転車を進行方向に駆動する方向の回転である。
【0063】
たとえば、ワンウェイクラッチ36cは、第2ギア部材36bに設けられる。ワンウェイクラッチ36cは、第2ギア部材36bとトルク伝達部材70との間に配置される。ワンウェイクラッチ36cは、トルク伝達部材70に一体回転可能に連結される。これにより、ワンウェイクラッチ36cは、電動モータ30における一方向の回転だけを、減速機構34及びトルク伝達部材70を介して、第2ギア部材36bに伝達する。
【0064】
フロントスプロケット38は、スプロケット歯が外周部に形成された環状部38aと、環状部38aの内周部に一体形成された筒状部38bとを、有する。筒状部38bは、動力伝達部36に固定される。フロントスプロケット38の固定方法は、圧入、かしめ固定、ネジ止め、接着、溶接などの適宜の固定方法を用いることができる。
【0065】
〔他の実施形態〕
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0066】
(a)前記実施形態では、クランク軸14の回転が、3つの伝達部材(第1回転伝達部材16、第2回転伝達部材20、および第3回転伝達部材24)によって、変速機構32に伝達される場合の例を示した。クランク軸14の回転を変速機構32に伝達する構成は、前記実施形態に限定されず、どのような構成であってもよい。
【0067】
(b)前記実施形態では、第1軸受51b、第2軸受52b、および第3軸受36aが、玉軸受または針状コロ軸受から構成される場合の例を示した。第1軸受51b、第2軸受52b、および第3軸受36aは、部材を回転自在に装着可能なものであれば、どのような軸受でもよい。たとえば、第1軸受51b、第2軸受52b、および第3軸受36aの少なくもいずれか1つは、コロ軸受などの転がり軸受またはブッシュなどの滑り軸受でもよい。
【0068】
(c)前記実施形態では、本体部50が、たとえば、アルミニウム合金を含む金属製の部材である場合の例を示したが、本体部50は、金属製の部材であれば、アルミニウム合金とは異なる金属であってもよい。
【0069】
(d)前記実施形態では、第1カバー部51及び第2カバー部52が、たとえば、ポリアミド及び/又はガラス繊維を含む合成樹脂製の部材である場合の例を示したが、第1カバー部51材及び第2カバー部52の少なくともいずれか一方は、合成樹脂製の部材であれば、他の合成樹脂を用いてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 駆動ユニット
12 ハウジング
14 クランク軸
30 電動モータ
32 変速機構
33 制御基板
34 減速機構
36 動力伝達部(出力部の一例)
50 本体部(第3部分の一例)
50a 取付部
51 第1カバー部(第1部分の一例)
51b 第1軸受(第1軸受部の一例)
52 第2カバー部(第2部分の一例)
52b 第2軸受(第2軸受部の一例)
図1
図2