(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169552
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】2−アミノピリジンによる糖鎖の標識法
(51)【国際特許分類】
C08B 37/00 20060101AFI20170713BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20170713BHJP
B01D 15/08 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
C08B37/00 Z
G01N30/88 N
B01D15/08
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-212074(P2014-212074)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2015-91953(P2015-91953A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2016年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-217811(P2013-217811)
(32)【優先日】2013年10月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228545
【氏名又は名称】JCRファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128897
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 佳希
(72)【発明者】
【氏名】深津 智樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 哲雄
【審査官】
杉江 渉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−241389(JP,A)
【文献】
特開平08−228795(JP,A)
【文献】
特開平11−127890(JP,A)
【文献】
特開2002−369692(JP,A)
【文献】
特開2013−224885(JP,A)
【文献】
特開平10−123096(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/095744(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/105544(WO,A1)
【文献】
Agric.Biol.Chem,1990年,54(8),2169-2170
【文献】
J.Biochem.,1992年,112,122-126
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/00 − 37/18
B01D 15/00 − 15/42
G01N 30/00 − 33/98
CAplus(STN)
JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元末端が2−アミノピリジンで標識された糖鎖を得るための方法であって,
還元末端を有する糖鎖と2−アミノピリジンとを含む溶液を加熱して,該還元末端と該2−アミノピリジンとを反応させることによりイミンを形成させた後,該溶液にボラン−ジメチルアミン錯体を添加して加熱し,該イミンを還元させることにより,還元末端が2−アミノピリジンで標識された標識化糖鎖を含む反応液を得るステップと,
該反応液にトルエンを添加し,該標識化糖鎖を沈殿させるとともに,未反応の2−アミノピリジンをトルエンとともに除去するステップと,
該沈殿を水性溶媒に溶解させて得られた溶液を,ゲルろ過カラムクロマトグラフィーに付して,該標識化糖鎖を含有する画分を回収するステップとを,
この順で含んでなるものである方法。
【請求項2】
該ゲルろ過カラムクロマトグラフィーにおいて,カラムに充填される樹脂の排除限界が,1.5×103Daを超えないものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該ゲルろ過カラムクロマトグラフィーにおいて,カラムに充填される樹脂の排除限界が,6.5×102〜7.5×102Daである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該糖鎖が,糖蛋白質から切り出して得られるものである,請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該糖蛋白質が,組換え糖蛋白質である,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該糖蛋白質が,イズロン酸−2−スルファターゼ,α−ガラクトシダーゼA,酸性スフィンゴミエリナーゼ,α−L−イズロニダーゼ,N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ,グルコセレブロシダーゼ,ガルスルファーゼ,リソソーム酸性リパーゼ,酸性α−グルコシダーゼ等のリソソーム酵素,組織プラスミノーゲンアクチベーター,血液凝固第VII因子,血液凝固第VIII因子,血液凝固第IX因子等の血液凝固因子,エリスロポエチン,インターフェロン,トロンボモジュリン,卵胞刺激ホルモン,甲状腺刺激ホルモン,GM−CSF,G−CSF,M−CSF,及び抗体からなる群から選択されるものである,請求項4又は5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,還元末端が2−アミノピリジンで標識された糖鎖を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖蛋白質の糖鎖構造の分析方法として,糖蛋白質をトリプシン処理し,次いでグリコシダーゼで処理して,糖蛋白質から糖鎖を遊離させた後,この糖鎖を2−アミノピリジンで標識(2−アミノピリジン標識)し,これを順相カラムクロマトグラフィーに付して分離分析する方法が知られている(非特許文献1)。
【0003】
糖鎖の2−アミノピリジン標識は,例えば,糖鎖を含む試料に,2−アミノピリジン溶液を添加して加熱反応させてイミンを形成させた後,ボラン−ジメチルアミン錯体溶液を添加して加熱し,イミンを還元することにより行われる(非特許文献1)。次いで,未反応の2−アミノピリジン等を除去するため,反応後の溶液を,トリエチルアミンとメタノールの1:1混合液,及びトルエンを添加してから乾燥させて乾燥物とし,この乾燥物を,メタノール及びトルエンに溶解させた後,再度乾燥させてから,水性溶媒に溶解させ,この溶液を,ゲルろ過カラムクロマトグラフィーに付して,2−アミノピリジン標識された糖鎖を分取する。このように,糖鎖を2−アミノピリジンで標識する方法は,トルエン等の人体に有害な有機溶媒を気化させて除去する工程を含む(特許文献1,非特許文献2)。従って,糖鎖を2−アミノピリジンで標識するために使用する特殊な装置(Takara PALSTATIONmodel 4000(タカラバイオ社))が市販されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開平2005−241389号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】 Kuraya N.et.al.,J.Biochem.112,122−6(1992)
【非特許文献2】 Kondo A.et.al.,Agric.Biol.Chem.54.2169−70(1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景の下で,本発明の目的は,還元末端が2−アミノピリジンで標識された糖鎖を得るための新たな方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に向けた研究において,本発明者は,鋭意検討を重ねた結果,糖鎖の還元末端を2−アミノピリジン標識させる反応において,反応過程において気化させて除去する有機溶媒の量を減じることができる新たな方法を見出し,本発明を完成した。すなわち,本発明は以下を提供する。
(1)還元末端が2−アミノピリジンで標識された糖鎖を得るための方法であって,
還元末端を有する糖鎖と2−アミノピリジンとを含む溶液を加熱して,該還元末端と該2−アミノピリジンとを反応させることによりイミンを形成させた後,該溶液にボラン−ジメチルアミン錯体を添加して加熱し,該イミンを還元させることにより,還元末端が2−アミノピリジンで標識された標識化糖鎖を含む反応液を得るステップと,
該反応液にトルエンを添加し,該標識化糖鎖を沈殿させるとともに,未反応の2−アミノピリジンをトルエンとともに除去するステップと,
該沈殿を水性溶媒に溶解させて得られた溶液を,ゲルろ過カラムクロマトグラフィーに付して,該標識化糖鎖を含有する画分を回収するステップとを,
この順で含んでなるものである方法。
(2)該ゲルろ過カラムクロマトグラフィーにおいて,カラムに充填される樹脂の排除限界が,1.5×10
3Daを超えないものである上記(1)に記載の方法。
(3)該ゲルろ過カラムクロマトグラフィーにおいて,カラムに充填される樹脂の排除限界が,6.5×10
2〜7.5×10
2Daである上記(1)に記載の方法。
(4)該糖鎖が,糖蛋白質から切り出して得られるものである,上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)該糖蛋白質が,組換え糖蛋白質である,上記(4)に記載の方法。
(6)該糖蛋白質が,イズロン酸−2−スルファターゼ,α−ガラクトシダーゼA,酸性スフィンゴミエリナーゼ,α−L−イズロニダーゼ,N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ,グルコセレブロシダーゼ(グルコシルセラミダーゼ),ガルスルファーゼ,リソソーム酸性リパーゼ,酸性α−グルコシダーゼ等のリソソーム酵素,組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA),血液凝固第VII因子,血液凝固第VIII因子,血液凝固第IX因子等の血液凝固因子,エリスロポエチン,インターフェロン,トロンボモジュリン,卵胞刺激ホルモン,甲状腺刺激ホルモン,GM−CSF,G−CSF,M−CSF,及び抗体からなる群から選択されるものである,上記(4)又は(5)に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば,多量のトルエンを気化させることなく,還元末端が2−アミノピリジンで標識された糖鎖を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】組換え体ヒトイズロン酸−2−スルファターゼに由来する糖鎖を2−アミノピリジン標識して得た反応物を,ゲルろ過カラムクロマトグラフィーに付したきの結果を示すクロマトグラム。縦軸は蛍光強度(任意単位),横軸は還元糖標準溶液負荷完了後の経過時間(分),ピークAは還元糖に由来するピークを示す。
【
図2】2−アミノピリジン標識された糖鎖を順相クロマトグラフィーで分析した結果を示す図。縦軸と横軸は
図1に同じ,ピークA〜Eは2−アミノピリジン標識された還元糖に由来するピークを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
糖又は糖鎖の還元末端においては,環状構造をとる糖が開環して鎖状構造となったときにアルデヒド基又はケトン基が生じ得る。本発明において,2−アミノピリジン標識(又はアミノピリジン標識)というときは,糖又は糖鎖の還元末端を2−アミノピリジンと反応させることによりイミンを形成させ,次いでのこのイミンをボラン−ジメチルアミン錯体等を用いて還元させることにより,糖又は糖鎖の還元末端に2−アミノピリジンを付加させることをいう。また,本発明において,2−アミノピリジン標識化糖鎖,アミノピリジン標識化糖鎖,又は標識化糖鎖というときは,2−アミノピリジン標識(又はアミノピリジン標識)された糖又は糖鎖のことをいう。
【0011】
アミノピリジン標識における,糖又は糖鎖の還元末端と2−アミノピリジンとを反応させてイミンを形成させる反応の一例を,下記の式(I)に示す。式(I)で示された反応は,糖鎖の還元末端に位置するN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)と2−アミノピリジンとの反応である。
【0013】
アミノピリジン標識における,イミンをボラン−ジメチルアミン錯体により還元させる反応の一例を下記の式(II)に示す。式(II)で示された反応は,式(I)の反応で生じたイミンの,ボラン−ジメチルアミン錯体による還元反応である。
【0015】
本発明において,糖鎖の還元末端と2−アミノピリジンとを反応させてイミンを形成させるときの温度及び時間は,かかる反応が促進される温度及び時間であれば特に限定はないが,好ましくは75〜85℃で40分〜2時間であり,より好ましくは約80℃で約1時間である。また,ボラン−ジメチルアミン錯体により該イミンを還元させるときの温度及び時間は,かかる反応が促進される温度及び時間であれば特に限定はないが,好ましくは75〜85℃で40分〜2時間であり,より好ましくは約80℃で約1時間である。
【0016】
本発明において,ボラン−ジメチルアミン錯体により該イミンを還元することにより,糖鎖の還元末端をアミノピリジンで標識する反応は完了する。しかし,反応後の溶液中には未反応の2−アミノピリジンが残存するので,糖鎖の分析を行うためには,上記還元反応後の溶液から未反応の2−アミノピリジンを除去する必要がある。未反応の2−アミノピリジンは,還元反応後の溶液にトルエンを添加し,トルエンで抽出することにより除去することができる。
【0017】
未反応の2−アミノピリジンを除去するために還元反応後の溶液に添加するトルエンの量は,好ましくは当該溶液の2〜4倍容であり,より好ましくは約2.5倍容である。トルエンを添加して混和した後,遠心分離又は静置して,糖鎖を沈殿させるとともにトルエン層の上層を除去する。このトルエンにより未反応の2−アミノピリジンの除去する操作(トルエン抽出)は,好ましくは3〜5回,より好ましくは3回繰り返して行われる。最後のトルエン抽出の際には,沈殿を残すようにして,可能な限りの溶液を除去する。ここで除去したトルエンを含む液は,有機溶媒廃棄用の容器に回収されるので,この過程でトルエンが気化することはほとんどない。
【0018】
トルエンにより未反応の2−アミノピリジンを除去した後,沈殿した糖鎖は乾燥される。このときの乾燥は,好ましくは減圧乾燥により行われる。このときトルエンが気化するが,その量は極わずかである。
【0019】
減圧乾燥されたアミノピリジン標識化糖鎖は,水性溶媒に溶解されて,次いでゲルろ過カラムクロマトグラフィーに付される。ゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより,トルエン抽出により除去されなかった未反応の2−アミノピリジンが更に除去されるとともに,バファー交換がされる。このとき,アミノピリジン標識化糖鎖を溶解させるための水性溶媒は,好ましくは純水である。また,ゲルろ過カラムクロマトグラフィーに用いるカラムに充填されるべき樹脂の球状蛋白質に対する排除限界は,好ましくは1.5×10
3Daを超えないものであり,より好ましくは6×10
2Da〜1.5×10
3Daであり,更に好ましくは6.5×10
2Da〜7.5×10
2Daであり,更により好ましくは約7×10
2Daである。市販のSEPHADEX
TMG−10(排除限界:7×10
2Da),SEPHADEX
TMG−15(排除限界:1.5×10
3Da)等は,本発明において好適に使用できる。
【0020】
本発明の方法で得られたアミノピリジン標識化糖鎖は,これを順相カラムクロマトグラフィーに付し,カラム通過後の溶液に,蛍光検出器で励起光を連続的に照射して,流出液から放射される蛍光の強度を測定することにより分析できる。このとき用いられる順相カラムクロマトグラフィーでカラムに充填されるべき担体は,分析対象の糖鎖の分子量に応じて適宜選択されるべきものであるが,アミノプロピル基を官能基として保持する担体が,この目的で好適に使用できる。
【0021】
本発明において,糖蛋白質の糖鎖の還元末端をアミノピリジン標識する場合,糖蛋白質から糖鎖を予め切り出す必要がある。糖蛋白質からの糖鎖の切り出しは,酵素処理又は化学処理して行う。酵素処理は,N−グリコシダーゼ,グリコペプチダーゼA,O−グリコシダーゼ等を用いて行い,化学処理は,ヒドラジン分解等により行う。これらの処理により,糖蛋白質中のアスパラギン残基,セリン残基,スレオニン残基等に結合した糖鎖が切り出される。
【0022】
本発明において,糖鎖が分析対象となる糖蛋白質は,特に限定はないが,好ましくはイズロン酸−2−スルファターゼ,α−ガラクトシダーゼA,酸性スフィンゴミエリナーゼ,α−L−イズロニダーゼ,N−アセチルガラクトサミン−4−スルファターゼ,グルコセレブロシダーゼ(グルコシルセラミダーゼ),ガルスルファーゼ,リソソーム酸性リパーゼ,酸性α−グルコシダーゼ等のリソソーム酵素,組織プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA),血液凝固第VII因子,血液凝固第VIII因子,血液凝固第IX因子等の血液凝固因子,エリスロポエチン,インターフェロン,トロンボモジュリン,卵胞刺激ホルモン,甲状腺刺激ホルモン,GM−CSF,G−CSF,M−CSF,及び抗体であり,特に,組換え体技術を用いて合成されたヒト等の哺乳動物の組換え糖蛋白質である。
【実施例】
【0023】
以下,実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
【0024】
〔ヒトイズロン酸−2−スルファターゼのグリコシダーゼ処理〕
組換え体ヒトイズロン酸−2−スルファターゼ(rhl2S)の精製品を,公知の手法を用いて準備した(米国特許公報5798239)。rhl2S溶液にN−グリコシダーゼF(ロシュ・ダイアグノスティックス製)を加えて振り混ぜ,2〜8℃で3時間静置した。次いで反応液を95℃で5分間加熱してグリコシダーゼを失活させてから減圧乾固した。
【0025】
〔糖鎖のアミノピリジン処理〕
上記の減圧乾固させた糖鎖に,20μLの2−アミノピリジン溶液(150mgの2−アミノピリジンを50μLの酢酸に溶解したもの)を加えて振り混ぜ,80℃で1時間反応させた。次いで,20μLのボラン−ジメチルアミン錯体溶液(20mgのボラン−ジメチルアミン錯体を100μLの酢酸に溶解したもの)を加えて振り混ぜ,80℃で1時間反応させた。次いで,100μLのトルエンを加えて振り混ぜた後,遠心して,糖鎖を沈殿させるとともにトルエン層の上層を除去した。このトルエンによる抽出操作を,更に2回繰り返して行い,未反応の2−アミノピリジンを除去した。また,最後のトルエン抽出の際には,沈殿を残すようにして,可能な限りの溶液を除去した。ここで除去したトルエンを含む液は,有機溶媒廃棄用の容器に回収した。次いで,沈殿させた糖鎖を滅圧乾固させた後,50μLの水に溶解して糖鎖溶解液とし,これをゲルろ過カラムクロマトフィーに付して,アミノピリジン標識化糖鎖を含む画分を分取した。このときゲルろ過カラムクロマトフィーは,純水で平衡化させたSEPHADEX
TMG−10(カラム径5mm,カラム長150mm,GEヘルスケア)に糖鎖溶解液を付し,次いで,室温で8mL/分の流速で0.1%(v/v)酢酸水溶液を通して,蛍光検出器(励起波長320nm,蛍光波長400nm)で蛍光強度をモニターしながら行った。このとき得られたクロマトグラムを
図1に示す。
図1において,ピークAがアミノピリジン標識化糖鎖に由来するピークである。分取したアミノピリジン標識化糖鎖を含む画分を凍結乾燥した後,1mLの水に溶かし,減圧乾固した。
【0026】
〔順相クロマトグラフィーによるアミノピリジン標識された糖の分析〕
(1)装置
島津HPLCシステムLC−20A(島津製作所)に順相クロマトグラフィー用カラム(Asahipak
TM NH2P−50 4E(4.6mm I.D.×250mm),官能基:アミノプロピル基,昭和電工)をセットした。カラムオーブンでカラムを50℃に加熱するとともに,カラムの流出口の下流に蛍光検出器を設置し,カラム通過後の溶液に,励起光として波長320nmの紫外線を照射し,波長400nmの蛍光を検出するようにした。
(2)移動相の調製
移動相として,0.1%(v/v)酢酸水溶液(溶液A)と,0.5M NaClを含有する0.1%(v/v)酢酸水溶液(溶液B)とを調製した。
(3)操作手順
上記の減圧乾固したアミノピリジン標識化糖鎖を溶液Aに溶解し,試料溶液とした。還元糖分析システムのオートサンプラーに,溶液Aと溶液Bをセットし,溶液Aと溶液Bの体積比率が70:30である溶液でカラムを平衡化した後,試料溶液をカラムに負荷した。
【0027】
カラムに試料溶液を負荷した後,溶液Aと溶液Bの体積比率が70:30の移動相を,0.6mL/分の流速で2分間カラムに流した後,同一流速で78分かけて,移動相における溶液Bの体積比率を95%にまで直線的に高め,次いで25分間溶液Bの体積比率を95%として同一流速で流し,更に,35分間溶液Aと溶液Bの体積比率を70:30にして同一流速で流した。カラム通過後の溶液に,励起光(波長320nm)を連続的に照射して該流出液から放射される蛍光(波長400nm)の強度を連続的に測定した。
【0028】
〔分析結果の評価〕
順相クロマトグラフィーによる分析の結果,アミノピリジン標識化糖鎖がピークA〜Eとして検出された(
図2)。ピークEは,アミノピリジン標識されたマンノース6リン酸を含む糖鎖に由来するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば,多量のトルエンを気化させることなく,遺伝子組換え技術を用いて製造した糖蛋白質の糖鎖の還元末端を2−アミノピリジンで標識することができる。