【氏名又は名称】ザ ガバメント オブ ザ ユナイテツド ステイツ オブ アメリカ アズ リプリゼンテツド バイ ザ セクレタリー オブ ザ デパートメント オブ ヘルス アンド ヒユーマン サービシズ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗体断片が、重鎖とL1との連結によって分子の残りの部分と融合している、ジスルフィドで安定化された軽鎖免疫グロブリン可変領域および重鎖免疫グロブリン可変領域を含む、請求項1に記載の分子。
PEドメインIIIが、D403、R412、R427、E431、R458、D461、R505、E522、R538、R551、R576およびL597からなる群から選択される配列番号1のアミノ酸残基に対応する少なくとも1つのアミノ酸残基の、アラニン、グリシンまたはセリンの置換を有する、請求項1に記載の分子。
PEドメインIIIが、D406、R432、R467、R490、R513、E548、K590およびQ592からなる群から選択される配列番号1のアミノ酸残基に対応する少なくとも1つのアミノ酸残基の、アラニン、グリシンまたはセリンによる置換を有する、請求項1に記載の分子。
PE機能的ドメインIIIが、配列番号4の位置20〜237または配列番号5の位置20〜237のアミノ酸配列を有する、LRのPE機能的ドメインIIIである、請求項1に記載の分子。
配列番号6のSS1可変軽鎖および配列番号8のSS1可変重鎖−PE融合ポリペプチドを含み、可変軽鎖および可変重鎖がジスルフィドで安定化された抗体を形成する、請求項1に記載の分子。
FCSが、配列番号1の位置274〜284と配列が同一であるか、アミノ酸配列RHRSKRGWEQL(配列番号29)のものである、請求項1から15のいずれか一項に記載の分子。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、PEに基づく抗メソテリンRIT SS1Pに基づく抗メソテリンRITの、毒性がより低い、免疫原性がより低い変異体を提供する。PEに基づく抗CD22 RIT HA22−LRを用いた以前の研究に基づいて生成した、本発明者らによるSS1−LRの初期評価は(Weldonら、Blood、113(6):3792〜3800(2009))、選ばれたメソテリン発現細胞系において大きく変動する活性をin vitroで示した。マウスA431/K5異種移植腫瘍アッセイでは、SS1−LR(配列番号6および7)はSS1Pよりも活性が低かったが、SS1−LRをはるかにより高い用量で投与して顕著な腫瘍回帰を達成することができた。SS1Pと比較したその大きく変動する活性の原因を探索しながら、本発明者らはSS1−LRの内部移行およびプロセシングを調査し、フューリンで切断されたSS1−LRの割合がSS1Pのそれよりもはるかに低かったことを見出した。このことは減少したフューリン切断がSS1−LRの活性を制限している可能性を示唆しており、本発明者らはこの仮説を試験するためにいくつかの突然変異体を設計し、生成した。フューリン切断部位の後に短いGly−Gly−Serリンカーを付加することは細胞系に対するSS1−LRの活性を増強させたが、驚くべきことに、増強された細胞毒性は増強されたフューリン切断に対応していなかった。本発明は、フューリンによるPEの切断のいかなる効果とも独立した抗メソテリンRIT構築体の細胞毒性における、短い柔軟なリンカーの重要性のこの驚くべき発見に関する。さらなる研究では、PEの免疫原性を低下させることが示されている、SS1−LR/GGSへの8個の点突然変異を組み込み、その後、この分子を、中皮腫を有する患者からの原発性悪性細胞に対して試験した。最終分子、SS1−LR/GGS/8M(配列番号6および8)は、SS1Pに類似した細胞毒性を実証した。さらに、本発明によるRITは、哺乳動物において著しく低下した非特異的な毒性(たとえば毛細血管漏出症候群)をもたらすことができる。
【0023】
SS1−LRとSS1Pとの間の抗腫瘍効果の約20倍の差異が、in vivo A4311K5異種移植腫瘍マウスモデルを使用して観察された。in vitro細胞毒性データはA431/K5細胞に対する細胞毒性4倍の減少を示しているため、この差異は完全に細胞毒性に起因させることはできない。そうではなく、この差異の残りの部分はマウスにおけるSS1−LRの薬物動態学的特性が原因である可能性が高い。本発明者らは以前に、HA22−LRはマウスにおいてHA22よりもほぼ2倍短い血清半減期を有することを示しており(それぞれ7.8対14.6分間)、この差異は、より小さなLR分子の腎臓濾過の増加が原因であると仮定した(Weldon JE、Blood.、113(16):3792〜800(2009))。崩壊曲線下面積を検査することによって、この半減期の差異は1時間の間に利用可能なタンパク質の約4倍の差異を示唆している。したがって、in vivoの活性の差異は減少した細胞毒性およびより短い半減期の両方に起因している可能性がある。
【0024】
SS1−LRはin vivoでSS1Pよりも低い抗腫瘍活性を実証したが、その非特異的毒性もマウスにおいて大きく低下した。本発明者らは、この特性を利用して、異種移植腫瘍アッセイにおいてSS1−LRの用量をSS1Pを超えて劇的に増加させ(50倍)、大きく増強された抗腫瘍効果がもたらされた。以前の実験により、SS1Pの単一用量の静脈内LD50はBalb/Cマウス中では1.0mg/kgであり(Filpula Dら、Bioconjug Chem.、18(3):773〜84(2007))、NIH Swissマウス中では0.75mg/kgである(Onda Mら、Cancer Res.、61(13):5070〜7(2001))ことが多様に示されている。臨床スケジュールに類似したQOD×3投薬スケジュールを使用して、マウスは0.3mg/kgのSS1Pの最大用量を耐用した(非公開の観察)。しかし、SS1−LRはA431/K5異種移植抗腫瘍実験において15mg/kgの用量を用いてQOD×3で投与し、悪影響はなかった。以前に、20mg/kgの単一の静脈内用量のHA22−LRはマウスに対して毒性を示さず(Weldon JE、Blood.、113(16):3792〜800(2009))、本発明者らは45mg/kgと高い単一用量のHA22・LRをマウスに与え、死亡がもたらされなかった(非公開の観察)。どのLR分子も臨床的に試験していないが、この効果は、LR変異体RITがヒト患者において減少した毒性を有し得ることを示唆しており、これは用量規制毒性を防止し、より高い用量を投与することを可能にする可能性がある。
【0025】
SS1−LRはin vitroおよびin vivoで有効であったが、本発明者らはSS1Pと比較して一般に減少した活性に懸念を持っていた。この相違の1つの可能な説明は細胞内中毒経路の差異である。PE38のLR変異体はPEのドメインIIおよびIb中に大規模な欠失を含有しており、これらの欠失が、サイトゾルへと輸送されるPEの能力に負の影響を与えた可能性がある。興味深いことに、SS1PおよびSS1−LRで処理した細胞の溶解物中の完全長およびプロセシングされたPEを検出するための本発明者らの初期実験は、フューリンでプロセシングされたRITの量の劇的な差異を示した。SS1Pで処理した細胞中の全RITの大部分がプロセシングされたが、SS1−LRで処理した細胞中では全RITのほんの少ししかプロセシングされなかった。この結果は、乏しいフューリン切断がSS1−LRの活性を制限している可能性を示唆しており、本発明者らはPE中毒経路のこのステップを改善しようと試みた。
【0026】
フューリン切断部位の接近可能性を増加させることによってSS1−LRの細胞毒性を増強させる本発明者らの試みにより、より活性のあるRITが生成されたが、フューリン切断の増強を実証することができなかった。短いGly−Gly−Serリンカーの付加(SS1−LR/GGS、
図1B)、より長いリンカー(SS1−LR/GGS×2、
図1B)、または短いGly−Gly−Serリンカーによって隣接されたフューリン部位の反復(SS1−LR/2×フューリン、
図1B)の付加はすべて、中程度の細胞毒性の増加を与えた。しかし、これらの分子はいずれも、処理したA431/K5細胞においてフューリンで切断されたSS1−LRの割合を増強させず、in vitroフューリン切断速度を増加させなかった。本発明者らは、リンカーの付加が別の機構、恐らくは試験した細胞中の分子の細胞内輸送に関連する機構によって細胞毒性を増強させているはずだと結論づけた。
【0027】
また、これらの実験は、SS1Pの細胞毒性の保持におけるフューリン切断の絶対的必要性も実証した。切断に必須のアルギニンをグリシンへと変化させたSS1−LR/GGS中の点突然変異(SS1−LR/GGS R279G、
図1B)は、フューリンによって切断されなかったタンパク質を生じた。このRITは、NCI−H322MおよびKB31細胞のどちらに対しても活性を示さなかった。PE中毒経路におけるフューリン切断の必要性は最近疑問視されていたが(Morlon−Guyot Jら、Infect Immun.、77(7):3090〜9(2009))、フューリンが中毒中に重要な役割を果たすという多くの証拠が存在する(Ornatowski Wら、J Clin Invest.、117(11):3489〜97(2007)、Shiryaev SAら、J Biol Chem.、282(29):20847〜53(2007)、Sarac MSら、Infect Immun.、70(12):7136〜9(2002)、Chiron MF、Fryling CM、およびFitzGerald D、J Biol Chem.、272(50):31707〜11(1997)、Gu Mら、Infect Immun.、64(2):524〜7(1996)、Inocencio NM、Moehring JM、およびMoehring TJ、J Biol Chem.、269(50):31831〜5(1994)、Moehring JMら、J Biol Chem.、268(4):2590〜4(1993))。ここに提示する事例では、PE中毒は、フューリンプロセシングに適した部位を含有していなければ失敗する。フューリン切断と細胞毒性との間の関係性を探索するための研究が続いている。
【0028】
本発明者らの研究室における別の一連の研究により、B細胞エピトープの排除が原因で非常に低い免疫原性を有するHA22の変異体であるHA22−LR−8Mが最近生成された(Onda Mら、発表のためにPNASに提出)。HA22−LR−8MはPEのLR変異体と同じ欠失を含有するが、PEのドメインIII中に8個の点突然変異も取り込んでいる。これらの突然変異をSS1P内に配置してSS1−LR/GGS/8Mを作製した。HA22−LR−8MとSS1−LR/GGS/8Mとの間の唯一の差は、フューリン切断部位後の抗体FvおよびGGSリンカーである。RITに対する免疫応答の膨大な大多数はPEに向けられているため、SS1−LR/GGS/8Mは同様に低下した免疫原性を示すはずである。
【0029】
中皮腫を有する患者からの原発性悪性細胞に対するSS1−LR/GGS/8Mの細胞毒性をSS1Pと比較した、結果により、SS1−LR/GGS/8MがSS1Pに匹敵するまたはそれよりも良好な細胞毒性を有していたことが示された。良好な活性に加えて、SS1−LR/GGS/8Mは、低下した非特異的毒性および低い免疫原性を含めた、SS1Pを超える潜在的な利点を有する。本明細書中に記載した実験は、その低い免疫原性、低い非特異的毒性、および良好な細胞毒性が原因で、SS1−LR/GGS/8Mが診療所にとって優れた候補となることを示唆している。
【0030】
定義
単位、接頭辞、および記号は、その国際単位系(SI)に許容される形態で示す。数値範囲は、範囲を定義する数値を包括する。別段に指定しない限りは、核酸は左から右に5’から3’の配向で記載されており、アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシの配向で記載されている。本明細書中に提供する表題は、本発明の様々な態様または実施形態の限定ではなく、これは明細書を全体として参照することによって行うことができる。したがって、直下に定義する用語は、明細書全体を参照することによって、より完全に定義される。
【0031】
ネイティブシュードモナス属外毒素A(「PE」)とは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって分泌され、真核細胞においてタンパク質合成を阻害する、非常に活性のある単量体タンパク質(分子量66kD)である。ネイティブPE配列は、本明細書中に参考として組み込まれている米国特許第5,602,095号の配列番号1に記載されている。その作用方法はADP−リボシル化による伸長因子2(EF−2)の不活性化である。外毒素は、協調作用して細胞毒性を引き起こす3つの構造的ドメインを含有する。ドメインIa(アミノ酸1〜252)は細胞結合を媒介する。ドメインII(アミノ酸253〜364)はサイトゾル内への転位を司っており、ドメインIII(アミノ酸400〜613)は伸長因子2のADPリボシル化を媒介する。PEの元の構造では、ドメインIIIは残基400〜613ではなく405〜613として分類されている。Allured VS、Collier RJ、Carroll SFおよびMcKay DB、Proc Natl Acad Sci USA、83、1320〜1324(1986)。ドメインIb(アミノ酸365〜399)の機能は未定義のままであるが、その大部分であるアミノ酸365〜380は、細胞毒性を失わずに欠失させることができる。Siegallら、J Biol Chem、264:14256〜61(1989)を参照されたい。数々のそのような修飾が当分野で知られており、それだけには限定されないが、ドメインIaの排除、ドメインIb、IIおよびIII中の様々なアミノ酸の欠失、単一アミノ酸置換、ならびにカルボキシル末端におけるKDEL(配列番号16)およびREDL(配列番号26)などの1つまたは複数の配列の付加が含まれる。Siegallら、J.Biol.Chem.、264:14256〜14261(1989)を参照されたい。本発明の免疫毒素は標的細胞中で転位およびEF−2リボシル化が可能である。
【0032】
本明細書中において、PEの突然変異は、ネイティブPE(配列番号1)の613個のアミノ酸の配列の特定の位置に存在するアミノ酸残基を参照して記載し、議論中の特定の突然変異においてその残基が置き換えられたアミノ酸が続く。したがって、たとえば用語「R490A」とは、言及した分子の位置490の「R」(標準の一文字コードでアルギニン)が「A」(標準の一文字コードでアラニン)によって置き換えられていることを示し、「K590Q」とは、位置590に通常存在するリシンがグルタミンで置き換えられていることを示す。一般的なアミノ酸の標準の一文字コードを以下に示す。
【0033】
用語「PE機能的ドメインIII」または「機能的PEドメインIII」とは、ネイティブPE(ネイティブ配列は配列番号1である)の残基395〜613をいう。ドメインIIIの構造的な境界は残基405〜613に設定されているが、機能分析により、ドメインIIIはADP−リボシル化活性を保持するためにドメインIbのセグメントを必要とすることが示されている(Hwang,J.ら、Cell、48:129〜136(1987)、Siegall,C.B.ら、J Biol Chem、264:14256〜14261(1989))。したがって、PE機能的ドメインIIIはPEの残基395〜613によって定義される(Kihara,A.およびPastan,I.、Bioconjug Chem、5:532〜538(1994))。本明細書中では、機能的PEドメインIIIの配列には、抗原性を低下させるための任意選択の修飾および任意選択の代替小胞体保持配列が含まれる。
【0034】
PEドメインIIIの末端残基REDLK(配列番号15)は、生じるRITの細胞毒性を本発明に従って増加させる方法で変動させることができる。たとえば、配列KDEL(配列番号16)、REEL(配列番号27)またはRDEL(配列番号28)で終わる突然変異させたPEを用いて作製した免疫毒素は、ネイティブ末端配列を保有するPE38を用いて作製した免疫毒素よりも標的細胞に対してはるかに高い細胞毒性とすることができる。KreitmanおよびPastan、Biochem J、307(Pt1):29〜37(1995)を参照されたい。また、これらの配列の反復も本RIT中に使用することができる。たとえば、米国特許第5,854,044号、第5,821,238号、および第5,602,095号、ならびに国際公開WO99/51643号を参照されたい。KDEL(配列番号16)で終わるPEはin vitro目的に有用である一方で、動物においてより非特異的な毒性を有する場合があり、in vivo使用にはより好ましくない。
【0035】
用語「メソテリン」とは、一部のヒト細胞の表面上に存在し、たとえばK1抗体によって結合されるタンパク質およびその断片をいう。メソテリンの核酸およびアミノ酸配列は、たとえば、PCT公開出願WO97/25,068号ならびに米国特許第6,083,502号および6,153,430号に記載されている。Chang,K.およびPastan,I.、Int.J.Cancer、57:90(1994)、Chang,K.およびPastan,I.、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA、93:136(1996)、Brinkmann U.ら、Int.J.Cancer、71:638(1997)、Chowdhury,P.S.ら、Mol.Immunol.、34:9(1997)、および米国特許第6,809,184号も参照されたい。メソテリンは約69kDaの前駆タンパク質として発現され、その後プロセシングされて30kDaのタンパク質を放出する一方で、背景中に記載した40kDaのグリコシルホスファチジルイノシトール連結の細胞表面糖タンパク質を細胞表面に付着したまま残す。40kDaの糖タンパク質が、本明細書中で用語「メソテリン」と呼ぶものである。メソテリンの核酸およびアミノ酸配列はいくつかの種から記録されており、たとえば、ヒト(NM_005823.4→NP_005814.2およびNM_013404.3→NP_037536.2)、マウス(NM_018857.1→NP_061345.1)、ラット(NM_031658.1→NP_113846.1)、ウシ(NM_001100374.1→NP_001093844)である。
【0036】
参照の利便上、本明細書中で使用する用語「抗体」には、コンテキストによりそうではないことが必要とされない限り、全(場合によっては本明細書中で「インタクト」と呼ぶ場合もある)抗体、抗原認識および結合の能力を保持する抗体断片(全抗体の修飾によって生成したか組換えDNA方法を使用して新規合成したものかにかかわらない)、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ならびに抗体模倣体が含まれる。抗体は、IgM、IgG(たとえば、IgG
1、IgG
2、IgG
3もしくはIgG
4)、IgD、IgAまたはIgEであり得る。
【0037】
IgGサブクラスの定常領域の配列は、長年の間当分野で周知であった(たとえば、Honjoら、Cell、18:559〜68(1979)、Tuckerら、Science、206:1303〜6(1979)、Yamawakiら、Nature、283:786〜9(1980)、Ellisonら、Nucl Acids Res、10:4071〜9(1982)、Ellisonら、DNA、1:11〜8(1981)、EllisonおよびHood、Proc Natl Acad Sci USA、79:1984〜8(1982))。可変領域のCDRが抗体の特異性を決定するため、標的細胞表面抗原に対する抗体のCDRまたはFvを選択した抗体内に移植または操作して、標的細胞表面抗原に対する特異性をその抗体に与えることができる。たとえば、標的細胞表面抗原に対する抗体のCDRを既知の三次元構造のヒト抗体フレームワーク上に移植して(たとえば、WO98/45322号、WO87/02671号、米国特許第5,859,205号、第5,585,089号、および第4,816,567号、EP特許出願第0173494号、Jonesら、Nature、321:522(1986)、Verhoeyenら、Science、239:1534(1988)、Riechmannら、Nature、332:323(1988)、ならびにWinterおよびMilstein、Nature、349:293(1991)を参照)、ヒトに投与した際に免疫原性応答をわずかしか生じさせないまたはまったく生じさせない抗体を形成することができる。あるいは、抗体の定常領域は、マウスなどの非ヒト動物中に見出される残基を、典型的にはヒト中で見出される残基で置き換えることによって操作することができる。この様式で操作された抗体は「ヒト化抗体」と呼ばれ、副作用を誘発する危険性がより低く、より長く循環中に留まることができるため、好ましい。抗体をヒト化する方法は当分野で知られており、たとえば、米国特許第6,180,377号、第6,407,213号、第5,693,762号、第5,585,089号、および5,530,101号に記載されている。
【0038】
用語「抗体断片」とは、インタクトな抗体の一部分、一般にはインタクトな抗体の抗原結合または可変領域を含む分子を意味する。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)
2、およびFv断片、単一ドメイン抗体(たとえば、Wesolowski、Med Microbiol Immunol.(2009)198(3):157〜74、Saerensら、Curr Opin Pharmacol.(2008)8(5):600〜8、Harmsenおよびde Haard、Appl Microbiol Biotechnol.(2007)77(1):13〜22を参照)、ヘリックスで安定化された抗体(たとえばArndtら、J Mol Biol、312:221〜228(2001))、ダイアボディー(以下を参照)、単鎖抗体分子(「scFv」、たとえば米国特許第5,888,773号を参照)、ジスルフィドで安定化された抗体(「dsFv」、たとえば、米国特許第5,747,654号および第6,558,672号を参照)、ならびにドメイン抗体(「dAb」、たとえば、Holtら、Trends Biotech、21(11):484〜490(2003)、Ghahroudiら、FEBS Lett.、414:521〜526(1997)、Lauwereysら、EMBO J、17:3512〜3520(1998)、Reiterら、J.Mol.Biol.、290:685〜698(1999)、DaviesおよびRiechmann、Biotechnology、13:475〜479(2001)を参照)が含まれる。
【0039】
用語「ダイアボディー」とは、2つの抗原結合部位を有する、同じポリペプチド鎖(V
H−V
L)中で可変軽鎖ドメイン(「V
L」または「VL」)と接続された可変重鎖ドメイン(「V
H」または「VH」)を含む小さな抗体断片をいう。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするためには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインが別の鎖の相補的ドメインと対合して2つの抗原結合部位を作製することを強いられる。ダイアボディーおよびその産生は、たとえば、EP404,097号、WO93/11161号、およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444〜6448(1993)中により完全に記載されている。
【0040】
用語「親抗体」とは、突然変異または変動させて親抗体と同じエピトープと結合するがより高い親和性で結合する抗体またはその断片を得る、任意の目的抗体を意味する。
【0041】
「ターゲッティング部分」とは、免疫コンジュゲートを目的細胞にターゲッティングすることを意図する、免疫コンジュゲートの一部分である。典型的には、ターゲッティング部分は抗体または抗原認識能力を保持している抗体の断片、たとえば、scFv、dsFv、Fab、またはF(ab’)
2である。
【0042】
「毒性部分」とは、免疫毒素が目的細胞に対して細胞毒性であるようにする、免疫毒素の一部分である。本発明の目的である免疫毒素に関して、毒性部分は、以下にある程度詳述する、その非特異的な細胞毒性を低下させるために修飾/突然変異されたシュードモナス属外毒素Aである。
【0043】
典型的には、免疫グロブリンは重鎖および軽鎖を有する。それぞれの重鎖および軽鎖は定常領域および可変領域を含有する(この領域は「ドメイン」としても知られる)。軽鎖および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域によって中断された「フレームワーク」領域を含有する。フレームワーク領域およびCDRの範囲は定義されている。様々な軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち構成要素である軽鎖および重鎖の合わせたフレームワーク領域は、CDRを三次元空間内に配置およびアラインメントする役割を果たす。
【0044】
CDRは主に抗原のエピトープとの結合を司っている。それぞれの鎖のCDRは典型的にはCDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれ、N末端から開始して順次付番されており、また、典型的にはその特定のCDRが位置する鎖によって同定される。したがって、V
H CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメイン中に位置している一方で、V
L CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインからのCDR1である。
【0045】
「V
H」または「VH」への言及は、Fv、scFv、dsFvまたはFabを含めた免疫グロブリン重鎖の可変領域をいう。「V
L」または「VL」への言及は、Fv、scFv、dsFvまたはFabを含めた免疫グロブリン軽鎖の可変領域をいう。
【0046】
語句「単鎖Fv」または「scFv」とは、伝統的な二本鎖抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインが接合されて1本の鎖を形成している抗体をいう。典型的には、リンカーペプチドが2本の鎖の間に挿入されて、正式な折り畳みおよび活性結合部位の作製を可能にする。
【0047】
語句「ジスルフィド結合」または「システイン−システインジスルフィド結合」とは、2つのシステイン間の共有的相互作用をいい、システインの硫黄原子が酸化されてジスルフィド結合を形成する。ジスルフィド結合の平均結合エネルギーは、水素結合の1〜2kcal/molと比較して約60kcal/molである。
【0048】
語句「ジスルフィドで安定化されたFv」または「dsFv」とは、軽鎖と重鎖との間にジスルフィド結合が存在する、免疫グロブリンの可変領域をいう。本発明のコンテキストでは、ジスルフィド結合を形成するシステインは抗体鎖のフレームワーク領域内にあり、抗体のコンホメーションを安定化させる役割を果たす。典型的には、フレームワーク領域内の置換が抗原結合を妨げない位置にシステインが導入されるように、抗体を操作する。
【0049】
用語「リンカーペプチド」には、重鎖の可変ドメインを軽鎖の可変ドメインと間接的に結合させる役割を果たす、抗体結合断片(たとえばFv断片)内のペプチドへの言及が含まれる。
【0050】
用語「ホットスポット」とは、特に高い天然の変動の部位である、可変ドメインのCDRまたはフレームワーク領域のヌクレオチド配列の一部分を意味する。CDR自体が超可変性の領域であるとみなされているが、突然変異はCDR全体にわたって均等に分布されていないことが分かっている。特定の部位、すなわちホットスポットが、集中的な突然変異を受けるこれらの部位として同定されている。ホットスポットはいくつかの構造的な特徴および配列によって特徴づけられている。これらの「ホットスポットモチーフ」を使用してホットスポットを同定することができる。特に良好に特徴づけられている2つのコンセンサス配列モチーフは、テトラヌクレオチド配列RGYWおよびセリン配列AGY(式中、RはAまたはGであり、YはCまたはTであり、WはAまたはTである)である。
【0051】
特定の抗原と免疫学的に反応性のある抗体は、ファージもしくは類似のベクター内での組換え抗体のライブラリの選択などの組換え方法によって[たとえば、Huseら、Science、246:1275〜1281(1989)、Wardら、Nature、341:544〜546(1989)、およびVaughanら、Nature Biotech.、14:309〜314(1996)を参照]、または動物を抗原もしくは抗原をコードしているDNAで免疫化することによって、作製することができる。
【0052】
用語「エフェクター部分」とは、ターゲッティング部分によってターゲッティングされた細胞に対して効果を与えること、または免疫コンジュゲートの存在を同定することを意図する、免疫コンジュゲートの一部分を意味する。本発明のコンテキストでは、エフェクター部分は修飾されたまたは突然変異させたシュードモナス属外毒素Aである。
【0053】
用語「免疫コンジュゲート」には、抗体へのエフェクター分子の共有結合への言及が含まれる。
【0054】
用語「有効量」または「ために有効な量」または「治療上有効な量」には、細胞のタンパク質合成を少なくとも50%阻害すること、または細胞を死滅させることなどの、所望の結果を生じるために十分な治療剤の用量への言及が含まれる。
【0055】
本発明のコンテキストでは、毒素は突然変異させたシュードモナス属外毒素Aである。
【0056】
用語「接触させる」には、直接的な物理的会合状態に置くことへの言及が含まれる。
【0057】
「発現プラスミド」は、プロモーターと作動可能に連結されている、目的分子をコードしているヌクレオチド配列を含む。
【0058】
本明細書中で使用する「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は互換性があるように使用され、アミノ酸残基のポリマーへの言及が含まれる。これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学類似体であるアミノ酸ポリマー、および天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。また、これらの用語は、タンパク質が機能的に保たれるように保存的アミノ酸置換を含有するポリマーにも適用される。
【0059】
用語「残基」または「アミノ酸残基」または「アミノ酸」には、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド(「ペプチド」と総称)内に組み込まれているアミノ酸への言及が含まれる。アミノ酸は天然に存在するアミノ酸であることができ、別段に限定されない限りは、天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能することができる天然アミノ酸の既知の類似体を包含することができる。
【0060】
本明細書中で言及するアミノ酸および類似体は、以下の表Aのように略記の表示によって記載する。
【0061】
タンパク質を説明する場合の「保存的置換」とは、タンパク質の活性を実質的に変更させない、タンパク質のアミノ酸組成の変化をいう。したがって、特定のアミノ酸配列の「保存的に修飾された変異」とは、タンパク質の活性に重大でないアミノ酸のアミノ酸置換、または重大なアミノ酸の置換でさえも活性が実質的に変更されないような、同様の特性(たとえば、酸性、塩基性、正もしくは負荷電、極性もしくは非極性など)を有する他のアミノ酸でのアミノ酸置換をいう。機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は当分野で周知である。表B中の以下の6つの群はそれぞれ互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する。
【0062】
表B
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、
4)アルギニン(R)、リシン(K)、
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
また、Creighton、Proteins:Structures and Molecular Properties、W.H. Freeman and Company、ニューヨーク(第2版、1992)も参照されたい。
【0063】
用語「コンジュゲートさせる」、「接合させる」、「結合させる」または「連結させる」とは、2つのポリペプチドを1つの連続したポリペプチド分子にすることをいう。本発明のコンテキストでは、この用語には、抗体部分をエフェクター分子(EM)と接合させることへの言及が含まれる。連結は、化学的手段または組換え手段のどちらかによるものであることができる。化学的手段とは、2つの分子間に共有結合が形成されて1つの分子を形成するような、抗体部分とエフェクター分子との間の反応をいう。
【0064】
本明細書中で使用する「組換え」には、タンパク質を発現することができるDNAの内在性コピーをそのネイティブ状態では有さない細胞を使用して産生されるタンパク質への言及が含まれる。細胞は、適切な単離核酸配列の導入によって遺伝子変更されているため、組換えタンパク質を産生する。また、この用語には、異種核酸の導入もしくはネイティブでない形態への[0]ネイティブ核酸の変更によって修飾された[0]細胞、もしくは核酸、もしくはベクターへの言及、または細胞がそのように修飾された細胞に由来することへの言及も含まれる。したがって、たとえば、組換え細胞は、細胞のネイティブ(非組換え)形態内では見つからない遺伝子を発現する、ネイティブ形態内で見出される遺伝子の突然変異体を発現する、または、そうでなければ異常に発現される、過小発現される、もしくはまったく発現されないネイティブ遺伝子を発現する。
【0065】
本明細書中で使用する「核酸」または「核酸配列」には、一本鎖または二本鎖のどちらかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーへの言及が含まれ、別段に限定されない限りは、天然に存在するヌクレオチドに類似した様式で核酸とハイブリダイズする天然ヌクレオチドの既知の類似体が包含される。別段に指定しない限りは、特定の核酸配列には、その相補的配列および保存的変異体、すなわち、コドンのゆらぎ位置に存在する核酸およびタンパク質へと翻訳された場合にアミノ酸の保存的置換をもたらす変異体が含まれる。
【0066】
本明細書中で指定した核酸に関して使用する「コードしている」には、指定したタンパク質への翻訳の情報を含む核酸への言及が含まれる。情報はコドンの使用によって指定される。典型的には、アミノ酸配列は核酸によって「ユニバーサル」遺伝暗号を使用してコードされている。しかし、一部の植物、動物、および真菌ミトコンドリアである細菌マイコプラズマ・カプリコルム(Mycoplasma capricolum)(Proc.Nat’l Acad.Sci.USA、82:2306〜2309(1985))または繊毛虫巨核中に存在するものなどのように、これらの生物の翻訳機構を使用して核酸を発現させる場合は、ユニバーサルコードの変形を使用し得る。
【0067】
語句「インフレームで融合させる」とは、接合された核酸配列が元のポリペプチド鎖を含む単鎖タンパク質(「融合タンパク質」)へと翻訳されるように、ポリペプチドをコードしている2つ以上の核酸配列を接合させることをいう。
【0068】
本明細書中で使用する「発現された」には、核酸がタンパク質へと翻訳されたことへの言及が含まれる。タンパク質は、発現されて細胞内に留まり、細胞表面膜の構成成分となり得るか、または細胞外基質もしくは培地内へ分泌され得る。
【0069】
「宿主細胞」とは、発現ベクターの複製または発現を支持することができる細胞を意味する。宿主細胞は、大腸菌(E.coli)などの原核細胞、または酵母、昆虫、両生類、もしくは哺乳動物細胞などの真核細胞であり得る。
【0070】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列のコンテキストにおける用語「同一」またはパーセント「同一性」とは、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して測定して、または目視検査によって、最大一致について比較およびアラインメントした場合に、同じである、または指定されたパーセンテージの同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを有する、2つ以上の配列または部分配列をいう。
【0071】
2つの核酸またはポリペプチドのコンテキストにおける語句「実質的に同一」とは、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して測定して、または目視検査によって、最大一致について比較およびアラインメントした場合に、少なくとも60%、より好ましくは65%、さらにより好ましくは70%、さらにより好ましくは75%、さらにより好ましくは80%、最も好ましくは90〜95%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性を有する2つ以上の配列または部分配列をいう。好ましくは、実質的な同一性が少なくとも約50個の残基の長さである配列の領域にわたって、より好ましくは少なくとも約100個の残基の領域にわたって存在し、最も好ましくは、配列は少なくとも約150個の残基にわたって実質的に同一である。最も好ましい実施形態では、配列は、比較ペプチドまたはコード領域の全長にわたって実質的に同一である。
【0072】
配列比較では、典型的には、1つの配列が試験配列を比較する参照配列として役割を果たす。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要な場合は部分配列の座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。その後、配列比較アルゴリズムが、指定されたプログラムのパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0073】
比較のための配列の最適アラインメントは、たとえば、SmithおよびWaterman、Adv.Appl.Math.、2:482(1981)のローカル相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch、J.Mol.Biol.、48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA、85:2444(1988)の類似度検索、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、ウィスコンシン州Madison、Science Dr.575中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または目視検査(一般にCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M.Ausubelら編、Current Protocols、Greene Publishing Associates,Inc.およびJohn Wiley&Sons,Inc.の合弁企業、(1995年補遺)(Ausubel)を参照)によって実施することができる。
【0074】
パーセント配列同一性および配列類似度を決定するために適したアルゴリズムの例は、それぞれAltschulら、(1990)J.Mol.Biol.、215:403〜410およびAltschuelら、(1977)Nucleic Acids Res.、25:3389〜3402に記載されているBLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムである。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、米国国立バイオテクノロジー情報センターから公的に利用可能である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さの単語とアラインメントした際に何らかの正値閾値スコアTに一致するまたはそれを満たす、クエリ配列中の長さWの短い単語を同定することによって高スコアの配列対(HSP)を同定することを含む。Tは近隣単語スコア閾値と呼ばれる(Altschulら、上記)。これらの初期近隣単語ヒットは、それらを含有するより長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして役割を果たす。その後、単語ヒットを、累積アラインメントスコアを増加できる限りそれぞれの配列に沿って両方向に伸長する。ヌクレオチド配列では、累積スコアはパラメータM(一対の一致する残基の報酬スコアであり、常に>0である)およびN(ミスマッチ残基のペナルティスコアであり、常に<0である)を使用して計算する。アミノ酸配列では、スコアづけマトリックスを使用して累積スコアを計算する。累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ低下した場合、1つもしくは複数の負のスコアの残基アラインメントの蓄積が原因で累積スコアがゼロ以下になった場合、またはどちらかの配列の末端に達した場合に、それぞれの方向への単語ヒットの伸長を停止させる。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、およびXがアラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)では、単語長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較を初期設定として使用する。アミノ酸配列では、BLASTPプログラムは単語長(W)3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアづけマトリックス(HenikoffおよびHenikoff、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:10915(1989)を参照)を初期設定として使用する。
【0075】
パーセント配列同一性の計算に加えて、BLASTアルゴリズムは2つの配列間の類似度の統計分析も行う(たとえばKarlinおよびAltschul、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA、90:5873〜5787(1993)を参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似度の1つの尺度は最小合計確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に生じるであろう確率の指標を提供する。たとえば、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合に、核酸は参照配列に類似しているとみなされる。
【0076】
2つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であることのさらなる指標は、以下に記載のように、第1の核酸によってコードされているポリペプチドが第2の核酸によってコードされているポリペプチドと免疫学的交差反応性を有することである。したがって、たとえば2つのペプチドが保存的置換のみによって異なる場合、ポリペプチドは典型的には第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、以下に記載のように、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0077】
用語「in vivo」には、細胞を得た生物の体内への言及が含まれる。「ex vivo」および「in vitro」とは、細胞を得た生物の体外を意味する。
【0078】
語句「悪性細胞」または「悪性腫瘍」とは、侵襲性であるおよび/または転移を受けることができる腫瘍または腫瘍細胞、すなわち癌細胞をいう。
【0079】
本明細書中で使用する「哺乳動物細胞」には、ヒト、ラット、マウス、モルモット、チンパンジー、またはマカクを含めた哺乳動物に由来する細胞への言及が含まれる。細胞はin vivoまたはin vitroで培養し得る。
【0080】
抗原に関する用語「選択的に反応性」とは、全抗体または部分的抗体と抗原を保有する細胞または組織とが優先的に会合し、その抗原を欠く細胞または組織とはそうではないことをいう。もちろん、特定の度合の非特異的な相互作用が分子と非標的細胞または組織との間に起こり得ることが認識されている。そうとはいえ、選択的反応性は、抗原の特異的認識によって媒介されるものであると識別し得る。選択的に反応性のある抗体は抗原と結合するが、これらは低い親和性で結合する場合がある。他方で、特異的結合は、抗体と抗原を保有する細胞との間で、結合した抗体と抗原を欠く細胞との間よりもはるかにより強力な会合をもたらす。典型的には、特異的結合は、標的抗原を欠く細胞または組織と比較して、5倍より高い、より好ましくは10倍より高い、最も好ましくは100倍より高い、標的抗原を保有する細胞または組織と結合した抗体の量の増加をもたらす(単位時間あたり)。そのような条件下におけるタンパク質との特異的結合は、特定のタンパク質に対するその特異性について選択された抗体を必要とする。様々な免疫アッセイ様式が、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択するために適している。たとえば、固相ELISA免疫アッセイが、タンパク質と特異的に免疫反応性であるモノクローナル抗体を選択するためにルーチン的に使用されている。特異的免疫反応性を決定するために使用することができる免疫アッセイの様式および条件の説明には、HarlowおよびLane、ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Publications、ニューヨーク(1988)を参照されたい。
【0081】
用語「免疫学的反応性条件」には、特定のエピトープに対して作製された抗体が、実質的にすべての他のエピトープとの結合よりも検出可能により高い度合で、および/またはそれを実質的に排除してそのエピトープと結合することを可能にする条件への言及が含まれる。免疫学的反応性条件は抗体結合反応の様式に依存し、典型的には免疫アッセイプロトコルにおいて利用されるものまたはin vivoで遭遇する条件である。免疫アッセイの様式および条件の説明には、HarlowおよびLane、上記を参照されたい。好ましくは、本発明の方法で用いる免疫学的反応性条件は、典型的には生きた哺乳動物または哺乳動物細胞の内部条件(たとえば、温度、容積モル浸透圧濃度、pH)への言及が含まれる「生理的条件」である。一部の器官は極限条件となっていることが認識されているが、生物内および細胞内の環境は、通常はpH7付近であり(すなわち、pH6.0〜pH8.0、より典型的にはpH6.5〜7.5)、優勢溶媒として水を含有し、0℃より高く50℃より低い温度で存在する。容積モル浸透圧濃度は細胞の生存度および増殖を支持する範囲内にある。
【0082】
用語「患者」、「対象」、「個体」とは、互換性があるように、哺乳動物、たとえば、ヒトまたは非ヒト霊長類、家庭用哺乳動物(たとえばイヌ科動物またはネコ科動物)、農業用哺乳動物(たとえば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ科動物)、実験室用哺乳動物(マウス、ラット、ハムスター、ウサギ)をいう。
【0083】
用語「同時投与する」とは、個体の血液中に2つの活性薬剤が同時に存在することをいう。同時投与する活性薬剤は、同時にまたは順次送達することができる。
【0084】
本明細書中で使用する用語「処置すること」および「処置」とは、用語が適用される疾患もしくは状態、またはそのような疾患もしくは状態の1つもしくは複数の症状のいずれかの発症を遅延させること、進行を遅らせるもしくは逆行させること、または軽減もしくは予防することをいう。
【0085】
腫瘍または癌の成長または進行に関する用語「阻害すること」、「低下させること」、「減少させること」とは、当分野で知られている任意の方法を使用して対象において腫瘍または癌の成長、拡大、転移を測定可能な量だけ阻害することをいう。腫瘍量が、本発明のPEをたとえばキメラ分子の一部として同時投与する前の腫瘍量と比較して少なくとも約10%、20%、30%、50%、80%、または100%低下している場合に、腫瘍または癌の成長、進行または拡大は阻害されている、低下または減少している。一部の実施形態では、腫瘍または癌の成長、進行または拡大は、PEを投与する前の腫瘍量と比較して少なくとも約1倍、2倍、3倍、4倍、またはそれより高く阻害されている、低下または減少している。
【0086】
組換え免疫毒素の構成要素
A.フューリン切断部位(FCS)
フューリン切断部位は、フューリンによって切断可能な任意のポリペプチド部位であることができる。Duckertら、Protein Engineering,Design&Selection、17(1):107〜112(2004)によって報告されているように(本明細書中で以降「Duckertら」とし、その全体で本明細書中に参考として組み込まれており、特にそれが開示するフューリン切断可能配列およびモチーフに関する)、フューリンは、同書のページ107の「サブチリシン(substilisin)/ケキシン様前駆タンパク質転換酵素と呼ばれる進化的に保存されている二塩基性および一塩基性に特異的なCA2
+依存性セリンプロテアーゼのファミリー」中の酵素である。「対塩基性アミノ酸切断酵素」すなわち「PACE」としても知られるフューリンは、このファミリーの7つの哺乳動物メンバーのうちの1つであり、いくつかの内在性ヒトタンパク質のプロセシングに関与している。一般に、たとえばThomas G、Nat Rev Mol Cell Biol、(10):753〜66(2002)を参照されたい。これは主にトランスゴルジ網中に見出される膜会合タンパク質である。ヒトフューリンの配列は1990年代初期から知られている。たとえば、Hatsuzawa,K.ら、J.Biol Chem.、267:16094〜16099(1992)、Molloy,S.ら、J.Biol.Chem.、267:16396〜16402(1992)を参照されたい。
【0087】
最小限の切断部位は、典型的にはアミノ酸残基の一文字コードでR−X−X−Rであり、切断は2番目の「R」の後に起こる。Duckertらは、哺乳動物タンパク質、病原性細菌のタンパク質、およびウイルスタンパク質を含めた、フューリン切断部位を有すると文献中で報告されている38個のタンパク質の配列に関して入手可能な情報を要約している。総説した切断モチーフのうちの31個、すなわち81%がR−X−[R/K]−Rコンセンサス配列を有しており、そのうちの11個、すなわち29%がR−X−R−Rを有しており、20個、すなわち52%がR−X−K−Rであったと報告されている。切断モチーフのうちの3個は最小限の切断配列のみを含有していた。Duckertらはモチーフをさらにアラインメントし、切断モチーフ自体のそれぞれのフューリン中および周辺残基中の両方のそれぞれの位置で見出される残基を同定した。Duckertらの
図1Aは、それぞれの位置で最も一般的に見出される残基を相対的な大きさ別で示す。慣例により、フューリン切断部位周辺の残基は容易に切断できる結合(典型的には記号「↓」によって示されている)から付番されている。N末端に向かって数えて基質残基はP1、P2などと命名されている一方で、C末端に向かって数えて残基はP1’、P2’などと命名されている。たとえば、Rockwell,N.C.およびJ.W. Thorner、Trends Biochem.Sci.、29:80〜87(2004)、Thomas G.、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.、3:753〜766(2002)を参照されたい。したがって、慣例に従って、以下の配列を使用して最小限の切断配列の残基および周辺残基をアラインメントおよび付番することができる。
P6−P5−P4−P3−P2−P1−P1’−P2’−P3’−P4’−P5’
式中、最小限のフューリン切断配列はP4〜P1として付番されている。Duckertらの、フューリンによって切断される38個の配列のアラインメントは、様々な位置に存在する残基に応じて許容される変異を同定している。たとえば、P4の残基がRでない場合は、P2およびP6にアルギニンまたはリシン残基を有することによってこれを補償することができる。同書のページ109。
【0088】
ネイティブPE中では、フューリン切断は毒素のドメインII中に位置するアルギニンに富んだループ内のアルギニン279とグリシン280との間で起こる。PEのドメインII中のネイティブフューリン切断配列を以下に示し(数字は613個のアミノ酸のネイティブPE配列中での残基の位置を示す)、アラインメントして上述の慣例下でのその付番を示した。
274− R H R Q P R G W E Q L −284(配列番号17)
P6−P5−P4−P3−P2−P1−P1’−P2’−P3’−P4’−P5’
本発明の根底にある研究では、位置P3およびP2で置換を行って以下の配列を形成し、置換に下線を引いた。
274− R H R
S K R G W E Q L −284(配列番号29)
この配列はネイティブ配列よりも速い切断速度を示し、免疫毒素の例で使用した場合に、ネイティブ配列とほぼ同じ、標的細胞に対する細胞毒性をもたらした。
【0089】
このことおよび本発明者らの以前の研究に基づいて、ターゲッティング分子をPEドメインIIIに付着させるために使用するフューリン切断配列は、最小限のフューリン切断配列R−X−X−R、または当分野で知られているもしくはDuckertらの
図1Aによって許容されている他のフューリン切断配列のうちの任意のものであることができる[ただし、P2’として同定された位置に残基が存在する場合は、これはトリプトファンであるべきであり、トリプトファンでなくても、バリンまたはアラニンであるべきではない]。たとえば、一部の実施形態では、配列は、RKKR(配列番号30)、RRRR(配列番号31)、RKAR(配列番号32)、SRVARS(配列番号33)、TSSRKRRFW(配列番号34)、またはASRRKARSW(配列番号35)であることができる。
【0090】
Duckertら中に注記されているように、P2、P4およびP6での3個の残基のうちの少なくとも2個が塩基性であるように位置P2およびP6のアルギニンまたはリシン残基によって補償されている場合は、位置P4にR(主にバリン)よりも低い好ましさの残基を使用することができる。したがって、一部の実施形態では、フューリン切断可能配列は、RRVKKRFW(配列番号36)、RNVVRRDW(配列番号37)、またはTRAVRRRSW(配列番号38)である。位置P1の残基は、ネイティブ配列中に存在するアルギニン、またはリシンであることができる。したがって、たとえば上述の配列のうちの任意のものにおいて、リシンで位置P1のアルギニンを置換することができる。
【0091】
一部の実施形態では、フューリン切断可能配列の配列は、PEのフューリン切断配列の配列:R−H−R−Q−P−R−G−W−E−Q−L(配列番号15)、または、最小限のフューリン切断配列を含有しており、フューリンによって切断可能である限りは、ネイティブ配列の切断されたバージョンに従う。したがって、一部の実施形態では、フューリン切断可能配列は、R−Q−P−R(配列番号39)、R−H−R−Q−P−R−G−W(配列番号40)、R−H−R−Q−P−R−G−W−E(配列番号41)、H−R−Q−P−R−G−W−E−Q(配列番号42)、またはR−Q−P−R−G−W−E(配列番号43)であることができる。一部の実施形態では、配列は、R−H−R−S−K−R−G−W−E−Q−L(配列番号29)、または、最小限のフューリン切断配列を含有しており、フューリンによって切断可能である限りはこの配列の切断されたバージョンである。したがって、一部の実施形態では、フューリン切断可能配列は、R−S−K−R(配列番号44)、R−H−R−S−K−R−G−W(配列番号45)、H−R−S−K−R−G−W−E(配列番号46)、R−S−K−R−G−W−E−Q−L(配列番号47)、H−R−S−K−R−G−W−E−Q−L(配列番号48)、またはR−H−R−S−K−R(配列番号49)であることができる。任意の特定のフューリン切断可能配列を、SS1−LRで使用した抗体を用いて免疫毒素とし、生じる免疫毒素をin vitroでメソテリン
+細胞系に対して試験することによって、容易に試験することができる。
【0092】
任意の特定の配列がフューリンによって切断可能であるかどうかは、当分野で知られている方法によって決定することができる。たとえば、配列がフューリンによって切断可能であるかどうかは、配列をフューリンと共にフューリン緩衝液(0.2MのNaOAc(pH5.5)、5mMのCaCl
2)中、1:10の酵素:基質のモル比、25℃で16時間インキュベートすることによって、試験することができる。これらの条件は、PEのフューリン切断に最適であると以前に確立されている。好ましくは、使用するフューリンはヒトフューリンである。組換えの切断されたヒトフューリンは、たとえばNew England Biolabs(マサチューセッツ州Beverly)から市販されている。また、Bravoら、J Biol Chem、269(14):25830〜25837(1994)も参照されたい。また、適切なFCSはPCT特許公開WO2009/032954号(2009年3月12日公開)中にも教示されており、これは、特にそれ中に開示されているフューリン切断配列に関して本明細書中に参考として組み込まれている。
【0093】
B.機能的ドメインIII
構造的に、ドメインIbは残基365〜399を含むと理解されている。本明細書中にさらに記述するように、PEのドメインIIIの構造的境界は残基405に開始されるとみなされているが、機能分析により、ドメインIIIはADP−リボシル化活性を保持するために構造的ドメインIbのセグメントを必要とすることが示されている。したがって、機能的ドメインIIIはPEの残基395〜613として定義され、したがって本発明の毒素が、以下にさらに記載する特定の許容される変異と共にPEの残基395〜613を含有することが好ましい。フューリン切断配列中のもの以外の残基365〜394の欠失が望ましく、これは、PE分子のこれらの部分中に存在するすべての免疫原性エピトープを排除するためである。本発明のPEでは、フューリン切断配列(またはその切断もしくは修飾された変異体)はそのカルボキシル末端でドメインIIIに付着しており、両者の間にはグリシンおよびセリンから独立して選択される3〜8個のアミノ酸の柔軟なリンカーが挿入されている。
【0094】
好ましい実施形態では、PE分子の機能的ドメインは、ドメインIII内の位置D406およびQ592に通常存在するアミノ酸残基の代わりにアラニン、グリシン、セリンまたはグルタミンの置換を有するように修飾されている。位置D406およびQ592での置換は、ドメインIII内の位置R432、R467、R490、R513、E548およびK590でのアラニン、グリシン、セリンまたはグルタミンの置換と組み合わせることができる。さらに、一部の実施形態では、D403、R412、R427、E431、R458、D461、R505、E522、R538、R551、R576およびL597から選択される位置のアミノ酸残基に対応する少なくとも1つのアミノ酸残基がアラニン、グリシン、セリンまたはグルタミンで置換されている。位置での残基への置換 ドメインIII内の置換 ドメインIIIのアミノ酸残基の位置D406、R432、R467、R490、R513、E548、K590およびQ592。一部の実施形態では、PE機能的ドメインIIIは、SS1−LR/GGS/8MのPE機能的ドメインのアミノ酸配列と実質的に同一または同一である。一部の実施形態では、PE機能的ドメインIIIは、SS1−LR/GGS/8XのPE機能的ドメインのアミノ酸配列と実質的に同一または同一である。
【0095】
ネイティブPEおよび上述の変異体の配列は、保存的置換を有し、細胞毒性能力を保持し、望ましくは、PEのネイティブ配列と比較して抗原性が低下している可能性があることが理解されている。好ましい実施形態では、PEまたはその細胞毒性断片の修飾された変異体は、目的のPE機能的ドメインIII、すなわちSS1−LR/GGS/8MまたはSS1−LR/GGS/8Mのものと、アミノ酸レベルで少なくとも80%の配列類似度、好ましくは少なくとも85%の配列類似度、より好ましくは少なくとも90%の配列類似度、最も好ましくは少なくとも95%の配列類似度を有する。2010年9月10日に出願のPCT/US2010/048504号に対応する、2011年3月17日に公開のPCT公開番号WO/2011/032022号は、PEの機能的ドメインIIの抗原性を低下させる適切な突然変異を開示している。この公開された出願は、機能的ドメインIIIの免疫原性の低下をもたらす、それ中に開示されている突然変異および置換(subsitution)および分子に関して、その全体で参考として組み込まれている。
【0096】
用語「保存的に修飾された変異体」はアミノ酸および核酸配列のどちらにも適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体とは、同一もしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードしている核酸配列、または核酸がアミノ酸配列をコードしていない場合は本質的に同一の核酸配列をいう。遺伝暗号の縮重が原因で、多数の機能的に同一な核酸が任意の所与のポリペプチドをコードしている。たとえば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべてアミノ酸アラニンをコードしている。したがって、コドンによってアラニンが指定されているすべての位置で、コードされているポリペプチドを変更せずに、このコドンを、記載した対応するコドンのうちの任意のものへと変更することができる。そのような核酸変異は、保存的に修飾された変異の一種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードしている本明細書中のすべての核酸配列は、核酸のすべての可能なサイレント変異も記載している。当業者には、核酸中のそれぞれのコドン(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUG以外)を修飾して、機能的に同一である分子を得ることができることが理解されよう。したがって、ポリペプチドをコードしている核酸のそれぞれのサイレント変異はそれぞれの記載した配列に黙示される。
【0097】
アミノ酸配列に関して、当業者には、コードされている配列中の単一のアミノ酸またはわずかなパーセンテージのアミノ酸を変更、付加または欠失させる、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の配列への個々の置換、欠失または付加は、変更によりアミノ酸が化学的に類似したアミノ酸で置換されることがもたらされる「保存的に修飾された変異体」であることが理解されよう。
【0098】
PEの細胞毒性または抗原性のアッセイ
本発明で用いるシュードモナス属外毒素は、当業者に周知のアッセイによって所望のレベルの細胞毒性についてアッセイすることができる。したがって、PEの細胞毒性断片およびそのような断片の保存的に修飾された変異体は、細胞毒性について容易にアッセイすることができる。多数の候補PE分子を、当分野で周知の方法によって細胞毒性について同時にアッセイすることができる。たとえば、候補分子の部分群を細胞毒性についてアッセイすることができる。所望の細胞毒性断片(複数可)が同定されるまで、陽性反応の候補分子の部分群を継続的に再分割して再アッセイすることができる。そのような方法は、多数のPEの細胞毒性断片または保存的変異体の迅速なスクリーニングを可能にする。抗原性は、WO2007/016150号に教示されているアッセイを含めた当分野で知られている任意の方法でアッセイすることができる。
【0099】
C.抗メソテリン抗体
キメラ分子のターゲッティング構成要素は細胞表面マーカーメソテリンと特異的に結合する。キメラ分子の標的である細胞表面抗原は当分野で周知であり、たとえば、Mufson、Front Biosci(2006)11:337〜43、Frankel、Clin Cancer Res(2000)6:326〜334およびKreitman、AAPS Journal(2006)8(3):E532〜E551中に要約されている。メソテリンを標的とすることによってその成長、拡大および/または進行を低下または阻害することができる例示的な癌には、卵巣癌、中皮腫、非小細胞肺癌、肺腺癌、輸卵管癌、頭頸部癌、子宮頸癌および膵癌が含まれる。別の好ましい実施形態では、ターゲッティング部分は抗体断片、好ましくは細胞上の表面マーカーと特異的に結合する抗体断片である。好ましい抗体断片は単鎖Fvである。本明細書中では、細胞毒素がscFvと融合されている、細胞毒素に基づく免疫毒素の構築および特徴づけが記載されている。毒素または細胞毒性断片を融合させることができる他の好ましい抗体断片には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、ヘリックスで安定化された抗体、ダイアボディー、ジスルフィドで安定化された抗体、および単一ドメイン抗体(たとえばラクダ抗体)が含まれる。メソテリンに対する抗体には、SS1、SSP1、HN1、HN2、MN、K1およびその変異体が含まれる。MORAb−009(SS1のヒト化したバージョン)が特に適切な抗体である。
【0100】
SS1Pは、メソテリン発現細胞系を特異的に死滅させ、マウスにおいてメソテリン発現腫瘍の回帰を引き起こすことが示されている(Hassan,R.ら、Clin Cancer Res、8:3520〜6(2002)、Onda,M.ら、Cancer Res、61:5070〜7(2001))。これらの研究および適切な安全性データに基づいて、国立癌研究所(National Cancer Institute)においてSS1Pを用いた2つの第I相治験がメソテリン発現癌を有する患者で実施されている(それ中に開示されているSS1Pの主題に関して、それぞれ本明細書中に参考として組み込まれているChowdhury,P.S.ら、Proc Natl Acad Sci USA、95:669〜74(1998)、Hassan,R.ら、Proc Am Soc Clin Oncol、21:29a(2002))。さらに、メソテリンを標的とする他の治療が前臨床開発中である(Thomas,A.M.ら、J Exp Med、200:297〜306(2004))。HN1およびHN2は、たとえばFengら、Mol Cancer Ther(2009)8(5):1113〜8に記載されているヒト抗メソテリン抗体である。リソソームプロテアーゼの切断クラスターが除去されているSS1P免疫毒素。これらの変異体は、たとえば、それ中に開示されている抗体、FCS、および機能的ドメインIIIに関してその全体で本明細書中に組み込まれている、Weldonら、Blood、(2009)113(16):3792〜800およびWO2009/032954号に記載されている。
【0101】
本発明のRITには、それだけには限定されないが、PE分子と抗体または他のターゲッティング剤との共有結合が存在する分子が含まれる。細胞毒素と抗体または抗体断片との融合は、典型的には抗体または抗体断片のC末端に対するものである。そのような融合は、典型的には組換えDNA技術を用いて達成する。特定のターゲッティング剤の選択肢は、ターゲッティングされる特定の細胞に依存する。免疫毒素を標的とする抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、または組換え抗体、たとえばキメラもしくは可変領域断片であることができる。抗体が非組換えである場合は、免疫毒素は抗体と毒性部分との化学的コンジュゲーションによって形成されなければならない。抗体を組換えによって生成する場合は、化学結合または組換え融合によって抗体を毒素と接合させることができる。組換え融合では、抗体をコードしているcDNAを、インフレームで、毒素をコードしているcDNAを既に含有するプラスミド内に挿入する。もちろん、その逆も行うことができ、毒素cDNAを、抗体をコードしているcDNAを保有するプラスミド内に挿入することができる。免疫毒素の大きさは潜在的に大きいため、抗体の断片のみを毒性部分と接合させることが望ましい場合がある。Fab、Fab’およびF(ab)
2断片をポリクローナル、モノクローナルおよびキメラ抗体から作製し、その後、化学結合によって毒素と接合させることができる。あるいは、抗体の可変領域が必須のフレームワーク領域と接続されているcDNAを生成することができる。その後、これらのより小さな抗体は、二本鎖Fv抗体として、または重鎖および軽鎖領域が直接もしくはペプチドリンカーを介してのどちらかで接合されている場合は単鎖Fv抗体(scFv)として分泌される。リソソームプロテアーゼの切断クラスターが除去されている特に好ましいメソテリン抗体および断片は、本発明と同じ譲受人に与えられ、特にそれ中に開示されている抗体の主題に関してその全体で参考として組み込まれている、2000年5月26日に出願のPCT/US2009/014829号に対応する、2000年7月12日に公開のPCT特許公開WO/2000/073346号に開示されている。
【0102】
scFvを作製する1つの方法は、免疫原で免疫化したマウスの脾臓のmRNAから作製したファージディスプレイライブラリを介したものである(Chowdhuryら、Mol.Immunol.、34:9〜20(1997))。タンパク質免疫原が哺乳動物中で天然に見出されるが、原核生物中で組換えによって発現させる場合、タンパク質は正しいグリコシル化パターンを有さず、正しいコンホメーションを有さない場合がある。この免疫原に応答してマウス中で発生させた抗体は、ネイティブ状態のタンパク質を認識しない場合がある。この問題に対する1つの解決策は、哺乳動物細胞中で作製したネイティブタンパク質を用いて動物を免疫化することであるが、十分な量の一部のタンパク質、特に細胞表面タンパク質の、哺乳動物細胞からの精製は可能でない場合がある。別の解決策は、それほど一般的ではないが、免疫原をコードしているcDNAで動物を免疫化することである。適切なプロモーターの調節下にあるcDNAを動物内に導入する。ブースト注射の後、かつ抗体価が最大に達した際に、動物を屠殺し、脾臓を取り出して、ファージディスプレイライブラリを作製する。メソテリンをコードしているDNAを含有するプラスミドでマウスを免疫化することによって、本発明者らは高力価の抗メソテリン抗体を誘発させることができる。脾臓RNAおよびファージディスプレイ技術を使用して、高い親和性でメソテリンと結合する、本発明者らがSS scFvと呼ぶ単鎖Fv(「scFv」)を単離することができる。
【0103】
本発明で使用するための抗メソテリン抗体は、FCSのアミノ末端を介してFCSと連結させることができる。同様に、FCSは抗体の重鎖、軽鎖、Fc(定常領域)またはフレームワーク領域と直接連結させることができる。連結は、抗体のアミノもしくはカルボキシル末端を介して、または内部のアミノ酸残基を介して起こることができる。本発明の多価免疫コンジュゲート組成物中で使用する抗体は、同じまたは異なるメソテリンエピトープに向けることができる。
【0104】
本発明の好ましい実施形態では、抗メソテリン抗体は、scFvまたはジスルフィドで安定化されたFv抗体などの組換え抗体である。Fv抗体は典型的には約25kDaであり、完全な抗原結合部位を含有し、1つの重鎖および軽鎖あたり3つのCDRを有する。V
HおよびV
L鎖が近接せずに発現される場合、Fv抗体の鎖は典型的には非共有的相互作用によって一緒に保たれる。しかし、これらの鎖は希釈の際に解離する傾向にあるため、鎖をグルタルアルデヒド、分子間ジスルフィド、またはペプチドリンカーによって架橋結合させる方法が開発されている。
【0105】
特に好ましい実施形態では、抗体は単鎖Fv(scFv)である。scFv抗体のV
HおよびV
L領域は、折り畳まれて二本鎖抗体中で見出されるものに類似した抗原結合部位を作製する単鎖を含む。折り畳まれた後、非共有的相互作用が単鎖抗体を安定化させる。より好ましい実施形態では、scFvは組換えによって生成する。当業者は、本発明の抗体の保存的変異体を作製できることに気付くであろう。scFv断片中で用いられるそのような保存的変異体は、正しい折り畳みおよびV
HとV
L領域との間の安定化に必要な重大なアミノ酸残基を保持する。本発明の一部の実施形態では、scFv抗体は軽鎖を介してFCSに直接連結されている。
【0106】
一部の抗体実施形態のV
HおよびV
L領域は一緒に直接接合させることができる一方で、当業者には、領域を1つまたは複数のアミノ酸からなるペプチドリンカーによって分離し得ることが理解されよう。ペプチドリンカーおよびその使用は当分野で周知である。たとえば、すべて本明細書中に参考として組み込まれている、Hustonら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA、8:5879(1988)、Birdら、Science、242:4236(1988)、Glockshuberら、Biochemistry、29:1362(1990)、米国特許第4,946,778号、米国特許第5,132,405号およびStemmerら、Biotechniques、14:256〜265(1993)を参照されたい。一般に、ペプチドリンカーは、領域を接合させることまたはそれらの間に何らかの最小距離もしくは他の空間的な関係性を保つこと以外の具体的な生物活性を有さない。しかし、ペプチドリンカーの構成的アミノ酸は、折り畳み、実効電荷、疎水性などの分子の何らかの特性に影響を与えるように選択し得る。単鎖Fv(scFv)抗体には、任意選択で50個以下のアミノ酸、一般には40個以下のアミノ酸、好ましくは30個以下のアミノ酸、より好ましくは20個以下のアミノ酸の長さのペプチドリンカーが含まれる。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは配列Gly−Gly−Gly−Ser(配列番号50)、好ましくは2、3、4、5、または6つのそのような配列のコンカテマーである。しかし、リンカー内の一部のアミノ酸置換を行うことができることを理解されたい。たとえば、バリンでグリシンを置換することができる。
【0107】
好ましくは、抗体またはその断片は突然変異させた抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含み、ポリペプチドは親抗体よりも抗原に対して少なくとも5倍高い結合親和性を有し、ポリペプチドは相補性決定領域(CDR)中の少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸置換によって親抗体から異なる配列を有し、アミノ酸はAGYまたはRGYW(式中、RはAまたはGであり、YはCまたはTであり、WはAまたはTである)から選択されるホットスポットモチーフに属するヌクレオチドを含むコドンによってコードされている。置換は軽鎖または重鎖可変領域のCDR3中で起こることができる。置換は軽鎖または重鎖可変領域のCDR1またはCDR2中で起こることができる。一部の実施形態では、抗メソテリン抗体は、2006年7月25日に発行の米国特許第7,081,518号に開示されており、そのような抗体、その核酸配列(equences)、使用および作製方法に関して参考として組み込まれている抗体材料である。
【0108】
抗メソテリン抗体は可変重(「V
H」)鎖および可変軽(「V
L」)鎖を含むことができ、V
HおよびV
L鎖はそれぞれ第1、第2および第3の相補性決定領域(「CDR」)を有しており、前記重鎖のそれぞれ第1のCDR(「CDR1」)、第2のCDR(「CDR2」)、および第3のCDR(「CDR3」)は、CDR1(GYTMN、配列番号51)、CDR2(LITPYNGASSYNQKFRG、配列番号52)、およびCDR3(GGYDGRGFDY、配列番号53)について示したアミノ酸残基配列を有しており、前記V
L鎖のそれぞれCDR1、2および3は、CDR1(SASSSVSYMH、配列番号54)、CDR2(DTSKLAS、配列番号55)、およびCDR3(QQWSGYPLT、配列番号56)について示したアミノ酸残基配列を有する。一部の実施形態では、軽鎖のCDR3は修飾されており、QQWSKHPLT(配列番号57)、QQWSGHPLT(配列番号58)、QQWSAHPLT(配列番号59)、QQWSQIPLT(配列番号60)、QQWGFNPLT(配列番号61)、QQWGTNPLT(配列番号62)、QQWGSHPLT(配列番号63)、QQWGDFPLT(配列番号64)、QQWGDHPLT(配列番号65)、QQWSAHPLT(配列番号66)、またはQQWSGYPTT(配列番号67)の配列を有する。一部の実施形態では、V
HはリンカーペプチドGVGGSG
4SG
4S(配列番号25)によってV
Lと接続されている。一部のさらなる実施形態では、抗メソテリン抗体はscFv、dsFv、Fab、またはF(ab’)
2である。さらに一部のさらなる実施形態では、RIT中で使用する抗メソテリン抗体は、V
L CDR1、V
L CDR2、V
H CDR1、およびV
H CDR2からなる群から選択されるCDR中に少なくとも1つのアミノ酸のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸は、AGYまたはRGYW(式中、RはAまたはGであり、YはCまたはTであり、WはAまたはTである)から選択されるホットスポットモチーフに属するヌクレオチドを含むコドンによってコードされている。
【0109】
D.L1
抗体は、好ましくは単結合または1〜10個の連続したアミノ酸の長さのポリペプチドである追加のリンカーによってFCSと連結されている。一部の実施形態では、このリンカーは1、2、3、4、5、6、7、8、または9個のアミノ酸の長さである。一部の好ましい実施形態では、リンカーはグリシンおよびセリン残基からなる。一部のさらなる実施形態では、リンカーはASGG(配列番号19)またはASGGSGGG(配列番号68)である。好ましい実施形態では、リンカーは、抗体のカルボキシル末端をFCSのN末端に直接接合した連続したポリペプチド鎖を形成する。
【0110】
E.柔軟なリンカー
柔軟なリンカーは、FCSをPE機能的ドメインIIIへと直接カップリングさせる。柔軟なリンカーは式(Xaa1)
nの連続したペプチドであり、式中、それぞれのXaa1はグリシンおよびセリンから独立して選択され、nは3〜8である。好ましい実施形態では、nは3である。より好ましい実施形態では、リンカーはGGSである。他の実施形態では、nは4、5、6、または7である。他の実施形態では、柔軟なリンカーは、GGGS(配列番号50)、GGGSG(配列番号69)、GGGGSG(配列番号70)またはGGSGGS(配列番号18)である。
【0111】
柔軟なリンカーはFCSのC末端と連続して融合されており、PEの機能的ドメインIIIと連続して直接融合されており、したがって、FCSおよび機能的ドメインIIIと1つの連続したペプチド鎖を形成する。
【0112】
免疫コンジュゲートの生成
i.非組換え方法
本発明の非組換え実施形態では、抗体などのターゲッティング分子は、当業者に知られている任意の数の手段を使用して本発明のPE分子と連結されている。共有および非共有付着手段をどちらも本発明のPE分子に使用し得る。
【0113】
PE分子を抗体または他のターゲッティング分子(「TM」)と付着させるための手順は、TMの化学構造に応じて変動する。ポリペプチドは、典型的には様々な官能基、たとえば、カルボン酸(COOH)、遊離アミン(−NH
2)またはスルフヒドリル(−SH)基を含有し、これらは、抗体上の適切な官能基と反応してたとえばPE分子の結合をもたらすために利用可能である。
【0114】
あるいは、抗体または他のTMは、追加の反応性官能基を曝露または付着させるために誘導体化されている。誘導体化は、Pierce Chemical Company、イリノイ州Rockfordから入手可能なものなどのいくつかのリンカー分子のうちの任意のものの付着を含み得る。
【0115】
本明細書中で使用する「リンカー」とは、TMをPE分子と接合させるために使用する分子である。リンカーは抗体およびエフェクター分子の両方と共有結合を形成することができる。適切なリンカーは当業者に周知であり、それだけには限定されないが、直鎖または分枝鎖状の炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、またはペプチドリンカーが含まれる。抗体およびエフェクター分子がポリペプチドである場合は、その側鎖を介して(たとえばジスルフィド連結を介してシステインと)リンカーを構成的アミノ酸と接合させ得る。しかし、好ましい実施形態では、リンカーはアルファ炭素アミノおよび末端アミノ酸のカルボキシル基と接合させる。
【0116】
一部の状況では、免疫コンジュゲートがその標的部位に到達した際にPE分子をTMから遊離させることが望ましい。したがって、これらの状況では、免疫コンジュゲートは標的部位の近傍で切断可能な連結を含む。PE分子をTMから放出させるためのリンカーの切断は、標的細胞の内部または標的部位の近傍のどちらかで免疫コンジュゲートが供される酵素活性または条件によって促され得る。標的部位が腫瘍である場合、腫瘍部位に存在する条件下で(たとえば、腫瘍関連酵素または酸性pHに曝された場合に)切断可能なリンカーを使用し得る。
【0117】
ii.組換え方法
本発明の核酸配列は、たとえば、適切な配列のクローニング、またはNarangら、Meth.Enzymol.、68:90〜99(1979)のリン酸トリエステル方法、Brownら、Meth.Enzymol.、68:109〜151(1979)のリン酸ジエステル方法、Beaucageら、Tetra.Lett.、22:1859〜1862(1981)のジエチルホスホルアミダイト方法、たとえばNeedham−VanDevanterら、Nucl.Acids Res.、12:6159〜6168(1984)などに記載されている自動合成機を使用したBeaucageおよびCaruthers、Tetra.Letts.、22(20):1859〜1862(1981)によって記載されている固相ホスホルアミダイトトリエステル方法、および米国特許第4,458,066号の固体支持体方法などの方法による直接化学合成を含めた、任意の適切な方法によって調製することができる。化学合成は一本鎖オリゴヌクレオチドを生じる。これは、相補的配列とのハイブリダイゼーションによって、または一本鎖を鋳型として使用したDNAポリメラーゼを用いた重合によって、二本鎖DNAへと変換し得る。当業者には、DNAの化学合成は約100個の塩基の配列に限定される一方で、より短い配列のライゲーションにより長い配列が得られる可能性があることが理解されよう。
【0118】
好ましい実施形態では、本発明の核酸配列をクローニング技法によって調製する。適切なクローニングおよびシーケンシング技法の例、ならびに当業者に多くのクローニングの実行を指導するために十分な指示は、Sambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL(第2版)、第1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory(1989)、BergerおよびKimmel(編)、GUIDE TO MOLECULAR CLONING TECHNIQUES、Academic Press,Inc.、カリフォルニア州San Diego(1987)、またはAusubelら(編)、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、Greene PublishingおよびWiley−Interscience、NY(1987)中に見出される。また、生物学的試薬および実験器具の製造者からの製品情報も有用な情報を提供する。そのような製造者には、SIGMA chemical company(モンタナ州Saint Louis)、R&D systems(ミネソタ州Minneapolis)、Pharmacia LKB Biotechnology(ニュージャージー州Piscataway)、CLONTECH Laboratories,Inc.(カリフォルニア州Palo Alto)、Chem Genes Corp.、Aldrich Chemical Company(ウィスコンシン州Milwaukee)、Glen Research,Inc.、GIBCO BRL Life Technologies,Inc.(メリーランド州Gaithersberg)、Fluka Chemica−Biochemika Analytika(Fluka Chemie AG、スイスBuchs)、Invitrogen、カリフォルニア州San Diego、およびApplied Biosystems(カリフォルニア州Foster City)、ならびに当業者に知られている多くの他の商業的供給業者が含まれる。
【0119】
また、ネイティブPEをコードしている核酸を修飾して本発明の免疫コンジュゲートを形成することもできる。部位特異的突然変異誘発による修飾は当分野で周知である。PEをコードしている核酸はin vitro方法によって増幅することができる。増幅方法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写に基づく増幅システム(TAS)、自立配列複製システム(3SR)が含まれる。多種多様なクローニング方法、宿主細胞、およびin vitro増幅方法が当業者に周知である。
【0120】
好ましい実施形態では、免疫コンジュゲートは、選択された抗体または他のTMをコードしているcDNAを、本発明の所望のPEをコードしているcDNAを含むベクター内に挿入することによって調製する。挿入は、ターゲッティング剤(議論を容易にするために、本明細書中の議論ではターゲッティング剤がFvであると仮定するが、等しい効果で他のターゲッティング剤を置換することができる)およびPEがインフレームで、すなわち機能的Fv領域および機能的PE領域を含有する1つの連続したポリペプチドで読み取られるように行う。特に好ましい実施形態では、毒素がscFvのカルボキシル末端に位置するように、本発明のPEをコードしているcDNAをscFvとライゲーションさせる。他の好ましい実施形態では、毒素がscFvのアミノ末端に位置するように、本発明のPEをコードしているcDNAをscFvとライゲーションさせる。
【0121】
本発明のPE、抗体、または免疫コンジュゲートをコードしている核酸を単離およびクローニングした後、所望のタンパク質を細菌、植物、酵母、昆虫および哺乳動物細胞などの組換え操作した細胞中で発現させ得る。当業者は、大腸菌、他の細菌宿主、酵母、ならびにCOS、CHO、HeLaおよび骨髄腫細胞系などの様々な高等真核細胞を含めた、タンパク質の発現に利用可能な数々の発現系に精通していることが予想される。原核生物または真核生物中でのタンパク質の発現について知られている様々な方法を詳細に記載する試みは行わない。手短に述べると、本発明の単離タンパク質をコードしている天然または合成核酸の発現は、典型的には、DNAまたはcDNAをプロモーター(構成的または誘導性のどちらかである)と作動可能に連結させ、次いで発現カセット内に取り込ませることによって達成される。カセットは、原核生物または真核生物のどちらにおける複製および組込みにも適切であることができる。典型的な発現カセットは、転写および翻訳ターミネーター、開始配列、ならびにタンパク質をコードしているDNAの発現の制御に有用なプロモーターを含有する。クローニングした遺伝子の高レベルの発現を得るためには、最小でも、転写を指揮するための強力なプロモーター、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、および転写/翻訳ターミネーターを含有する発現カセットを構築することが望ましい。大腸菌では、これには、T7、trp、lac、またはラムダプロモーターなどのプロモーター、リボソーム結合部位および好ましくは転写終結シグナルが含まれる。真核細胞では、制御配列にはプロモーターならびに好ましくは免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロウイルス、およびポリアデニル化配列に由来するエンハンサーが含まれることができ、また、スプライスドナーおよびアクセプター配列が含まれ得る。本発明のカセットは、大腸菌には塩化カルシウム形質転換または電気穿孔、哺乳動物細胞にはリン酸カルシウム処理、電気穿孔またはリポフェクションなどの周知の方法によって、選択された宿主細胞内へと移行させることができる。カセットによって形質転換させた細胞は、amp、gpt、neoおよびhyg遺伝子などのカセット中に含有される遺伝子によって与えられる、抗生物質に対する耐性によって選択することができる。
【0122】
当業者には、その生物活性を消失させずに、本発明のポリペプチド(すなわち、PEまたは本発明のPEから形成した免疫コンジュゲート)をコードしている核酸に修飾を行うことができることが理解されよう。一部の修飾は、クローニング、発現、またはターゲッティング分子の融合タンパク質内への取り込みを容易にするために行い得る。そのような修飾は当業者に周知であり、たとえば、終止コドン、開始部位を提供するためにアミノ末端に付加したメチオニン、好都合に位置する制限部位を作製するためにいずれかの末端に配置した追加のアミノ酸、または精製ステップを補助するための追加のアミノ酸(ポリHisなど)が含まれる。
【0123】
組換え方法に加えて、本発明の免疫コンジュゲートおよびPEは、標準のペプチド合成を使用して全体的または部分的に構築することもできる。約50個未満のアミノ酸の長さの本発明のポリペプチドの固相合成は、配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に付着させ、次いで配列中の残りのアミノ酸を順次付加することによって達成し得る。固相合成の技法は、BaranyおよびMerrifield、THE PEPTIDES:ANALYSIS,SYNTHESIS,BIOLOGY.、第2巻:SPECIAL METHODS IN PEPTIDE SYNTHESIS、パートA、ページ3〜284、Merrifieldら、J.Am.Chem.Soc.、85:2149〜2156(1963)、およびStewartら、SOLID PHASE PEPTIDE SYNTHESIS、第2版、Pierce Chem.Co.、イリノイ州Rockford(1984)によって記載されている。より長いタンパク質は、より短い断片のアミノおよびカルボキシル末端の縮合によって合成し得る。カルボキシル末端の活性化(たとえばカップリング試薬N、N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(dicycylohexylcarbodiimide)を使用することによる)によってペプチド結合を形成する方法は当業者に知られている。
【0124】
iii.精製
発現させた後、本発明の組換え免疫コンジュゲートおよびPEは、硫安塩析、親和性カラム、カラムクロマトグラフィーなどを含めた当技術分野の標準手順に従って精製することができる(一般にR.Scopes、PROTEIN PURIFICATION、Springer−Verlag、N.Y.(1982)を参照)。薬学的使用には少なくとも約90〜95%の均一性の実質的に純粋な組成物が好ましく、98〜99%以上の均一性が最も好ましい。必要に応じて部分的にまたは均一性まで精製した後、治療的に使用する場合は、ポリペプチドは内毒素を実質的に含まないべきである。
【0125】
大腸菌などの細菌からの、単鎖抗体の発現および/または単鎖抗体を含めた適切な活性型への再折り畳みの方法が記載されており、周知であり、本発明の抗体に適用可能である。すべて本明細書中に参考として組み込まれている、Buchnerら、Anal.Biochem.、205:263〜270(1992)、Pluckthun、Biotechnology、9:545(1991)、Huseら、Science、246:1275(1989)およびWardら、Nature、341:544(1989)を参照されたい。
【0126】
多くの場合、大腸菌または他の細菌からの機能的異種タンパク質は封入体から単離し、強力な変性剤を使用した可溶化、および続く再折り畳みを必要する。可溶化ステップ中では、当分野で周知のように、ジスルフィド結合を分離するために還元剤が存在しなければならない。例示的な還元剤を含む緩衝液は、0.1Mのトリス、pH8、6Mのグアニジン、2mMのEDTA、0.3MのDTE(ジチオエリスリトール)である。本明細書中に参考として組み込まれているSaxenaら、Biochemistry、9:5015〜5021(1970)中に記載されおり、特にBuchnerら、上記によって記載されているように、ジスルフィド結合の再酸化は、還元型および酸化型の低分子量チオール試薬の存在下で起こることができる。
【0127】
復元は、典型的には、変性および還元されたタンパク質を再折り畳み緩衝液中で希釈(たとえば100倍)することによって達成される。例示的な緩衝液は、0.1Mのトリス、pH8.0、0.5MのL−アルギニン、8mMの酸化グルタチオン、および2mMのEDTAである。
【0128】
二本鎖抗体精製プロトコルへの改変として、重鎖および軽鎖領域を別々に可溶化および還元し、その後、再折り畳み溶液中で合わせる。これら2つのタンパク質を、一方のタンパク質に対する他方のモル比が5倍モル濃度過剰を超えないように混合した場合に、好ましい収率が得られる。酸化還元シャフリングが完了した後に過剰の酸化グルタチオンまたは他の酸化性の低分子量化合物を再折り畳み溶液に加えることが望ましい。
【0129】
2.医薬組成物および投与
一態様では、本発明は、本発明の少なくとも1つのキメラタンパク質、好ましくは標的毒素と、任意選択で薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物または医薬品を提供する。医薬組成物または医薬品は、それだけには限定されないが悪性疾患または癌を含めた状態を処置するために患者に投与することができる。
【0130】
a.配合物
本発明で使用するための医薬組成物または医薬品は、1つまたは複数の生理的に許容される担体または賦形剤を使用して標準の技法によって配合することができる。適切な薬学的担体は本明細書およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、University of the Sciences in Philadelphia、Lippencott Williams&Wilkins(2005)中に記載されている。本発明のキメラタンパク質は、吸入、局所、経鼻、経口、非経口、または直腸によるものを含めた、任意の適切な経路による投与のために配合することができる。したがって、医薬組成物の投与は、シリンジまたは他の装置を用いて、皮内、真皮下、静脈内、筋肉内、鼻腔内、吸入、脳内、気管内、動脈内、腹腔内、膀胱内、胸膜内、冠内、皮下または腫瘍内注射によって行い得る。また、経皮投与も企図され、吸入またはエアロゾル投与も企図される。錠剤およびカプセルは経口、直腸または経膣で投与することができる。
【0131】
投与のための組成物は、一般的に、薬学的に許容される担体、好ましくは水性担体に溶かしたキメラタンパク質、好ましくは標的毒素の溶液を含む。たとえば緩衝生理食塩水などの様々な水性担体を使用することができる。これらの溶液は無菌的であり、望ましくない物質を一般に含まない。これらの組成物は慣用の周知の滅菌技法によって滅菌し得る。組成物は、必要に応じてpH調整剤、緩衝剤、毒性調整剤などの生理的条件に近づけるための薬学的に許容される補助物質、たとえば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含有し得る。これらの配合物中の融合タンパク質の濃度は幅広く変動することができ、選択された特定の投与様式および患者の要求に応じて、主に液量、粘度、体重などに基づいて選択される。
【0132】
本発明の標的毒素組成物は、静脈内投与または体腔内への投与を含めた非経口投与に適している。
【0133】
本発明のキメラタンパク質、好ましくは標的毒素は、注射による、たとえばボーラス注射または持続注入による非経口投与のために配合することができる。注射用配合物は、単位剤形で、たとえばアンプルまたは複数用量容器中に、保存料を添加して提示することができる。注射用組成物は好ましくは等張水溶液または懸濁液であり、坐薬は好ましくは脂肪性の乳濁液または懸濁液から調製する。組成物は滅菌し得る、ならびに/あるいは保存料、安定化剤、湿潤剤もしくは乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を制御するための塩および/または緩衝剤などのアジュバントを含有し得る。あるいは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、たとえば無菌的な発熱物質を含まない水で構成するためするための粉末形態であることができる。さらに、これらは他の治療上価値のある物質も含有し得る。組成物はそれぞれ慣用の混合、顆粒化またはコーティング方法に従って調製し、約0.1〜75%、好ましくは約1〜50%の活性成分を含有する。
【0134】
本発明の標的毒素組成物の徐放性の非経口配合物は、植込錠、油性注射剤、または粒子系として作製することができる。タンパク質送達系の幅広い概要には、本明細書中に参考として組み込まれているBanga,A.J.、THERAPEUTIC PEPTIDES AND PROTEINS:FORMULATION,PROCESSING,AND DELIVERY SYSTEMS、Technomic Publishing Company,Inc.、ペンシルベニア州Lancaster、(1995)を参照されたい。粒子系には、ミクロスフェア、微粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、およびナノ粒子が含まれる。マイクロカプセルは治療的タンパク質を中心コアとして含有する。ミクロスフェアでは、治療剤は粒子全体にわたって分散されている。約1μm未満の粒子、ミクロスフェア、およびマイクロカプセルは一般にそれぞれナノ粒子、ナノスフェア、およびナノカプセルと呼ばれる。毛細管は、ナノ粒子のみが静脈内投与されるように約5μmの直径を有する。微粒子は典型的には約100μmの直径であり、皮下または筋肉内投与する。たとえば、どちらも本明細書中に参考として組み込まれているKreuter J.、COLLOIDAL DRUG DELIVERY SYSTEMS、J.Kreuter編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク州New York、ページ219〜342(1994)ならびにTiceおよびTabibi、TREATISE ON CONTROLLED DRUG DELIVERY、A.Kydonieus編、Marcel Dekker,Inc.、ニューヨーク州New York、ページ315〜339(1992)を参照されたい。
【0135】
本発明の標的毒素組成物のイオン徐放性のためにポリマーを使用することができる。徐放性薬物送達で使用するための様々な分解性および非分解性ポリマーマトリックスが当分野で知られている(Langer R.、Accounts Chem.Res.、26:537〜542(1993))。たとえば、ブロックコポリマーpolaxamer 407は、低温では粘稠であるが可動性の液体として存在するが、体温では半固体のゲルを形成する。これは、組換えインターロイキン−2およびウレアーゼの配合および持続的送達に有効なビヒクルであることが示されている(Johnstonら、Pharm.Res.、9:425〜434(1992)、およびPecら、J.Parent.Sci.Tech.、44(2):58〜65(1990))。あるいは、ヒドロキシアパタイトがタンパク質の徐放性のマイクロキャリアとして使用されている(Ijntemaら、Int.J.Pharm.、112:215〜224(1994))。さらに別の態様では、リポソームが脂質カプセル化薬物の徐放性および薬物ターゲッティングに使用されている(Betageriら、LIPOSOME DRUG DELIVERY SYSTEMS、Technomic Publishing Co.,Inc.、ペンシルベニア州Lancaster(1993))。治療的タンパク質の徐放性送達の数々のさらなる系が知られている。たとえば、そのそれぞれが本明細書中に参考として組み込まれている、米国特許第5,055,303号、第5,188,837号、第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号、第4,957,735号および第5,019,369号、第5,055,303号、第5,514,670号、第5,413,797号、第5,268,164号、第5,004,697号、第4,902,505号、第5,506,206号、第5,271,961号、第5,254,342号ならびに第5,534,496号を参照されたい。
【0136】
経皮施用のために適した配合物には、担体を用いた有効量の本発明の組成物が含まれる。好ましい担体には、宿主の皮膚を通過することを援助するための、吸収性の薬理学的に許容される溶媒が含まれる。たとえば、経皮装置は、裏打ちメンバーと、組成物を任意選択で担体と共に含有するリザーバーと、任意選択で、調節されたかつ事前に決定された速度で長期にわたる期間の間、組成物を宿主の皮膚に送達するための速度調節障壁と、装置を皮膚に固定するための手段とを含む帯具の形態である。また、マトリックス経皮配合物も使用し得る。
【0137】
局所的施用、たとえば皮膚および眼への施用に適した配合物は、好ましくは、当分野で周知の水溶液、軟膏、クリームまたはゲルである。そのようなものは、可溶化剤、安定化剤、等張性増強剤、緩衝剤および保存料を含有し得る。
【0138】
経口投与には、医薬組成物または医薬品は、たとえば、薬学的に許容される賦形剤を用いて慣用の手段によって調製した錠剤またはカプセルの形態をとることができる。活性成分、すなわち本発明の組成物を以下のものと一緒に含む錠剤およびゼラチンカプセルが好ましい:(a)希釈剤または充填剤、たとえば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース(たとえば、エチルセルロース、結晶セルロース)、グリシン、ペクチン、ポリアクリレートおよび/またはリン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、(b)潤滑剤、たとえば、シリカ、タルカム、ステアリン酸、そのマグネシウムまたはカルシウム塩、ステアリン酸金属塩、コロイド状二酸化ケイ素、硬化植物油、コーンスターチ、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムおよび/またはポリエチレングリコールと、錠剤ではさらに(c)結合剤、たとえば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン糊、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドンおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロース、所望する場合は(d)崩壊剤、たとえば、デンプン(たとえば、ジャガイモデンプンもしくはナトリウムデンプン)、グリコレート、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または発泡混合物、(e)湿潤剤、たとえばラウリル硫酸ナトリウム、ならびに/あるいは(f)吸収剤、着色料、香料および甘味料。
【0139】
錠剤は、当分野で知られている方法に従ってフィルムコーティングまたは腸溶コーティングし得る。経口投与のための液体調製物は、たとえば、溶液、シロップ、もしくは懸濁液の形態をとることができ、または、使用前に水もしくは他の適切なビヒクルで構成するための乾燥生成物として提示することができる。そのような液体調製物は、薬学的に許容される添加剤、たとえば懸濁剤、たとえば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化食用脂、乳化剤、たとえばレシチンまたはアカシア、非水性ビヒクル、たとえば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分留植物油、および保存料、たとえばメチルもしくはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸またはソルビン酸を用いて、慣用の手段によって調製することができる。調製物は必要に応じて緩衝塩、香料、着色料、および/または甘味剤も含有することができる。所望する場合は、経口投与用の調製物を適切に形成して、活性組成物の徐放性を与えることができる。
【0140】
吸入による投与には、キメラタンパク質、好ましくは抗体および/または標的毒素は、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレー提示の形態で、適切な噴霧剤、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(tetrafluorethane)、二酸化炭素、または他の適切なガスを使用して、好都合に送達し得る。加圧エアロゾルの場合、計量された量を送達するための弁を提供することによって単位用量を決定することができる。吸入器または注入器で使用するための、たとえばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、キメラタンパク質、好ましくは抗体および/または標的毒素と、適切な粉末基材、たとえばラクトースまたはデンプンとの粉末混合物を含有させて配合することができる。
【0141】
また、組成物は、直腸組成物、たとえば坐薬または保留浣腸で、たとえば慣用の坐薬基剤、たとえばカカオ脂または他のグリセリドを含有させて配合することもできる。
【0142】
さらに、組成物はデポー調製物として配合することができる。そのような長期作用配合物は、植込み(たとえば皮下もしくは筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、たとえば、組成物は、適切なポリマーもしくは疎水性材料(たとえば許容される油中の乳濁液として)もしくはイオン交換樹脂を用いて、またはやや溶けにくい誘導体として、たとえばやや溶けにくい塩として配合することができる。
【0143】
所望する場合は、組成物は、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有することができるパックまたはディスペンサー装置で提示することができる。パックは、たとえば、金属またはプラスチック箔、たとえばブリスターパックを含むことができる。パックまたはディスペンサー装置には投与の指示を添付することができる。
【0144】
b.用量
本発明の一実施形態では、医薬組成物または医薬品は、癌などの疾患または悪性状態を予防、処置、または調節するために治療上有効な用量で患者に投与する。医薬組成物または医薬品は、患者において有効な治療的または診断的応答を誘発するために十分な量で患者に投与する。有効な治療的または診断的応答とは、疾患または悪性状態の症状または合併症を少なくとも部分的に停止させるまたは遅らせる応答である。これを達成するために十分な量が「治療上有効な用量」として定義される。
【0145】
投与するキメラタンパク質、好ましくは標的毒素、または組成物の用量は、温血動物(哺乳動物)の種、体重、年齢、個々の状態、処置する領域の表面積および投与形態に依存する。また、用量の大きさは、特定の対象における特定の化合物の投与に付随するすべての有害作用の存在、性質、および程度によっても決定される。約50〜70kgの哺乳動物に投与するための単位用量は約5〜500mgの活性成分を含有し得る。典型的には、本発明の化合物の用量は、所望の効果を達成するために十分な用量である。
【0146】
最適な投薬スケジュールは、対象の身体内のキメラタンパク質、好ましくはターゲッティングされる毒素の蓄積の測定から計算することができる。一般に、用量は体重1kgあたり1ng〜1,000mgであり、1日、1週間、1カ月、または1年に1回または複数回与え得る。当業者は最適な用量、投薬方法および反復率を容易に決定することができる。当業者は、当分野で知られており、本明細書中に開示されている確立されたプロトコルに従って、人間にキメラタンパク質、好ましくは標的毒素を投与するための最適な投薬を決定できるであろう。
【0147】
組成物の最適な用量、毒性、および治療上の有効性は、個々の組成物の相対的効力に応じて変動する場合があり、細胞培養物または実験動物における標準の薬学的手順によって、たとえばLD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定することによって、決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり比LD
50/ED
50として表すことができる。大きな治療指数を示す組成物が好ましい。毒性がある副作用を示す組成物を使用することができるが、正常細胞への潜在的な損傷を最小限にし、それによって副作用を低下させるために、そのような組成物を患部組織の部位へとターゲッティングする送達系を設計するには注意を払うべきである。
【0148】
たとえば動物研究(たとえば、げっ歯類およびサル)から得られたデータを使用して、ヒトで使用するための用量範囲を処方することができる。本発明の化合物の用量は、好ましくは、わずかな毒性のみまたは毒性なしでED
50が含まれる循環濃度の範囲内にある。用量は、用いる剤形および投与経路に応じてこの範囲内で変動することができる。本発明の方法で使用する任意の組成物について、治療上有効な用量は細胞培養アッセイから最初に推定することができる。用量は、細胞培養物中で決定されたIC
50(症状の最大半量阻害を達成する試験化合物の濃度)が含まれる循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて処方することができる。そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、たとえば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定することができる。一般に、キメラタンパク質、好ましくは標的毒素の用量当量は、典型的な対象で約1ng/kg〜100mg/kgである。
【0149】
静脈内投与のための本発明の典型的な標的毒素組成物は約0.1〜10mg/患者/日となろう。0.1から約100mgまで/患者/日の用量を使用し得る。投与可能な組成物を調製するための実際の方法は当業者に知られているまたは明らかであり、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、University of the Sciences in Philadelphia、Lippencott Williams&Wilkins(2005)などの出版物中により詳細に記載されている。
【0150】
本明細書中に記載の組成物の例示的な用量には、対象または試料の重量1キログラムあたりミリグラムまたはマイクログラム量の組成物が含まれる(たとえば、約1マイクログラム/キログラム〜約500ミリグラム/キログラム、約100マイクログラム/キログラム〜約5ミリグラム/キログラム、または約1マイクログラム/キログラム〜約50マイクログラム/キログラム)。さらに、適切な用量の組成物は達成する所望の効果に関する組成物の効力に依存することが理解されよう。これらの組成物のうちの1つまたは複数を哺乳動物に投与する場合、医師、獣医師、または研究者は、たとえば、まず比較的低い用量を処方し、続いて、適切な応答が得られるまで用量を増加させ得る。さらに、任意の特定の哺乳動物対象の具体的な用量レベルは、用いた具体的な組成物の活性、対象の年齢、体重、全体的な健康、性別、および食習慣、投与時間、投与経路、排泄速度、任意の薬物の組合せ、ならびに調節する発現または活性の度合を含めた様々な要因に依存することが理解されよう。
【0151】
本発明の一実施形態では、本発明のキメラタンパク質、好ましくは標的毒素を含む医薬組成物または医薬品は、たとえば、対象重量1kgあたり約1mgの化合物(1mg/kg)〜約1g/kgの範囲の1日用量で投与する。別の実施形態では、用量は、約5mg/kg〜約500mg/kgの範囲の用量である。さらに別の実施形態では、用量は約10mg/kg〜約250mg/kgである。別の実施形態では、用量は約25mg/kg〜約150mg/kgである。好ましい用量は約10mg/kgである。1日用量を1日1回投与するか、または部分用量に分割して複数用量、たとえば1日に2回、3回、もしくは4回で投与することができる。しかし、当業者には理解されるように、本明細書中に記載の組成物は様々な量で様々な時点に投与し得る。また、当業者には、それだけには限定されないが、疾患または悪性状態の重篤度、以前の処置、対象の全体的な健康および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含めた特定の要因が対象を有効に処置するために必要な用量および時間に影響を与え得ることも理解されよう。さらに、治療上有効な量の組成物を用いた対象の処置には、単一の処置が含まれることができるか、または、好ましくは一連の処置が含まれることができる。
【0152】
処置が成功した後、対象は、処置した疾患または悪性状態の再発を予防するために維持療法を受けることが望ましい場合がある。
【0153】
c.投与
本発明の組成物は治療処置のために投与することができる。治療的応用では、組成物を、癌などの疾患または悪性状態を患っている患者に、疾患およびその合併症を治癒または少なくとも部分的に停止させるために十分な量で投与する。これを達成するために十分な量は「治療上有効な用量」として定義される。この使用に有効な量は、疾患の重篤度および患者の健康の一般的状態に依存する。有効量の化合物とは、症状の自覚的な緩和、または臨床家もしくは他の有資格観察者によって注目される客観的に同定可能な改善のどちらかを提供するものである。
【0154】
有効量の決定は、特に本明細書中に提供した詳細な開示に鑑みて、十分に当業者の能力範囲内にある。一般に、効果的または有効な量の免疫コンジュゲートは、まず低用量または少量の免疫コンジュゲートを投与し、その後、処置した対象において最小限の毒性副作用または毒性副作用なしで所望の効果が観察されるまで、投与した用量または複数の用量を漸増的に増加させる、必要に応じて第2または第3の医薬品を追加することによって決定する。
【0155】
組成物の単一または複数投与は、患者によって要求および耐用される用量および頻度に応じて投与する。いずれにしても、組成物は、患者を有効に処置するために十分な量の本発明のタンパク質を提供すべきである。好ましくは、用量を1回投与するが、治療的結果が達成されるまで、または副作用により治療が正当に中断されるまでのどちらかまで、定期的に施用してもよい。一般に、用量は、患者に許容されない毒性を生じずに疾患の症状または兆候を処置または寛解させるために十分である。
【0156】
所望の治療効果を達成するために、組成物を複数日間、治療上有効な1日用量で投与し得る。したがって、対象において本明細書中に記載の疾患または悪性状態を処置するための組成物の治療上有効な投与は、3日間から2週間またはそれより長い範囲の期間の間続く、定期的な(たとえば毎日の)投与を必要とし得る。典型的には、組成物は、少なくとも連続した3日間、多くの場合は少なくとも連続した5日間、しばしば少なくとも10日間、場合によっては20、30、40またはそれより長い連続した日数の間投与する。連続した1日用量が治療上有効な用量を達成するために好ましい経路であるが、化合物または組成物を毎日投与しなくても、対象において組成物の治療上有効な濃度を維持するために十分な頻度で投与が繰り返される限りは、治療上有益な効果を達成することができる。たとえば、組成物を隔日、3日毎、または、より高い用量範囲が用いられ対象によって耐用される場合は、週に1回投与することができる。
【0157】
3.腫瘍成長を阻害する方法
本発明の組成物は、様々な方法において使用が見出される。たとえば、本発明のPE分子は、たとえばキメラ分子の一部として、(i)1つまたは複数の表面マーカーを保有する細胞においてアポトーシスを誘導すること、(ii)1つまたは複数の細胞表面マーカーを保有する細胞の望まない成長、過剰増殖または生存を阻害すること、(iii)癌などの状態を処置すること、および(iv)1つまたは複数の細胞表面マーカーを保有する細胞の存在によって引き起こされる疾患を発生した哺乳動物の治療を提供することにおいて使用が見出される。
【0158】
細胞表面マーカーとしてメソテリンを発現する任意の細胞または腫瘍細胞を使用して、本発明の方法を実施することができる。本発明の方法はin vitroまたはin vivoで実施することができる。細胞に言及する場合、この用語には細胞の集団、すなわち複数の細胞も含まれることが理解されよう。
【0159】
1つまたは複数の細胞表面マーカーを保有する細胞においてアポトーシスを誘導するための組成物の使用
アポトーシスは、多細胞生物の発生および恒常性のどちらにおいても中心的な役割を果たす。「アポトーシス」とはプログラム細胞死をいい、膜小疱形成(blobbing)、クロマチンの縮合および断片化、アポトーシス小体の形成ならびに陽性「TUNEL」(末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ媒介性UTPニック末端標識)染色パターンなどの特定の細胞特徴によって特徴づけられている。アポトーシスプロセスの後のステップは形質膜の分解であり、これはアポトーシス細胞を様々な色素(たとえばヨウ化プロピジウム)に対して漏出性にさせる。
【0160】
アポトーシスは、腫瘍壊死因子(TNF)受容体/リガンドのスーパーファミリーに属するいくつかの細胞死受容体とそのリガンドとの間の複数の相互作用からなる最終エフェクター機構の際に収束する、複数の独立したシグナル伝達経路によって誘導することができる。最も良好に特徴づけられた細胞死受容体は、CD95(「Fas」)、TNFR1(p55)、細胞死受容体3(DR3またはApo3/TRAMO)、DR4およびDR5(apo2−TRAIL−R2)である。アポトーシスの最終エフェクター機構は、カスパーゼと命名される一連のプロテイナーゼの活性化である。これらのカスパーゼの活性化は一連の生命維持細胞タンパク質の切断および細胞死をもたらす。
【0161】
本発明は、メソテリンを発現する細胞においてアポトーシスを誘導する方法を提供する。一態様では、細胞においてアポトーシスを誘導する方法は、細胞表面マーカーとしてメソテリンを発現する細胞を本発明のRITに曝露するまたは接触させるステップを含む。典型的には、細胞を有効量の免疫コンジュゲートに曝露または接触させ、接触がアポトーシスの誘導をもたらす。
【0162】
本発明の別の態様では、対象に本発明のRITを投与するステップを含む、その表面上にメソテリンを発現する腫瘍細胞がアポトーシスを受けるように誘導する方法を提供する。
【0163】
1つまたは複数の細胞表面マーカーを保有する細胞の成長、過剰増殖、または生存を阻害するための組成物の使用
本発明の1つの目的は、本発明の組成物を使用した癌の処置の改善された治療戦略を提供することである。本発明の一態様では、細胞の望まない成長、過剰増殖、または生存のうちの少なくとも1つを阻害する方法が提供されている。この方法は、表面マーカーとしてメソテリンを発現する細胞を、本明細書中に記載の有効量の本発明のPEと、たとえばキメラ分子の一部として接触させるステップを含み、接触させるステップは、細胞の望まない成長、過剰増殖、または生存のうちの少なくとも1つの阻害をもたらす。一実施形態では、この方法は、細胞が1つまたは複数の細胞表面マーカー、たとえば細胞表面受容体を発現するかどうかを決定するステップを含む。典型的には、細胞を有効量の免疫コンジュゲートに曝露または接触させ、接触させることで、細胞の望まない成長、過剰増殖、または生存のうちの少なくとも1つの阻害がもたらされる。
【0164】
したがって、本発明の一態様では、メソテリンを保有する細胞の集団の成長を阻害する方法が提供されている。好ましい実施形態では、この方法は、(a)細胞の集団を本発明によるキメラタンパク質と接触させるステップを含む。多くの腫瘍は転移を形成する。したがって、本発明の別の態様では、本発明の組成物を転移の形成を予防するために使用する。この方法は、腫瘍細胞に本発明の組成物を投与するステップを含み、投与することで転移の予防がもたらされる。好ましい実施形態では、組成物は細胞表面抗原に対する抗体を含む標的毒素と本発明のPEとを含む。典型的には、細胞を有効量の免疫コンジュゲートに曝露または接触させ、接触させることで転移の予防がもたらされる。その成長、拡大および/または進行を阻害することができる例示的な癌には、卵巣癌、中皮腫、非小細胞肺癌、肺腺癌および膵癌が含まれる。
【0165】
癌を処置するための組成物の使用
本発明の方法はin vitroおよびin vivoで実施することができる。したがって、本発明の別の態様では、癌性状態を患っている対象を処置する方法が提供されている。この方法は、癌を診断された対象に、本明細書中に記載の治療上有効な量の本発明のRITを投与するステップを含み、癌性状態は1つまたは複数の細胞表面マーカーを発現する細胞の望まない成長または増殖によって特徴づけられており、投与するステップは対象の処置をもたらす。典型的には、細胞を有効量の免疫毒素に曝露または接触させ、接触させることで対象の処置がもたらされる。
【0166】
本発明の一実施形態では、本発明のPEを含む免疫毒素を使用して、メソテリン−CA125の結合相互作用によって媒介される癌を患っている対象を処置する。その成長、拡大および/または進行が少なくとも部分的にCA125/メソテリン結合によって媒介される例示的な癌には、卵巣癌、中皮腫、非小細胞肺癌、肺腺癌および膵癌が含まれる。
【0167】
癌を処置する方法は、任意選択で以下のステップのうちの1つまたは複数を含み得る:個体から組織または体液の生体試料を得るステップ、生体試料を表面マーカーに向けられた抗体と接触させることによって、生体試料をメソテリンの発現についてスクリーニングする、または、表面マーカーmRNAを検出することによって、生体試料を表面マーカーポリヌクレオチドの発現についてスクリーニングするステップ。これは、当分野で知られている標準の技術、たとえば、ウエスタンブロッティング、ノーザンブロッティングまたはPCRを使用して行うことができる。
【0168】
1つまたは複数の細胞表面マーカーを保有する細胞の存在によって引き起こされる疾患を発生した対象を処置するための組成物の使用
また、メソテリンを優先的に保有するまたは過剰発現する細胞の存在または異常な増殖によって引き起こされる疾患を発生した哺乳動物の治療をもたらす方法も提供されている。好ましい実施形態では、この方法は、前記哺乳動物に本発明のRITを投与するステップが含まれる。典型的には、細胞を有効量の免疫毒素に曝露または接触させ、接触させることで対象の処置がもたらされる。
【0169】
別の実施形態では、本発明は、本発明のRITを使用してin vitroまたはex vivoで標的細胞を排除することを提供する。たとえば、本発明のRITを含むキメラ分子を使用して、標的細胞を培養中の細胞集団から一掃することができる。したがって、たとえば、メソテリンを発現する癌に罹患している患者から培養した細胞は、培養物を本明細書中に記載のメソテリンに向けられたキメラ分子と接触させることによって癌細胞を一掃することができる。
【0170】
一部の例では、標的細胞が生体試料内に含有され得る。本明細書中で使用する「生体試料」とは、標的細胞および非標的細胞を含有する生体組織または体液の試料である。そのような試料には、それだけには限定されないが、生検からの組織、血液、および血液細胞(たとえば白血球)が含まれる。生体試料は、典型的には多細胞性の真核生物、好ましくはラット、マウス、ウシ、イヌ、モルモット、またはウサギなどの哺乳動物、より好ましくはマカク、チンパンジー、またはヒトなどの霊長類から得る。最も好ましくは、試料はヒトに由来する。
【0171】
本発明のRITを用いた処置に対する応答を監視する方法
本発明は、本発明のRITで処置することができる癌を患っているまたはそれに罹りやすい患者において、腫瘍成長の阻害を検出する方法を提供する。この方法は、本発明のRITを使用して患者に投与している処置過程を監視するために特に有用である。この方法は、症候性患者に対する治療処置および無症候性患者に対する予防的処置のどちらを監視するためにも使用することができる。
【0172】
監視方法は、本発明のRITの用量を投与する前の患者における腫瘍量のベースライン値を決定し、これを処置後の腫瘍量の値または処置を受けていない患者における腫瘍量と比較することを伴う。
【0173】
腫瘍量の値の有意な減少(すなわち、そのような測定値の平均からの1標準偏差として表す、同じ試料の反復測定における典型的な実験誤差限界より大きなもの)は、陽性の処置結果を示す(すなわち、本発明のRITの投与が腫瘍の成長および/または転移の進行を遮断したこと)。
【0174】
他の方法では、腫瘍量の対照値(すなわち平均および標準偏差)を対照集団または正常集団(たとえば腫瘍量=ゼロ)について決定する。典型的には、対照集団中の個体は以前に処置を受けていない。その後、本発明のRITを投与した後の患者における腫瘍量の測定値を対照値と比較する。対照値に対する腫瘍量の有意な減少(たとえば平均から1標準偏差より大きなもの)は、陽性の処置結果を示す。有意な減少または増加の欠如は陰性の処置結果を示す。
【0175】
他の方法では、腫瘍量の対照値(たとえば平均および標準偏差)は、本明細書中に記載の本発明のRITのレジメンを、たとえばキメラ分子の一部として受ける処置を受けた個体の対照集団から決定する。患者における腫瘍量の測定値を対照値と比較する。患者における測定レベルに対照値から有意差(たとえば1標準偏差より大きなもの)がない場合、処置を中断することができる。患者における腫瘍量レベルが対照値よりも有意に高い場合、薬剤の投与の継続が正当となる。
【0176】
他の方法では、現在処置を受けていないが以前に処置過程を受けた患者を腫瘍量について監視して、処置の再開が必要であるかどうかを決定する。患者における腫瘍量の測定値を、患者において以前の処置過程後に以前達成された腫瘍量の値と比較することができる。以前の測定値に対する腫瘍量の有意な増加(すなわち、同じ試料の反復測定における典型的な誤差限界より大きなもの)は、処置を再開することができる指標である。あるいは、患者において測定された値を、処置過程を受けた後に患者の集団で決定された対照値(平均+標準偏差)と比較することができる。あるいは、患者における測定値を、疾患の症状がないままの、予防的処置をした患者の集団、または疾患特徴の寛解を示す、治療的処置した患者の集団における対照値と比較することができる。これらすべての事例において、対照レベルに対する腫瘍量の増加(すなわち、標準偏差より大きなもの)は、患者において処置を再開するべきことの指標である。
【0177】
分析用の組織試料は、典型的には患者からの血液、血漿、血清、粘液、組織生検、腫瘍、腹水または脳脊髄液である。試料を新形成の指標について分析することができる。新形成または腫瘍量は、当分野で知られている任意の方法、たとえば、有資格の病理学者による生検の視覚的観察、または他の可視化技法、たとえば、X線撮影、超音波、磁気共鳴画像法(MRI)を使用して検出することができる。
【0178】
キット、容器、装置、およびシステム
上述の診断、研究、および治療の応用で使用するために、キットおよびシステムも本発明によって提供されている。本発明のキットは、本発明のRITを、たとえばキメラ分子の一部として含む。さらに、キットおよびシステムには、本発明の方法を実施するための指示(すなわちプロトコル)を含有する指示資料が含まれ得る。指示は様々な形態で対象キット中に存在していてよく、そのうちの1つまたは複数がキット中に存在していてよい。指示資料は典型的には書面または印刷物を含むが、それだけには限定されない。そのような指示を保存し、それを最終使用者に伝達することができる任意の媒体が本発明によって企図される。そのような媒体には、それだけには限定されないが、電子記憶媒体(たとえば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学的媒体(たとえばCD ROM)などが含まれる。そのような媒体には、そのような指示資料を提供するインターネットサイトへのアドレスが含まれ得る。
【0179】
キットおよびシステムの意図する使用者ならびに使用者の特定の要求に応じて、多種多様なキット、システム、および組成物を本発明に従って調製することができる。
【0180】
たとえば、経口、経膣、直腸、経皮、または注射用の用量(たとえば、筋肉内、静脈内、もしくは皮下注射用)における、単位用量の活性組成物を有するキットが提供されている。そのようなキットの中には、単位用量を含有する容器に加えて、疾患または悪性状態の処置における組成物の使用および付随する利点を記載する情報添付文書が存在する。適切な活性組成物および単位用量は本明細書中に上述したものである。
【0181】
前述の発明は明瞭性および理解のために図解および実施例によってある程度詳述されているが、当業者には、本発明の教示に鑑みて、必ずしも本発明の精神および範囲から逸脱せずに特定の変形、変化、改変および均等物置換をそれに行い得ることが容易に明らかであろう。その結果、本明細書中に記載の実施形態は様々な改変、変化などを受ける場合があり、本発明の範囲は、それに添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ決定される。当業者には、本質的に同様の結果を得るために変化、変更または改変させることができる様々な重大でないパラメータが容易に理解されるであろう。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書中で使用する用語は特定の実施形態を説明することのみが目的であり、限定することを意図しないことも理解されよう。
【0182】
本発明の要素のそれぞれは、複数の実施形態を含有するものとして本明細書中に記載されているが、別段に指摘しない限りは、本発明の所与の要素の実施形態のそれぞれを本発明の他の要素の実施形態のそれぞれと共に使用することができ、それぞれのそのような使用が本発明の明確な実施形態を形成することを意図することを理解されたい。
【0183】
本明細書中で引用する、GenBankデータベース配列の受託番号を含めた、引用した特許、特許出願、および科学文献は、それぞれの個々の出版物、特許または特許出願が具体的かつ個々に参考として組み込まれていると示されている場合と同様に、その全体で本明細書中に参考として組み込まれている。本明細書中で引用した任意の参考文献と本明細書の具体的な教示との間に矛盾がある場合はすべて、後者が優位であるように解決すべきである。同様に、単語または語句の当分野で理解されている定義と本明細書中で具体的に教示されている単語または語句の定義との間に矛盾がある場合はすべて、後者が優位であるように解決すべきである。
【0184】
上記開示から理解できるように、本発明は幅広い応用を有する。
【0185】
本発明は、例示的のみであり、いかなる様式でも本発明の定義および範囲を限定することを意図しない、以下の実施例によってさらに例示されている。
【実施例】
【0186】
以下の実施例は、特許請求した発明を限定するためではなく、それを例示するために提供する。
【0187】
タンパク質
SS1P(SS1(dsFv)−PE38)およびSS1Pに由来するすべての突然変異体は、大腸菌(Escherichia coli)BL21(λDE3)中でSS1(VH)−PEおよびSS1(V
L)のベクターから発現させ、続いて記載のように再折り畳みおよび精製を行った(Pastan I、Beers R、およびBera TK、Methods Mol Biol.、248:503〜18(2004))。SS1PのストックはAdvanced BioScience Laboratories,Inc.(メリーランド州Kensington)によって調製された。すべての他のRITは分子生物学研究所(Laboratory of Molecular Biology)、国立癌研究所(メリーランド州Bethesda)で調製された。SS1P中の突然変異は、Quikchange部位特異的突然変異誘発(Stratagene、カリフォルニア州La Jolla)を使用して、Lofstrand Labs Limited(メリーランド州Gaithersburg)からのプライマーを用いて作製した。
【0188】
細胞系
様々なメソテリン陽性のヒト由来の細胞系をこの研究で使用した。L55肺腺癌およびM30中皮腫細胞系はSteven Albelda博士、ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)(ペンシルベニア州Philadelphia)によって提供された。HAY中皮腫細胞系はステーリン癌研究財団(Stehlin Foundation for Cancer Research)(テキサス州Houston)によって提供された。OVCAR−8およびA1847卵巣癌細胞系は、それぞれ国立癌研究所(メリーランド州Bethesda)の小林久隆博士およびS.Aaronson博士によって提供された。NCI−H322M肺腺癌細胞系は国立癌研究所(メリーランド州Bethesda)のMitchell Ho博士から入手した。KB31細胞系はヒト表皮癌KB細胞系のサブクローンである(Akiyama Sら、Somat Cell Mol Genet.、11(2):117〜26(1985))。細胞系A431/K5は、ヒトメソテリンを形質移入させ(Chowdhury PSら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、95:669〜674(1998))、ダルベッコ改変必須培地(10%のFBS、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、100Uのペニシリン、100μgのストレプトマイシン、および750μg/mlのG−418(ジェネティシン)を添加したDMEM)中で成長させた、A431類表皮癌細胞系の誘導体である。別段に指定しない限りは、すべての細胞系は、37℃で、5%のCO
2を用いて、10%のFBS、2mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、100Uのペニシリン、および100μgのストレプトマイシン(Invitrogen Corporation、カリフォルニア州Carlsbad)を添加したRPMI−1640培地中で成長させた。
【0189】
細胞毒性アッセイ
免疫毒素で処理した細胞系の生存度を、細胞計数キット−8 WST−8アッセイ(Dojindo Molecular Technologies,Inc.、メリーランド州Gaithersburg)を使用して、本質的に技術マニュアルに記載されているように測定した。手短に述べると、5,000〜10,000個の細胞/ウェルを96ウェルプレートにプレートし、付着させ、様々な濃度のRITと共に、72時間、0.2mlの最終体積でインキュベーションし、その後、10μlのCCK−8試薬をそれぞれのウェルに加えた。450nmでの最大吸光度を有するウェルが約1ODの値に達するまで、プレートを37℃でインキュベーションした。値をシクロヘキサミド(10μg/ml)と緩衝液(PBS中に0.2%のヒト血清アルブミン)対照との間で正規化し、GraphPad PRISMプログラムを使用して勾配変化を有する標準の4−パラメータS字方程式に当てはめて、50%の細胞死(EC
50)が存在していた免疫毒素の濃度を得た。
【0190】
中皮腫を有する患者からの細胞の生存度のアッセイを記載のようにアッセイした。手短に述べると、中皮腫を有する患者の胸膜液または腹水から細胞を入手し、5×10
4個の細胞/ウェルの密度で、24ウェルプレート中に、陰性対照として様々な濃度のRIT SS1P、SS1−LR、BL22(抗CD22/PE38)、および陽性対照としてHB21(抗トランスフェリン受容体/PE38)と共に播種した。細胞を96時間インキュベーションし、固定し、クリスタルバイオレット色素で染色した。それぞれのウェルの色強度は、Versamaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Inc.、カリフォルニア州Sunnyvale)によって595nmの波長で決定した。それぞれの値を3つ組で決定した。ANOVAによる生じたデータの統計分析は、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc.、カリフォルニア州La Jolla)を使用して行った。
【0191】
マウス異種移植抗腫瘍アッセイ
以前に記載のように、24匹の雌ヌードマウスにA431/K5細胞を0日目に側腹部にて皮下注射した(Zhang Y、Clin Cancer Res.、12(15):4695〜701(2006))。次の6週間の間、腫瘍体積をノギスによって定期的に測定した。移植の5日後に平均腫瘍サイズが約100mm
3に達した際に、マウスを4つの6匹の群に分け、PBS中に0.2mlの0.2%のMSA(ビヒクル単独)、あるいはSS1P(0.3mg/kg)またはSS1−LR(6.0もしくは15mg/kg)のいずれかを含有するビヒクルをQOD×3で注射した。その腫瘍が1000mm
3を超えた場合、または実験の終わりにマウスを安楽死させた。動物は、国立癌研究所の動物実験委員会によって承認された国立衛生研究所の指針に従って扱った。
【0192】
RIT内部移行アッセイ
A431/K5細胞(10
6個/ウェル)を6ウェルプレート(10cm
2/細胞)にプレートし、終夜放置してインキュベートした。翌日、それぞれのウェル中の培地を、1μgの評価するRITを含有する1mlの新鮮な培地で交換した。細胞を様々な時間間隔の間37℃でインキュベーションし、その後、ウェルを2mlの冷PBS、1mlの冷剥離用緩衝液(0.2Mのグリシン中に1mg/mlのBSA、pH2.5)、および再度2mlの冷PBSで手短にすすいだ。続いて、細胞を、200μlのプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma、モンタナ州St.Louis)を含有するRIPA緩衝液(150mMのNaCl、1mMのEDTA、1%のNP−40、0.5%のデオキシコール酸Na、0.1%のSDS、50mMのトリス−Cl、pH8.0)で溶解した。試料は、ウサギ抗PE38ポリクローナル抗体を使用した非還元性トリス−グリシンSDS−PAGEウエスタンブロットによって分析した。
【0193】
SS1−LRの変動する細胞毒性
SS1−LRを用いた初期実験により、これが選ばれたメソテリン発現細胞系に対してSS1Pと比較して大きく変動する細胞毒性を有することが実証され、4倍を超える高い活性から20倍低い活性の範囲であった。しかし、この一般的な傾向は、より低い活性の分子に向かうものであった。SS1−LRは、試験した8つの細胞系のうちの5つに対してSS1Pと比較して20%を超える低い活性を有しており、単一の細胞系に対して20%を超える高い活性しか有していなかった。この傾向は、典型的には細胞系および患者細胞のどちらに対しても同様または増加した細胞毒性を実証したLR分子の抗CD22バージョンであるHA22−LRとは著しく異なっている(Weldon JE、Blood.、113(16):3792〜800(2009))。これらの観察は、メソテリンを発現する上皮細胞とCD22を発現するB細胞とのPEの中毒経路において内因的な相違が存在することを示している。
【0194】
in vitro SS1−LR活性
免疫毒素SS1P(
図1A)はPE38と接合した、ジスルフィドで安定化された二本鎖抗メソテリンSS1 Fvからなる(Chowdhury PSら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、95:669〜674(1998)、Chowdhury PSおよびPastan I.、Nat Biotechnol.、17:568〜572(1999)、Reiter YおよびPastan I.、Clin.Cancer Res.、2:245〜252(1996))。本発明者らはLR突然変異(Weldon JE、Blood.、113(16):3792〜800(2009)、PEΔ251−273およびΔ285−394)をSS1P内に導入してSS1−LR変異体(
図1B)を作製し、いくつかのメソテリン発現細胞系に対するその活性をin vitroでSS1Pと比較して評価した。
図2は8つの異なる細胞系からの代表的な細胞毒性アッセイを示す。
【0195】
肺癌細胞系L55(A)はどちらのRITに対しても同様の感度を示した。対照的に、肺癌系統NCI−H322M(Pal LHら、Nat Med.、2(3):350〜3(1996))はSS1PよりもSS1−LRに対して約3倍低い感度であった。中皮腫細胞系HAY(G)はSS1PよりもSS1−LRに対して4倍を超える高い感度であったが、M30中皮腫系統(D)はSS−1 P−LRに対して約20%低い感度であった。メソテリンを安定に形質移入させた上皮系統であるA431/K5細胞系(H)(Chowdhury PSら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、95:669〜674(1998)、Chang KおよびPastan I.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、93、136〜140(1996))は、SS1Pと比較してSS1−LRに対して約4倍低い感度であった。さらに、子宮頸癌系統KB31(C)はSS1Pによって死滅されやすいが、そのEC
50はSS1−LRよりも20倍低い。また、卵巣癌細胞系A1847(F)およびOVCAR−8(E)のSS1−LRに対する感受性も評価した。SS1−LRはA1847系統に対してSS1Pに類似したEC
50を示したが、OVCAR−8系統に対しては2倍低下したEC
50を示した。表Iはこのデータを要約しており、SS1PおよびSS1−LRを比較する相対的EC
50値を提示する。SS1Pと比較したSS1−LRの活性は様々な細胞系間で幅広く変動する。
【0196】
データを分析する際、本発明者らは、SS1−LRが、評価した多くの細胞系(NCI−H322M、KB31、M30、OVCAR−8、およびA1847)の生存度を10μg/mlのシクロヘキサミドで処理した細胞によって定義される対照レベルまで完全に低下させることに失敗したことに注目した。このことは、細胞の部分集団がSS1Pに対して感受性であるが、SS1−LRに対して耐性であり得ることを示唆していた。本発明者らは、OVCAR−8およびA1847細胞を4日間、10ng/mlのSS1−LRと共にインキュベートし、生存細胞がある場合はそれを培養することを試みることによって、この可能性を評価した。RIT処理後にさらなる細胞成長は観察されなかった。本発明者らは、本発明者らのアッセイによって完全な代謝阻害は得られなかったが、SS1−LRに耐性のあるこれらの細胞系の部分集団は存在しないことを結論づけた。
【0197】
in vivo SS1−LR活性
次に、本発明者らは、マウス異種移植腫瘍モデルを使用してSS1−LRの有効性を評価した。in vitroで試験した細胞系のうち、A431/K5のみが本発明者らの異種移植モデル中で一貫して成長した。平均約100mm
3のA431/K5異種移植腫瘍を有するヌードマウスを、6.0または15mg/kgの用量のSS1−LRを用いてQOD×3(隔日で3回の用量)で静脈内処置した。比較のために、さらなる群を、緩衝液(PBS中に0.2%のHSA)またはこの投薬スケジュール下におけるSS1Pの最大耐量である0.3mg/kgのSS1Pのどちらかを用いてQOD×3で静脈内処置した。それぞれのマウスの腫瘍サイズを移植後22日間の間、定期的に測定した(
図3)。
【0198】
PBSで処置したマウスの腫瘍は、移植後14日目に1000mm
3を超える平均サイズまで迅速に成長した。5、7および9日目に0.3mg/kgのSS1Pで処置したマウスは、平均腫瘍サイズを12日目に最小で約53mm
3とした腫瘍回帰を示した。20日目までにすべての腫瘍が迅速な成長を再開していた。6.0mg/kgのSS1−LRの用量は、0.3mg/kgのSS1Pよりもわずかに効力が低かった。6.0mg/kgのSS1−LRで処置したマウスにおける腫瘍は7および9日目に平均最小サイズ92mm
3に達し、18日目までにすべてが迅速な成長を再開した。15mg/kgのSS1−LRの用量は0.3mg/kgのSS1Pよりも有意に良好な抗腫瘍活性を実証した。15mg/kgのSS1−LRで処置したマウスにおける腫瘍は平均最小サイズ17mm
3まで退行した。22日目に6つの腫瘍のうちの4つが成長を再開し、1つの腫瘍が18日目から10mm
3で変化なしであり、1つの腫瘍が15日目後に検出不可能であった。このモデルにおいてSS1−LRはSS1Pよりも約20倍低い活性であるが、その低い非特異的毒性により、高用量でマウスを処置し、優れた抗腫瘍効果を達成することが可能となる。
【0199】
内部移行されたRITのプロセシング
SS1PとSS1−LRとの間の細胞内輸送およびプロセシングの相違が、2つのRIT間で観察された活性の変動を説明している可能性がある。この仮説を試験するために、本発明者らはA431/K5細胞中でのSS1PおよびSS1−LRの内部移行およびプロセシングをウエスタンブロットによって検査した(
図4)。A431/K5細胞は高レベルのメソテリンを発現し(約106部位/細胞)、可視化のために大量のRITを内部移行させるため、これを選択した。本発明者らは、1μg/mlのSS1PまたはSS1−LRのどちらかを用いた様々な時間間隔での連続したインキュベーションで処理したA431/K5細胞の全細胞溶解液に対して非還元性SDS−PAGEウエスタンブロットを行った。
図4AはSS1P処理の時間経過を示す一方で、
図4BはSS1−LR処理の時間経過を示す。
【0200】
予想通り、SS1PまたはSS1−LRで処理したA431/K5細胞は、2つのRITの完全長型(それぞれ62kDaおよび50kDa)ならびに還元型(それぞれ51kDaおよび39kDa)の指標である位置に突出したバンドを有する。どちらのRITもFv領域中に3つのジスルフィド結合を含有しており、これらはVHおよびVL断片中のそれぞれ1つの鎖内結合、ならびにV
HとV
Lとの間の1つの鎖間結合である(
図1)。SS1Pは、ドメインII中、フューリン切断部位に隣接するシステイン残基(Cys
265およびCys
287)間にさらなるジスルフィド結合を含有する。SS1P中のさらなるジスルフィド結合の酸化状態はSDS−PAGEにおけるSS1Pの遊走を変化させ、観察された二重線を引き起こすと考えられる(
図4A、還元)。これらのバンドは還元剤で処理した際に単一バンドへと崩壊する(データ示さず)。
【0201】
また、本発明者らは、SS1PおよびSS1−LRのC末端フューリン切断断片(それぞれ34kDaおよび24kDa)に対応するバンドも観察されると予想した。SS1Pで処理した細胞からの溶解物は34kDa付近にフューリン切断断片の指標である突出したバンドを示す。対照的に、SS1−LRで処理した細胞からの溶解物は24kDaに対応する弱いバンドしか示さない。それぞれのバンドの強度はImageQuantソフトウェア(GE Healthcare)を用いて定量した。
図4Cは、それぞれの時点におけるフューリンで切断された断片の総バンド強度のパーセントを示す。フューリンで切断されたSS1Pは、すべてのバンドの強度の合計の30%をわずかに超える最大に達する一方で、SS1−LRは合計強度の6%の最大に達する。それぞれの時点における切断されたSS1Pと切断されたSS1−LRの割合との間には5倍を超える差異が存在し、これは、SS1−LRがSS1Pよりも低い効率でフューリンによってプロセシングされている可能性を示唆している。
【0202】
柔軟なリンカー突然変異体
本発明者らのデータはSS1−LRがSS1Pよりも低い効率でフューリンによってプロセシングされることを示唆しているため、本発明者らは、そのフューリン切断効率を増加させることによってSS1−LRの活性を増強させることを試みた。フューリン切断部位への変化が、細胞内フューリン切断の効率を改善することによってSS1−LRの活性を増強させることができるかどうかを探索するために、本発明者らはいくつかの突然変異体を設計した。本発明者らの戦略は、短い構造化されていないGly/Serリンカーを付加することによってフューリン切断部位の柔軟性、したがってフューリンへのその接近可能性を増加させることであった。SS1−LR/GGS(
図1B)には11個の残基のフューリン切断部位のC末端にGly−Gly−Serリンカーが含まれ、NCIH322MおよびKB31細胞系のどちらに対しても増強された活性を有する(
図5)。リンカーの長さの増加(SS1−LR/GGS×2、
図1B)は活性をさらに増強させない(データ示さず)。また、さらなるリンカー領域を用いたフューリン切断部位の重複(SS1−2×フューリン、
図1B)も、SS1−LR/GGSを超えて活性を増強させることに失敗した(データ示さず)。SS1−LRとは異なり、伸長させたリンカー突然変異体はすべて、シクロヘキサミド対照と同等の完全な代謝阻害を実証する。さらに、フューリン切断の重要性を確認するために、本発明者らは、フューリンによるこの部位の切断を不可能にするR279G突然変異が含まれる突然変異体SS1−LR/GGS R279Gを調製した。この突然変異体はNCI−H322MおよびKB31細胞のどちらに対しても完全に不活性であり(
図5)、活性におけるフューリン切断の必要性を実証している。
【0203】
その後、本発明者らは、GGSリンカーがSS1−LRのフューリン切断効率を増強させたという本発明者らの仮説を試験した。しかし、SS1−LR/GGSで処理したA431/K5細胞のウエスタンブロット分析は、全RITに対する切断されたものの割合の改善を示さなかった(データ示さず)。同様に、SS1−LR/GGSのin vitroフューリン切断もフューリン切断速度の改善を示さなかった(データ示さず)。これらの結果は、SS1−LR/GGSの改善された細胞毒性はフューリン切断の増強が原因のものではなく、その代わりに異なる機構の結果であることを示している。可能性のある説明には、細胞内輸送中の毒素の転位の増強が含まれる。
【0204】
患者細胞に対する活性
この研究の継続中に、既知のB細胞エピトープを排除することによってRITで処置した患者においてPEの免疫原性を低下させるために、ドメインIII中の一連の8個の点突然変異を設計した(Onda Mら、発表のためにPNASに提出)。これらの突然変異(D406A、R432G、R467A、R490A、R513A、E548S、Q592A、およびK590S)はRITの活性に影響を与えないが、その代わりにタンパク質の免疫原性を低下させる。本発明者らはこれら8個の突然変異をSS1−LR/GGS内に取り込ませ、SS1−LR/GGS/8Mと呼ばれる新しい変異体を作製し、その細胞毒性を、中皮腫を有する患者の胸膜液または腹水から採取した初代細胞に対して試験した。患者から採取した体液は細胞の混合物を含有しており、そのすべては悪性ではなく、これらはメソテリンを一様に発現しない。したがって、アッセイは相対的活性の良好な評価を提供するが、これは絶対的細胞毒性の概算でしかない。細胞を初期継代において様々な濃度のSS1PまたはSS1−LR/GGS/8Mで処理し、記載のように生存度を4日後にクリスタルバイオレットアッセイによって評価した。SS1Pに対する応答について評価したいくつかの患者細胞のうち、2つ(NCI−M−02およびNCI−M−03)が処理に対する良好な応答を示した(100ng/mlの用量レベルで生存度の>65%の減少)。本発明者らは、これら2つの集団に対するSS1P−LR/GGS/8Mの活性を評価し、SS1Pの活性と比較した。データを
図6に未処置の対照値の小数値として提示する。
【0205】
患者細胞NCI−M−02およびNCI−M−03はどちらもSS1PまたはSS1−LR/GGS/8Mのどちらを用いた処理に対しても感受性があり、100ng/ml以下の用量で未処置の対照と比較して60%を超える生存度の減少を示した。NCI−M−02およびNCI−M−03は1.0および10ng/mlの用量レベルのSS1−LR/GGS/8Mに特に感受性があり、これらの濃度のSS1Pと比較した場合に有意により高い細胞毒性(cytoxicity)が実証された(p<0.05)。また、対照として、患者細胞をRIT BL22およびHB21でも処置した(データ示さず)。B細胞特異的マーカーCD22を標的とするBL22は、100ng/mlの用量でどちらの細胞集団の生存度にも影響を与えなかった。遍在性のトランスフェリン受容体を標的とし、ほぼすべての細胞に対して非常に活性であることが知られているHB21は、10ng/mlの用量でどちらの細胞系の生存度もほぼ90%だけ低下させた。全体的に、データは、SS1−LR/GGS/8Mが2つの異なる患者細胞集団に対してSS1Pと同様またはそれより良好な細胞毒性を有していたことを示す。本発明者らは、2つの抗メソテリン免疫毒素は、同一の挙動ではないが匹敵する細胞毒性活性を有すると結論づける。
【0206】
実施例2.
さらに、改善された治療特性を有するSS1Pの変異体であるSS1−LR/GGS/8Mの構築、評価および対比に関する拡張報告。上述のように、SS1−LR/GGS/8Mは、RITを改善することが以前に示されている突然変異、およびその活性を増強させる新しい突然変異を取り込んでいる。SS1−LRは、11個の残基のPEフューリン切断部位によってSS1 Fvと接合したPEの触媒断片を含有するSS1Pの切断された変異体である。SS1−LRの細胞毒性を7つの細胞系で評価し、SS1Pよりも実質的に低いことが見出された。培養細胞におけるSS1−LRのさらなる分析により、中毒経路中のフューリンによるプロセシングが乏しかったことが示された。フューリン切断を改善するために、本発明者らは3個の残基のリンカーをSS1−LR内に導入し、SS1−LR/GGSを作製した。SS1−LR/GGSは、細胞系に対する活性が有意により高かったが、フューリン切断の増強を示さなかった。本発明者らは、B細胞エピトープを排除することによってRITの免疫原性を減少させることが示されている8個の点突然変異をSS1−LR/GGSの触媒断片内に導入した。この新しいRIT、SS1−LR/GGS/8Mは、優れた抗腫瘍活性、げっ歯類における低い非特異的毒性、および抗SS1Pヒト血清との反応性の低下を本明細書中で示す。さらに、中皮腫を有する患者からの初代細胞は、SS1Pと比較してSS1−LR/GGS/8Mに対する応答の増強を示す。SS1−LR/GGS/8Mは、その低い抗原性、低い非特異的毒性、および高い活性が原因で臨床開発の優れた治療候補である。
【0207】
いくつかのメソテリン陽性のヒト由来の細胞系をこの研究で使用した。これらの細胞は、一般に、実施例1中に提供したように供給され、成長させた。
【0208】
細胞毒性アッセイ
免疫毒素で処理した細胞系の生存度を、細胞計数キット−8 WST−8アッセイ(Dojindo Molecular Technologies,Inc.、メリーランド州Gaithersburg)を使用して測定した。細胞(2,000個の細胞/ウェル)を96ウェルプレートにプレートし、終夜放置して接着させ、様々な濃度のRITと共に、72時間、0.2mlの最終体積でインキュベーションした。インキュベーション期間の終わりに、10μlのCCK−8試薬をそれぞれのウェルに加え、450nmでの最大吸光度を有するウェルが約1ODの値に達するまで、プレートを37℃でインキュベーションした。値を、シクロヘキサミド(10μg/ml)および0.2%のヒト血清アルブミン(HSA)を含有する緩衝液(CaおよびMgを含まないダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS、Quality Biological,Inc.、メリーランド州Gaithersburg))の対照の間で正規化し、その後、GraphPad PRISMソフトウェア(GraphPad Software,Inc.、カリフォルニア州La Jolla)を使用して、プラトーの勾配変化、ベースライン、およびヒル勾配を有するS字方程式に当てはめた。続いて、方程式を使用して、細胞生存度を50%のレベルまで低下させたRITの濃度(EC
50)を内挿した。
【0209】
本質的に記載されているように、中皮腫を有する患者からの細胞を培養し、SS1PおよびSS1−LR/GGS/8Mに対するその応答について評価した(Xiang Xら、PLoS One、2011、6:e14640)。D−PBSおよび10ng/mlのHB21(抗トランスフェリン受容体/PE40)を細胞死の陰性および陽性対照として使用した。それぞれの条件を3つ組で評価した。ANOVAによる生じたデータの統計分析は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して行った。
【0210】
マウス異種移植抗腫瘍アッセイ
28匹の雌ヌードマウスに、0.2mlのRPMI中の5×10
6個のL55細胞を、4mg/mlのmatrigel(BD Biosciences、カリフォルニア州San Jose)と共に、0日目に側腹部にて皮下注射した。次の30日間の間、腫瘍体積をノギスによって定期的に測定した。移植後の7日間(約100mm
3の平均腫瘍)、マウスを4つの均等な群に分け、7、9、および12日目に、0.2mlのD−PBS中に0.2%のHSA(ビヒクル)、あるいはSS1P(0.4mg/kg)またはSS1−LR/GGS/8M(0.4もしくは2.5mg/kg)のいずれかを含有するビヒクルを静脈内注射した。この実験およびすべての続く動物実験は、国立癌研究所の動物実験委員会によって承認された国立衛生研究所の指針に従って扱った。
【0211】
マウス血清薬物動態学
9匹の雌Balb/cマウスの群に、0.2mlのD−PBS中の10μgのSS1PまたはSS1−LR/GGS/8Mを0.2%のHSAと共に静脈内注射した。3匹のマウスの群を2および20、5および30、または10および60分間の時間間隔で出血させた。以前に記載のように酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって血清を分析した(Bang Sら、Clin Cancer Res、2005、11:1545〜50.25))。
【0212】
ラット毛細血管漏出アッセイ
RIT誘導性毛細血管漏出症候群の以前に記載されているラットモデル(Siegall CBら、Proc Natl Acad Sci USA、1994、91:9514〜8)を使用してSS1−LR/GGS/8Mの非特異的毒性を評価した。手短に述べると、6〜8週齢の雌のWistar Furthand Rowett、nu/nu(無胸腺症)ラット(Harlan−Sprague−Dawley)にD−PBS、SS1P(0.2もしくは0.3mg/kg)、またはSS1−LR/GGS/8M(6もしくは12mg/kg)を静脈内注射した。24時間後、CO
2に曝すことによってラットを安楽死させた。死体を背殿位にし、腹側胸壁を取り除き、3mlのシリンジおよび27.5ゲージの針を使用して体液を吸引することによって、胸水を安楽死させた動物から採取した。いくつかのラットからの肺を取り出し、3日間、10%のホルマリン中で固定し、切片を作製し、染色した。
【0213】
RIT内部移行アッセイを本質的に上述のように行い、試料はウサギ抗PE38ポリクローナル抗体を使用した非還元性ウエスタンブロットによって分析した。
【0214】
抗原性アッセイ。
CD22−rFcおよびHA22をELISAによるPEに特異的な抗体の検出に使用した以外は本質的に記載されているように、患者血清中におけるSS1PまたはSS1−LR/GGS/8Mと抗体との結合を分析した(Onda Mら、Proc Natl Acad Sci USA、2011、108:5742〜7)。
【0215】
結果
in vitro SS1−LR活性。
免疫毒素SS1P(
図1)は、PE38と接合した、ジスルフィドで安定化された二本鎖抗メソテリンSS1 Fvである。本発明者らはLR突然変異((Weldon JEら、Blood、2009、113:3792〜800)、PEΔ251−273およびΔ285−394)をSS1P内に導入してSS1−LRを作製し、7つのメソテリン発現細胞系に対するその活性をin vitroで評価した。表2は少なくとも3つの別々の細胞毒性実験からのデータを平均EC
50値および平均の標準誤差として要約する。SS1Pと比較して、SS1−LRはHAY細胞系に対して活性がより高かったが、残りの系統に対しては活性がより低かった。SS1−LRの活性は様々な細胞系間で広く変動していたが、卵巣癌系統に対して活性が最も低かった。
【0216】
SS1−LR/GGS/8M
免疫原性は、依然としてPEに基づくRITの顕著な問題のままである(Weldon JEら、FEBS J.、2011年12月、278(23):4683〜700)。HA22−LRをHA22と比較する研究(Hansen JKら、J Immunother、2010、33:297〜304)により、本発明者らはSS1−LRがSS1Pよりも低い免疫原性を有すると期待したが、それにもかかわらずPEの残りの要素は中和抗体を迅速に誘発する。PE中の免疫原性B細胞エピトープを除去するために、ドメインIII中の一連の8個の点突然変異が最近設計された(Onda Mら、Proc Natl Acad Sci USA、2011、108:5742〜7)。これらの突然変異(D406A、R432G、R467A、R490A、R513A、E548S、Q592A、およびK590S)はマウスにおいてHA22−LRの免疫原性を劇的に低下させるが、その細胞毒性を大きく消失させない。本発明者らは、突然変異をSS1−LR/GGS内に取り込ませ、SS1−LR/GGS/8Mと呼ばれる新しい変異体を作製し、このRITを7つのメソテリン発現細胞系に対して試験した。これらの実験からのEC
50値は表2に報告されている。SS1−LR/GGS/8MはSS1−LRよりも活性が高く、時折SS1Pよりも活性が高いが(HAY、L55)、SS1−LR/GGSよりも低い活性である。活性の減少は特に卵巣癌系統で明らかである。
【0217】
非特異的な毒性
抗CD22 RIT HA22を用いた以前の研究では、本発明者らは、2mg/kgのHA22の単一の静脈内用量がマウスに対して致死的であった一方で、20mg/kgのHA22−LRの用量は毒性を示さなかったことを見出した(Weldon JEら、Blood、2009、113:3792〜800)。本発明者らはそれ以降、45mg/kgと高い単一用量のHA22−LRをマウスに与えて死亡がもたらされず(非公開の観察、データ示さず)、SS1−LRおよびその変異体から同様の挙動を期待した。以前の実験では、SS1Pの単一用量の静脈内LD
50を、Balb/Cマウス中では1.0mg/kg(Filpula Dら、Bioconjug Chem、2007、18:773〜84)およびNIH Swissマウス中では0.75mg/kgとされた(Onda M.ら、Cancer Res、2001、61:5070〜7)。臨床スケジュールに類似したQOD×3(隔日で3回投与)投薬スケジュールを使用して、マウスは0.4mg/kgのSS1Pの最大用量を耐用したが(非公開の観察、データ示さず)、SS1−LRを与えたマウスは、毒性なしで15mg/kgのQOD×3までの用量を受けた(データ示さず)。
【0218】
マウスにおけるLRに基づくRITの非特異的毒性の低下は興味深いが、臨床治験で観察される主要な毒性とは関連性がない可能性がある。マウスにおけるRIT非特異的毒性は肝損傷の結果であり(Weldon JEら、Blood、2009、113:3792〜800、Onda Mら、J Immunol.、2000、165:7150〜6)、これは患者で一般的に観察されない。非特異的毒性のより関連性のある動物モデルは、ラットにおけるRIT誘導性毛細血管漏出症候群である(Siegall CBら、Proc Natl Acad Sci USA、1994、91:9514〜8、Siegall CBら、Clin Cancer Res、1997、3:339〜45)。体液が血管から間質腔内に漏出する毛細血管漏出症候群は、PEに基づくRITの臨床治験で観察される一般的な毒性である。このモデルを使用して、本発明者らは、2mg/kgのSS1Pを用いて静脈内で処置したラットが24時間後に病気のように見えたことを観察し、これらは努力呼吸およびその胸腔中に体液の蓄積を有する(
図7A)。SS1Pの用量が3mg/kgまで増加することで胸水の体積が増加した。対照的に、D−PBSまたはSS1−LR/GGS/8Mのどちらかで処置したラットは病気の兆候を示さず、体液を保持しなかった。6mg/kgおよび12mg/kgのSS1−LR/GGS/8Mの用量の投与は、観察可能な効果がなかった。D−PBS、SS1P、およびSS1−LR/GGS/8Mで処置したラットの肺を固定および染色した際、D−PBSまたはSS1−LR/GGS/8Mで処置したものは正常に見えた一方で、SS1Pで処置したラットからのものは重篤な損傷の兆候を示した(
図7B)。どのLRに基づく分子も臨床的に試験していないが、この観察は、LRに基づくRITが患者における毒性を減少させた可能性があるという提案を強化する。
【0219】
in vivo SS1−LR/GGS/8M活性
次に、本発明者らは、L55肺癌細胞系を使用したマウス異種移植腫瘍モデルを用いてSS1−LR/GGS/8Mの有効性をin vivoで評価した。平均約100mm
3の腫瘍を有する7匹のヌードマウスの群を、7、9、および12日目に0.4および2.5mg/kgの用量のSS1−LR/GGS/8Mで静脈内処置した。比較のために、さらなる群を、ビヒクル(D−PBS中に0.2%のHSA)またはこの投薬スケジュール下におけるSS1Pの最大耐量である0.4mg/kgのSS1Pを用いて同じスケジュールで静脈内処置した。それぞれのマウスの腫瘍サイズを移植後30日間の間、定期的に測定した(
図7C)。
【0220】
ビヒクルで処置したマウスの腫瘍は、移植後16日目に約500mm
3の平均サイズまで成長した。0.4mg/kgのSS1Pで処置したマウスは、腫瘍が約500mm
3のサイズに達するまでに移植後23日目までを要した、腫瘍成長の短い遅延を示した。本発明者らは0.4mg/kgのSS1−LR/GGS/8Mで処置したマウスでほぼ同一の応答を観察し、これはこのモデルにおいてSS1PとSS1−LR/GGS/8Mとの間に偶奇性を示唆している。SS1Pは、その非特異的毒性が原因でこのスケジュールで0.4mg/kgより高い用量でマウスに投与することはできないが、SS1−LR/GGS/8Mははるかにより高い用量でマウスに与えることができ、悪影響はなかった。約6倍高い用量のSS1−LR/GGS/8M(2.5mg/kg)をこの腫瘍モデルで試験した。本発明者らはこのマウス群で有意な(対のある両側t検定を使用してp<0.01)腫瘍回帰を観察し、その腫瘍は9日目に最小サイズ約73mm
3に達した。また、このマウス群は増強された腫瘍成長の阻害も経験し、移植後30日目に約500mm
3のサイズに達した。
【0221】
SS1−LR/GGS/8MはマウスL55異種移植腫瘍モデルにおいてSS1Pに同等の活性を有していたが、これはin vitroでL55細胞に対してSS1Pと比較して増強された活性を実証した。この活性の不一致は、2つの分子間のマウス血清半減期の差異によって説明することができる。マウスにおけるHA22−LR(約51kDa)の半減期をHA22(約63kDa)に比較する以前の研究(Weldon JEら、Blood、2009、113:3792〜800)は、HA22−LRがHA22よりほぼ2倍短い半減期を有していたことを示した(それぞれ7.8および14.6分間)。本発明者らは、この差異はより小さな分子の腎臓濾過の増加が原因であると仮定し、SS1−LR/GGS/8M(約50kDa)をSS1P(約63kDa)と比較した際に同様の結果を期待した。SS1−LR/GGS/8Mを注射したマウスから採取した血清試料の分析は13分間の半減期を示し、それと比較してSS1Pでは半減期は19分間であった(
図7D)。本発明者らは、SS1−LR/GGS/8MとSS1Pとの間の半減期の差異がin vitroおよびin vivoでの2つの分子間の相対的活性の不一致の原因であると結論づけた。
【0222】
SS1−LR/GGS/8Mの抗原性
RIT HA22を用いた以前の研究に基づいて(Onda Mら、Proc Natl Acad Sci USA、2011、108:5742〜7)、本発明者らは、SS1−LR/GGS/8M中の突然変異がB細胞エピトープをSS1Pから除去するであろうと期待した。この提案を評価するために、本発明者らは、SS1PおよびSS1−LR/GGS/8MとSS1Pを用いた処置に応答して中和抗体を発生した5人の患者からの血清との反応性を比較した。まず、患者血清をSS1PまたはSS1−LR/GGS/8Mのどちらかと混合した。続いて、血清中の未結合のPE38特異的抗体を、ICC−ELISAを使用して検出した(Onda Mら、Proc Natl Acad Sci USA、2011、108:5742〜7)。これらのデータから、ELISAシグナルが50%低下したSS1PおよびSS1−LR/GGS/8Mの濃度(IC
50)を決定した。以前に報告されているように(Onda Mら、J Immunol、2006、177:8822〜34)、IC
50値は抗体−抗原の相互作用の親和性と相関している。
図8は、SS1−LR/GGS/8Mに対するSS1PのIC
50値をパーセンテージとしてプロットしている。すべての患者血清について、SS1P対SS1−LR/GGS/8MのIC
50値の比は実質的に10%未満であり、これは、血清中のSS1P反応性抗体の主要な画分がSS1−LR/GGS/8Mと非反応性であったことを示している。
【0223】
患者細胞に対する活性
in vitroおよびin vivoでの細胞系統に対するSS1−LR/GGS/8Mの本発明者らの評価を補足するために、本発明者らは、その活性を、中皮腫を有する患者の胸膜液または腹水から初代細胞を入手した初代細胞に対してさらに試験し、数継代の間培養中に維持した[0]。患者から採取した体液は細胞の混合物を含有しているため、アッセイは相対的活性の良好な評価を提供するが、これは絶対的細胞毒性の概算でしかない。2人の追加の患者からの細胞を様々な濃度のSS1Pで処理し、その生存度を4日後にクリスタルバイオレットアッセイを使用して評価した。初期継代中皮腫患者細胞NCI−M−16およびNCI−M−19はSS1Pを用いた処理に対して明白な応答を示した(100ng/mlの用量レベルで>75%の生存度の減少)。本発明者らは、これら2人の追加の患者に由来する細胞集団に対するSS1P−LR/GGS/8Mの活性を評価した。データは、小数値をD−PBS(100%生存可能)と10ng/mlの抗トランスフェリン受容体/PE40 RIT HB21(0%生存可能)との対照処置の間で正規化して、
図9に提示する。すべての患者細胞集団はSS1P−LR/GGS/8Mを用いた処理に非常に感受性であり、これはSS1Pを超えて有意に増強された細胞毒性を実証している。
【0224】
SS1Pは、中皮腫を処置するために現在臨床開発中であるが、メソテリンを発現する様々な固形腫瘍を処置する潜在性を有する、シュードモナス属外毒素Aに基づく抗メソテリン組換え免疫毒素である。臨床治験では、SS1Pは控えめであるが励みになる結果を達成している。しかし、その有効性は用量規制毒性および患者における中和抗体の迅速な生成によって制限されている。ここでは、本発明者らは、低い抗原性を有するSS1Pの変異体であるSS1−LR/GGS/8Mが優れた活性およびげっ歯類において著しく低下した非特異的毒性を有することを報告する。
【0225】
SS1−LR/GGS/8Mは、PEに基づく抗メソテリンRIT SS1Pの、活性が高く、毒性がより低く、抗原性がより低い変異体である。本発明者らによるSS1−LRの初期評価は、選ばれたメソテリン発現細胞系に対してin vitroで高度に変動するが一般に低い活性を示した(表1および2)。SS1Pと比較して低いその活性の理由を探索する中で、本発明者らはSS1−LRの内部移行およびプロセシングを調査し、2つのRITで処理した細胞においてフューリンで切断されたSS1−LRの割合がSS1Pのそれよりもはるかに低かったことを見出した。これは、減少したフューリン切断がSS1−LRの活性を制限している可能性があることを示唆しており、本発明者らはこの仮説を試験するためにいくつかの突然変異体を設計および生成した。フューリン切断部位の後に短いGly−Gly−Serリンカーを付加することは、フューリン切断を増強させなかったが、細胞系に対するSS1−LRの活性を増強させた。SS1−LRをGGSリンカーおよびPEの免疫原性を低下させることが示されている8個の点突然変異と組み合わせることによって、本発明者らは最終分子、SS1−LR/GGS/8Mを作製した。SS1Pと比較して、SS1−LR/GGS/8Mは、ラット毛細血管漏出モデルにおける非特異的毒性の大きな低下、患者細胞に対する細胞毒性の増強、および患者血清中の抗体との反応性の低下を実証した。SS1−LRを用いた初期実験は、細胞系に対するSS1Pと比較して変動する細胞毒性を実証した。しかし、主な傾向は、より低い活性の分子に向かうものであった。SS1−LRはHAY系統に対してより活性であり、他の6つの系統に対してより低い活性であった。この傾向は、ほとんどの細胞系および患者細胞に対して同様または増強された細胞毒性を実証したLR分子の抗CD22バージョンであるHA22−LRとは著しく異なっている(Weldon JEら、Blood、2009、113:3792〜800)。この不一致は、上皮細胞上のメソテリンを標的とするPEとB細胞上のCD22を標的とするPEの中毒経路との間に内因的な相違が存在することを示唆している。
【0226】
SS1Pと比較して一般に減少したSS1−LRの活性に関して、この相違の1つの可能な説明は細胞内中毒経路の差異である.PE38のLR変異体はPEのドメインIIおよびIb中に大規模な欠失を含有しており、これらの欠失が、サイトゾルへと輸送されるPEの能力に負の影響を与えた可能性がある。SS1PおよびSS1−LRで処理したA431/K5細胞の溶解物中の完全長およびプロセシングされたPEを検出するための本発明者らの実験は、フューリンでプロセシングされたRITの量の劇的な差異を示した。SS1Pで処理した細胞中の全RITの大部分がプロセシングされたが、SS1−LRで処理した細胞中では全RITのほんの少ししか切断されなかった。この結果は、乏しいフューリン切断がSS1−LRの活性を制限している可能性を示唆しており、本発明者らはPE中毒経路のこのステップを改善しようと試みた。
【0227】
柔軟なリンカーをSS1−LRフューリン部位に付け加えることによって、本発明者らはより活性のあるRITを生成したが、フューリン切断の増強を実証することができなかった。短いGly−Gly−Serリンカー(SS1−LR/GGS、
図1)、より長いリンカー(SS1−LR/GGS×2、
図1)、または短いGly−Gly−Serリンカーによって隣接されたフューリン部位の反復(SS1−LR/2×フューリン、
図1)の付加はすべて、中程度の細胞毒性の増加を与えた。しかし、これらの分子はいずれも、処理したA431/K5細胞においてフューリンで切断されたSS1−LRの割合を増強させず、in vitroフューリン切断率を増加させなかった(データ示さず)。本発明者らは、リンカーの付加が別の機構、恐らくは細胞内輸送または増強された毒素安定性に関連する機構によって細胞毒性を増強させているはずだと結論づけ、これらの可能性を探索し続けている。また、本発明者らの実験はSS1Pの細胞毒性におけるフューリン切断の必要性も実証した。切断に必須のアルギニンをグリシンへと変化させたSS1−LR/GGS中の点突然変異(SS1−LR/GGS R279G、
図1)は、フューリンによって切断されなかったタンパク質を生じた。このRITはすべての細胞に対して非常に乏しい活性を示し、試験した7つの細胞系のうちの6つに対して120μg/mlの濃度で無視できる活性しか有していなかった。切断不可能な突然変異体はA431/K5細胞に対してのみ1μg/ml未満のEC50を示すが(表2)、それにもかかわらずその活性は激しく損なわれていた。さらに、この細胞系における人工的に高いメソテリンの発現は、メソテリンを自然に発現する系統を代表するものではない可能性がある。PE中毒経路におけるフューリン切断の必要性は最近疑問視されていたが(Morlon−Guyot Jら、Infect Immun、2009、77:3090〜9)、フューリンが中毒中に重要な役割を果たすという多くの証拠が存在する(Ornatowski Wら、J Clin Invest、2007、117:3489〜97、Shiryaev SAら、J Biol Chem、2007、282:20847〜53、Sarac MSら、Infect Immun、2002、70:7136〜9、Chiron MFら、J Biol Chem、1997、272:31707〜11、Gu Mら、Infect Immun、1996、64:524〜7、Inocencio NMら、J Biol Chem、1994、269:31831〜5、およびMoehring JMら、J Biol Chem、1993、18:2590〜4)。ここに提示する事例では、PE中毒は、フューリンプロセシングに適した部位が存在しなければ一般に失敗する。
【0228】
本発明者らの研究室により、B細胞エピトープの排除が原因で非常に低い免疫原性を有するRITであるHA22−LR−8Mが最近生成された(Onda Mら、Proc Natl Acad Sci USA、2011、108:5742〜7)。HA22−LR−8Mは、PEのLR変異欠失およびドメインIII中に追加の8個の点突然変異を含有する。これらの突然変異をSS1P内に配置してSS1−LR/GGS/8Mを作製した。RITに対する免疫応答の大多数はPEに向けられているため、本発明者らはSS1−LR/GGS/8Mが同様に低下した免疫原性を示すことを予想する。SS1−LR/GGS/8Mが実際にヒトB細胞エピトープをSS1Pから除去することを確認するために、本発明者らは、SS1−LR/GGS/8MとSS1Pを用いた処置を受けている間に中和抗体を発生した患者からの血清との反応性を検査した。試験した5つの事例のうち、SS1−LR/GGS/8MはSS1Pと比較して劇的に低下した抗原性を示した。この結果はHA22およびHA22−LR/8Mの観察と一貫しており(Onda Mら、Proc Natl Acad Sci USA、2011、108:5742〜7)、本発明者らがPEに基づくRIT中の免疫原性エピトープの多くを同定および除去したことを示している。
【0229】
SS1−LR/GGS/8Mの細胞毒性を、いくつかの細胞系、マウス腫瘍モデル、および中皮腫を有する患者からの初代細胞において評価した。SS1−LR/GGS/8Mは、肺癌および中皮腫細胞系においてSS1Pと比較して優れた細胞毒性を実証したが、卵巣癌系統に対しては乏しい活性であった。卵巣系統はSS1−LR/GGSに感受性があるためこの結果は予想外であり、PEの触媒ドメイン中の8個の点突然変異がSS1−LR/GGS/8Mの活性を妨害している可能性があることを示している。マウス腫瘍モデルでは、L55異種移植腫瘍はSS1−LR/GGS/8MおよびSS1Pと同様に応答したが、抗腫瘍効果を増強させるためにより高い用量のSS1−LR/GGS/8Mを投与することができる。最後に、中皮腫を有する患者からの原発性悪性細胞に対して試験した際、SS1−LR/GGS/8MはSS1Pを超える顕著に増強された細胞毒性を示した。全体的に、本発明者らによるSS1−LR/GGS/8Mの評価は優れた細胞毒性活性を示した。
【0230】
高い活性および低い抗原性に加えて、SS1−LR/GGS/8MはSS1Pと比較して低下した非特異的毒性を示した。RIT誘導性毛細血管漏出症候群のラットモデルがこの差異を有効に実証している。PBSで処置したラットとSS1−LR/GGS/8Mで処置したものとの間に有意差は存在しなかった一方で、SS1Pで処置したラットは、衰弱性の肺中の体液の蓄積を発生した。毛細血管漏出症候群(血液漏出症候群とも呼ばれる)は体液が毛細管から漏出した場合に起こり、血清アルブミン、体液保持の低下、浮腫、および体重増加をもたらす。この毒性は、PEに基づくものを含めた様々な免疫毒素で処置した患者において頻繁に観察されており、恐らくは標的外れの内皮細胞損傷から生じる。RITのターゲッティングされない毒性を制限することは、より用量を安全に投与することを可能にすることによって、その有効性を増強させる潜在性を有する場合がある。この実験は、本明細書中に記載の他のものと共に、SS1−LR/GGS/8Mが診療所にとって優れた候補となることを示唆している。SS1−LR/GGS/8Mの低い抗原性、低い非特異的毒性、および高い細胞毒性は、抗メソテリンRITの将来の開発において非常に有望である。
【0231】
本明細書中に記載した実施例および実施形態は例示目的のためのみであり、それに鑑みた様々な修正および変化が当業者に示唆され、本出願の精神および視野内ならびに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることを理解されたい。本明細書中で引用したすべての受託番号、出版物、特許、および特許出願は、すべての目的のためにその全体で本明細書中に参考として組み込まれている。