(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169570
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】空間分布レーザ共振器
(51)【国際特許分類】
H01S 3/08 20060101AFI20170713BHJP
H01S 3/23 20060101ALI20170713BHJP
G02B 5/12 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
H01S3/08
H01S3/23
G02B5/12
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-515337(P2014-515337)
(86)(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公表番号】特表2014-522582(P2014-522582A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】IL2012000230
(87)【国際公開番号】WO2012172541
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年6月11日
(31)【優先権主張番号】61/457,822
(32)【優先日】2011年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513314090
【氏名又は名称】ワイ−チャージ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】デラ−パーゴラ、 ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】アルパート、 オータル
(72)【発明者】
【氏名】ナミアス、 オメル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイスレイブ、 ビクター
【審査官】
高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04209689(US,A)
【文献】
特開昭48−078895(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0186742(US,A1)
【文献】
特開2006−269587(JP,A)
【文献】
米国特許第06624916(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0103925(US,A1)
【文献】
米国特許第06721539(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−4/00
G02B 5/00−5/08,5/10−5/136
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分布共振器レーザシステムであって、
屈折力及び瞳を有する第1の光学系を含む第1の再記反射器、及び第2の再帰反射器であって、上記再帰反射器のそれぞれは入射されるビームを、該入射ビームのパスと基本的に一致したパスに沿って逆に反射する第1及び第2の再帰反射器と、
上記第1及び第2の再帰反射器間に配置された利得媒体と、
それに当たった上記ビームの一部を上記共振器の外に向けるように配置された出力カプラと、
上記共振器の外に向けられた上記ビームの一部が当たるように、上記出力カプラに対して配置されたビームパワー変換部品と、
上記再帰反射器間に配置され、少なくとも1つの非平面光学面を有する少なくとも1つの追加の光学部品とを含み、
上記利得媒体は、基本的には、上記第1の再帰反射器の上記第1の光学系の上記瞳に配置されている分布共振器レーザシステム。
【請求項2】
上記ビームパワー変換部品は、光起電電力変換器又は熱伝導部品のうちのどちらかである請求項1記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項3】
上記少なくとも1つの追加の光学部品は、入射/射出瞳を定めるように配置された少なくとも1つのレンズであり、複数の異なる角度で上記入射/射出瞳を通過した光は、基本的には、上記第1の再帰反射器の上記第1の光学系の上記瞳に配置された上記利得媒体に向かうようにされる請求項1及び2のいずれか記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項4】
上記少なくとも1つの光学部品は、入射/射出瞳を定めるために配置されたミラーであり、複数の異なる角度で上記瞳を通過した光は、基本的には、上記第1の再帰反射器の上記第1の光学系の上記瞳に配置された上記利得媒体に向かうようにされる請求項1及び2のいずれか記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項5】
上記少なくとも1つの追加の光学部品は、上記ビームの向きを定めるように配置され、それによって、平行なビーム伝搬の領域を形成する請求項1乃至4のいずれか1項記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項6】
上記少なくとも1つの非平面光学面を有する少なくとも1つの追加の光学部品は、結像面を有する光学配置の一部である請求項1乃至5のいずれか1項記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項7】
上記利得媒体は、上記入射/射出瞳の共役な面に位置する請求項1乃至6のいずれか1項記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項8】
上記第1及び第2の再帰反射器の少なくとも1つは、反転点を有しない請求項1乃至7のいずれか1項記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項9】
上記共振器は、コリニヤビームモードを維持する請求項1乃至8のいずれか1項記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項10】
上記少なくとも追加の光学部品は、少なくとも1つのテレセントリック領域を生成する請求項1乃至9のいずれか1項記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項11】
上記少なくとも追加の光学部品は、少なくとも1つの結像面を生成する請求項1乃至10のいずれか1項記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項12】
上記第1の再帰反射器の上記第1の光学系の上記瞳に共役な追加の瞳面に位置するセンサを更に含む請求項1乃至11のいずれか1項記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項13】
上記出力カプラは、上記再帰反射器のうちの1つの一部である請求項1乃至12のいずれか1項記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項14】
屈折力及び瞳を有する第1の光学系を含み、入射されるビームを、該入射ビームのパスと基本的に一致したパスに沿って逆に反射する第1の再帰反射器と、
入射されるビームを、該入射ビームのパスと基本的に一致したパスに沿って逆に反射する第2の再帰反射器と、
上記第1及び第2の再帰反射器間に配置された利得媒体と、
屈折力及びそれ自身の瞳を有する第2の光学系であって、上記第1及び第2の再帰反射器間であって、上記利得媒体が、基本的に、上記第1及び第2の光学系の瞳に配置されるような位置に配置された第2の光学系とを含む分布共振器レーザシステム。
【請求項15】
上記第2の光学系は、上記利得媒体のそれの反対側のその端部に配置された外部瞳面を更に有し、あらゆる方向から該外部瞳を通過した光は、該利得媒体の中心に向けられる請求項14記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項16】
上記第2の光学系は、少なくとも1つのテレセントリック領域を有する請求項14及び15のいずれか記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項17】
上記第1の再帰反射器の光学的に後ろに配置され、結像面において上記ビームの像を生成する追加の結像素子を更に含む請求項14乃至16のいずれか1項記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項18】
上記結像面の電子画像を形成する光センサを更に含む請求項17記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項19】
上記テレセントリック領域に位置し、光成分を操作する偏光子、逓倍光学部品又は1つ以上の波長板のうちの少なくとも1つを更に含む請求項16記載の分布共振器レーザシステム。
【請求項20】
上記第1の再帰反射器の上記第1の光学系の上記瞳に共役な追加の瞳面に位置するセンサを更に含む請求項14乃至19のいずれか1項記載の分布共振器レーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再帰反射器を用いた分布レーザ共振器の分野に関し、特に、内部共振器レーザ出力光によって、携帯電子機器に電力を無線で伝送するシステムで用いるものである。
【背景技術】
【0002】
WO2007/036937として公開されたPCT出願PCT/IL2006/001131「指向性光送信機及び受信機」において、及びWO/2009/008399として公開されたPCT出願PCT/IL2009/000010「無線レーザ出力光」において、分布レーザ共振器に基づく無線電力配送システムが示されている。この用語は、自由空間に分割されたその共振器ミラーを有するレーザを説明する現開示において用いられており、共振器ミラー間には何らかの特別な所定の空間関係はなく、ランダムに配置された端部反射器間でレーザが動作することができる。上述の出願において、このような分布レーザ共振器の1つの使用方法は、送信機及び受信機内に端部ミラーを配置することによって、光パワーを中央に配置された送信機から、送信機から離れて配置された移動受信機に伝送することである。このような分布レーザ共振器は、共振器の端部ミラーとして、簡単な再帰反射器、例えばコーナキューブ、キャッツアイ及びそれらのアレーを用いる。再帰反射器は、それらが非無限小視野を有するという点で、平面ミラー反射器とは異なる。再帰反射器に対するその視野内の電磁波面入射は、波の源からの方向と平行であるが、反対の方向に沿って逆に反射される。たとえ再帰反射器に対するこのような波の入射角がゼロと異なる値を有するとしても、反射は起こる。これは、ミラーが波面に対して正確に垂直な場合だけ、ゼロ入射角を有する入射パスに沿って逆に反射する平面ミラー反射器とは異なっている。
【0003】
このような一般的に入手可能な再帰反射器の多くは、例えば
図1に示す再帰反射器15は、
図1に示すように、反射ビーム11が入射ビーム12とは空間的に異なるパスを通り抜けることによって、光学像の反転を、再帰反射器に位置する反転点10の周りで(又は、再帰反射器のアレーの場合は、複数の点の周りで)、あるいはそれに近接して起こす。
【0004】
この点の周りの反転により、実用的なシステムにおいては幾つかの問題が生じる。
【0005】
a.多くのこのような簡単な再帰反射器では、反転点は、光アクセスを設けることができない光学的に不透明な位置に、例えばコーナキューブの再帰反射器に位置している。
【0006】
b.以下のパラグラフ(c)〜(f)で更に説明するように、実用のために設計された分布レーザシステムは、光学素子を共振器内に配置することを必要とする。しかしながら、光学的に不透明な位置における反転点は、結果的に重ならない2つのビームを生じさせるので、上述のパラグラフ(a)に加えて、これは問題を含む可能性がある。これの説明は、再帰反射器がビームの方向において反転点10の周りで反転を行うということである。したがって、円柱座標におけるビーム方向を方位角θで表し、残りを一定で表すと、Rが−Rになると、方向は逆になる。2つのビームの場合、Rに重なることは、−Rに等しくなければならず、それはRが0に等しいことを決定し、反射が不透明な反転点で起こらなければならないことを意味する。この重ならないことの結果として、
図1に示すように、少なくとも1つの非平坦光学面を有する必要な光学素子をビームパスに配置することにより、結果として、2つのビームは、一般的には不平行となり、分布共振器がレーザ発振を止める原因となっている。このような光学部品は、2つの平行ビームの挙動を説明した
図2に示すように、各ビームが異なって屈折される原因となる場合があり、ビーム1が付された1つは、レンズ20の光学的中心21を通り、ビーム2と付された1つは、中心からずれた点23を通る。当然のことながら、レンズ20を通過した後は、ビームはもはや平行でない。分布共振器が動作するためには、2つのビームは、平行を維持する必要があるので、上述のWO2007/036937及びWO/2009/008399に記載されているように、このような光学部品は、その再帰反射器で光学像を反転し、不透明な反転点を有する共振器内では用いることができない。2つの平行ビームを取り扱うようにある種の光学素子、例えば望遠鏡のレンズ構成を設計することができるが、このような素子は、視野が狭く、機能が限られている場合があり、ビーム間を分離して固定することを必要とし、両方のビームに収差を生じさせる場合がある。これは、通常、このような望遠鏡による解決方法の実用化を妨げている。G.J.リンフォード等の米国特許4,209,689号「レーザによる安全な通信システム」には、共振器の利得媒体の近くの望遠鏡による長距離通信用の分布レーザ共振器が記載されている。このシステムは、極めて軸方向に限定されたビームを取り扱い、軸に近い伝搬角度を含む、できるだけ限定された視野で動作する。共振器長の下流の素子、例えば利得媒体の長軸方向位置については記載されていない。ビームを広げ、したがってビーム発散及び視野を制限するために、望遠鏡が用いられていると考えられる。他の多くの場合、望遠鏡は必要でなく、むしろ別の機能を有する他の光学素子、例えば集束レンズが必要かもしれないが、ダブルビームのために、そこから同じ問題が生じる。
【0007】
c.2ビーム及びそれらの間の距離を収容するために、2ビーム用に設計された光学系は、同等のシングルビーム系の少なくとも2倍のサイズの直径を通常有する部品を使う必要がある。これは、システムのコストを上げ、その全幅を広げる。
【0008】
d.レイリー展開を補償するために、ビームは一般的に集束する必要があるので、通常、レーザ発振を達成するのには、2つの簡単な再帰反射器では十分でない。上述したWO/2009/008399には、この問題は、熱集束素子を用いて解決されていた。しかしながら、このような解決方法は、それを起動する必要があるために、複雑さが増すことに悩まされる。
【0009】
e.
屈折力を有する光学素子、例えば少なくとも1つの非平面を有する光学素子は、他の光機能、例えば集束を達成し、収差を補正し、システムの状態をモニタし、システムの視野を変更し、あるいは異なる開口で機能して、システムの性能/価格を高くするために、ビームのパス内に配置することが必要かもしれない。2つのビームは、基本的には分離されているので、開口を拡大する必要があり、また、ゴーストビームを阻止することは難しいかもしれない。
【0010】
f.共振器内に結像光学系を配置することは難しいので、受信機の位置の画像を形成することは難しい。このような情報は、場合によっては、送信機に接続された受信機又は複数の受信機をモニタするために、必要かもしれない。
【0011】
システム内のビームの方向及び位置が分からないので、上述した2つのPCT公開公報に示されている分布レーザシステムでは、更なる問題が生じる。そして、方向高感度部品、例えば偏光子、波長板、周波数逓倍結晶等を、ビームのパスのどこに配置すべきかを知るのは難しくなり、また、位置が限定された部品、例えば小型の検出器、利得媒体等の使い方を知るのは、このような部品を横方向のどこに配置すべきかが分かっていないので、難しくなる。
【0012】
したがって、従来のシステム及び方法の上述した欠点の少なくとも幾つかを克服する分布レーザ共振器のアーキテクチャが必要である。
【0013】
明細書のこのセクションで及び他のセクションに記載の各公開公報の開示内容は、そっくりそのまま、引用することによって、本願に援用される。
【発明の概要】
【0014】
本開示は、再帰反射素子を用いた分布共振器レーザ動作を達成する新規な例示的システム及び方法を説明し、そこにおいて、空間的に分割された再帰反射素子は、電力送信ユニットと電力受信ユニットを定義する。1つの送信機が、単純且つ簡単な構成の幾つかの受信機と一緒に動作できるように、利得媒体は、有利には、送信機ユニットに配置されている。説明するシステム及び方法は、このような従来のレーザ発振系に単純な再帰反射器を用いることに関連したダブルビームの問題を解決する。また、説明するシステム及び方法は、レーザ共振器内の様々な光学部品の横方向及び長手方向の両方の位置を定める問題を解決し、それは、共振器のレーザ発振特性に副次的な効果を与える。したがって、以下の特徴の一部又は全部を可能にする効果がある。
【0015】
a)入射ビームのパスに沿った再帰反射を可能にし、入射ビームと戻りビームが同じパスに沿って伝搬する。この特徴により、分布レーザは、従来の技術で説明するリングモードではなく、同一線上モードのビームで動作することができる。
【0016】
b)
屈折力を有する素子、例えば1つ以上の非平面光学面を有する素子を出射/戻りビームに配置することができ、そこでは、とりわけ、これらの部品は、
集束/発散を
システムの視野の拡大を
ビームのレイリー長の変更を
ビームの特別な動作距離への適応を行ってもよい。
【0017】
c)光が常に部品の中心を通過することを保証するように、部品を配置することができる領域をシステム内に有し、部品のサイズ及び価格を下げ、効率を高めることができる。
【0018】
d)光が常に光軸に平行となることを保証するように、光学部品を配置することができる領域をシステム内に有する。
【0019】
e)受信機の位置の画像が形成される領域をシステム内に有し、受信機をモニタすることができる。
【0020】
f)レーザビームに高感度であるが、レーザ発振動作自体は要求されない機能素子をそこに配置することができるように、レーザビームが到着できないことが知られている領域を、システム内に有する。
【0021】
上述の要件の少なくとも幾つかを達成するために、そして、それによって、一般的な環境でこのようなレーザの実用化に必要な機能によって、且つ必要な安全機能によって動作することができる分布共振器レーザを提供し、直ちに説明するように、この開示では、幾つかの新規な特徴を有する分布レーザを提案する。
【0022】
第1に、実用化は、ビームを、それ自体に逆に反射することができる再帰反射器に基づいて共振器の端部ミラーを製造することであり、各再帰反射器からの入射及び戻りビームは、基本的には、一致しているが、反対に伝搬するパスに沿って伝搬する。このような再帰反射器の幾つかの例は、ビームがその入射開口の中心領域を介してキャッツアイに入射する従来のキャッツアイ再帰反射器と、集束/発散キャッツアイ再帰反射器(1つの半球が光を他の半球の表面に集束するような2つの半球、あるいはそれらの中に複数の素子を有し、更に集束する複雑な構造を含む)と、複数の素子(汎用の)キャッツアイ再帰反射器と、ホログラム再帰反射器と、位相共役ミラーと、それ自体上にビームを反射することができる反射球面ミラーとを含む。反射球面ミラーの場合、反射の結果、ビームが発散することになるが、これは、ビームのパスに沿った他の場所に集束素子を用いることによって解決することができる。
【0023】
しかしながら、このような再帰反射器は、収差及び他のビーム伝搬の問題、例えば集束又は発散、高次ビームの励起又は他のアーチファクトを生じさせる可能性があり、これらは、許容できるパワー変換効率で、及び一般に認められた安全基準内の均一な品質のレーザ発振を確実にするために、処理する必要がある。さらに、このような再帰反射器を使用することにより、視野が制限される可能性があるので、したがって、それは、実用的なシステムを製造するためには、光学的に拡大する必要がある場合もある。さらに、レーザシステムの部品は、最適な、すなわち必要なサイズ又は視野を有しない可能性もあるので、それは、レーザ共振器内に更なる光学系を用いて、補正することになる。このような影響を克服し、全体的なレーザシステムの性能を向上させるためには、共振器内のビームのパスに、望ましくない影響を補償するように動作する他の光学部品を追加することが必要である又は都合がよい場合がある。ダブルビーム形状を有する従来の分布レーザ共振器を用いて、更なる光学部品をビームに挿入することは、このダブルビーム形状のために、効果がなかった。しかしながら、この目的は、今度は、2ビームリング共振器の代わりに、本開示の例示的な共振器構造に記載のシングルビーム同一線上共振器を用いることよって、可能になる。
【0024】
更なる内部共振器光学部品又は部分系の中に用いることができるものは、そして、それらを用いることによって達成することができる目的は、以下の通りである。
【0025】
(a)望遠鏡を用いて、送信機ユニット又は受信機ユニットのどちらかの角度視野を拡大することができる。
【0026】
(b)望遠鏡を用いて、システムのレイリー長を拡大/縮小することができ、したがって、(レイリー長を拡大する場合)動作範囲を拡大し、あるいは(レイリー長を縮小する場合)幾つかの素子から範囲内とすることができるシングル素子を選択することができる。
【0027】
(c)送信機ユニット又は受信機ユニットのどちらかの集束系を用いて、ビームウエストを送信機から受信機の方向に、あるいは受信機まで移動することができ、したがって、受信機におけるビームのサイズを小さくし、それゆえに、受信機の寸法を小さくする。
【0028】
(d)レンズ、グリンレンズ又はカーブミラー系を用いて、熱レンズを補償することができ、あるいは、例えばボールミラー再帰反射器を用いたときは、系の他の望ましくないレンズ効果を補償することができる。
【0029】
(e)偏光子を用いて、レーザ発振系内の光の伝搬の偏光を限定することができる。
【0030】
(f)波長板を用いて、
(i)系の偏光を限定することができる。
【0031】
(ii)ビームに挿入され、ブルースター角に又はそれに近く偶然に傾けられた透明な表面による意図しないレーザ発振を防止することができる。
【0032】
(iii)即席及び権限のない受信機の使用を防止することができる。
【0033】
(iv)安全装置の感度を高めることができる。
【0034】
(g)光学素子を用いて、系の様々な部品部分によって生じる収差を補正することができる。
【0035】
(h)内部共振器光学系を用いて、順方向と逆方向の両方の光を増幅するために用いる利得媒体を小さくすることができ、利得を高め、サイズを縮小することができる。
【0036】
これらの部品の一部又は部分系に関する詳細を、以下の詳細な説明のセクションで説明する。
【0037】
同一線上逆伝搬ビームが存在することにより、このような光学部品又は部分系をレーザ共振器内に配置することができ、上述のパラグラフで説明した目的を達成することができる。これは、従来のレーザからの大きな発展であり、集中又は分布に拘わらず、そこでは、結像又は集束機能は、通常、レーザ共振器内に組み込まれていない。焦点が光学部品のコーティング又は部品自体上の過熱点の原因となり、あるいは共振器内のプラズマ発生の原因となるので、レーザ共振器内に焦点を形成することは、通常望ましくない。通常、レーザ共振器内には、レーザ発振プロセス自体に必要なもの以外は、どんな部品も必要でなく、光損失を最小にし、システムを簡単にし、ゴーストビームを軽減するために、共振器内にこのような更なる部品を含めることを避ける試みが、通常なされている。しかしながら、この開示で説明する種類の応用の分布レーザ共振器において、送信機及び受信機ユニットは、分布レーザ共振器の環境領域内のあらゆる位置に配置することができ、レーザは、各端部ミラーの入射及び出射ビームの広範囲に亘る入射角に対して、その所望の効率で動作し続けなければならないので、共振器の端部ミラー及び利得媒体の広い角度の角度操作が必要である。これは、レーザ発振プロセスを損なわないように、異なる入射角からの光線を取り扱う内部共振器光学部分系を必要とする。
【0038】
これらの目的を容易にするために、本開示で説明する例示的な分布レーザ共振器は、有利には、瞳結像の使用を含む新規な設計を利用する。このような瞳結像系は、あらゆる入射角から来て瞳を通過した光が所定の像面上に像を形成し、この面上の像の位置が瞳を通過した光の入射角に依存する1つとして定義することができる。異なる各入射角からの全ての光は、たとえ空間的に広げられるが、特定の入射角から来ているとしても、その角度からの全ての光は瞳領域を通過するという条件で、像面上の同じ空間点に移されることになる。異なる入射角からの光は、像面に異なる空間点を生じる。したがって、瞳自体は、瞳結像系のこれらの特性に基づいて定義することができる。この概念の図面の説明を、以下の詳細な説明のセクションの
図3において行う。
【0039】
本開示で説明する例示的な分布共振器レーザシステムは、瞳結像特性を有するように構成することができ、それによって、以下の効果をシステムに与える。また、レーザ共振器内の光学部品又は部分系の配置は、小型の及び容易に設計されたレーザ発振系を確実にする重要な基準であるので、また、光学結像部分系も、様々な部品をそれらの最適な位置に配置することができる。所望の目的に従い、関係する幾つかの異なる基準がある。第一に、系は、領域を有し、部品がその領域に配置され、あらゆる入射角からの光がそれらの部品の中心を通過することが保証されるように、設計されなければならない。これにより、それらの部品のサイズを縮小することができ、したがって、コストを下げ、効率を上げることができる。これは、瞳を備えた結像系の1つの瞳又は複数の瞳で達成することができ、したがって、このような1つの位置又は複数の位置は、このような部品を、レーザ発振系の利得媒体、光起電力変換検出器、モニタリングダイオード等として配置するのに適している。
【0040】
実際の問題として、瞳結像系は、集束素子、例えば瞳の所望の位置からその焦点距離に配置されたレンズを用いて定義される。瞳ベースの結像系の動作の上述の定義は、光がレンズを通過することによって生成される角度情報と空間情報間のフーリエ変換の観点から容易に説明することができる。フーリエ変換法を用いて、レンズは、光が焦点距離を通過する間に、角度を位置に数学的フーリエ変換することによって説明される。単純なシングルレンズ系において、レンズの焦点から光軸に対してある角度で出射された光は、レンズを通過した後、レンズの光軸からある距離、すなわち角度に依存した距離離れて、光軸に対して平行に向けられ、したがって、全ての角度情報を解いて、それを完全に空間情報に変換する。空間情報は、光の方向を逆にすることによって、角度情報に再変換することができ、シングルレンズ系の瞳におけるビームは、空間情報を有さず(瞳点は予め定義されているので)、角度情報だけを有することになる。
【0041】
レーザ発振系が動作中であるとき、レーザビームは、送信機の前部瞳の中心と受信機の前部瞳の中心との間で形成される。送信機に入射する(又は出射する)とき、そのビームは、実際には既知の点を通過する角度情報だけを有する。次に、送信機の光学系は、利得媒体を最適に配置することができる内部瞳面上に、その前部瞳の像を作る。ビームは、利得媒体の中心を、その位置に系の前部瞳の正確な像が形成されるように、通過する。さらに、ビームのパスに沿って、内部瞳からその焦点距離に置かれたレンズは、角度情報を空間情報に変換する。角度情報がないと直ぐに、角度情報に高感度の部品を配置することができるテレセントリック領域が形成される。
【0042】
一般的に、この出願を通して、瞳の機能効果は、ビームがレンズに入射したときに通過する空間の実際の物理的位置によって実現されるように、実際の瞳によって、あるいは、系の他の位置に像を作ることによって投射されるように、実際の瞳の像によって達成されると理解される。瞳への言及及び特許請求の範囲に列挙する瞳は、これらの状況の両方を含むことを意図する。
【0043】
本開示の上述した分布レーザ構造からの瞳結像系の定義を適用することによる1つの直接の効果は、瞳結像系の結像面に配置された薄い円板状の利得媒体を用いたとき、あらゆる方向から瞳を通過した光は、望遠鏡系を通過した後、常に、望遠鏡の出力に対する第2の瞳における利得媒体の円板上に集束するということである。したがって、薄い円板状の利得媒体は、その厚みは大幅にその横寸法よりも小さく、入射瞳を介して送信機に向けられたビームの入射の方向とは無関係に、効率的にレーザ発振を行う。瞳結像分布レーザシステムは、システムで用いられている再帰反射器が反転点を有しない場合、このように最適に使用することができ、入射ビームは、再帰反射器から共直線的に逆に反射される。瞳結像系の素子に対する利得媒体のこの位置は、結像系が、利得媒体を含む送信機の入力レンズ、又は利得媒体が位置する直前の再帰反射器の結像系であるかに拘わらず、あてはまる。これらの状況のどちらかにおいて、利得媒体は、視野内のあらゆる入射方向からの光が利得媒体上に集束されるように、結像素子に対して配置される。これが実際どのように達成されるかの例について、この開示の詳細な説明のセクションで説明する。
【0044】
さらに、系は、異なる角度から来るビームが、互いに平行となるそれらの領域(すなわちテレセントリック領域)を通り抜けるように光学的に向けられる、瞳位置以外の他の領域であって、入力レンズに対するビームの入射角とは無関係に動作しなければならない光学部品を配置することができる他の領域を有するように設計することができる。
【0045】
さらにまた、系は、系の視野の像を形成することができる領域(結像面)を有するように設計されていなければならない。それらの領域は、このような光学部分系を配置する際に、例えば受信機の位置の像を形成するために、特に有効である。
【0046】
さらにまた、系は、レーザビームが通過しない領域を有するように設計されていなければならず、そこには、レーザビームによって影響を受ける部品を配置することができる。このような部品は、例えばこのようなパラメータのレベルを利得媒体蛍光レベルとしてモニタする検出器、熱レンズセンサ、ポンプダイオードビームのレベルを直接、又は利得媒体で他の波長が発生する際のそれらの影響によってモニタするポンプビームセンサ、及び安全センサであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0047】
この開示で説明するシステムの1つの例示的な実施の形態は、分布共振器レーザシステムを含み、分布共振器レーザシステムは、
(i)それらに入射されるビームを、入射ビームのパスと基本的に一致したパスに沿って逆に反射する第1及び第2の再帰反射器と、
(ii)第1及び第2の再帰反射器間に配置された利得媒体と、
(iii)それに当たったビームの一部を共振器の外に向けるように配置された出力カプラと、
(iv)共振器の外に向けられたビームのその一部がそれに当たるように、出力カプラに対して配置されたビーム吸収部品と、
(v)再帰反射器間に配置され、少なくとも1つの非平面光学面を有する少なくとも1つの光学部品とを含み、
利得媒体は、基本的には、少なくとも1つの非平面光学面を有する少なくとも1つの光学部品を組み込んだ光学系の瞳に配置されている。
【0048】
上述した分布共振器レーザシステムにおいて、ビーム吸収部品は、光起電電力変換器又は熱伝導部品のうちのどちらであってもよい。さらに、少なくとも1つの光学部品は、瞳を複数の異なる角度で通過した光が利得媒体に向かうように入射/射出瞳を定めるために配置された少なくとも1つのレンズであってもよい。あるいは、少なくとも1つの光学部品は、瞳を複数の異なる角度で通過した光が利得媒体に向かうように入射/射出瞳を定めるために配置されたミラーであってもよい。
【0049】
さらに、例示的な実施の形態に基づいて、このようなシステムは、ビームを屈折するように配置された第2のレンズを更に含んでいてもよく、それによって、レンズの中心と利得媒体を結ぶ軸に平行な伝搬の領域を形成する。
【0050】
さらに、少なくとも1つの非平面光学面を有する少なくとも1つの光学部品は、結像面を有する光学系の一部であってもよい。そして、利得媒体は、入射/射出瞳の結像された瞳に配置することができる。
【0051】
上述した例示的な分布共振器レーザシステムのいずれかにおいて、第1及び第2の再帰反射器の少なくとも1つは、反転点を有してはならない。そして、さらにまた、共振器は、コリニヤビームモードを維持しなければならない。さらにまた、光学系は、少なくとも1つの結像面を有しなければならず、且つ少なくとも1つのテレセントリック領域を有していてもよい。
【0052】
さらに、分布共振器レーザシステムは、瞳に位置するセンサを更に含んでいてもよい。出力カプラは、再帰反射器のうちの1つの一部であってもよく、あるいは、それは、再帰反射器から独立していてもよい。
【0053】
さらに、この開示で説明する分布共振器レーザシステムの他の実施の形態は、
(i)それに入射されるビームを、入射ビームのパスと基本的に一致したパスに沿って逆に反射する第1の再帰反射器と、
(ii)それに入射されるビームを、入射ビームのパスと基本的に一致したパスに沿って逆に反射する第2の再帰反射器と、
(iii)第1及び第2の再帰反射器間に配置された利得媒体と、
(iv)第1及び第2の再帰反射器間であって、上記利得媒体がその結像面に配置されるような位置に配置されたレンズ系とを含んでもよい。
【0054】
このようなシステムにおいて、レンズ系は、利得媒体のそれの反対側のその端部に配置された外部瞳面を更に有し、あらゆる方向から外部瞳を通過した光は、内部瞳面で利得媒体の中心に向けられる。これらのシステムのいずれにおいても、系は、少なくとも1つのテレセントリック領域を含んでいてもよい。さらに、それは、少なくとも1つの結像面を有していてもよい。そして、この場合には、それは、結像面に電子画像を形成す光センサを更に含んでいてもよい。系に組み込むことができる更なる部品は、テレセントリック領域に位置し、光成分を操作する偏光子、逓倍光学部品又は1つ以上の波長板を更に含む。系は、瞳に位置するセンサを更に含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
現請求の範囲の発明は、図面と共に、以下の詳細な説明からより完全に理解される。
【
図1】反射ビームが入射ビームと空間的に異なるパスを通り抜けることによって、再帰反射器に位置する点の周りで光学像反転を起こす代表的な従来のコーナキューブの再帰反射器を示す図である。
【
図2】再帰反射器、例えば
図1に示す、光学反転点を有し、結果として空間的に分離された伝搬ビームとなる再帰反射器のビームパスにレンズを配置した結果を概略的に示す図である。
【
図3】本開示において用いられている瞳、すなわち瞳面及び瞳結像を可視化することができる方法を示す図である。
【
図4A】その反転点を通り抜けるビームを再帰反射することができるキャッツアイ再帰反射器を概略的に示す図である。
【
図4B】平面反射ミラーを用いたテレセントリック再帰反射器を図式的に示す図である。
【
図5】ビームを球面の中心に向けて再帰反射する小型球面反射ミラーを概略的に示す図である。
【
図6】この開示で説明する新規な構造的特徴の1つの例示的な実施の形態に基づいて、分布レーザシステムを概略的に示し、システムの瞳の位置を示す図である。
【
図7】
図6の分布レーザシステムを、その部品の詳細を含めて概略的に示し、レーザ発振系の更なる部品を示す図である。
【
図8】伝搬ビーム形状に対する何らかの摂動の存在を判定するビームプロフィーリングユニットの表示を示す図である。
【
図9】補助レンズを用いて、システムのテレセントリック領域をどのように生じさせることができるかを示す図である。
【
図10】
図6、7に示す瞳結像系に幾つかの瞳を組み込む方法を概略的に示す図である。
【
図11】様々なモニタリング機能に対してビームにアクセス不可能な領域の使用を概略的に示す図である。
【
図12】上述したレンズ集束の代わりに、送信機のミラー集束の使用を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
まず、
図3について説明すると、
図3は、この開示の発明の概要のセクションで述べたそれらの説明を視覚的にはっきりさせるために、瞳、すなわち瞳面及び瞳結像を可視化することができる一方向を示す。
図3において、レンズ24は、空間に配置されている。瞳25を通過する全ての平行ビームは、像面26上に像点を形成する。例えば、平行ビーム27は、結像面上の点27aに集束されることになり、一方、平行ビーム28は、結像面26上に集束像点28aを形成することになる。
【0057】
システムが、不平行ビームを特定の曲率半径によって取り扱うように設計又は設定されている場合、結像面は、空間を移動するが、まだ存在することができる。結像面は、必ずしも平面であるというわけではない。この出願において、ビーム幅と基本的には同じ又は僅かに大きい幅を有する瞳の近くの領域を「瞳」と称し、そして、ビームが集束する面を「結像面」と称する。望遠鏡は、一般的に入射瞳と、射出瞳とを有し、入射瞳を通過した光ビームは、また射出瞳を通過することができる。2つの瞳は、1つの瞳が他の瞳の光学像であるように空間に配置されている。
【0058】
次に、
図4Aについて説明すると、
図4Aは、従来のキャッツアイ再帰反射器30の構成を概略的に示し、キャッツアイ再帰反射器30は、ビームが
図4A中のレンズ32の中心にある反転点31を通過するという条件で、ビームをその入射パスに沿って逆に再帰反射することができる。このような再帰反射器において、凹面ミラー33は、入射レンズ32の焦点面に、正確には入射レンズ32から焦点距離の位置に配置され、あらゆる入射角のビーム入射は、入射レンズ32によって凹面ミラー33のミラー面上に集束され、各入射角のビームは、ミラー面上の異なる空間位置に集束される。反転点の重要性を説明するために、2つの入射ビームを
図4Aに示す。図面の左上部の領域から来るビーム35は、レンズ33の中心の反転点31を通過して、垂直な入射角で反射ミラー33に当たり、そして、それ自体の入射パスに沿って逆に反射される。一方、図面の下部左側から来るビーム36は、反転点31から離れた位置でレンズ32を通過して、ゼロ以外の入射角でミラー33に当たり、そして、入射パスに平行であるが、一致しないパス37を逆に反射される。レンズの中心の反転点を任意の入射角で通過する光線は、それら自体のパスに沿って逆に再帰反射されるので、この位置は、キャッツアイの光学系の瞳を表し、この点は、レーザ共振器の利得媒体を配置する理想的な位置とすることができる。しかしながら、瞳はレンズの中心にあるので、この単純なキャッツアイ再帰反射器の使用は限定され、したがって、利得媒体がまたレンズとして機能しない限り、例えば、利得媒体をレンズとして成形しない限り、あるいはレーザ発振中に利得媒体によって生じる熱レンズ特性を用いない限り、利得媒体をそこに配置することは難しい。
【0059】
したがって、
図4Bについて説明すると、
図4Bは、
図4Aの再帰反射器の瞳の近くに配置できない問題を解決するテレセントリック再帰反射器40を概略的に示す。この場合の反射ミラーは、平面ミラー43であり、
図4Aと同様に、平面ミラー43は、レンズ42から焦点距離の位置に配置される。次に、
図4では瞳領域44として示される瞳は、レンズ42の入力側の焦点距離に等しい位置に定められ、瞳の中心を通過するあらゆる入射光線は、通常、その入射角に基づく反射ミラー上の位置に集束され、そして、瞳の中心を通るその入射パスに沿って逆に反射される。
図4Bには、異なる入射角で入射されるこのような2つの光線45、46を示す。しかしながら、
図4Aに示す装置とは異なり、瞳面47は、今度は物理的に、集束レンズの外側にあり、光学部品、例えば利得媒体又は光電変換器(それが部分的にしか吸収しない場合)、ゴーストビームを阻止する絞り又は出力カプラは、何ら物理的に制限されることなく、このような瞳に配置することができる。
【0060】
上述のキャッツアイタイプの再帰反射器に代わるものは、反転点がなく、それでも、それ自体でビームを再帰反射することができる再帰反射器である。そのような例は、
図5に概略的に示すように、小型球面反射ミラー50である。小型球面反射ミラー50は、球面ミラーに垂直に入射するビーム52で示すように、球の中心51の方向に向かうビームを再帰反射して、発散し、一方、球に水平に入射するビーム53で示すように、球面ミラーの中心に向かわないビームは、再帰反射ではなく、球から他のいずれかの方向に反射されて、その手順で発散される。
【0061】
次に、
図6について説明すると、
図6は、この開示で説明する新規な構造的特徴の1つの例示的な実施の形態に基づく分布レーザシステムを概略的に示し、例えば、光パワーを送信電源から遠隔受信機に分配するのに用いることができ、それは、レーザ発振電力を用いて、携帯電子機器を動作させ、あるいはそのバッテリを充電することができる。このような分布レーザシステムの光学設計の1つの固有の特徴は、横寸法を小さくしなければならないレーザ発振系の部品又は素子を有利に配置することができる系内の位置に、瞳を配置することである。したがって、例えば、利得媒体は、瞳54に配置され、瞳54は、内部再帰反射器55用と、望遠鏡78の内部端部用との共通の瞳であり、望遠鏡78に対して、瞳54は内部瞳として機能する。また、望遠鏡78は、その外側に外部瞳を有し、外部瞳は、送信機の射出/入射瞳57であるとともに、利得媒体が配置された内部瞳54の光学像の面と一致する。射出/入射送信機瞳57からのレーザ発振光は、基本的には、受信機入射/射出瞳58の中心の方向へ平行に伝搬し、そして、受信機59からこの瞳58を介し、逆に反射される。2つの入射/射出瞳(57、58)間の光は、基本的には平行であるので、2つの瞳57、58は、基本的には互いに光学的に同じである。受信機及び送信機は、そこに光学部品を配置することができる(上述の瞳の結像による)他の内部瞳を有することができる。その点で、系の瞳のそれぞれは、基本的には、他の系の瞳の像面にある。
図6の実施の形態に示す望遠鏡78は、一般的に、その光学系にレンズを用いているが、また、共振器の所望の位置に瞳を有し、そこに部品、例えば利得媒体を配置できる他のあらゆる光学系も用いることができることが理解される。ミラーを用いた例示的なシステムを、以下の
図12に示す。
【0062】
次に、
図7について説明すると、
図7は、
図6に概略的に示す分布レーザシステムの詳細を図によって示すが、それは、レーザの特別な素子の詳細である。図面の上半分にある送信機60は、レーザの利得媒体61と、レンズ63と、後部ミラー62とを含み、それらは、一緒に、レーザ発振ビームをそれ自体に逆に再帰反射することができる、例えば上で説明したあらゆる種類のテレセントリックキャッツアイ再帰反射器を形成する。利得媒体61は、有利には、1064nmでレーザ発振するNd:YAGとすることができる。受信機65は、図面の下部にあり、出力カプラ66を含み、出力カプラ66は、また、レーザビームをそれ自体に逆に反射する再帰反射器の一部でなければならない。したがって、これらの3つの部品、すなわち、後部再帰反射器(レンズ63及び後部ミラー62を含む)と、利得媒体61と、出力カプラ再帰反射器(出力カプラ66及びレンズ68を含む)とは、基本的なレーザ発振系を構成している。系で用いられている他の部品に対するそれらの相対的位置は、現在説明している系の新規性の重要な要素である。「内部共振器」のビームは、自由空間64内の2つの共振器ミラー62と共振器ミラー66間で伝搬し、内部共振器は、送信機60からの光エネルギを受信機65に供給するレーザ発振ビームの伝送路である。
図6に関して説明したように、望遠鏡78は、2つの瞳、すなわち利得媒体61の位置又は非常に近い位置にある(送信機に対する)内部瞳と、望遠鏡78の反対側の自由空間伝搬領域64の方にある外部(射出)瞳とを有する。望遠鏡自体に対する外部のこれらの瞳の他に、また、他の部品を配置するのに有効な場合がある内部瞳、すなわち望遠鏡のテレセントリック領域がある。
【0063】
図7に示す例示的な実施の形態における送信機の後部ミラー62は、
図4Bにそれとして示す同じ構成における、レンズ63の焦点距離に位置する平面反射器を含む。利得媒体61は、この再帰反射器と望遠鏡78の内部瞳の共通瞳に配置され、望遠鏡78を介して入射される光は、利得媒体61に向けられ、そして、再帰反射器に向けられ、逆に反射される。利得媒体61の背後のミラー67は、ビームを後部再帰反射器62に向けて反射し、ビームは、レーザを通る毎に、利得媒体61を2回通る。しかしながら、系は、この構成に限定されず、また、利得媒体61は、ミラー67がなく、再帰反射器62を利得媒体の後に直線的に配置することによって、単なる透過構成とすることができることは理解される。
【0064】
この実施の形態の受信機65の再帰反射器は、出力カプラ66、例えば部分反射ミラーと、出力カプラからその焦点距離に配置されたレンズ68とを含む。この組合せは、レンズ68の中心に物理的に位置する瞳の中心の反転点を通過したビームのその一部が、その入射パスに沿って逆に反射されることを確実にするキャッツアイ再帰反射器を含む。レーザ共振器の性質は、可能な場合、瞳を通過したビームの中心部は、効率的なレーザ発振を行うことができ、一方、他の方向を向いたビームは、レーザ発振を行うことはできず、ビームの中心部は、ビームの他の方向を向いた部分を使って、発達する。レンズ68の中心は、受信機の瞳であり、受信機は、送信機も同様に、入射ビームが瞳を通過する限り、入射ビームの入射角に関係なく、動作する。出力カプラ66を通過したビームのその部分は、他のレンズ69によって、レーザビームの光パワーを電気に変換する光起電セル70上に再び集束される。この光起電セル70は、レンズ69から焦点距離離れた他の瞳に配置されており、小さなフォトダイオードとすることができる。従来の分布共振器レーザは、本実施の形態によって可能になった集束機能がなく、横寸法が非常に大きな光起電セルを必要とする。
【0065】
上述の説明は、この開示で説明する種類の例示的なシステムの構成要素の1つの可能な組合せである。また、送信機は、この構成及び
図7に示す構成を越えて、幾つかの他の特徴を有することができる。送信機60は、その入射/射出瞳57に配置され、光学面から反射される大部分のゴーストビームを阻止するビーム阻止開口80を更に含んでいてもよい。このようなゴースト反射の除去は、システムの安全性を増大する。受信機65は、同じ目的のために、ビーム阻止器(図示せず)を有する入射瞳58を同様に有していてもよい。内部瞳の位置を外部ビーム阻止器の面に引き継ぐために、受信機に対する入射口にレンズが必要とされる。また、内部瞳のこのような像の実現は、多くの光学設計によって達成することができる。
【0066】
送信機の後部ミラー62は、部分反射とすることができ、モニタする目的で、後部リークビームを通過させることができる。ビームスプリッタ71は、送信機と連携してレーザ発振を起こす受信機の位置をモニタするために、ビームの一部を通過させることができる。この検出器72は、簡単なCCDカメラの形であってもよく、4分割フォトセンサ又は何らかの同様な位置検出器であってもよい。簡単なアルゴリズムの位置検出ルーチンを使用することにより、受信機の数を数え、それらのおよその角度位置を測定することができる。
【0067】
オプションとして、ビーム形状に何らかの摂動があるかを判定するために、後部リークビームの他の一部を用いて、ビームプロファイルを調べてもよい。キャッツアイ構成によるリークビームは、瞳におけるビームの形状のフーリエ変換である。ビーム自体のプロファイルを調べるためには、レンズ75を用いて、ビームプロファイラ74を配置することができる面上に瞳の像を作る必要がある。これは、妨害物、例えばユーザの体の一部がビームパスに入ったときを判定する安全機能として用いられる。次に、この機能を示す
図8について説明する。ビームが遮られない限り、ビームプロファイラ74によって測定されるビームプロファイルは、殆どの場合、円形状76を有する。小さな妨害物さえいずれかの位置からビームに入ったとき、それは、出力ビームのプロフィールが妨害物の物理的摂動よりも何倍も大きな要因によって不安定にされることになるようなレーザモードの重大な劣化の原因となる。
図8に示す具体例において、小さな妨害物が、ビームに、ビームに対して(図面の方向によって定まる)横の点に入り、結果として、明確な卵形のビームプロファイル77が生成されており、それは、ビームプロファイラ74によって直ちに検出することができる。そして、ビームに入ることによって摂動の原因となったユーザに対して可能性があるダメージを避けるために、画像処理アルゴリズムを用いて、警告又はシャットダウン信号をレーザシステムに生成することができる。
【0068】
図7の望遠鏡78を用いて、送信機60の視野を拡大してもよい。さらに、レーザによって発生する光の偏光を限定するために、テレセントリック領域に偏光子を配置してもよい。レーザ発振ビームの偏光方向を限定することにより、ビーム内に挿入され、ビームに対して故意ではなく、偶然ブルースター角となった透明な表面を介してレーザ発振することを防止することができる。レーザビームが無偏光である場合、透明な表面がブルースター角で挿入される可能性は低いが、それは、依然として、目下の危険性である。しかしながら、ブルースター角に加えて、ビームの偏光方向がブルースター角となり、所定の偏光を有する反射器として機能できるように、透明な表面を調整しなければならない場合、この偶発的なレーザ発振の可能性は非常に小さく、それによって、システムの安全性が高まる。あるいは、1/4波長板を、送信機又は受信機のテレセントリック領域に追加して、ビーム偏光を円偏光又は無偏光としてもよく、それにより、全体としてブルースター角反射の危険性を軽減する。他の実施の形態として、各偏光方向が送信機を1つの特別な受信機に接続するように、偏光方向を用いて、複数の特別な受信機を体系化することができる。
【0069】
系のレイリー長に小さな補償変化を加えるために、更なる集束レンズ79を、送信機60に入れてもよい。
【0070】
次に、
図9について説明すると、
図9は、系のテレセントリック領域をどのように形成することができるかを示す。
図4Bに示す平面ミラーキャッツアイ再帰反射器と同様の方法において、レンズ80が、システムの瞳81からその焦点距離に位置する場合、レンズ80は、ビームを、光軸に平行な方向であって、結像面82に向かうその光路に屈折する。結像面82は、分布レーザ共振器の後部平面ミラー又は他のどんな平面ミラーであってもよい。ビームが光軸と平行に伝搬する領域は、テレセントリック領域であり、そこには、性能がそれを通り抜ける光の方向に依存するあらゆる光学部品を配置することができる。瞳の位置を異なる角度で通り抜けたビームは、
図9に示すパスから横方向にずれた平行なパスに屈折され、方向高感度部品は、それらのビームの全てを同じ方法で光学的に取り扱う。
図9の構成は、テレセントリック領域を光軸と平行であるとして示しているが、瞳がその光軸からオフセットしている場合、テレセントリック領域のビームは、光軸に対して傾いているが、依然として互いに平行であり、それらは、方向高感度光学部品によって同一の方法で、光学的に取り扱われる。このような部品は、光学活性結晶を用いた周波数逓倍器、偏光子、何らかの種類の波長板、干渉フィルタ、あるいは別のレーザシステムに関連した更なるレーザ発振部品までも含むことができる。
【0071】
次に、
図10について説明すると、
図10は、
図6及び
図7に示す瞳結像系に幾つかの瞳を組み込む方法を概略的に示す。受信機Rx1、Rx2はそれぞれ、それらの前部開口に入射瞳101、102を有し、これらの瞳の機能は、あらゆる方向からの入射ビームが受信機の再帰反射器に向かうことを確実にすることである。送信機Txの外部開口の絞り103は、入射/射出瞳に位置し、あらゆる外角から絞り103を通過した光ビームが望遠鏡106内に向かうことを確実にし、光ビームは、望遠鏡106のレンズを通り抜けた後、望遠鏡106の利得媒体104が配置された後部瞳上に集束される。もちろん、同じ構成が、利得媒体104から発生され、望遠鏡106を通過して、送信機Txから外に向かう光にも適用することができる。そして、また、利得媒体の瞳位置は、送信機Txの内部再帰反射器105用の瞳面として機能する。したがって、この図は、レーザ発振ビームが、幾つかの順番に配置された瞳をどのように通過するかを示し、瞳は、システムの動作視野内に外部からあらゆる角度で伝搬されてきたビームが、このような部品をそれぞれ受信機又は送信機の利得媒体104、光電検出器70及び入射/射出開口101、102、103として配置するのに適した小さな横寸法の領域に集束される面を定めている。
【0072】
次に、
図11について説明すると、
図11は、様々なモニタリング機能のためにビームにアクセスできない領域を用いることを概略的に示す。そのような領域を、既に
図7及び
図8に示しており、そこでは、共振器の後部ミラー62からの後部リークビームの一部を用いて、ビーム形状76、77をモニタしている。さらに、送信機内には、検出器自体がビームパス又はその選択された一部にないとしても、レーザ発振ビームの機能をモニタするビーム検出器、例えばフォトダイオードを配置することができる領域がある。検出器は、例えば、利得媒体を調べることができ、その中で観測される変化によって、レーザ発振性能をモニタすることができる。そういった位置を、
図11に概略的に示し、そこでは、様々な部品に
図7と同じ指示符号を付している。したがって、位置111、112、113において、高感度検出器は、ビームに影響を与えることなく、検出器が損傷されることなく、利得媒体の状態をモニタすることができる。したがって、例えば、利得媒体の蛍光発光の出力レベルをレーザ発振ビームとは異なる波長で観測する検出器は、物体、例えば身体の一部によって、外部ビームパスの一部が妨害されたことから生じるビーム出力のあらゆる変化を直ちに検出することができ、そして、モニタ信号を用いて、体の一部を侵害するようなダメージを避けるために、レーザを瞬時に遮断することができる。他の例示的な利用法として、検出器は、例えば、ポンプパワーが、ポンプダイオード加熱が原因で変化したときに起こる利得媒体からの異なる波長の2次レーザ発光を観測するフィルタを組み込むことができ、そして、モニタ信号を用いて、ポンプダイオードの温度又は電流を調整し、正しいレーザ発振状態を回復させる。また、熱レンズセンサを、このような位置で用いてもよい。
【0073】
本システムの上述した全ての実施の形態は、レーザビームを集束するレンズを用いて示している。次に、
図12について説明すると、
図12は、入射及び射出瞳を定めるために、レンズの代わりに、ミラーを用いた分布レーザシステムを概略的に示し、瞳を複数の異なる角度で通過した光は、利得媒体に向けられる。
図12において、受信機120から送信機121に再帰反射されたビームは、一対のミラー123、123を含む望遠鏡系によって集束され、それらは、レーザ発振ビームを利得媒体125上に向ける。利得媒体125は、ダブルミラー望遠鏡の内部端部の瞳に最適に位置する。
【0074】
本発明が特に図面で示し、上で説明したことによって限定されないことは、当業者によって理解される。むしろ、本発明の範囲は、上で説明した様々な特徴並びにその変更及び修正の組合せ及び部分的組合せを含み、当業者は、上述の説明を読むと直ちに、それが従来の技術でないと気づくことになる。