(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169580
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】顕微鏡、およびSPIM顕微鏡検査方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
G02B21/06
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-534964(P2014-534964)
(86)(22)【出願日】2012年10月6日
(65)【公表番号】特表2014-530387(P2014-530387A)
(43)【公表日】2014年11月17日
(86)【国際出願番号】EP2012004194
(87)【国際公開番号】WO2013053454
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年9月18日
(31)【優先権主張番号】102011115946.4
(32)【優先日】2011年10月11日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012015861.0
(32)【優先日】2012年8月7日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012019466.8
(32)【優先日】2012年9月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】リッター、イェルク
(72)【発明者】
【氏名】リッペルト、ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】カオフホルト、トビアス
【審査官】
堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−540994(JP,A)
【文献】
特表2006−518050(JP,A)
【文献】
特開2008−146643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00−21/00
G02B 21/06−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡によるSPIM顕微鏡検査方法であって、該顕微鏡は、
・照明光源(1)と、試料(3)を光シートにより照明するための照明光線路とを含む照明装置と、
・試料(3)から放射される光を対物レンズにより検出するための検出装置とを備え、
・該光シートは、該対物レンズの焦点内で、または対物レンズの焦点近傍にある規定の面内で実質的に平坦であり、該対物レンズは、該光シートの平面と、ゼロとは異なる角度で交差する光軸を有し、
・試料を通過する光シートの走行速度が決定され、
・試料は、該光シートにより種々異なる試料面を検出するために該対物レンズの光軸の方向に移動される方法において、
前記走行速度が所定の中断基準よりも大きい場合、試料は、該光シートを通して連続的に走行され、
前記走行速度が前記所定の中断基準よりも小さい場合、試料は、該光シートを通して不連続的に走行され、
該検出装置によって走行中に複数の画像が、時間的な間隔で記録される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
試料チャンバを備え、該試料チャンバは、照明方向および検出方向に少なくとも1つの透光性の窓を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料チャンバは液体で満たされている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
画像記録時間または露光時間は、試料の走行経路が対物レンズの所定の分解能領域内に存在するように測定される、請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項5】
試料の走行速度は、使用される画像記録時間または露光時間によって求められ、調整される、請求項1、2、3、または4に記載の方法。
【請求項6】
試料の走行によって形成された点像分布関数(PSF)の歪み、すなわち画像の不鮮明さが、それぞれの画像記録時間および走行速度によって計算的に補正され、それにより鮮明な画像が形成される、請求項1、2、3、4、または5に記載の方法。
【請求項7】
前記対物レンズの光軸は、前記光シートの平面と垂直に交差する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
試料は、一定の速度により前記光シートを通して連続的に走行される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記検出装置によって試料の走行中に複数の画像が、周期的な間隔で記録される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該光シートの厚さから、該光シートの実際の光学的断面厚を求め、
光シートの求められた光学的断面厚から、およびユーザ設定から、走行速度を求める、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記光シートの実際の光学的断面厚は、求める際に使用される光シートの照明波長を考慮して求められる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記光シートの実際の光学的断面厚は、使用される対物レンズの光学的特性を考慮して求められる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ユーザ設定は、画像記録の頻度および検出軸の方向での画像記録のオーバラップ程度のうちの少なくとも一方である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
SPIM顕微鏡であって、
照明光源と、試料を光シートにより照明するように構成された照明光線路とを含む照明装置と、
試料から放射される光を対物レンズにより検出するように構成された検出装置とを備え、
該光シートは、該対物レンズの焦点内で、または対物レンズの焦点近傍にある規定の面内で実質的に平坦であり、該対物レンズは、該光シートの平面と、ゼロとは異なる角度で交差する光軸を有し、
顕微鏡は、該光シートにより種々異なる試料面を検出するために該対物レンズの光軸の方向に試料を移動させるように構成され、
顕微鏡は、試料を通過する光シートの走行速度を決定するように構成され、
顕微鏡は、前記走行速度が所定の中断基準よりも大きい場合、試料を、該光シートを通して連続的に走行させ、前記走行速度が前記所定の中断基準よりも小さい場合、試料を、該光シートを通して不連続的に走行させるように構成され、
顕微鏡は、該検出装置によって走行中に複数の画像を、時間的な間隔で記録するように構成されていることを特徴とするSPIM顕微鏡。
【請求項15】
SPIM顕微鏡を制御するコンピュータであって、
顕微鏡は、
照明光源と、試料を光シートにより照明するように構成された照明光線路とを含む照明装置と、
試料から放射される光を対物レンズにより検出するように構成された検出装置とを備え、
該光シートは、該対物レンズの焦点内で、または対物レンズの焦点近傍にある規定の面内で実質的に平坦であり、該対物レンズは、該光シートの平面と、ゼロとは異なる角度で交差する光軸を有し、
コンピュータは、顕微鏡と相互作用して、
試料を通過する光シートの走行速度を決定する動作と、
試料を、該光シートにより種々異なる試料面を検出するために該対物レンズの光軸の方向に移動する動作とを行い、
前記走行速度が所定の中断基準よりも大きい場合、試料は、該光シートを通して連続的に走行され、
前記走行速度が前記所定の中断基準よりも小さい場合、試料は、該光シートを通して不連続的に走行され、
該検出装置によって走行中に複数の画像が、時間的な間隔で記録されることを特徴とするコンピュータ。
【請求項16】
コンピュータの少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときに、コンピュータに顕微鏡と相互作用させるコンピュータプログラムであって、
前記顕微鏡は、照明光源と、試料を光シートにより照明するための照明光線路とを含む照明装置と、
試料から放射される光を対物レンズにより検出するための検出装置とを備え、
該光シートは、該対物レンズの焦点内で、または対物レンズの焦点近傍にある規定の面内で実質的に平坦であり、該対物レンズは、該光シートの平面と、ゼロとは異なる角度で交差する光軸を有し、
コンピュータプログラムは、少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときに、コンピュータに顕微鏡と相互作用して、
試料を通過する光シートの走行速度を決定する動作と、
試料を、該光シートにより種々異なる試料面を検出するために該対物レンズの光軸の方向に移動する動作とを行わせ、
前記走行速度が所定の中断基準よりも大きい場合、試料は、該光シートを通して連続的に走行され、
前記走行速度が前記所定の中断基準よりも小さい場合、試料は、該光シートを通して不連続的に走行され、
該検出装置によって走行中に複数の画像が、時間的な間隔で記録されることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を検出器に結像するための結像対物レンズ
(検出対物レンズまたは単に対物レンズともいう)と、該結像対物レンズの焦点面ないし該焦点面の近傍にある所定の面内の光シートにより試料を照明する手段とを有する顕微鏡に関する。照明手段は、好ましくはコヒーレントな光を放射する照明源を有する。
【背景技術】
【0002】
照明光線路と検出光線路とが実質的に互いに垂直に配置されており、結像対物レンズの焦点面にある光シート、すなわち結像対物レンズの光軸に対して垂直の光シートにより試料が照明される顕微鏡は、選択的平面照明顕微鏡法(SPIM)の方法により試料を検査するために設計されている。3次元試料が個別に異なる深度面で点ごとに走査され、その際に得られた画像情報が後から試料の3次元結像のために統合される共焦点レーザ走査顕微鏡(LSM)との相違は、SPIM技術が広視野顕微鏡法に基づくものであり、試料の個々の面を通る光学的断面に基づいて試料を画像的に提示できることである。
【0003】
SPIM技術の利点はとりわけ、画像情報の検出を行う速度の高いこと、生物学的試料の退色のおそれと試料内へ焦点の進入深度が拡大するおそれが小さいことにある。
原理的にSPIM技術では、試料に含まれている蛍光体または試料に取り込まれる蛍光体が、いわゆる光シートに整形されたレーザ光により励起される。光シートによって試料の深さ方向でそれぞれ選択された面が照明され、結像光学系によりこの試料面の画像が光学的断面の形態で獲得される。静的な光シートによるこのような励起と、回転対称の薄いレーザ光が結像対物レンズの焦点面内を高速に往復運動することとは実質的に等価である。このようにして効率的に、すなわち観察の時間に亘る時間的手段において、同様にSPIM光シートの形態が得られる。
【0004】
SPIM技術は、たとえば非特許文献1、非特許文献2、並びに特許文献1および特許文献2に記載されている。
図1にはまず、SPIM顕微鏡の基本構造が示されている。照明源1の光は、照明光学系2を介して光シートに整形され、試料3に偏向される。試料と光シートは、結像対物レンズ4の焦点面内に存在する。結像対物レンズ4の光軸は、試料3が照明される方向に対して垂直である。照明光学系2は、通常、複数の光学エレメントを含んでおり、これらの光学エレメントは照明源1のコヒーレントな光を視準化し、そこから光シートを形成する。従来技術では照明光学系2は、通常、円柱レンズも含んでおり、この円柱レンズの平坦側は試料を指し、その湾曲側は照明源の方向を指す。試料ホルダPHが概略的に図示されており、この試料ホルダにより試料が、たとえば制御ユニットAを介して制御され、電動的に対物レンズ4の光軸の方向に移動される。
【0005】
前記「光シート顕微鏡法」(Light sheet microscopy)は、検出対物レンズの側方焦点面(xy面)全体を薄い光シートにより照明する(
図1)ことによって、広視野検出と位置分解能のあるカメラ(CCDカメラ)を介して光学的断面を組み合わせる。光シート照明は、検出軸(z軸)に対して直角に行われる。
【0006】
試料は、照明と検出の重なり領域内に配置される。照明光シートによって励起される励起光は、検出対物レンズの全視野を介してカメラに結像される。薄い光シートによる直角照明によって、検出光学系の軸方向広がりの小さな部分だけが照明され、これにより光学的断面が形成される。試料内の別の領域を観察するために、試料は、光学系に依存しないで試料位置決めユニットによって光シートを通して運動される。検出軸に沿った種々異なる試料位置における光学的断面の記録により、3次元画像積層体の記録が可能である。この画像積層体が引き続き3D画像に復元される。
【0007】
このためには、複数の3次元画像積層体を種々異なる角度から記録することが必要である。1つの画像積層体はたとえば200の画像を含む。少なくとも4つの異なる照明角が1つの3次元画像に対して必要である。
【0008】
光シート顕微鏡法での典型的な実験は、生物学的有機体の成長の追跡であり、1〜3日掛かり、約5分おきに3D画像が記録される。したがって1つの実験中に約1000〜3000の画像積層体が記録される。
【0009】
図2は、
図1の補充であり、非特許文献3の図に依拠している。この図では、液状媒体により満たされた試料チャンバPKが窓Fを有し、この窓は、光シートLBによる試料照明1の光通過、並びに検出対物レンズ4と図示しないカメラの方向への検出光の光通過に用いられる。試料は、検出方向で検出方向の光軸OAに沿って、矢印によって示されるように移動される。
【0010】
前記従来技術(ヒュイスケンら)によれば、試料は断面ごとに光シートを通して走行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第10257423号
【特許文献2】国際出願公開第2004/0530558号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ステルツァーら(Stelzer et al.)、Optics Letters31,1477(2006)
【非特許文献2】ステルツァーら(Stelzer et al.)、Science 305,1007(2004)
【非特許文献3】ヒュイスケン/シュタイニール(Huisken/Steinier)、Development 136,1963−1975(2009)「Selective plane Illumination microscopy techiniques in development biology」
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】
図3aは従来技術によるステップ駆動、
図3bは本発明による走行を示す図。
【
図4a】本発明による連続的駆動における実際の光シート厚、およびそれによる効率的な、すなわち実用的な光シート厚を考慮するための方法ステップV1〜V6を備えた方法、並びに離散的記録方法に移行するための中断基準が記載されている図。
【
図4b】本発明による連続的駆動における実際の光シート厚、およびそれによる効率的な、すなわち実用的な光シート厚を考慮するための方法ステップV1〜V6を備えた方法、並びに離散的記録方法に移行するための中断基準が記載されている図。
【
図5】個々の記録点T1〜T5に対してそれぞれ50%のオーバラップ領域がS1〜S5により示されている図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の解決手段
図3は、従来技術によるステップ駆動(3a)と、本発明による走行(3b)とを比較して示す。測定の開始(スタート)後に試料が対物レンズ4の光軸の方向(垂直軸)に進んだ距離区間μmが、測定の終了までの時間t(ms)に依存してそれぞれ図示されている。点T1〜4はそれぞれ検出装置、好ましくはカメラの記録時点を表す。
【0015】
各ステップは具体的には次を意味する(
図4a):
・試料が加速される(約10ms)
・固定区間が走行される
・試料を再び減速しなければならない(約10ms)
・試料が再び静止するまでの時間が待機される(減速加速度により振動が励振される)(約50ms)
・画像記録(T1〜T4)がそれぞれスタートされる(持続時間、約50ms)
・画像記録の後、試料が再び加速される等々
このステップごとの方法は非常に時間が掛かる。なぜなら試料が常に新たに加速され、減速されるからである。1つの実験中にそれぞれ200の画像を備える1000の画像積層体があれば、試料は約200,000回、ステップごとに走行される。
【0016】
より効率的かつ高速に、試料は一定の速度により光シートを通して連続的に走行され、画像は時間的に周期的な間隔を置いて記録される(
図4b)。
この連続的走行では、加速時間、走行時間および静止時間が省略される(約70ms)。矢印T1〜T5は、それぞれ新たな画像記録のスタートを
示す。
【0017】
連続的走行における画像記録により、50msの典型的な照明時間では、1つの画像積層体を記録するための時間が約40%だけ低減される。同時に時間分解能が向上する。なぜなら高速に画像を順次連続して記録することができるからである。
【0018】
試料が静止するまでの待機時間が節約され、試料の加速は開始時に一度だけ行えばよい。ステップごとの走行に対する典型的な値に注目すれば、各ステップごとに約70msを節約することができる。比較のため、1つの画像の典型的な記録は50msである。
【0019】
対応して全ての画像積層体を格段に高速に記録することができる。同時にこの方法により複数の画像積層体を同じ時間で記録することができ、これにより、その実験において比較的高い時間分解能が得られる。
【0020】
この方法を首尾よく適用するための前提は、厳密に一定の速度による連続的走行を可能にする試料位置決めユニットである。そうでなければ、画像を後から空間的に割り当てることがもはやできない。
【0021】
試料は、カメラの露光時間中も走行される。すなわち、試料はこの時間に検出対物レンズの軸方向分解能(約1μm)を逸脱してはならず、そうでないとカメラ上で運動の不鮮明さが観察される。画像積層体を3D画像に変換したい場合、2つの隣接する画像間に十分に大きな画像の重なりを付加的に保証しなければならない。そうでないと変換が失敗する。これらの理由から試料は非常にゆっくりと走行しなければならない。典型的な走行速度は1〜500μm/sであり、これはカメラの露光時間の軸方向分解能に依存する。
【0022】
この走行速度において試料は、その連続的走行の間に2μmを超えてそれらの目標位置から離れてはならない。このパラメータは、動的引きずり誤差(Dynamischer Schleppfehler)と称される。この動的引きずり誤差を維持することは、走行速度が緩慢であればあるほど困難になる。なぜなら摩擦力が比較的大きな影響を有するからである。したがって、定則走行中に光学的または電子的距離測定が必要である。
【0023】
一定速度の走行に加えて、連続的走行の間に周期的間隔で位置を非常に精確に測定することができる(測定精度<5nm)。個々の画像を引き続きソフトウエア補正することにより、軸方向の最小スケーリング誤差を補正することもできる。画像積層体を畳み込みアルゴリズムにより変換したい場合、前と同じように約50%の画像の重なりが軸方向に隣接する2つの画像間に存在しなければならない。画像積層体の変換が必要なく、正確なスケーリングだけが重要な場合、走行中に位置を測定するだけで十分であり、厳密に一定の走行速度はもはや必要ない。
【0024】
本発明の方法を首尾よく適用するためには、試料の高精度の位置決めが有利である。典型的には、200n
m未満の再現性をもった1μm未満の位置決め精度が必要である。
【0025】
このことは、固定の走行区間と走行時間の後に一定の速度とが達成されることを保証する。したがって、画像の積層が所望の箇所でスタートすれば、画像積層体のズレが生じない。さらに、これにより、同じ画像積層体を繰り返し記録する際に常に同じスタート位置で開始されることが保証される。
【0026】
電子回路とPCとの間でさらなる通信時間を節約するために(1命令ごとに約100ms)、走行のスタートとストップをトリガすることも有利である。走行をトリガしないと、ステップごとの走行における記録時間が、さらにステップごとの通信時間だけ延長される。
【0027】
試料の連続的走行において画像記録することにより、運動の不鮮明さが生じることがある。この不鮮明さは、露光時間と走行速度に依存する。記録後の付加的な計算ステップにより、この作用を最小にすることができる。点像分布関数(Point spread function=PSF)は、試料の運動によって予測可能に歪む。露光時間と走行速度が既知であれば、真のPSFを計算し、画像をこの計算されたPSFによりデコンボリューションすることができる。この「運動デコンボリューション」は、この適用に対する(数学的な)シャープネスフィルタに相当する。
【0028】
図4a/bには、上記本発明による連続的駆動における実際の光シート厚、およびそれによる効率的な、すなわち実用的な光シート厚を考慮するための方法ステップV1〜V6を備えた方法、並びに離散的記録方法に移行するための中断基準が記載されている。
【0029】
短縮符号の凡例
A 光シート 光シート厚の単位はμmである。最小光シート厚は現在の所、約1〜2マイクロメータである。
【0030】
a
1,a
2 照明対物レンズの較正パラメータである。各対物レンズに対して固有パラメータセットa
1 istがμmでプロットされており、a
2は無次元である。
b 照明ズームレンズの調整を意味する。
【0031】
λ0,Det,min μmでの検出の波長である。波長は、たとえば照明の波長の場合、λ
0,Bel+0.01μmである。これは蛍光色素の典型的なストークスシフト(Stokes−Shift)(励起と検出の間での赤色偏移)であろう。実際には、使用される蛍光色素を識別し、正しいストークスシフトをこの色素に対して(たとえばデータバンクから)使用する。複数の波長による照明の場合、同上参考文献、最小のものが利用される。
【0032】
0.5μm 0.5μmは、理論的な光学的断面の厚さが計算された例としての検出波長に相当し、この波長は検出スペクトルのほぼ中央にある。
Intervall インターバルは最適化の際に計算されたものより小さくてはならない。
【0033】
sf サンプリング係数である。
d
System システムの光学的断面の厚さである。
V
cont,drive 連続駆動での走行速度である。
【0034】
N 1つのz位置で記録されるべき画像の数であり、たとえば1,2または4である。
fps 「効率的なフレームス・パー・セコンド」であり、1秒当たりに記録された画像を表す。
【0035】
以下の方法ステップV1〜V6が
図4a/bのフローチャートに示されている。
方法ステップV1:
光シート厚の計算
a
Lichtblatt=b
α2・α
1
方法ステップV2:
光学的断面厚の決定
a
Lichtblattから較正テーブルにより
d
System、500nm
が求められる。
【0037】
【数1】
方法ステップV4:
最適化過程
intervall≧1/sf d
system
が条件である(下記参照)。通常は
interball=1/sf d
system
が決定される。
【0039】
【数2】
方法ステップV6:
連続的駆動の中断
たとえば1μmである限界値未満の走行速度では、連続的走行の中断が行われ、画像記録のための離散的走行に移行される。
【0040】
顕微鏡の視野は、通常使用されるズーム光学系によって調整され、ズーム値は第1のステップV1でbである。
a光シートは、ズーム値bを考慮した光シート厚である。実際の光学的断面厚dが(第2のステップV2)、PSF、使用される対物レンズ、試料チャンバで使用される液状媒体、および他の影響に依存して得られる。
【0041】
実際の光学的断面厚への多数の影響によって、この光学的断面厚は、使用される対物レンズ、液体、および他の変数に対する較正データに基づき前もって求められ、読み出され/入力される。
【0042】
さらに(第3のステップV3)使用される検出波長XXXが断面厚を求める際に考慮される。
効率的な光学的断面厚は、通常、光シート厚以下である。ユーザによる「最適化」調整(最適化ボタン)によって、可及的に最適の記録インターバルが決定される(V4での最適化過程)。
【0043】
Intervall≧1/sf dSystem
がここではソフトウェアに対する条件である。ユーザは任意のインターバルを調整することができるが、1/sf d
System未満であってはならない。この限界は、使用されるカメラおよび露光時間によってあらかじめ規定される。加えて、インターバルが過度に小さい場合、対応するカメラ画像へのz座標の割当てがもはや定まらない。
【0044】
加えて、ここでは、対象物構造に基づいて個々の記録から完全なz積層体を作成する際に完全なオーバラップを形成するために、sfにより通常は2つの連続する記録の間で重なり合い(たとえば50%)がユーザによって調整される。
【0045】
図5には、個々の記録点T1〜T5に対してそれぞれ50%のオーバラップ領域がS1〜S5により示されており、このオーバラップ領域によりNの個別記録が行われる。
1つの個別記録のそれぞれのオーバラップ領域がちょうど時点T1〜T5で示されており、焦点深度内のNの個別記録のオーバラップ領域が対応して見られる。Nは、対物レンズの1つの焦点深度で記録される画像の数である。
【0046】
図面に関連して、このことはT1,T2ごとにそれぞれNの画像が記録されるべきであることを意味する。
sfはサンプリング係数(オーバラップ領域)であり、したがって50%=2である。
【0047】
これは、所要の走行速度が設定値および検出された値から求められるV5で決定される。
連続運動が1マイクロメータ未満の場合、再現可能な送り運動はもはや実現できない(とりわけ摩擦損失および他の損失のため)。他の技術(たとえば圧電モータ)により確かに比較的小さな走行速度を実現することができるが、しかし常に下方限界が存在する。したがって生じる走行速度は、連続的送り運動を可能にするために、たとえば1マイクロメータを上回るようにすべきである(上記参照)。そうでない場合、離散的画像記録が選択され、調整される(ステップV6)。