(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169594
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】モバイルデバイスに電力を誘導的に供給するためのパワートランスミッタデバイス
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20170713BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20170713BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20170713BHJP
【FI】
H02J7/00 301D
H02J50/10
H02J50/90
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-543998(P2014-543998)
(86)(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公表番号】特表2014-533925(P2014-533925A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】IB2012056215
(87)【国際公開番号】WO2013080068
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年10月28日
(31)【優先権主張番号】61/564,881
(32)【優先日】2011年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163810
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 広和
(72)【発明者】
【氏名】スワーンス ローレンス ヘンリクス
(72)【発明者】
【氏名】スターリンフ アントニウス アドリアーン マリア
【審査官】
安井 雅史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−229314(JP,A)
【文献】
特開2011−097535(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3165298(JP,U)
【文献】
特開2007−166763(JP,A)
【文献】
特開2012−034477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42−10/48
H02J 7/00− 7/12
7/34− 7/36
50/00−50/90
H04M 1/02− 1/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシーバコイルユニットを備えたモバイルデバイスに電力を誘導的に供給するための誘導的パワートランスミッタデバイスであって、
対向面を供する2つの壁により規定されたキャビティを有するホルダであって、前記キャビティは、これらの対向面の間で前記モバイルデバイスを受けるように構成される、ホルダと、
2つのトランスミッタコイルユニットを有するコイル装置とを有し、
前記2つのトランスミッタコイルユニットの一方は、前記壁のうちの一方に設けられ、前記2つのトランスミッタコイルユニットの他方は、前記壁の他方に設けられ、
前記2つのトランスミッタコイルユニットの各々は、前記ホルダの前記キャビティに挿入されたときに、前記モバイルデバイスの前記レシーバコイルユニットに誘導的に結合するように構成され、
前記2つの壁の少なくとも一方が、前記キャビティ内で前記モバイルデバイスをクランプするための可撓性材料を有し、
前記可撓性材料は、前記キャビティ内で前記モバイルデバイスをクランプする際、その形状を前記モバイルデバイスの輪郭に適応させる、
誘導的パワートランスミッタデバイス。
【請求項2】
レシーバコイルユニットを備えたモバイルデバイスに電力を誘導的に供給するための誘導的パワートランスミッタデバイスであって、
対向面を供する2つの壁により規定されたキャビティを有するホルダであって、前記キャビティは、これらの対向面の間で前記モバイルデバイスを受けるように構成される、ホルダと、
2つのトランスミッタコイルユニットを有するコイル装置とを有し、
前記2つのトランスミッタコイルユニットの一方は、前記壁のうちの一方に設けられ、前記2つのトランスミッタコイルユニットの他方は、前記壁の他方に設けられ、
前記2つのトランスミッタコイルユニットの各々は、前記ホルダの前記キャビティに挿入されたときに、前記モバイルデバイスの前記レシーバコイルユニットに誘導的に結合するように構成され、
前記2つの壁の少なくとも一方が、前記キャビティ内で前記モバイルデバイスをクランプするための可撓性材料を有し、
前記2つの壁が枢軸ヒンジによって互いに対して枢動可能である、
誘導的パワートランスミッタデバイス。
【請求項3】
前記トランスミッタコイルユニットは、平面コイルユニットである、請求項1又は2に記載の誘導的パワートランスミッタデバイス。
【請求項4】
前記キャビティは、スロット状キャビティである、請求項1又は2に記載の誘導的パワートランスミッタデバイス。
【請求項5】
前記対向面のうち少なくとも一方を他方に対して移動させることにより前記対向面の間の距離を調節するための調節メカニズムが設けられる、請求項1又は2に記載の誘導的パワートランスミッタデバイス。
【請求項6】
前記2つの壁が互いに対して直線運動を実行するように構成される、請求項1又は2に記載の誘導的パワートランスミッタデバイス。
【請求項7】
前記コイル装置は、前記トランスミッタコイルユニットに電力を供給するための少なくとも1つの電源を有する、請求項1又は2に記載の誘導的パワートランスミッタデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの電源は、双方のトランスミッタコイルユニットに電力を供給するための共通電源である、請求項7に記載の誘導的パワートランスミッタデバイス。
【請求項9】
前記コイル装置は、前記キャビティに挿入されたときに、前記モバイルデバイスの前記レシーバコイルユニットの位置を検出するための電子部品を有し、前記の検出結果に基づいて、前記レシーバコイルユニットに最も近いトランスミッタコイルユニットが活性化される、請求項1又は2に記載の誘導的パワートランスミッタデバイス。
【請求項10】
当該誘導的パワートランスミッタデバイスは、2つのレシーバコイルユニットを備えた前記モバイルデバイスとの協力のために構成され、
これらのレシーバコイルユニットのうちの一方は、前記モバイルデバイスの主要面の近くに設けられ、これらのレシーバコイルユニットのうちの他方は、前記モバイルデバイスの他の主要面の近くに設けられ、双方の主要面は互いから背けられ、
前記コイル装置は、双方のトランスミッタコイルユニットに電力を同時に供給するための少なくとも1つの電源を有する、請求項1又は2に記載の誘導的パワートランスミッタデバイス。
【請求項11】
請求項1−10のうちいずれか一項に記載の誘導的パワートランスミッタデバイスを有するとともに、前記誘導的パワートランスミッタデバイスとの連携のために構成されたモバイルデバイスを有する、誘導的パワートランスミッタシステム。
【請求項12】
前記モバイルデバイスが、
2つのレシーバコイルユニットを備え、
前記2つのレシーバコイルユニットの一方は、当該モバイルデバイスの主要面の近くに設けられ、
前記2つのレシーバコイルユニットの他方は、当該モバイルデバイスの他の主要面の近くに設けられ、
双方の主要面が互いから背けられる、請求項11に記載の誘導的パワートランスミッタシステム。
【請求項13】
少なくとも1つの他の面の近くに設けられた、少なくとも1つの他のレシーバコイルユニットを備える、請求項11に記載の誘導的パワートランスミッタシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レシーバコイルユニットを備えたモバイルデバイスに電力を誘導的に供給するための誘導的パワートランスミッタデバイスに関する。
【0002】
日常会話において、モバイルデバイスは、モバイルフォン、スマートフォン及びPDAのような、典型的にはディスプレイスクリーンを有する、小型の携帯型計算デバイスである。本文書において、"モバイルデバイス"という用語は、前述の定義に限定されるものではなく、デジタルカメラ、MP3プレーヤ及びバッテリユニットのような、他の比較的小型のポータブル又は携帯型デバイスも含む。
【背景技術】
【0003】
モバイル電子デバイスが、例えば通信及び娯楽のためのビジネス環境及びパーソナル環境においてますます用いられている。斯様なデバイスの例は、モバイルフォン、スマートフォン及び音楽プレーヤである。斯様なモバイルデバイスは、エネルギを格納するためのバッテリを備えている。これらのモバイルデバイスがコイル(とりわけ二次コイル)も備えている場合、バッテリは、誘導的バッテリチャージャによって充電又は再充電され得る。従来のチャージャは、モバイルデバイスが充電又は再充電されるのを支援するための水平に配向されたフラットな支持表面を有するベースステーションを有する。一次コイル又は一次コイルアレイは、一次コイル又はコイルアレイにエネルギを与えるための必要な電子部品と同様に、ベースステーション内に収容される。無線電力転送は、モバイルデバイスの二次コイルがベースステーションの支持表面を向くような態様で、支持表面上にモバイルデバイスを配置することにより可能にされる。支持は、充電エリアを構成する。
【0004】
既知のチャージャの欠点は、モバイルデバイスがベースステーションの支持表面上にさかさまに配置されたときに無線充電が生じ得ないことである。これは、その状況において、モバイルデバイスの二次コイルが、誘導的結合を行うためのベースステーションの一次コイル又はコイルアレイから大きく離れ過ぎるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ユーザがモバイルデバイスの正しい位置について心配することなくトランスミッタデバイスにモバイルデバイスを接続することを可能にする、モバイルデバイスに電力を供給するための誘導的パワートランスミッタデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載された誘導的パワートランスミッタデバイスにより達成される。より詳しくは、本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスは、対向面を供する2つの壁により規定されたキャビティを有するホルダであって、前記キャビティは、これらの対向面の間でモバイルデバイスを受けるように構成される、ホルダと、一次コイルユニットとも呼ばれる、2つのトランスミッタコイルユニットを有するコイル装置とを有し、これらのコイルユニットの一方は、前記壁のうちの一方に設けられ、これらのトランスミッタコイルユニットの他方は、前記壁の他方に設けられ、前記トランスミッタコイルユニットの各々は、前記モバイルデバイスが前記キャビティに接触したときに、前記モバイルデバイスの、二次コイルユニットとも呼ばれる、レシーバコイルユニットに誘導的に結合するように構成される。ホルダは、ハウジング、フレーム、下部走行体等であり得る。対向面は、接合表面又は充電エリアとして規定され得る。モバイルデバイスは、原理上、モバイルフォン、デジタルカメラ、MP3プレーヤのような、全ての種類の電子ポータブルデバイス、並びに、バッテリ及びバッテリパックであり得る。概して、レシーバコイルユニットは、モバイルデバイスのメイン側、通常上側又は下側の近くに配置される。レシーバコイルユニットは、任意の適切な形状の1又はそれ以上のレシーバコイルを有してもよい。
【0007】
モバイルデバイスを充電又は再充電するために、モバイルデバイスは、本発明のトランスミッタデバイスのキャビティに挿入され、即ち、モバイルデバイスは、前記2つの壁の間に置かれ、これにより、モバイルデバイスのレシーバコイルユニットは、常にトランスミッタデバイスの表面のうち一方を向く。この手法において、キャビティに挿入されたモバイルデバイスのレシーバコイルユニットは、常に、トランスミッタデバイスの充電エリアの一方と誘導的に結合するための正しい位置にある。
【0008】
本発明による誘導的パワートランスミッタデバイスの実用的な実施形態において、トランスミッタコイルユニットは、平面コイルユニットである。好ましくは、トランスミッタコイルユニットは、接合表面と平行又は略平行に配向される。各トランスミッタコイルユニットは、単一のフラットコイル又はコイルのフラットアレイであり得る。コイル又はコイルのアレイは、壁内で固定又は可変の位置を有し得る。コイル又はコイルのアレイは、それぞれ、それ自体知られているコイル及びコイルアレイであってもよい。通常、一次コイルはフラットな円形コイルであるが、任意の他の適切な形状のフラットコイルが適用されてもよい。
【0009】
本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの実用的な実施形態において、キャビティは、スロット状キャビティである。一般的に言えば、モバイルデバイスは、主に上面及び下面により構成される2つの主要面をもつ薄いボックス状デバイスである。このために、スロット状キャビティは、この種のデバイスを受けるための便利なキャビティである。モバイルデバイスの挿入された状態において、主要面は、トランスミッタデバイスの充電エリアを向く。
【0010】
本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの好ましい実施形態は、前記表面のうち少なくとも一方を他方に対して移動させることにより対向面の間の距離を調節するための調節メカニズムを備える。この実施形態において、対向面の間の距離は、モバイルデバイスの様々な寸法に適合され得る。調節メカニズムの一実施形態は、1又はそれ以上のはね返る又は弾性コンポーネントを有し、これは、対向壁の少なくとも一方に収容され、対向面の間の距離を増大又は減少させるために前記表面に対して直交する方向における少なくとも1つの壁の表面の運動を可能にする。前記の調整は、モバイルデバイスがトランスミッタデバイスに押されたときに自動的に生じ得る。調節メカニズムの他の実施形態は、対向壁のうち少なくとも一方を他方の壁へ及び他方の壁から移動させるための手段を有する。この手段は、一方または双方の壁の位置を変えるための、電気アクチュエータ及び類似のものを有し得る。代わりとして、前記手段は、手動手段、例えばロックメカニズムを備えるかどうかに関わらずスライドメカニズムであってもよい。
【0011】
本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの好ましい実施形態は、対向面の間において、モバイルデバイスがキャビティに挿入されたときに、モバイルデバイスを固定するための固定メカニズムを備える。この実施形態は、トランスミッタデバイスが変位にさらされたときであっても、その充電位置においてモバイルデバイスを保持するための便利な手段を提供する。変位は偶然に発生してもよいが、アプリケーションに依存してもよい。トランスミッタデバイスは、スタンドアロンデバイスのような静止デバイスとして構成されてもよく、又は、装置の一体部分であってもよい。好ましいアプリケーションにおいて、トランスミッタデバイスは、車両、例えば、車のダッシュボード又は中間コンソールに一体化される。移動している車は、加速及び減速、並びに、機械的振動を常にもたらす。また、車に一体化されたトランスミッタデバイスは、これらの加速、減速及び機械的振動にさらされる。固定メカニズムは、エネルギ伝送の停止、機械的振動、加速及び減速により、トランスミッタデバイスに挿入されたモバイルデバイスの位置の乱れを阻止する。トランスミッタデバイスは、船又は飛行機に組み込まれてもよい。固定メカニズムは、調節メカニズムの一体部分であってもよく、調節メカニズムのコンポーネントが固定機能を有してもよい。固定メカニズムの比較的単純な実施形態において、対向面の少なくとも一方は、モバイルデバイスがトランスミッタデバイスに挿入されたときに、即ち、誘導的な接触を行うための位置にあるときに、モバイルデバイスの不所望の運動を阻止するために充分な摩擦があるように、特定のスキッド抵抗を有する。
【0012】
本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの好ましい実施形態は、対向面の間において、キャビティに挿入されたときに、モバイルデバイスをクランプするためのクランピングメカニズムを備える。事実上、クランピングメカニズムは、前述された固定メカニズムの一実施形態であり、調節メカニズムの一体部分であってもよい。
【0013】
本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの好ましい実施形態は、コイル装置がトランスミッタコイルユニットに電力を供給するための少なくとも1つの電源を有することを特徴とする。これは、外部電源を使用するための実用的且つ有利な代替手段である。これは、必要とされる電子部品を簡素化し得る。少なくとも1つの電源は、それ自体は知られている電源であってもよい。
【0014】
本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの好ましい実施形態において、少なくとも1つの電源は、双方のトランスミッタコイルユニットに電力を供給するための共通電源である。この簡素化された実施形態において、双方のトランスミッタコイルユニットは、1つの電源(即ち、共通電源)を共有する。
【0015】
本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの好ましい実施形態において、コイル装置は、キャビティに挿入されたときにモバイルデバイスのレシーバコイルユニットの位置を検出するための電子部品を有する。検出結果に基づいて、前記電子部品の出力信号が生成され、それ故、レシーバコイルユニットに最も近い、トランスミッタコイルユニットのうちの1つが活性化され、活性化されたコイルユニットはレシーバコイルユニットを向く。完全性のために、活性化されたコイルユニットは、レシーバコイルユニットに最も近いコイルユニットであることに留意されたい。検出方法(例えば、共振又は検出信号を使用すること)は、それ自体知られている。
【0016】
本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの好ましい実施形態は、2つのレシーバコイルユニットを備えたモバイルデバイスとの協力のために構成され、これらのレシーバコイルユニットのうちの一方はモバイルデバイスの主要面の近くに設けられ、これらのレシーバコイルユニットのうちの他方はモバイルデバイスの他の主要面の近くに設けられ、双方の主要面は互いから背けられ、コイル装置は、双方のトランスミッタコイルユニットに電力を同時に供給するための少なくとも1つの電源を有する。この実施形態は、前述したモバイルデバイスへの効率的なエネルギ転送を可能にする。
【0017】
また、本発明は、本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスを有するとともに、この誘導的パワートランスミッタデバイスとの連携のために構成されたモバイルデバイスを有する、誘導的パワートランスミッタシステムに言及する。本発明の規定された誘導的パワートランスミッタシステムは、本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの利点と類似の利点を有する。
【0018】
米国特許第7,878,585号明細書は、二次コイルを備えた携帯電話に電力を供給するためのワイヤレス充電デバイスを開示していることが留意されるべきである。この充電デバイスは、車両におけるカップホルダの範囲内で適合するように構成されたベースハウジングを有し、携帯電話が上部表面に配置されるのを可能にするように双方とも構成される上部表面及びレスト表面をもつ上部ハウジングを更に有する。開示された充電デバイスは、充電回路を含む一次充電ユニット及び電力を誘導的に供給するための一次コイルを更に有する。
【0019】
更に、米国特許第5,070,293号明細書は、バーコードリーダを充電するための電力伝送デバイスを開示していることが留意されるべきである。この伝送デバイスは、このコイルの軸方向に沿って延在する湾曲部分をもつ第1の矩形のコイルを有する。リーダは、リーダがその充電位置に接触したときに、前記湾曲部分を介して第1のコイルに挿入される第2のフラットな矩形のコイルを有する。充電位置において、第1及び第2のコイルは、両コイル間の誘導的結合をもたらすために実質的に1つの平面に配置される。
【0020】
双方の従来の充電デバイスは、本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスとは大きく異なる。
【0021】
更に、米国特許出願公開第2011/0241608号明細書は、バッテリを受けることが可能な充電カップをもつ誘導的充電カップモジュールを有する誘導的バッテリチャージャを開示していることが留意されるべきである。一次誘導コイルは、充電カップの下にある充電カップモジュール内に埋め込まれる。一次誘導コイルは、充電カップにより受けられたバッテリに電力を誘導的に転送する。
【0022】
これらの既知のデバイスのいずれもが、2つのトランスミッタコイルユニットをもつコイル装置と、対向する接合表面を与える2つの壁により規定されたキャビティをもつホルダとを備えるものではなく、ここで、キャビティがこれらの接合表面の間でモバイルデバイスを受けるように構成され、これらのコイルユニットのうちの一方が前記壁のうちの一方に設けられ、これらのトランスミッタコイルユニットのうちの他方が前記壁の他方に設けられ、コイルユニットの各々が、ホルダの前記キャビティに挿入されたとき、即ち、モバイルデバイスがその充電位置にあるときに、モバイルデバイスのレシーバコイルユニットに誘導的に結合するように構成されるものでもない。
【0023】
更に、本発明は、モバイルデバイス、とりわけ、本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスとの連携のために構成されたモバイルデバイスに言及する。本発明のモバイルデバイスは、モバイルデバイスが二次コイルユニットとも呼ばれる2つのレシーバコイルユニットを備え、これらのレシーバコイルユニットのうち一方はモバイルデバイスの主要面の近くに設けられ、これらのレシーバコイルユニットの他方はモバイルデバイスの他の主要面の近くに設けられ、双方の主要面が互いから背けられることを特徴とする。本発明の規定されたモバイルデバイスは、本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスとの連携に非常に適している。レシーバコイルユニットの二次コイルは、フラットな円形コイルであってもよいが、任意の他の適切な形状のコイルが適用されてもよい。
【0024】
本発明のモバイルデバイスの一実施形態は、少なくとも1つの他の面の近くに設けられた、即ち、前述した主要面とは異なる1又はそれ以上の面に設けられた、少なくとも1つの他のレシーバコイルユニットを備える。この実施形態は、本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの特定の実施形態との連携に非常に適している。
【0025】
添付の請求項を参照して、請求項において述べられる特徴の全ての考えられる組み合わせが本発明の部分であることに注意されたい。
【0026】
発明の詳細な説明が以下に与えられる。説明は図面を参照して読みとられるべき非限定的な例として与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの第1の実施形態を概略的に示す。
【
図2】本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの第2の実施形態を概略的に示す。
【
図3】本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの第3の実施形態を概略的に示す。
【
図4】本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの第4の実施形態を概略的に示す。
【
図5】モバイルデバイスの一実施形態を概略的に示す。
【
図6】本発明のモバイルデバイスの一実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
開示された実施形態は概略的に示されていることに特に留意されたい。実施形態は、本発明のデバイスの例を表す。同一の参照符号は、同一の又は対応する要素及び部分のために幾つかの実施形態において用いられるが、全ての要素及び部分が幾つかの実施形態において示されているとは限らない。
【0029】
図1に示された誘導的パワートランスミッタデバイス1は、レシーバコイルユニットを備えたモバイルデバイスに電力を誘導的に供給するように構成される。斯様なモバイルデバイスの一実施形態100が
図5に示され、レシーバコイルユニットが符号102により示される。トランスミッタデバイス1は、ホルダ3及びコイル装置11を含む。任意の適切な材料(例えばプラスチック)で作られ得るホルダ3は、2つの壁7a,7bと壁7a,7bにより規定されたキャビティ5とを有し、壁7a,7bは、対向する接合表面9a,9bを与える。この実施形態において、ホルダ3は、2つの支持体8a,8b及び挿入開口部10を更に有する。キャビティ5は、表面9a,9bの間でモバイルデバイスを受けるように構成される。この実施形態において、キャビティ5は、スロット状キャビティである。コイル装置11は、2つのトランスミッタコイルユニット13a,13bを備える。コイルユニット13aは、表面9aの近くで及びこれと平行に配向された、壁7aに一体化され、トランスミッタコイルユニット13bは、表面9bの近くで及びこれと平行に配向された、壁7bに一体化される。コイルユニット13a,13bは、実質的にフラットなユニットであり、それぞれ一次コイル及び一次コイルアレイとも呼ばれる、1又はそれ以上のフラットな又は平面コイル又はコイルアレイをそれぞれ備える。斯様なコイル又はコイルアレイは、それぞれ、既知のコイル及びコイルアレイであってもよく、例えば、円形、矩形又は四角形の形状であってもよい。他の適切なフラットな形状も可能である。コイルユニット13a,13bの各々は、モバイルデバイスがホルダ3のキャビティ5に挿入されたときに、モバイルデバイスのレシーバコイルユニットに誘導的に結合するように構成される。これは、挿入されたモバイルデバイスの向きに関わらず、即ち、逆さまであるかどうかに関わらず、モバイルデバイスのレシーバコイルユニットとの誘導的な接触をもたらすことが可能である表面9a,9bのうちの一方が常に存在することを意味する。本実施形態において、コイル装置11は、トランスミッタコイルユニット13a,13bに電力を供給するための2つの電源21a,21bを有し、電源21aはコイルユニット13aに電気的に結合され、電源21bはコイルユニット13bに電気的に結合される。電源21a,21bは既知の電源であってもよい。本実施形態において、コイル装置11は、モバイルデバイスがキャビティ5に挿入されたときに、モバイルデバイスのレシーバコイルユニットの位置を検出するための電子部品23を更に有する。電子部品23は、既知の電子手段であってもよい。
【0030】
図2に示された誘導的パワートランスミッタデバイス1は、対向面9a,9bの間の距離dを調節するための調節メカニズム15を備える。この実施形態において、調節メカニズムは、外側ネジを備えるとともにホルダ3の壁7b上に回転可能に取り付けられたスピンドル15aを有する。スピンドル15aは、内側ネジを備えるとともに壁7aに設けられた貫通開口部15bに挿入される。スピンドル15を回転させることにより、接合表面9a,9b間の距離dは、キャビティ5をモバイルデバイスのサイズに適応させるために調整され得る。スピンドルの回転は手でもたらされてもよいが、代わりに、電気駆動が用いられてもよい。調節メカニズム15は、挿入されたモバイルデバイスをホルダ3に固定するために用いられ得る。これは、壁7a,7bが挿入されたモバイルデバイスを2つの表面9a,9bの間でクランプするために互いに移動するような態様で、モバイルデバイスを挿入した後にスピンドル15aを回転させることにより、本実施形態において実現され得る。
【0031】
図3に示された誘導的パワートランスミッタデバイス1は、対向面9a,9bの間において、モバイルデバイスがキャビティ5に挿入されたときに、モバイルデバイスを固定するための固定メカニズム17を備える。この実施形態において、固定メカニズム17は、比較的高い表面摩擦係数を有する材料により構成される。この材料は、一方または双方の接合表面9a,9bに設けられるか、又は、これらの部分である。摩擦係数は、挿入されたモバイルデバイスが使用(とりわけ、モバイルデバイスの挿入動作及び引き抜き動作)の容易さを実質的に妨げることなく使用条件下で壁7a,7b間で保持されるような値をもつべきである。この実施形態において、双方のトランスミッタコイルユニット13a,13bに電力を供給するために1つだけの電源(即ち、共通電源21)が設けられる。共通電源21は、壁7aに配置され、コイルユニット13aに結合された壁7aの内部にあり、電力コネクタ22を介して壁7bにおけるコイルユニット13bに結合される。他の実施形態(例えば、
図1に示されたトランスミッタデバイス1)は、2つの分離した電源21a,21bの代わりに共通電源21を備えてもよい。電源21は既知の電源であってもよい。
【0032】
図4に示された誘導的パワートランスミッタデバイス1は、対向面9a,9bの間において、モバイルデバイスがキャビティ5に挿入されたときに、モバイルデバイスをクランプするためのクランピングメカニズム19を備える。この実施形態において、クランピングメカニズム19は、ホルダ3の一方または双方の壁7a,7bの部分である、可撓性材料、例えば発泡ゴムにより構成される。可撓性材料は、その形状を、挿入されたモバイルデバイスの輪郭に適応させることが可能である。本実施形態において、壁7a,7bは、枢軸ヒンジ20によって互いに対して枢動可能である。しかしながら、他の構造が可能である。例えば、壁7a,7bは、例えば
図2に開示されているように、互いに対して直線運動を実行することが可能であってもよい。
【0033】
図5に示されたモバイルデバイス100は、
図1〜4に示された本発明の誘導的パワートランスミッタデバイス(とりわけ、トランスミッタデバイス1)との連携のために構成される。携帯電話又は他のポータブル電子デバイスであり得るモバイルデバイス100は、モバイルデバイス100の主要面104(通常、底面側)の近くに設けられたレシーバコイルユニット102を有する。斯様なモバイルデバイスは、それ自体知られていてもよい。モバイルデバイス100がトランスミッタデバイス1のキャビティ5に挿入されたときに(例えば、
図1参照)、主要面104は、常に、ホルダ3の接合表面9a,9bのうちの一方を向く。換言すれば、挿入されたモバイルデバイスは、常に、充電されるべき正しい位置にある。
【0034】
図6に示されたモバイルデバイス100は、それぞれが1又はそれ以上の二次コイルをもつ、二次コイルユニットとも呼ばれる、2つの平面レシーバコイルユニット102a,102bを備える。一のコイルユニット102aは、モバイルデバイスの主要面104aの近くで且つこれと平行に設けられ、他のコイルユニット102bは、モバイルデバイスの他の主要面104bの近くで且つこれと平行に設けられる。双方の主要面は、互いに背を向けており、モバイルデバイス100の、それぞれ上面及び下面であり得る。本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスの実施形態は、
図6に示されたモバイルデバイス100との連携のために構成される。斯様な一実施形態において、コイル装置は、双方のトランスミッタコイルユニットに電力を同時に供給するように構成された共通電源又は2つの分離した電源を有する。モバイルデバイス100の挿入された位置において、一方の主要面104aは、トランスミッタデバイスの接合表面のうち一方を向き、他方の主要面104bは、他方の接合表面を向く。トランスミッタデバイス及びモバイルデバイス100は、効率的な誘導的パワートランスミッタシステムを構成する。
【0035】
図6に示されたモバイルデバイス100の代替実施形態において、少なくとも1つの他のレシーバコイルユニット102cは、少なくとも1つの他の面104c(例えばモバイルデバイスの側面のうち1つ)の近くで且つこれと平行に設けられる。
【0036】
要約すると、本発明の主な態様は、レシーバコイルユニットを備えたモバイルデバイスに電力を誘導的に供給するための誘導的なパワートランスミッタデバイスに関する。トランスミッタデバイスはホルダ及びコイル装置を有する。ホルダは、対向面を与える2つの壁の間に延在するキャビティを有し、キャビティは、これらの対向面の間においてモバイルデバイスを受けるように構成される。コイル装置は、2つのトランスミッタコイルユニットを有し、これらのコイルユニットのうち一方は、前記壁のうち一方に設けられ、これらのトランスミッタコイルユニットのうち他方は、前記壁のうち他方に設けられ、コイルユニットの各々は、ホルダのキャビティに挿入されたときに、モバイルデバイスのレシーバコイルユニットに誘導的に結合するように構成される。これらの特徴は、ユーザがモバイルデバイスの正しい位置について深刻に注意を払うことなくトランスミッタデバイスにモバイルデバイスを接続することを可能にする。本発明の他の態様は、本発明の誘導的パワートランスミッタデバイスを有するとともに、トランスミッタデバイスとの連携のために構成されたモバイルデバイスを有する、誘導的パワートランスミッタシステムに関する。本発明の他の態様は、トランスミッタデバイスとの連携のために構成されたモバイルデバイスに関する。
【0037】
本発明の範囲が前述された例に限定されないことは当業者にとって明らかであるだろう。述べられた例の幾つかの変更及び修正は、請求項に記載された本発明の範囲から逸脱することなく可能である。本発明が図面及び説明において詳細に示され、述べられた一方で、斯様な図及び説明は、単なる例示又は例あり、限定的ではないものとみなされるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されない。図面、説明及び添付の請求項の研究から、請求項に記載された発明を実施することについて当業者により理解され得る、及び、もたらされ得る、述べられた及び/又は示された実施形態に対する任意のバリエーション及びその組み合わせは、本発明の部分である。本発明のパワートランスミッタデバイスは、チャージャとして用いられてもよいが、この使用に限定されるものではない。請求項において、"有する"という用語及びその使用は、他のステップ又は要素を除外するものではなく、単数表記は、複数を除外するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有効に用いられ得ないことを示すものではない。請求項中の任意の参照符号は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。