特許第6169618号(P6169618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169618
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/22 20060101AFI20170713BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   F04C2/22
   F04C15/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-556008(P2014-556008)
(86)(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公表番号】特表2015-507131(P2015-507131A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2013051953
(87)【国際公開番号】WO2013117486
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2016年1月22日
(31)【優先権主張番号】1202255.4
(32)【優先日】2012年2月9日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507073387
【氏名又は名称】クァンテックス パテンツ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズパンクハースト リチャード ポール
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−240890(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/122299(WO,A2)
【文献】 特表2014−528542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/08−2/28
F04C 11/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の吸入口(11)と吐出口(12)とを有するハウジング(10)と、該ハウジング(10)の内部に収容されて、前記ハウジング(10)との間に空間(17a、17b)を形成するロータ(15)を有し、前記空間(17a、17b)は駆動装置により回転する前記ロータ(15)によって流体を吐出圧をもって前記吐出口(12)から吐出するために、前記吸入口(11)から前記吐出口(12)に流体を輸送し、前記吐出口(12)と前記吸入口(11)の間にはシール装置(14)を配置し、該シール装置(14)は前記ロータ(15)が回転する際は、前記ロータ(15)の回転方向において前記吐出口(12)から前記吸入口(11)への流体の漏洩を防止するために、前記ロータ(15)の回転軸に対し径方向に動いて前記ロータ(15)に接触し、所定の吐出圧に対して前記シール装置(14)から前記ロータ(15)に掛かる摩擦力を最小にするために、前記シール装置(14)によって単位移動距離当りに発生する封止力を、前記シール装置(14)の移動する全距離に渡り±10%以内の変動に抑えるようにしたポンプにおいて、
前記シール装置(14)は柔軟性を有する弾性体から形成したばね部材(22、29、35、37、40)を備え、前記ばね部材(22、29、35、37、40)は前記封止力を発生し、前記ばね部材(22、29、35、37、40)は前記ロータ(15)の軸線に略平行に延在し、前記ハウジング(10)に固定される互いに対向する端部(28a、28b、33a、33b,38a、38b)を有し、前記ばね部材(22、29、35、37、40)は前記端部(28a、28b、33a、33b、38a、38b)との間で前記ロータ(15)に前記封止力を付与し、前記ばね部材(22、29、35、37、40)は前記ロータ(15)の回転によって、前記端部(28a、28b、33a、33b、38a、38b)との間で弾性変形するポンプ。
【請求項2】
前記封止力は前記ロータ(15)と前記シール装置(14)の接触する長さ方向に沿って略一定にする請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記封止力は前記ロータ(15)の全ての角度位置において±10%以内の変動に抑える請求項1に記載のポンプ。
【請求項4】
前記ばね部材(22、29、35、37、40)は前記ハウジング(10)内の保持部(18)に位置し、前記ばね部材(22、28、35、37、40)は前記保持部(18)内にあって可撓性を有し、前記ハウジング(10)に前記端部(28a、28b、33a、33b、38a、38b)を固定するために前記端部(28a、28b、33a、33b、38a、38b)に沿って前記保持部(18)に接触する請求項に記載のポンプ。
【請求項5】
前記ばね部材(22、35)は中空の管状ばね部材とした請求項に記載のポンプ。
【請求項6】
前記保持部(18)内の前記管状ばね部材(22)が圧縮され変形すると、前記管状ばね部材(22)は前記端部(28a、28b)に沿って前記保持部(18)に接触して前記ハウジング(10)に前記端部(28a、28b)を固定し、前記管状ばね部材(22)の基部(27)は前記端部(28a、28b)の間で前記ロータ(15)に前記封止力を付与するように変形する請求項に記載のポンプ。
【請求項7】
前記管状ばね部材(35)はD字状断面を有する請求項5又は6に記載のポンプ。
【請求項8】
前記管状ばね部材(22)は円形の断面を有する請求項5又は6に記載のポンプ。
【請求項9】
前記管状ばね部材(22、35)の断面積は前記管状ばね部材(22、35)の軸に沿った長さ方向で一定になる請求項又はに記載のポンプ。
【請求項10】
ばね部材は略U字状部材(29)又は略U字状部材に類似の部材(40)である請求項の何れか1項に記載のポンプ。
【請求項11】
ばね部材は略U字状部材(29)又は略U字状部材に類似の部材(40)であって、前記ばね部材(29、40)は互いに間隔を空けて基部(31)と交差する腕部(30a、30b)を有し、前記保持部(18)に挿入された前記ばね部材(29、40)は、前記腕部(30a、30b)を前記ばね部材(29、40)の前記端部(33a、33b)に押し付けて前記端部(33a、33b)に密着することにより前記保持部(18)に固定し、前記端部(33a、33b)の間にあって前記ばね部材(29、40)の前記基部(31)が変形することによって、前記ロータ(15)に前記封止力を付与する請求項に記載のポンプ。
【請求項12】
前記ばね部材(37)は円弧状である請求項の何れか1項に記載のポンプ。
【請求項13】
前記ばね部材(37)は円弧状であって、前記円弧状ばね部材(37)は前記保持部(18)に固定される前記端部(38a、38b)有する請求項に記載のポンプ。
【請求項14】
前記シール装置(14)は前記ロータ(15)に接触する膜材(21)を有し、前記ばね部材(22、29、35、37、40)は前記膜材(21)を前記ロータ(15)に接触するように押し付ける請求項13の何れか1項に記載のポンプ。
【請求項15】
前記ばね部材(22、29、35、37、40)は前記ばね部材(22、29、35、37、40)に沿って前記ロータ(15)の回転軸に平行な方向にリブ(24a、32、27、41)を有し、前記膜材(21)に接触する前記リブ(24a、32、27、41)は前記膜材(21)を前記ロータ(15)に押し付ける請求項14に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
PCT/GB2005/003300とPCT/GB2010/00798には、流体の吸入口と吐出口を有するハウジングを備え、ハウジングはロータを内部に収容し、駆動装置により回転するロータはハウジングとの間に空間を形成し、空間内の流体を吸入口から吐出口へと輸送して排出するポンプが開示されている。このようなポンプでは、ロータの回転に伴って吐出口から吸入口に流体が漏洩することを防止する必要がある。このために、PCT/GB2005/003300とPCT/GB2010/00798には、吸入口と吐出口の間に配置されてロータと接触するシール材の使用が開示されている。
【0003】
ロータはハウジングと空間を形成するために、ハウジングの径方向の内側に向いた表面を有し、吐出口から吸入口への流体の漏洩を防止するためにシール材とロータ表面の間は常に密封され、シール材はロータの回転軸から径方向の内外に向けて移動可能になっている。シール材とロータが接触する際には摩擦力が生ずるが、その摩擦力はロータの駆動装置によって補償される。
【0004】
PCT/GB2005/003300とPCT/GB2010/00798は上記の要件を満たすために、種々のシール材の配置を開示しており、シール材の中には反発性を有するブロック状の材料や、弾性を持って支持される膜状の部材等が含まれる。これらのシール材を配置した場合に、シール材との摩擦によって生ずるロータの負荷の大きさは、ロータとハウジングの共通の軸線からシール材とロータが接触するまでの距離に正比例して、又はほぼ正比例して増加する。その結果、シール材が共通の軸線から最大距離の位置で接触して、部品間の摩擦力が最大になっても、駆動装置からロータには生じた摩擦力に十分に対抗できる回転力が供給されなければならない。更に、シール材に生ずる力は、シール材が共通の軸線から最小の距離で接触し、摩擦力が最小になっても流体の漏洩を防止するためには十分な強さを有する必要がある。このように、必要な摩擦力の最小値が決まると比例関係から最大値も決まることになる。そのような比例関係では、流体の所定の吐出圧に対してシール材に供給する力を必要最小限に抑えることができる一方で、同じ吐出圧であってもロータに供給される最大の力は、封止に必要な力を大きく超えてしまう。また摩擦が増大すると、ロータの回転時にハウジングとロータの間には熱が発生するため、特に部品が樹脂製であると、大きな不具合が生じかねない。更に、医療分野で使用するときは、そのように発生した熱が流体に移動し、その流体の性能に悪い影響を与える可能性がある。更に、摩擦が増大すると部品間の磨耗量も増加する。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、流体の吸入口と吐出口とを有するハウジングと、ハウジングの内部に収容されてハウジングとの間に空間を形成するロータとから成り、空間は駆動装置により回転するロータによって流体を吐出口から吐出するために吐出圧をもって吸入口から吐出口に流体を輸送し、吐出口と吸入口との間にはシール装置が配置され、シール装置はロータが回転する際は、ロータの回転方向において吐出口から吸入口への流体の漏洩を防止するために、ロータの回転軸に対して径方向に動いてロータに接触し、所定の吐出圧に対してシール装置からロータに掛かる力を最小にするように、シール装置によって単位移動距離当りに発生する力がシール装置の移動する全距離に渡り(定義するように)一定になるポンプが提供される。
【0006】
ここに、ロータがシール材の通過する際に単位距離当りに発生する力が一定であるとは、単位距離当りの力の変動が10%以内に抑えられることを意味する。
【0007】
このように、シール材からロータに掛かる単位距離当りの摩擦力の最大値は、従来のどの所定吐出圧に対してもより低く抑えられるので、駆動装置が供給する回転力を低減することができる。また上記のポンプでは、駆動装置のより正確な速度制御を可能にし、部品間の磨耗や発熱を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下は本発明の実施の形態をより詳細に示した説明図である。
図1】吸入口と吐出口と、吸入口と吐出口の間に配置したO字状の管状のばね部材を備えたシール装置から成る第1のポンプの断面説明図である。
図2a】吸入口と吐出口と、吸入口と吐出口の間に配置したU字状のばね部材を含むシール装置から成る第2のポンプの断面説明図である。
図2b図2aに類似するが、ロータが第2の角度位置に来たときの説明図である。
図2c図2a、図2bに類似するが、ロータが第3の角度位置に来たときの説明図である。
図3図1図2のシール装置に使われるD字状の断面を持つばね部材の説明図である。
図4】周囲を拘束されない柔軟な弾性材料から成る中空のばね部材が圧縮されたときに生ずる応力をプロットしたグラフ図であり、使われている部材は本発明のものではない。
図5図1図2図3において、ばね部材の周囲が拘束されたシール装置に生ずる応力をそれぞれ□印、◇印、△印で表示し、プロットしたグラフ図である。
図6】上記に代る他の部材の形状の説明図である。
図7】平面状に押出し成形されたばね部材の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に示すように、第1のポンプはハウジング10から形成され、ハウジング10は例えばポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂を射出成形して作製される。ハウジング10は流体の供給源に接続するための吸入口11と、流体を外部に汲み出すための吐出口12とを備えている。ハウジング10の内部は円筒状である。図1に示すように、ハウジング10の吐出口12と吸入口11の間には、後に詳しく説明するシール装置14が反時計方向に向けて装着される。
【0010】
ハウジング10はロータ15を収容する。ロータ15は錆びない金属又は精密に射出成形したアセチル樹脂のようなプラスチック材料から形成される。PCT/GB2005/003300とPCT/GB2010/00798にも記載があるように、ロータ15はハウジング10との間に空間17a、17bを形成するための窪んだ表面16a、16bを有する。
【0011】
ロータ15は図1に示すように図示しない駆動装置からの動力によって反時計方向に回転する。ハウジング10は吸入口11と吐出口12の間に保持部18を形成する。保持部18は間隔を空けて平行に配置されてハウジング10内の開口20から上方に向かって立ち上がる側壁19a、19bを備えている。各側壁19a、19bはロータ15の軸線に平行に延在し、少なくとも表面16a、16bの軸線方向の長さに相当する長さを有する。側壁19a、19bの端部は図示しない末端壁と交差する。シール装置14はPCT/GB2005/003300とPCT/GB2010/00798にも記載があるように、開口20を閉止する柔軟な膜材21を備えている。
【0012】
シール装置14はばね部材を有し、この実施の形態では、ばね部材はO字状の断面形状を持つ管状ばね部材22であって、保持部18内に配置され、シリコンゴムのように柔軟で可撓性を有する弾性体から形成される。圧縮されない状態での管状ばね部材22は、中空の円形断面を有し、互いに対向する第1、第2のリブ24a、24bを外面23上に有し、第1、第2のリブ24a、24bはそれぞれの外面に沿って管状ばね部材22の軸線と平行に延在する。図1に示すように、第1のリブ24aはロータ15の回転時に膜材21の下面を押圧し、ロータ15と膜材21の間を封止する。
【0013】
管状ばね部材22と保持部18は、管状ばね部材22の直径が側壁19a、19bの間の距離と同等か又は長くなるように設計され、管状ばね部材22が保持部18内に収まるときは、管状ばね部材22は側壁19a、19bに押し付けられて管状ばね部材22の接触部分が固定され、側壁19a、19bとの間の動きが規制される。更に、保持部18はキャップ25によって閉止され、キャップ25はチャンネル26を受け入れてハウジング10に対向する位置に管状ばね部材22を配置し、ロータ15の回転時に管状ばね部材22に発生する動きを制御する。また、キャップ25は管状ばね部材22を圧縮する。ここに、管状ばね部材22は第1のリブ24aに連なる基部27と、互いに対向する端部28a、28bとを有し、端部28a、28bはそれぞれ2個の側壁19a、19bに接触して固定される。基部27はキャップ25により管状ばね部材22が圧縮されると、管状ばね部材22の軸に向けて径の内側方向に曲げられる。
【0014】
図1に示した上記のポンプは、PCT/GB2005/003300とPCT/GB2010/00798に記載のものと同様に作動する。吸入口11は汲み上げる流体の入った容器に接続し、吐出口12は流体の輸送先に接続する。ロータ15は図1に示すようにモータ(図示しない)などの駆動源により反時計方向に回転する。空間17a、17bはPCT/GB2005/003300とPCT/GB2010/00798に記載したように、流体を吸入口11から吐出口12まで輸送し、吸引圧、汲み上げた流体の性状、ロータ15の回転速度等によって定まる吐出圧をもって吐出口12から外部に排出する。
【0015】
ロータ15が回転すると、管状ばね部材22は第1のリブ24aを経由して流体が吐出口12から吸入口11に漏洩しないように、ロータ15の表面に膜材21を押し付ける。この回転の間中、リブ24aは径方向の最大の間隔(上死点つまりTDC)と最小の間隔(下死点つまりBDC)に対応してロータ15の軸線に対して径方向に移動する。キャップ25による管状ばね部材22への圧縮によって、管状ばね部材22から膜材21には、BDCであっても膜材21とロータ15の間で漏洩がないことを十分に保証するだけの力を供給する。
【0016】
BDCの位置からロータ15が回転すると、膜材21は軸線から更に離れたロータ15上の位置でロータ15に接触する。リブ24aは径方向の外側に押圧されるが、管状ばね部材22は側壁19a、19b間に拘束されているため、この増大した圧力に抗しきれずに、楕円形状を呈したり、径方向に圧縮されることが予想される。何故なら、管状ばね部材22と側壁19a、19bの摩擦を伴う接触により基部27の端部28a、28bが側壁19a、19bに固定されるからである。必然的に管状ばね部材22の基部27は、管状ばね部材22と側壁19a、19bの間の接触点の間にあって内側に湾曲する。この湾曲はTDCに到達するまで続く。TDCにおける基部27の内部への湾曲は、図1に示すように最大になり、基部27は逆側に湾曲するようになる(内面は凸状であり、凹状にはならない)。リブ24aによってロータ15からの力は集中し、基部27の逆方向への湾曲が助成される。
【0017】
このように湾曲しても、リブ24aから膜材21に加わる力、即ち膜材21からロータ15に掛かる力は変化することはなく、又は殆ど変化することもない。何故ならば、管状ばね部材22を圧縮すると、側壁19a、19bに接触する管状ばね部材22の側部への力の集中が妨げられるからである。このように、圧縮力は管状ばね部材22の全域により均等に及ぶようになる。この特徴は他の利点、即ち側壁19a、19bが省略されるシール装置と比較して応力は大きく減退するので、管状ばね部材22が永久変形する傾向は弱められる。この力は汲み上げられて所定の吐出圧を持つ流体を封止するために必要十分な最小の力又はそれに近い力として作用する。このように、駆動装置から供給すべき回転力は低減され、部品間の摩耗量は減少し、流量制御の正確度も増大する。
【0018】
図1に示すように、管状ばね部材22は圧縮されないときは、その長手方向に沿って一定の円形断面を呈する。この形状は本実施の形態に限られるものではない。断面は状況に応じてどのような形状であってもよいし、長手方向に沿った管状ばね部材22の径も一定である必要はない。例えば、或る断面を有するロータの径において、管状部材の径は長さ方向の端部においてより短くなり、中心付近においてより長くなってもよい。また、管状ばね部材22の壁厚もその長手方向に対して一定である必要はない。
【0019】
次の図2a、図2b、図2cに示した第2のポンプも、図1の第1のポンプと同様の部品を有している。これらの図に共通の部品には同じ参照符号が使われ、詳細は省略する。図2a、図2b、図2cに示したポンプでは、図1の管状ばね部材22はU字状の断面を有する長尺部材から成るばね部材29に置き換えられる。ばね部材29は図1の管状ばね部材22と同じ材料で作製される。
【0020】
ばね部材29は外面にリブ32を備えた基部31と交差し、互いに間隔を空けて配置される腕部30a、30bを有する。リブ32はばね部材29の長手方向の軸線に平行に延在する。間隔を空けた腕部30a、30bの先端は、腕部30a、30bが制御不能に折れたり、曲がることがないように十分な厚みを持っている。ばね部材29は腕部30a、30bの側面が側壁19a、19bを押し付けながら保持部18内に挿入され、それによって基部31の端部33a、33bは側壁19a、19bに固定され、リブ32は膜材21の下側を押し付ける。保持部18は間隔を空けて並行するチャンネル35a、35bを有するキャップ34で閉止され、チャンネル35a、35bはばね部材29がハウジング10に対向する位置に収まるように、腕部30a、30bのそれぞれの先端を収容する。キャップ34はばね部材29を圧縮し、それによってリブ32は膜材21に押し付けられる。
【0021】
図2a、図2b、図2cに示すポンプは、図1に示したポンプよりも広範囲に作動する。図2aに示すように、BDCでは基部31の変形は小さいが、膜材21を通してロータ15に膜材21とロータ15の間を密封するために十分な力を伝達するので、吸入口11と吐出口12の間における流体の漏洩は防止される。図2bに示すように、ロータ15が回転して45度の位置に至ると、ロータ15は基部31を内側に押し上げるようになる。ロータ15がこの位置に至ると、図2aに比較して基部31の曲率は減少し、腕部30a、30bに圧縮力を掛けることなく、腕部30a、30bを側壁19a、19bに押し付けるようになる。更に、図2cはロータ15が図2aの位置から90度まで回転した状態を示す。ロータ15はTDCで基部31に力を掛け、基部31によってばね部材29を逆さ方向に持ち上げる。しかしここにおいても、腕部30a、30bに圧縮力は掛からない。実際に、基部31が逆方向に湾曲すると、ばね部材29によってロータ15に掛かる力は低減される。図1の基部27の場合と同様に、リブ32によって膜材21に掛かる力、即ち膜材21によってロータ15に掛かる力は変わることはない。何故なら、圧縮前の円形状態から逆方向への湾曲状態へと形状を変えるにも、余分な力を殆ど必要としないからである。これについては、後に詳しく説明する。
【0022】
U字状部材29の利点は、図1の管状ばね部材22に比べて変形した後の回復が早いことである。これは使用の際に、保持部18が空気又は汲み上げられた液体或いは両者の混合物で満たされるためである。管状ばね部材22の場合には、上記の媒体を管状ばね部材22に満たし、管状ばね部材22が変形させる場合には、内部の液体を外部に排出して再び吸入する必要がある。もし、管状ばね部材22の液体の吸入、排出が短時間に行われないと、管状ばね部材22の変形は不可能になり、ロータ15の動きは妨げられ、それによって液体の出し入れ速度はロータ15の回転速度の最大値に影響を与えることになる。
【0023】
管状ばね部材22やキャップ25に液体の通過できる孔を形成することによって、この不具合は多少緩和されるが、管状ばね部材22の形状が管状であるために、液体を排除する際には時間的遅れを生ずる。図2aのU字状ばね部材29ではこの条件が緩和される。何故ならば、U字状ばね部材29の腕部30a、30bの間の間隔は広いため、腕部30a、30b間から液体を排除するために必要な大きな断面積を有する通路を配置できるからである。更に、キャップ34には通常は閉じた孔40が形成されており、孔40が開くと、ばね部材29が変形する際に腕部30a、30b間から、より早く液体が排除されるようになる。このようにして、ポンプの回転速度の最大値を更に高めることができる。
【0024】
図1のO字状のばね部材又は図2a、図2b、図2cのU字状のばね部材29は図3に示すばね部材35に置き換えることもできる。ばね部材35は図1のO字状のばね部材22のように作動し、ばね部材35が圧縮されない状態では平坦な基部36がO字状の管状ばね部材22の基部27と同じように作用する。
【0025】
図4は本発明とは関係しない通常の管状ばね部材を圧縮した結果を示し、図5図1図2a、図2b、図2c、図3に示したばね部材22、29、35をそれぞれ圧縮した場合の結果を示したものである。図4は柔軟性と弾性を有する材料から成る中空の円形断面を持つばね部材を圧縮したものである。図4に示すように、対応する力と距離はおよそ正比例し、ばね部材の壁厚や直径の長さに依存することはない。図4の管状ばね部材においては、ばね部材がBDCにあっても、流体の所定の吐出圧に対してシール装置14とロータ15の間を密封するのに十分な大きさの力が掛かるように、図4に示した1地点から作動し始める必要がある。ばね部材がTDCに向かうと、この力は距離に比例して増加し、ロータ15の回転位置とは関係なく力の変化を必要としない場合、又は殆ど変化を必要としない場合であっても、ロータ15がTDCの位置に至ると封止を維持するのに必要な力を大きく超えてしまう。即ち、図4のばね部材を使うと、ロータ15の摩擦力は不必要に増加する。図5では、図1図2a、図2b、図2c、図3に示したばね部材22、29、35が同じように圧縮され、それに対応する力が測定されている。図5は測定結果であり、図1に示したO字状のばね部材22は□印に、図2のU字状ばね部材29は◇印に、図3のD字状のばね部材35を△印にそれぞれ対応している。
【0026】
図5の全てのばね部材22、29、35の場合には、圧縮されると対応する力は急激に上昇する。そして、中間部分では距離の増大による力の変化率が比較的平らになり、更に次の急激に上昇する前に、力は距離と共に減少する。このようにして、シール装置14を通過する際に、単位距離当りに受ける力は移動距離の限界値において、限界値に向かう中間領域よりも低くなる。単位距離当りの力が中間領域で平坦になるのは、図5では図4と異なって、全てのばね部材22、29、35において半径方向の圧縮変形に、基部27、31、36の内側への動きが順応しないからである。その代り、ばね部材22、29、35それ自身は側壁19a、19bから受ける縦方向の圧縮力によって湾曲する。図5に示すように、圧縮力は減少するが、それは基部27、31、36が上方に反転するためである。
【0027】
従って、もし図1図2a、図2b、図2c、図3に示した実施の形態において、リブ24a、32に要求される移動距離が、図5の比較的平坦な部分に対応するならば、ばね部材22、29、35によってロータ15に付加される応力は、ばね部材22、29、35の移動する範囲ではばらつきが10%以内に収まるので、定義によって一定であるとされる。図5にはO字状管状ばね部材22の場合に、この範囲を作動距離と書き込んである。U字状とD字状のばね部材29、35の作動距離はより短いことが分かる。ばね部材29のU字状については、図5のグラフ図からも明らかなように、作動距離は2.5mmほどであり、2.25mm〜4.75mmの間に入る。ばね部材22、29、35はBDCにおける力が封止を維持する力に相当するように配置される。この力はばね部材22、29、35がTDCの位置に移動しても変化することはなく、又は殆ど変化することもない。従って、摩擦力もBDCとTDCの間で必要な最小のレベルを維持して不変であり、又は殆ど変わることはない。これによって、駆動装置から供給されるべき力は低減され、より正確な速度制御を可能にする。更に、発熱は抑えられ、ポンプの寿命を延ばすことになる。
【0028】
窪んだ表面16a、16bは、ロータ15の軸線に平行な方向において形状が変化する。ばね部材22、29、35は少なくとも表面16a、16bの軸線方向の長さに相当する長さを持っているので、ばね部材22、29、35の撓みは軸線に沿った方向で変化し得る。軸線に沿ったばね部材22、29、35の端部ではばね部材22、29、35は常に最大の圧縮歪を受ける。何故なら、これらの端部では、ばね部材22、29、35は窪んだ表面16a、16bの端部を越え、端部間に跨って、効率的にロータ15の円筒状の表面に接触するからである。この端部間で、ばね部材22、29、35はBDCにおける最小の負荷からTDCにおける最大の負荷に対応できるように撓むことになる。
【0029】
ばね部材22、29、35は最大撓みと最小撓みの間でロータ15に略一定の力を加え、ロータ15の軸方向の長さに沿ってロータ15に加える力もロータ15の回転中は一定であり、それは、所定の吐出圧において封止を維持するために必要な最小の力と略同等になる。
【0030】
ばね部材には他の形状も可能である。例えば図6に示すように、ばね部材は長さ方向に延在する円弧から成る片状部材37であってもよい。図1図2a、図2b、図2c、図3でも示したように片状部材37は、互いに離れて側壁19a、19bに固定される端部38a、38bを備えている。この場合に、片状部材37は接着剤の使用や、片状部材37のそれぞれの端部を収容する側壁19a、19bの有する孔への挿入によって固定される。シール装置14に係る他の実施の形態には、図7に示す押出し成形されたばね部材40も含まれる。ばね部材40は中央にリブ41を、左右に部位42、42bを有する平面から成る。部位42、42bの先端には、リブ41の突出した方向とは反対方向に突出したフランジ部43a、43bを形成する。使用の際してばね部材40は、図2a、図2b、図2cに示したU字状のばね部材29と同様に装着される。ばね部材40は図2a、図2b、図2cに示したばね部材29と同様に保持部18内に挿入される。
【0031】
上述のばね部材と同様にロータ15に掛かる力が非線形に作用し、他の形状を有するばね部材の使用も可能であり、それによって、シール装置14よりロータ15に掛かる力は低減される。
【0032】
リブ24a、32、41はばね部材22、29、35、40上に形成されていると同様に、膜材21上に形成することもできる。図に示したリブ24a、32、41は長手方向に延在し、四角形状の断面を有している。しかし、リブの形状はこれに限られるものではなく、他の形状であってもよい。膜材21を省略して、リブ24a、32、41をロータ15に直接作用させて、ばね部材22、29、35、40だけでシール装置14を形成してもよい。
【0033】
勿論、シール装置14以外でも、上述のポンプの構造はPCT/GB2005/003300とPCT/GB2010/00798に記載の方法によって変更可能である。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7