(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突出開始位置と前記前進限位置との間の距離と前記減速距離とを比較し、前記突出開始位置と前記前進限位置との間の距離が前記減速距離より長いか等しい場合は、前記標準前進速度に等しい速度を前記突出開始位置通過速度とし、
前記突出開始位置と前記前進限位置との間の距離が前記減速距離より短い場合は、前記突出開始位置と前記前進限位置との間の距離と前記減速度とから前記突出開始位置通過速度を求めることを特徴とする請求項4記載のエジェクタを具備する射出成形機のエジェクタ動作方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術は、エジェクタピンが金型に突き当たるまでの間において、高速で動作させてはいるものの、エジェクタプレートが金型を前進させる間の速度は従来と変わりがないため、全体の時間短縮の割合が少なくなることがある。
また、エジェクタの動作時間を短くする目的で、単にエジェクタに対して指令をする設定速度を上げるだけでは、エジェクタ前進距離が短い場合に設定速度まで到達しないおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、エジェクタの動作時間を十分に短縮して、成形品の離形性を向上させることができる射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る発明では、エジェクタを具備する射出成形機において、前記エジェクタの前進限位置と、前記エジェクタが成形品の突出を開始する突出開始位置と、前記エジェクタの突出中における標準前進速度と、を設定するエジェクタ動作条件設定手段と、設定された前記エジェクタの加速度及び減速度を取得する取得手段と、前記エジェクタの動作態様を設定するエジェクタ動作態様設定手段と、を備え、前記エジェクタ動作態様設定手段は、前記標準前進速度で前進中の前記エジェクタが前記減速度で減速を開始してから停止するまでの移動距離である減速距離と、前記突出開始位置と前記前進限位置との間の突出距離と、前記標準前進速度とから、前記減速度で減速して前記前進限位置に停止することが可能な前記突出開始位置における通過速度を突出開始位置通過速度として求め、該突出開始位置通過速度まで前記加速度で加速するための加速距離を求め、前記加速距離だけ前記突出開始位置より後方の位置を前記エジェクタの前進開始位置として設定することを特徴とするエジェクタを具備する射出成形機が提供される。
【0009】
請求項1に係る発明では、設定された減速度で減速して前進限位置に停止することが可能な突出開始位置における通過速度を突出開始位置通過速度として求め、設定された加速度で突出開始位置において突出開始位置通過速度となるために必要な加速距離を求めて、突出開始位置より加速距離だけ後方の位置をエジェクタの前進開始位置として設定したことによって、エジェクタプレートが動き始めるときに最適な速度で動き始めることが可能となり、エジェクタプレートが前進を始めてから所定の位置で停止するまでの時間を可能な限り短くすることが可能となる。また、突出開始位置通過速度を、設定された減速度で減速して前進限位置に停止することが可能な突出開始位置における通過速度に設定しているため、エジェクタの前進限位置において確実に停止させることが可能となる。
【0010】
本願の請求項2に係る発明では、前記エジェクタ動作態様設定手段は、前記突出開始位置と前記前進限位置との間の距離と前記減速距離とを比較し、前記突出開始位置と前記前進限位置との間の距離が前記減速距離より長いか等しい場合は、前記標準前進速度に等しい速度を前記突出開始位置通過速度とし、前記突出開始位置と前記前進限位置との間の距離が前記減速距離より短い場合は、前記突出開始位置と前記前進限位置との間の距離と前記減速度とから前記突出開始位置通過速度を求めることを特徴とする請求項1記載のエジェクタを具備する射出成形機が提供される。
【0011】
請求項2に係る発明では、突出開始位置と前進限位置との間の距離と減速距離との関係に応じて突出開始位置通過速度の設定を変更するようにしたため、エジェクタプレートが前進を始めてから所定の位置で停止するまでの時間を可能な限り短くして、エジェクタの前進限位置において確実に停止させることが可能となる。
【0012】
本願の請求項3に係る発明では、前記加速距離と該加速距離の移動に要する時間とを表示する表示装置を備えることを特徴とするエジェクタを具備する請求項1または2に記載の射出成形機が提供される。
請求項3に係る発明では、加速距離と、その加速距離の移動に要する時間とを表示装置に表示することによって、操作者が最適なエジェクタ前進タイミングを把握することができ、エジェクタ前進タイミングに合わせて成形条件調整を行うことが可能となる。
【0013】
本願の請求項4に係る発明では、エジェクタを具備する射出成形機のエジェクタ動作方法において、前記エジェクタの前進限位置と、前記エジェクタが成形品の突出を開始する突出開始位置と、前記エジェクタの突出中における標準前進速度と、をエジェクタ動作条件として設定し、設定された前記エジェクタの加速度及び減速度を取得し、前記標準前進速度で前進中の前記エジェクタが前記減速度で減速を開始してから停止するまでの移動距離である減速距離と、前記突出開始位置と前記前進限位置との間の突出距離と、前記標準前進速度とから、前記減速度で減速して前記前進限位置に停止することが可能な前記突出開始位置における通過速度を突出開始位置通過速度として求め、該突出開始位置通過速度まで前記加速度で加速するための加速距離を求め、前記加速距離だけ前記突出開始位置より後方の位置を前記エジェクタの前進開始位置として設定することを特徴とするエジェクタを具備する射出成形機のエジェクタ動作方法が提供される。
【0014】
請求項4に係る発明では、設定された減速度で減速して前進限位置に停止することが可能な突出開始位置における通過速度を突出開始位置通過速度として求め、設定された加速度で突出開始位置において突出開始位置通過速度となるために必要な加速距離を求めて、突出開始位置より加速距離だけ後方の位置をエジェクタの前進開始位置として設定したことによって、エジェクタプレートが動き始めるときに最適な速度で動き始めることが可能となり、エジェクタプレートが前進を始めてから所定の位置で停止するまでの時間を可能な限り短くすることが可能となる。また、突出開始位置通過速度を、設定された減速度で減速して前進限位置に停止することが可能な突出開始位置における通過速度に設定しているため、エジェクタの前進限位置において確実に停止させることが可能となる。
【0015】
本願の請求項5に係る発明では、前記突出開始位置と前記前進限位置との間の距離と前記減速距離とを比較し、前記突出開始位置と前記前進限位置との間の距離が前記減速距離より長いか等しい場合は、前記標準前進速度に等しい速度を前記突出開始位置通過速度とし、前記突出開始位置と前記前進限位置との間の距離が前記減速距離より短い場合は、前記突出開始位置と前記前進限位置との間の距離と前記減速度とから前記突出開始位置通過速度を求めることを特徴とする請求項4記載のエジェクタを具備する射出成形機のエジェクタ動作方法が提供される。
【0016】
請求項5に係る発明では、突出開始位置と前進限位置との間の距離と減速距離との関係に応じて突出開始位置通過速度の設定を変更するようにしたため、エジェクタプレートが前進を始めてから所定の位置で停止するまでの時間を可能な限り短くして、エジェクタの前進限位置において確実に停止させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、エジェクタの動作時間を十分に短縮して、成形品の離形性を向上させることができる射出成形機を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明で用いられるエジェクタを具備する射出成形機の可動盤と固定盤付近を示した図である。固定盤40には固定側金型42が取り付けられており、可動盤10には可動側金型12が取り付けられている。また、可動盤10には、成形品30を突出すためのエジェクタ装置が設けられている。
【0020】
エジェクタ装置は、エジェクタロッド20、エジェクタプレート22、エジェクタピン24から構成されている。エジェクタロッド20は、可動盤10を貫通するように設けられており、成形品を突出たり戻る方向(
図1における左右方向)に移動可能とされている。エジェクタプレート22は、エジェクタロッド20と別体として設けられており、エジェクタロッド20がエジェクタプレート22に接触して押圧されることによって、成形品を突出す方向(
図1における右方向)に移動可能とされている。エジェクタプレート22と可動側金型12との間には、図示しないバネが設けられており、エジェクタロッド20によるエジェクタプレート22への押圧が停止すると、バネの弾性力により、エジェクタプレート22が戻る方向(
図1における左方向)に移動可能とされている。エジェクタピン24はエジェクタプレート22に固定されており、エジェクタプレート22がエジェクタロッド20によって押圧されることによって、エジェクタピン24が成形品30に直接接触して、成形品30の突出を行う。
【0021】
このように構成されている射出成形機において、可動盤10を
図1における右方向に移動させることによって、型閉じを行う。その後固定盤の背後(
図1における右側)から、図示しない射出装置によって固定側金型42内に溶融樹脂の射出を行う。その後、可動盤10及び可動側金型12にさらに力を加えて型締めを行って、溶融樹脂を固化させて成形品30を成形する。その後、可動盤10及び可動側金型12を
図1における左方向に移動させることによって、型開きを行い、型開き完了後に、エジェクタロッド20、エジェクタプレート22、エジェクタピン24を突出方向(
図1における右方向)に移動させることによって、成形品の突出を行う。
【0022】
図2は、従来の突出動作の流れを示した図である。
図2(a)は突出前の状態を示しており、エジェクタロッド20がエジェクタプレート22に当接して、エジェクタプレート22が前進し始める位置とされている。この状態から突出を開始して、エジェクタロッド20及びエジェクタプレート22が突出方向(
図2における右方向)に移動して、突出を開始する。
図2(b)は突出途中の状態を示している。その後突出を継続すると、
図2(c)の状態となる。
図2(c)は、突出前進限の状態を示しており、この状態において、成形品30は突き出されて落下する。
【0023】
このように構成された従来の突出動作における、エジェクタ位置とエジェクタ速度との関係の一例が
図4(a)に示されている。従来の突出動作においては、突出前の状態が、エジェクタロッド20がエジェクタプレート22に当接して、エジェクタプレート22が前進し始める位置とされているため、突出開始時点におけるエジェクタ速度が0であり、突出を行いながらエジェクタの加速を行うこととなる。そのため、エジェクタ動作を行う時間が多くかかってしまうおそれがあった。
【0024】
そこで本実施形態においては、突出開始時点におけるエジェクタ速度が所定の速度となるように設定して、可能な限りエジェクタ動作を行う時間を短縮させるようにしている。
以下の説明において、可動側金型12から成形品30を離型させる方向を前方とする。
図3は、本実施形態における突出動作の流れを示した図である。本実施形態においては、
図3(a)に示されている突出前の状態が、エジェクタロッド20がエジェクタプレート22から分離して、エジェクタプレート22よりも
図3における左方向からエジェクタロッド20の移動を開始し、エジェクタロッド20が所定の速度を有した状態でエジェクタプレート22に突き当たってエジェクタプレート22を移動させて突出を開始する。これにより、突出開始時点におけるエジェクタプレート22の速度が0ではなく、所定の速度を持って突出を開始するため、エジェクタ動作の時間を短縮することが可能となる。その後の突出途中の状態については、
図3(b)に示されているような状態であり、エジェクタ速度を除けば、
図2(b)に示されている従来技術における突出途中の状態と同様である。本実施形態における詳細なエジェクタ速度や、エジェクタロッド20の前進開始位置の設定方法については後述する。
【0025】
エジェクタの前進距離(突出開始位置と前進限位置との間の距離)をX、あらかじめ設定されたエジェクタの標準前進速度をVc、加速時の加速度をa1、減速時の減速度をa2とする。これらの値は、射出成形機における駆動部やモータの性能から、機械設計時に把握できる値であり、射出成形機の制御装置に備えられた記憶装置内に保存されている。また、あらかじめ記憶装置内に保存しておくことに代えて、図示しない入力手段等を用いて操作者が入力して設定することも可能である。エジェクタの前進をトルク及び推力で制御する場合には、Xとしてエジェクタが前進する上限距離、Vcとしてエジェクタの前進速度の上限値を設定することができる。サーボモータを駆動装置に用いた電動射出成形機では、これらのパラメータは容易に把握することができるし、油圧や空圧を駆動源に用いた射出成形機においても、射出成形機の設計段階の性能評価確認等によって、実験等によってパラメータを把握しておくことが可能となる。また、これらの値はあらかじめ記憶装置内に保存しておくことに代えて、入力装置等を用いて操作者が入力することによって設定することも可能である。
【0026】
一定の加減速度によって加減速する場合、標準前進速度Vcから減速度a2で減速して停止するまでに移動する距離(減速距離)をX2とすると、
X2=Vc
2/(2×a2)
となる。
同じ条件で成形を行う場合には、以前に行った成形における情報からX2を検出してもよい。
【0027】
駆動装置にサーボモータを用いた電動射出成形機においては、サーボモータに取り付けられた位置検出装置からの信号を用いて、エジェクタ前進中に速度が減少を始めたり、減速の指令が入ってからエジェクタが停止するまでの距離を検出することができる。また、サーボモータとは別置して、位置検出装置をエジェクタまたは金型に取り付けておき、射出成形機に位置情報を帰還させることも可能である。
【0028】
以下、場合分けして、それぞれの突出開始位置における突出開始位置通過速度及び前進開始位置の設定方法を説明する。
図4は、減速距離X2に対してエジェクタの前進距離Xが等しいかそれ以上である場合を示している。
図4(a)はすでに説明したとおりの、従来のエジェクタ動作の場合のエジェクタ速度とエジェクタ位置との関係を示しており、
図4(b)は本実施形態におけるエジェクタ速度とエジェクタ位置との関係を示している。いずれの場合であっても、この場合においては、標準前進速度Vcで移動していても、エジェクタの前進限位置の手前X2において減速を開始することによって、前進限位置においてエジェクタを停止させることが可能となる。
【0029】
従来のエジェクタ動作においては、
図4(a)に示されているように、減速時においては、エジェクタの前進限位置の手前X2の地点において減速を開始して、前進限位置においてエジェクタを停止させているが、加速時においては、突出開始位置において速度0から加速を始めるため、標準前進速度Vcに達するまでに時間がかかり、エジェクタ動作を行う時間が多くかかってしまうおそれがあった。
【0030】
本実施形態においては、
図4(b)に示されているように、エジェクタの突出開始位置において、標準前進速度Vcとなるようにあらかじめエジェクタを加速させる。
具体的には、速度0状態から加速度a1によって速度Vcまで加速するのに必要な距離X1は、
X1=Vc
2/(2×a1)
となるので、突出開始位置よりも上記のX1だけ後方の位置をエジェクタが前進開始する前進開始位置として設定する。
【0031】
なお、一般的にエジェクタ装置においては、エジェクタプレート22やエジェクタピン24と比較して、エジェクタロッド20の方がはるかに質量が大きいため、エジェクタ突出開始位置においてエジェクタロッド20の速度がVcでエジェクタプレート22に突き当たった場合には、エジェクタロッド20、エジェクタプレート22、エジェクタピン24は速度Vcで動作を行うが、エジェクタロッド20とエジェクタプレート22、エジェクタピン24との質量の差があまり大きくなく、突き当たった後の速度に影響を及ぼす場合には、それを加味してエジェクタ突出開始位置におけるエジェクタロッド20の速度がVc以上となるように加速を行い、突き当たった後のエジェクタロッド20、エジェクタプレート22、エジェクタピン24が速度Vcで移動するように速度を設定することもできる。
【0032】
エジェクタ前進開始することになると、エジェクタは前進開始位置から加速度a1で加速しながら前進する。これにより、突出開始位置においては、エジェクタ速度は標準前進速度のVcとなる。すなわち、
図4に示されている、減速距離X2に対してエジェクタの前進距離Xが等しいかそれ以上である場合には、突出開始位置の通過速度は標準前進速度Vcと等しくなるようにされており、エジェクタの前進限位置の手前X2の地点において減速を開始して、前進限位置においてエジェクタが停止する。
【0033】
この際に、
図7に示されているような、射出成形機に備えられた操作画面や表示装置50等において、前進開始位置から突出開始位置までの距離X1や、距離X1を移動するのに要する時間t=√(2X1/a1)の値を表示したり、1サイクルの成形を行った実績値を表示することができる。
【0034】
次に、
図5に基づいて、減速距離X2よりもエジェクタの前進距離Xが小さい場合を説明する。
図5(a)は従来のエジェクタ動作の場合のエジェクタ速度とエジェクタ位置との関係を示しており、
図5(b)は本実施形態におけるエジェクタ速度とエジェクタ位置との関係を示している。いずれの場合であっても、この場合においては、突出期間中にエジェクタの前進速度が標準前進速度Vcまで上がってしまうと、その後減速度a2で減速を行っても、エジェクタの前進限位置においてエジェクタを停止させることができなくなる。
【0035】
そのため、従来のエジェクタ動作においては、
図5(a)に示されているように、突出開始位置で速度0から加速度a1で加速を開始したときのエジェクタ速度とエジェクタ位置との関係と、減速度a2で減速を行った時にエジェクタの前進限位置で停止できるようなエジェクタ速度とエジェクタ位置との関係との交わる点まで加速度a1で加速を行い、その後減速度a2で減速を行う。ただ、この場合は加速時においては、突出開始位置において速度0から加速を始めるため、加速できる時間が短く、到達できる速度も小さいものとなるため、エジェクタ動作を行う時間が多くかかってしまうおそれがあった。
【0036】
本実施形態においては、
図5(b)に示されているように、エジェクタの突出開始位置からエジェクタの前進限位置までの距離を減速度a2で減速したときにエジェクタの前進限位置で停止できるような速度に、エジェクタの突出開始位置においてなるように、あらかじめエジェクタを加速させる。
具体的には、突出開始位置の通過速度をVtとすると、X=Vt
2/(2×a2)となるため、Vt=√(2×a2×X)であり、
加速距離X1’は、
X1’=Vt
2/(2×a1)=(2×a2×X)/(2×a1)=a2×X/a1
とすることができる。
【0037】
これに基づき、突出開始位置よりもX1’(=a2×X/a1)だけ後方の位置をエジェクタが前進開始する前進開始位置として設定する。
エジェクタ前進開始することになると、エジェクタは前進開始位置から加速度a1で加速しながら前進する。これにより、突出開始位置において突出開始位置の通過速度のVtとなり、その後減速度a2によって減速を開始して、前進限位置においてエジェクタが停止する。
【0038】
この場合も、減速距離X2に対してエジェクタの前進距離Xが等しいかそれ以上である場合と同様に、射出成形機に備えられた操作画面や表示装置等において、前進開始位置から突出開始位置までの距離X1’や、距離X1’を移動するのに要する時間t=√(2X1’/a1)の値を表示したり、1サイクルの成形を行った実績値を表示することができる。それに加えて、エジェクタ動作中に、標準前進速度Vcまで到達しないことを表示するようにしてもよい。
【0039】
図6は、本実施形態の動作の流れを示すフローチャートである。以下、ステップごとに説明する。
・(ステップSA1)エジェクタ動作条件を設定する。
・(ステップSA2)エジェクタ動作条件として設定された標準前進速度Vc、減速度a2等に基づいて、標準前進速度Vcから減速度a2で減速するときに停止するまでに移動する距離である減速距離X2を求める。
・(ステップSA3)エジェクタの前進距離である、突出開始位置と前進限位置との間の距離Xと減速距離X2との比較を行い、X≧X2であるかどうかを判定する。X≧X2である場合(YES)はステップSA4に進み、X<X2である場合(NO)はステップSA5に進む。
【0040】
・(ステップSA4)エジェクタの前進開始位置として、突出開始位置よりもX1(=Vc
2/(2×a1))だけ後方の位置を設定して終了する。
・(ステップSA5)エジェクタの前進開始位置として、突出開始位置よりもX1’ (=a2×X/a1)だけ後方の位置を設定して終了する。
【0041】
ここで、ハイサイクル成形などにおいて、型開きの途中から突出を開始して、型開きとエジェクタ突出を同時に行う成形方法がある。この場合、エジェクタ突出開始のタイミングは、型開きの位置で設定されることがある。本実施形態のように突出開始位置よりも加速距離だけ後方の前進開始位置からエジェクタを前進させる場合は、加速距離だけエジェクタが移動するのに要する時間の間に金型が移動する距離を求め、エジェクタ前進開始させる型開き位置設定を求めた距離だけ金型開き開始の方向へ減じることによって、加速距離だけエジェクタが移動するのに要する時間だけ早くエジェクタが前進開始するようにしてもよい。
【0042】
上記の実施形態では、加速時の加速度をa1、減速時の減速度をa2の一定値、すなわち、直線型加減速の例で説明したが、本願は直線型加減速に限らず、指数型加減速やベル型加減速など種々の加減速型式に適用できる。また、加速度や減速時の加速度の時間変化を加減速パターンとして設定しているような場合にも適用できる。
【0043】
この場合には、設定された標準前進速度Vcから減速して停止するまでの移動距離(減速距離)X2を加減速型式や減速時の加速度などの減速特性あるいは減速パターンなどに応じて求め、突出開始位置と前進限位置との間の距離XとX2とを比較して、X≧X2の場合とX<X2の場合とに分け、X≧X2の場合は標準前進速度Vcまで加速するのに要する距離(加速距離)X1を加減速型式や加速度などの加速特性あるいは加速パターンなどに応じて求めることができ、X<X2の場合は、突出開始位置から減速を開始して前進限位置で停止できる突出開始位置通過速度を減速特性あるいは減速パターンなどに応じて求め、求めた突出開始位置通過速度まで加速するのに要する移動距離(加速距離)X1’を加速特性あるいは加速パターンなどに応じて求めることができる。
【0044】
また、加速度の値や減速時の加速度の値を設定する代わりに加速の時定数や減速の時定数を設定するような場合にも本願は適用できる。
さらに、本実施形態においては、エジェクタロッド20とエジェクタプレート22とが分離可能な構成とされ、エジェクタロッド20が加速度a1で加速してエジェクタプレート22に突き当たる構成とされているが、エジェクタロッド20、エジェクタプレート22、エジェクタピン24が一体となった構成とされて、エジェクタロッド20、エジェクタプレート22、エジェクタピン24全体で加速を行って成形品30に突き当たるような構成とすることも可能である。
【0045】
本実施形態によって、実際に金型の突出プレートの全体的な前進する速度が上がることで、成形品を確実に離型させることができる。また、これにより材質や形状によって離型後に静電気などの要因で、成形品が金型に再度付着することの対策となる。
また、金型内でゲートカットを行う場合、カットを行うエジェクタ前進距離は短い場合が多い。本実施形態によって、最適なタイミングで可能な限り短時間でカットピンを前進させることが可能となるため、薄肉で樹脂の固化が早く切れにくい成形品やカット部分のひずみが問題となる場合に有利である。単にエジェクタが前進するタイミングを早くすると、樹脂に残圧があり、金型のカットピンが力を受けて損耗する。カットに時間がかかると樹脂が固化してしまい、カットができない場合がある。
【0046】
さらに、金型内で成形品の圧縮を行う場合にも本実施形態は有益である。薄肉成形品や高い転写性を必要とするレンズ成形では短時間の圧縮が必要となる。しかしながら、単にエジェクタが前進するタイミングを早くすると、金型キャビティへの樹脂充填が不足して未充填部ができてしまう。エジェクタ前進による圧縮に時間がかかると、樹脂が固化して圧縮できない場合や成形品の残留応力が大きくなる場合がある。
また、エジェクタの前進開始位置から突出開始位置までの事前の加速距離と、その距離を移動するために要する時間を射出成形機の操作画面に表示することで、最適なエジェクタ前進タイミングを狙って成形条件調整を行う際の手助けともなる。