【実施例】
【0069】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない
1.試験に用いた(A)成分と(B)成分
1−1.(A)成分の調製
1−1−1.(A)成分に該当する結合臭素化合物の調製
(結合臭素化合物No.A−1)
臭化ナトリウム5.2重量部を水7.3重量部に溶解した水溶液を、有効塩素12重量%(Cl
2換算)を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液30重量部に加えて室温(20℃)で10分間撹拌して次亜臭素酸水溶液を調製した。次いでスルファミン酸8.3重量部に水8.6重量部を加え、48%水酸化ナトリウム8.6重量部を冷却しながら加えて調製したスルファミン酸ナトリウム水溶液を該次亜臭素酸水溶液に加えて、室温(20℃)で10分間撹拌して、結合臭素化合物の水溶液である結合臭素化合物No.A−1を得た。なお、各反応の前後で有効ハロゲンの失活はなかった。
結合臭素化合物への転化は吸収スペクトルの変化によって判定した。即ち、
図1のAの曲線は次亜塩素酸ナトリウム水溶液の吸収スペクトルを示し、
図1のBの曲線は次亜塩素酸ナトリウムに臭化ナトリウム水溶液を加えて10分後の次亜臭素酸塩水溶液の吸収スペクトルを示すが、次亜塩素酸ナトリウムは完全に次亜臭素酸塩に転化していることが確認された。次いで、この次亜臭素酸塩水溶液にスルファミン酸ナトリウム水溶液を加えて10分後の結合臭素化合物水溶液の吸収スペクトルは
図1のCの曲線として示されるが、Bの曲線とは全く異なって次亜臭素酸塩の吸収ピークは消失しており、完全に結合臭素化合物に転化していることが確認された。なお、吸収スペクトルの測定は、各試料を有効ハロゲンとして344mg/L(Cl
2換算)になるようにイオン交換水で希釈し、10mm石英セルを用いて測定した。
【0070】
(結合臭素化合物No.A−2)
臭化ナトリウム3.7重量部を水7.3重量部に溶解した水溶液を、有効塩素12重量%(Cl
2換算)を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液30重量部に加えて室温(20℃)で10分間撹拌して次亜臭素酸水溶液を調製した。次いでスルファミン酸8.3重量部に水8.8重量部を加え、48%水酸化ナトリウム12.9重量部を冷却しながら加えて調製したスルファミン酸ナトリウム水溶液を該次亜臭素酸水溶液に加えて、室温(20℃)で10分間撹拌して、結合臭素化合物の水溶液である結合臭素化合物No.A−2を得た。
【0071】
(結合臭素化合物No.A−3)
臭化ナトリウム4.2重量部を水7.3重量部に溶解した水溶液を、有効塩素12重量%(Cl
2換算)を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液30重量部に加えて室温(20℃)で10分間撹拌して次亜臭素酸水溶液を調製した。次いでスルファミン酸8.3重量部に水8.8重量部を加え、48%水酸化ナトリウム12.9重量部を冷却しながら加えて調製したスルファミン酸ナトリウム水溶液を該次亜臭素酸水溶液に加えて、室温(20℃)で10分間撹拌して、結合臭素化合物の水溶液である結合臭素化合物No.A−3を得た。
【0072】
(結合臭素化合物No.A−4)
臭化ナトリウム2.9重量部を水7.3重量部に溶解した水溶液を、有効塩素12重量%(Cl
2換算)を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液30重量部に加えて室温(20℃)で10分間撹拌して次亜臭素酸水溶液を調製した。次いでスルファミン酸8.3重量部に水8.8重量部を加え、48%水酸化ナトリウム12.9重量部を冷却しながら加えて調製したスルファミン酸ナトリウム水溶液を該次亜臭素酸水溶液に加えて、室温(20℃)で10分間撹拌して、結合臭素化合物の水溶液である結合臭素化合物No.A−4を得た。
【0073】
(結合臭素化合物No.A−5)
臭化ナトリウム5.3重量部を水7.3重量部に溶解した水溶液を、有効塩素12重量%(Cl
2換算)を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液30重量部に加えて室温(20℃)で10分間撹拌して次亜臭素酸水溶液を調製した。次いでスルファミン酸8.3重量部に水8.8重量部を加え、48%水酸化ナトリウム12.9重量部を冷却しながら加えて調製したスルファミン酸ナトリウム水溶液を該次亜臭素酸水溶液に加えて、室温(20℃)で10分間撹拌して、結合臭素化合物の水溶液である結合臭素化合物No.A−5を得た。
【0074】
1−1−2.(A)成分に該当しない酸化性殺菌剤の調製(比較例に使用)
(酸化性殺菌剤No.B−1)
臭化ナトリウム5.2重量部を水7.3重量部に溶解した水溶液を、有効塩素12重量%(Cl
2換算)を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液30重量部に加えて室温(20℃)で10分間撹拌して次亜臭素酸水溶液である酸化性殺菌剤No.B−1を得た。
【0075】
(酸化性殺菌剤No.B−2)
スルファミン酸8.3重量部に水8.8重量部を加え、48%水酸化ナトリウム12.9重量部を冷却しながら加えて調製したスルファミン酸ナトリウム水溶液に、有効塩素12重量%(Cl
2換算)を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液30重量部を加えて室温(20℃)で10分間撹拌し、結合塩素化合物の水溶液である酸化性殺菌剤No.B−2を得た。
【0076】
(酸化性殺菌剤No.B−3)
有効塩素12重量%(Cl
2換算)を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液を酸化性殺菌剤No.B−3とした。
【0077】
(酸化性殺菌剤No.B−4)
スルファミン酸8重量部に水8.8重量部を加え、48%水酸化ナトリウム19重量部を冷却しながら加えて調製したスルファミン酸ナトリウム水溶液に、有効塩素12重量%(Cl
2換算)を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液40重量部を加えて室温(20℃)で10分間撹拌し、結合塩素化合物の水溶液である酸化性殺菌剤No.B−4を得た。
【0078】
1−2.(B)成分の調製
1−2−1.(B)成分の(1)に該当するテロマーの調製
(テロマーNo.1A)
撹拌機、温度計、窒素ガス通気孔、ガラス還流管を取り付けた500mLガラス製4つ口セパラブルフラスコに水を34.5重量部加えて窒素ガスの通気と撹拌を開始し、90℃に加熱した。次いで、液温を90℃を維持しながら3個のチューブポンプを用いてモノマー溶液、開始剤溶液、テロゲン溶液をそれぞれ別個に3時間かけて連続的に滴下した。ここでモノマー溶液は、80%アクリル酸の30重量部と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(略号:AMPS)の16重量部と48%水酸化ナトリウムの6.5重量部を撹拌混合して調製した。開始剤溶液は、過硫酸ナトリウム1重量部を3重量部の水に溶解したものを用いた。テロゲン溶液はピロ亜硫酸ナトリウムの1重量部を8重量部の水に溶解したものを用いた。即ち、アクリル酸とAMPSの配合重量比は60:40、アクリル酸とAMPSからなるモノマー(m)に対するピロ亜硫酸ナトリウムからなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は0.013である。各溶液の滴下終了後、90℃でさらに1時間加熱した後、水を加えて全量を100重量部としてテロマーNo.1Aを得た。該テロマー中のアクリル酸とAMPSの合計含量は40%、各モノマーの反応率は99%以上、該テロマーの平均分子量は約40000であった。
【0079】
(テロマーNo.2A)
ピロ亜硫酸ナトリウムの配合量を変え、反応モル比(t/m)を0.026とした以外はテロマーNo.1Aと同様の方法によりテロマーNo.2Aを得た。該テロマー中のアクリル酸とAMPSの合計含量は40%、各モノマーの反応率は99%以上、該テロマーの平均分子量は約20000であった。
【0080】
(テロマーNo.3A)
ピロ亜硫酸ナトリウムの配合量を変え、反応モル比(t/m)を0.051とした以外はテロマーNo.1Aと同様の方法によりテロマーNo.3Aを得た。該テロマー中のアクリル酸とAMPSの合計含量は40%、各モノマーの反応率は99%以上、該テロマーの平均分子量は約10000であった。
【0081】
(テロマーNo.4A)
ピロ亜硫酸ナトリウムの配合量を変え、反応モル比(t/m)を0.036とし、同時にモノマー溶液の80%アクリル酸配合量を40重量部に変え、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(=AMPS)の配合量を8重量部に変えた以外はテロマーNo.1Aと同様の方法によりテロマーNo.4Aを得た。アクリル酸とAMPSの配合重量比は80:20であり、該テロマー中のアクリル酸とAMPSの合計含量は40%、各モノマーの反応率は99%以上であった。
【0082】
(テロマーNo.5A)
ピロ亜硫酸ナトリウムの配合量を変え、反応モル比(t/m)を0.051とした以外はテロマーNo.4Aと同様の方法によりテロマーNo.5Aを得た。該テロマー中のアクリル酸とAMPSの合計含量は40%、各モノマーの反応率は99%以上であった。
【0083】
(テロマーNo.6A)
モノマー溶液として、80%アクリル酸の30重量部とスチレンスルホン酸ナトリウム(略号:SS)の16重量部を水20重量部に撹拌溶解して調製したものを用い、テロゲン溶液としてピロ亜硫酸ナトリウムの4重量部を8重量部の水に溶解したものを用いた以外はテロマーNo.1Aと同様の方法によりテロマーNo.6Aを得た。即ち、アクリル酸とSSの配合重量比は60:40、アクリル酸とSSからなるモノマー(m)に対するピロ亜硫酸ナトリウムからなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は0.051、該テロマー中のアクリル酸とSSの合計含量は40%である。
【0084】
(テロマーNo.7A)
モノマー溶液として、メタクリル酸の24重量部と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(=AMPS)の16重量部と48%水酸化ナトリウムの6.5重量部を撹拌混合して調製したものを用い、テロゲン溶液としてピロ亜硫酸ナトリウムの3.3重量部を8重量部の水に溶解したものを用いた以外はテロマーNo.1Aと同様の方法によりテロマーNo.7Aを得た。即ち、メタクリル酸とAMPSの配合重量比は60:40、メタクリル酸とAMPSからなるモノマー(m)に対するピロ亜硫酸ナトリウムからなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は0.049、該テロマー中のメタクリル酸とAMPSの合計含量は40%である。
【0085】
(テロマーNo.8A)
テロゲンとしてピロ亜硫酸ナトリウムの替わりにシステインを2.6重量部加えた以外はテロマーNo.1Aと同様の方法によりテロマーNo.8Aを得た。即ち、アクリル酸とAMPSからなるモノマー(m)に対するシステインからなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は0.052である。
【0086】
(テロマーNo.9A)
モノマー溶液として、80%アクリル酸の30重量部と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(=AMPS)の8重量部とN−tert−ブチルアクリルアミド(略号:tBuAAm)の8重量部を水20重量部に撹拌溶解して調製したものを用い、テロゲン溶液としてピロ亜硫酸ナトリウムの4重量部を用いた以外はテロマーNo.1Aと同様の方法によりテロマーNo.9Aを得た。即ち、アクリル酸とAMPSとtBuAAmの配合重量比は60:20:20、アクリル酸とAMPSとtBuAAmからなるモノマー(m)に対するピロ亜硫酸ナトリウムからなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は0.048、該テロマー中のアクリル酸とAMPSとtBuAAmの合計含量は40%である。
【0087】
(テロマーNo.10A)
モノマー溶液として、80%アクリル酸の50重量部を用い、テロゲン溶液としてピロ亜硫酸ナトリウムの6.3重量部を用いた以外はテロマーNo.1Aと同様の方法によりテロマーNo.10Aを得た。即ち、アクリル酸の単独配合であり、アクリル酸からなるモノマー(m)に対するピロ亜硫酸ナトリウムからなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は0.060、該テロマー中のアクリル酸の含量は40%である。
【0088】
(テロマーNo.11A)
Optidose2000(商品名、ダウ・ケミカル社製)
テロゲンがアミンチオールであり、不飽和単量体がアクリル酸とAMPSである分子量4500のテロマー。
【0089】
(テロマーNo.12A)
Optidose3100(商品名、ダウ・ケミカル社製)
テロゲンがアミンチオールであり、不飽和単量体がアクリル酸とAMPSとtBuAAmである分子量4500のテロマー。
【0090】
(テロマーNo.13A)
Flosperse3024CSA50(商品名、SNF社製)
テロゲンが亜硫酸塩であり、不飽和単量体がアクリル酸とAMPSである分子量5500のテロマー。アクリル酸とAMPSの配合重量比は75:25である。
【0091】
1−2−2.(B)成分の(1)に該当しないテロマーの調製(比較例に使用)
(テロマーNo.1B)
テロマーNo.1Aの製造時と同じ4つ口フラスコにイソプロピルアルコール34.5重量部加えて窒素ガスの通気と撹拌を開始し、70℃に加熱維持しながらテロマーNo.1Aと同様のモノマー溶液、開始剤溶液をそれぞれ別個に3時間かけて連続的に滴下し、各溶液の滴下終了後、70℃でさらに1時間加熱した後、イソプロピルアルコールを留去し、水を加えて全量を100重量部としてテロマーNo.1Bを得た。ここで、該テロマーにおけるテロゲンはイソプロピルアルコールであり、本発明の(B)成分の(1)のテロゲンには該当しない。また、モノマーであるアクリル酸とAMPSの配合重量比は60:40、アクリル酸とAMPSからなるモノマー(m)に対するイソプロピルアルコールからなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は1.4である。該テロマー中のアクリル酸とAMPSの合計含量は40%、各モノマーの反応率は99%以上であった。
【0092】
(テロマーNo.2B)
モノマー溶液の80%アクリル酸配合量を40重量部に変え、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(=AMPS)の配合量を8重量部に変えた以外はテロマーNo.1Bと同様の方法によりテロマーNo.2Bを得た。アクリル酸とAMPSの配合重量比は80:20であり、該テロマー中のアクリル酸とAMPSの合計含量は40%であった。
【0093】
(テロマーNo.3B)
テロゲンとしてピロ亜硫酸ナトリウムの替りにβ−メルカプトプロピオン酸を1.5重量部加えた以外はテロマーNo.1Aと同様の方法によりテロマーNo.3Bを得た。ここで、該テロマーにおけるテロゲンのβ−メルカプトプロピオン酸は、本発明の(B)成分の(1)のテロゲンには該当しない。アクリル酸とAMPSからなるモノマー(m)に対するβ−メルカプトプロピオン酸からなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は0.034である。
【0094】
(テロマーNo.4B)
テロマーNo.1Aの製造時と同じ4つ口フラスコに無水マレイン酸10重量部とo−キシレン50重量部を入れ、140℃に昇温して攪拌溶解した。窒素ガス通気下で140℃を維持しながら、ジ−tert−ブチルパーオキシド0.3重量部をキシレン10重量部に溶解した開始剤溶液を15分かけて滴下した。滴下終了後、窒素ガス通気下で140℃を90分間維持した後、フラスコ底部にポリマーが沈澱したことを確認し、デカンテーションにより上澄み液を取り除いた。そこへ水100mlを加え、透明なポリマー溶液を得た。ポリマー溶液をロータリーエバポレーターにて、減圧下50℃の条件でキシレンを留去して、テロマーNo.4Bであるマレイン酸テロマーの30重量%水溶液を55重量部得た。該テロマーの平均分子量は500であった。ここで、該テロマーにおけるテロゲンはo−キシレンであり、本発明の(B)成分の(1)のテロゲンには該当しない。マレイン酸からなるモノマー(m)に対するo−キシレンからなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は5.5である。
【0095】
(テロマーNo.5B)
モノマー溶液として80%アクリル酸の30重量部と3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(略号:AHPS)ナトリウムの40重量%水溶液の44.5重量部を撹拌混合して調製したものを用い、テロゲン溶液としてピロ亜硫酸ナトリウムの3.3重量部を8重量部の水に溶解したものを用いた以外はテロマーNo.1Aと同様の方法によりテロマーNo.5Bを得た。ここで、AHPSはヒドロキシル基を有しており、本発明の(B)成分の(1)の不飽和単量体には該当しない。また、モノマーであるアクリル酸とAHPSの配合重量比は60:40、アクリル酸とAHPSからなるモノマー(m)に対するピロ亜硫酸ナトリウムからなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は0.042、該テロマー中のアクリル酸とAHPSの合計含量は40%である。
【0096】
(テロマーNo.6B)
テロゲンとしてピロ亜硫酸ナトリウムの替りにβ−メルカプトプロピオン酸を5重量部加えた以外はテロマーNo.10Aと同様の方法によりテロマーNo.6Bを得た。ここで、該テロマーにおけるテロゲンのβ−メルカプトプロピオン酸は、本発明の(B)成分の(1)のテロゲンには該当しない。また、アクリル酸からなるモノマー(m)に対するβ−メルカプトプロピオン酸からなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は0.047、該テロマー中のアクリル酸の含量は40%である。
【0097】
(テロマーNo.7B)
モノマー溶液として80%アクリル酸の30重量部とアクリル酸−2−ヒドロキシプロピルの16量部を撹拌混合して調製したものを用い、テロゲン溶液としてピロ亜硫酸ナトリウムの3.3重量部を8重量部の水に溶解したものを用いた以外はテロマーNo.1Aと同様の方法によりテロマーNo.7Bを得た。ここで、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルはヒドロキシル基を有しており、本発明の(B)成分の(1)の不飽和単量体には該当しない。また、モノマーであるアクリル酸とアクリル酸−2−ヒドロキシプロピルの配合重量比は60:40、アクリル酸とアクリル酸−2−ヒドロキシプロピルからなるモノマー(m)に対するピロ亜硫酸ナトリウムからなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は0.037、該テロマー中のアクリル酸とアクリル酸−2−ヒドロキシプロピルの合計含量は40%である。
【0098】
(テロマーNo.8B)
モノマー溶液として80%アクリル酸の30重量部とメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルの16量部を撹拌混合して調製したものを用いた以外はテロマーNo.7Bと同様の方法によりテロマーNo.8Bを得た。ここで、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルはヒドロキシル基を有しており、本発明の(B)成分の(1)の不飽和単量体には該当しない。また、モノマーであるアクリル酸とメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルの配合重量比は60:40、アクリル酸とメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルからなるモノマー(m)に対するピロ亜硫酸ナトリウムからなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は0.037、該テロマー中のアクリル酸とメタリル酸−2−ヒドロキシエチルの合計含量は40%である。
【0099】
(テロマーNo.9B)
テロゲンとしてピロ亜硫酸ナトリウムの替りにβ−メルカプトプロピオン酸を1.5重量部加えた以外はテロマーNo.9Aと同様の方法によりテロマーNo.9Bを得た。ここで、該テロマーにおけるテロゲンのβ−メルカプトプロピオン酸は、本発明の(B)成分の(1)のテロゲンには該当しない。また、アクリル酸とAMPSとtBuAAmからなるモノマー(m)に対するβ−メルカプトプロピオン酸からなるテロゲン(t)の反応モル比(t/m)は0.033である
【0100】
(テロマーNo.10B)
Belclene200LA(商品名、BWA社製)
テロゲンがo−キシレンであり、不飽和単量体がマレイン酸である分子量500のテロマー。ここで、該テロマーにおけるテロゲンのo−キシレンは本発明の(B)成分の(1)のテロゲンには該当しない。
【0101】
(テロマーNo.11B)
アロンA−6016(商品名、東亜合成社製)
テロゲンがイソプロピルアルコールであり、不飽和単量体がアクリル酸とAMPSである分子量3000のテロマー。アクリル酸とAMPSの配合重量比は80:20である。ここで、該テロマーにおけるテロゲンのイソプロピルアルコールは本発明の(B)成分の(1)のテロゲンには該当しない。
【0102】
(テロマーNo.12B)
アロンA−200U(商品名、東亜合成社製)
テロゲンがイソプロピルアルコールであり、不飽和単量体がアクリル酸である分子量2000のテロマー。ここで、該テロマーにおけるテロゲンのイソプロピルアルコールは本発明の(B)成分の(1)のテロゲンには該当しない。
【0103】
1−2−3.(B)成分の(1)に該当しない非テロマー系重合体の調製(比較例に使用)
(非テロマー系重合体No.1C)
テロマーNo.1Aの製造時と同じ4つ口フラスコに無水マレイン酸40重量部(0.40モル)、硫酸第一鉄7水和物0.02重量部、水40重量部を加え、これに48%水酸化カリウム水溶液を11.9重量部(0.10モル)加えた。窒素を連続的に通気しながら、この液を95℃に加熱した後、液温を95℃に維持しながら触媒として35%過酸化水素18.3重量部と過硫酸ナトリウム0.65重量部を水2.5重量部に溶解した液を120分間かけて滴下した。滴下終了後、硫酸第一鉄7水和物0.02重量部を一括で加え、更に95℃で2時間加熱して、重量平均分子量1000のマレイン酸重合体の水溶液である非テロマー系重合体No.1Cを得た。該非テロマー系重合体におけるマレイン酸の反応率は88%であった。
【0104】
(非テロマー系重合体No.2C)
アロンA−6520(商品名、東亜合成社製):分子量1000の非テロマー系マレイン酸重合体。
【0105】
(非テロマー系重合体No.3C)
アクアリックLS−20(商品名、日本触媒社製):アクリル酸とAHPSの共重合体。
【0106】
1−2−4.(B)成分の(1)に係る一覧表
(B)成分の(1)に該当するテロマー、(B)成分の(1)に該当しないテロマー及び(B)成分の(1)に該当しない非テロマー系重合体について、概略を表1に示した。
【表1】
【0107】
1−2−5.(B)成分の(2)に該当する有機ホスフィン酸化合物の調製
(有機ホスフィン酸化合物No.1D)
テロマーNo.1Aの製造時と同じ4つ口フラスコに水35重量部と無水マレイン酸10.7重量部を加え、これに水酸化ナトリウム水溶液(48重量%)20重量部を徐々に加え、更に次亜リン酸ナトリウム・1水和物11.6重量部を加えた。この液を窒素ガス通気下で80℃に加熱し、35%過酸化水素1.6重量部を水5.5重量部に溶解した開始剤溶液と15.7重量部の80%アクリル酸とをそれぞれ別々に1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2.5時間加熱して冷却後、全体で100重量部になるように水を追加投入して反応生成物水溶液の有機ホスフィン酸化合物No.1Dを得た。該有機ホスフィン酸化合物の活性分含量は34.8重量%、pH5、後述の測定方法により算出した有機ホスフィン酸転化率は95%、平均分子量は400であった。
【0108】
(有機ホスフィン酸化合物No.2D)
無水マレイン酸98重量部を水138重量部に溶解し、これに水酸化ナトリウム水溶液(48重量%)81.7重量部を徐々に加え、更に次亜リン酸ナトリウム・1水和物30.8重量部を加えた。この液を窒素ガス通気下で100℃に加熱し、過酸化水素水(35重量%)15.5重量部を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに100℃で2時間加熱して反応生成物水溶液の有機ホスフィン酸化合物No.2Dを得た。該有機ホスフィン酸化合物はポリ−ビス(1,2−ジカルボキシエチル)ホスフィン酸を主成分として含み、その活性分含量は35.4重量%、pH4.4、後述の測定方法により算出した有機ホスフィン酸転化率は90%、平均分子量は420であった。
【0109】
(有機ホスフィン酸化合物No.3D)
テロマーNo.1Aの製造時と同じ4つ口フラスコに水を34.5重量部加えて、窒素ガスの通気と撹拌を開始し、90℃に加熱した。次いで、液温を90℃に維持しながら3個のチューブポンプを用いてモノマー溶液、開始剤溶液、次亜リン酸塩溶液をそれぞれ別個に3時間かけて連続的に滴下した。ここでモノマー溶液は、80%アクリル酸の30重量部と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(=AMPS)の16重量部と48%水酸化ナトリウムの6.5重量部を撹拌混合して調製した。開始剤溶液は、過硫酸ナトリウム1重量部を3重量部の水に溶解したものを用いた。次亜リン酸塩溶液は次亜リン酸ナトリウム・1水和物の3重量部を8重量部の水に溶解したものを用いた。各溶液の滴下終了後、90℃でさらに1時間加熱した後、水を加えて全量を100重量部として有機ホスフィン酸化合物No.3Dを得た。該有機ホスフィン酸化合物の配合 モノマーの活性分含量は40%、後述の測定方法により算出した有機ホスフィン酸転化率は97%、各モノマーの反応率は99%以上、平均分子量は1000であった。
【0110】
(有機ホスフィン酸化合物No.4D)
Belclene500(商品名、BWA社製):次亜リン酸とアクリル酸の反応による平均分子量400の有機ホスフィン酸化合物
【0111】
(有機ホスフィン酸化合物No.5D)
Belsperse164(商品名、BWA社製):次亜リン酸とアクリル酸の反応による平均分子量1600の有機ホスフィン酸化合物
【0112】
(有機ホスフィン酸化合物No.6D)
Belclene400(商品名、BWA社製):次亜リン酸と、アクリル酸及びAMPS(重量比73:27)の反応による分子量4000の有機ホスフィン酸化合物
【0113】
1−2−6.(B)成分の(2)に該当しない有機ホスフィン酸化合物の調製(比較例に使用)
(有機ホスフィン酸化合物No.1E)
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(=AMPS)の替わりに3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(=AHPS)ナトリウムの40重量%水溶液を44.5量部用いた以外は有機ホスフィン酸No.3Dと同様の方法により有機ホスフィン酸化合物No.1Eを得た。ここで、AHPSはヒドロキシル基を有しており、本発明の(B)成分の(2)の不飽和単量体には該当しない。
【0114】
1−2−7.(B)成分の(3)に該当する有機ホスホン酸化合物の調製
(有機ホスホン酸化合物No.1F)
水50重量部に無水マレイン酸17.9重量部と亜リン酸9.4重量部を加え、水酸化ナトリウム23.8重量部を冷却しながら徐々に加えた。この液を窒素通気下で105℃で還流しながら過硫酸ナトリウム4重量部を水7重量部に溶解した開始剤溶液を4時間40分かけて滴下した。滴下終了後、さらに液温を45分間維持した後、冷却して水を加えて全量を100重量部とし、有機ホスホン酸化合物No.1Fを得た。該有機ホスホン酸化合物はホスホノコハク酸と重合度2のポリ(1,2−ジカルボキシエチル)ホスホン酸ナトリウム塩とを主成分として含み、亜リン酸に対するマレイン酸のモル比は1.6、配合モノマーの活性分含量は30.6%、後述の測定方法により算出した亜リン酸の有機ホスホン酸転化率は90%であった。
【0115】
(有機ホスホン酸化合物No.2F)
水50重量部に無水マレイン酸15.7重量部と亜リン酸9.4重量部を加え、水酸化ナトリウム22重量部を冷却しながら徐々に加えた。この液を窒素通気下で95℃に加熱維持しながら、過硫酸ナトリウム4重量部を水7重量部に溶解した開始剤溶液を7時間30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに45分間加熱を維持した後、冷却して水を加えて全量を100重量部とし、有機ホスホン酸化合物No.2Fを得た。該有機ホスホン酸化合物はホスホノコハク酸と重合度2のポリ(1,2−ジカルボキシエチル)ホスホン酸ナトリウム塩とを主成分として含み、亜リン酸に対するマレイン酸のモル比は1.4、配合モノマーの活性分含量は29.4%、後述の測定方法により算出した亜リン酸の有機ホスホン酸転化率は90%であった。
【0116】
(有機ホスホン酸化合物No.3F)
ジエチルハイドロゲンホスファイト27.6重量部を窒素通気下で120℃に加熱した。これにジ−tert−ブチルペルオキシド7.3重量部とアクリル酸エチル60重量部を同時に4時間にわたって滴下後、液温を120℃で2時間維持した。水100重量部を加え、減圧下で有機分を留去後、塩酸(18重量%)200重量部を加えて16時間還流下で加水分解した。減圧下で水分を留去後、45重量部のポリマー状反応生成物の有機ホスホン酸化合物No.3Fを得た。該有機ホスホン酸化合物はポリ(2−カルボキシエチル)ホスホン酸を主成分として含む。
【0117】
(有機ホスホン酸化合物No.4F)
BriCorr288(商品名、SOLVAY社製):亜リン酸とアクリル酸の反応による有機ホスホン酸化合物
【0118】
(有機ホスホン酸化合物No.5F)
キレストPH−430(商品名、キレスト(株)社製):2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(略号:PBTC)
【0119】
1−2−8.(B)成分の(3)に該当しない有機ホスホン酸化合物の調製(比較例に使用)
(有機ホスホン酸化合物No.1G)
キレストPH−210(商品名、キレスト(株)社製):1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(略号:HEDP)。ヒドロキシル基を有する有機ホスホン酸化合物であり、本発明の(B)成分の(3)には該当しない。
【0120】
(有機ホスホン酸化合物No.2G)
Belcor575(商品名、BWA社製):2−ヒドロキシホスホノ酢酸。ヒドロキシル基を有する有機ホスホン酸化合物であり、本発明の(B)成分の(3)には該当しない。
【0121】
(有機ホスホン酸化合物No.3G)
キレストPH−320(商品名、キレスト(株)社製):ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(略号:NTMP)、別名:アミノトリメチルホスホン酸(略号:ATMP)。アミノ基を有する有機ホスホン酸化合物であり、本発明の(B)成分の(3)には該当しない。
【0122】
1−2−9.(B)成分の(2)及び(3)に係る一覧表
(B)成分の(2)に該当する有機ホスフィン酸化合物、(B)成分の(2)に該当しない有機ホスフィン酸化合物、(B)成分の(3)に該当する有機ホスホン酸化合物及び(B)成分の(3)に該当しない有機ホスホン酸化合物について、概略を表2に示した。
【表2】
【0123】
1−3.有機ホスフィン酸転化率及び有機ホスホン酸転化率の測定方法
(有機ホスフィン酸転化率)
反応生成物の1%溶液1mLに、トリエチルアミン10μL、3000mg/L塩化第2水銀水溶液200μL、エタノール1mLを加えて110℃で20分間加熱し、未反応の次亜リン酸をリン酸エステルに変化させ、モリブデン青(アスコルビン酸還元)吸光光度法の加水分解性りん定量方法(JIS K0101:1998)により吸光度を測定した。予め作成した次亜リン酸の検量線より反応生成物溶液中の未反応の次亜リン酸の含量を求めた。また、モリブデン青(アスコルビン酸還元)吸光光度法の全りん定量方法(JIS K0101:1998)により反応生成物溶液中の全リン酸の含量を求め、式(6)により次亜リン酸の有機ホスフィン酸転化率を計算した。
J=(Jt−Jn)/Jt×100 (6)
ここで
J:次亜リン酸の有機ホスフィン酸転化率(%)
Jn:反応生成物中の未反応の次亜リン酸含量(%)
Jt:反応生成物中の全リン酸含量(%)
【0124】
(有機ホスホン酸転化率)
反応生成物の1%溶液1mLに、トリエチルアミン10μL、3000mg/L塩化第2水銀水溶液200μL、エタノール1mLを加えて110℃で20分間加熱し、未反応の亜リン酸をリン酸エステルに変化させ、モリブデン青(アスコルビン酸還元)吸光光度法の加水分解性りん定量方法(JIS K0101:1998)により吸光度を測定した。予め作成した亜リン酸の検量線より反応生成物溶液中の未反応の亜リン酸の含量を求めた。また、モリブデン青(アスコルビン酸還元)吸光光度法の全りん定量方法(JIS K0101:1998)により反応生成物溶液中の全リン酸の含量を求め、式(7)により亜リン酸の有機ホスホン酸転化率を計算した。
J=(Jt−Jn)/Jt×100 (7)
ここで
J:亜リン酸の有機ホスホン酸転化率(%)
Jn:反応生成物中の未反応の亜リン酸含量(%)
Jt:反応生成物中の全リン酸含量(%)
【0125】
2.高温貯蔵安定性試験
気温が30℃を超える夏季に1箇月間以上貯蔵することを想定して、本発明の水処理剤組成物に対する40℃×30日間の高温貯蔵安定性試験を行った。
【0126】
2−1.試験に用いた水処理剤組成物の調製
表3、表4及び表5に示した(A)成分及び(B)成分を表3、表4及び表5に示した重量部で混合した溶液を調製し、該溶液のpHが13.3以上になるように48%水酸化ナトリウム溶液を添加した後、水を加えて全量を100重量部として供試用の各水処理剤組成物を得た。ここで用いる水は純水、イオン交換水、軟化水のいずれでもよい。
表3には、(A)成分と、自製品の(B)成分の(1)に該当するテロマー、又は自製品の(B)成分の(1)に該当しないテロマー、又は自製品の(B)成分の(1)に該当しない非テロマー系重合体を有効成分として含む水処理剤組成物が挙げられており、表4には、(A)成分と、市販品の(B)成分の(1)に該当するテロマー、又は市販品の(B)成分の(1)に該当しないテロマー、又は市販品の(B)成分の(1)に該当しない非テロマー系重合体を有効成分として含む水処理剤組成物が挙げられており、表5には(A)成分と、(B)成分の(2)に該当する有機ホスフィン酸化合物、又は(B)成分の(2)に該当しない有機ホスフィン酸化合物、又は(B)成分の(3)に該当する有機ホスホン酸化合物、又は(B)成分の(3)に該当しない有機ホスホン酸化合物を有効成分として含む水処理剤組成物が挙げられている。
これらの水処理剤組成物の有効ハロゲン含量(Cl
2換算重量%)は後述の測定方法で測定され、製造直後の有効ハロゲン含量は3.6%であった。この試験における供試水処理剤組成物の有効ハロゲン含量は結合臭素含量に相当する。また、後述の算出方法で算出される420nmにおける吸光係数は0.55であった。
【0127】
2−2.高温貯蔵安定性試験方法
供試各水処理剤組成物を密閉したガラス容器にそれぞれ入れ、40℃の恒温器中で30日間静置して高温貯蔵安定性試験を実施後、後述の測定方法で測定する有効ハロゲン含量と後述の算出方法で算出する420nmにおける吸光係数を求めた。本試験に用いた水処理剤組成物では有効ハロゲン含量は結合臭素含量に相当するため、高温貯蔵安定性試験前後の有効ハロゲン含量の比を結合臭素残留率として表3〜表5に示した。また、試験後の420nmにおける吸光係数を表3〜表5に示した。
【0128】
2−3.水処理剤組成物中の有効ハロゲン含量の測定方法
本発明者は、本発明の水処理剤組成物の色相が強い黄色であることに着目して、有効ハロゲン含量と420nmにおける吸光度の関係を調べた結果、両者は極めて高い相関を示すことを見出した。即ち、配合する酸化性殺菌剤が次亜臭素酸塩とスルファミン酸の反応により得られる結合臭素化合物の場合、有効ハロゲン含量:C(Cl
2換算重量%)と420nmにおける吸光度:A
420の関係は式(8)で近似できた。
A
420=0.5575C (8)
また、配合する酸化性殺菌剤が次亜臭素酸塩の場合、有効ハロゲン含量と420nmにおける吸光度の関係は式(9)で近似できた。
A
420=1.1966C (9)
一方、配合する酸化性殺菌剤が次亜塩素酸塩とスルファミン酸の反応により得られる結合塩素化合物の場合、有効ハロゲン含量と420nmにおける吸光度の関係は式(10)で近似できた。
A
420=0.0140C (10)
さらに、配合する酸化性殺菌剤が次亜塩素酸塩の場合、有効ハロゲン含量と420nmにおける吸光度の関係は式(11)で近似できた。
A
420=0.0277C (11)
上記の式(8)〜(11)の関係において、吸光度測定時の光路長はいずれも1cmとした。
次亜塩素酸塩や結合塩素化合物と比較して、次亜臭素酸塩や結合臭素化合物の420nmにおける吸光度は極めて高いため、420nmにおける吸光度測定により水処理剤組成物中の結合臭素化合物あるいは次亜臭素酸塩の含量を測定できることを見出した。
【0129】
高温貯蔵安定性試験に用いた水処理剤組成物は、配合する酸化性殺菌剤が次亜臭素酸塩とスルファミン酸の反応により得られる結合臭素化合物の場合に相当するため、上記の式(8)を適用できる。即ち、供試水処理剤組成物の420nmにおける吸光度を測定し、その値(A
420)を用いて式(8)を変形した下記の式(12)で求められる有効ハロゲン含量は結合臭素含量に相当する。
有効ハロゲン含量(結合臭素含量)(%)=A
420/0.5575 (12)
【0130】
2−4.420nmにおける吸光係数の算出方法
供試水処理剤組成物の420nmにおける吸光係数は、前述の式(5)に従って水処理剤組成物の420nmにおける吸光度と水処理剤組成物中の有効ハロゲン含量から算出する。光路長は通常1cmである。ここで用いる有効ハロゲン含量は以下の測定方法によって求める。
(有効ハロゲン含量の測定方法)
(1)N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩の1.0gとエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物の1.0gとリン酸二水素一ナトリウムの36.4gとリン酸一水素二ナトリウムの61.6gを乳鉢で混合してDPD希釈粉末とする。
(2)水処理剤組成物の1〜2gを採り秤量し、これをA(g)とする。これにイオン交換水を加えて全量を100mLにメスアップして水処理剤組成物溶液を調製する。
(3)200mLトールビーカーに0.5gのDPD希釈粉末を加える。
(4)100mLのイオン交換水と水処理剤組成物溶液の1mLを加え、撹拌してDPD希釈粉末を溶解させる。
(5)ヨウ化カリウム1gを加えて溶かし、2分間静置して赤に発色させる。
(6)速やかに2.82mmol/L硫酸第一鉄アンモニウム溶液で滴定する。赤色が無色になった点を終点とする。このときの滴定量をB(mL)する。
(7)次式により有効ハロゲン含量を求める。
有効ハロゲン含量(%Cl
2)=B/A
ここで、有効ハロゲン含量は、遊離塩素、遊離臭素、結合塩素、結合臭素の合計である。
【0131】
2−5.試験に用いた水処理剤組成物及び試験結果
試験に用いた水処理剤組成物の(A)成分と(B)成分の概略と高温貯蔵安定性試験結果を表3〜表5に示した。
【表3】
NT:未試験
【0132】
【表4】
NT:未試験
【0133】
【表5】
*:参考例
NT:未試験
【0134】
表3〜表5の結果から、比較例の水処理剤組成物は、25℃×14日間の貯蔵では結合臭素残留率が高いものの、40℃×30日間の貯蔵では結合臭素残留率が低く高温貯蔵安定性が悪いのに対し、本発明の水処理剤組成物は40℃×30日間の貯蔵においても結合臭素残留率が高く、その顕著な高温貯蔵安定性が明示された。
【0135】
また、(B)成分の(1)のテロゲンとしてピロ亜硫酸ナトリウムを用いたテロマーにおいて、テロゲンと不飽和単量体の比率(表1の(t/m)反応モル比)や不飽和単量体の共重合比は本発明の水処理剤組成物の結合臭素残留率に影響しなかった。この結果より、本発明の水処理剤組成物の結合臭素残留率は重合度や共重合比よりも末端基の化学構造が影響すると推測される。
【0136】
3.藻生育抑制試験
本発明の水処理剤組成物による藻の生育抑制効果を確認する藻生育抑制試験を行った。
【0137】
3−1.試験に用いた水処理剤組成物の調製
表6に示した酸化性殺菌剤成分、(B)成分及び1,2,3−ベンゾトリアゾール(略号:BT)を表6に示した重量部で混合した溶液を調製し、該溶液のpHが13.3以上になるように48%水酸化ナトリウム溶液を添加した後、水を加えて全量を100重量部として供試用の各水処理剤組成物を得た。ここで用いる水は純水、イオン交換水、軟化水のいずれでもよい。
供試水処理剤組成物の製造直後と前述の40℃×30日間の高温貯蔵安定性試験後の有効ハロゲン含量と420nmにおける吸光係数を測定した。測定方法は前述の高温貯蔵安定性試験と同じである。
【0138】
【表6】
その他、前述の水処理剤組成物No.S3、S25も本試験に用いた。
【0139】
3−2.藻生育抑制試験方法及び試験結果
冷却塔より採取した藻を乳鉢ですり潰した後、MC培地を入れた三角フラスコに入れ、シリコン栓をして日光の当たる窓際に数週間程度静置して藻の培養液を調製した。
(MC培地の調製方法)
イオン交換水に硝酸カリウム1.25g、硫酸マグネシウム7水和物1.25g、リン酸二水素カリウム1.25gを溶解し、Fe金属混液1mL、A5金属混液1mLを加えて1Lにメスアップした。ここで、Fe金属混液は、硫酸第一鉄7水和物の1gをイオン交換水に溶解して500mLにメスアップ後、濃硫酸を2滴加えて調製した。A5金属混液は、ホウ酸2.86g、硫酸マンガン7水和物2.50g、硫酸亜鉛7水和物0.222g、硫酸銅5水和物0.079g、モリブデン酸ナトリウム2水和物0.025gをイオン交換水に溶解して1Lにメスアップして調製した。
別のフラスコに、pH8.3に調整したMC培地に表6に示す各供試用水処理剤組成物を、ジエチル―p―フェニレンジアンモニウム(DPD)−硫酸アンモニウム鉄(II)滴定法で測定した該組成物中の有効ハロゲン含量から計算した有効ハロゲン添加量としてそれぞれ5mg−Cl
2/L又は10mg−Cl
2/Lとなるように添加した試験液100mLを入れた。その各フラスコに培養液各1mLを接種し、シリコン栓をして日当たりのよい屋外に14日間静置した。
14日後に、JIS K0400−080−10:2000「水質−生化学的パラメータの測定−クロロフィルa濃度の吸光光度定量法」に準拠して試験液中のクロロフィルa濃度を測定した。すなわち、試験液をNo.6定量濾紙で濾過後、藻類を捕捉した濾紙を乾燥し、濾紙を20mLのエタノールを入れた密栓瓶に入れ、75℃で5分間加熱後、冷暗所で24時間静置して、付着藻類に含まれるクロロフィルaを抽出した。10mm比色セルを用いてエタノールを対照として、抽出液の665nmにおける吸光度A
665と750nmにおける吸光度A
750を測定した。別の抽出液10mLに4N−塩酸を0.03mL加えて15分間放置した後、同様にして665nmにおける吸光度Aa
665と750nmにおける吸光度Aa
750を測定する。
下記式より、抽出液中のクロロフィルa(ρc)とフェオフィチン(ρp)の各濃度(μg/L)を計算した。
ρc=(A−Aa)×29.6
ρp=Aa×20.8
ここで、
A=A
665−A
750
Aa=Aa
665−Aa
750
測定したクロロフィルaとフェオフィチンの濃度に基づいて、次式により藻生育抑制率を計算した。結果を表7に示した。
藻生育抑制率(%)=(Z
0−Z)/Z
0×100
ここで
Z:薬品添加時のクロロフィルaとフェオフィチンの合計濃度
Z
0:薬品無添加時のクロロフィルaとフェオフィチンの合計濃度
【0140】
【表7】
【0141】
表7の結果から、本発明の水処理剤組成物を用いた実施例の藻生育抑制率は同じ有効ハロゲン添加量の比較例に比べて高く、本発明の水処理剤組成物の高い藻生育抑制効果が明示された。特に、30日間の高温貯蔵安定性試験を経た水処理剤組成物であっても、本発明の水処理剤組成物は結合臭素残留率が高いので、高い藻生育抑制効果を維持できることが明示された。
【0142】
4.開放式循環冷却水系評価試験
本発明の水処理剤組成物の付着物抑制効果及び金属腐食抑制効果を開放式循環冷却水系評価試験にて評価した。
【0143】
4−1.試験に用いた水処理剤組成物の調製
表8に示した酸化性殺菌剤成分、(B)成分及び1,2,3−ベンゾトリアゾール(略号:BT)を表8に示した重量部で混合した溶液を調製し、該溶液のpHが13.3以上になるように48%水酸化ナトリウム溶液を添加した後、水を加えて全量を100重量部として供試用の各水処理剤組成物を得た。ここで用いる水は純水、イオン交換水、軟化水のいずれでもよい。供試用水処理剤組成物の製造直後と前述の40℃×30日間の高温貯蔵安定性試験後の有効ハロゲン含量と420nmにおける吸光係数を測定した。測定方法は前述の高温貯蔵安定性試験と同じである。
【0144】
【表8】
その他、前述の水処理剤組成物No.S3、S44、S45を本試験に用いた。
【0145】
4−2.開放式循環冷却水系評価試験方法及び試験結果
開放式循環冷却水系の評価試験装置ならびに試験方法は、JIS G0593―2002「水処理剤の腐食及びスケール防止評価試験方法」のオンサイト試験法に準拠した。試験装置の概略を
図2に示す。伝熱管として外径12.7mm、長さ510mmのステンレス鋼管SUS304(JIS G3448)、炭素鋼鋼管STKM11A(JIS G3445)ならびにアルミニウム黄銅管C6871(JIS H3100)を用いた。
水槽2及び配管を含む系全体の水容量は62Lとし、水槽2の水温は35℃になるように水温制御装置9で制御した。試験用伝熱管評価部の線流速0.3m/sに相当する流量である210L/hになるように流量調整バルブ5で制御しながら循環ポンプ3で通水し、熱交換器7の熱流束は35kW/m
2とした。冷却塔1は冷却能力1.8冷却トンの誘引通風向流接触型のものを使用した。冷却塔入口・出口の循環水の温度差は15℃、蒸発水量は4.1L/hであった。
【0146】
補給水12の平均水質は、pH7、電気伝導度:18mS/m、Ca硬度:43mg−CaCO
3/L、Mg硬度:18mg−CaCO
3/L、Mアルカリ度:42mg−CaCO
3/L、 塩化物イオン:13mg/L、硫酸イオン:18mg/L、シリカ:12mg/Lであった。
初期処理として水槽2に補給水を張り、表8に示した供試水処理剤組成物400mg/Lとヘキサメタリン酸ソーダ(平均縮合度40)を12.5mg/L添加して、循環ポンプ3を作動させた後、常温で48時間循環した。(B)成分のテロマーNo.3Aを活性分として40mg/L添加後、熱交換器7の熱負荷を開始し、規定濃縮度に到達時点よりブローダウンを開始して循環水中のCa硬度が270mg−CaCO
3/Lになるように電気伝導率を自動的に制御した。具体的には、循環水の電気伝導率を電気伝導率測定セル4で連続的に測定し、その電気伝導率の入力信号を元に電気伝導率制御装置11を用いて設定された濃縮度に相当する電気伝導率になるようにブローダウンポンプ10を制御した。ブローダウンポンプ10と連動して、水処理剤注入装置13を同時に作動させて、
図2に示されていない処理剤タンクから、表8に示す供試水処理剤組成物を添加量が250mg/Lになるように水槽2に添加した。試験期間は30日間とした。試験期間中の循環水の平均水質はpH8.8、Ca硬度270mg−CaCO
3/L、Mアルカリ度280mg−CaCO
3/L、濃縮度は6.3倍であった。また、循環水中の残留ハロゲン濃度、酸化還元電位(ORP)及び一般細菌数を定期的に測定した。循環水中の残留ハロゲン濃度はジエチル―p―フェニレンジアンモニウム(DPD)比色法によって測定した。ここで残留ハロゲン濃度は、遊離残留塩素、遊離残留臭素、結合残留塩素、結合残留臭素の合計濃度である。ORPはORP計を循環水の戻り配管に設置して測定した。また、循環水中の一般細菌数はJIS K0102の方法に従って測定した。
【0147】
試験終了後、試験用伝熱管を取り外して、ステンレス鋼管におけるスケール付着速度と炭素鋼鋼管ならびにアルミニウム黄銅管における腐食速度をJIS G0593−2002の方法に則って測定した。また、試験終了後の冷却塔1内部の藻の付着状況を目視観察した。
循環水中の残留ハロゲン濃度、酸化還元電位(ORP)及び一般細菌数の平均値、ステンレス鋼管におけるスケール付着速度、炭素鋼鋼管ならびにアルミニウム黄銅管の腐食速度、及び試験終了後の冷却塔1内部の藻の付着状況の目視観察結果を表9に示した。
【0148】
【表9】
【0149】
表9の結果から、本発明の水処理剤組成物を用いた実施例のスケール付着速度と炭素鋼鋼管ならびにアルミニウム黄銅管における腐食速度は比較例に比べて小さく、本発明の水処理剤組成物の高い付着物抑制効果及び金属腐食抑制効果が明示された。また、本発明の水処理剤組成物を用いた実施例においては循環水中の残留ハロゲン濃度やORPも適切な範囲で維持でき、一般細菌数も低い値で維持できるので、冷却塔内の藻の付着状況においても、本発明の水処理剤組成物を用いた実施例では付着が認められず、僅かな付着や多い付着が認められた比較例に比べて明確な差異が示された。