(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169688
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】光触媒材、その製造方法及び光触媒装置
(51)【国際特許分類】
B01J 35/02 20060101AFI20170713BHJP
B01J 23/42 20060101ALI20170713BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20170713BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20170713BHJP
B01J 37/12 20060101ALI20170713BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20170713BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20170713BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
B01J35/02 JZNM
B01J23/42 M
B01J37/02 101E
B01J37/02 301M
B01J37/08
B01J37/12
B01J37/16
B01J37/34
B01D53/86 110
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-513881(P2015-513881)
(86)(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公表番号】特表2015-521104(P2015-521104A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】KR2012011736
(87)【国際公開番号】WO2013176369
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0056125
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】イ・ドンイル
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ソンムン
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ジュファン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジュヒュン
【審査官】
長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−096154(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0226813(US,A1)
【文献】
特開2006−326530(JP,A)
【文献】
特開平10−174881(JP,A)
【文献】
特開2009−061426(JP,A)
【文献】
特開2008−285613(JP,A)
【文献】
特開2008−264758(JP,A)
【文献】
特開2006−305527(JP,A)
【文献】
特開2012−096965(JP,A)
【文献】
特開2008−073571(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第2005−0114563(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−/38/74
B01D 53/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性の第1の金属酸化物膜を成膜するステップ;
前記第1の金属酸化物膜を第2の金属の前駆体溶液に浸漬させた後、前記多孔性の第1の金属酸化物膜の内部空隙に前記第2の金属の前駆体溶液を浸透させるステップ;及び
前記第2の金属の前駆体溶液を内部空隙に含有した前記多孔性の第1の金属酸化物膜に光を照射し、前記第2の金属の還元によって前記多孔性の第1の金属酸化物膜の内部空隙に前記第2の金属の粒子を形成するステップ;を含み、
前記第1の金属酸化物膜が第1の金属酸化物前駆体を用いるゾルゲル法によって基板上に成膜された後、または、第1の金属酸化物粉末、バインダー及び溶媒を含むスラリーを塗布して成膜された後、熱処理ステップをさらに行い、結晶性を有する前記第1の金属酸化物膜を形成し、または、前記第1の金属酸化物膜内の前記バインダーを除去し、
前記熱処理ステップは、1℃/min〜2℃/minの昇温速度で行われることを特徴とする光触媒材の製造方法。
【請求項2】
多孔性の第1の金属酸化物膜を成膜するステップ;
前記第1の金属酸化物膜を第2の金属の前駆体溶液に浸漬させた後、前記多孔性の第1の金属酸化物膜の内部空隙に前記第2の金属の前駆体溶液を浸透させるステップ;及び
前記第2の金属の前駆体溶液を内部空隙に含有した前記多孔性の第1の金属酸化物膜に光を照射し、前記第2の金属の還元によって前記多孔性の第1の金属酸化物膜の内部空隙に前記第2の金属の粒子を形成するステップ;を含み、
前記空隙の内部に第2の金属粒子が形成された多孔性の前記第1の金属酸化物膜を熱処理し、前記第2の金属粒子の少なくとも一部を酸化させることによって第2の金属酸化物を生成するステップをさらに含み、
前記熱処理ステップは、1℃/min〜2℃/minの昇温速度で行われることを特徴とする光触媒材の製造方法。
【請求項3】
前記光照射は、UV照射によって行われる、請求項1または請求項2に記載の光触媒材の製造方法。
【請求項4】
前記第1の金属酸化物膜は、第1の金属酸化物前駆体を用いるゾルゲル法によって基板上に成膜される、または、第1の金属酸化物粉末、バインダー及び溶媒を含むスラリーを基板に塗布して成膜される、請求項2に記載の光触媒材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒材、その製造方法及び光触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な光触媒物質であるTiO
2は、耐久性、耐磨耗性に優れ、安全且つ無毒な物質であって、価格が安いという長所を有する一方、バンドギャップエネルギーが大きいため紫外線波長以下の光のみを吸収することができ、外装材ではない室内に適用する際に限界を有する。
【0003】
このような側面で、室内への適用を目的として可視光線を吸収できる可視光に対して活性を有する触媒に対する研究が多く進められてきた。しかし、数多くの研究事例において一貫した傾向を見出しにくく、特に、実際の居住条件で性能が検証された結果を見出しにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一具体例では、室内光源でも効率が優れた可視光線応答型光触媒材を提供しようとする。
【0005】
本発明の他の具体例では、前記光触媒材を製造する方法を提供しようとする。
【0006】
本発明の更に他の具体例では、前記光触媒材を用いた光触媒装置を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一具体例では、空隙を含む多孔性の第1の金属酸化物膜、及び前記空隙の内部に形成された第2の金属粒子または第2の金属酸化物粒子を含む光触媒材を提供する。
【0008】
前記光触媒材は、380nm〜780nmの波長範囲の可視光線に対して活性を有してもよい。
【0009】
前記第2の金属粒子及び前記第2の金属酸化物粒子の平均直径は、それぞれ約1nm〜約10nmであってもよい。
【0010】
前記多孔性の第1の金属酸化物膜の厚さは、約30nm〜約100nmであってもよい。
【0011】
前記第1の金属酸化物膜に含まれた第1の金属酸化物は、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化ニオビオム及びこれらの組み合わせから選ばれた少なくとも一つを含んでもよい。
【0012】
前記第2の金属粒子及び前記第2の金属酸化物粒子の第2の金属は、タングステン、クロム、バナジウム、モリブデナム、銅、鉄、コバルト、マンガン、ニッケル、白金、金、セリウム、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム及びこれらの組み合わせから選ばれた少なくとも一つの金属を含んでもよい。
【0013】
前記光触媒材は、前記第2の金属粒子と第2の金属酸化物粒子の重量の総和に対して、前記多孔性の第1の金属酸化膜を約0.1:99.9〜約1:99の重量比で含んでもよい。
【0014】
本発明の他の具体例において、多孔性の第1の金属酸化物膜を成膜するステップ;前記第1の金属酸化物膜を第2の金属の前駆体溶液に浸漬させた後、前記多孔性の第1の金属酸化物膜の内部空隙に前記第2の金属の前駆体溶液を浸透させるステップ;及び前記第2の金属の前駆体溶液を内部空隙に含有した前記多孔性の第1の金属酸化物膜に光を照射し、前記第2の金属の還元によって前記多孔性の第1の金属酸化物膜の内部空隙に前記第2の金属の粒子を形成するステップ;を含む光触媒材の製造方法を提供する。
【0015】
前記光照射は、UV照射によって行われてもよい。
【0016】
前記第1の金属酸化物膜は、第1の金属酸化物前駆体を用いるゾルゲル法によって基板上に成膜されたり、または、第1の金属酸化物粉末、バインダー及び溶媒を含むスラリーを基板に塗布して成膜されたりしてもよい。
【0017】
前記第1の金属酸化物膜が第1の金属酸化物前駆体を用いるゾルゲル法によって基板上に成膜された後、または、第1の金属酸化物粉末、バインダー及び溶媒を含むスラリーを塗布して成膜された後、熱処理ステップをさらに行い、結晶性を有する前記第1の金属酸化物膜を形成したり、または、前記第1の金属酸化物膜内の前記バインダーを除去したりしてもよい。
【0018】
前記空隙の内部に第2の金属粒子が形成された多孔性の前記第1の金属酸化物膜を熱処理し、前記第2の金属粒子の少なくとも一部を酸化させることによって第2の金属酸化物を生成するステップをさらに含んでもよい。
【0019】
本発明の更に他の具体例において、前記光触媒材を含む光触媒装置を提供する。
【0020】
前記光触媒装置は、空気清浄、脱臭または抗菌の用途に適用されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
前記光触媒材は、可視光線に応答し、優れた光触媒効率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例1で製造された光触媒材のTEM写真である。
【
図2】本発明の実施例2で製造された光触媒材のTEM写真である。
【
図3】本発明の実施例3で製造された光触媒材のTEM写真である。
【
図4】本発明の実施例1で製造された光触媒材の断面のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体例を詳細に説明する。ただし、これは、例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されることはなく、本発明は、後述する請求項の範疇によって定義されるものに過ぎない。
【0024】
本発明の一具体例において、空隙を含む多孔性の第1の金属酸化物膜、及び前記空隙の内部に形成された第2の金属粒子または第2の金属酸化物粒子を含む光触媒材を提供する。前記多孔性の第1の金属酸化物膜を形成する第1の金属酸化物としては、光触媒として使用される金属酸化物として公知となっている物質が制限なく使用されてもよい。前記第2の金属粒子または前記第2の金属酸化物粒子の第2の金属としては、前記第1の金属酸化物にドーピングされ、前記光触媒材に可視光線に対する活性を付与できる種類の金属が制限なく使用されてもよい。前記第2の金属は、例えば、転移金属、貴金属などであってもよい。
【0025】
前記光触媒材は、紫外線のみならず、可視光線に対しても活性を有することができ、可視光線全領域にわたって光を吸収することができる。例えば、前記光触媒材は、約400nm波長の可視光線に対して約20%の吸光度を示し、約500nm波長の可視光線に対して約10%の吸光度を示すように製造されてもよい。
【0026】
前記光触媒材は、光を吸収して得たエネルギーから生成された電子と正孔がスーパーオキシド陰イオンまたはヒドロキシラジカルなどを生成することによって空気清浄、脱臭、抗菌作用を行える物質である。例えば、前記光触媒材から生成されたスーパーオキシド陰イオンまたはヒドロキシラジカルは、ホルムアルデヒドなどの有害環境物質を分解することができる。一方、前記光触媒材は、可視光線に対して高い吸収率を有し、室内光源でも優れた効率を示すことができるので、別に紫外線供給装置を要しないこともある。
【0027】
前記第1の金属酸化物膜は、平均直径が約20nm〜約100nm、具体的に、約20nm〜約50nm、より具体的に、約20nm〜約30nmである第1の金属酸化物粒子を含んでもよい。 前記第1の金属酸化物粒子を、後述する光触媒材の製造方法によって粒度分布が均一な微細なナノサイズで形成してもよい。前記光触媒材は、前記範囲のサイズを有する第1の金属酸化物粒子を含み、表面積が広く、且つ粒度が均一な光触媒膜を含むことによって反応性を向上させることができる。
【0028】
前記第2の金属粒子及び前記第2の金属酸化物粒子の平均直径は、約1nm〜約10nm、具体的に、約1nm〜約5nmであってもよい。前記第2の金属粒子及び前記第2の金属酸化物粒子を、後述する光触媒材の製造方法によって粒度分布が均一なナノサイズで形成してもよい。前記光触媒材が前記第1の金属酸化物膜全体に前記第2の金属粒子及び前記第2の金属酸化物粒子を前記の範囲で均一に含むことによって、可視光線に対する活性効率をより向上させることができる。
【0029】
また、後述する光触媒材の製造方法によって、前記第2の金属粒子及び前記第2の金属酸化物粒子は、前記多孔性の第1の金属酸化物膜全体の内部の空隙に均一に分散されて分布されてもよい。このように、前記光触媒材は、前記多孔性の第1の金属酸化物膜全体の内部に前記第2の金属粒子及び前記第2の金属酸化物粒子を均一に分散させて分布させることによって、前記光触媒材の可視光線に対する活性効率をより向上させることができる。
【0030】
前記光触媒材は、前記第2の金属粒子と第2の金属酸化物粒子の重量の総和に対して、前記多孔性の第1の金属酸化物膜を約0.1:99.9〜約1:99の重量比で含んでもよい。
【0031】
前記多孔性の第1の金属酸化物膜の厚さは約30nm〜約100nmであってもよい。
【0032】
前記第2の金属及び前記第2の金属酸化物の第2の金属は、タングステン、クロム、バナジウム、モリブデナム、銅、鉄、コバルト、マンガン、ニッケル、白金、金、セリウム、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム及びこれらの組み合わせから選ばれた少なくとも一つの金属を含んでもよい。
【0033】
前記第1の金属酸化物膜に含まれた金属酸化物は、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化ニオビオム及びこれらの組み合わせから選ばれた少なくとも一つを含んでもよい。
【0034】
本発明の他の具体例において、多孔性の第1の金属酸化物膜を成膜するステップ;前記第1の金属酸化物膜を第2の金属の前駆体溶液に浸漬させた後、前記多孔性の第1の金属酸化物膜の内部空隙に前記第2の金属の前駆体溶液を浸透させるステップ;及び前記第2の金属の前駆体溶液を内部空隙に含有した前記多孔性の第1の金属酸化物膜に光を照射し、前記第2の金属の還元によって前記多孔性の第1の金属酸化物膜の内部空隙に前記第2の金属の粒子を形成するステップ;を含む光触媒材の製造方法を提供する。
【0035】
前記光触媒材の製造方法によって、上述した光触媒材を製造することができる。
【0036】
前記多孔性の第1の金属酸化物膜は、例えば、基板上に溶液法で形成してもよい。例えば、前記基板としては、ガラス基板を使用してもよい。
【0037】
一具体例において、前記多孔性の第1の金属酸化物膜を、第1の金属酸化物前駆体を用いるゾルゲル法によって基板上に成膜してもよい。具体的に、第1の金属酸化物前駆体を含む溶液をゾル形態でコーティングした後、乾燥してゲル状に成膜し、選択的に熱処理ステップを行い、結晶性を有する膜を形成してもよい。例えば、金属アルコキシドなどの前記第1の金属酸化物前駆体、アルコール、酸などを含む溶液を準備した後で加水分解し、脱水、脱アルコールを通じてゾル状態の溶液を得た後、このゾル状態の溶液を平板型基板にコーティングしてもよい。前記ゾルゲル法は、公知の工程条件に従って行われてもよく、特定の条件に制限されない。
【0038】
他の具体例において、前記第1の金属酸化物膜は、まず、第1の金属酸化物粉末、溶媒、及び選択的にバインダーを含むスラリーを基板に塗布して成膜してもよい。このようなスラリー塗布法による第1の金属酸化物膜を形成する具体的な工程条件も、公知の通り行われてもよく、特定の条件に制限されない。前記バインダーは、第1の金属酸化物を基板上に固定するために使用されるものであって、例えば、高分子樹脂、シラン化合物、無機バインダーなどをバインダーとして使用してもよい。前記スラリーを基板に塗布して成膜した後、選択的に熱処理をさらに行ってもよい。有機バインダーを使用する場合、熱処理遂行時にバインダーが除去されるので、結晶化及び固定が不可能である。このような問題を解決するために、結晶化された第1の金属酸化物粉末を使用して前記熱処理を行わなくてもよく、無機バインダーを使用する場合、結晶化及び固定のために熱処理を行ってもよい。
【0039】
前記のように、前記第1の金属酸化物膜が第1の金属酸化物前駆体を用いるゾルゲル法によって基板上に成膜された後、または、前記第1の金属酸化物粉末及び溶媒を含むスラリーを塗布して成膜された後、熱処理ステップをさらに行い、結晶性を有する前記第1の金属酸化物膜を形成してもよい。
【0040】
前記熱処理ステップは、約1℃/min〜約2℃/minの昇温速度で行ってもよい。前記昇温速度で熱処理することによって、前記第1の金属酸化物膜を、平均直径が約20nm〜約30nmの第1の金属酸化物粒子で形成してもよい。
【0041】
前記のように成膜して形成された多孔性の第1の金属酸化物膜を第2の金属の前駆体溶液に浸漬させ、前記多孔性の第1の金属酸化物膜の空隙内部に前記第2の金属の前駆体溶液を均一に浸透させる。
【0042】
続いて、前記第2の金属の前駆体溶液を内部空隙に含有した前記多孔性の第1の金属酸化物膜に光を照射すると、前記第2の金属が還元され、前記多孔性の第1の金属酸化物膜の内部空隙に前記第2の金属の粒子が形成される。
【0043】
このように、前記第2の金属粒子は、第2の金属の前駆体溶液として膜に形成された第1の金属酸化物にドーピングされるので、前記第1の金属酸化物膜の内部全体に容易に且つ均一に浸透させることができ、また、均一に分散させて分布させることができる。光照射によって形成された第2の金属粒子も、前記第1の金属酸化物膜の内部全体に均一に分散されて分布される。また、前記方法によると、形成される第2の金属粒子のサイズはナノサイズであり、粒度分布が均一になり得る。前記方法で第2の金属粒子を形成することによって、上述したように、前記光触媒材は、可視光線に対する活性効率がより優れる。
【0044】
前記第2の金属の前駆体溶液に使用可能な第2の金属の前駆体化合物は、光の照射によって励起された電子によって第2の金属に還元される物質であって、第2の金属の前駆体化合物としては、水溶液に溶解される塩化合物が制限なく使用されてもよく、具体的に、第2金属の窒酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物などが使用されてもよい。例えば、Cu前駆体としては、Cu(NO
3)
2、CuSO
4、CuCl
2、CuClなどがあり、Pt前駆体としては、PtCl
2、PtCl
4、PtBr
2、H
2PtCl
6、K
2(PtCl
4)、Pt(NH
3)
4Cl
2などがあり、Auの前駆体としては、AuCl、AuBr、Aul、Au(OH)
2、HAuCl
4、KAuCl
4、KAuBr
4などがあり、Pdの前駆体としては、(CH
3COO)
2Pd、PdCl
2、PdBr
2、Pd
l2、Pd(OH)
2、Pd(NO
3)
2、PdSO
4などがある。
【0045】
前記光照射は、具体的に、UVを照射して行ってもよい。前記光照射時の光照射量及び光の照射時間などの工程条件を調節し、前記光触媒材内の前記第2の金属のドーピング量を調節することができる。例えば、第2の金属のドーピング量を増加させるために光照射量を増加させ、光の照射時間を増加させることができる。
【0046】
前記光触媒材の製造方法は、前記空隙内部に第2の金属粒子が形成された多孔性の前記第1の金属酸化物膜を熱処理し、前記第2の金属粒子の少なくとも一部を酸化させることによって第2の金属酸化物を生成するステップを選択的にさらに含んでもよい。
【0047】
前記熱処理ステップは、約1℃/min〜約2℃/minの昇温速度で行ってもよい。前記昇温速度で熱処理し、前記第2の金属粒子及び前記第2の金属酸化物粒子を、それぞれ約1nm〜約10nmの平均直径に形成してもよい。
【0048】
本発明の更に他の具体例において、前記光触媒材を含む光触媒装置を提供する。前記光触媒装置は、例えば、空気清浄、脱臭、抗菌用途の装置として製造してもよい。
【0049】
以下では、本発明の実施例及び比較例を記載する。下記の実施例は、本発明の一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されることはない。
【0050】
(実施例)
実施例1:Pt/TiO
2の製造
イソプロピルアルコールを溶媒とし、チタンテトライソプロポキシド10wt%溶液を製造する。これを30分間撹拌した後、濃い窒酸を少量添加して加水分解させた。その後、30分間の撹拌を通じて脱水、脱アルコールすることによってTiO
2ゾルを製造した。
【0051】
これをスピンコーターを用いてボロシリケートガラス(borosilicate glass)上にコーティングし、TiO
2の結晶化のために常温(25℃)から始めて1℃/minの速度で昇温し、10時間にわたって600℃に到逹した後、600℃に維持しながら10分間塑性化し、165mm×165mmサイズ及び50nm厚のTiO
2膜を製造した。前記TiO
2膜に対して、H
2PtCl
6 0.01wt%水溶液に20WのUVランプを使用してUVを30分程度照射し、Ptを前記TiO
2膜内にドーピングした後、常温(25℃)から始めて1℃/minの速度で昇温し、600℃に到達した後、10分間熱処理することによって光触媒材を製作した。
【0052】
実施例2
3℃/minの昇温速度で熱処理してTiO
2膜を形成した点を除いては、実施例1と同一の方法で光触媒材を製作した。
【0053】
実施例3
5℃/minの昇温速度で熱処理してTiO
2膜を形成した点を除いては、実施例1と同一の方法で光触媒材を製作した。
【0054】
実施例4
Ptドーピング後、3℃/minの昇温速度で熱処理した点を除いては、実施例1と同一の方法で光触媒材を製作した。
【0055】
実施例5
Ptドーピング後、5℃/minの昇温速度で熱処理した点を除いては、実施例1と同一の方法で光触媒材を製作した。
【0056】
比較例1
実施例1でPtをドーピングする前に得られたTiO
2多孔性膜と同一の方法で光触媒材を製造した。
【0057】
比較例2
粒子サイズ40nm水準のTiO
2ナノ粉末をH
2PtCl
6 0.01wt%水溶液を用いて1wt%の濃度で分散させることによってTiO
2スラリーを製造した後、これを撹拌しながら紫外線を30分間照射した。これをろ過または遠心分離し、TiO
2粒子と余液を分離して乾燥することによってPt/TiO
2粉末を得た。これを10wt%の濃度で水に分散した後、ボロシリケートガラス上に50nmの厚さでスピンコーティングした。
【0058】
実験例1
実施例1〜5の光触媒材に対して投射電子顕微鏡(TEM)写真を撮影して粒子のサイズを評価し、肉眼でおおよその粒子直径サイズの分布範囲を評価し、これを下記の表1に記載した。
【0059】
図1、
図2及び
図3は、それぞれ実施例1、実施例2及び実施例3の光触媒材のTEM写真である。
【0060】
図4は、実施例1の光触媒材の断面TEM写真であって、
図4で第2の金属粒子(Pt粒子)を確認することができる。
【0062】
実験例2
実施例1及び比較例1〜2の光触媒材に対してホルムアルデヒド除去性能を評価した。実施例1及び比較例1〜2で製作された光触媒材を20Lの小型チャンバー(ADTEC社製品)内に設置した後、0.08ppmのホルムアルデヒド濃度を有する清浄空気を167cc/minの流量で持続的に流し、換気回数を0.5回/hrにした。光源としては、10Wの白色蛍光灯を使用し、照度を1000luxに設定した。ホルムアルデヒド除去率は、チャンバーに入る前の濃度とチャンバーを通過した後の濃度を測定して計算した後、これを下記の表2に記載した。濃度は、DNPH(2,4―dinitrophenylhydrazine)カートリッジを用いて10Lに対する量を濃縮し、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC、Agilent社製品)で分析した。