(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A.ビニルモノマーから誘導される単位(A1)およびカルボン酸モノマーから誘導される単位(A2)を含むエステル化コポリマーであって、A1の前記ビニルモノマーの単位の少なくとも50%がビニル脂肪族モノマーから誘導され、前記カルボン酸モノマーが第一級アルコールでエステル化されたエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体を含む、エステル化コポリマーと、
B.共役ジエンモノマーから誘導される少なくとも第1のブロック(B1)およびビニル芳香族モノマーから誘導される少なくとも第2のブロック(B2)を含むジエンゴムコポリマーと
を含む潤滑組成物であって、
前記潤滑組成物中の前記ジエンゴムコポリマーと前記エステル化コポリマーとの重量での比(B:A)が0.01〜0.9である、潤滑組成物。
前記ジエンゴムコポリマーの前記少なくとも第1のブロック(B1)が誘導される元となる前記ジエンモノマーが、ブタジエンまたはイソプレンの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
前記ジエンゴムコポリマー(B)が、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)、ポリ(スチレン−co−ブタジエン−co−イソプレン)またはポリ(スチレン−co−イソプレン)の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
前記カルボン酸モノマーから誘導される前記単位(A2)の少なくともいくつかが、窒素含有化合物でのアミノ化、アミド化およびイミド化の少なくとも1つを施されている、請求項1に記載の潤滑組成物。
前記窒素含有化合物が、モルホリン、イミダゾリジノン、アミノアミド、β−アラニンアルキルエステル、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミンおよびその混合物からなる群から選択されるアミン含有化合物である、請求項20に記載の潤滑組成物。
(A)エステル化コポリマーを、(B)ジエンゴムコポリマー、(C)潤滑粘度の油および(D)任意選択で、1つまたは複数の他の性能添加剤と混合するステップを含む、潤滑組成物を調製するためのプロセスであって、
前記エステル化コポリマーがビニルモノマーから誘導される単位(A1)およびカルボン酸モノマーから誘導される単位(A2)を含み、前記ビニルモノマーがビニル脂肪族モノマーを含み、前記カルボン酸モノマーが第一級アルコールでエステル化されたエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体を含み、
前記ジエンゴムコポリマーが、共役ジエンモノマーから誘導される少なくとも第1のブロック(B1)およびビニル芳香族モノマーから誘導される少なくとも第2のブロック(B2)を含み、
前記潤滑組成物中での前記ジエンゴムコポリマーと前記エステル化コポリマーとの重量での比(B:A)が0.01〜0.9である、
プロセス。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
潤滑組成物の粘度指数(VI)を決定する方法は、ASTM D2270、「Standard Practice for Calculating Viscosity Index From Kinematic Viscosity at 40 and 100℃」、ASTM International、West Conshohocken、PA、DOI:10.1520/D2270−10E01に概要が示されている手順による。
【0013】
動粘性率(KV)はASTM D445による。KVは、KV_100またはKV_40で表すことができる(KVは動粘性率を指し、100または40はその油の粘度が測定される摂氏温度を指す)。別段の記述のない限り、KV値はこの方法で決定され、センチストークス(cSt)で報告される。1cSt=1mm
2/s。
【0014】
潤滑組成物の高温高せん断(HTHS)粘度を決定する方法は、手順ASTM D4683−10、「Standard Test Method for Measuring Viscosity of New and Used Engine Oils at High Shear Rate and High Temperature by Tapered Bearing Simulator Viscometer at 150℃」、ASTM International、West Conshohocken、PAによる。この試験方法は、テーパー付きベアリングシミュレーター(TBS)粘度計と称されるやや先細になったローターおよびステーターを有する粘度計を用いて、150℃および1.0・10
6s
−1で油の粘度を決定する。別段の記述のない限り、HTHS値はこの方法で決定され、センチポアズ(cP)で報告される。1センチポアズ=1mPa−秒。
【0015】
いくつかの用途のためには、潤滑組成物は、最大で2.6〜3.6の動粘性率(KV_100)とHTHSとの比を有することができる。
【0016】
低温での粘度は、ASTM法D5293−10、「Standard Test Method for Apparent Viscosity of Engine Oils Between −5 and −35℃ Using the Cold−Cranking Simulator)」、DOI:10.1520/D5293−10 ASTM International、West Conshohocken、PAに記載されているようなコールドクランクシミュレーター(CCS)試験を用いて測定することができる。SAE 0W油用には、潤滑組成物は、この方法にしたがって決定された、6200cP未満のSAE J300による−35℃でのCCS粘度を有していなければならない。
【0017】
本発明者らは、エステル化コポリマーとジエンゴムの組合せが、許容されるかまたは改善されたHTHS、KV、せん断安定性、許容されるかまたは改善された粘度指数制御および許容されるかまたは改善された低温粘度の少なくとも1つ(または少なくとも2つまたはすべて)を有する潤滑剤を提供することに関して、相乗効果をもたらすことができることを見出した。
【0018】
したがって、例示的なエンジンオイル潤滑組成物は、(A)エステル化コポリマー、(B)ジエンゴムコポリマーおよび(C)潤滑粘度の油を含む。エステル化コポリマー(A)は、高温/高せん断速度(HTHS)と動粘性率(KV)との高い比を有する潤滑組成物を提供するように配合される。ジエンゴムコポリマーは、共役ジエンモノマーから誘導される単位およびビニル芳香族モノマーから誘導される単位を含む。得られる潤滑組成物は、改善された摩耗保護を有し、同時に改善された燃料効率のための低い動粘性率を提供することができる。
【0019】
例示的な潤滑組成物は、自動車エンジンなどの内燃機関におけるエンジンオイルとして用途が見出される。一実施形態では、この潤滑組成物はクランク室潤滑剤として使用される。クランク室潤滑剤は、油だめが通常エンジンのクランク軸の下に位置しており、そこへ、循環された油が戻る、内燃機関における全般的な潤滑のために使用される油である。
【0020】
潤滑組成物中のジエンゴムコポリマー(B)と例示的な粘度調整剤(エステル化コポリマー)(A)との比(B:A)は、重量で表して、例えば0.01〜0.9または0.2〜0.85または0.3〜0.8または少なくとも0.4であってよい。
【0021】
例示的な潤滑組成物は、0.1〜50wt%または1.0〜20wt%または1.5〜10wt%の例示的な粘度調整剤(A)、例えば5wt%未満の粘度調整剤を含むことができる。
【0022】
例示的な潤滑組成物は、0.5〜1.5wt%などの0.1〜10wt%または0.2〜5wt%のジエンゴムコポリマー(B)を含むことができる。
【0023】
他の態様では、例示的な実施形態による潤滑組成物は、(A)粘度調整剤を、(B)ジエンゴムコポリマー、(C)潤滑粘度の油(本明細書では基油と称することができる)および(D)任意選択で、1つまたは複数の他の性能添加剤と混合することによって形成させることができる。
【0024】
他の態様では、例示的な実施形態による潤滑剤濃縮物は、(A)粘度調整剤を、(B)ジエンゴムコポリマー、(C)任意選択で、潤滑組成物より少ない量の潤滑粘度の油および(D)任意選択で、1つまたは複数の他の性能添加剤と混合することによって形成させることができる。
【0025】
例示的な実施形態の他の態様では、内燃機関における本明細書で説明する潤滑組成物の使用は、そのエンジンに潤滑組成物を提供することを含む。
【0026】
例示的な実施形態の他の態様では、許容されるかまたは改善されたせん断安定性、許容されるかまたは改善された粘度指数制御、許容されるかまたは改善された酸化制御および許容されるかまたは改善された低温粘度の少なくとも1つ(または少なくとも2つまたは最大ですべて)を有する潤滑組成物を提供する方法は、例えば0.01〜0.9または0.2〜0.85または0.3〜0.8または少なくとも0.4の、潤滑組成物中のジエンゴムコポリマーと例示的な粘度調整剤成分の重量での比(B:A)で、エステル化コポリマー(A)およびジエンゴムコポリマー(B)を有する潤滑組成物を提供することを含む。これは、許容されるかまたは改善されたせん断安定性、許容されるかまたは改善された粘度指数制御、許容されるかまたは改善された低温粘度および許容されるかまたは改善された酸化制御の少なくとも1つ(または少なくとも2つまたはすべて)を有する潤滑組成物を提供する。
I.粘度調整剤(A)
【0027】
例示的な粘度調整剤はエステル化コポリマーである。本明細書で開示する例示的なエステル化コポリマー(A)は、ビニルモノマーから誘導される単位(A1)およびエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体であってよいカルボン酸モノマーから誘導される単位(A2)を含むポリマー骨格を含む。このビニルモノマーは、重合可能な芳香族および脂肪族ビニルモノマーから選択することができる。例示的な脂肪族ビニルモノマーにはαオレフィンが含まれる。一例として、例示的なコポリマーは、1−ドデセンおよびカルボン酸モノマーとしての無水マレイン酸から誘導されたポリマー骨格を含むことができる。
【0028】
例示的なコポリマーにおいて、骨格の大部分(骨格中の単位の例えば少なくとも60%または少なくとも70%または少なくとも80%または少なくとも90%または少なくとも95%、例えば70%〜95%、最大で100%)は、ビニルモノマーおよびカルボン酸モノマーから誘導される。ペンダント基は、骨格にグラフト化されていてよい。骨格上のカルボン酸モノマー単位は、エステル化および/またはアミド化/イミド化されていてよい。
【0029】
一般に、ポリマー骨格は、各カルボン酸単位が、αオレフィンなどのビニルモノマーから誘導される少なくとも1個の単位によって次のカルボン酸単位と間隔をあけられている交互の構造であってよい。例示的なエステル化コポリマーは、その骨格において、これらのモノマーから誘導される少なくとも20個の単位または少なくとも100個の単位を有することができる。一実施形態では、選択されたモノマーから誘導されるモノマー単位の骨格鎖は、10,000個以下のそうしたモノマー単位または1000個以下のそうしたモノマー単位の骨格鎖である。
【0030】
コポリマー中のビニルモノマー単位(A1)とカルボン酸モノマー単位(A2)のモル比は、例えば1:3〜3:1または1:2〜2:1または0.6:1〜1:1であってよい。一実施形態では、コポリマー中のモル比は約0.7:1〜1:1.1である。しかし、コポリマーの調製において使用されるモル比は、コポリマーにおけるものと異なっていてよいことを理解すべきである。
【0031】
コポリマー骨格は任意選択で、本明細書で開示するビニルモノマー(A1)およびカルボン酸モノマー(A2)以外のモノマーから誘導される単位を含む。例えば、骨格は、ビニルモノマーとカルボン酸モノマー、例えばアクリレートまたはメタクリレートの一方またはその両方と重合できる1つまたは複数のモノマーから誘導される単位を含むことができる。一実施形態では、これらの他のモノマーから誘導される単位は、コポリマーにおけるモノマー誘導単位の30モル%以下または20モル%以下または10モル%以下を構成する。例えば、骨格中の単位の1〜5%は、これらの他のモノマーから形成されていてよい。
【0032】
例示的なエステル化コポリマーは、例えば、コポリマーのカルボン酸単位の、直鎖状アルコールおよび分枝状アルコール、環状もしくは非環状アルコールの1つまたは複数あるいはその組合せなどの第一級アルコールでのエステル化によって形成されたエステルペンダント基をさらに含む。
【0033】
例示的なエステル化コポリマーは、窒素含有基(アミノ基、アミド基および/もしくはイミド基または窒素含有塩などをさらに含むことができる。
【0034】
一実施形態では、エステル基および窒素含有基(アミノ基、アミド基および/またはイミド基など)は、0.01wt%〜1.5wt%(または0.02wt%〜0.75wt%または0.04wt%〜0.25wt%)の窒素をエステル化コポリマーに提供するのに十分である。
【0035】
本明細書で使用する重量平均分子量(M
w)は、ポリスチレン標準を用いて、サイズ排除クロマトグラフィーとしても公知のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定する。一般に、重量平均分子量は、任意選択で窒素含有化合物と反応されている最終エステル化コポリマーについて測定する。エステル化前の例示的なポリマーのM
wは3000〜50,000または5000〜30,000または5000〜25,000または10,000〜17,000の範囲であってよい。エステル化前の例示的なポリマーのMwは、約5000〜10,000または12,000〜18,000または9000〜15,000または15,000〜20,000または8000〜21,000の範囲であってよく、一実施形態では、少なくとも10,000であってよい。エステル化および任意選択の窒素含有化合物との反応の後で例示的なエステル化ポリマーのM
wは、5000〜50,000の範囲であってもよく、一実施形態では、5000〜35,000であってよい。
A.粘度調整剤のビニルモノマー単位
【0036】
エステル化コポリマー(A)は、ビニル芳香族モノマーまたはビニル脂肪族モノマーの少なくとも1つから誘導されるビニルモノマー単位(A1)を含む。一実施形態では、ビニルモノマー単位は、ビニル脂肪族モノマーから誘導される単位を少なくとも含む。
【0037】
両方が存在する場合、骨格中でのビニルモノマー単位の配置は大部分ランダムであってよく、2つのビニルモノマーの比に依存する可能性がある。
【0038】
例示的なビニル脂肪族モノマーは、重合可能な脂肪族モノマー、特にビニル基(−CH=CH
2)で置換された脂肪族化合物である。ビニル脂肪族モノマーの例には、C
8〜C
20αオレフィンまたはC
10〜C
18αオレフィンまたはC
10〜C
14αオレフィンなどのC
6〜C
30αオレフィンから選択されるαオレフィンが含まれる。αオレフィンは直鎖状であっても分枝状であってもよい。適切な直鎖状αオレフィンの例には、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン 1−オクタデセンおよびその混合物が含まれる。有用なビニル脂肪族モノマーの一例は1−ドデセンである。一実施形態では、ビニル脂肪族モノマーは炭化水素であり、O、NまたはSなどのヘテロ原子を含まない。一実施形態では、ビニル脂肪族モノマーはαオレフィンである。
【0039】
例示的なビニル芳香族モノマーは、存在する場合、重合可能な芳香族モノマー、特にビニル基(−CH=CH
2)で置換された芳香族化合物である。
【0040】
適切なビニル芳香族モノマーは式I:
【化1】
(式中、R
1およびR
2は独立に水素原子、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基またはハロゲン含有基を表す)に相当するものである。ビニル芳香族モノマーは、スチレン、αアルキルスチレン、核アルキルスチレン(nuclear alkylstyrene)、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ビニルナフタレンおよびこれらの混合物から選択することができる。具体的な例には、スチレン、αメチルスチレン、αエチルスチレン、αイソプロピルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、核アルキルスチレン、例えばo−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチル−α−メチルスチレン、m−メチル−α−メチルスチレン、p−メチル−α−メチルスチレン、m−イソプロピル−α−メチルスチレン、p−イソプロピル−α−メチルスチレン、m−イソプロピルスチレン、p−イソプロピルスチレン、ビニルナフタレンおよびその混合物が含まれる。
【0041】
例示的な実施形態では、A1のビニルモノマー単位の大部分(ビニルモノマー単位の少なくとも50%またはビニルモノマー単位の少なくとも80%もしくは少なくとも90%もしくは100%)は、ビニル脂肪族モノマーから誘導される。
B.粘度調整剤のカルボン酸単位
【0042】
例示的なエステル化コポリマー(A)のカルボン酸単位(A2)を形成させるのに使用される、例示的なエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体は、完全にエステル化されたもの、部分的にエステル化されたものまたその混合物であってもよいモノカルボン酸もしくはジカルボン酸またはその無水物もしくは他の誘導体であってよい。部分的にエステル化されている場合、他の官能基は酸、塩またはその混合物を含むことができる。適切な塩には、アルカリ金属、アルカリ土類金属およびその混合物が含まれる。これらの塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたはその混合物を含むことができる。
【0043】
コポリマーのカルボン酸単位を形成させるのに使用できる、例示的な不飽和α,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体には、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、αメチレングルタル酸ならびにその無水物および混合物、ならびにその置換された同等物が含まれる。カルボン酸単位を形成させるためのモノマーの適切な例には、無水イタコン酸、無水マレイン酸、メチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物およびその混合物が含まれる。一実施形態では、カルボン酸単位には、無水マレイン酸またはその誘導体から誘導される単位が含まれる。
【0044】
例示的な不飽和カルボン酸またはその誘導体では、炭素−炭素二重結合は、一般にカルボキシ官能基(例えば、イタコン酸の場合、無水物またはそのエステル)の少なくとも1つに対してα,β位であり、それは、α,β−ジカルボン酸、無水物またはそのエステル(例えば、マレイン酸または無水物、フマル酸またはそのエステルの場合)のカルボキシ官能基の両方に対してα,β位であってよい。一実施形態では、これらの化合物のカルボキシ官能基は、最大で4個の炭素原子、例えば2個の炭素原子で隔てられることになる。
【0045】
例示的なエステル化コポリマーのカルボン酸モノマー単位を形成させるための他の適切なモノマーは米国特許公開第20090305923号に記載されている。
C.カルボン酸単位のエステル化のためのアルコール
【0046】
例示的なエステル化コポリマー(A)のカルボン酸単位は、第一級アルコールで完全にまたは部分的にエステル化されていてよい。そのエステル基は通常、カルボキシ含有コポリマーをアルコールと反応させることによって形成させるが、いくつかの実施形態では、特に低級アルキルエステルのために、そのエステル基を、そのコポリマーを調製するのに使用されるモノマーの1つから取り込むことができる。
【0047】
本明細書で使用するのに適した第一級アルコールは、1〜150個の炭素原子または4〜50個、2〜20個もしくは8〜20個(例えば4〜20個または4〜16個または8〜12個)の炭素原子を含むことができる。第一級アルコールは直鎖状であっても、α位またはβ位またはより高位での分枝状であっても、また、環状または非環状またはその組合せであってもよい。一実施形態では、本明細書で説明するエステル化コポリマーを形成させるのに、直鎖状アルコールと分枝状アルコールの混合物を使用する。1つの例示的な実施形態では、コポリマー中のカルボン酸単位の少なくとも0.1%は、β位またはより高位で分枝したアルコールでエステル化されている。
【0048】
一実施形態では、コポリマー中のカルボキシル基の全モル数に対して10、20または30〜100モル%、あるいは30〜70モル%は、アルキル基中(すなわち、エステルのアルコール誘導部分またはアルコキシ部分中)に12〜19個の炭素原子を有するエステル基を含み、エステル化コポリマー中のカルボキシル基の全モル数に対して70または80〜0モル%あるいは80〜30モル%は、アルコール部分中に8〜10個の炭素原子を有するエステル基を含む。一実施形態では、エステルは、エステル化コポリマー中のカルボキシル基のモル数に対して、少なくとも45モル%の、アルコール部分中に12〜18個の炭素原子を含むエステル基を含む。任意選択の実施形態では、エステル化コポリマーは、コポリマー中のカルボキシル基の全モル数に対して最大で20モル%または0〜5%もしくは1〜2%の、アルコール部分中に1〜6個の炭素原子を有するエステル基を有する。一実施形態では、それらの組成物は、3〜7個の炭素原子を含むエステル基を実質的に含まない。
【0049】
一実施形態では、エステル化されているカルボン酸単位の0.1〜99.89(または1〜90または2〜50または2.5〜20または5〜15)パーセントは、β位またはより高位で分枝した第一級アルコールでエステル化されており、エステル化されているカルボン酸単位の0.1〜99.89(または1〜90または2〜50または2.5〜20または5〜15)パーセントは、直鎖状アルコールまたはα分枝状アルコールでエステル化されており、そのカルボン酸単位の0.01〜10%(または0.1%〜20%または0.02%〜7.5%または0.1〜5%または0.1〜2%未満)は、以下で説明するようなアミノ基、アミド基および/またはイミド基などの少なくとも1個の窒素含有基を有する。一例として、コポリマーのカルボン酸単位の5〜15パーセントは、β位またはより高位で分枝した第一級アルコールでエステル化されており、そのカルボン酸単位の0.1〜95パーセントは、直鎖状アルコールまたはα分枝状アルコールでエステル化されており、そのカルボン酸単位の0.1〜2%未満は少なくとも1個の窒素含有基を有する。
【0050】
有用な第一級アルコールの例には、ブタノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノールおよびその組合せが含まれる。
【0051】
他の例示的な第一級アルコールには、市販のアルコール混合物が含まれる。これらには、例えば8〜24個の炭素原子を有するアルコールの種々の混合物を含むことができるオキソアルコールが含まれる。本明細書で有用な種々の市販アルコールのうち、1つは8〜10個の炭素原子を含むものであり、もう1つは12〜18個の脂肪族炭素原子を含むものである。混合物中のアルコールは、例えば、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコールおよびオクタデシルアルコールの1つまたは複数を含むことができる。これらのアルコール混合物のいくつかの適切な供給源は、NEODOL(登録商標)アルコール(Shell Oil Company、Houston、Tex.)という名称およびALFOL(登録商標)アルコール(Sasol、Westlake、La.)という名称のもとで販売されている工業用グレード(technical grade)アルコールならびに動物性脂肪および植物性脂肪から誘導され、例えばHenkel、SasolおよびEmeryから市販されている脂肪アルコールである。
【0052】
第三級アルカノールアミン、すなわちN,N−ジ−(低級アルキル)アミノアルカノールアミンは、エステル化コポリマーを調製するために使用できる他のアルコールである。その例には、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、5−ジエチルアミノ−2−ペンタノールおよびその組合せが含まれる。
【0053】
β位またはより高位で分枝している例示的な第一級アルコールは、ゲルベ(Guerbet)アルコールを含むことができる。ゲルベアルコールの調製方法は、米国特許第4,767,815号(5欄、39行〜6欄、32行を参照されたい)に開示されている。
【0054】
一実施形態では、β位またはより高位で分枝した第一級アルコールを、式II:
【化2】
(式中、
(BB)は、カルボン酸モノマー単位およびビニルモノマー単位から誘導されるコポリマー骨格、すなわち、カルボキシル基を含まない炭素骨格であり;
Xは、(i)炭素および少なくとも1個の酸素もしくは窒素原子を含むか、または(ii)コポリマー骨格と( )
y中に含まれる分枝状ヒドロカルビル基を連結する1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基(一般に−CH
2−)であるかのいずれかの官能基であり;
wは、2〜2000または2〜500または5〜250の範囲であってよい、コポリマー骨格と結合しているペンダント基の数であり;
yは0、1、2または3であり、ただし、ペンダント基の少なくとも1モル%においてyはゼロではなく;ただし、yが0である場合、Xは、Xの原子価を満足させるのに十分な様式で末端基と結合しており、その末端基は、水素、アルキル、アリール、金属(一般にエステル反応の中和の際に導入される。適切な金属には、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、ナトリウム、カリウムまたはリチウムが含まれる)またはアンモニウムカチオンおよびその混合物から選択され;
pは1〜15(または1〜8または1〜4)の範囲の整数であり;
R
3およびR
4は独立に直鎖状または分枝状ヒドロカルビル基であり、R
3およびR
4の中に存在する炭素原子の合計数は少なくとも12(または少なくとも16または少なくとも18または少なくとも20)である)
の( )
w内で表されるようなペンダント基を提供するために使用することができる。
【0055】
異なる実施形態では、ペンダント基を有するコポリマーは、ペンダント基の総数のパーセンテージで表して、0.10%〜100%または0.5%〜20%または0.75%〜10%の、式IIの( )
y内の基で示される分枝状ヒドロカルビル基を含むことができる。式IIのペンダント基を、「β位またはより高位で分枝した第一級アルコール」という語句により、上記に定義されているようなエステル基を定義するために使用することもできる。
【0056】
異なる実施形態では、上記式II中のXで定義される官能基は、−CO
2−、−C(O)N=または−(CH
2)
v−(vは1〜20または1〜10または1〜2の範囲の整数である)の少なくとも1つを含むことができる。
【0057】
一実施形態では、Xは、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸またはその誘導体から誘導される。適切なカルボン酸またはその誘導体の例は、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸またはイタコン酸を含むことができる。一実施形態では、エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体は、無水マレイン酸およびマレイン酸の少なくとも1つであってよい。
【0058】
一実施形態では、Xは、コポリマー骨格と分枝状ヒドロカルビル基を連結しているアルキレン基以外のものである。
【0059】
異なる実施形態では、ペンダント基は、エステル化、アミド化またはイミド化された官能基であってよい。
【0060】
式II中のR
3およびR
4のための適切な基の例には:C
15〜16ポリメチレン基を含むアルキル基、例えば2−C
1〜15アルキル−ヘキサデシル基(例えば、2−オクチルヘキサデシル)および2−アルキル−オクタデシル基(例えば、2−エチルオクタデシル、2−テトラデシル−オクタデシルおよび2−ヘキサデシルオクタデシル);C
13〜14ポリメチレン基を含むアルキル基、例えば1−C
1〜15アルキル−テトラデシル基(例えば、2−ヘキシルテトラデシル、2−デシルテトラデシルおよび2−ウンデシルトリデシル)および2−C
1〜15アルキル−ヘキサデシル基(例えば、2−エチル−ヘキサデシルおよび2−ドデシルヘキサデシル);C
10〜12ポリメチレン基を含むアルキル基、例えば2−C
1〜15アルキル−ドデシル基(例えば、2−オクチルドデシル)および2−C
1〜15アルキル−ドデシル基(2−ヘキシルドデシルおよび2−オクチルドデシル)、2−C
1〜15アルキル−テトラデシル基(例えば、2−ヘキシルテトラデシルおよび2−デシルテトラデシル);C
6〜9ポリメチレン基を含むアルキル基、例えば2−C
1〜15アルキル−デシル基(例えば、2−オクチルデシル)および2,4−ジ−C
1〜15アルキル−デシル基(例えば、2−エチル−4−ブチル−デシル);C
1〜5ポリメチレン基を含むアルキル基、例えば2−(3−メチルヘキシル)−7−メチル−デシルおよび2−(1,4,4−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチル−オクチル基;ならびに2つ以上の分枝状アルキル基の混合物、例えばプロピレンオリゴマー(六量体〜十一量体)、エチレン/プロピレン(モル比16:1〜1:11)オリゴマー、イソブテンオリゴマー(五量体〜八量体)およびC
5〜17α−オレフィンオリゴマー(二量体〜六量体)に対応するオキソアルコールのアルキル残基が含まれる。
【0061】
式II中のペンダント基は、R
3およびR
4上に12〜60個または14〜50個または16〜40個または18〜40個または20〜36個の範囲の合計数の炭素原子を含むことができる。
【0062】
R
3およびR
4のそれぞれは、個別に、5〜25個または8〜32個または10〜18個のメチレン炭素原子を含むことができる。一実施形態では、各R
3およびR
4基上の炭素原子の数は10〜24個であってよい。
【0063】
異なる実施形態では、β位またはより高位で分枝した第一級アルコールは、少なくとも12個(または少なくとも16個または少なくとも18個または少なくとも20個)の炭素原子を有することができる。炭素原子の数は少なくとも12〜60または少なくとも16〜30の範囲であってよい。
【0064】
適切なβ位またはより高位で分枝した第一級アルコールの例には、2−エチルヘキサノール、2−ブチルオクタノール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノールおよびその混合物が含まれる。
D.粘度調整剤の窒素含有基
【0065】
例示的なエステル化コポリマー(A)は、窒素含有基、例えばアミノ基、アミド基および/またはイミド基を含む。窒素含有基は、共重合の間に取り込むことができる窒素含有化合物か、あるいは塩、アミド、イミドまたはその混合物を形成するためのアミンなどの窒素含有反応物を有するカルボン酸単位との反応によって誘導することができる。
【0066】
コポリマー中に取り込むことができる適切な窒素含有化合物の例には、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルカーボンアミド(N−vinyl carbonamide)、例えばN−ビニル−ホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニルヒドロキシアセトアミド、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルカプロラクタム、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノブチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミドおよびその混合物が含まれる。
【0067】
コポリマーは、典型的にはコポリマー骨格をキャッピングするために、エステル化コポリマー骨格と反応できる窒素含有基を含むことができる。このキャッピングは、エステル基、アミド基、イミド基および/またはアミン基を有するコポリマーをもたらすことができる。
【0068】
窒素含有基は、第一級または第二級アミン、例えば脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、多環芳香族(polyaromatic)ポリアミンまたはその組合せから誘導することができる。
【0069】
一実施形態では、窒素含有基は、脂肪族アミン、例えばC1〜C30またはC1〜C24脂肪族アミンから誘導することができる。適切な脂肪族アミンの例には、直鎖状であっても環状であってもよい脂肪族モノアミンおよびジアミンが含まれる。適切な第一級アミンの例には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン オクタデシルアミン、オレイルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミンおよびジブチルアミノエチルアミンが含まれる。適切な第二級アミンの例には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミン、ジエチルヘキシルアミンおよびエチルアミルアミンが含まれる。第二級アミンは、環状アミン、例えばアミノエチルモルホリン、アミノプロピルモルホリン、1−(2−アミノエチル)ピロリドン、ピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンであってよい。適切な脂肪族ポリアミンの例には、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンおよびポリエチレンイミンが含まれる。
【0070】
他の実施形態では、窒素含有基を、芳香族であるアミンから誘導することができる。芳香族アミンには、一般構造NH
2−ArまたはT−NH−Arで表すことができるものが含まれる。ここで、Tはアルキルまたは芳香族であってよく、Arは窒素含有芳香族基を含む芳香族基であり、Ar基は以下の構造:
【化3】
のいずれかならびに多重の非縮合または結合芳香族環を含む。これらの構造および関連する構造において、R
5、R
6およびR
7は、本明細書で開示する他の基の中でとりわけ、−H、−C
1〜18アルキル基、ニトロ基、−NH−Ar、−N=N−Ar、−NH−CO−Ar、−OOC−Ar、−OOC−C
1〜18アルキル、−COO−C
1〜18アルキル、−OH、−O−(CH
2CH
2−O)
nC
1〜18アルキル基および−O−(CH
2CH
2O)
nAr(nは0〜10である)から独立に選択することができる。
【0071】
例示的な芳香族アミンには、芳香族環構造の炭素原子がアミノ窒素と直接結合しているアミンが含まれる。芳香族アミンはモノアミンであってもポリアミンであってもよい。その芳香族環は単核芳香族環(すなわち、ベンゼンから誘導されるもの)であってよいが、縮合芳香族環、特にナフタレンから誘導されるものを含むことができる。芳香族アミンの例には、アニリン、N−アルキルアニリン、例えばN−メチルアニリンおよびN−ブチルアニリン、ジ−(パラ−メチルフェニル)アミン、4−アミノジフェニルアミン、N,N−ジメチルフェニレンジアミン、ナフチルアミン、4−(4−ニトロフェニル−アゾ)アニリン(ディスパースオレンジ3)、スルファメタジン、4−フェノキシアニリン、3−ニトロアニリン、4−アミノアセトアニリド(N−(4−アミノフェニル)アセトアミド))、4−アミノ−2−ヒドロキシ−安息香酸フェニルエステル(フェニルアミノサリチレート)、N−(4−アミノ−フェニル)−ベンズアミド、種々のベンジルアミン、例えば2,5−ジメトキシベンジルアミン、4−フェニルアゾアニリンならびにこれらの組合せおよび置換バージョンが含まれる。他の例には、パラ−エトキシアニリン、パラ−ドデシルアニリン、シクロヘキシル置換ナフチルアミンおよびチエニル置換アニリンが含まれる。他の適切な芳香族アミンの例には、アミノ置換芳香族化合物ならびにそのアミン窒素が芳香族環の一部であるアミン、例えば3−アミノキノリン、5−アミノキノリンおよび8−アミノキノリンが含まれる。芳香族環と直接結合している1つの第二級アミノ基およびイミダゾール環と結合している第一級アミノ基を含む、芳香族アミン、例えば2−アミノベンゾイミダゾールも含まれる。他のアミンには、N−(4−アニリノフェニル)−3−アミノブタンアミドならびに3−アミノプロピルイミダゾールおよび2,5−ジメトキシベンジルアミンが含まれる。
【0072】
追加的な芳香族アミンおよび関連する化合物は米国特許第6,107,257号および同第6,107,258号に開示されている。これらの例には、アミノカルバゾール、ベンゾイミダゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノ−インダゾリノン、アミノピリミジン、メルカプトトリアゾール、アミノフェノチアジン、アミノピリジン、アミノピラジン、アミノピリミジン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、アミノチアジアゾール、アミノチオチアジアゾールおよびアミノベンゾトリアゾールが含まれる。他の適切なアミンには、3−アミノ−N−(4−アニリノフェニル)−N−イソプロピルブタンアミドおよびN−(4−アニリノフェニル)−3−{(3−アミノプロピル)−(ココアルキル)アミノ}ブタンアミドが含まれる。使用できる他の芳香族アミンには、例えばアミド構造で連結された複数の芳香族環を含む種々の芳香族アミン染料中間体が含まれる。例には、一般構造:
【化4】
(式中、R
8およびR
9は独立に、アルキル基またはアルコキシ基、例えばメチル、メトキシまたはエトキシである)
の物質およびその異性体変形体が含まれる。
【0073】
一例では、R
8とR
9はどちらも−OCH
3であり、この物質はファーストブルーRR[CAS# 6268−05−9]として公知である。他の例では、R
9が−OCH
3であり、R
8が−CH
3であり、この物質はファーストバイオレットB[99−21−8]として公知である。R
8とR
9がどちらもエトキシである場合、この物質はファーストブルーBB[120−00−3]として公知である。米国特許第5,744,429号は、本明細書で有用な他の芳香族アミン化合物、特にアミノアルキルフェノチアジンを開示している。米国特許公開第20030030033号に開示されているものなどのN−芳香族置換酸アミド化合物も本明細書で使用することができる。適切な芳香族アミンには、アミン窒素が芳香族カルボン酸化合物上の置換基である、すなわち、その窒素が芳香族環内でsp
2混成化されていないものが含まれる。
【0074】
芳香族アミンは、ペンダントカルボニル含有基と縮合可能なN−H基を有することができる。特定の芳香族アミンは、酸化防止剤として通常使用される。これらの例は、アルキル化ジフェニルアミン、例えばノニルジフェニルアミンおよびジノニルジフェニルアミンである。これらの物質がポリマー鎖のカルボン酸官能基と縮合することになる範囲内において、これらも本明細書での使用に適している。しかし、そのアミン窒素と結合している2つの芳香族基はその反応性を低下させると考えられる。したがって、適切なアミンには、第一級窒素原子(−NH
2)、またはそのヒドロカルビル置換基の1つが相対的に短鎖であるアルキル基、例えばメチルである第二級窒素原子を有するものが含まれる。そうした芳香族アミンの中には、4−フェニルアゾアニリン、4−アミノジフェニルアミン(ADPA)、2−アミノベンゾイミダゾールおよびN,N−ジメチルフェニレンジアミンがある。これらおよび他の芳香族アミンのいくつかは、分散性および他の特性に加えて、そのコポリマーに酸化防止性能も付与することができる。
【0075】
一実施形態では、コポリマーのアミン成分は、コポリマーのカルボン酸官能基と縮合できる少なくとも2つのN−H基を有するアミンをさらに含む。この物質を、カルボン酸官能基を含むコポリマーの2つを一緒に連結させるのに用いることができるので、以下「連結アミン」と称することとする。より高分子量の物質は改善された性能を提供することができることが観察されており、これは、その物質の分子量を増大させるための1つの方法である。連結アミンは脂肪族アミンであっても芳香族アミンであってもよく;芳香族アミンである場合、それは、上記の芳香族アミンに加えるものでありかつそれとは別個の要素であると考えられ、これは、コポリマー鎖の過度の架橋を回避するために、ただ1つの縮合可能かまたは反応性のNH基を一般に有することになる。そうした連結アミンの例には、3つ以上の芳香族環を有する芳香族アミン、例えば、2011年11月24日公開のLubrizol CorporationのWO2011146692の例えば段落[0068〜[0080]に開示されているホルムアルデヒド結合ADPAまたは同様のタイプの芳香族アミンが含まれる。連結アミンの他の例は、エチレンジアミン、フェニレンジアミンおよび2,4−ジアミノトルエンを含むことができ;その他には、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンおよび他のα−ω−ポリメチレンジアミンが含まれる。そうした連結アミン上の反応性官能基の量は、望むなら、化学量論量より少ない量のヒドロカルビル置換コハク酸無水物などのブロッキング物質と反応させることによって低減することができる。
【0076】
一実施形態では、そのアミンには、コポリマー骨格と直接反応することができる窒素含有化合物が含まれる。適切なアミンの例には、N−p−ジフェニルアミン、4−アニリノフェニルメタクリルアミド、4−アニリノフェニルマレイミド、4−アニリノフェニルイタコンアミド、4−ヒドロキシジフェニルアミンのアクリレートエステルおよびメタクリレートエステルならびにp−アミノジフェニルアミンまたはp−アルキルアミノジフェニルアミンとグリシジルメタクリレートとの反応生成物が含まれる。
【0077】
一実施形態では、例示的なコポリマーは酸化制御を提供する。一般に、酸化制御を有するコポリマーは、モルホリン、ピロリジノン、イミダゾリジノン、アミノアミド(アセトアミドなど)、β−アラニンアルキルエステルおよびその混合物などのアミン含有化合物の組み込まれた残基を含む。適切な窒素含有化合物の例には、3−モルホリン−4−イル−プロピルアミン、3−モルホリン−4−イル−エチルアミン、β−アラニンアルキルエステル(一般にアルキルエステルは1〜30個または6〜20個の炭素原子を有する)またはその混合物が含まれる。
【0078】
一実施形態では、イミダゾリジノン、環状カルバメートまたはピロリジノンをベースとした化合物は、一般構造:
【化5】
(式中、
X=−OHまたはNH
2であり;
Hy”は水素またはヒドロカルビル基(典型的にはアルキルまたはC
1〜4−アルキルまたはC
2−アルキル)であり;
Hyはヒドロカルビレン基(典型的にはアルキレンまたはC
1〜4−アルキレンまたはC
2−アルキレン)であり;
Q=>NH、>NR、>CH
2、>CHR、>CR
2または−O−(典型的には>NHまたは>NR)であり、
RはC
1〜4アルキルである)
の化合物から誘導することができる。
【0079】
一実施形態では、イミダゾリジノンには、1−(2−アミノ−エチル)−イミダゾリジン−2−オン(アミノエチルエチレン尿素とも称される)、1−(3−アミノ−プロピル)−イミダゾリジン−2−オン、1−(2−ヒドロキシ−エチル)−イミダゾリジン−2−オン、1−(3−アミノ−プロピル)−ピロリジン−2−オン、1−(3−アミノ−エチル)−ピロリジン−2−オンまたはその混合物が含まれる。
【0080】
一実施形態では、そのアミドは一般構造:
【化6】
(式中、Hyはヒドロカルビレン基(典型的にはアルキレンまたはC
1〜4−アルキレンまたはC
2−アルキレン)であり;Hy’はヒドロカルビル基(典型的にはアルキルまたはC
1〜4−またはメチル)である)で表すことができる。
【0081】
適切なアミドの例には、N−(2−アミノ−エチル)−アセトアミドまたはN−(2−アミノ−プロピル)−アセトアミドが含まれる。
【0082】
一実施形態では、β−アラニンアルキルエステルは一般構造:
【化7】
(式中、R
10は1〜30個または6〜20個の炭素原子を有するアルキル基である)
で表すことができる。
【0083】
適切なβ−アラニンアルキルエステルの例には、β−アラニンオクチルエステル、β−アラニンデシルエステル、β−アラニン2−エチルヘキシルエステル、β−アラニンドデシルエステル、β−アラニンテトラデシルエステルまたはβ−アラニンヘキサデシルエステルが含まれる。
【0084】
一実施形態では、このコポリマーを、1−(2−アミノ−エチル)−イミダゾリジン−2−オン、4−(3−アミノプロピル)モルホリン、3−(ジメチルアミノ)−1−プロピルアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(3−アミノプロピル)−2−ピロリジノン、アミノエチルアセトアミド、β−アラニンメチルエステル、1−(3−アミノプロピル)イミダゾールおよびその混合物からなる群から選択されるアミンと反応させることができる。
【0085】
一実施形態では、コポリマーを、モルホリン、イミダゾリジノンおよびその混合物から選択されるアミン含有化合物と反応させることができる。一実施形態では、この窒素含有化合物は、1−(2−アミノエチル)イミダゾリジノン、4−(3−アミノプロピル)モルホリン、3−(ジメチルアミノ)−1−プロピルアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(3−アミノプロピル)−2−ピロリジノン、アミノエチルアセトアミド、β−アラニンメチルエステル、1−(3−アミノプロピル)イミダゾールおよびその組合せから選択される。
【0086】
エステル基および/または窒素含有基は、0.01wt%〜1.5wt%(または0.02wt%〜0.75wt%または0.04wt%〜0.25wt%)の窒素をコポリマーに提供するのに十分であり得る。
E.エステル化コポリマー(A)の形成
【0087】
エステル化コポリマー(A)は:
(1)(i)ビニルモノマーと(ii)α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸またはその誘導体を含むカルボン酸モノマーを反応させてコポリマー骨格を形成させるステップであって、そのカルボン酸モノマーが任意選択でエステル基を有する、ステップと、
(2)任意選択で、ステップ(1)のコポリマー骨格をエステル化してエステル化コポリマーを形成するステップと、
(3)任意選択で、ステップ(1)または(2)のコポリマーを、少なくとも0.01wt%窒素を有するエステル化コポリマーを提供する量の窒素含有化合物と反応させ;それによって、得られるコポリマー(A)を(1)、(2)および(3)の少なくとも1つにおいてエステル化するステップ
を含む方法によって形成させることができる。
1.コポリマー骨格の形成
【0088】
エステル化コポリマー(A)のコポリマー骨格は、任意選択で、フリーラジカル開始剤、溶媒またはその混合物の存在下で調製することができる。開始剤の量を変えれば、例示的なコポリマーの数平均分子量および他の特性を変えることができることが理解される。
【0089】
コポリマー骨格は、カルボン酸モノマーをビニルモノマーと反応させることによって調製することができる。
【0090】
溶媒は液状の有機希釈剤であってよい。一般に、溶媒は、所要反応温度を提供するのに十分高い沸点を有する。例示的な希釈剤には、トルエン、t−ブチルベンゼン、ベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、125℃超で沸騰する種々の石油留分およびその混合物が含まれる。
【0091】
フリーラジカル開始剤は、熱的に分解してフリーラジカルを提供する1つまたは複数のペルオキシ化合物、例えば過酸化物、ヒドロペルオキシドおよびアゾ化合物を含むことができる。他の適切な例は、J. BrandrupおよびE. H. Immergut編、「Polymer Handbook」、第2版、John Wiley and Sons、New York(1975年)、II−1〜II−40頁に記載されている。フリーラジカル開始剤の例には、フリーラジカル生成試薬から誘導されるものが含まれ、その例には、過酸化ベンゾイル、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルメタクロロペルベンゾエート、t−ブチルペルオキサイド、sec−ブチルペルオキシジカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルペルオキサイド、クミルペルオキサイド、t−ブチルペルオクトエート、t−ブチル−m−クロロペルベンゾエート、アゾビスイソバレロニトリルおよびその混合物が含まれる。一実施形態では、そのフリーラジカル生成試薬は、t−ブチルペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルペルオキサイド、クミルペルオキサイド、t−ブチルペルオクトエート、t−ブチル−m−クロロペルベンゾエート、アゾビスイソバレロニトリルまたはその混合物である。市販のフリーラジカル開始剤には、Akzo Nobelから商標名Trigonox(登録商標)−21のもとで販売されている化合物のクラスが含まれる。
【0092】
例示的な骨格ポリマーは以下のようにして形成させることができる:αオレフィンを、ラジカル開始剤の存在下、任意選択で溶媒の存在下で無水マレイン酸と反応させる。トルエンなどの溶媒を使用して、モノマー濃度の希釈およびベンジルプロトンへの連鎖移動によって、骨格長さを短くすることができる。スキーム1は、αオレフィンが1−ドデセンであり、開始剤がtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(Akzo Nobelより、商標名Trigonox 21Sのもとで販売されている)であり、溶媒がトルエンである一例を示す。
【化8】
(式中、コポリマーの各セグメント(2つの星印で示されている)において、nおよびmは独立に、少なくとも1、例えば1〜10または1〜5または1〜3の整数である)
理解されるように、得られる骨格コポリマーはnおよびmのランダムな変動を有していてよい。
【0093】
従来のフリーラジカル重合技術による、トルエン中での1−ドデセンと無水マレイン酸との共重合によって低分子量コポリマーが得られる。
2.コポリマー骨格のエステル化
【0094】
例示的なコポリマー骨格のエステル化(またはエステル交換。そのコポリマー骨格がエステル基をすでに含み、異なったタイプのものを望む場合)は、エステル化を実行するのに典型的な条件下で、上記のコポリマーのいずれかと1つまたは複数の所望アルコールおよび/またはアルコキシレートとを加熱することによって実行することができる。そうした条件は、例えば少なくとも80℃、例えば最大で150℃またはそれより高い温度を含む。ただし、その温度は、反応混合物またはその生成物の任意の成分の最も低い分解温度より低く維持されるものとする。水または低級アルコールは通常、エステル化の進行とともに除去される。これらの条件は、任意選択で、実質的に不活性の通常液状である有機溶媒または希釈剤、例えば鉱油、トルエン、ベンゼン、キシレンなど、ならびにエステル化触媒、例えばトルエンスルホン酸、硫酸、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素−トリエチルアミン、メタンスルホン酸、トリフルオロ−メタンスルホン酸、塩酸、硫酸アンモニウムおよびリン酸の1つまたは複数の使用を含むことができる。エステル化の実行のさらなる詳細は、米国特許第6,544,935号、11欄に見ることができる。
【0095】
一実施形態では、コポリマーのカルボキシ官能基の少なくとも2%または少なくとも5%または特定の実施形態では10%〜20%がエステル基に転換されないまま残留する。これらの大部分は続いて窒素含有基へ転換されることになる。カルボキシ官能基の完全なエステル化のための化学量論的必要量を超える過剰なアルコールおよび/またはアルコキシレートを、エステル化プロセスで使用することができる。ただし、ポリマーのエステル含量は適切な範囲、例えば90〜99%の範囲に留まるものとする。例示的な潤滑組成物では、そうしたアルコールおよびアルコキシレートは、例えば希釈剤または溶媒として機能することができるため、過剰なアルコールおよびアルコキシレートまたは未反応のアルコールおよびアルコキシレートは除去する必要はない。同様に、潤滑組成物において、それらが希釈剤または溶媒として同様に機能することができるため、任意選択の反応媒体、例えばトルエンも除去する必要はない。他の実施形態では、未反応のアルコール、アルコキシレートおよび希釈剤は、蒸留などの周知の技術で除去される。
3.コポリマー骨格上での窒素含有基の形成
【0096】
窒素含有化合物は、(i)溶媒を用いた溶液中か、または、(ii)溶媒の存在下もしくは非存在下での反応性押出条件(reactive extrusion condition)下のいずれかで、アミンまたは他の窒素含有官能基をコポリマー骨格上へグラフト化することによって、コポリマー骨格上へ直接反応させることができる。アミン官能性モノマーは、多くの仕方でコポリマー骨格上へグラフト化することができる。他の実施形態では、グラフト化は、フリーラジカル開始剤によって、溶液中または固体形態で実施される。溶液グラフト化は、グラフト化コポリマーを生成するための周知の方法である。そうしたプロセスでは、試薬は、ニートで、または適切な溶媒中の溶液として導入される。次いで所望のコポリマー生成物を、適切な精製ステップにより、反応溶媒および/または不純物から分離することができる。
【0097】
一実施形態では、窒素含有化合物を、溶媒、例えばベンゼン、t−ブチルベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンまたはその組合せなどの有機溶媒などの溶媒中での、コポリマーのフリーラジカル触媒グラフト化によって、コポリマー骨格上へ直接反応させることができる。反応は、100℃〜250℃または120℃〜230℃または160℃〜200℃の範囲、例えば160℃超の高温で、当初の全油溶液に対して例えば1〜50または5〜40wt%のコポリマーを含む鉱物性の潤滑油溶液などの溶媒中で、および任意選択で不活性環境下で実施することができる。
【0098】
一実施形態では、そのアミンは、1つより多くの窒素をもつことができ、カルボン酸モノマー誘導基と反応するアミンと結合しているR基が、任意選択でヒドロカルビル基で置換された少なくとも1個の窒素原子を含むような、脂肪族アミンおよび芳香族アミンから選択することができる。ヒドロカルビル基は、脂肪族、芳香族、環状および非環状のヒドロカルビル基から選択することができる。そのアミンとして、以下の:1−(2−アミノ−エチル)−イミダゾリジン−2−オン、4−(3−アミノプロピル)モルホリン、3−(ジメチルアミノ)−1−プロピルアミン、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(3−アミノプロピル)−2−ピロリジノン、アミノエチルアセトアミド、β−アラニンメチルエステルおよび1−(3−アミノプロピル)イミダゾールの1つまたは複数を使用することができる。
【0099】
他の実施形態では、窒素含有化合物は、窒素含有モノマーが骨格中に取り込まれるように、ビニルモノマーおよびカルボン酸モノマーの両方と重合できるモノマーであってよい。例えば、フリーラジカル触媒反応が用いられる。
II.ジエンゴムコポリマー(B)
【0100】
例示的な潤滑組成物中の例示的なジエンゴムコポリマー(B)は、ジエンモノマーから誘導されたポリジエン成分(B1)、およびビニル芳香族モノマーから誘導されたポリビニル芳香族成分(B2)、(ポリ(ビニルアレーン)を含む。例示的なジエンゴムコポリマーは、ブロックのうちの少なくとも1つが支配的にポリジエン(B1)である(例えば、その単位の少なくとも50%がジエンモノマー(単数または複数)から誘導される)1つまたは複数のブロックと、ブロックのうちの少なくとも1つが支配的にポリ(ビニルアレーン)(B2)である(例えば、その単位の50%未満がビニル芳香族モノマー(単数または複数)から誘導される)1つまたは複数のポリ(ビニル芳香族)ブロックとを含むブロックコポリマーを含む。
【0101】
ジエンゴムコポリマー(B)のM
Wは、30,000〜200,000未満または100,000〜200,000または30,000〜100,000であってよい。一実施形態では、ジエンゴムコポリマーのMwは、少なくとも30,000または少なくとも50,000または少なくとも80,000または少なくとも100,000である。一実施形態では、ジエンゴムコポリマーのMwは100,000〜150,000、例えば約120,000である。
【0102】
特定の適切なブロックポリマー(B)の多分散性(M
W/M
N比)は一般に1.0〜1.2である。
【0103】
ジエンゴムコポリマー(B)のビニル芳香族モノマー含量は一般に重量で10%〜60%または重量で15〜60%または30〜60%である。これらのコポリマーのジエンモノマー含量(残留含量)は一般に重量で40%〜90%、または40もしくは50%〜85もしくは70%である。
A.ジエンゴムコポリマーのジエンモノマー
【0104】
ジエンは、通常1,3の関係で共役して位置する2つの二重結合を含む。ポリエンと称されることがある、2つより多くの二重結合を含むオレフィンも本明細書で使用する「ジエン」の定義に含まれるとみなす。
【0105】
ジエンゴムコポリマー(B)のポリジエン成分(B1)を形成するのに適したジエンモノマーには、4〜20個の炭素原子を含む共役ジエンが含まれる。例示的なジエンモノマーには、1,3−共役ジエン、例えばブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、ピペリレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、クロロプレンおよびその混合物が含まれる。一実施形態では、ジエンモノマーは4〜6個の炭素原子、例えば1,3−ブタジエンを含む。例えば、ジエンゴムコポリマーは、1,3−ブタジエン、ランダムに共重合したブタジエンおよびイソプレンから誘導される1つもしくは複数のポリジエンブロック、またはブタジエンおよびイソプレンのそれぞれの1つもしくは複数のブロックを含むが、それは、通常、ジエンゴムコポリマー中のポリジエンブロック(単数または複数)がホモポリマーブロックである場合である。星型コポリマーも考慮される。
【0106】
一実施形態では、ポリジエン成分(B1)は、少なくとも約10,000または少なくとも20,000のM
Wを有する。ポリジエン成分(B1)は、最大で約200,000または最大で150,000または最大で100,000のM
Wを有することができる。
B.ジエンゴムコポリマーのビニル芳香族モノマー
【0107】
ジエンポリマー(B)のポリ(ビニル芳香族)成分(B2)を形成するのに適したビニル芳香族モノマーは一般式:
Ar−C(R)
5CH
2
(式中、Rは水素またはアルキルであり、Arはアルキル、ハロまたはハロアルキル置換をもつかまたはもたない1〜3個の芳香族環を有する芳香族環構造であり、その任意のアルキル基はハロ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボニルおよびカルボキシルなどの官能基でモノ置換もしくはマルチ置換されていてよい1〜6個の炭素原子を含む)のものである。一実施形態では、Arはフェニルまたはアルキルフェニル、ハロフェニル、アルキルフェニル、アルキルハロフェニル、ナフチル、ピリジニルまたはアントラセニルである。ビニル置換芳香族は一般に、8〜約20個の炭素または8〜12個の炭素原子、例えば8もしくは9個の炭素原子を含む。
【0108】
一実施形態では、Arはフェニルまたはアルキルフェニルである。例示的なビニル芳香族モノマーには、スチレン、α低級アルキル置換スチレン、例えばαメチルスチレンおよびαエチルスチレン、低級アルキル環置換基などの環置換基を有するスチレン、例えばo−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびp−tert−ブチルスチレン、ビニルベンゼンスルホン酸、およびp−低級アルコキシスチレン、1,3,ジメチルスチレン、p−ビニルトルエンなどのビニルトルエン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン;置換ビニルアントラセン、置換ビニルナフタレンおよび置換ビニルベンゼン(スチレン)(置換スチレンを含む)を含むビニル置換芳香族ならびにその混合物が含まれる。置換スチレンには、その環またはビニル基上に置換基を有するスチレンが含まれる。そうした置換基には、ハロ−、アミノ−、アルコキシ−、カルボキシ−、ヒドロキシ−、スルホニル−、ヒドロカルビル−が含まれる。ここで、ヒドロカルビル基は1〜約12個の炭素原子および他の置換基を有する。2つ以上のビニル芳香族モノマーの混合物を使用することができる。一実施形態では、ビニル芳香族モノマーは、スチレン、αメチルスチレン、核メチルスチレン(nuclear methylstyrene)(例えば2−メチルスチレン、3−メチルスチレンまたは4−メチルスチレン)、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ビニルナフタレンおよびこれらの混合物から選択される。適切なビニル芳香族モノマーは上記式Iに相当するものである。一実施形態では、スチレンまたは置換スチレンが使用される。
【0109】
例えば、ビニル芳香族ブロック(単数または複数)は、スチレンだけから誘導するか、あるいはランダムに共重合したスチレンおよび他のビニル芳香族モノマー、例えばαメチルスチレンから形成させることができるが、そのブロックは通常ホモポリマーブロックである。1つより多くのポリビニル芳香族ブロックが存在する場合、そのブロックは、同じモノマーから誘導することも異なるモノマーから誘導することもできる。
【0110】
各ポリ(ビニル芳香族)ブロックの重量平均分子量(M
W)は約3,000〜約40,000であってよく、一実施形態では20,000未満であってよい。M
Wは、ポリスチレン標準で較正された装置で、THF中、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。1つより多くのポリ(ビニル芳香族)ブロックが存在する場合、そのポリ(ビニル芳香族)ブロックの少なくとも1つは少なくとも5,000のM
Wを有する。
【0111】
特に、水素化スチレン/ジエンブロックコポリマーが有用である。水素化芳香族/ジエンブロックコポリマーでは、それは一般に、選択的に水素化されているジエンモノマー含有ブロックであり、その芳香族部分は一般に水素化に対して、より耐性がある。
C.ジエンゴムコポリマー(B)の形成
【0112】
連鎖移動剤、開始剤および/またはコモノマーの存在下でジエンとビニル芳香族化合物を重合させる方法は周知であり、例示的な潤滑組成物で使用されるジエンゴムコポリマーを調製するのに、適切な任意の方法を利用することができる。ポリブタジエン/ポリスチレンコポリマーは、例えば、アルキルリチウム、例えばブチルリチウムなどの開始剤の存在下でのブタジエンとスチレンとのアニオン重合によって調製することができる。例えば、反応器において、適切な溶媒中、アニオン開始剤の存在下、適切な反応温度で第1モノマーのチャージを重合して第1のブロックを形成させる。第2モノマーのチャージを反応器に導入し、適切な反応温度で第1のブロックと共重合させてジブロックを形成させる。第1モノマーはジエンモノマーかまたはビニル芳香族モノマーのいずれかであり、第2モノマーはジエンおよびビニル芳香族モノマー以外のものである。モノマーのさらなるチャージを加えて、トリブロックポリマーまたはマルチブロックポリマーを形成させることができることが理解される。スチレンの逐次添加によって相対的に大きいホモポリマーセグメント(B2)をもたらし、続いてジエンで相対的に大きいホモポリマーセグメント(B1)をもたらすことによって作製されたブロックコポリマーが例示される。
【0113】
反応に適した溶媒には、通常、モノマー、コポリマーおよびジエンゴムコポリマーと溶液を形成する液状の有機材料が含まれる。例示的な溶媒には、芳香族炭化水素および置換芳香族炭化水素、例えばベンゼン、エチルベンゼン、トルエンおよびキシレン、5個以上の炭素原子からなる置換または非置換、直鎖状または分枝状の飽和脂肪族、例えばヘプタン、ヘキサンおよびオクタンならびに5個もしくは6個の炭素原子を有する脂環式炭化水素または置換脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサンが含まれる。
【0114】
当初に得られた不飽和ブロックポリマーの水素化は、酸化的および熱的により安定なポリマーを生成する。還元は一般に、微粉化するかまたは支持されたニッケル触媒を用いて、重合プロセスの一部として実施される。変換を実行するために他の遷移金属を使用することもできる。水素化は通常、当初ポリマーのオレフィン系不飽和のおおよそ95〜99.5%を還元するように実施される。酸化安定性を目的として、水素化前のポリマー(B)中に存在するオレフィン二重結合の全量に対して、5%以下または0.5%以下の残留オレフィン系不飽和を有する水素化コポリマー(B)を形成させることができる。そうした不飽和は、赤外線分光法または核磁気共鳴分光法などのいくつかの手段で測定することができる。
III.エンジンオイル潤滑組成物
【0115】
本発明の1つの態様によるエンジンオイル潤滑組成物は、エステル化コポリマー(A)、ジエンゴムコポリマー(B)、潤滑粘度の油(すなわち「基油」)(C)および任意選択で他の性能添加剤、例えば他の粘度調整剤、分散剤、清浄剤、極圧添加剤(extreme pressure agent)、摩耗防止剤、耐スカッフィング剤、流動点降下剤、腐食防止剤などを含む。
【0116】
潤滑組成物は、潤滑粘度の油を、その少量成分または主要成分として、潤滑組成物の少なくとも5wt%または少なくとも20wt%または少なくとも30wt%または少なくとも40wt%または少なくとも60wt%含むことができる。
【0117】
一実施形態では、エステル化コポリマー(A)は、潤滑組成物の少なくとも0.1wt%または少なくとも1wt%、または最大で10wt%または最大で5wt%である。
【0118】
例示的な潤滑組成物は、0.5〜1.5wt%などの0.1〜10wt%または0.2〜5wt%のジエンゴムコポリマー(B)を含むことができる。
【0119】
潤滑組成物中の基油(C)は、例えば10〜95wt%または20〜80wt%であってよい。他の性能添加剤(粘度調整剤(A)およびジエンゴムコポリマー(B)以外)は、例えば潤滑組成物の0.2〜40wt%または0.5〜5wt%であってよい。
【0120】
例示的な潤滑組成物は、少なくとも1wt%の例示的な粘度調整剤(A)、少なくとも0.2wt%のジエンゴムコポリマー(B)、少なくとも40wt%のポリαオレフィン(PAO)ベースの基油(C)、任意選択で1wt%未満の流動点降下剤および任意選択で1つまたは複数の性能添加剤を含む。
A.潤滑組成物の形成
【0121】
潤滑組成物はエステル化コポリマー(A)を、ジエンゴムコポリマー(B)、基油(C)および任意選択で他の性能添加剤と一緒にすることによって形成させることができる。一実施形態では、例示的な潤滑組成物を調製するためのプロセスは:
(1)上述したような、エステル化コポリマー(A)を形成させる(または得る)ステップと、
(2)(1)で形成したエステル化コポリマーを、ジエンゴムコポリマー(B)、潤滑粘度の油(C)ならびに任意選択でエステル化コポリマー(A)およびジエンゴムコポリマー(B)以外の1つまたは複数の性能添加剤と、潤滑組成物または潤滑剤濃縮物中のジエンゴムコポリマー(B)と例示的な粘度調整剤(A)成分の比(B:A)が0.01〜0.9または0.2〜0.85または0.3〜0.8または少なくとも0.4である潤滑組成物を提供するのに十分な量で混合するステップとを含む。
IV.潤滑粘度の油
【0122】
適切な潤滑粘度の油(C)には、天然および合成油、水素化分解、水素化および水素化仕上げ(hydrofinishing)することによって誘導された油、未精製油、精製油および再精製油ならびにその混合物が含まれる。
【0123】
未精製油は、一般にさらなる精製処理を用いない(またはほとんど用いない)で天然または合成供給源から直接得られるものである。
【0124】
精製油は、それらが、1つまたは複数の特性を改善するために1つまたは複数の精製ステップでさらに処理されていること以外は、未精製油と同様である。精製技術は当該分野で公知であり、それらには、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、ろ過、パーコレーションなどが含まれる。
【0125】
再精製油は、再生油または再処理油としても公知であり、精製油を得るために用いられるものと同様のプロセスによって得られ、しばしば、使用済み添加剤および油分解生成物の除去を対象とした技術で追加的に処理される。
【0126】
潤滑粘度の油として有用な天然油には、動物油もしくは植物油(例えば、ヒマシ油またはラード油)、液状の石油などの鉱物性潤滑油、およびパラフィン型、ナフテン型もしくは混合パラフィン−ナフテン型の溶媒処理もしくは酸処理された鉱物性潤滑油および石炭もしくはシェールから誘導された油またはその混合物が含まれる。
【0127】
潤滑粘度の油として有用な合成潤滑油には、炭化水素油、例えば重合したオレフィンおよび共重合したオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)およびその混合物;アルキル−ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドならびにその誘導体、類似体および同族体、ならびにその混合物が含まれる。
【0128】
他の合成潤滑油には、ポリオールエステル(Priolube(登録商標)3970など)、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチルおよびデカンホスホン酸のジエチルエステル)またはポリマー性テトラヒドロフランが含まれる。合成油は、フィッシャー−トロプシュ反応で生成することができ、一般に、水素異性化されたフィッシャー−トロプシュ炭化水素またはワックスであってよい。一実施形態では、油を、フィッシャー−トロプシュのガスツーリキッド合成手順によって調製することができ、また油は他のガスツーリキッド(GTL)油であってよい。
【0129】
潤滑粘度の油は、American Petroleum Institute(API) Base Oil Interchangeability Guidelineに指定されているようにして定義することもできる。5つの基油グループは以下の通りである:グループI(硫黄含量>0.03wt%および/または<90wt%飽和分、粘度指数80〜120);グループII(硫黄含量≦0.03wt%および≧90wt%飽和分、粘度指数80〜120);グループIII(硫黄含量≦0.03wt%および≧90wt%飽和分、粘度指数≧120);グループIV(すべてポリαオレフィン(PAO));ならびにグループV(グループI、II、IIIまたはIVに含まれない他のすべてのもの)である。例示的な潤滑粘度の油には、APIグループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV油またはその混合物が含まれる。いくつかの実施形態では、潤滑粘度の油はAPIグループI、グループII、グループIIIもしくはグループIV油またはその混合物である。いくつかの実施形態では、潤滑粘度の油はAPIグループI、グループIIもしくはグループIII油またはその混合物である。
【0130】
いくつかの実施形態では、潤滑組成物の少なくとも5wt%または少なくとも10wt%または少なくとも20wt%または少なくとも40wt%はポリαオレフィン(グループIV)である。
V.性能添加剤
【0131】
一実施形態では、潤滑組成物または潤滑剤濃縮物は、少なくとも1つの性能添加剤(本発明の説明および特許請求の範囲の都合上、「性能添加剤」と見なさない、上記で論じた粘度調整剤およびジエンゴムコポリマー以外のもの)を含む。追加的な性能添加剤は、金属不活性化剤、清浄剤、分散剤、極圧添加剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、腐食防止剤、発泡防止剤、抗乳化剤、流動点降下剤、他の粘度調整剤、摩擦調整剤、シール膨潤剤および/またはその混合物の少なくとも1つを含むことができる。一実施形態では、性能添加剤は単独で使用することも、組み合わせて使用することもできる。
【0132】
存在する性能添加剤の合計量は、潤滑組成物の0wt%〜30wt%または1wt%〜25wt%または2wt%〜20wt%または3wt%〜10wt%の範囲である。性能添加剤の1つまたは複数が存在していてよいが、性能添加剤は互いに対して異なる量で存在するのが一般的である。
【0133】
潤滑剤濃縮物(これは、追加の油と一緒にされて、全体的または部分的に、最終潤滑組成物を形成していてよい)の場合、種々の性能添加剤と潤滑粘度の油および/または希釈剤油との比は、重量で80:20〜10:90の範囲に含まれる。
【0134】
例示的な摩擦調整剤には、脂肪アミン、エステル、例えばホウ素化グリセロールエステル、脂肪ホスファイト、脂肪酸アミド、脂肪エポキシド、ホウ素化脂肪エポキシド、アルコキシ化脂肪アミン、ホウ素化アルコキシ化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪イミダゾリン、カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンの縮合生成物、アルキルリン酸のアミン塩、モリブデンジチオカルバメートまたはその混合物が含まれる。
【0135】
酸化阻止剤として有用な例示的な酸化防止剤には、硫化オレフィン、ヒンダードフェノール、ジアリールアミン(例えばジフェニルアミン、例えばアルキル化ジフェニルアミンおよびフェニル−α−ナフチルアミン)、モリブデンジチオカルバメートならびにその混合物および誘導体が含まれる。酸化防止剤化合物は単独で使用することも、組み合わせて使用することもできる。
【0136】
例示的な清浄剤には、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属と、フェネート、硫化フェネート、スルホネート、カルボン酸、リンの酸(phosphorus acid)、モノチオリン酸および/もしくはジチオリン酸、サリゲニン、アルキルサリチレート、サリキサレートの1つもしくは複数またはその混合物の中性もしくは過塩基性、ニュートン性もしくは非ニュートン性、塩基性の塩が含まれる。
【0137】
例示的な分散剤はしばしば無灰型分散剤として公知である。その理由は、潤滑油組成物中で混合する前に、それらが灰分形成金属を含まず、潤滑剤およびポリマー分散剤に添加された場合、それらが通常灰分形成金属を提供しないからである。無灰型分散剤は、相対的に高分子量の炭化水素鎖と結合した極性基を特徴とする。典型的な無灰分散剤には、スクシンイミド、ホスホネートおよびその組合せが含まれる。
【0138】
例示的なスクシンイミド分散剤は、N置換長鎖アルケニルスクシンイミドならびにその後処理バージョンを含むことができる。米国特許第3,215,707号、同第3,231,587号、同第3,515,669号、同第3,579,450号、同第3,912,764号、同第4,605,808号、同第4,152,499号、同第5,071,919号、同第5,137,980号、同第5,286,823号および同第5,254,649号は、そうした分散剤およびそれらの成分を形成させるための方法を記載している。後処理された分散剤には、尿素、ホウ素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換コハク酸無水物、ニトリル、エポキシドおよびリン化合物などの物質と反応させることによってさらに処理されるものが含まれる。
【0139】
例えば、そうした分散剤は、C3〜C6ポリアルキレン(例えば、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリペンチレン、ポリヘプチレン;ほとんどの場合ポリイソブチレン)またはその誘導体(例えば、塩素化誘導体)と、モノ−もしくはα,β不飽和ジカルボン酸またはその無水物(無水マレイン酸または無水コハク酸など)を反応してアシル化C3〜C6ポリアルキレン化合物を生成させ、これを、第一級アミンなどのアミン、またはポリエチレンアミンなどのポリアミンと反応して分散剤を生成させることによって生成することができる。
【0140】
他の例示的な分散剤は、ポリイソブチレン、アミンおよび酸化亜鉛から誘導して、亜鉛とのポリイソブチレンスクシンイミド錯体を形成させることができる。
【0141】
他のクラスの無灰分散剤は、米国特許第5,330,667号に記載されているタイプのアシル化ポリアルキレンポリアミンである。
【0142】
他のクラスの無灰分散剤はマンニッヒ塩基である。マンニッヒ分散剤は、アルキルフェノールと、アルデヒド(特にホルムアルデヒド)およびアミン(特にポリアルキレンポリアミン)の反応生成物である。そのアルキル基は一般に少なくとも30個の炭素原子を含む。
【0143】
摩耗防止剤は、金属チオホスフェート、特に亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP);リン酸エステルまたはその塩;ホスファイト;およびリン含有カルボン酸エステル、エーテルおよびアミド;ベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、ジ−tert−ブチルポリスルフィド、ジ−tert−ブチルスルフィド、硫化ディールス−アルダー付加体またはアルキルスルフェニルN’N−ジアルキルジチオカルバメートなどの有機硫化物およびポリスルフィドを含む耐スカッフィング剤などの化合物を含むことができる。
【0144】
油中に可溶性の極圧(EP)剤には、硫黄含有EP剤およびクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤およびリンEP剤が含まれる。そうしたEP添加剤の例には、塩素化ワックス;硫化オレフィン(硫化イソブチレンなど)、有機硫化物およびポリスルフィド、例えばジベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、ジメルカプトチアジアゾール、硫化ジペンテン、硫化テルペンおよび硫化ディールス−アルダー付加体;ホスホ硫化炭化水素、例えば硫化リンとテルペンチンまたはオレイン酸メチルの反応生成物;リンエステル、例えば二炭化水素ホスファイトおよび三炭化水素ホスファイト、例えばジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイト;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイトおよびポリプロピレン置換フェノールホスファイト;金属チオカルバメート、例えば亜鉛ジオクチルジチオカルバメートおよびバリウムヘプチルフェノール二酸;例えばジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシド、続いてP
2O
5とさらに反応した反応生成物のアミン塩を含むアルキルリン酸およびジアルキルリン酸または誘導体のアミン塩;ならびにその混合物(例えば米国特許第3,197,405号に記載されているような)が含まれる。
【0145】
例示的な腐食防止剤は、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸または無水物および脂肪酸、例えばオレイン酸とポリアミンとの縮合生成物;ベンゾトリアゾールの誘導体、チアジアゾール、例えばジメルカプトチアジアゾールおよびその誘導体、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾールならびに2−アルキルジチオベンゾチアゾールを含む金属不活性化剤を含むことができる。
【0146】
適切な発泡防止剤には、シリコーン、任意選択で酢酸ビニルをさらに含むエチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートのコポリマー;ならびにポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーを含む抗乳化剤が含まれる。
【0147】
無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドを含む流動点降下剤;ならびにExxon Necton−37(商標)(FN 1380)およびExxon Mineral Seal Oil(FN 3200)を含むシール膨潤剤も、例示的な潤滑組成物または潤滑剤濃縮物において使用することができる。
【0148】
一実施形態では、例示的な潤滑組成物または潤滑剤濃縮物は、硫化オレフィンおよびリン酸アミンを含まない。「含まない(free)」ということは、これらの構成要素が、個別的にまたは一緒にして、潤滑組成物の0.001%未満にしか達しないことを意味する。
【0149】
異なる実施形態では、潤滑組成物は、配合物中に、以下の表に記載するような他の添加剤を含むことができる:
【化9】
VI.工業的用途
【0150】
エステル化コポリマーおよびスチレンブタジエンゴム(SBR)ならびに例示的な潤滑組成物を使用する相乗的方法は、冷凍機用潤滑剤、グリース、ギアオイル、車軸油、ドライブシャフトオイル、トラクションオイル、マニュアルトランスミッションオイル、オートマチックトランスミッションオイル、金属加工液、油圧オイルおよび内燃機関オイルに適している可能性がある。これは、クランクケース油などの車両エンジンオイルに具体的な用途が見出される。例示的な潤滑組成物は、自動車のエンジンなどの機械装置に供給することができ、その機械装置の通常動作の際の潤滑のために使用される。
【0151】
いくつかの実施形態では、適切なエンジンオイル潤滑組成物は、表Iで示すような範囲内で存在する成分(活性物ベースで)を含む。
【表1】
【0152】
以下の実施例は本発明の例示を提供するものである。これらの実施例は、非包括的なものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0153】
(実施例1)
エステル化コポリマーの調製
5L反応フラスコに、490.3gの無水マレイン酸(MAA)、841.6gの1−ドデセンおよび860.2gのトルエンをチャージした。1−ドデセン:無水マレイン酸のモル比は1:1であった。フラスコに、PTFEガスケットと、オーバーヘッドスターラー、スターラーガイド、熱電対、窒素入口(250cm
3/分窒素)、カニューレを介して取り付けた蠕動ポンプを備えたシリコンセプタムおよび水冷却器を装備した5ポートフランジふたを取り付けた。反応フラスコとその内容物を105℃に加熱した。
【0154】
6.55gのTrigonox(登録商標)C(Akzo Nobelからの市販のtert−ブチルペルオキシベンゾエート開始剤)および124.5gのトルエンの混合物を一緒に混合し、蠕動ポンプで480分かけて反応フラスコに添加した。反応混合物を105℃で数時間撹拌した。
【0155】
19.65gのTrigonox(登録商標)Cと373.35gのトルエンの追加の混合物を一緒に混合し、蠕動ポンプで480分かけて反応フラスコに添加した。反応混合物を105℃で数時間撹拌した。
【0156】
反応フラスコにディーンスタークトラップを取り付け、反応混合物を、撹拌しながら110℃に加熱した。725gのAlfol 810(商標)を80分かけて加え、得られた反応混合物を1時間撹拌した。追加の725gのAlfol 810(商標)および34.3gの70%メタンスルホン酸水溶液を、反応温度を145℃へ徐々に上げながら、80分かけて反応フラスコに加えた。数時間後、72gのn−ブタノールおよび17.2gの70%メタンスルホン酸水溶液を加え、3時間撹拌した。追加の72gのn−ブタノールを加え、反応物を2時間撹拌した。追加の72gのn−ブタノールを加え、反応物を数時間撹拌した。追加の72gのn−ブタノールを加え、反応物を3〜4時間撹拌した。追加の72gのn−ブタノールを加え、反応物を2〜3時間撹拌した。十分な水酸化ナトリウム(50%水酸化ナトリウム水溶液)を加えてメタンスルホン酸をクエンチし、混合物を1時間撹拌し、続いて10.15gの3−(ジメチルアミノ)−1−プロピルアミンを加え、さらに2時間撹拌した。309.1gのNexbase 3050(油)を加え、撹拌した。反応フラスコを真空ストリッピングに適合するようにし、得られた生成物を150℃で真空ストリッピングし(Hgで−26)、3時間保持した。真空を解除し、フラスコを120℃に冷却した。
【0157】
得られた反応混合物をfax−5およびろ布を用いて2回ろ過した。ポリスチレン標準に対してテトラヒドロフランで実施したGPCは、24,100のM
w、16,000のM
nを示した。
(実施例2)
例示的な潤滑組成物の調製
【0158】
実施例1にしたがって調製したアミンキャップされたエステル化コポリマーを、表2に示すような潤滑組成物を調製するために使用した。すべての量はwt%である。サンプルAおよびLは比較例である。
【0159】
エステル化コポリマーは98〜100wt%の純度であった。すなわち、表2に示す重量は、反応からの少量の試薬を含有している。
【0160】
5cSt(100℃)APIグループIII基油中の水素化SBR、Lubrizol(商標)7408Aの8重量%溶液を使用した。SBR溶液を、基油中でコポリマーを酸化防止剤(0.1%、BHT)の存在下、高せん断Silverson型混合機を用いて撹拌しながら、120℃に加熱することによって得た。
【0161】
標準的な商業用エンジンオイル性能パッケージを、すべてのサンプルにおける性能パッケージとして使用した。
【0162】
すべての実施例において流動点降下剤を使用した。
【0163】
潤滑粘度の油として、100℃で4cStの動粘性率を有するポリαオレフィンを使用した(Nexbase 2004)。
【0164】
B:Aは、潤滑組成物におけるジエンゴムコポリマー(非希釈SBRで表す)とエステル化コポリマー(非希釈エステル化コポリマーで表す)との重量での比である。
【表2】
【0165】
表2に示したサンプルを、種々の粘性特性について試験した:
【0166】
動粘性率は、ASTM法D445にしたがって100℃(KV_100)および40℃(KV_40)で測定し、センチストークスで表す。
【0167】
100℃での粘度指数(VI)は、ASTM法D2270にしたがって測定した。
【0168】
150℃での高温高せん断速度粘度は、ASTM法D4683にしたがって測定した。
【0169】
コールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度は、ASTM法D5293にしたがって−35℃で得た。cPで表す。
【表3】
【0170】
図1は、表2および表3からのデータの、HTHS粘度と動粘性率の比に対するB:A比の効果を示す。すなわち、
図1は、エステル化コポリマーをSBRに添加すると、単純な混合則から予想される低下より大きいHTHS/KV100の低下がもたらされることを示している。これは、等しいHTHSでブレンドされた2つの油について、エステル化コポリマーを添加すると、SBRブレンド油単独に対して、KV100の増大がもたらされることを意味する。
(実施例3)
例示的な潤滑組成物性能
【0171】
等しいHTHSでのエステル化コポリマーの効果対SBR流体の効果の比較を以下の表4に示す。
【表4】
【0172】
上記で参照した文献のそれぞれを参照により本明細書に組み込む。実施例、または別途明らかに示されている場合を除いて、物質、反応条件、分子量、炭素原子数などの量を指定する本記載におけるすべての数量は、「約(about)」という言葉で修飾されているものと理解すべきである。別段の指定のない限り、本明細書で参照する各化学薬品または組成物は、異性体、副生成物、誘導体および商用グレード中に存在すると通常理解されている他のそうした物質を含む可能性のある商用グレード材料と解釈されるべきである。しかし、別段の指定のない限り、各化学成分の量は、市販材料中に通常存在する可能性がある任意の溶媒または希釈剤油は除いて提示されている。本明細書で示す量、範囲および比の上限および下限は独立に組み合わせることができることを理解すべきである。同様に、本発明の各要素についての範囲および量は、他の要素のいずれかについての範囲および量とともに用いることができる。本明細書で使用する「〜から本質的になる(consisting essentially of)」という表現は、考慮下にある組成物の基本的および新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない物質を包含することを許容する。本明細書で使用するような部類(genus)(またはリスト)の任意のメンバーを、特許請求の範囲から排除することができる。
【0173】
本明細書で使用する「(メタ)アクリル(の)」という用語および関連用語は、アクリル基とメタクリル基の両方を含む。
【0174】
本明細書で使用する「β位またはより高位で分枝した第一級アルコール」という用語は、2位またはより高位(例えば、3位または4位または5位または6位または7位等)で分枝しているアルコールに関する。
【0175】
本明細書で使用する「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、これは、その分子の残部に直接結合した炭素原子を有し、支配的に炭化水素の特徴を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には以下が含まれる:
a.炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基ならびに芳香族−置換芳香族置換基、脂肪族−置換芳香族置換基および脂環式−置換芳香族置換基、ならびに環状置換基[ここで、この環はその分子の他の部分を介して完成している(例えば、2つの置換基が一緒になって環を形成する)];
b.置換炭化水素置換基、すなわち、本発明の関連で、その置換基の支配的に炭化水素の性質を変えない非炭化水素基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ)を含む置換基;
c.ヘテロ置換基、すなわち、本発明の関連で、支配的に炭化水素の特徴を有するが、その他は炭素原子で構成される環または鎖の中に炭素以外のものを含む置換基;および
d.ヘテロ原子は硫黄、酸素、窒素を含み、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する。一般に、ヒドロカルビル基中に、2つ以下、一態様では、1つ以下の非炭化水素置換基が炭素原子10個ごとに存在することになり;
典型的には、ヒドロカルビル基に非炭化水素置換基は存在しないことになる。
【0176】
上記開示ならびに他の特徴および機能またはその代替の変形体を組み合わせて、多くの他の異なる系または適用形態にすることができることが理解される。その中で現在は予見できないまたは予期されない様々な代替、改変、変更または改善を、当業者は後で施すことができ、これらも添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。