(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169711
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】ケーブルストリッププロセスにおける導体の検出
(51)【国際特許分類】
H02G 1/12 20060101AFI20170713BHJP
G01R 27/26 20060101ALI20170713BHJP
H01R 43/28 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
H02G1/12 053
G01R27/26 C
H01R43/28
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-537187(P2015-537187)
(86)(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公表番号】特表2016-502384(P2016-502384A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2013070640
(87)【国際公開番号】WO2014060218
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2015年6月12日
(31)【優先権主張番号】12189012.3
(32)【優先日】2012年10月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503231561
【氏名又は名称】コマツクス・ホールデイング・アー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツェンプ,ベンノ
【審査官】
石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−050319(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0181180(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
G01R 27/26
H01R 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル処理設備のストリップ装置(1)におけるストリッププロセスの間の導電性ナイフ(6、6’)による電気ケーブル(3)の導体(2)の接触を検出する方法であって、センサ回路(4)は測定静電容量(8)を形成するような接続(7、10)によってナイフ(6、6’)と接続されており、方法は、
電気ケーブル(3)への切り込みに先立って、測定静電容量(8)とセンサ回路(4)の基準静電容量(C14)との間の電荷均等化が実行される第一測定サイクルの間に測定静電容量(8)の第一静電容量値(C8)を決定するステップと、
測定静電容量(8)と基準静電容量(C14)との間の電荷均等化が再び実行されるさらなる測定サイクルにおいてパラメータを決定するステップであって、第一静電容量値(C8)に参照される該パラメータは、電気ケーブル(3)が切り込まれた後の測定静電容量(8)の静電容量値(C8)の変化を表す、ステップと、
変化が固定閾値よりも大きい場合に信号(S)を生成するステップであって、信号(S)は導体(2)との接触を表す、ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
ストリッププロセスの間、固定数のさらなる測定サイクルが実行され、さらなる測定サイクルの各々においてパラメータの決定は第一測定サイクルからの第一静電容量値(C8)に参照される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一測定サイクルは、
測定静電容量(C8)で規定電圧状態を生成するステップと、
第一電圧値(U14)を有する第一電圧が静電容量回路(14)に存在するように基準静電容量(C14)を充電するステップと、
測定静電容量(8)と基準静電容量(C14)との間の電荷均等化を可能にするように、測定静電容量(8)と基準静電容量(C14)との間の電気的接続を生成するステップと、
電荷均等化の後に基準静電容量(C14)に存在して第二電圧値を有する第二電圧(U14’)を測定するステップと、
電圧値および基準静電容量(C14)によって測定静電容量(8)の第一静電容量値(C8)を決定するステップと、
を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらなる測定サイクルは、
測定静電容量(C8)で規定電圧状態を生成するステップと、
第一電圧が静電容量回路(14)に存在するように基準静電容量(C14)を充電するステップと、
測定静電容量(8)と基準静電容量(C14)との間の電荷均等化を可能にするように、測定静電容量(8)と基準静電容量(C14)との間の電気的接続を生成するステップと、
電荷均等化の後に基準静電容量(C14)に存在して第二電圧値を有する第二電圧(U14’)を測定するステップと、
パラメータを決定するステップと、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第一電圧値(U14)は、第一測定サイクルにおいて測定されてさらなる測定サイクルにおいて使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第一電圧値(U14)は実質的に一定の値である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
パラメータは測定静電容量(8)の第二静電容量値(C8)であり、信号(S)は第一静電容量値と第二静電容量値との差が固定静電容量閾値を超えたときに生成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
パラメータは第二電圧値であり、信号(S)は、第一測定サイクルの第二電圧値とさらなる測定サイクルの第二電圧値との差が固定電圧閾値を超えたときに生成される、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
規定電圧状態を生成するステップは測定静電容量(8)を短絡するステップを含む、請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
規定電圧状態を生成するステップは、規定電位を測定静電容量(8)に結合するステップを含む、請求項3から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
規定電圧状態を生成するステップは、第二スイッチ(S1)が開かれて測定静電容量(8)から基準静電容量(C14)を切り離したときに第一スイッチ(S2)を閉じて規定電位を測定静電容量(8)に結合するステップを含む、請求項3から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
基準静電容量(C14)を充電するステップは、第二スイッチ(S1)が開かれたときに第三スイッチ(S3)を閉じて第一電圧を基準静電容量(C14)に結合するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電気的接続を生成するステップは、第二スイッチ(S1)を閉じて基準静電容量(C14)を測定静電容量(8)に結合するステップと、第一スイッチ(S2)を開いて規定電位から測定静電容量(8)を切り離すステップと、第三スイッチ(S3)を開いて第一電圧から基準静電容量(C14)を切り離すステップとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
切り替えプロセスが実行される前にすべてのスイッチ(S1、S2、S3)が開かれる、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
信号(S)が発生したときにナイフ(6)が再調整され、導体(2)を包含する電気ケーブル(3)からのナイフ(6)の間隔が変更される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
信号(S)は、警告音および/またはストリッププロセスの停止および/または特別な保管場所への電気ケーブル(20)の保管を生じさせ、および/または統計分析に使用される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ストリッププロセスの間の導電性ナイフ(6、6’)による電気ケーブル(3)の導体(2)の接触を検出するストリップ装置(1)であって、測定静電容量(8)を形成するような接続(7、10)によってナイフ(6、6’)と接続されたセンサ回路(4)を備え、
電気ケーブル(3)への切り込みに先立って、測定静電容量(8)とセンサ回路(4)の基準静電容量(C14)との間の電荷均等化が実行される第一測定サイクルの間に測定静電容量(8)の第一静電容量値(C8)を決定し、
測定静電容量(8)と基準静電容量(C14)との間の電荷均等化が再び実行されるさらなる測定サイクルにおいてパラメータを決定し、第一静電容量値(C8)に参照される該パラメータは、電気ケーブル(3)が切り込まれた後の測定静電容量(8)の静電容量値(C8)の変化を表し、
変化が固定閾値よりも大きい場合に信号(S)を生成し、信号(S)は導体(2)との接触を表す
ように構成されたストリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される実施形態は、主に電気ケーブルを処理するための設備に関する。これらの実施形態は具体的には、電気ケーブルのストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の電気ケーブルは、導電性(内部)導体およびプラスチック材料の絶縁被覆材料を有し、これは導体をその全長にわたって被覆して、これを電気的に絶縁する。導体は、線材または撚り線であってもよい。異なる電気部品(たとえばプラグ、端子)を用いて電気ケーブルを接続するために、裸導体が露出されるようにケーブル末端において絶縁被覆材料の一部が除去されてもよい。絶縁被覆材料の除去のプロセスは、ストリッピングとも称される。
【0003】
電気ケーブルの工業用ストリップは通常、この目的のために特別に提供され、ストリップ装置のナイフがまずケーブル末端の領域の絶縁被覆材料を切開し、その後絶縁被覆材料の切片を導体から引き離す、ケーブル処理設備において実行される。ストリッププロセスの間、電気ケーブルの導体は、可能であれば、ナイフによって接触または損傷されるべきではない。
【0004】
機械的に実行されるストリッププロセスの品質に対する要求の絶え間ない増加のため、ストリッププロセスを監視する必要がある。この場合、このような電気ケーブルの導体がこのストリッププロセスの間に損傷したか否かを、確実に検出しなければならない。損傷ということには、導体がナイフによって切り込まれること、または切断されることさえも含まれる。
【0005】
独国特許出願公開第10200753825号明細書は電気ケーブル用のストリップ装置を示しており、この装置は静電容量センサユニットおよび導電性ナイフを含む。静電容量センサユニットは、ナイフと接続されており、ケーブルの導体との導電ナイフの接触が静電容量の増加に基づいて検出されることが可能なように構成されている。センサユニットは、正弦信号を生成する交流電圧発電機を含む。交流電圧発電機の内部抵抗は、正弦信号の電圧振幅の減少に基づいてセンサユニットが導体接触を検出できるように、測定された静電容量とともに、分圧器を形成する。このようなストリップ装置は、正弦信号に基づく接触検出がゆっくりとしか行われないという不都合を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第10200753825号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、ナイフと導体との接触のより迅速な検出を可能にする、電気ケーブルをストリップするための改良された技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって一態様は、ケーブル処理設備のストリップ装置におけるストリッププロセスの間の導電性ナイフによる電気ケーブルの導体の接触を検出する方法であって、センサ回路は測定静電容量を形成するような接続によってナイフと接続されている、方法に関する。方法は、第一測定サイクルの間の測定静電容量の第一静電容量値の決定を含み、その間に測定静電容量と基準静電容量との間の電荷均等化が実行され、第一静電容量値は電気ケーブルへの切り込みに先立って決定される。方法は付加的に、測定静電容量と基準静電容量との間の電荷均等化が再び実行されるさらなる測定サイクルでのパラメータの決定を含み、第一静電容量値に参照される該パラメータは、電気ケーブルが切り込まれた後の測定静電容量の静電容量値における変化を表す。方法はさらに、変化が固定閾値よりも大きい場合に信号を生成するステップを含み、この場合に信号は導体との接触を表す。
【0009】
ストリッププロセスの間に複数のさらなる測定サイクル、好ましくは固定数のさらなる測定サイクルが実行されれば、有利になり得る。この場合、さらなる測定サイクルの各々において、パラメータの決定は第一測定サイクルからの第一静電容量値に参照される。さらなる測定サイクルについて第一測定サイクルからの第一静電容量値は変化することが可能な基準を形成するという事実により、さらに高レベルの感度が実現可能である。このため誤った検出(たとえば、絶縁体との接触時の誤った報告)は事実上排除されることが可能である。
【0010】
さらなる態様は、既述の方法を実行するためのストリップ装置を有するケーブル処理装置に関する。
【0011】
本明細書に記載される、電気ケーブルをストリップするための改良された技術は、電気部品が互いに接続されたときにその間で生じる電荷均等化に基づく。一実施形態において、この方法での開始時に、規定電圧が存在するように、未知の静電容量が放電され、既知の静電容量が充電される。その後、既知および未知の静電容量は、電荷均等化が生じることが可能なように、並列に接続される。電荷均等化の後には、以前測定されたものより低い電圧である既知および未知の静電容量の並列回路が存在する。規定電圧および測定電圧は、ナイフと導体との接触、またはナイフが導体のすぐ近傍にあることを確認する目的のために使用される。接触の判定は、たとえば、未知の静電容量の値の計算によって行われる。測定サイクルが繰り返された場合には、これはこの値が変化して導体接触を示すときに確立されることが可能である。
【0012】
一実施形態において、ストリッププロセスの間にいくつのさらなる測定サイクルが実行されるかが、決定されることが可能である。これらの測定サイクルの各々において、測定静電容量の値に関するステートメントが作成されるので、多数のさらなる測定サイクルが決定される場合には、むき出しの導体に沿って高レベルの分解能を実現することが可能である。
【0013】
本明細書に記載される実施形態において、第一測定サイクルで決定される第一静電容量値は、たとえばナイフが導体に接触したために、測定静電容量の静電容量値が第一静電容量値に対して変化したか否かに関するステートメントを、さらなる測定サイクルにおいて作成することができるようにする目的のための尺度である。第一静電容量値は、各ストリッププロセスに先立って再び決定される。
【0014】
一実施形態において、第一測定サイクルは、測定静電容量で規定電圧状態を生成すること、および第一電圧値を有する第一電圧が静電容量回路に存在するように、基準静電容量を充電することを含む。その後、測定静電容量と基準静電容量との間の電荷均等化を可能にするように、測定静電容量と基準静電容量との間の電気的接続が生成される。電荷均等化の後に基準静電容量に存在して第二電圧値を有する第二電圧が測定され、測定静電容量の第一静電容量値は電圧値および基準静電容量によって決定される。
【0015】
規定電圧状態の生成は、異なるやり方で行われることが可能である。ある事例では、測定静電容量は短絡されることが可能であり、さらなる事例では、規定電位が測定静電容量に結合することが可能である。このため本明細書に記載される技術は、ケーブル処理設備の基準電位に対する様々な条件に柔軟に適応することが可能である。
【0016】
測定静電容量の値に関するステートメントは、それぞれの実施形態に応じた異なるパラメータによってもたらされることが可能である。一実施形態において、パラメータは測定静電容量の第二静電容量値であり、第一静電容量値と第二静電容量値との差が固定閾値を超えたときに信号が生成される。この実施形態において、その変化が監視される絶対静電容量値は、各々のさらなる測定サイクルの後に存在する。
【0017】
別の実施形態において、測定静電容量の絶対静電容量値は重要ではない。したがって、その計算を省略することが可能であり、これによって制御ユニット内の計算コストが削減される。その代わり、電荷均等化の後に基準静電容量において測定可能な電圧のみがパラメータとして監視されるという意味で、静電容量値の変化が間接的に監視されその一方で測定静電容量はこれと並列に接続される。
【0018】
さらなる実施形態において、センサ回路の部品は、各充電プロセスの後に基準静電容量においてほぼ同じ電圧が生じるように選択される。このため、この電圧は一回だけ測定されれば十分である;その後の測定サイクルでは、この電圧の測定を省略することが可能である。これにより、測定努力のさらなる削減が行われる。
【0019】
また、上述の実施形態において、静電容量値の変化に関するステートメントのみが重要であって、その絶対値に関するステートメントは重要ではない場合、充電プロセスの後の基準静電容量における電圧の測定を完全に省略することが可能である。測定電圧値の代わりに、この目的のために定数が使用されることも可能である。
【0020】
この方法の速度は、その設定が方法の過程で変化するスイッチに、この方法に関わるストリップ装置の個々の要素の充電および放電の速度に、ならびに電圧測定の速度に、依存する。スイッチは好ましくは、切り替え時間が短く手間のかからないアナログスイッチである。スイッチは、とりわけ切り替えプロセスが実行される前にすべてのスイッチが開かれるように、制御ユニットによって制御される。
【0021】
方法の展開において、信号の発生の場合にナイフが再調整され、電気ケーブルの長軸からのナイフの間隔が変更される。長軸からのナイフの間隔が増加した結果、ストリッププロセスのさらなる過程においてナイフが導体を損傷またはさらに接触しないことが、保証される。
【0022】
方法の展開において、信号は、警告音および/またはストリッププロセスの停止および/または特別な保管場所への電気ケーブルの保管および/または統計的評価への組み入れを生じさせる。信号のそれぞれの解釈に応じて、このような信号の発生の後に、電気ケーブルのストリッププロセスを継続する様々な可能性が選択される。たとえば、ストリッププロセスを監督する人の注意が、相応にストリップ装置の再較正の必要性に向けられることが可能である。たとえば、信号は、電気ケーブルが損傷しており、したがって再使用を不可能とするようなやり方で、同様に解釈されることが可能である。
【0023】
異なるケーブル処理設備(たとえば、ケーブルを所定長さに切断してストリップするための設備、およびいくつかの異なる機能およびプロセスステップを有する設備)のみならず、単純なストリッピングペンチでも使用可能であることもまた、本明細書に記載される技術の利点である。
【0024】
導体接触の検出のための改良された技術の異なる実施形態は、同じ部品に同じ参照番号が付された以下の添付図面に基づいて、後に詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】センサ回路を有するストリップ装置の実施形態を用いるケーブル処理設備の概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、センサ回路4を含む、絶縁装置1の実施形態を用いるケーブル処理設備の概略模式図である。設備は電気ケーブル3を処理するが、これは導電性(内部)導体2およびプラスチック材料の絶縁被覆材料5を有し、被覆材料は導体2の全長にわたって被覆してこれを電気的に絶縁する。導体2は、線材または撚り線であってもよい。明確さのため、ケーブル処理設備のさらなる部分は
図1に示されない。しかしながら、たとえばスイスの企業Komax AGのKappa330などの周知のケーブル処理設備の例は、中央制御部、操作装置、およびたとえば所定の長さへの切断などの追加機能のためのモジュールを含むことを、専門家は認識するだろう。
【0027】
ストリップ装置1の機能は、実施形態に基づいて以下により詳細に記載される。この機能は、ストリップの間に切断装置が導体2に接触したか否かを判定することに関し、それによってむき出しの導体2の品質を評価できる。
図1に示されるように、ストリップ装置1の一実施形態における切断装置は、対向して配置された2つの導電性ナイフ6、6’からなる。制御装置は、
図1に示されていないが、閉鎖目的のために電気ケーブル3の方向に、または開放目的のためにこれから離れる方へナイフを移動させるために、ナイフ6、6’を制御する。同様に図示されないのは、電気ケーブル3用の台、ならびにナイフ6、6’および電気ケーブル3を互いに対して移動させるための1つ以上の駆動装置(たとえば、電気ケーブル3を前進させるため)である。ストリップ装置1は、機械的作用によって、電気ケーブル3とナイフ6、6’との間の相対運動を制御する。
【0028】
図1に示されるセンサ回路4は、第一接続7によってナイフ6、6’と、および第二接続10によって規定の電位と、接続されている。それぞれの接続は、1つ以上の接続線12によって行われることが可能である。
図1において、接続線12はセンサ回路4の外側に配置されている。しかしながら専門家は、接続線12がセンサ回路4に関連付けられることも可能であることを、認識するだろう。センサ回路4は、たとえばディスクリート電子部品で構成されることが可能である。このためセンサ回路は必ずしも集積回路として構成される必要はなく、このため回路は低コストで経済的に生産されることが可能である。ディスクリート電子部品からこのようにして組み立てられたセンサ回路は、さらに適切な部品(たとえば、高速動作スイッチなど)の選択、および簡単なやり方での電磁適合性に関するセンサ回路の最適化を、可能にする。
【0029】
規定の電位は、ストリップ装置1またはケーブル処理プラントのすべての信号送信および動作電圧のための基準電位である。基準電圧は0ボルト(すなわち接地がある)、または異なる電位であってもよい。この基準電位の一般的な短縮形はSHDであり、これは英語の「shielding(遮蔽)」の略語である。下記において、基準電位は基準電位SHDとされる。
【0030】
図1は付加的に測定静電容量8を示し、これはコンデンサに使用される通常の記号によって表される。この記号図において、測定静電容量8は第一接続と第二接続との間に存在し、これはセンサ回路4の基準電位SHDに接続されている。この測定静電容量8は複数の静電容量の等価回路であり、したがって、センサ回路4がナイフ6、6’と接続したときに基準電位SHDに対する(寄生)容量として存在する静電容量の合計を表す。したがって測定静電容量8は、主に接続線12、ナイフ6、6’、およびセンサ回路4の一部に起因して生じる静電容量を含む。本明細書に記載される実施形態において、測定静電容量8は、数学的な意味において、測定電圧値の助けを借りて決定される未知数である。
【0031】
ナイフ6、6’は電気的に絶縁されるようにストリップ装置1に実装され、すなわちナイフ6、6’と基準電位SHDとの間には電気的接続がない。
【0032】
ナイフ6、6’と導体2との接触がある場合、この場合には導体24と基準電位SHDとの間に存在する静電容量が追加されるので、測定静電容量8は変化する。センサ回路4は、静電電荷均等化の原理にしたがって動作し、一実施形態において、測定サイクルごとの電圧測定によって静電容量の値を決定する。センサ回路4が静電容量の増加を確認した場合、ナイフ6、6’のうちの少なくとも1つが導体2と接触したという事実がそこから導き出され、これは以下により詳細に記載されるように信号Sを生成する。信号Sは、ストリッププロセスのさらなる過程に適切に影響を及ぼすように、ストリップ装置1の上位制御ユニットによって処理されることが可能である。
【0033】
図2はセンサ回路4の実施形態の概略模式図を示し、これは
図1にしたがってナイフ6、6’に接続されている。記載されるように−等価回路として−いくつかの(寄生)容量の合計を表す測定静電容量8が、理解しやすいようにセンサ回路4に接続された状態で
図2に示されている。接続は、センサ回路4の接続7、10によってもたらされ、この場合、センサ回路4の寄生容量はそれ自体が測定静電容量8と同等に計測される。センサ回路4は、スイッチS1、S2、S3、基準静電容量C14およびおそらくは給電線によって生じる寄生容量を有する(下記においては基準静電容量C14のみが参照される)静電容量回路14、電圧センサ13、制御ユニット16、および電圧源15を含む。電圧源15は電圧U15を供給する。制御ユニット16は、スイッチS1、S2、S3が開くまたは閉じるようにこれらを選択的にアクティブ化するために、スイッチS1、S2、S3と接続されている。
図2において、スイッチS1、S2、S3は開いている。
【0034】
センサ回路4のこれらの部品の基本配置は、以下のとおりである:スイッチS2は、接続7、10と並列に接続され、このため測定静電容量8とも並列に接続されており、接続10、スイッチS1の接続、および基準静電容量C14の接続は、基準電位SHDと接続されている。スイッチS1が閉じているとき、基準静電容量C14はスイッチS2と並列に接続されている;スイッチS1が開いているとき、基準静電容量C4はスイッチS2から切り離されている。電圧センサ13は、基準静電容量C14と並列に接続されている;スイッチS1が閉じていてスイッチS2が開いているとき、電圧センサ13は測定静電容量8とも並列に接続されている。電圧源15は、スイッチS3が閉じているときに基準静電容量C14と並列に接続され、スイッチS3が開いているときにそこから切り離されている。
【0035】
一実施形態において、電圧センサ13は、周知のやり方でアナログ入力信号をデジタル出力信号に変換する、アナログデジタル変換器を含む。本明細書に記載されるセンサ回路4において、アナログ入力信号は、たとえば特定の時点で電圧センサ13の入力に存在する、アナログ電圧値である。電圧センサ13はこのアナログ電圧値を、デジタル電圧値に変換し、これを電圧センサ13の出力に接続された制御ユニット16がさらに処理する。制御ユニット16は、電圧変換が特定の時点でのみ実行されるように、電圧センサ13を制御することができる。あるいはその代わりに、電圧センサ13は、入力電圧を連続的に変換するように設計されることが可能であるが、しかし制御ユニット16は、その後さらなる処理を受けさせるために、特定の時点でのみ出力電圧に「問い合わせ」する。
【0036】
制御ユニット16、電圧センサ13、およびスイッチS1、S2、S3は、ストリッププロセスの監視または管理の速度に対する要求を公平に扱うように構成されている。一実施形態において、測定サイクルが行われる制限時間、およびこの測定サイクルが繰り返される頻度が、制御ユニット16内で確立される。この決定に合わせて、制御ユニット16は、スイッチS1、S2、S3および電圧センサ13をアクティブ化する。スイッチS1、S2、S3に関してこれはたとえば、これらが十分に速く開閉できることを意味する。一実施形態において、スイッチS1、S2、S3は、集積回路またはアナログスイッチ(たとえば、電界効果トランジスタに基づく)として実現される。しかしながら、適切な速度で電線接続を開閉できる限りにおいて、やはりいずれの種類の切り替え手段も使用可能である。
【0037】
集積回路がスイッチS1、S2、S3に使用される場合、毎分最大250,000回の測定サイクルが実行可能である。これにより、独国特許出願公開第102007053825号明細書より周知のシステムを用いた場合よりもはるかに高速な、ナイフ6、6と導体2との接触の検出または処理を可能にする。
【0038】
図2は、スイッチS2と基準電位SHDとの間の点Pをさらに示す。一実施形態において、測定静電容量8を電位に対してプリチャージするためにこの点に電圧源が加えられることが可能であり、これはスイッチS2が閉じてスイッチS1が開いたときに、この電圧源によって事前決定される。
【0039】
センサ回路の機能は、
図2および
図3を参照して以下に記載されるが、これらは4つの処理ステップPS1からPS4を有する測定サイクルの実施形態を示す。これらの処理ステップPS1からPS4では、より明確にするため、測定静電容量8およびセンサ回路4の部品のうちのいくつかだけが示されている。測定サイクルは、ナイフ6、6’をあてることで、しかしこの場合には絶縁被覆材料5に切り込むことなく、開始され、ナイフ6、6’がケーブル末端に到達したときに終了し、そこから絶縁被覆材料5の切片が引き離されて導体2がむき出しになる。
【0040】
処理ステップPS2およびPS3において、すべてのスイッチS1、S2、S3が開かれている。これらの処理ステップPS1からPS3は、図示される実施形態において、続いて起こる処理ステップの準備に役立つ。これらのステップは、さらなる切り替えプロセスが実行される前にスイッチS1、S2、S3が各々規定の「開」設定にあることを、保証する。これにより、短絡の発生を防止する。しかしながら、たとえば切り替えプロセスの正確な同期によって、または規定の待ち時間によってなど、別の方法で短絡の可能性の危険が排除されれば、これらの準備ステップもまた省略可能であることを、専門家は理解するだろう。
【0041】
処理ステップPS2において、スイッチS2、S3は閉じられてスイッチS1は開かれている。閉じられたスイッチS2は測定静電容量8を短絡し、これによって測定静電容量8は放電される;測定静電容量8における電圧は0ボルトである。測定静電容量8はこうして規定の状態を有する(電荷Qはゼロに等しく、電圧は0ボルトに等しい)。
【0042】
閉じたスイッチS3は、電圧コース15を基準静電容量C14と接続させ、これによって基準静電容量C14が充電される。充電の後、基準静電容量C14における電圧U14は、電圧源15によって事前決定される電圧U15と一致する。一実施形態において、事前決定電圧U15は5ボルト未満である。このため基準静電容量C14は規定の状態を有する(電圧U14は事前決定電圧U15に等しく、電荷Qは基準静電容量C14の電圧U14と静電容量との積に等しい)。
【0043】
スイッチS3はその後、制御ユニット16によって開かれることが可能である。スイッチS1は開いているので、理想的には基準静電容量C14から流出する電荷はなく、その規定状態のままとなる。電圧U14はその後、電圧センサ13によって基準静電容量C14において測定される。この状態で測定された電圧U14は、電圧センサ13または制御ユニット16のいずれかに格納される。
【0044】
すべてのスイッチS1、S2、S3が処理ステップPS3において再び開かれた後、処理ステップPS4においてスイッチS1のみが制御ユニット16によって閉じられる。測定静電容量8および基準静電容量C14はこれによって並列に接続される。これにより、両方の静電容量の電荷が均等化されてしまうまで、電荷は基準静電容量C14から測定静電容量8まで流れる。このような電荷均等化は、関与している静電容量および直列抵抗(たとえば線路抵抗)に依存する、指数関数的な過程を有する;これはたとえば、数ナノ秒後に終わると見なされてもよい。この電荷均等化の結果の1つは、測定静電容量8および基準静電容量C14の並列回路における電圧が低下することである。電荷均等化が終了した後、低下した電圧U14’は電圧センサ13によって測定される。この状態で測定された電圧U14’は、処理ステップPS2からの格納された電圧U14を用いて、制御ユニット16によって処理されることが可能である。
【0045】
処理は一実施形態において、制御ユニット16が各測定サイクルで測定静電容量8の実際の値C8を決定することからなってもよい。この値は、C8=C14
*(U14/U14’−1)から得られる。
【0046】
測定静電容量8の値C8が各測定サイクルで決定されると、測定静電容量8の値C8が変化したか否かが各測定サイクルの後に確認されることが可能である。ストリッププロセスの間の測定静電容量8の値C8は頻繁に決定されることが可能なので、むき出しの導体2に沿った高レベルの分解能が実現可能である。
【0047】
測定静電容量8の値C8がストリッププロセスの間に増加するか否かに関する尺度を獲得するために、測定静電容量8の値C8は、ナイフ6、6’が開く各ストリッププロセスの開始時、および絶縁被覆材料5に切り込む直前に、決定される。測定静電容量8のこの(第一の)値C8は基準値を表し、「接触されていない導体」ことを意味する。一実施形態において、制御ユニット16は基準値を格納する。
【0048】
その後、ナイフ6、6’は閉じられて絶縁被覆材料5に切り込み、測定静電容量8と基準静電容量C14との間の電荷均等化が再び実行されるさらなる測定サイクルにおいて、第一静電容量値を参照して、電気ケーブル3に切り込んだ後の測定静電容量8の静電容量値の変化を表すパラメータが決定される。一実施形態において、測定静電容量8の値C8が、さらなる測定サイクルにおいて決定される。
【0049】
ナイフ6、6’が導体2と接触しなかったとしても、ナイフ6、6’が絶縁被覆材料5を切開する間に変化する幾何形状の結果として、測定静電容量8の値C8は変化する。しかしながら適切な設計の場合には、この変化は導体2と接触した場合ほど大きくはない。測定静電容量8の値C8のこのような変化を導体接触として誤って扱わないために、静電容量閾値は固定されており、制御ユニット16に格納されている。測定静電容量8の、基準値と、測定サイクルにおいて決定される値C8との差が固定静電容量閾値を超えた場合、これは「導体接触した」ことを意味し、制御ユニット16は信号Sを生成する。
【0050】
一実施形態において、第一電圧U14の繰り返し周波数は、精度に関する特定の要求を満たすことができる。これは、基準静電容量C14が電圧源15によって繰り返し放電および充電された場合に、各充電プロセスの後に存在する第一電圧U14が実質的に同じ電圧値を有することを、意味する。このような実施形態では、各測定サイクルにおける第一電圧U14の測定を省略することが可能である。この場合、第一電圧U14は1回しか測定されず、続くすべての測定サイクルにおいて、規定の電圧値が再び使用される。
【0051】
本明細書に記載される実施形態において、第一に、測定静電容量8の値C8の変化が評価の対象とされる;このため測定静電容量8の値C8の絶対値は、実施形態によっては重要ではないかも知れない。第一電圧U14の繰り返し精度が十分な場合には、このような使用例において、第一電圧U14の決定を完全に省略し、代わりに固定定数を利用することが、可能である。
【0052】
さらなる実施形態において静電容量8の値C8の絶対値が重要でない場合には、第二電圧U14’のみが監視されるという意味において、その変化は間接的に監視されることが可能である。電圧U14’は、第一静電容量値を参照して、電気ケーブル3への切り込みの後の測定静電容量8の静電容量値C8の変化を示すためのパラメータの役割を果たす。静電容量値自体は、この場合には計算されない。信号Sは、第一測定サイクルの第二電圧値とさらなる測定サイクルの第二電圧値との差が固定電圧閾値を超えたときに、生成される。
【0053】
ケーブル処理設備の上位制御ユニットは、信号Sを受信して、不十分な品質で製造された電気ケーブルに対して通例の手順を起動する。この手順は、警告音の発生、このような電気ケーブルの製造停止または廃棄物としての拒絶を含むことができる。加えて、信号Sは、ストリップされる電気ケーブル3の長軸からのナイフ6、6’の間隔を再調整するために使用されることが可能である。