特許第6169790号(P6169790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6169790ポリマー組成物およびこれから製造される不織組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169790
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】ポリマー組成物およびこれから製造される不織組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20170713BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20170713BHJP
   D04H 3/011 20120101ALI20170713BHJP
【FI】
   C08L23/16
   C08F210/16
   D04H3/011
【請求項の数】9
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2016-518318(P2016-518318)
(86)(22)【出願日】2014年5月1日
(65)【公表番号】特表2016-521778(P2016-521778A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】US2014036335
(87)【国際公開番号】WO2014197141
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2015年12月7日
(31)【優先権主張番号】61/831,033
(32)【優先日】2013年6月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル シンシア エイ
(72)【発明者】
【氏名】リッチェソン ガレン シー
(72)【発明者】
【氏名】ダーマラジャン ナラヤナスワミ ラジャ
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−519784(JP,A)
【文献】 特開2010−180413(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0143461(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00− 19/44
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ポリマー成分および第二ポリマー成分のリアクタブレンドを含むプロピレンベースのポリマー組成物であって、
前記プロピレンベースのポリマー組成物が100℃未満の溶融温度を有し、
該第一ポリマー成分はプロピレンおよびエチレンを含み、かつ12質量%を超え、19質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R1を有し、ここで該質量%は、該第一ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものであり、 該第二ポリマー成分はプロピレンおよびエチレンを含み、かつ4質量%を超え、10質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R2を有し、ここで該質量%は、該第二ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものであり、および
該第一および第二ポリマー成分のエチレン含有率が、以下の式を満足する:
-1.7143R1 + 29.771 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 37.25
ことを特徴とする、前記プロピレンベースのポリマー組成物。
【請求項2】
前記プロピレンベースのポリマー組成物のエチレン含有率が5〜18質量%エチレンであり、ここで該質量%は、該プロピレンベースのポリマー組成物のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものである、請求項1記載のプロピレンベースのポリマー組成物。
【請求項3】
前記プロピレンベースのポリマー組成物のMFRが、30g/10分(230℃、2.16kg)に等しいかまたはこれを超える、請求項1〜2の何れか1項に記載のプロピレンベースのポリマー組成物。
【請求項4】
前記プロピレンベースのポリマー組成物が、該プロピレンベースのポリマー組成物の質量を基準として、3〜25質量%の前記第二ポリマー成分と75〜97質量%の前記第一ポリマー成分とを含む、請求項1〜3の何れか1項に記載のプロピレンベースのポリマー組成物。
【請求項5】
前記プロピレンベースのポリマー組成物が、90%を超えるトライアドタクチシティーを有する、請求項1〜4の何れか1項に記載のプロピレンベースのポリマー組成物。
【請求項6】
前記プロピレンベースのポリマー組成物が50J/g未満の融解熱を有する、請求項1〜5の何れか1項に記載のプロピレンベースのポリマー組成物。
【請求項7】
前記プロピレンベースのポリマー組成物が40〜70℃の溶融温度を有する、請求項1〜6の何れか1項に記載のプロピレンベースのポリマー組成物。
【請求項8】
前記プロピレンベースのポリマー組成物が、DSCにより測定した場合に単一の融解ピークを有する、請求項1〜7の何れか1項に記載のプロピレンベースのポリマー組成物。
【請求項9】
少なくとも一層の弾性層を有するメルトスパン不織組成物であって、該弾性層がプロピレンベースのポリマー組成物を含み、
該プロピレンベースのポリマー組成物が、第一ポリマー成分および第二ポリマー成分のリアクタブレンドであり、
前記プロピレンベースのポリマー組成物が100℃未満の溶融温度を有し、
該第一ポリマー成分がプロピレンおよびエチレンを含み、かつ12質量%を超え、19質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R1を有し、ここで該質量%は該第一ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準としており、
該第二ポリマー成分はプロピレンおよびエチレンを含み、かつ4質量%を超え、10質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R2を有し、ここで該質量%は該第二ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準としており、および
該第一および第二ポリマー成分のエチレン含有率が、以下の式を満足する:
-1.7143R1 + 29.771 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 37.25
ことを特徴とする、前記メルトスパン不織組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引照
本件特許出願は、2013年6月4日付で出願された米国仮特許出願第61/831,033号に基く優先権の利益を主張するものである。この米国仮特許出願を、言及によりここに組入れる。
【0002】
本発明は、プロピレンベースのポリマー組成物、これから調製される不織組成物、およびその製造方法に係る。
【背景技術】
【0003】
プロピレンベースのポリマーおよびコポリマーは、不織布の製造を包含する様々な用途におけるその有用性のために、当分野において周知である。このような織物は、例えば医療および衛生製品、衣料、フィルタ媒体、および吸収剤製品における多種多様な用途を持つ。メルトブローン不織布は、例えば幼児用オムツ、成人用失禁製品、および婦人用衛生用品等の衛生製品において特に有用である。これら織物、特に衛生用途における織物の重要な一側面は、低コストにて、良好な漏れ性能を持つ審美的に満足な織物を製造する能力である。良好な漏れ性能は該織物の弾性層に係る弾性を介して実現され、この性能は、より良好な着用者に対するフィット感および順応性を与え、より少ない漏れを結果する。これら織物の更なる一利点は、フィルムベースの積層品に対するその通気性である。
上記弾性層における30g/10分未満の溶融流量(MFR)を有する、市販品として入手できるプロピレンベースのポリマーを使用するメルトブローン不織布の製造は、困難である可能性があり、その理由は、このようなポリマーの低いMFRが、その繊維をメルトブローするために高い溶融温度および高い圧力を必要とするからである。高い作業温度は、押出機における望ましからぬ分解を引起す恐れがあり、一方で高い圧力はメルトブロー装置の処理量を制限してしまう。以前、幾つかのプロピレンベースのポリマーは、追加のポリマーまたはしばしばアイソタクティックプロピレンホモポリマーであるポリマーポストリアクタ(post-reactor)とブレンドされており、次いでパーオキサイドでビスブレーキング処理(visbroken)されて、弾性層における使用のためにより高いMFRを有するポリマーを得ていた。しかし、追加のポリマーとのブレンドは、典型的に製造コストを増大し、かつ得られる不織布の弾性性能を低下する。同様に、ビスブレーキングは、また製造コストを増大し、しかも製造工程に複雑さを付加する。
【0004】
従って、プロピレンベースのポリマーポストリアクタとホモポリプロピレンまたはその他のポリマーとをブレンドすることなしに、かつ該ポリマーをビスブレーキングすることなしに、より高いMFE(即ち、30g/10分を超える)を有する該プロピレンベースのポリマーからメルトブローン不織布の弾性層を形成することが望ましい。このような織物は、より広いプロセス条件の下で、およびより高い処理量およびより低いコストにて製造し得る。また、所望の釣合のとれた収縮力および永久歪を示す織物を形成することが望ましいことであろう。
米国特許出願公開第2002/0019507号は、接着剤用途において使用するためのポリマーのMFRを高めるために、パーオキサイドによってビスブレーキング処理されているプロピレンベースのポリマーを記載している。
米国特許出願公開第2005/0130544号は、繊維を紡ぐ際に使用するための、プロピレンベースのポリマーとプロピレンホモポリマーとのブレンドを記載している。
米国特許出願公開第2008/0172840号は、100〜500g/10分の範囲のMFRを有する、スパンボンド繊維またはフィラメント用途において使用するのに適した、ポリオレフィンブレンド組成物を記載している。
米国特許出願公開第2009/0124154号は、2種またはそれ以上のプロピレンベースのエスラトマーおよび1種またはそれ以上のプロピレンベースの熱可塑性ポリマーを含む不織布を記載している。
国際公開第WO 2009/064583号は、低結晶性のプロピレンベースのエスラトマー、高結晶性のプロピレンベースのエスラトマー、およびプロピレンベースの熱可塑性ポリマーを含む組成物から製造された不織布を記載している。
国際特許出願第PCT/US2012/062517号は、第一ポリマーおよび第二ポリマーのリアクタブレンドを含むリアクタグレードの組成物である、プロピレンベースの組成物を記載している。該第一ポリマーは16質量%のエチレン含有率を有し、かつ該第二ポリマーは4質量%のエチレン含有率を有する。この組成物は、メルトスパン不織布を形成するのに使用し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一ポリマー成分および第二ポリマー成分のリアクタブレンドを含むプロピレンベースのポリマー組成物が提供される。該第一ポリマー成分は、プロピレンおよびエチレンを含み、かつ12質量%を超え、19質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R1を有し、ここで該質量%は、該第一ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものである。該第二ポリマー成分は、プロピレンおよびエチレンを含み、かつ4質量%を超え、10質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R2を有し、ここで該質量%は、該第二ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものである。好ましくは、該第一および第二ポリマー成分のエチレン含有率は、以下の式を満たす:
-1.7143R1 + 29.771 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 37.25
同様に、少なくとも一層の弾性層を有する、メルトスパン不織組成物およびこのような不織組成物の製造方法もここに提供され、ここで該弾性層は、上記プロピレンベースのポリマー組成物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、約40.6cm(16in) DCDおよび約68.9kPa(10psi)の風量(air rate)で製造された実施例1の織物の、エチレン含有率および永久歪を例示する。
図2図2は、約40.6cm(16in) DCDおよび約68.9kPa(10psi)の風量で製造された実施例1の織物の、エチレン含有率および永久歪を例示する。また、図2は、コントロールの織物と比較した、実施例の織物の収縮力(retractive force)における増加または減少の割合をも示す。
図3図3は、約40.6cm(16in) DCDおよび約103.4kPa(15psi)の風量で製造された実施例1の織物の、エチレン含有率および永久歪を例示する。また、図3は、コントロールの織物と比較した、実施例の織物の収縮力における増加または減少の割合をも示す。
図4図4は、約40.6cm(16in) DCDおよび約137.8kPa(20psi)の風量で製造された実施例1の織物の、エチレン含有率および永久歪を例示する。また、図4は、コントロールの織物と比較した、実施例の織物の収縮力における増加または減少の割合をも示す。
図5図5は、約50.8cm(20in) DCDおよび約68.9kPa(10psi)の風量で製造された実施例1の織物の、エチレン含有率および永久歪を例示する。また、図5は、コントロールの織物と比較した、実施例の織物の収縮力における増加または減少の割合をも示す。
図6図6は、約50.8cm(20in) DCDおよび約103.4kPa(15psi)の風量で製造された実施例1の織物の、エチレン含有率および永久歪を例示する。また、図6は、コントロールの織物と比較した、実施例の織物の収縮力における増加または減少の割合をも示す。
図7図7は、約50.8cm(20in) DCDおよび約137.8kPa(20psi)の風量で製造された実施例1の織物の、エチレン含有率および永久歪を例示する。また、図7は、コントロールの織物と比較した、実施例の織物の収縮力における増加または減少の割合をも示す。
図8図8は、約61.0cm(24in) DCDおよび約68.9kPa(10psi)の風量で製造された実施例1の織物の、エチレン含有率および永久歪を例示する。また、図8は、コントロールの織物と比較した、実施例の織物の収縮力における増加または減少の割合をも示す。
図9図9は、約61.0cm(24in) DCDおよび約103.4kPa(15psi)での例を示す。また、図9は、コントロールの織物と比較した、実施例の織物の収縮力における増加または減少の割合をも示す。
図10図10は、約61.0cm(24in) DCDおよび約137.8kPa(20psi)の風量で製造された実施例1の織物の、エチレン含有率および永久歪を例示する。また、図10は、コントロールの織物と比較した、実施例の織物の収縮力における増加または減少の割合をも示す。
図11図11は、実施例2の織物に関する永久歪と坪量とを比較している。
図12図12は、実施例2の織物に関する収縮力と坪量とを比較している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書においては、プロピレンベースのポリマー組成物、これらプロピレンベースのポリマー組成物を含む少なくとも一層の弾性層を有する不織布、およびこのような織物を形成する方法が開示される。該プロピレンベースのポリマー組成物は、第一ポリマー成分および第二ポリマー成分のリアクタブレンド(reactor blend)を含む。該第一ポリマー成分はプロピレンおよびエチレンを含み、かつ該第一ポリマー成分の質量を基準として、12質量%を超え、19質量%未満までのエチレン含有率R1を有する。該第二ポリマー成分はプロピレンおよびエチレンを含み、かつ該第二ポリマー成分の質量を基準として、4質量%を超え、10質量%未満までのエチレン含有率R2を有する。該第一および第二ポリマー成分のエチレン含有率は、以下の式を満たす:
-1.7143R1 + 29.771 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 37.25
ここで使用する場合、用語「コポリマー」とは、2またはそれ以上のモノマーを、場合によってはその他のモノマーと共に含むポリマーを包含することを意味し、またインターポリマー、ターポリマー等とも称することができる。本明細書において使用する用語「ポリマー」とは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー等、およびこれらのアロイおよびブレンドを含むが、これらに限定されない。本明細書において使用する用語「ポリマー」とは、またインパクト(impact)、ブロック、グラフト、ランダムおよび交互コポリマーをも含む。該用語「ポリマー」とは、特に述べない限り、あらゆる可能な幾何形状のものをも更に含むものとする。このような形状は、アイソタクティック、シンジオタクティックおよびランダムシンメトリーを含むことができる。本明細書において使用する用語「ブレンド」は、2種またはそれ以上のポリマーの混合物を言う。
【0008】
本明細書において使用する用語「モノマー」または「コモノマー」とは、上記ポリマーを形成するのに使用するモノマー、即ち重合前の形状にある未反応の化合物を言うことができ、また同様に該ポリマー内に組込まれた後の該モノマー(本明細書において「[モノマー]-由来の単位」とも呼ばれる)を言うこともでき、これは、該重合反応のために、典型的にはその重合反応前に有していたよりも少ない水素原子を有する。
本明細書において使用する「ポリプロピレン」とは、プロピレンのホモポリマーまたはコポリマーまたはその混合物を含む。1種またはそれ以上の追加のモノマーと重合された1種またはそれ以上のプロピレンモノマーを含む生成物は、より一般的には、ランダムコポリマー(RCP)またはインパクトコポリマー(ICP)として知られているものであり得る。インパクトコポリマーは、また当分野においてヘテロ相(heterophasic)コポリマーとしても知られている。ここで使用する場合「プロピレンベースの」とは、単独でまたは1種またはそれ以上のコモノマーとの組合せでプロピレンを含む任意のポリマーを包含することを意味し、ここでプロピレンは主成分(即ち、50質量%プロピレンを超える)である。
本明細書において使用する場合、「リアクタグレード(reactor grade)」とは、重合後に、そのポリマーの平均分子量、分子量分布、または粘度を変更する目的で、化学的にまたは機械的に処理されまたはブレンドされていない該ポリマーを意味する。リアクタグレードとして記載されたこれらポリマーから特別に排除されるのは、パーオキサイドによりビスブレーキングされ、あるいはまたこれにより処理または被覆されているものである。しかし、本開示の目的にとって、リアクタグレードのポリマーは、リアクタブレンドであるこれらポリマーを含む。
【0009】
本明細書において使用する「リアクタブレンド(reactor blend)」とは、2種またはそれ以上のポリマーの、高度に分散されたまたは機械的に分離不能なブレンドを意味し、該2種またはそれ以上のポリマーは、1種またはそれ以上のモノマーの逐次(例えば、連続した)重合または並行した重合の結果として、一方のポリマーのもう一方のポリマーの存在下での形成を伴って、または並列式反応器内で別々に製造されるポリマーの溶液ブレンドにより、その場で製造される。リアクタブレンドは単一の反応器、一連の反応器、または並列式反応器内で製造することができ、またリアクタグレードのブレンドである。リアクタブレンドはバッチ式、半-連続式、または連続式のシステムを含む任意の重合法によって製造し得る。「リアクタブレンド」ポリマーから特に排除されるものは、2またはそれ以上のポリマーのブレンドであって、これらポリマーが、例えばミキサ、押出機、または他の同様なデバイス内で物理的または機械的にブレンドされることにより、実験施設内でブレンドされるものを含む。
本明細書において使用する「ビスブレーキング(visbreaking)」とは、あるポリマーを鎖の切断処理に掛けることにより、該ポリマーの分子量を減じるための方法である。該ビスブレーキング法は、またあるポリマーのMFRを増大させ、またその分子量分布を狭めることを可能とする。数種の異なる型の化学反応が、プロピレンベースのポリマーをビスブレーキング処理するのに使用し得る。一例は熱分解(thermal pyrolysis)であり、これは或るポリマーを、例えば押出機内で350℃またはこれを超える高温度に暴露することにより行われる。他の手法は、強力な酸化剤に対する暴露および電離放射線への暴露である。最も一般的に利用されているビスブレーキング法は、該ポリマーへのプロデグラダント(prodegradant)の添加である。プロデグラダントは、ポリマーと混合した際に鎖の切断を促進する物質であり、これは次に押出条件の下で加熱される。商業的実施において使用されるプロデグラダントの例は、アルキルヒドロパーオキサイドおよびジアルキルパーオキサイドである。これらの物質は、高温において、フリーラジカル連鎖反応を開始して、ポリプロピレン分子の切断を結果する。これら用語「プロデグラダント」および「ビスブレーキング剤」は、本明細書においては互換的に使用される。ビスブレーキング法を通して連鎖の切断を受けたポリマーは、本明細書において「ビスブロークン(visbroken)」と言われる。このようなビスブロークンポリマーグレード、特にポリプロピレングレードは、当工業においてしばしば「制御されたレオロジー」または「CR」グレードと呼ばれる。
本明細書において使用する「触媒系」とは、1種またはそれ以上の触媒と、1種またはそれ以上の活性化剤、および場合により1種またはそれ以上の支持組成物の組合せを意味する。「活性化剤」とは、1種またはそれ以上の触媒の、モノマーを重合してポリマーとする能力を高めることのできる、任意の化合物または成分、または化合物または成分の組合せである。
【0010】
プロピレンベースのポリマー組成物
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、第一ポリマー成分および第二ポリマー成分のリアクタブレンドを含有する、リアクタグレードのポリマー組成物である。ここに記載する該ポリマー組成物は、メルトブローン不織布の弾性層において、並びにその他の用途において使用するのに特に適している。
上記プロピレンベースのポリマー組成物はプロピレンと、約5質量%〜約22質量%の1種またはそれ以上の、エチレンおよび/またはC4-C12 α-オレフィンから選択されるコモノマーとを含む。該α-オレフィンコモノマー単位は、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、オクテン、またはデセンから誘導し得る。好ましい態様において、該α-オレフィンはエチレンである。幾つかの態様において、該プロピレンベースのポリマー組成物はプロピレンおよびエチレンから本質的になり、あるいはプロピレンおよびエチレンのみからなる。
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、少なくとも約5質量%、少なくとも約6質量%、少なくとも約7質量%、または少なくとも約8質量%、または少なくとも約10質量%、または少なくとも約12質量%、または少なくとも14質量%のエチレン-由来の単位を含むことができ、ここで該質量%は、該プロピレン-由来およびα-オレフィン-由来の単位の全質量を基準とする。該プロピレンベースのポリマー組成物は、約22質量%まで、または約20質量%まで、または約19質量%まで、または約18質量%まで、または約17質量%までのエチレン-由来の単位を含むことができ、ここで該質量%は、該プロピレン-由来およびα-オレフィン-由来の単位の全質量を基準とする。幾つかの態様において、該プロピレンベースのポリマー組成物は、望ましくは、約5質量%〜約22質量%のエチレン、または約7質量%〜約20質量%のエチレン、または約10質量%〜約19質量%のエチレン、または約12質量%〜約18質量%のエチレン、または約12質量%〜約15質量%のエチレンを含むことができ、ここで該質量%は、該プロピレン-由来およびα-オレフィン-由来の単位の全質量を基準とする。
【0011】
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、少なくとも約78質量%、または少なくとも約80質量%、または少なくとも約81質量%、または少なくとも約82質量%、または少なくとも約83質量%、または少なくとも約84質量%のプロピレン-由来の単位、または少なくとも約85質量%のプロピレン-由来の単位を含むことができ、ここで該質量%は、該プロピレン-由来およびα-オレフィン-由来の単位の全質量を基準とする。該プロピレンベースのポリマー組成物は、約95質量%まで、または約94質量%まで、または約93質量%まで、または約92質量%まで、または約90質量%まで、または約88質量%まで、または約86質量%までのプロピレン-由来の単位を含むことができ、ここで該質量%は、該プロピレン-由来およびα-オレフィン-由来の単位の全質量を基準とする。
上記ポリマーのコモノマー含有率および連鎖分布は、当業者には周知の方法により、13C核磁気共鳴(NMR)を利用して測定できる。別々の分子量範囲に係るコモノマー含有率は、Wheeler & Willis, Applied Spectroscopy, 1993, Vol. 47, pp. 1128-1130において記載されているように、GPCによるサンプルとの組合せで、フーリエ変換赤外分光分析法(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)(FTIR)を包含する当業者には周知の方法を用いて測定することができる。75質量%を超えるプロピレンを含有するプロピレン-エチレンコポリマーに対して、このようなポリマーのコモノマー含有率(エチレン含有率)は、以下のようにして測定できる:薄い均質なフィルムを約150℃またはこれを超える温度にてプレス成形し、パーキンエルマー(Perkin Elmer) PE 1760赤外分光光度計に取付ける。600cm-1〜4,000cm-1の該サンプルに係る全スペクトルを記録し、またエチレンのモノマー質量%を、以下の式に従って計算することができる:エチレンの質量% = 82.585 - 111.987X + 30.045X2。ここで、Xは1155cm-1におけるピーク高さと、より高い722cm-1または732cm-1の何れかにおけるピーク高さとの比である。75質量%またはそれ未満のプロピレン含有率を有するプロピレン-エチレンコポリマーに対して、該コモノマー(エチレン)含有率は、Wheeler & Willisに記載された手順を用いて測定できる。米国特許第6,525,157号を参照することができ、そのテスト法は、本明細書および特許請求の範囲において言及される様々な測定に対して十分に適用することができ、また該米国特許は、GPC測定、NMRによるエチレン含有率の決定およびDSC測定に関する詳細を含んでいる。
【0012】
上記プロピレンベースのポリマー組成物は融点(Tm)によって特徴付けることができ、この融点は示差走査熱量法(DSC)により決定し得る。ここにおける目的にとって、最高温度ピークの係る最大値が該ポリマーの融点であると考えられる。これに関連する「ピーク」とは、正から負への該DSC曲線の一般的な傾き(熱の流れ対温度)における変化として定義され、該DSC曲線がプロットされ低るベースラインにおけるシフトなしに最大値をなし、結果として吸熱反応は正のピークによって示されるであろう。該プロピレンベースのポリマー組成物のTm(DSCにより決定されるような)は、約115℃未満、または約110℃未満、または105℃未満、または約100℃未満、または約90℃未満、または80℃未満または70℃未満であり得る。該プロピレンベースのポリマー組成物のTmは、10℃を超え、または15℃を超え、または20℃を超え、または25℃を超え、または30℃を超え、または35℃を超え、または40℃を超え、または45℃を超え、または50℃を超えることができる。幾つかの態様において、該プロピレンベースの組成物のTmは、10〜115℃の範囲、または25〜90℃の範囲、または30〜80℃の範囲、または40〜70℃の範囲、または50〜70℃の範囲であり得る。
幾つかの態様において、上記プロピレンベースのポリマー組成物は、単一の融解ピークを示す。従って、該プロピレンベースのポリマー組成物が第一および第二ポリマー成分のリアクタブレンドであったとしても、該ブレンドは分離不可能であり、またDSCにより測定した場合に単一の融解ピークを示す。
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、DSCにより測定される融解熱(Hf)により特徴付けることができる。該プロピレンベースのポリマー組成物は、少なくとも約0.5J/g、または少なくとも約1.0J/g、または少なくとも約1.5J/g、または少なくとも約3.0J/g、または少なくとも約4.0J/g、または少なくとも約6.0J/g、または少なくとも約7.0J/gのHfを有することができる。幾つかの態様において、該プロピレンベースのポリマー組成物は、約75J/g未満、または約70J/g未満、または約60J/g未満、または約50J/g未満、または約30J/g未満、または20J/g未満、または15J/g未満のHfにより特徴付けることができる。幾つかの態様において、該プロピレンベースのポリマー組成物は、1〜75J/g、または3〜60J/g、または5〜40J/g、または10〜30J/g、または15〜20J/gの範囲のHfを有する。
【0013】
本明細書において使用する場合、TmおよびHfを測定するためのDSC手順は、以下のものを含む。上記ポリマーを、約200℃〜約220℃の温度にて、加熱されたプレス内でプレス成型し、得られるポリマーシートを周囲条件の下に空気中で吊るして冷却する。約6〜10mgの該ポリマーシートを、打抜きダイにより取り出す。この6〜10mgのサンプルを、約80〜100時間に渡り室温にてアニールする。この期間の終了時点において、該サンプルをDSC(パーキンエルマーパイリスワンサーマルアナリシスシステム(Perkin Elmer Pyris One Thermal Analysis System))に設置し、約-30℃〜約-50℃に冷却し、この温度にて10分間保持する。次いで、該サンプルを10℃/分にて加熱して、最終温度約200℃に達せしめる。該サンプルを、200℃にて5〜10分間保持する。次に、第二の冷却-加熱サイクルを実施する。これら両サイクルからの結果を記録する。この熱出力が、該ポリマーに関するHfの一尺度であり、また該サンプルの融解ピーク下の面積として記録され、これは、典型的に約0℃〜約200℃の範囲内で生じ、ジュール単位で測定される。
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、75%またはこれを超え、80%またはこれを超え、85%またはこれを超え、90%またはこれを超え、92%またはこれを超え、95%またはこれを超え、97%またはこれを超える、13C NMRにより測定した場合に、3つのプロピレン単位からなるトライアドタクチシティー(triad tacticity)(mmmタクチシティー)を有することができる。幾つかの態様において、該3つのプロピレン単位からなるトライアドタクチシティーは約75%〜約99%、または約80%〜約99%、または約85%〜約99%、または約90%〜約99%、または約80%〜約97%の範囲であり得る。トライアドタクチシティーは、米国特許出願公開第2004/0236042号に記載されている方法により決定される。
【0014】
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、下限の4または6乃至上限の8または10または12の範囲にあるタクチシティー指数m/rを有することができる。本明細書において「m/r」として表現される該タクチシティー指数は、13C核磁気共鳴(「NMR」)によって決定される。該タクチシティー指数m/rは、H. N. Chengの文献:MACROMOLECULES, 1984, Vol. 17, pp. 1950-1955により規定された如く計算される。この文献を言及によりここに組入れる。該表示「m」または「r」は、隣接するプロピレン基の対に係る立体化学を記述しており、「m」はメソを言い、また「r」はラセミを言う。1.0というm/r比は、一般的にシンジオタクティックポリマーを表しており、また2.0というm/r比はアタクチック物質を表している。理論的には、アイソタクチック物質は、無限大に近付く比を有することができ、また多くの副生アタクチックポリマーは、50を超える比を与えるのに十分なアイソタクチック含有率を有している。
上記プロピレンベースのポリマー組成物は約0.5%〜約40%、または約1%〜約30%、または約5%〜約25%の、DSC手順に従って決定される%結晶化度を有することができる。結晶化度は、サンプルのHfを、100%結晶性ポリマーのHfで割ることにより決定することができ、これはアイソタクチックポリプロピレンに関して189J/gまたはポリプロピレンに対して350J/gであるものと推定される。
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、ASTM D-792により測定して、室温において約0.85g/cm3〜約0.92g/cm3、または約0.86g/cm3〜約0.90g/cm3、または約0.86g/cm3〜約0.89 g/cm3の密度を有することができる。
上記プロピレンベースのポリマー組成物は約10g/10分に等しいかまたはこれを超える、または約20g/10分に等しいかまたはこれを超える、または約25g/10分に等しいかまたはこれを超える、または約30g/10分に等しいかまたはこれを超えるメルトインデックス(MI)(ASTM D-1238、190℃にて2.16kg)を有することができる。
【0015】
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、約30g/10分を超え、または約33g/10分を超え、または約35g/10分を超え、または約37g/10分を超え、または約40g/10分を超え、または約42g/10分を超え、または約45g/10分を超え、または約47g/10分を超え、または約50g/10分を超え、または約60g/10分を超え、または80g/10分を超え、または100g/10分を超え、または200g/10分を超える、ASTM D-1238に従って、230℃にて2.16 kg重で測定された如き溶融流量(MRF)を有することができる。該プロピレンベースのポリマー組成物は、30〜200g/10分、または20〜100g/10分、または30〜80g/10分、または33〜70g/10分、または35〜65g/10分、または40〜60g/10分の範囲のMFRを有することができる。上述のMFRは、上記リアクタグレードのプロピレンベースのポリマー組成物に関するMFRである。即ち、該ポリマーは、重合反応器内で製造されたような、30g/10分を超えるMFR(または上に示したMFR)を有し、また該反応器を出た後に、そのMFRを増大させるために、パーオキサイドによる処理に付されておらず、あるいは他のポリマーとブレンドされていない。
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、少なくとも0.95、または少なくとも0.97、または少なくとも0.99というg’指数値を有することができ、ここでg’は、ベースラインとしてアイソタクチックポリプロピレンの極限粘度を用いて、該ポリマーのMwにおいて測定される。本明細書において使用するための該g‘指数は、以下のように定義される:
g’=ηbl
ここで、ηbは該ポリマーの極限粘度であり、またηlは、該ポリマーと同一の粘度平均分子量(Mv)を有する線状ポリマーに関する極限粘度である。ηl = KMvαであり、ここでKおよびαは線状ポリマーについて測定された値であり、また該g‘指数測定のために使用したものと同一の測定器で得るべきである。
【0016】
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、約5,000〜約1,000,000g/モル、または約10,000〜約500,000g/モル、または約20,000〜約400,000g/モル、または約50,000〜約300,000g/モル、または75,000〜200,000g/モル、または100,000〜150,000g/モル、または110,000〜140,000g/モル、または115,000〜130,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有することができる。
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、約2,500〜約2,500,000g/モル、または約5,000〜約500,000g/モル、または約10,000〜約250,000g/モル、または約25,000〜約200,000g/モル、または30,000〜100,000g/モル、または40,000〜65,000g/モルの数平均分子量(Mn)を有することができる。
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、約10,000〜約7,000,000g/モル、または約50,000〜約1,000,000g/モル、または約80,000〜約700,000g/モル、または約100,000〜約500,000g/モル、または125,000〜400,000g/モル、または150,000〜300,000g/モル、または175,000〜250,000g/モルのZ-平均分子量(Mz)を有することができる。
上記プロピレンベースのポリマー組成物の分子量分布(MWD=(Mw/Mn))は、約1〜約40、または約1〜約15、または約1.8〜約5、または約1.8〜約3、または約2.0〜2.5であり得る。
上記分子量(Mn、MwおよびMz)およびMWDを測定するための技術は、米国特許第4,540,753号およびそこにおける引用文献、並びにMacromolecules, 1988, Vol. 21, pp. 3360-3371 (Ver Strate等)およびそこにおける引用文献において見出すことができる。例えば、分子量は、示差屈折計を備え、かつポリスチレン標準物質を用いて較正される、ウォーターズ(Waters) 150ゲル浸透クロマトグラフを利用することにより、サイズ排除クロマトグラフィー法(SEC)によって決定することができる。
【0017】
場合により、上記プロピレンベースのポリマー組成物は、また1種またはそれ以上のジエンをも含むことができる。該用語「ジエン」とは、2つの不飽和サイトを有する炭化水素化合物、即ち炭素原子を連結する2つの二重結合を有する化合物として定義される。文脈に応じて、本明細書において使用するような該用語「ジエン」とは、大雑把に言えば、例えば重合媒体の一部を構成する、重合前のジエンモノマー、または重合が開始された後のジエンモノマー(ジエンモノマー単位またはジエン-由来の単位とも呼ばれる)の何れかを言う。典型的なジエンはブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン(例えば、1,4-ヘキサジエン)、ヘプタジエン(例えば、1,6-ヘプタジエン)、オクタジエン(例えば、1,6-オクタジエンまたは1,7-オクタジエン)、ノナジエン(例えば、1,8-ノナジエン)、デカジエン(例えば、1,9-デカジエン)、ウンデカジエン(例えば、1,10-ウンデカジエン)、ドデカジエン(例えば、1,11-ドデカジエン)、トリデカジエン(例えば、1,12-トリデカジエン)、テトラデカジエン(例えば、1,13-テトラデカジエン)、ペンタデカジエン、ヘキサデカジエン、ヘプタデカジエン、オクタデカジエン、ノナデカジエン、エイコサジエン、ヘンエイコサジエン、ドコサジエン、トリコサジエン、テトラコサジエン、ペンタコサジエン、ヘキサコサジエン、ヘプタコサジエン、オクタコサジエン、ノナコサジエン、トリアコンタジエン、および1,000g/モル未満の分子量(Mw)を有するポリブタジエンを含むが、これらに限定されない。分岐鎖非環式ジエンの例は、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、および3,7-ジメチル-1,7-オクタジエンを含むが、これらに限定されない。単環脂環式ジエンの例は、1,4-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、および1,7-シクロドデカジエンを含むが、これらに限定されない。多環脂環式縮合環および架橋環型ジエンの例は、テトラヒドロインデン;ノルボルナジエン;メチルテトラヒドロインデン;ジシクロペンタジエン;ビシクロ(2.2.1)ヘプタ-2,5-ジエン;およびアルケニル-、アルキリデン-、シクロアルケニル-、およびシクロアルキリデンノルボルネン(例えば、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-(4-シクロペンテニル)-2-ノルボルネン、5-シクロヘキシリデン-2-ノルボルネン、および5-ビニル-2-ノルボルネンを包含する)を含むが、これらに限定されない。シクロアルケニル置換アルケンの例は、ビニルシクロヘキセン、アリルシクロヘキセン、ビニルシクロオクテン、4-ビニルシクロヘキセン、アリルシクロデセン、ビニルシクロドデセン、およびテトラシクロドデカジエンを含むが、これらに限定されない。本発明の幾つかの態様において、該ジエンは、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB);1,4-ヘキサジエン;5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB);1,6-オクタジエン;5-メチル-1,4-ヘキサジエン;3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン;1,3-シクロペンタジエン;1,4-シクロヘキサジエン;ビニルノルボルネン(VNB);ジシクロペンタジエン(DCPD)、およびこれらの組合せから選択される。上記プロピレンベースのポリマー組成物がジエンを含む態様において、該ジエンは、0.05質量%〜約6質量%のジエン-由来の単位、または約0.1質量%〜約5.0質量%のジエン-由来の単位、または約0.25質量%〜約3.0質量%のジエン-由来の単位、または約0.5質量%〜約1.5質量%のジエン-由来の単位にて存在することができ、ここで該質量%は、上記プロピレン-由来、α-オレフィン-由来およびジエン-由来の単位の全質量を基準とする。
【0018】
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、第一ポリマー成分および第二ポリマー成分のリアクタブレンドである。従って、該プロピレンベースのポリマー組成物に係るコモノマー含有率は、該第一ポリマー成分のコモノマー含有率を調節し、該第二ポリマー成分のコモノマー含有率を調節し、および/または該プロピレンベースのポリマー組成物中に存在する該第一ポリマー成分対該第二ポリマー成分の比を調節することにより、調節することができる。幾つかの態様において、該第一または第二ポリマー成分は、ランダムコポリマー、好ましくはプロピレンとエチレンとのランダムコポリマーであり、その他のポリマー成分はプロピレンおよびエチレンを含有するプロピレンベースのエスラトマーである。
上記第一ポリマー成分は、プロピレンおよびエチレンを含む。該第一ポリマー成分のエチレン含有率(「R1」)は12質量%エチレンを超え、または12.1質量%エチレンを超え、または12.2質量%エチレンを超え、または12.4質量%エチレンを超え、または12.5質量%エチレンを超え、または12.6質量%エチレンを超え、または12.7質量%エチレンを超え、または12.8質量%エチレンを超え、または12.9質量%エチレンを超え、または13質量%エチレンを超え、または13.1質量%エチレンを超え、または13.2質量%エチレンを超えることができ、ここで該質量%は、該第一ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とする。該第一ポリマー成分のエチレン含有率は、19質量%未満のエチレン、または18.6質量%未満のエチレン、または18.4質量%未満のエチレン、または18質量%未満のエチレン、または17.6質量%未満のエチレン、または17.4質量%未満のエチレン、または17質量%未満のエチレン、または16.8質量%未満のエチレン、または16.6質量%未満のエチレン、または16.4質量%未満のエチレン、または16.2質量%未満のエチレン、または16質量%未満のエチレン、または15.8質量%未満のエチレン、または15.6質量%未満のエチレン、または15.4質量%未満のエチレン、または15.2質量%未満のエチレン、または15質量%未満のエチレン、または14.8質量%未満のエチレン、または14.5質量%未満のエチレンであり得、ここで該質量%は、該第一ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とする。幾つかの態様において、該第一ポリマー成分のエチレン含有率は、12質量%を超え19質量%未満までのエチレン、または12.1質量%〜18.6質量%のエチレン、または12.2質量%〜18.4質量%のエチレン、または12.3質量%〜18質量%のエチレン、または12.4質量%〜17.6質量%のエチレン、または12.5質量%〜17.4質量%のエチレン、または12.5質量%〜17質量%のエチレン、または12.6質量%〜17質量%のエチレン、または12.6質量%〜16.4質量%のエチレン、または12.6質量%〜15.4質量%のエチレン、または12.6質量%〜15.2質量%のエチレン、または12.7質量%〜15質量%のエチレン、または12.8質量%〜14.8質量%のエチレン、または13質量%〜14.8質量%のエチレンの範囲であり得る。
【0019】
上記第二ポリマー成分はプロピレンおよびエチレンを含む。該第二ポリマー成分のエチレン含有率(「R2」)は4質量%エチレンを超え、または4.1質量%エチレンを超え、または4.2質量%エチレンを超え、または4.3質量%エチレンを超え、または4.4質量%エチレンを超え、または4.6質量%エチレンを超え、または4.8質量%エチレンを超え、または5質量%エチレンを超え、または5.2質量%エチレンを超え、または5.5質量%エチレンを超え、または5.7質量%エチレンを超え、または6質量%エチレンを超え、または6.2質量%エチレンを超え、または6.4質量%エチレンを超え、または6.8質量%エチレンを超え、または7質量%エチレンを超え、または7.2質量%エチレンを超え、または7.4質量%エチレンを超えることができ、ここで該質量%は、該第二ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とする。該第二ポリマー成分のエチレン含有率は、10質量%エチレン未満、または9.9質量%エチレン未満、または9.8質量%エチレン未満、または9.7質量%エチレン未満、または9.6質量%エチレン未満、または9.5質量%エチレン未満、または9.4質量%エチレン未満、または9.3質量%エチレン未満、または9.2質量%エチレン未満、または9.1質量%エチレン未満、または9.0質量%エチレン未満であり得、ここで該質量%は、該第二ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とする。幾つかの態様において、該第二ポリマー成分のエチレン含有率は、4質量%を超え10質量%未満までのエチレン、または4.4質量%〜9.9質量%エチレン、または5.0質量%〜9.8質量%エチレン、または6.0質量%〜9.7質量%エチレン、または6.4質量%〜9.7質量%エチレン、または6.6質量%〜9.6質量%エチレン、または6.8質量%〜9.6質量%エチレン、または7.0質量%〜9.4質量%エチレン、または7.2質量%〜9.4質量%エチレン、または7.4質量%〜9.4質量%エチレンの範囲であり得る。
【0020】
上記プロピレンベースのポリマー組成物において、上記第一ポリマー成分のエチレン含有率は、上記第二ポリマー成分のエチレン含有率と共に変動し得る。即ち、該第一ポリマー成分のエチレン含有率(R1)は、該エチレン含有率が以下のような関係を満足するように、該第二ポリマー成分のエチレン含有率(R2)と共に変動し得る:R2は-1.7143R1 + 29.771に等しいかまたはこれを超え;あるいはR2は-1.7143R1 + 30に等しいかまたはこれを超え;あるいは-1.7143R1 + 30.2に等しいかまたはこれを超え;あるいはR2は-1.7143R1 + 30.4に等しいかまたはこれを超え;あるいはR22は-1.7143R1 + 30.6に等しいかまたはこれを超え;あるいはR2は-1.7143R1 + 30.8に等しいかまたはこれを超え;あるいはR2は-1.7143R1 + 31に等しいかまたはこれを超え;あるいはR2は-1.7143R1 + 31.2に等しいかまたはこれを超え;あるいはR2は-1.7143R1 + 31.4に等しいかまたはこれを超え;あるいはR2は-1.7143R1 + 31.6に等しいかまたはこれを超え;あるいはR2は-1.7143R1 + 31.8に等しいかまたはこれを超え;あるいはR2は-1.7143R1 + 32に等しいかまたはこれを超える。
上記第一ポリマー成分のエチレン含有率(R1)は、該エチレン含有率が、以下のような関係を満足するように、上記第二ポリマー成分のエチレン含有率(R2)と共に変動し得る:R2は-1.9167R1 + 37に等しいかまたはそれ未満;あるいはR2は-1.9167R1 + 36.8に等しいかまたはそれ未満;あるいはR2は-1.9167R1 + 36.6に等しいかまたはそれ未満;あるいはR2は-1.9167R1 + 36.4に等しいかまたはそれ未満;あるいはR2は-1.9167R1 + 36.2に等しいかまたはそれ未満;あるいはR2は-1.9167R1 + 36に等しいかまたはそれ未満;あるいはR2は-1.9167R1 + 35.8に等しいかまたはそれ未満;あるいはR2は-1.9167R1 + 35.6に等しいかまたはそれ未満;あるいはR2は-1.9167R1 + 35.4に等しいかまたはそれ未満;あるいはR2は-1.9167R1 + 35.2に等しいかまたはそれ未満;あるいはR2は-1.9167R1 + 35に等しいかまたはそれ未満である。
【0021】
上記第一ポリマー成分のエチレン含有率(R1)は、該エチレン含有率が、以下の式を満足するように、上記第二ポリマー成分のエチレン含有率(R2)と共に変動し得る:-1.7143R1 + 30 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 37;または-1.7143R1 + 31 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 36;または-1.7143R1 + 32 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 35。
幾つかの態様において、上記第一ポリマー成分のエチレン含有率(R1)は、該エチレン含有率が、以下のような関係を満足するように、上記第二ポリマー成分のエチレン含有率(R2)と共に変動し得る:R2は-1.7624R1 + 32.1851に等しいかまたはこれを超え;あるいはR2は-1.7624R1 + 34.0341に等しいかまたはこれを超える。該第一ポリマー成分のエチレン含有率(R1)は、該エチレン含有率が、以下のような関係を満足するように、該第二ポリマー成分のエチレン含有率(R2)と共に変動し得る:R2は-1.877R1 + 32.1851に等しいかまたはそれ未満;あるいはR2は-1.877R1 + 34.0341に等しいかまたはこれを超える。
上記第一ポリマー成分のMFRは、上記第二ポリマー成分のMFRと同一または異なっていてもよい。
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、該プロピレンベースのポリマー組成物の質量を基準として、3〜25質量%の上記第二ポリマー成分、または5〜20質量%の該第二ポリマー成分、または7〜18質量%の該第二ポリマー成分、または10〜15質量%の該第二ポリマー成分を含むことができる。該プロピレンベースのポリマー組成物は、該プロピレンベースのポリマー組成物の質量を基準として、75〜97質量%の上記第一ポリマー成分、または80〜95質量%の該第一ポリマー成分、または82〜93質量%の該第一ポリマー成分、または85〜90質量%の該第一ポリマー成分を含むことができる。
【0022】
上記プロピレンベースのポリマー組成物の製造
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、第一ポリマー成分および第二ポリマー成分を含有するリアクタブレンドである。該ポリマー組成物は、当分野において一般に知られている任意のリアクタブレンド法によって製造し得る。該リアクタブレンドは、単一の反応器、一連の反応器、または並列式反応器内で製造することができ、またリアクタグレードのブレンドである。幾つかの態様において、該組成物が該反応器を出た後に、実質上、追加のプロピレンホモポリマーまたはコポリマーが、該組成物に添加されることはない。更なる詳細は、米国特許第6,881,800号、同第7,803,876号、同第8,013,069号および同第8,026,323号において見出すことができる。
上記プロピレンベースのポリマー組成物の重合は、典型的には、触媒系の存在下で、0℃〜200℃の温度にて、1秒〜10時間の期間に渡り、モノマーを反応させることにより行われる。好ましくは、均質な条件が使用され、例えば希釈剤として使用される過剰のモノマーを用いた、連続式溶液法またはバルク重合法が使用される。該連続法は、何らかの構成の攪拌を利用して、該反応器内の濃度差を減じ、かつ定常状態の重合条件を維持することができる。
ここに記載するプロピレンベースのポリマー組成物は、1種またはそれ以上の触媒系を使用して調製される。本発明において使用するのに適した触媒系は、触媒プリカーサとも呼ばれる少なくとも一つの遷移金属化合物および活性化剤および場合により支持組成物を含む。該遷移金属化合物(触媒プリカーサ)と該活性化剤とを、該重合反応器の上流側にて、溶液中でまたは該重合反応器内で接触させると、該触媒系の接触的に活性な成分(触媒)が生じる。かかる触媒系は、場合により不純物スキャベンジャーを含むことができる。
【0023】
幾つかの態様において、上記第一および第二ポリマー成分は、同一の触媒系を用いて製造される。本明細書において使用する場合、「同一の触媒」を用いて製造されたとは、該関連するポリマー成分が、遷移金属化合物(触媒プリカーサ)と活性化剤との同一の組合せを用いて製造されることを意味する。換言すれば、該「同一の触媒系」は、該遷移金属化合物および活性化剤の組合せの素性が同一であることのみを必要とし、例えば該関連するポリマーを形成するために、同一の量の該遷移金属化合物(または該活性剤)を使用すべきことが必要とされる訳でも、また該関連するポリマー成分を形成するために、該遷移金属化合物(または該活性剤)を同一の重合条件で使用すべきことが必要とされる訳でもない。
上記プロピレンベースのポリマー組成物を製造するのに使用する上記触媒系は、メタロセン化合物を含む。幾つかの態様において、該メタロセン化合物は、一般式:(In1)Y(In2)MX2を有する架橋ビスインデニルメタロセンであり、ここでIn1およびIn2は、Mに結合し、かつYにより架橋された、(好ましくは同一の)置換または無置換のインデニル基であり、Yは橋架け基であり、ここでIn1とIn2とを連結しているダイレクト鎖(direct chain)における原子数は1〜8であり、また該ダイレクト鎖は、CまたはSiを含み、またMは第3、4、5、または6族の遷移金属である。In1およびIn2は、置換または無置換であり得る。In1およびIn2が、1またはそれ以上の置換基により置換されている場合、該置換基はハロゲン原子、C1〜C10アルキル、C5〜C15アリール、C6〜C25アルキルアリール、およびN-またはP-含有アルキルまたはアリール基からなる群から選択される。典型的なメタロセン化合物は、μ-ジメチル-シリルビス(インデニル)ハフニウムジメチルおよびμ-ジメチルシリルビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、および特に(μ-ジメチルシリル)-ビス(2-メチル-4-(3',5'-ジ-tert-ブチルフェニル)インデニル)ジルコニウムジメチル、(μ-ジメチルシリル)-ビス(2-メチル-4-(3',5'-ジ-tert-ブチルフェニル)インデニル)ハフニウムジメチル、(μ-ジメチルシリル)-ビス(2-メチル-4-ナフチルインデニル)ジルコニウムジメチル、(μ-ジメチルシリル)-ビス(2-メチル-4-ナフチルインデニル)ハフニウムジメチル、(μ-ジメチルシリル)-ビス(2-メチル-4-(N-カルバジル(carbazyl))インデニル)-ジルコニウムジメチル、および(μ-ジメチルシリル)-ビス(2-メチル-4-(N-カルバジル)インデニル)-ハフニウムジメチルを含むが、これらに限定されない。
【0024】
あるいはまた、上記メタロセン化合物は、米国特許第7,601,666号に開示されている式の1またはそれ以上に相当するものであり得る。このようなメタロセン化合物は、ジメチルシリル-ビス(2-(メチル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロベンズ(f)インデニル)ハフニウムジメチル、ジフェニルシリル-ビス(2-(メチル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロベンズ(f)インデニル)-ハフニウムジメチル、ジフェニルシリル-ビス(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロベンズ(f)インデニル)-ハフニウムジメチル、ジフェニルシリル-ビス(2-(メチル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロベンズ(f)インデニル)ジルコニウムジクロリド、およびシクロプロピルシリル-ビス(2-(メチル)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロベンズ(f)インデニル)ハフニウムジメチルを含むが、これらに限定されない。
プロピレンベースのポリマー組成物を製造するのに使用する上記触媒系の活性化剤は、カチオン性の成分を含む。幾つかの態様において、該カチオン性成分は、式:[R1R2R3AH]+を有する。ここで、Aは窒素であり、R1およびR2は、一緒に-(CH2)a-基であり、該基においてaは3、4、5または6であり、R1およびR2は、また該窒素原子と共に4-、5-、6-または7-員の非-芳香族リングを形成し、該リングには、隣接するリング炭素原子を介して、場合により1またはそれ以上の芳香族またはヘテロ芳香族リングが縮合することができ、またR3はC1、C2、C3、C4またはC5アルキル、またはN-メチルピロリジニウムまたはN-メチルピペリジニウムである。他の態様において、該カチオン性成分は、式:[RnAH]+を有し、ここでAは窒素であり、nは2または3であり、および全てのRは同一であり、かつC1〜C3アルキル基であり、該成分は、例えばトリメチルアンモニウム、トリメチルアニリニウム、トリエチルアンモニウム、ジメチルアニリニウム、またはジメチルアンモニウム等である。
【0025】
1またはそれ以上の態様において、上記プロピレンベースのポリマー組成物を製造するのに使用する上記触媒系の活性化剤は、アニオン性成分:[Y]-を含む。幾つかの態様において、該アニオン性成分は、式:[B(R4)4]-を有する非-配位型アニオン(NCA)であり、ここでR4はアリール基または置換アリール基であり、その1またはそれ以上の置換基は同一または異なっており、またアルキル、アリール、ハロゲン原子、ハロゲン化アリール、およびハロ-アルキルアリール基からなる群から選択される。1またはそれ以上の態様において、該置換基はパーハロゲン化アリール基、またはパーフルオロフェニル、パーフルオロナフチルおよびパーフルオロビフェニルを含むが、これらに限定されないパーフルオロアリール基である。
ここに記載された触媒系に係る上記カチオン性およびアニオン性成分は、一緒に活性化剤化合物を形成する。本発明に係る1またはそれ以上の態様において、該活性化剤はN,N-ジメチルアニリニウム-テトラ(パーフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウム-テトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウム-テトラキス(パーフルオロビフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウム-テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウム-テトラ(パーフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウム-テトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルカルベニウム-テトラキス(パーフルオロビフェニル)ボレート、またはトリフェニルカルベニウム-テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートであり得る。
上記プロピレンベースのポリマー組成物は、前節において述べたメタロセン化合物、カチオン生活性化剤成分、およびアニオン生活性化剤成分の任意の組合せから得られる、任意の触媒系を用いて製造し得る。同様に、2つの異なる活性化剤の組合せを、同一または異なるメタロセンと共に使用することができる。
【0026】
更に、上記の触媒系は、上記遷移金属化合物および上記活性化剤に加えて、追加の活性化剤(補助活性化剤)および/またはスキャベンジャーを含むことができる。補助活性化剤は、活性化剤との組合せで使用した場合に、活性な触媒を形成するように、該遷移金属錯体と反応することのできる化合物である。補助活性化剤は、アルモキサンおよびアルミニウムアルキルを含む。
幾つかの態様において、スキャベンジャーは、あらゆる有害物質から上記反応を「清浄化」するために使用することができ、さもないと該有害物質は該触媒と反応して、これを失活させてしまうであろう。スキャベンジャーとして有用な典型的なアルミニウムまたはホウ素アルキル成分は、一般式:RxJZ2によって表され、ここでJはアルミニウムまたはホウ素であり、RxはC1-C20アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびこれらの異性体であり、また各Zは独立にRxまたは異なる一価のアニオン性リガンド、例えばハロゲン(Cl、Br、I)、アルコキシド(ORx)等である。典型的なアルミニウムアルキルは、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウムおよびこれらの組合せを含む。典型的なホウ素アルキルはトリエチルホウ素を含む。また、スキャベンジャー化合物は、アルモキサンおよびメチルアルモキサンおよび変性メチルアルモキサンを包含する変性アルモキサンであり得る。
【0027】
メルトスパン不織組成物
ここに記載するプロピレンベースのポリマー組成物は、メルトスパン(例えば、メルトブローンまたはスパンボンド)不織組成物(例えば、織物)において特に有用である。とりわけ、該メルトスパン不織組成物は少なくとも一層の弾性層を含むことができ、ここで該弾性層はプロピレンベースのポリマー組成物を含む。本明細書において使用する場合、「メルトスパン不織組成物」とは、少なくとも一層のメルトスパン層を含む組成物を言い、該組成物全体がメルトスパンまたは不織であることを必要としない。幾つかの態様において、該不織布は、該弾性層(1または複数)の一方または両側面に配置された、1またはそれ以上の面材料層を付随的に含む。本明細書において使用する場合、「不織布」とは、製織以外の方法で製造された繊維材料を言う。例えば、不織布に関しては、その繊維は平面状シート-様織物構造に直接加工することができ、次いで化学的、熱的に結合されるか、または機械的に絡み合わされて(またはこれら両者により)、凝集性の織物を実現する。
本発明は、織物等の不織組成物のみならず、ここに記載されるポリマーを含む不織組成物を形成する方法をも対象としている。該方法は、プロピレンベースのポリマー組成物を含む溶融ポリマー組成物を形成する工程、該プロピレンベースのポリマー組成物を含む繊維を形成する工程、および該繊維から弾性不織層を形成する工程を含む。該方法は、更に1またはそれ以上の不織面材料層を形成する工程、および該面材料層上に1または複数の上記弾性層を配置する工程をも含むことができる。場合によっては、1またはそれ以上の面材料層を、該1または複数の弾性層が該面材料層間に挟まれるように、更に該弾性層上に配置することができる。
本発明の不織布は、当分野において公知の任意の方法により形成することができる。例えば、該不織布は、メルトブローンまたはスパンボンド法により製造し得る。本発明の幾つかの態様において、本発明の織物の上記1または複数の弾性層は、メルトブローン法により製造される。該織物が、更に1またはそれ以上の面材料層を含む場合、該面材料層をも、メルトブローン法、スパンボンドまたはスパンレース法、または任意の他の適当な不織法によって製造することができる。
【0028】
本明細書において記載する不織布の上記1または複数の弾性層は、主として1種またはそれ以上のプロピレンベースのポリマー組成物で構成されていてもよい。該弾性層は該プロピレンベースのポリマー組成物(これらは第一ポリマー成分および第二ポリマー成分のリアクタブレンドである)に加えて、添加剤および/またはフィラーを含むことができるが、該弾性層を形成するために、如何なる追加のプロピレンホモポリマーまたはコポリマーをも、ポストリアクタ(post reactor)の該プロピレンベースのポリマー組成物とブレンドする必要はない。換言すれば、該不織布の弾性層は、ポストリアクタに添加される他のプロピレンホモポリマーおよびコポリマーを、実質上含まないものであり得る。追加のポリマーをブレンドすることは可能であるが、これらのポリマーは、高いMFRおよび良好な加工性を実現するために必要とはされない。このことは、結果として改善されたメルトブローン不織布を与えることを可能とするが、その理由は、プロピレンホモポリマー等の他のポリマーの該ポストリアクタ添加が、製造コストを高め、しかも該織物の弾性特性を低下する可能性があるからである。
本明細書において使用する場合、「メルトブローン繊維」および「メルトブローン織物」とは、特定の加工温度にて、複数の微細な、通常は円形のダイキャピラリーを通して、溶融熱可塑性材料を、溶融糸またはフィラメントとして、高速の、通常は高温のガス流中に押出すことにより形成される繊維を言う。該ガス流は該溶融熱可塑性材料のフィラメントを繊細化して、その径を低下させる。ここで該径はマイクロファイバー径までであり得る。その後、該メルトブローン繊維は、該高速ガス流によって搬送され、収集面上に堆積されて、ランダムに分散されたメルトブローン繊維からなるウエブまたは不織布を形成する。このような方法は、例えば米国特許第3,849,241号および同第6,268,203号において、一般的に記載されている。メルトブローン繊維は、連続または不連続のマイクロファイバーであり、また該樹脂に依存して、約10μmより小さくてもよく、あるいは幾つかの樹脂またはここに記載したもの等の特定の大量処理法に対しては、メルトブローン繊維は、10μmを超え、例えば約10〜約30μm、または約10〜約15μmの径を有することができる。ここで使用するような用語「メルトブロー(meltblowing)」とは、メルトスプレイ法をも含むことを意味する。
【0029】
商業的なメルトブローン法は、0.3g/孔/分(「ghm」)を超え、または0.4ghmを超え、または0.5ghmを超え、または0.6ghmを超え、または0.7ghmを超える、比較的高い処理量を有する押出システムを使用する。本発明の織物は、商業的なメルトブローン法を利用して製造することができ、例えばこれら織物は、バイアックス-ファイバーフィルムコーポレーション(Biax-Fiberfilm Corporation)から入手できる高圧メルトブローン法を利用して製造できる。1またはそれ以上の態様において、該不織布を形成するのに使用される繊維は、約0.01〜約3.0ghm、または約0.1〜約2.0ghm、または約0.3〜約1.0ghmの処理量を有する押出システムを使用して形成される。
幾つかの態様において、上記不織布を形成するのに使用する繊維は、押出システムを使用して形成され、該システムは20684kPa(約3000psi)に等しいかまたはそれ未満、または17237kPa(約2500psi)に等しいかまたはそれ未満、または13790kPa(約2000psi)に等しいかまたはそれ未満、または12066kPa(約1750psi)に等しいかまたはそれ未満、または10342kPa(約1500psi)に等しいかまたはそれ未満のダイ圧力を生じる。同一のまたはその他の態様において、該押出システムのダイ圧力は、689kPa(100psi)を超え、または1724kPa(250psi)を超え、または3447kPa(500psi)を超え、または5171kPa(750psi)を超え、または6895kPa(1000psi)を超えることができる。1またはそれ以上の態様において、該ダイ圧力は、同一の全体としてのエチレン含有率を有するが、同一の押出量において30g/10分未満のMFRを有する同様なプロピレンベースポリマーを加工するのに要するダイ圧力よりも、少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%、または少なくとも約25%、または少なくとも30%、または少なくとも35%、または少なくとも40%低い。
【0030】
繊維を製造するのに使用する上記押出システムは、302℃(約575°F)未満、または299℃ (約570°F)未満、または293℃(約560°F)未満、または288℃(約550°F)未満、または282℃(約540°F)未満の作業温度にて運転することができる。
典型的なスパンボンド法において、ポリマーを溶融しかつ均質化するために、該ポリマーは加熱された押出機に供給される。該押出機は溶融ポリマーを紡糸口金に供給する。該紡糸口金において、該ポリマーは、該紡糸口金内に1またはそれ以上の列で配列された微細な開口を通過するにつれて繊維化され、フィラメントのカーテンを形成する。該フィラメントは、通常低温度の空気により急冷され、通常は空気作用により引抜かれ、かつ不織布を形成するために、移動するマット、ベルトまたは「成形ワイヤ」上に堆積される。例えば、米国特許第4,340,563号、同第3,692,618号、同第3,802,817号、同第3,338,992号、同第3,341,394号、同第3,502,763号、および同第3,542,615号を参照のこと。本明細書において使用するような用語スパンボンドとは、スパンレース法をも包含することを意味し、該方法では、ウエブを形成するために、上記フィラメントが、水の高速ジェットを用いて絡み合わされる(「水流交絡」として公知)。
上記スパンボンド法により製造した繊維の径は、通常、プロセス条件およびこのような繊維から製造すべき織物に関する所定の最終用途に依存して、約10〜約50μmの範囲にある。例えば、該ポリマーの分子量を高め、または作業温度を減じることは、結果としてより大きな径の繊維を得ることを可能とする。上記冷却空気温度および空気作用による引抜圧力における変化も、繊維径に影響を及ぼす可能性がある。
【0031】
ここに記載する織物は単層であり得、あるいは多層積層体であってもよい。一つの応用は、メルトブローン織物(「M」)およびスパンボンド織物(「S」)から積層体(または「複合体」)を製造することにあり、これは該スパンボンド織物由来の強度および該メルトブローン織物の弾性に係る利点を兼ね備えている。典型的な積層体または複合体は、3層またはそれ以上の層を含み、メルトブローン層(1または複数)が2またはそれ以上のスパンボンド層間に挟まれており、または「SMS」織物系の複合体形状にある。他の組合せの例はSSMMSS、SMMSおよびSMMSS複合体である。また、複合体は、本発明のメルトブローンまたはスパンボンド織物から、有用な物品を製造するための合成または天然の他の材料を用いて製造することができる。
本発明のメルトブローンまたはスパンボンド不織布は、前に記載したようなプロピレンベースのポリマー組成物を含有する1またはそれ以上の弾性層を含むことができ、また更には、該弾性層(1または複数)の一方または両方の側面に配置される、1またはそれ以上の面材料層をも含むことができる。該1または複数の面材料層は、このような層において使用するのに適した、当分野において公知の任意の材料を含むことができる。適当な面材料層用材料の例は、典型的に面材料層として使用される任意の利用可能な材料、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)およびシース-コア構造を有するもの等の複合繊維(bicomponent fibers)を包含する、1種またはそれ以上の上述のポリマーまたは繊維ブレンドを含むが、これらに限定されない。
【0032】
様々な添加剤を、意図した目的に応じて、ここに記載する繊維および織物を製造するのに使用されるポリマー組成物に組入れることができる。このような添加剤は安定剤、酸化防止剤、フィラー、着色剤、成核剤、分散剤、離型剤、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、顔料、加硫または硬化剤、加硫または硬化促進剤、硬化遅延剤、加工助剤、粘着付与剤等を含むことができるが、これらに限定されない。その他の添加剤は、フィラーおよび/または強化材料、例えばカーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカ、シリケート、これらの組合せ等を含むことができる。第一および第二酸化防止剤は、例えばヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、およびホスフェートを含む。成核剤は、例えば安息香酸ナトリウム、タルク、ポリプロピレンホモポリマー、ポリエチレンポリマーを含む。同様に、結晶化速度を改善するために、他の成核剤、例えばチーグラー-ナッタオレフィン生成物または他の高度に結晶性のポリマーを使用することも可能である。その他の添加剤、例えばアクロワックス(Acrowax) C等の分散剤を含めることもできる。スリップ剤は、例えばオレアミドおよびエルカミドを含む。触媒不活性化剤、例えばステアリン酸カルシウム、ヒドロタルサイトおよび酸化カルシウム、および/または当分野において公知の他の酸中和剤も、普通に使用される。
上述の不織製品は、多くの物品、例えば衛生製品において使用でき、該衛生製品は、オムツ、婦人ケア用品、成人失禁用製品を含むが、これらに限定されない。該不織製品は、また医療用品、例えば滅菌ラップ、分離ガウン、手術室ガウン、手術用ガウン、手術用ドレープ、応急手当て用包帯、およびその他の使捨て用商品等において使用することもできる。該不織製品は、弾性保護カバーとしても使用することができる。
【0033】
上記メルトスパン不織組成物は、少なくとも一つの弾性層を有することができ、ここで該弾性層は、上述のようなプロピレンベースのポリマー組成物を含む。該プロピレンベースのポリマー組成物は、第一ポリマー成分および第二ポリマー成分からなるリアクタブレンドであり、ここで該第一ポリマー成分はプロピレンおよびエチレンを含み、かつ12質量%を超え、19質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R1を有し、本明細書において該質量%は、該第一ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準としており、該第二ポリマー成分はプロピレンおよびエチレンを含み、かつ4質量%を超え、10質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R2を有し、ここで該質量%は、該第二ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準としており、また該第一および第二ポリマー成分のエチレン含有率は、以下の式:-1.7143R1 + 29.771 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 37.25を満足する。このようなメルトスパン不織組成物は、所望の釣合のとれた収縮力および永久歪を示すことができる。例えば、該不織組成物は、高い収縮力を示し、同時に低い永久歪を維持することができ、および/または該不織組成物は、より低い坪量において同様なまたは減じられた収縮力を示すことができる。
【0034】
上記メルトスパン不織組成物は、異なるプロピレンベースのポリマー組成物を含む不織組成物に比して、改善され釣合のとれた永久歪および収縮力を有することができる。例えば、上述のプロピレンベースのポリマー組成物を含むメルトスパン不織組成物は、高い収縮率および比較織物に等しいか、あるいはそれよりも低い永久歪を有することができ、ここで該比較織物は、そのプロピレンベースのポリマー組成物が、上記第一または第二ポリマー成分に関して異なるエチレン含有率を有することを除いて、同一であり、かつ同一の方法で作られたものである。幾つかの態様において、該メルトスパン不織組成物は、比較不織組成物の永久歪の1%以内、または0.5%以内、またはこれに等しいかまたはそれよりも低い永久歪、および比較不織組成物よりも大きな、例えば3%を超え、または5%を超え、または10%を超え、または20%を超える収縮力を有し、ここで該比較不織組成物は、(i) 該比較不織組成物が、低いエチレン含有率を有する第一ポリマー成分および同一のエチレン含有率を有する第二ポリマー成分を含むプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製され;(ii) 該比較不織組成物が、高いエチレン含有率を有する第一ポリマー成分および同一のエチレン含有率を有する第二ポリマー成分を含むプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製され;(iii) 該比較不織組成物が、同一のエチレン含有率を有する第一ポリマー成分および低いエチレン含有率を有する第二ポリマー成分を含むプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製され;または(iv) 該比較不織組成物が、同一のエチレン含有率を有する第一ポリマー成分および高いエチレン含有率を有する第二ポリマー成分を含むプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製されたことを除いて、同一のメルトスパン不織組成物である。
【0035】
幾つかの態様において、上述のプロピレンベースのポリマー組成物を含むメルトスパン不織組成物は高い収縮力、例えば比較織物よりも3%を超え、または5%を超え、または10%を超え、または20%を超える収縮力および該比較織物の1%以内、または0.5%以内、またはそれに等しいかまたはそれ未満の永久歪を有することができ、ここで該比較織物は、以下のエチレン含有率を有するプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製された点以外、同一でありかつ同一の方法で作製されたものである:(i) 12質量%未満または19質量%を超えるエチレンという第一ポリマー成分のエチレン含有率R1、ここで該質量%は、該第一ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものであり;および/または(ii) 4質量%未満または10質量%を超えるエチレンという第二ポリマー成分のエチレン含有率R2、ここで該質量%は、該第二ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものである。
ここに記載のプロピレンベースのポリマー組成物から形成された弾性層は、19%未満、または18.5%未満、または18%未満、または17.8%未満、または17.6%未満、または17.4%未満、または17.2%未満、または17%未満の第一サイクル永久歪を有することができる。ここに記載のプロピレンベースのポリマー組成物から形成された弾性層は、約10%未満、または約9.5%未満、または約8.5%未満、または約8%未満の第二サイクル永久歪の値を有することができる。
幾つかの態様において、約68.9kPa(10psi)の風量にて、ダイ-収集装置距離(「DCD」)約40.6cm(16in)を用いて形成した、坪量75gsmの弾性層は、18%未満、または17.8%未満、または17.5%未満の第一サイクル永久歪を有する。幾つかの態様において、約68.9kPa(10psi)の風量にて、約50.8cm(20in)DCDを用いて形成した、坪量75gsmの弾性層は、18%未満、または17.5%未満、または17.3%未満、または17.2%未満の第一サイクル永久歪を有する。幾つかの態様において、約68.9kPa(10psi)の風量にて、約50.8cm(20in)DCDを用いて形成した、坪量75gsmの弾性層は、18%未満、または17.8%未満、または17.6%未満の第一サイクル永久歪を有する。
【0036】
上記弾性層は、約1.3Nを超え、または1.5Nを超え、または約1.6Nを超え、または約1.75Nを超え、または1.8Nを超え、または約1.9Nを超え、または約2.0Nを超える、好ましくは坪量75gsmまたはそれ未満における、第一サイクル収縮力測定値(回復率50%における)および約1.5Nを超え、または約1.6Nを超え、または約1.7Nを超え、または約1.8Nを超え、または約1.9Nを超え、または約2.0Nを超える、第二サイクル収縮力測定値(回復率50%における)を有することができる。
永久歪および回復率50%における収縮力は、以下のようにして決定される:計測値50mm×100mmのテストサンプルを、500mm/分の速度にて伸び率100%まで引伸ばす。伸び率100%において、該サンプルを、同様に500mm/分の速度にてその出発位置に戻される前に1秒間維持する。これらサンプルを30秒間維持し、また二回目の該伸張サイクルを繰返す。このテストは20℃および相対湿度50%にて行われる。永久歪は、該サンプルの元の長さに対する割合として表された、長さにおける増加であり、該サンプルは、各伸張サイクル後、一旦負荷が取り去られた際に、その量だけその元の長さに戻ることができない。例えば、永久歪0%とは、伸長後に該サンプルが完全にその元の長さに戻ることを意味し、一方において永久歪100%とは、該サンプルが、伸長後に全く弾性の回復を示さないことを意味する。回復率50%における収縮力は、伸び率50%においてサンプルによって及ぼされる力であり、伸張率100%からのサンプルの収縮として測定されかつN単位で表される。
【0037】
メルトスパン不織組成物を製造するための上述のプロピレンベースのポリマー組成物の使用は、結果として作業効率および利点を生じ得る。例えば、該プロピレンベースのポリマー組成物は、より高い処理量にて使用することができ、このことは不織組成物の製造業者に対してコスト節減を可能とし、かつ生産効率の達成を可能とする。例えば、不織布製造業者が、より高い処理量で織物を製造できる場合には、彼らは、同一の時間内により多くの織物を製造することができる。上述のプロピレンベースのポリマー組成物の使用は、また上記弾性層の大きさを小さくする(downgausing)ことをも可能とするが、依然良好な弾性特性、例えば高い収縮力を維持している。これらのより低い坪量を有する弾性層は、材料使用の効率化を可能とする。上述のプロピレンベースのポリマー組成物の使用は、同様により低いメルト温度での該不織組成物の形成を可能とし、このことは、結果として該ポリマー材料の分解をより低いものとする。これは、より均一な坪量を有する織物の製造を可能とし、また同様にその製造装置の稼働停止時間を減らす上で役立つ可能性がある。
【実施例】
【0038】
上記議論のより良好な理解を与えるために、以下の非限定的な実施例を提示する。これらの実施例は特定の態様を対象とするものとなる可能性があるが、これらが如何なる特定の点に関しても、本発明を限定するものとみるべきではない。全ての部、割合、および百分率は、特に示されない限り質量基準である。
実施例1
第一ポリマー成分および第二ポリマー成分のリアクタブレンドであるプロピレンベースのポリマー組成物は、上述の如く並列式反応器ブレンドとして製造された。これらのポリマーサンプルは、以下の表1において特定される諸特性を有していた。
R1(質量%)は、上記第一ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とする、該第一ポリマー成分のエチレン含有率である。R2(質量%)は、上記第二ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とする、該第二ポリマー成分のエチレン含有率である。全C2(質量%)は、上記プロピレンベースのポリマー組成物のエチレン含有率であり、ここで該質量%は、該プロピレンベースのポリマー組成物のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とする。ポリスプリット(polysplit)は、該プロピレンベースのポリマー組成物の質量を基準とする、該第二ポリマー成分の質量%である。全MFRは、ASTM D1238により決定した場合、該プロピレンベースのポリマー組成物に関する溶融流量(Melt Flow Rate (MFR))(230℃におけるI2.16)である。
【0039】
【0040】
上記ポリマーサンプルを、多数の不織組成物を作るのに使用した。バイアックス-ファイバーフィルム(Biax-FiberfilmTM)メルトブローンライン[WI州グリーンビル(Greenville, WI)のバイアックス-ファイバーフィルム社(Biax-Fiberfilm Corp.)]を使用してメルトブローン弾性層を形成した。該メルトブローンラインは、3,445〜13,780kPa(500psi〜2,000psi)の範囲の溶融圧力および260〜300℃の範囲の溶融温度にて稼働させ、また約20〜約79孔/cm(50〜200孔/in)の範囲の紡糸口金孔密度を有する一連のダイを用いた。該ラインは押出機、ダイブロックおよび紡糸口金並びに34kPa〜138kPa(5〜20psi)の範囲の空気圧および260〜300℃の範囲の空気温度にて供給を受ける紡糸口金用エアーマニホルドを含む。該ポリマーサンプルは、押出機内で溶融され、また次に該バイアックス-ファイバーフィルムアレイダイを通して、スパンレース織物の拡張可能な構造物上にメルトブローン処理される[50/50PP繊維/PET繊維、30g/m2、ヤコブ-ホルムインダストリーズ社(Jacob-Holm Industries, Inc.)製]。該織物は、メルトブローンポリマーからなる成形繊維の下側またはその前方を通る。該繊維の平均径は、10〜30μmの範囲内にある。該紡糸口金と該通過するスパンレース織物との間の距離(ダイ-収集装置間距離(「DCD」))を、以下に述べられるように様々な織物を形成するように調節した。
織物を製造しつつ、その弾性層のサンプルを集め、かつ金属プレート上で急冷した。MFR測定を該繊維サンプルについて行い、その結果を以下の表2に報告した。
表2において、処理量は、g/孔/分(ghm)単位で表した該紡糸口金を介するポリマーメルトの処理量である。温度は、℃(°F)単位で表した押出機内の該ポリマーメルトの温度である。該MFRは、ASTM D1238によって決定された如き該サンプルの溶融流量(MFR)(230℃におけるI2.16)である。MFR比は、繊維押出物のMFRをペレットのMFRで割ることにより決定される。一般に、該MFR比が高い程、与えられたポリマーの分解度は大きくなる。
【0041】

【0042】
上述の如く、上記ポリマーサンプルを、様々な不織組成物を形成するのに使用した。第一群の織物は、DCD約40.6cm(16in)および風量68.9kPa(10psi)を用い、以下の表3に記載の処理量および坪量にて製造した。得られた織物の諸特性を表3に記載する。図1は、表3に記載の不織組成物のエチレン含有率および永久歪を図解する。図2は、コントロール組成物と比較して、表3の不織組成物に係る収縮力における%変化率を図解する。
表3において、「処理量」は、ghm単位で表した上記紡糸口金を介するポリマーメルトの処理量である。「坪量(Basis WT)」は、gsm単位で表した該不織組成物の坪量(面材料層および弾性層)である。「弾性層坪量(Basis Wt Elastic Layer)」は、該弾性層のみのgsm単位で表した坪量である。「50%最大歪における第一除重(UnLoad)」とは、ニュートン(N)単位で表した第一サイクル中の該不織組成物の収縮力である。「第一永久歪(1st Perm Set)」とは、%単位で表した該不織組成物の第一サイクル永久歪である。「Δrf」とは、該コントロール組成物と比較した、該不織組成物に係る収縮力における変化である。負のΔrfは、該サンプル不織組成物が該コントロール組成物よりも低い収縮力を有していたことを示し、一方正のΔrfは、該サンプル不織組成物が該コントロール組成物よりも高い収縮力を有していたことを示す。
永久歪および回復率50%における収縮力は、以下のようにして決定した:計測値50mm×100mmのテストサンプルを、500mm/分の速度にて伸び率100%まで引伸ばす。伸び率100%において、該サンプルを、同様に500mm/分の速度にてその出発位置に戻される前に1秒間維持する。これらサンプルを30秒間維持し、また二回目の該伸張サイクルを繰返す。このテストは20℃および相対湿度50%にて行われる。永久歪は、該サンプルの元の長さに対する割合として表された、長さにおける増加であり、該サンプルは、各伸張サイクル後、一旦負荷が取り去られた際に、その量だけその元の長さに戻ることができない。回復率50%における収縮力は、伸び率50%においてサンプルによって及ぼされる力であり、伸び率100%からのサンプルの収縮として測定され、かつN単位で表される。
【0043】
【0044】
第二群の不織組成物を、上述のようにして、以下の表4および図3に記載のように、約40.6cm(16in)DCDおよび約103.4kPa(15psi)の風量を用いて製造した。表4における欄は、上記表3に関連して上記したとおりである。表4における「第一負荷損失(1st Load Loss)」は、伸展曲線上の50%最大歪における負荷から除重された50%歪を減じ、該伸展曲線上の50%最大歪における負荷で割ったものであり、%単位で表される。「第一機械ヒステリシス(1st Mech Hyst)」とは、伸展およびリターン曲線(return curve)間の面積を、該伸展曲線の面積で割ったものであり、また%単位で表される。
【0045】
【0046】
不織組成物のもう一つの群を、上述のようにして、以下の表5および図4に記載したように、約40.6cm(16in)DCDおよび約137.8kPa(20psi)の風量を用いて製造した。表5における欄は、上記表3および4に関連して上記した通りである。
【0047】
【0048】
不織組成物のもう一つの群を、以下の表6および図5に記載したように、約50.8cm(20in)DCDおよび約68.9kPa(10psi)の風量を用いて製造した。表6における欄は、上記表3および4に関連して上記した通りである。
【0049】
【0050】
不織組成物のもう一つの群を、以下の表7および図6に記載したように、約50.8cm(20in)DCDおよび約68.9kPa(10psi)の風量を用いて製造した。表7における欄は、上記表3および4に関連して上記した通りである。
【0051】
【0052】
不織組成物のもう一つの群を、以下の表8および図7に記載したように、約50.8cm(20in)DCDおよび約137.8kPa(20psi)の風量を用いて製造した。表6における欄は、上記表3および4に関連して上記した通りである。
【0053】
【0054】
不織組成物のもう一つの群を、以下の表9および図8に記載したように、約61.0cm(24in)DCDおよび約68.9kPa(10psi)の風量を用いて製造した。表6における欄は、上記表3および4に関連して上記した通りである。
【0055】
【0056】
不織組成物のもう一つの群を、以下の表10および図9に記載したように、約61.0cm(24in)DCDおよび約103.4kPa(15psi)の風量を用いて製造した。表6における欄は、上記表3および4に関連して上記した通りである。
【0057】
【0058】
不織組成物のもう一つの群を、以下の表11および図10に記載したように、約61.0cm(24in)DCDおよび約137.8kPa(20psi)の風量を用いて製造した。表6における欄は、上記表3および4に関連して上記した通りである。
【0059】
【0060】
上記実施例1において説明したように、上記第一リアクタ成分および上記第二リアクタ成分のエチレン含有率を調節することにより、不織組成物が製造され、該組成物は、改善された釣合のとれた収縮力および永久歪を有していた。説明されたように、重要なのは上記プロピレンベースのポリマー組成物の総合的な全エチレン含有率だけではなく、該個々のポリマー成分のエチレン含有率も重要である。
例えば、上記エチレン含有率が式:-1.7143R1 + 29.771 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 37.25の範囲内に入る改善された組成帯域において、上記不織組成物は改善された諸特性を有する。上記全エチレン含有率、即ち上記R1エチレン含有率が減じられた際に、弾性特性を維持または改善するためには、上記R2エチレン含有率を高める必要があることが分かった。理論に拘泥することなしに、この組成帯域の左側に対して余りにかけ離れている組成物は、極めて結晶性が高く、従って不十分な永久歪を有していたものと考えられる。同様に、この組成帯域の右側に対して余りにかけ離れている組成物は、十分に結晶性ではなく、従って不十分な収縮力および不十分な永久歪を示したものと考えられる。より一層結晶性の成分またはポリスプリットを増やすことによっては、著しくアモルファスな材料に対して如何なる利点をも与えることができなかった。より結晶性の高い材料に関連して、該ポリスプリットを増大することにより、その収縮力を高めることはできるが、永久歪は、弾性不織布の製造にとって不充分であった。
実施例2
実施例2においては、第一ポリマー成分および第二ポリマー成分からなるリアクタブレンドである、プロピレンベースのポリマー組成物サンプルPを、上述の並列式溶液重合反応器内で製造した。該ポリマーサンプルは、以下の表12において特定された諸特性を有していた。
【0061】
【0062】
実施例1に関連して上述した如く、上記ポリマーサンプルを、様々な坪量にて様々な不織組成物を形成するのに使用した。これらの織物は、約61.0cm(24in)DCDおよび約68.9kPa(10psi)の風量を用い、0.51ghmという処理量にて、および以下の表13に記載の坪量にて製造した。
【0063】
【0064】
図11において図解したように、上記織物の永久歪は、弾性コアの坪量が増大するにつれて減少した。サンプルPを用いて作製した織物と上記コントロールを用いて作製したものとを比較した場合、図11は、改善された永久歪が同一の坪量において結果され、かつ同様な永久歪が低下された坪量において結果されることを示している。同様に、図12においては、該織物の収縮力が坪量の増加と共に増大することが分かる。このような結果は、該コントロールサンプルを用いて作製した織物と比較して、サンプルPを用いて作製した織物については、より良好な収縮力を、同一の坪量において得ることができ、かつ同様な収縮力を、低下された坪量にて得ることができることを示している。
【0065】
本明細書において本発明の組成物の様々な局面を記載してきたが、本発明の更なる特定の態様は、以下の表題を付したパラグラフに示されている態様を包含する:
態様A:第一ポリマー成分および第二ポリマー成分のリアクタブレンドを含むプロピレンベースのポリマー組成物であって、
該第一ポリマー成分はプロピレンおよびエチレンを含み、かつ12質量%を超え19質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R1を有し、ここで該質量%は、該第一ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものであり、
該第二ポリマー成分はプロピレンおよびエチレンを含み、かつ4質量%を超え10質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R2を有し、ここで該質量%は、該第二ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものであり、および
該第一および第二ポリマー成分のエチレン含有率は、以下の式を満足する:
-1.7143R1 + 29.771 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 37.25
態様B:態様Aのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該第一および第二ポリマー成分のエチレン含有率は、以下の式を満足する:
-1.7143R1 + 30 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 37
態様C:態様AまたはBのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該第一および第二ポリマー成分のエチレン含有率は、以下の式を満足する:
-1.7143R1 + 31 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 36
態様D:態様A〜Cの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該第一および第二ポリマー成分のエチレン含有率は、以下の式を満足する:
-1.7143R1 + 32 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 35
【0066】
態様E:態様A〜Dの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該プロピレンベースのポリマー組成物のエチレン含有率は、5〜22質量%エチレンであり、ここで該質量%は、該プロピレンベースのポリマー組成物のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものである。
態様F:態様A〜Eの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該プロピレンベースのポリマー組成物のエチレン含有率は、12〜18質量%エチレンであり、ここで該質量%は、該プロピレンベースのポリマー組成物のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものである。
態様G:態様A〜Fの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該プロピレンベースのポリマー組成物のエチレン含有率は、14〜17質量%エチレンであり、ここで該質量%は、該プロピレンベースのポリマー組成物のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものである。
態様H:態様A〜Gの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該第一ポリマー成分は、12.5質量%を超え、17質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R1を有する。
態様I:態様A〜Hの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該第一ポリマー成分は、13〜16質量%エチレンというエチレン含有率R1を有する。
態様J:態様A〜Iの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該第二ポリマー成分は、6質量%を超え、9.7質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R2を有する。
【0067】
態様K:態様A〜Jの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該第二ポリマー成分は、7質量%を超え、9.4質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R2を有する。
態様L:態様A〜Kの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該プロピレンベースのポリマー組成物のMFRは、30g/10分(230℃、2.16 kg)に等しいかまたはこれを超える。
態様M:態様A〜Lの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該プロピレンベースのポリマー組成物のMFRは、35g/10分(230℃、2.16 kg)に等しいかまたはこれを超える。
態様N:態様A〜Mの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該プロピレンベースのポリマー組成物は、該プロピレンベースのポリマー組成物の質量を基準として、3〜25質量%の該第二ポリマー成分と75〜97質量%の該第一ポリマー成分とを含む。
態様O:態様A〜Nの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該プロピレンベースのポリマー組成物は、該プロピレンベースのポリマー組成物の質量を基準として、5〜20質量%の該第二ポリマー成分と80〜95質量%の該第一ポリマー成分とを含む。
態様P:態様A〜Oの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該プロピレンベースのポリマー組成物は、該プロピレンベースのポリマー組成物の質量を基準として、7〜18質量%の該第二ポリマー成分と82〜93質量%の該第一ポリマー成分とを含む。
態様Q:態様A〜Pの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該プロピレンベースのポリマー組成物は、該プロピレンベースのポリマー組成物の質量を基準として、10〜15質量%の該第二ポリマー成分と85〜90質量%の該第一ポリマー成分とを含む。
【0068】
態様R:態様A〜Qの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該プロピレンベースのポリマー組成物は、約90%を超えるトライアドタクチシティーを有する。
態様S:態様A〜Rの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該プロピレンベースのポリマー組成物は、約50J/g未満の融解熱を有する。
態様T:態様A〜Sの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該プロピレンベースのポリマー組成物は、約100℃に等しいかまたはそれ未満の溶融温度を有する。
態様U:態様A〜Tの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物であって、該プロピレンベースのポリマー組成物は、単一のDSC融解ピークを有する。
態様Z:少なくとも一層の弾性層を含むメルトスパン不織組成物であって、該弾性層は、態様A〜Uの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物を含む。
態様AA:少なくとも一層の弾性層を含むメルトスパン不織組成物であって、該弾性層は、プロピレンベースのポリマー組成物を含み、
該プロピレンベースのポリマー組成物は、第一ポリマー成分および第二ポリマー成分のリアクタブレンドであり、
該第一ポリマー成分はプロピレンおよびエチレンを含み、かつ12質量%を超え19質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R1を有し、ここで該質量%は、該第一ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものであり、
該第二ポリマー成分はプロピレンおよびエチレンを含み、かつ4質量%を超え10質量%未満までのエチレンというエチレン含有率R2を有し、ここで該質量%は、該第二ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準とするものであり、および
該第一および第二ポリマー成分のエチレン含有率は、以下の式を満足する:
-1.7143R1 + 29.771 ≦ R2 ≦ -1.9167R1 + 37.25
【0069】
態様AB:態様ZまたはAAのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物は、比較不織組成物の永久歪の1%以内、または0.5%以内、またはこれに等しいかまたはそれ未満の永久歪および比較不織組成物の収縮力に等しいかまたはこれを超える収縮力を有し、ここで該比較不織組成物は、該比較不織組成物が、低いエチレン含有率を有する第一ポリマー成分および同一のエチレン含有率を有する第二ポリマー成分を含むプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製されたことを除いて、該メルトスパン不織組成物と同一である。
態様AC:態様Z〜ABの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物は、比較不織組成物の永久歪の1%以内、または0.5%以内、またはこれに等しいかまたはそれ未満の永久歪および比較不織組成物の収縮力に等しいかまたはこれを超える収縮力を有し、ここで該比較不織組成物は、該比較不織組成物が、高いエチレン含有率を有する第一ポリマー成分および同一のエチレン含有率を有する第二ポリマー成分を含むプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製されたことを除いて、該メルトスパン不織組成物と同一である。
態様AD:態様Z〜ACの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物は、比較不織組成物の永久歪の1%以内、または0.5%以内、またはこれに等しいかまたはそれ未満の永久歪および比較不織組成物の収縮力に等しいかまたはこれを超える収縮力を有し、ここで該比較不織組成物は、該比較不織組成物が、同一のエチレン含有率を有する第一ポリマー成分および低いエチレン含有率を有する第二ポリマー成分を含むプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製されたことを除いて、該メルトスパン不織組成物と同一である。
【0070】
態様AE:態様Z〜ADの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物は、比較不織組成物の永久歪の1%以内、または0.5%以内、またはこれに等しいかまたはそれ未満の永久歪および比較不織組成物の収縮力に等しいかまたはこれを超える収縮力を有し、ここで該比較不織組成物は、該比較不織組成物が、同一のエチレン含有率を有する第一ポリマー成分および高いエチレン含有率を有する第二ポリマー成分を含むプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製されたことを除いて、該メルトスパン不織組成物と同一である。
態様AF:態様Z〜AEの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物は、比較不織組成物の永久歪の1%以内、または0.5%以内、またはこれに等しいかまたはそれ未満の永久歪および比較不織組成物の収縮力よりも大きな収縮力を有し、該比較不織組成物は、(i) 該比較不織組成物が、低いエチレン含有率を有する第一ポリマー成分および同一のエチレン含有率を有する第二ポリマー成分を含むプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製され;(ii) 該比較不織組成物が、高いエチレン含有率を有する第一ポリマー成分および同一のエチレン含有率を有する第二ポリマー成分を含むプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製され;(iii) 該比較不織組成物が、同一のエチレン含有率を有する第一ポリマー成分および低いエチレン含有率を有する第二ポリマー成分を含むプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製され;または(iv) 該比較不織組成物が、同一のエチレン含有率を有する第一ポリマー成分および高いエチレン含有率を有する第二ポリマー成分を含むプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製された点を除き、該メルトスパン不織組成物と同一である。
【0071】
態様AG:態様Z〜AFの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物は、比較不織組成物の収縮力に等しいかまたはそれを超える収縮力および比較不織組成物の永久歪の1%以内、または0.5%以内、またはこれに等しいかまたはそれ未満の永久歪を有し、ここで該比較不織組成物は、該比較不織組成物が以下のエチレン含有率を有するプロピレンベースのポリマー組成物を用いて作製された点以外、同一である:(i) 12質量%未満または19質量%を超えるエチレンという第一ポリマー成分のエチレン含有率R1、ここで該質量%は、該第一ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準としており;および/または(ii) 4質量%未満または10質量%を超えるエチレンという第二ポリマー成分のエチレン含有率R2、ここで質量%は、該第二ポリマー成分のプロピレン-由来およびエチレン-由来の単位の全質量を基準としている。
態様AH:態様AB〜AGの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物の収縮力が、上記比較不織組成物の収縮力よりも3%大きく、または5%大きく、または10%大きく、または20%大きい。
態様AI:態様Z〜AHの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物は、19%未満の第一サイクル永久歪を有する。
態様AJ:態様Z〜AIの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物は、18%未満の第一サイクル永久歪を有する。
態様AK:態様Z〜AJの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物は、約10%に等しいかまたはそれ未満の第二サイクル永久歪を有する。
態様AL:態様Z〜AJの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物は、約1.3Nを超える、50%回復率における第一サイクル収縮力を有する。
【0072】
態様AM:態様Z〜ALの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物は、約1.5Nを超える、50%回復率における第一サイクル収縮力を有する。
態様AN:態様Z〜AMの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物は、約1.5Nを超える、50%回復率における第二サイクル収縮力を有する。
態様AO:態様Z〜ANの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該メルトスパン不織組成物は、更に1層またはそれ以上の面材料層を含む。
態様AP:態様AOのメルトスパン不織組成物であって、該面材料層は、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレートの内の少なくとも一つの繊維を含む。
態様AQ:態様AOまたはAPのメルトスパン不織組成物であって、該面材料層は、メルトブローン、スパンボンド、スパンレース、またはカーディングされている。
態様AR:態様AO〜AQの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該面材料層は、拡張可能な面材料層である。
態様AS:態様AO〜ARの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該弾性層はメルトブローン層であり、かつ該面材料層の少なくとも一層は、スパンボンド層である。
態様AT:態様AO〜ASの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該弾性層は、2つのスパンボンド面材料層間に配置されている。
態様AU:態様ATの何れか一つのメルトスパン不織組成物であって、該スパンボンド層の少なくとも一つは、インパクトコポリマー(impact copolymer)を含む。
態様AV:態様Z〜AUの何れか一つのメルトスパン不織組成物を含む物品。
態様AW:態様AVの物品であって、該物品は、オムツ、婦人ケア用品、成人失禁用製品、滅菌ラップ、分離ガウン、手術室ガウン、手術用ガウン、手術用ドレープ、応急手当て用包帯、または弾性保護カバーである。
【0073】
態様BA:態様Z〜AWの何れか一つのメルトスパン不織組成物の製造方法であって、該方法は、態様A〜Uの何れか一つのプロピレンベースのポリマー組成物を含有する溶融ポリマー組成物を形成する工程、該プロピレンベースのポリマーを含む繊維を形成する工程、および該繊維から弾性層を形成する工程を含む。
態様BB:態様BAの方法であって、該方法は、更に該弾性層を面材料層に配置する工程をも含む。
態様BC:態様BBの方法であって、該弾性層の繊維は、該面材料層上に直接形成される。
態様BD:態様BA〜BCの何れか一つの方法であって、該繊維は、0.3g/孔/分(「ghm」)を超える処理量にて、メルトブローン法を利用して形成される。
態様BE:態様BA〜BDの何れか一つの方法であって、該繊維は、20684kPa(約3000psi)に等しいかまたはそれ未満のダイ圧力にて、メルトブローン法を利用して形成される。
態様BF:態様BA〜BEの何れか一つの方法であって、該溶融ポリマー組成物の溶融温度は、302℃(約575°F)である。
【0074】
幾つかの態様および特徴を、一連の数値的な上限および一連の数値的な下限を用いて説明した。特に示されない限り、任意の下限から任意の上限までの範囲が意図されているものと理解すべきである。幾つかの下限、上限および範囲は、添付した1またはそれ以上の請求項に見られる。全ての数値的値は、該表示された値の「約」または「およそ」の値であり、また当業者により予想されるであろう実験誤差および変動を考慮している。
本明細書において使用する場合、「実質的にない」および「実質的に含まない」という表現は、対象とする項目が、あらゆる量において意図的には使用または添加されていないが、極めて少量で存在でき、環境またはプロセス条件に起因する不純物として存在する。
請求項において使用されている用語が上で定義されていない限り、関連技術における人々が、少なくとも一つの印刷された刊行物または発行された特許において示されたものとして当該用語を与えた、最も広い定義を付与すべきである。その上、本件出願において引用された全ての特許、テスト手順、およびその他の書類を、このような組入れが許容されるあらゆる管轄に対して、このような書類が本件出願と不一致でない限り、言及により完全に組入れる。
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