特許第6169887号(P6169887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169887
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】透かし柄地を合わせた多重織物
(51)【国際特許分類】
   D03D 11/00 20060101AFI20170713BHJP
   D03D 9/00 20060101ALI20170713BHJP
   D03D 27/06 20060101ALI20170713BHJP
   D03D 27/08 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   D03D11/00 A
   D03D9/00
   D03D27/06
   D03D27/08
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-99688(P2013-99688)
(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公開番号】特開2014-211003(P2014-211003A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年4月13日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】513115040
【氏名又は名称】村上 節代
(72)【発明者】
【氏名】村上 節代
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−020942(JP,A)
【文献】 特開2006−299442(JP,A)
【文献】 特開2013−237940(JP,A)
【文献】 特開2007−303008(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3165891(JP,U)
【文献】 実開昭59−069972(JP,U)
【文献】 米国特許第04516609(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 11/00
D03D 9/00
D03D 27/06
D03D 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイル経糸と地経糸と透かし柄地用経糸とを任意の本数で組み合わせたものを繰り返し縦方向に向けて配列し、その内の任意個所においてタオル地用緯糸と透かし柄地用緯糸を夫々、横方向に向けて任意本数ずつ交互に織り込みタオル地と透かし柄地とが重合状態で織成され、この時の透かし柄地の隙間部分にあっては、任意個所の透かし柄地用の経糸か緯糸か両者をタオル地内に織り込まれてある。以上のように任意形状で構成された多重織の部分と、なお且つ、同時に該多重織部分と隣接した多重織部分以外のパイル経糸と地経糸と透かし柄地用経糸は、上記の多重織部分に使用した両者の緯糸を兼用し、該両者の緯糸の合計が任意本数の単位で1個のパイルを形成するように織成された一重織のタオル地部分とが組み合わされている、透かし柄地を合わせた多重織物。
【請求項2】
パイル経糸と地経糸と透かし柄地用経糸とを任意の本数で組み合わせたものを繰り返し縦方向に向けて配列したものに、タオル地用緯糸と透かし柄地用緯糸を夫々、横方向に向けて任意本数ずつ交互に織り込みタオル地と透かし柄地が重合状態で織成され、この時の透かし柄地の隙間部分にあっては、任意個所の透かし柄地用の経糸か緯糸か、両者をタオル地内に織り込まれてある。以上のような横一直線で帯状の多重織部分が織成されて、なお且つ、その前方又は後方には、上記のパイル経糸と地経糸と透かし柄地用経糸にタオル地用緯糸を3本(又は4本)で1個のパイルが形成する一重織のタオル地が織成されてある、透かし柄地を合わせた多重織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性を持つタオル(又は布帛)地部分と、該タオル(又は布帛)地に装飾性を有するレースのような透かし柄地を重ねた多重織部分とが同時に隣接して織成された実用的で高級感のある織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタオル織物や布帛等においては、レースのような隙間部分を作るには予め、企画案に基づいて縦方向に配列された全経糸の内、隙間部分として決定された所定位置の経糸を除去して縦一直線状の隙間部分を確保する。そして、横方向に対しての隙間部分は任意の個所に想定する長さ分の緯糸の挿入本数を織り込まないように空織すれば、横一直線状の隙間部分ができる。この様に隙間部は縦と横の直線状の形状に限定されるので、レース柄のような色々な図形の表現はできずレース様の織物は製品化されなかった。
【0003】
その為、直接レース生地を適当な大きさに裁断してタオル(又は布帛)地等に縫製し、高級感を持たせた製品が提供されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のレース生地をタオル地や布帛に縫い付けた製品においては、縫製工程があり、時間と手間を要し、レース代も含めコスト高となる。また、レース柄は既成のレース生地より選択するのでおのずと限定があり、企画する思い通りの柄の表現は制限される。また、洗濯した場合レース部分にシワ等が生じて美観を損ねるものであった。また、使用にあたりレース生地は特有のゴツゴツとした固い感触があるので、顔などを拭く場合には顔にあたると不快感が生じて実用向きではなかった。
【0005】
本発明は、このような従来のレース生地を縫い付ける縫製工程とその製品により生じる問題を解決しようとするものであり、なお且つ、レースの特長を付与した高級感のあるタオル織物や布帛製品を織成織物によって実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為に第一の課題解決手段として、従来のレース生地を直接タオル織物に縫製して高級化をはかっていた方法を廃止する事で、縫製工程とその製品による問題点を解消するものである。
【0007】
そして、上述の廃止されたその代替となる本発明の織成織物が本来の解決手段となり、次の構成を有する。
【0008】
本願請求項1の発明は、パイル経糸と地経糸と透かし柄地用経糸とを任意の本数で組み合わせたものを繰り返し縦方向に向けて配列し、その内の任意個所において、タオル地用緯糸と透かし柄地用緯糸を夫々、横方向に向けて任意本数ずつ交互に織り込みタオル地と透かし柄地とが重合状態の多重織で構成され、該透かし柄地用の現出側の経糸と緯糸は透かし柄地としてレース柄の全容を表わし、レース柄の隙間の中空表現は該中空部分に位置する透かし柄地用の経糸か、緯糸か、両者を潜伏側の糸としてもう一方のタオル地内に織り込み存続するので、重合状態の結着や、透かし柄地の織組織も強固となり、表現が維持できた。
この様に、任意形状で構成された多重織の部分と、なお且つ、同時にこれと隣接した多重織部分以外のパイル経糸と地経糸と透かし柄地用経糸は、上記の多重織部分に使用した両者の緯糸を兼用し、該緯糸の合計が任意本数の単位で例えば6本又は8本で1個のパイルを形成するように織成された一重織のタオル地部分とが組み合わされている。該多重部分は一重織へと継続し、一体化して織成されるので多重部分の縁辺の結着は強固で、織物全体も厚地となり織組織も強化できた。また、タオル地も経、緯糸密度が増してパイル抜けの抑制作用が強く働く。
【0009】
本願請求項2の発明は、上述の請求項1の重合された多重織部分が、横一直線の帯状で織成され、その前方又は、後方には、該帯状の多重織に使用の継続した全経糸にタオル地用緯糸を3本又は4本で1個のパイルを形成するように一重織のタオル地を組み合わせ織成してあるので、経糸密度は通常のパイル地より増加してあり、パイル抜けの抑制作用は高まる。そして、請求項1と比べ、レース柄の表現は帯状で少なく押えられて、タオル地も緯糸3本又は4本で1パイル形成であるので生産性は向上し、その分価格を抑えた製品が提供できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の織成織物により、レース地を縫い付ける工程が廃止できるので、生産性は向上し、コストも削減できた。
また、レース柄は透かし柄地の多重織で織成するので自在の表現が可能となった。そして、透かし柄地部分は洗濯しても美観は保たれ、触感も気にならない。
【0011】
上述の多重織の緯糸は兼用されて、経糸は継続して一重織のタオル地内に織り込まれてあるので、重合部分の縁辺の結着は強固となり、該タオル地は高密度となりパイル抜けの抑制効果がある。
そして、透かし柄地の隙間部の経・緯糸はもう一方の重なり合ったタオル地内に織り込まれるので、隙間部分の空間表現と結着や織組織は安定して維持できる。
【0012】
上述の多重織部分が横一直線の帯状で、織範囲が少なく、また組み合わせのタオル地も緯糸3本又は、4本で1パイル形成であるので生産効率は良く、高級志向の製品に拘らず、量産型の低価格製品に準じることができる。
【0013】
また、吸水性や保温性等の機能性を持つタオル地と、涼感や優雅な装飾性を有する透かし柄地とを一体化して高級感と実用性を兼備えた織物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】 本発明の実施形態を示す、透かし柄地側より見た斜視図である。
図2】 (ア)、(イ)は夫々、本発明の実施形態を示す、織前より見た筬通しの要部断面図である。
図3】 同、多重織部分の縦断面図である。
図4図3の変形例の縦断面図である。
図5】 本発明の実施形態を示す、多重織部分と一重織のタオル地(又は隙間)部分の縦断面図である。
図6図2の(ア)と図5に示す組織図。
図7図5の変形例の縦断面図である。
図8図5の変形例の縦断面図である。
図9図5の変形例で4ピック方式の縦断面図である。
図10】 本発明の実施形態を示す、帯状の透かし柄地より見た斜視図である。
図11】 同、織前より見た筬通しの要部断面図。
図12】 同、多重織部分と一重織のベース地部分の縦断面図である。
【発明を実施する為の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図1〜12に基づいて説明する。
【0016】
図2の(ア)に示す、本願の透かし柄地を合わせた多重織物の織り仕掛けから説明すると、(織物の両端部を始末する耳部分の地経糸は省略する)経通しされた筬13を織前から見て右端より1番目の筬目14には、パイル経糸1を1本と地経糸2を1本と透かし柄地用経糸3の1本が経通しされ、2番目の筬目14Aにも同様に、パイル経糸1Aを1本と地経糸2Aを1本と透かし柄地用経糸3Aの1本が通してあり、これら2つの筬目14・14A分で1完全となり、これらが繰り返し配列されて織り仕掛けとなる。
【0017】
続いて図1図3に示す、緯糸3本で1個のパイルを形成する3ピック方式による両面パイルであって、任意のパイル経糸1・1Aと地経糸2・2Aにタオル地用緯糸5を1本、2本、3本目と交錯させる。この時、織機のパイル織・地織の転換装置を紋紙の指令により、パイル織にして両面パイルのタオル地8を織成し、次に地織指令にして地織とし、透かし柄地用経糸3・3Aに透かし柄地用緯糸6を1本、2本、3本目と交錯し、透かし柄地9を織成する。そして、これらを交互に繰り返すことにより、タオル地8と透かし柄地9とが重合状態の多重織12部分が織成できる。
なお、タオル地8と透かし柄地9は交互に織成するが、その交替時に筬間(筬打ち時に緯糸を充分に寄せきれずにできた隙間のこと)が生じるので、その透かし柄地9が織成される時には並行して織機の巻き取り停止装置を作動させて、緯密度を高めて筬間を防止する。
【0018】
そして、該透かし柄地の隙間11部分の中空の表現は、該中空に位置する任意の透かし柄地用経糸3・3Aと緯糸6を表面から潜伏する様にもう一方のタオル地8内に交錯する。
上記の潜伏させる経糸3・3Aは、同じ筬目14・14A内に通るタオル地を構成する地経糸2・2Aの織組織に同調させる。この同調させる開始タイミングは図5に示す。次に織成される地経糸2・2Aの緯糸5が3本目の織組織より行ない、直後にタオル地用緯糸5の3本目が織り込まれるとファーストピックで筬打ちされて1個のパイルが形成される。そして、この同位置の緯糸5の3本目内に連続して同じく潜伏させる透かし柄地用緯糸6を1本、2本、3本目と連続して、地織で巻き取りを停止にして交錯させる。次にパイル経糸1・1Aと地経糸2・2Aに透かし柄地用経糸3・3Aを加えたものに、タオル地用緯糸5を1本、2本、3本目と交錯してパイル織のタオル地8(一重織)部分を織成する。このようにして、潜伏させたい任意の透かし柄地用の経・緯糸をタオル地8内に交錯させる。(この時のタオル地8は一重織となる。)また、図5に示すように、この時の透かし柄地の隙間11からタオル地8のパイルの経糸1が現出して見えるのが気になる場合は、パイル経糸1をパイル経糸1Aの織組織に同調させればよい。
そして、該潜伏させた透かし柄地用の経・緯糸を元の透かし柄地9の表面に移動させるタイミングは、上述の開始タイミングと同じでよい。この隙間11部分の一重織のタオル地8と後述の一重織のタオル地8(緯糸5・6を兼用した)の織成方法は、基本的には共通するものである。
【0019】
以上のように図1図5図6に示す、任意形状で構成された多重織12部分と、なお且つ、同時にこれと隣接する多重織12部分以外のパイル経糸1・1Aと地経糸2・2Aと透かし柄地用経糸3・3Aは、上記の多重織12部分に使用した両者の緯糸5・6を兼用するので、その内の透かし柄地用の緯糸6の3本は、該透かし柄地を織るすぐ前にパイルが形成されたタオル地8の緯糸3本目の同組織内に織り込み、続いて次にくるタオル地用織組織にタオル地用緯糸5を1本、2本、3本目と織り込み、ファーストピックで筬打ちして1個のパイルを形成し、これらを繰り返し織成された一重織のタオル地8部分とが組み合わされている。
この時の一重織のタオル地8の透かし柄地用経糸3・3Aは、同じ筬目14・14Aに通る地経糸2・2Aの織組織と同調して織成するので、上述の透かし柄地の隙間11部分と基本的には同じような織組織となる、
【0020】
また、図4図3の変形例を示すものであり、他の実施例として、パイル経糸1・1Aと地経糸2・2Aにタオル地用緯糸5を1本、2本、3本目と交錯させて上述と同様にパイル織でタオル地8を織成し、次に地織でパイル経糸1・1Aと地経糸2・2Aに透かし柄地用緯糸6の1本目だけをタオル地8に潜伏するように交錯し、パイル逃げを押えると共に、透かし柄地の緯糸密度を1本分減じて隙間11を作る働きもする。そして、次の該緯糸6の2本目と3本目は透かし柄地用経糸3・3Aとだけ交錯させて透かし柄地9を織成する。そして、これらを交互に繰り返し多重織12部分が織成できる。ですから、透かし柄地の隙間11を広くするには該隙間11の中空に位置する透かし柄地緯糸6を1本目だけでなく、次の2本目、3本目とタオル地8内に潜伏するように交錯すればよい。また、これを繰り返すことでなお、広い隙間がとれる。
【0021】
また、図7に示す、他の実施例として任意の個所の潜伏させたい透かし柄地用緯糸6は、該緯糸6のすぐ前のタオル地8の緯糸3本目の同組織内において、該緯糸6の1本目は、地経糸2とパイル経糸1Aの間に、2本目は地経糸2Aとパイル経糸1との間に、3本目は地経糸2と2Aの間に、又は1本目と同じように織り込むこともできる。また、後述する一重織のタオル地8の緯糸6の3本を織り込む他の実施例にもなり、このように応用する場合は、筬打ち力の弱い織機に適している。
【0022】
また、図2の(イ)に示す他の実施例として、織前から見て右端より1番目の筬目14にはパイル経糸1を1本と地経糸2を1本が、2番目には透かし柄地用経糸3を1本と地経糸2Aを1本(又は、この逆でもよい)が、3番目にはパイル経糸1Aを1本と地経糸2Bを1本が、4番目には透かし柄地用経糸3Aを1本と地経糸2Cを1本(又はこの逆でも可)が通り、以上の4つの筬目14・14A・14B・14Cで一完全をなし、これらが繰り返されて本願の織仕掛けとなる。そして、上述の3ピック方式と同様に、パイル経糸1・1Aと地経糸2・2A・2B・2Cにタオル地用緯糸5を1本、2本、3本目と交錯させてパイル織のタオル地8を織成し、次に地織で透かし柄地用経糸3・3Aに透かし柄地用緯糸6を1本、2本、3本目と交錯し、この時、巻き取りも停止して透かし柄地9を織成し、これらを交互に繰り返して、タオル地8と透かし柄地9とが重合した多重織12部分が織成できる。
【0023】
そして、透かし柄地の隙間11部分にあっては、その隙間11の中空に位置する任意の透かし柄地用経糸3・3Aは、同じ筬目14A・14C内に通る地経糸2A・2Cの織組織に同調させる。この同調させる始まりは次に織成される地経糸2・2A・2B・2Cの緯糸3本目の織組織から行なう。また、この同位置には上述と同様に潜伏させたい任意の透かし柄地用緯糸6も織り込み、これら両者の形態を図8に示す。以上のように図1図8に示した上述と同様に任意形状の多重織12部分と、なお且つ同時にこれと隣接する多重織12部分以外のパイル経糸1・1Aと地経糸2・2A・2B・2Cと透かし柄地用経糸3・3Aは、上記の多重織12部分に使用した両者の緯糸5・6を兼用して織成された一重織の片面パイルのタオル地8部分とが組み合わされている。
そして、図2の(イ)に示す、同じ筬目14A・14C内に位置する透かし柄地用経糸3・3Aと地経糸2A・2Cは、任意の個所で役目を交替させたり、透かし柄地用経糸3・3Aが地経糸2A・2Cに同調して、透かし柄地用経糸3・3Aは0本となったり、この逆の透かし柄地用経糸3・3Aに地経糸2A・2Cが同調して、透かし柄地用経糸3・3Aは2本となる等して、透かし柄地の柄や隙間の表現に幅を持たせることができる。(図示しない)
【0024】
また、図2の(ア)に基づいて、図9に示す他の実施例として、パイル経糸1・1Aと地経糸2・2Aにタオル地用緯糸5を1本、2本、3本、4本目と交錯させて1パイル形成する4ピック方式で上述と同様にパイル織で片面パイルのタオル地8を織成し、次に上述と同様の地織で透かし柄地用経糸3・3Aに透かし柄地用緯糸6を1本、2本、3本、4本目と交錯し、この時、巻き取りも停止して透かし柄地9を該タオル地8のパイルが現出していない面側に重なるようにこれらを交互に繰り返して織成し、多重織12部分ができる。この時の透かし柄地の隙間11部分の中空に位置する任意の透かし柄地用経糸3・3Aと緯糸6をもう一方のタオル地内に交錯し、潜伏させる。そして、上述と同様に並行して多重織12部分に使用した両者の緯糸5・6を兼用してパイル経糸1・1Aと地経糸2・2Aと透かし柄地用経糸3・3Aに交錯し、織成した一重織の片面パイルのタオル地8の織組織は、上記の隙間11部分の潜伏する経糸3・3Aと緯糸6の両者の織組織にも共用できる。この4ピック方式の場合は、透かし柄地9の密度を増したい時に応用する。そして、多重織12部分と一重織のタオル地8部分が組み合わされている。
【0025】
また、図2の(ア)、図5図6に基づく次の図10に示す実施例として、上述と同様にパイル織でパイル経糸1・1Aと地経糸2・2Aに3ピック方式でタオル地用緯糸5の3本を交錯させて1パイル形成するタオル地8を織成し、次に地織で巻き取りも停止させて透かし柄地用経糸3・3Aに透かし柄地用緯糸6を交錯させて透かし柄地9を織成し、これらを交互に繰り返してタオル地8と透かし柄地9とが重合状態の横一直線上で織前と平行した帯状の多重織12部分が織成される。この時の透かし柄地の隙間11にあっては、該隙間11の中空に位置する任意の透かし柄地用経糸3・3Aは、同じ筬目14・14A内に通る地経糸2・2Aの織組織に同調させる。この同調の開始は、次に織成される地経糸2・2Aの緯糸3本目の織組織から行なう。また、この同位置には上述と同様に潜伏させたい任意の透かし柄地用緯糸6も織り込む。そして、帯状の多重織12部分の領域より前方に、パイル織で織成した通常のタオル地を組み合わせたものである。
この為、生産効率の良い高級化製品を提供できる。
【0026】
また、図12に示す実施例は、タオル織機による通常のタオルの織使用で実施する。図11は、通常のパイル経糸の呼称を透かし柄地用経糸3・3Aに、地経糸の呼称をベース地用経糸4・4Aに置き換えたものである。(前述の通り、耳部は省略している。)経通しされた筬13を織前から見て右端から1番目の筬目14には、透かし柄地用経糸3の1本とベース地用経糸4の1本が経通しされ、2番目の筬目14Aには透かし柄地用経糸3Aを1本とベース地用経糸4Aの1本が経通しされてあり、これら2つの筬目14・14A分で1完全となり、これらが繰り返してある。そして、前述と同様に地織に転換させて、また、巻き取りも停止させて該ベース地用経糸4・4Aにベース地用緯糸7の1本を交錯し、次に透かし柄地用経糸3・3Aに透かし柄地用緯糸6の1本を交錯し、これらを交互に繰り返すことでベース地10と透かし柄地9Aが重合状態の多重織が織成される。
【0027】
そして、透かし柄地9Aの隙間部分の中空表現は、該中空部分に位置する透かし柄地用経糸3・3Aと緯糸6を潜伏するように、もう一方のベース地10内に織り込む。この時の透かし柄地用経糸3・3Aは、夫々、同筬目14・14A内のベース地用経糸4・4Aに同調させる。なお、同調させるタイミングは次にくるベース地用の織組織に合わせて、ベース地用緯糸7を1本受け入れ、続いて同様に潜伏させたい透かし柄地用緯糸6を1本織り込む。そして、潜伏した透かし柄地用経糸3・3Aを元の透かし柄地に戻すタイミングは、任意で次に織成しようとする透かし柄地用緯糸6と交錯できる織組織に同調させる。
以上の多重織12A部分と、なお且つ、これと隣接した多重織12A部分以外のベース地用経糸4・4Aと透かし柄地用経糸3・3Aは、上記の多重織部分に使用した両者の緯糸7・6が兼用されている。この場合のベース地用経糸4・4Aと透かし柄地用経糸3・3Aの織組織は、4・3は浮いて、4A・3Aは沈んだ位置に両者の緯糸7の1本と6の1本が交錯されて、次に4・3は沈んで、4A・3Aは浮いた位置にも同様に両者の緯糸7の1本と6の1本が交錯される。これらを交互に繰り返して一重織のベース地10が織成されて、上記の多重織部分と組み合わされている。
ですから、レース柄様の高級感を加味した衣料用等に適した薄地の生地が提供できる。
【符号の説明】
【0028】
1、1A パイル経糸
2、2A、2B、2C 地経糸
3、3A 透かし柄地用経糸
4、4A ベース地用経糸
5 タオル地用緯糸
6 透かし柄地用緯糸
7 ベース地用緯糸
8 タオル地
9、9A 透かし柄地
10 ベース地
11、11A 隙間
12、12A 多重織
13 筬
14、14A、14B、14C 筬目
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12