(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明が適用された異方性導電フィルムの製造方法の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0020】
本発明が適用された異方性導電フィルム1の製造方法の一実施形態では、
図1及び
図2に示すように、(1)同方向に連続した複数の溝が形成されたシート2の上記溝に、導電性粒子3を埋め込み、導電性粒子3を配列し(
図1(a)(b))、(2)上記溝が形成された側のシート2表面に、延伸可能なベースフィルム6上に光又は熱硬化性の樹脂層5が形成された第1の樹脂フィルム4の樹脂層5をラミネートし(
図2(a))、(3)第1の樹脂フィルム4の樹脂層5に導電性粒子3を転着させ(
図2(b))、(4)導電性粒子3が樹脂層5に転着した第1の樹脂フィルム4を、導電性粒子3の配列方向と直交する方向を除く
図2(c)中矢印A方向に1軸延伸し(
図2(c))、(5)更に導電性粒子3が配置された第1の樹脂フィルム4の樹脂層5に、ベースフィルム9上に光又は熱硬化性の樹脂層8が形成された第2の樹脂フィルム7をラミネートする工程を有する(
図2(d))。
【0021】
[シート]
同方向に連続した複数の溝が形成されたシート2は、
図3に示すように、例えば所定の溝10が形成された樹脂シートであり、例えばペレットを溶融させた状態で溝パターンが形成された金型に流し込み、冷やして固めることで所定の溝10を転写させる方法により形成することができる。あるいは、シート2は、溝パターンが形成された金型を樹脂シートの軟化点以上の温度に加熱し、当該金型に樹脂シートを押し付けることで転写する方法により形成することができる。
【0022】
シート2を構成する材料としては、熱溶融し、溝10のパターンが形成された金型の形状を転写できるいずれの材料も使用することができる。また、シート2の材料は、耐溶剤性、耐熱性、離型性を有することが好ましい。このような樹脂シートとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、PET、ナイロン、アイオノマー、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体などの熱可塑性樹脂フィルムが例示できる。あるいは、いわゆる微細な凹凸パターンが形成されたプリズムシートが例示できる。
【0023】
シート2に形成される溝10のパターンは、
図3に示すように、同方向に連続する複数の溝が、当該溝の長手方向と直交する方向に隣接して形成される。溝10は、
図3(a)に示すように、シート2の長手方向に沿って連続させてもよく、
図3(b)に示すように、シート2の長手方向に対して斜行する方向に沿って連続させてもよい。また、溝10は、
図3(c)に示すように、シート2の長手方向に沿って蛇行させてもよく、
図3(d)に示すように、シート2の長手方向に沿って矩形波状に連続させてもよい。その他、溝10は、ジグザグ状、格子状等、あらゆるパターンで形成することができる。
【0024】
また、溝10の形状は、
図4(a)〜(j)に例示するように、種々の形状を採り得る。このとき、溝10は、導電性粒子3の充填しやすさ、及び充填された導電性粒子3の第1の樹脂フィルム4への転着のしやすさを考慮して各寸法が決められる。溝10が導電性粒子3の粒子径に対して大きすぎると、溝10の導電性粒子の保持が困難となって充填不足になり、溝10が導電性粒子3の粒子径に対して小さすぎると導電性粒子3が入らず、充填不足となる他、溝10内に嵌り、第1の樹脂フィルム4へ転写不能となる。したがって、例えば、溝10は、幅Wが、導電性粒子3の粒子径の1倍〜2.5倍未満、且つ深さDが、導電性粒子3の粒子径の0.5〜2倍に形成される。また、溝10は、幅Wが、導電性粒子3の粒子径の1倍〜2倍未満、且つ深さDが、導電性粒子3の粒子径の0.5〜1.5倍とすることが好ましい。
【0025】
[導電性粒子]
導電性粒子3としては、異方性導電フィルムにおいて使用されている公知の何れの導電性粒子を挙げることができる。導電性粒子3としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、或いは、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートしたもの等が挙げられる。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものである場合、樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を挙げることができる。
【0026】
このような導電性粒子3は、シート2の溝10に充填されることにより、溝10に沿って配列される。例えば、導電性粒子3は、
図1(a)に示すように、シート2の表面に密接するスキージ12によって溝10内に充填される。シート2は、傾斜面13に配置されるとともに、
図1(a)中矢印Dで示す下方に搬送される。導電性粒子3は、スキージ12よりシート2の搬送方向上流側に供給され、シート2の搬送に伴って溝10内に充填、配列されていく。
【0027】
なお、導電性粒子3は、
図1(b)に示すように、矢印Uで示す傾斜面13の上方に搬送されるシート2のスキージ12より搬送方向上流側に供給され、シート2の搬送に伴って溝10内に充填、配列されるようにしてもよい。また、導電性粒子3は、スキージ12を用いる方法の他にも、シート2の溝10が形成された面に導電性粒子3を振り掛けた後、超音波振動、風力、静電気、シート2の背面側から磁力などの一又は複数の外力を作用させて溝10に充填、配列するようにしてもよい。さらに、導電性粒子3は、溝10への充填、配列をウェット状態で処理をおこなってもよく(湿式)、あるいはドライ状態で処理してもよい(乾式)。
【0028】
[第1の樹脂フィルム/樹脂層/延伸性ベースフィルム]
溝10に導電性粒子3が充填、配列されたシート2にラミネートされる第1の樹脂フィルム4は、延伸可能なベースフィルム6上に光又は熱硬化性の樹脂層5が形成された熱硬化型あるいは紫外線硬化型の接着フィルムである。第1の樹脂フィルム4は、シート2にラミネートされることにより、溝10のパターンに配列された導電性粒子3が転着され、異方性導電フィルム1を構成する。
【0029】
第1の樹脂フィルム4は、例えば膜形成樹脂、熱硬化性樹脂、潜在性硬化剤、シランカップリング剤等を含有する通常のバインダー樹脂(接着剤)がベースフィルム6上に塗布されることにより樹脂層5が形成されるとともに、フィルム状に成型されたものである。
【0030】
延伸可能なベースフィルム6は、例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene-1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等にシリコーン等の剥離剤を塗布してなる。
【0031】
樹脂層5を構成する膜形成樹脂としては、平均分子量が10000〜80000程度の樹脂が好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変形エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の各種の樹脂が挙げられる。中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が特に好ましい。
【0032】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、市販のエポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0033】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0034】
アクリル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じてアクリル化合物、液状アクリレート等を適宜選択することができる。例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等を挙げることができる。なお、アクリレートをメタクリレートにしたものを用いることもできる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
潜在性硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、加熱硬化型、UV硬化型等の各種硬化剤が挙げられる。潜在性硬化剤は、通常では反応せず、熱、光、加圧等の用途に応じて選択される各種のトリガにより活性化し、反応を開始する。熱活性型潜在性硬化剤の活性化方法には、加熱による解離反応などで活性種(カチオンやアニオン、ラジカル)を生成する方法、室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法、モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤を高温で溶出して硬化反応を開始する方法、マイクロカプセルによる溶出・硬化方法等が存在する。熱活性型潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミン塩、ジシアンジアミド等や、これらの変性物があり、これらは単独でも、2種以上の混合体であってもよい。中でも、マイクロカプセル型イミダゾール系潜在性硬化剤が好適である。
【0036】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等を挙げることができる。シランカップリング剤を添加することにより、有機材料と無機材料との界面における接着性が向上される。
【0037】
なお、第1の樹脂フィルム4は、取り扱いの容易さ、保存安定性等の見地から、樹脂層5のベースフィルム6が積層された面とは反対の面側にカバーフィルムを設ける構成としてもよい。また、第1の樹脂フィルム4の形状は、特に限定されないが、巻取リールに巻回可能な長尺シート形状とすることにより、所定の長さだけカットして使用することができる。
【0038】
[第2の樹脂フィルム]
また、導電性粒子3が転着された第1の樹脂フィルム4にラミネートされる第2の樹脂フィルム7も、第1の樹脂フィルム4と同様に、ベースフィルム9上に光又は熱硬化性の樹脂層8が形成された熱硬化型あるいは紫外線硬化型の接着フィルムである。第2の樹脂フィルム7の樹脂層8は第1の樹脂フィルム4の樹脂層5と同一のものを用いることができ、ベースフィルム9は第1の樹脂フィルム4のベースフィルム6と同一のものを用いることができる。第2の樹脂フィルム7は、導電性粒子3が転着された第1の樹脂フィルム4にラミネートされることにより、第1の樹脂フィルム4とともに異方性導電フィルム1を構成する。
【0039】
このような異方性導電フィルム1は、ベースフィルム6,9が剥離された後、例えば電子部品のバンプと配線板の電極端子との間にこれを挟み込み、加熱押圧ヘッド(図示せず)により加熱及び加圧することで流動化して導電性粒子3がバンプと電極端子との間で押し潰され、加熱あるいは紫外線照射により、導電性粒子3が押し潰された状態で硬化する。これにより、異方性導電フィルム1は、電子部品と配線板とを電気的、機械的に接続する。
【0040】
[異方性導電フィルムの製造方法]
次いで、異方性導電フィルム1の製造工程について説明する。
【0041】
先ず、溝10が所定のパターンで形成されたシート2の上記溝10に導電性粒子3を充填、配列する(
図1(a)(b)参照)。溝10への導電性粒子3の充填、配列は、スキージを用いた方法や、超音波振動、風力、静電気、シート2の背面側から磁力などの一又は複数の外力を作用させる方法等を用いることができる。
【0042】
次いで、導電性粒子3が配列された側のシート2表面に、第1の樹脂フィルム4の樹脂層5をラミネートする(
図2(a)参照)。ラミネートは、樹脂層5をシート2表面に配置した後、加熱押圧ヘッドによって低圧で押圧するとともに、適宜、バインダー樹脂がタック性を示すが熱硬化を開始しない温度で短時間、熱加圧することによって行う。
【0043】
第1の樹脂フィルム4をラミネートし、冷却した後、シート2と第1の樹脂フィルム4とを剥離することにより、導電性粒子3が第1の樹脂フィルム4へ転着される(
図2(b)参照)。第1の樹脂フィルム4は、樹脂層5の表面に導電性粒子3が溝10のパターンに応じたパターンで配列されている。
【0044】
次いで、第1の樹脂フィルム4を、導電性粒子3の配列方向と直交する方向を除く方向に1軸延伸する(
図2(c)参照)。これにより
図5、
図6に示すように、導電性粒子3が分散される。ここで、延伸方向から導電性粒子3の配列方向と直交する方向を除くのは、当該方向は既に溝10のパターンに応じて配列されることにより導電性粒子3が分離されているからである。そして、第1の樹脂フィルム4は、当該方向を除く方向に1軸延伸されることにより、配列方向に密着していた導電性粒子3を分離させることができる。
【0045】
したがって、
図5では、同図中矢印A方向に延伸させることが好ましく、矢印Z方向へは延伸させない。また、
図6では、同図中矢印Z方向を除く任意の1方向、例えば第1の樹脂フィルム4の長手方向である同図中矢印A方向に延伸させることが好ましい。
【0046】
第1の樹脂フィルム4の延伸は、例えばパンタグラフ方式の延伸機を用いて、130℃のオーブン中で1軸方向に200%引き延ばすことにより行うことができる。また、第1の樹脂フィルム4の長手方向に1軸延伸することにより、精度よく且つ容易に延伸させることができる。
【0047】
次いで、導電性粒子3が配置された第1の樹脂フィルム4の樹脂層5に、第2の樹脂フィルム7の樹脂層8をラミネートする(
図2(d)参照)。第2の樹脂フィルム7のラミネートは、樹脂層8を第1の樹脂フィルム4の樹脂層5表面に配置した後、加熱押圧ヘッドによって低圧で押圧するとともに、適宜、バインダー樹脂がタック性を示すが熱硬化を開始しない温度で、短時間で熱加圧することによって行う。
【0048】
以上により、異方性導電フィルム1が製造される。かかる異方性導電フィルム1によれば、予めシート2の溝10のパターンに応じて導電性粒子3が配列されているため、これを転着した第1の樹脂フィルム4を1軸延伸させることで、導電性粒子3を一様に分散することができる。したがって、異方性導電フィルム1に含有させる導電性粒子3を、フィルム全面に一様に分散させるのに必要最小限の量で足り、過剰に含有させる必要がない。また、異方性導電フィルム1は、余剰の導電性粒子3による端子間ショートを引き起こすおそれもない。また、異方性導電フィルム1は、導電性粒子3が一様に分散されているため、狭ピッチ化された電極端子においても確実に導通を図ることができる。
【0049】
なお、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルムの製造方法では、シートの溝に導電性粒子を埋め込んで配列する際に、シートの溝への充填効率を高めるために、溝を電極間の隙間とするシートと、導電性を有するスキージを使用する方法がある。
【0050】
そこで、前述した本発明の一実施形態の異方性導電フィルムの製造方法におけるスキージを用いた充填方法について、図面を使用しながら説明する。
図7(a)乃至(c)は、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルムの製造方法で適用される導電性粒子の充填工程を示す断面図であり、
図8は、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルムの製造方法における充填工程の終了後のシートへの導電性粒子の配列状態を示す平面図である。
【0051】
本実施形態では、シート102の溝110への充填効率を上げるために、シート102の長さ方向(
図8に示すA方向)に延在するように、所定間隔でシート102上に設けた電極120の隙間を導電性粒子103の充填先の溝110として、かつ、各電極120に磁力を発生させることを特徴とする。基板からなるシート102には、シート102の長さ方向(A方向)に延在する電極120がシート102の幅方向(
図8に示すB方向)に所定の間隔で複数設けられている。
【0052】
そして、各電極120に通電等により磁力を発生させる。これにより、導電性粒子103が電極120に引き寄せられて、電極間に有する溝110に導電性粒子103を略直線状に備えることができる。また、本実施形態では、電極120に発生させる磁力の強度を調整することにより、導電性粒子103の転写を適宜制御することができる。また、電極120により磁力を適宜調整する以外に、例えば、一定の磁力で電極120の配列間に導電性粒子103を備えさせてから、転写時に転写体の反対の面により強い磁力を与えることによって、導電性粒子103に働く磁力を適宜調整する方策であってもよい。
【0053】
また、本実施形態では、導電性粒子103の溝110への充填するためのスキージ112が設けられている。スキージ112は、各電極120に当接しながら、電極120の長さ方向(
図8に示すA方向)に移動することによって、電極120の上に付着した余分な導電性粒子103を除去しながら、各溝110内へ導電性粒子103を充填する。また、本実施形態では、各電極120に発生させた磁力を維持するために、導電性を有する金属等の材質で形成されているスキージ112を使用することを特徴とする。なお、スキージ112は、帯電性が付与される金属等の材質のであれば、その材質は特に限定されない。
【0054】
このように、本実施形態では、シート103上に電極120を設けることにより、導電性粒子103をシート102の溝110に充填させる際に、まず、電極120の間に当該電極120の長さ方向(
図8に示すA方向)及び幅方向(B方向)に対して鉛直な方向となるC方向(
図7(a)参照)に磁力を発生させる。
【0055】
本実施形態では、各電極120に磁力を発生させているので、導電性粒子103に余分な応力をかけることなく、確実に導電性粒子103を電極120に付着させられる。そして、これら電極120に付着した導電性粒子103は、
図7(a)に示すように、電極120の間に有する溝110に充填されるようになる。また、本実施形態では、電極120に磁力を発生させることによって、導電性粒子103を電極120に付着させるので、溝110に充填された導電性粒子103は、
図7(a)に示すように、溝110の側壁を構成する電極120の側壁120a、120bの何れかに付着するようになる。このため、第1の樹脂フィルム104を延伸後においても、その幅を形成するどちらか片側に寄ることになる。
【0056】
各電極120に導電性粒子103を付着させてから、次に、
図7(b)に示すように、電極120の上にある余分な導電性粒子103をスキージ112で除去することになる。本実施形態では、スキージ112で余分な導電性粒子103を除去する際に、導電性粒子103の表面のメッキ等に多少の損傷を与えることがあるが、完成後の異方性導電フィルム101の導通信頼性等の性能に支障をきたす程度の損傷ではない。スキージ112で余分な導電性粒子103を除去して、必要な導電性粒子103の配列を整えると、
図7(c)に示すように、シート102の溝110への導電性粒子103の充填が完了する。
【0057】
このように、本実施形態では、電極120間の隙間を溝110とするシート102を使用することによって、電極120に通電等により磁力を発生させてから、余分な応力をかけずに導電性粒子103が発生した磁力によって電極120に引き付けられる。そして、導電性を有するスキージ112で余分な導電性粒子103を除去しながら、導電性粒子103を溝110内へ充填する。そして、シート102の溝110に充填させた導電性粒子103を第1の樹脂フィルム104(
図9参照)に転着させる。このため、導電性粒子103を第1の樹脂フィルム104に転着する前に、当該導電性粒子103をシート102の溝110に効率よく確実に充填できる。すなわち、所望のシート102に電極120を設けてから磁力を発生させることによって、導電性粒子103を転着する際に使用するシート102の溝110への充填効率を高めることができる。
【0058】
また、本実施形態では、シート102の溝110に充填された導電性粒子103は、
図8に示すように、電極120の側壁120a、120bの何れかに付着して、電極間に保持されるようになる。このため、シート102の溝110に充填された導電性粒子103を第1の樹脂フィルム104の樹脂層105に転着してから、長さ方向(A方向)に1軸延伸すると、
図9に示すように、導電性粒子103は、それぞれが樹脂層105に形成された凹部115の側縁部115a、115bの何れかに沿って配置されるようになる。すなわち、本実施形態における異方性導電フィルム101では、各粒子列103aは、導電性粒子103のそれぞれが樹脂層105に形成された凹部115の側縁部115a、115bの何れかに沿って配置される構成となる。なお、各粒子列103aにおける異方性導電フィルム101の幅方向(B方向)における導電性粒子103のずれは、溝110の幅Wに影響されるので、例えば、導電性粒子103の粒子径を3.0μm、溝幅を3.5〜4.0μm程度とした場合では、そのずれが粒子径の1/3程度となる。
【0059】
以上の場合において、導電性粒子103は、電極120及びスキージ112と強く摩擦してしまうため、摺接痕が発生する場合がある。例えば、導電性粒子103としてめっき粒子を用いた場合には、導電性粒子103の表面の一部が剥離するか、又はめくれる。また、導電性粒子103として金属粒子を用いた場合には、導電性粒子103の一部に変形が生じる場合もある。このような摺接痕は、導電性粒子103の表面積の5%以上に生じることにより、バインダー樹脂105の転写時や異方性導電フィルム101の熱加圧時等において導電性粒子103の流動が抑制される。また、摺接痕が発生した導電性粒子103が全体の50%以内であれば、異方性導電フィルム101の導通性能に影響はないが、当該摺接痕の発生率は、全導電性粒子数の25%以内、より好ましくは15%未満とすることが好ましい。
【0060】
[異方性導電フィルム]
次に、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルムの構成について、図面を使用しながら説明する。
図10は、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルムの部分斜視図であり、
図11(a)は、
図10のP−P断面図であり、
図11(b)は、
図10のQ−Q断面図である。
【0061】
本実施形態の異方性導電フィルム1は、
図10に示すように、第1の樹脂フィルム4と第2の樹脂フィルム7とを含む2層以上のフィルム層から構成されている。第1の樹脂フィルム4は、バインダー樹脂(接着剤)がベースフィルム6上に塗布されることによって樹脂層(第1の樹脂層)5が形成されると共に、フィルム状に成型された樹脂フィルムである。第2の樹脂フィルム7は、ベースフィルム9上に光又は熱硬化性の樹脂層(第2の樹脂層)8が形成された熱硬化型あるいは紫外線硬化型の接着フィルムであり、複数の導電性粒子3が転着された第1の樹脂層5を含む第1の樹脂フィルム4にラミネートされた樹脂フィルムである。
【0062】
このように、本実施形態の異方性導電フィルム1は、第1の樹脂フィルム4に第2の樹脂フィルム7をラミネートさせて、第1の樹脂層5と第2の樹脂層8との間に複数の導電性粒子3を保持した構成となっている。なお、本実施形態では、異方性導電フィルム1は、第1の樹脂層5とベースフィルム6からなる第1の樹脂フィルム4と、第2の樹脂層8とベースフィルム9からなる第2の樹脂フィルム7の2層から構成されているが、異方性導電フィルム1は、少なくとも2層構成よりなるものであればよいので、例えば、第3の樹脂層等の別の樹脂層をラミネートさせた構成の異方性導電フィルムにも、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルム1を適用できる。
【0063】
導電性粒子3は、
図10に示すように、第1の樹脂層5において、X方向(第1の方向)に規則的に配列して形成される。また、粒子列3aがX方向と異なるY方向(第2の方向)に規則的に複数並列することによって、これらの導電性粒子3は、分散された状態となる。また、導電性粒子3は、所定の間隔で配列されてもよい。本実施形態では、第1の樹脂層5は、
図10及び
図11(a)に示すように、粒子列5aの各列間がX方向に延在するように尾根状に形成された凸部14となっている。すなわち、第1の樹脂層5では、X方向に延在した凸部14がY方向に所定の間隔ごとに形成されている。
【0064】
そして、
図10に示すように、第1の樹脂層5では、これら凸部14の間にX方向に延在する溝形状の凹部15が形成され、導電性粒子3は、これらの凹部15内に規則的に配置される。なお、このX方向(第1の方向)とY方向(第2の方向)の方向性は、光学的な違いとして現れる場合もある。これは、X方向に第1の樹脂層5が延伸されることで、導電性粒子3の間に溝形状となる空隙が少なからず生じることによる。この空隙が後述するクリアランス16である。このような空隙は、導電性粒子3が直線状に配列した状態で延伸されたことにより生じる。すなわち、延伸時の導電性粒子3近傍の少なくとも1つの略直線状には、第1の樹脂層5が備わらないか、それに近い状態が生じ、このことが導電性粒子3の圧着時の移動性に影響を及ぼす。このことは、後述する凹部15および凸部14とも関連する。
【0065】
なお、当該クリアランス16は、第1の樹脂フィルム4を延伸させた際に生じた空隙であるため、導電性粒子3近傍の延伸方向における第1の樹脂層5の厚みは、急峻な断崖のような状態が生じることになる。前述したように、第1の樹脂フィルム4の延伸方向に当該状態が生じるため、第1の方向における導電性粒子3の間には、
図11(b)に示すように、略直線状に2箇所の同一の断崖部5c、5dが導電性粒子3を保持した状態になる。これにより、接合時に導電性粒子3が移動する場合の方向が依存されることになる。また、本実施形態では、X方向(第1の方向)とは、異方性導電フィルム1の長手方向を示し、Y方向(第2の方向)とは、異方性導電フィルム1の幅方向を示すものとする。
【0066】
上述したように、第1の樹脂層5には、X方向に延在するように、複数の凸部14と凹部15がそれぞれ並列するように形成されている。そして、各凹部15には、複数の導電性粒子3が規則的に配列されているので、当該凹部15において、粒子列3aを構成する導電性粒子3の間は、クリアランス16となり、
図10及び
図11(b)に示すように、当該クリアランス16に第2の樹脂層8が浸入している。このようにして、導電性粒子3が第1の樹脂層5と第2の樹脂層8との間に分散保持されるようになる。なお、本実施形態では、導電性粒子3が第1の樹脂層5と第2の樹脂層8との間に分散保持された構成となっているが、導電性粒子3は、転写した際における外力等によって第1の樹脂層5に埋没され、延伸された場合には、第1の樹脂層5内にのみ存在する。本発明の一実施形態では、導電性粒子3が第1の樹脂層5に埋没されてから延伸された構成も含むものとする。すなわち、本実施形態の異方性導電フィルム1は、導電性粒子3が第1の樹脂層5と第2の樹脂層8のうち、少なくとも第1の樹脂層5のみに接している構成のものも含む。この場合においても、導電性粒子3近傍の第1の樹脂層5は、略直線状に2箇所の同一の断崖部5c、5dがある状態となる。これは上述の理由による。
【0067】
このように、本実施形態では、狭ピッチ化対応の異方性導電フィルム1において、一様に分散させた導電性粒子3の位置制御を確実に行えるので、狭ピッチ化された端子同士における導通を確実に図ることができるようになる。なお、本実施形態では、異方性導電フィルム1の接続信頼性を保持するために、異方性導電フィルム1は、X方向における導電性粒子3の間隔がY方向における導電性粒子3の間隔よりも幾分大きい構成となっており、例えば、導電性粒子3の径の半分程度大きい構成とすることが望ましい。
【0068】
また、本実施形態では、異方性導電フィルム1の製造する過程において、第1の樹脂フィルム4を導電性粒子3の配列方向と直交する方向を除く方向に1軸延伸した際に、
図10に示すように、導電性粒子3を転着した第1の樹脂層5にX方向に延在した溝形状の凹部15が形成される。そして、当該凹部15の形成に伴って、第1の樹脂層5において、X方向に延在した凸部14が形成される。
【0069】
すなわち、
図10に示すように、本実施形態に係る異方性導電フィルム1の第1の樹脂層5は、X方向における導電性粒子3の間の部位5aがY方向における導電性粒子3の間の部位5bよりも薄い構成となっている。この部位5aの位置にクリアランス16がある。そして、凹部15に配列された導電性粒子3の間に設けられるクリアランス16に第2の樹脂層8が浸入している(
図11(b)参照)。なお、第1の樹脂フィルム4を1軸延伸する際に、導電性粒子3が直列連結していた場合には、第1の樹脂フィルム4を元の長さの2倍延伸、つまり200%延伸した場合には、大半の導電性粒子3は、略同一径で直線状に密に並んでいることから、導電性粒子3の1個分のスペースが空くようになる。この導電性粒子3の1個分のスペースの空いた部分が第1の樹脂層5における空隙となるクリアランス16に相当することになる。
【0070】
[接続構造体]
次に、本発明の一実施形態に係る接続構造体の構成について、図面を使用しながら説明する。
図12は、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルムを適用した接続構造体の構成を示す概略断面図である。本発明の一実施形態に係る接続構造体50は、例えば、
図12に示すように、前述した異方性導電フィルム1を介して、ICチップ等の電子部品52をフレキシブル配線基板や液晶パネル等の基板54上に電気的及び機械的に接続固定したものである。電子部品52には、接続端子としてバンプ56が形成されている。一方、基板54の上面には、バンプ56と対向する位置に電極58が形成されている。
【0071】
そして、電子部品52のバンプ56と基板54上に形成された電極58の間、及び電子部品52と配線基板56の間には、接着剤となる本実施形態に係る異方性導電フィルム1が介在している。バンプ56と電極58との対向する部分では、異方性導電フィルム1に含まれる導電性粒子3が押し潰されて、電気的な導通が図られている。また、それと同時に、異方性導電フィルム1を構成する接着剤成分によって、電子部品52と基板54との機械的な接合も図られている。
【0072】
このように、本発明の一実施形態に係る接続構造体50は、応力を緩和させた状態で、高い接着強度を得る異方性導電フィルム1によって、電極58が形成された基板54と、バンプ56が設けられた電子部品52とを接続して構成されている。すなわち、接続構造体50の電子部品52と基板54の接続に、本発明の一実施形態に係る異方導電性フィルムが使用されている。
【0073】
前述したように、本発明の一実施形態にかかる異方性導電フィルム1は、第1の樹脂層5に凸部14と凹部15が形成され、当該凹部15に導電性粒子3が規則的に配列されたものを第2の樹脂層8でラミネートして、双方の樹脂層5、8に保持されている。この規則性は所定の間隔で配置されていてもよい。このため、各導電性粒子3が凸部14により確実に
図10における水平方向に移動しにくくなり、分散保持される。このため、接合時における導電性粒子3の移動は、導電性粒子3間における空隙つまりクリアランス16に依存することになり、その形状に支配される要素が大きい。
【0074】
従って、接続構造体50における基板54と電子部品52との良好な接続性を確保でき、長期間にわたり電気的及び機械的に接続の信頼性を高めることができる。すなわち、本実施形態の異方性導電フィルム1を用いることで、導通信頼性の高い接続構造体50を製造することが可能となる。なお、本実施形態に係る接続構造体50の具体例として、半導体装置、液晶表示装置、LED照明装置等が挙げられる。
【実施例】
【0075】
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、溝10の形状、寸法の異なる複数のシート2を用意し、各サンプルに導電性粒子3を充填、配列させた後、第1の樹脂フィルム4に導電性粒子3を転写し、1軸延伸後に第2の樹脂フィルム7をラミネートして異方性導電フィルム1のサンプルを製造した。
【0076】
各実施例に係るシート2には、厚さ50μmのポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製:トレファン2500H)を用いた。このシート2に、所定の溝パターンが形成された金型へ180℃、30分の熱プレスを行い、溝10を形成した。シート2の溝10に充填、配列される導電性粒子3は、樹脂コア粒子にAuメッキを施したものである(積水化学株式会社製:AUL703)。この導電性粒子3をシート2の溝10の形成面に振り掛け、テフロン(登録商標)製のスキージで溝10に均一に充填、配列させた。
【0077】
また、導電性粒子3が配列されたシート2にラミネートされる第1の樹脂フィルム4、及び第1の樹脂フィルム4にラミネートされる第2の樹脂フィルム7として、マイクロカプセル型アミン系硬化剤(旭化成イーマテリアルズ株式会社製:ノバキュアHX3941HP)を50部、液状エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:EP828)を14部、フェノキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製:YP50)を35部、シランカップリング剤(信越化学株式会社製:KBE403)を1部、を混合分散させたバインダー樹脂組成物を形成した。そして第1の樹脂フィルム4では、当該バインダー樹脂組成物を無延伸ポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製、:トレファンNO3701J)に厚み5μmになるように塗布し、第2の樹脂フィルム7では、当該バインダー樹脂組成物を無延伸ポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製、:トレファンNO3701J)に厚み15μmになるように塗布し、これにより一面に樹脂層5又は8が形成されたシート状の熱硬化性樹脂フィルムを作成した。また、延伸前の転写までの第1の樹脂フィルム4のサイズは、20×30cmとA4サイズ程度のものを使用して、異方性導電フィルム1のサンプルを作成した。
【0078】
そして、溝10に導電性粒子3が充填、配列されたシート2に、第1の樹脂フィルム4を貼り合わせることで、導電性粒子3を第1の樹脂フィルム4の樹脂層5に転着させた。次いで、第1の樹脂フィルム4を、パンタグラフ方式の延伸機を用いて130℃のオーブン中で1軸方向に200%引き延ばすことにより延伸させた。延伸後、第2の樹脂フィルム7を第1の樹脂フィルム4の導電性粒子3が転着された樹脂層5側に貼り合わせて異方性導電フィルム1のサンプルを作成した。なお、各実施例では、粒子密度は、20000個/mm
2を一つの目安として作成しているが、当該粒子密度は、転写型となるシート2の形状や延伸の方向性等の影響を比較し、本発明の効果および特徴を明確にするために設定されたものである。従って、異方性導電フィルム1を使用する対象によって、延伸率の最適値は、異なるものであり、同様に粒子密度の最適値も異なる。
【0079】
そして、各異方性導電フィルム1のサンプルについて、粒子密度、2個連結粒子率、及び粒子密度のバラツキσを測定した。また、各異方性導電フィルム1のサンプルを用いて、ICチップのバンプと配線板の電極端子とを接続した接続構造体サンプルを製造し、隣接する電極端子間におけるショート発生率を測定した。
【0080】
実施例1では、粒子径が3μmの導電性粒子3を用いた。また、シート2に形成される溝10は、シート2の長手方向に連続するパターンを有し(
図3(a)参照)、断面が矩形状であり(
図4(a)参照)、幅Wが3.0μm、深さDが3.0μm、溝の間隔Sが5.0μmである。
【0081】
実施例2では、溝10の幅Wを5.9μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0082】
実施例3では、溝10の幅Wを3.5μm、深さDを1.5μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0083】
実施例4では、溝10の深さDを4.5μmとした他は、実施例3と同条件とした。
【0084】
実施例5では、溝10の幅Wを6.5μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0085】
実施例6では、溝10の深さを6.0μmとした他は、実施例3と同条件とした。
【0086】
実施例7では、粒子径が4.0μmの導電性粒子3(積水化学株式会社製:AUL704)を用いた。また、シート2に形成される溝10は、幅Wを4.0μm、深さDを4.0μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0087】
実施例8では、シート2に形成される溝10は、断面三角形状であり(
図4(j)参照)、幅Wが3.0μm、深さDが3.0μm、溝の間隔Sが5.0μmである。その他、導電性粒子3や溝10のパターンの条件は実施例1と同条件とした。
【0088】
比較例1では、従来の製法によって異方性導電フィルムを作成した。すなわち、上記実施例に係るバインダー樹脂組成物に、樹脂コア粒子にAuメッキを施した粒子径が3μmの導電性粒子3(積水化学株式会社製:AUL703)を5質量部分散させ、これを無延伸ポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製、:トレファンNO3701J)に厚み20μmになるように塗布し、一面に樹脂層が形成されたシート状の熱硬化性樹脂フィルムを作成した。
【0089】
実施例及び比較例に係る異方性導電フィルムを介して接続されるICチップは、寸法が1.4mm×20.0mm、厚さが0.2mm、金バンプサイズが17μm×100μm、バンプ高さが12μm、バンプスペースが11μmである。
【0090】
このICチップが実装される配線板は、ICチップのパターンに対応したアルミ配線パターンが形成されたガラス基板(コーニング社製:1737F)であり、寸法が50mm×30mm、厚さが0.5mmである。
【0091】
実施例及び比較例に係る異方性導電フィルムを介したICチップとガラス基板の接続条件は、170℃、80MPa、10秒である。
【0092】
実施例及び比較例に係る異方性導電フィルムの粒子密度は、顕微鏡を用いて、1mm2中における導電性粒子3の数を測定した。2個連結粒子率は、顕微鏡を用いて、200μm×200μm=40000μm2の面積中に2個以上連結している導電性粒子3の数をカウントし、平均の連結数を算出した。更に50μm×50μm=2500μm2の面積中の粒子密度のバラつきσを算出した。
【0093】
また、接続構造体サンプルにおける隣接する電極端子間におけるショート発生率を測定した。
【0094】
前述した実施例1乃至8、及び比較例における異方性導電フィルムの各測定結果をまとめたものを表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示すように、実施例1〜8によれば、予めシート2に導電性粒子3が所定パターンで配列されているため、これを転着した第1の樹脂フィルム4を1軸延伸させることで、導電性粒子3を確実に分散することができる。したがって、実施例1〜8に係る異方性導電フィルムでは、2個連結粒子率が9%以下となった。また、実施例1〜8に係る異方性導電フィルムでは、導電性粒子3の密度が20000個/mm
2未満であり、粒子密度のバラツキ(σ)も2以下と小さく、これらを用いて製造された接続構造体サンプルの隣接する電極端子間におけるショート発生率は0%であった。
【0097】
なかでも実施例1〜4では、シート2の溝10の幅Wが、導電性粒子3の粒子径の1倍〜2倍未満であり、且つ溝10の深さDが、導電性粒子3の粒子径の0.5〜1.5倍とされているため、粒子密度も低く、2個連結粒子率も5%以下となった。
【0098】
一方、従来の異方性導電フィルムを用いた比較例1では、粒子密度が20000個/mm2であり、2個連結粒子率も12%と増えた。また、比較例1に係る異方性導電フィルムの粒子密度バラツキ(σ)は10.2と高く、隣接する電極端子間におけるショート発生率は2%となった。
【0099】
また、シート2の溝10の幅Wの影響を見ると、実施例1のように、導電性粒子3の粒子径に対するシート2の溝10の幅Wが等倍であれば、2個連結粒子が見られなかったが、実施例2及び実施例5のように、導電性粒子3の粒子径に対するシート2の溝10の幅Wが2倍弱から2倍強になるに従って、2個連結粒子率が増加した。当該2個連結粒子率の増加は、シート2の溝10の幅Wが広くなると、導電性粒子3の充填にかかる応力が分散することに起因すると考えられる。このことから、導電性粒子3の粒子径に対するシート2の溝10の幅Wが2倍未満であることが好ましいことが分かる。
【0100】
さらに、シート2の溝10の深さDの影響を見ると、実施例3、実施例4、及び実施例6から、導電性粒子3の粒子径に対するシート2の溝10の深さDが0.5倍、1.5倍、2倍と大きくなるに従って、粒子密度及び2個連結粒子率も増加傾向を示すことが分かる。特に、実施例3、実施例4より、導電性粒子3の粒子径に対するシート2の溝10の深さDが0.5〜1.5倍の場合に2個連結粒子率が5%以下となることから、異方性導電フィルムの導通信頼性を維持するために好ましいことが分かる。
【0101】
次に、下記の実施例11乃至19における第1の樹脂フィルム104を1軸延伸する際の延伸率を150%、200%、300%、450%、700%と変化させた場合の粒子密度、2個連結粒子率、粒子密度のバラツキ、及びショート発生率について、前述した実施例1乃至8と同様の条件で測定した。これら実施例11乃至19における第1の樹脂フィルム104は、電極120を設けたシート102に導電性粒子103を充填してから製造したものである。また、これら実施例11乃至19では、何れも粒子径が3μmの導電性粒子103を用いた。なお、実施例11乃至13では、シート102の溝110を構成する電極120の大きさ、すなわち溝110の幅Wの影響について検討し、実施例14乃至16では、電極120の幅すなわち粒子列103aの列間距離Sの影響について検討し、実施例17乃至19では、電極120の厚さ、すなわち溝110の深さDの影響について検討した。
【0102】
実施例11では、電極120の断面が一辺3.0μmの正方形とした場合、すなわち、溝110の幅W及び深さDが3.0μm、溝110の間隔Sが3.0μmのシート102を使用した。
【0103】
実施例12では、電極120の断面が一辺3.5μmの正方形とした場合、すなわち、溝110の幅W及び深さDが3.5μm、溝110の間隔Sが3.5μmのシート102を使用した。
【0104】
実施例13では、電極120の断面が一辺4.5μmの正方形とした場合、すなわち、溝110の幅W及び深さDが4.5μm、溝110の間隔Sが4.5μmのシート102を使用した。
【0105】
実施例14では、溝110の断面が一辺3.5μmの正方形として、溝110の間隔Sが3.0μmのシート102を使用した。
【0106】
実施例15では、溝110の断面が一辺3.5μmの正方形として、溝110の間隔Sが3.2μmのシート102を使用した。
【0107】
実施例16では、溝110の断面が一辺3.5μmの正方形として、溝110の間隔Sが4.5μmのシート102を使用した。
【0108】
実施例17では、溝110の幅Wが3.5μm、深さDが3.0μm、溝110の間隔Sが3.5μmのシート102を使用した。
【0109】
実施例18では、溝110の幅Wが3.5μm、深さDが3.2μm、溝110の間隔Sが3.5μmのシート102を使用した。
【0110】
実施例19では、溝110の幅Wが3.5μm、深さDが4.5μm、溝110の間隔Sが3.5μmのシート102を使用した。
【0111】
前述した実施例11乃至19における第1の樹脂フィルム104を1軸延伸する際の延伸率を150%、200%、300%、450%、700%と変化させた場合の粒子密度、2個連結粒子率、粒子密度のバラツキ、及びショート発生率の測定結果についてまとめたものを表2に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
表2に示すように、実施例11乃至19によれば、粒子密度及び2個連結粒子率は、延伸の度合い(延伸率)に比例して低くなることが確認できた。これは、予めシート102に導電性粒子103が所定パターンで配列されているため、当該導電性粒子103を転着した第1の樹脂フィルム104を1軸延伸させることで、導電性粒子103が確実に分散されることに起因するものと考えられる。また、実施例11乃至19では、導電性粒子103のシート102の溝110への充填時に磁力による充填が行われることより、導電性粒子103に余分な応力がかからないことも、2個連結粒子の発生の減少の理由として考えられる。一方、実施例11乃至19によれば、粒子密度のバラツキ(σ)は、延伸率によらず2以下と小さい値が得られることが確認できた。
【0114】
また、実施例11乃至19によれば、ショート発生率は、延伸率が150%では、何れの実施例とも若干発生するものの、延伸率が200%以上では、何れの実施例ともショート発生率が0%と発生しないことが確認できた。これは、150%延伸では十分な導電性粒子間の距離を確保できないことから、導電性粒子103の接触確率が高まることに起因するものと考えられる。このことから、導電性粒子103を転着した第1の樹脂フィルム104を1軸延伸させる際には、少なくとも150%より大きい延伸率、すなわち元の長さの150%より長く延伸することが好ましいことが分かる。
【0115】
さらに、実施例11乃至19によれば、粒子密度は、シート102の溝110の型の形状によらず、延伸率に比例して低くなることが分かる。これらの結果から、導電性粒子103の粒子間の空隙が延伸によって生じ、一方向に依存していることも分かる。
【0116】
このことから、導電性粒子103を転着した第1の樹脂フィルム104を1軸延伸させる際には、少なくとも150%より大きい延伸率、すなわち元の長さの150%より長く延伸することが好ましいことが分かる。なお、実施例11と実施例14の200%延伸の場合では、粒子密度は、それ以外と比較して高くなるが、これは溝110の間隔Sが導電性粒子103と同一の場合では、導電性粒子103の接触の可能性が依然として残ることがその理由として考えられる。
【0117】
また、電極120の大きさ、すなわち溝110の幅Wの影響を見ると、電極120の断面が大きくなるに従って、粒子密度が減少することが分かる。また、実施例11より、200%延伸しても、2個連結粒子の発生が見られた。これは、電極120の断面が導電性粒子3と同一の場合では、転写に影響していることが考えられる。このことから、溝110の幅Wは、少なくとも導電性粒子103の径よりも大きいことが好ましいことが分かる。
【0118】
さらに、電極120の幅すなわち粒子列103aの列間距離Sの影響を見ると、実施例12、及び実施例14乃至16より、粒子列103aの列間距離Sが大きくなるにつれて、粒子密度、2個連結粒子率の共に減少することが分かる。このことから、粒子列103aの列間距離Sは、少なくとも導電性粒子103の径よりも大きいことが好ましいことが分かる。
【0119】
また、電極120の厚さ、すなわち溝110の深さDの影響を見ると、実施例12、及び実施例17乃至19より、電極120の厚さすなわち溝110の深さDが大きくなるに従って、粒子密度が増加することが分かる。これは溝110が深くなると、溝110の奥まで第1の樹脂層105の樹脂が入り込むので、転写率がよくなることがその理由として考えられる。また、前述したように、溝110の深さDが導電性粒子103の径と同等程度の場合では、導電性粒子103を溝110に充填後にスキージ112で除去する際に、導電性粒子103の表面を損傷する度合いが大きくなるので、溝110の深さDは、少なくとも導電性粒子103の径よりも大きいことが好ましいことが分かる。