特許第6169917号(P6169917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169917
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04701 20160101AFI20170713BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20170713BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20170713BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20170713BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20170713BHJP
【FI】
   H01M8/04 G
   H01M8/04 X
   H01M8/04 T
   H01M8/04 Z
   !H01M8/12
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-163105(P2013-163105)
(22)【出願日】2013年8月6日
(65)【公開番号】特開2015-32539(P2015-32539A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 佑介
(72)【発明者】
【氏名】小林 法之
(72)【発明者】
【氏名】濱谷 正吾
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−243413(JP,A)
【文献】 特開2012−225620(JP,A)
【文献】 特開2012−038689(JP,A)
【文献】 特開2009−272117(JP,A)
【文献】 特開2010−120809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/04−8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極、空気極及び電解質層を有して構成される平板形の燃料電池セルを複数積層してなり、液体燃料と酸化剤ガスとを用いて発電を行う燃料電池スタックと、
前記発電のための補助的な処理を行う部位であって、前記液体燃料と改質水とを気化して混合する気化混合器と、前記気化混合器で気化された燃料ガスを改質する改質器と、前記燃料電池スタックにおける前記燃料ガスの通過後に前記燃料電池スタックから排出される排ガスを浄化する燃焼器とを含む発電補助部と、
断熱部材を用いて構成され、前記燃料電池スタック及び前記発電補助部を収容する断熱容器と、
前記断熱容器内に設けられ、前記燃料電池スタックを上下方向に挟み込むように配置される2つ以上の電気ヒータと
を備え、
前記燃料電池スタックと、前記電気ヒータのうちの少なくとも一つの電気ヒータとの間に、前記発電補助部を構成する機器のうちの少なくとも前記改質器及び前記燃焼器が配設されていることを特徴とする燃料電池。
【請求項2】
前記電気ヒータに対して前記発電補助部が空隙を隔てて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記発電補助部を構成する機器のうちの前記改質器は、前記燃料電池スタックの下側に位置する前記電気ヒータに最も近接して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池。
【請求項4】
発電時に発熱する部位である前記燃料電池スタック及び前記燃焼器を発熱部と定義し、発電時に吸熱する部位である前記気化混合器及び前記改質器を吸熱部として定義したとき、前記発熱部と前記吸熱部とが交互に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記断熱容器内において、下方側から上方側に向けて前記電気ヒータ、前記気化混合器、前記燃焼器、前記改質器、前記燃料電池スタック、前記電気ヒータの順に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料極、空気極及び電解質層を有して構成される平板形の燃料電池セルを複数積層してなる燃料電池スタックと、発電のための補助的な処理を行う発電補助部とを備える燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、発電装置の一種である燃料電池として、例えば固体電解質層(固体酸化物)を備えた固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell ;SOFC)が知られている。固体酸化物形燃料電池は、エネルギー変換効率が50%以上と非常に高く、かつ、小型化が可能であるため、家庭用コジェネレーションシステムや自動車の動力源として開発が行われている。
【0003】
具体的には、固体酸化物形燃料電池は、燃料ガスに接する燃料極と酸化剤ガスに接する空気極とが固体電解質層の両側に配置された燃料電池セルを備えている。なお、燃料ガスは水素を生成するためのものであり、酸化剤ガスは酸素を生成するためのものである。そして、水素と酸素とが固体電解質層を介して反応(発電反応)することにより、空気極を正極、燃料極を負極とする直流の電力が発生するようになっている。
【0004】
一般に、固体酸化物形燃料電池は、平板形の発電セルを複数積層してなる燃料電池スタックの形態で使用される。固体酸化物形燃料電池は、高温タイプのもので1000℃、中温タイプのもので700℃〜800℃で運転されるため、燃料電池スタックを断熱容器内に収納して保温する必要がある。また、燃料電池の起動時には、燃料電池スタックを発電可能な温度まで昇温する必要があるため、断熱容器内には、電気ヒータや燃焼器等が収納される(特許文献1〜3参照)。
【0005】
特許文献1の燃料電池では、燃料電池スタックの上端及び下端に電気ヒータを配置し、各ヒータによって燃料電池スタックを昇温することで電池の起動時間が短縮されている。また、特許文献2の燃料電池では、燃料電池スタックの内部に電気ヒータを配置し、その電気ヒータによって燃料電池スタックを昇温することで燃料電池が迅速に起動される。さらに、特許文献3の燃料電池では、燃料電池スタックの積層方向の端部に、可燃ガスの燃焼によって発熱する燃焼器を設け、燃焼器によって燃料電池スタックを昇温している。この構成によって、燃料電池スタックにおける温度分布が小さく抑えられることで、燃料電池の発電効率が向上される。
【0006】
さらに、上記固体酸化物形燃料電池において、断熱容器内には、燃料ガスを発電に適した組成に改質反応させるための改質器等が収容される。一般に、改質器における改質反応は、触媒を用いて行われるが、その場合でも反応を十分に進行させるために高温環境(例えば、700℃程度)が必要となる。従って、燃焼器(バーナー)等を用いて改質器が昇温されるように構成されている(特許文献3等参照)。
【0007】
また、固体酸化物形燃料電池は、燃料が炭化水素系の液体燃料であっても発電可能であるが、燃焼器(ガスバーナなど)は気化された燃料ガスを使用する必要がある。このため、液体燃料を用いて発電する燃料電池の場合には、燃料電池スタックや改質器等を作動温度に昇温させるために燃焼器を使用することができない。従って、液体燃料を用いる場合には、特許文献1や特許文献2の燃料電池のように、電気ヒータを使用して改質器等を昇温する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−89900号公報
【特許文献2】特開2007−103031号公報
【特許文献3】特開2009−93923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1の燃料電池では、燃料電池スタックの上端及び下端に電気ヒータが配置されているため、改質器などの発電補助部はそれらの外側に配置されることとなる。このため、電気ヒータによって発電補助部を効率よく昇温することができない。また、特許文献2の燃料電池では、燃料電池スタックの内部に電気ヒータが配置されているので、そのスタックにおける熱分布が大きくなり、発電効率が低下してしまうといった問題が生じる。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体燃料を使用して発電する燃料電池であって、燃料電池スタック及び発電補助部を効率よく昇温し、起動時間を短縮することができる燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、燃料極、空気極及び電解質層を有して構成される平板形の燃料電池セルを複数積層してなり、液体燃料と酸化剤ガスとを用いて発電を行う燃料電池スタックと、前記発電のための補助的な処理を行う部位であって、前記液体燃料と改質水とを気化して混合する気化混合器と、前記気化混合器で気化された燃料ガスを改質する改質器と、前記燃料電池スタックにおける前記燃料ガスの通過後に前記燃料電池スタックから排出される排ガスを浄化する燃焼器とを含む発電補助部と、断熱部材を用いて構成され、前記燃料電池スタック及び前記発電補助部を収容する断熱容器と、前記断熱容器内に設けられ、前記燃料電池スタックを上下方向に挟み込むように配置される2つ以上の電気ヒータとを備え、前記燃料電池スタックと、前記電気ヒータのうちの少なくとも一つの電気ヒータとの間に、前記発電補助部を構成する機器のうちの少なくとも前記改質器及び前記燃焼器が配設されていることを特徴とする燃料電池がある。
【0012】
従って、手段1に記載の発明によると、液体燃料を使用する燃料電池の起動時においても、電気ヒータによって改質器及び燃焼器を早期に昇温させることができるため、燃料電池において発電に必要な処理を迅速に行うことができる。具体的には、断熱容器内において、燃料電池スタックの上下に配置した電気ヒータを利用して、気化混合器が加熱されて液体燃料と改質水とが気化、混合される。そして、電気ヒータのうちの少なくとも一つの電気ヒータによって改質器及び燃焼器が効率よく暖められ、改質器において燃料ガスが迅速に改質された後、燃料電池スタックに供給される。さらに、燃料電池スタックから排出される排ガスを燃焼器で燃焼させることで浄化することができ、その排ガスの燃焼熱によって燃料電池スタックや改質器を効率よく暖めることができる。このように、加熱手段が電気ヒータに限定され、起動昇温性が課題とされていた液体燃料を気化する燃料電池においても、液体燃料から可燃ガスへの変換を迅速に行い、発電時の昇温を効率的に行うことができる。また、2つ以上の電気ヒータで加熱することによって、発電時に必要な発電補助部を迅速に昇温させて燃料電池を短時間で稼動させることができる。さらに、本発明では、各電気ヒータや燃焼器を使用して、燃料電池スタックの上側及び下側からその燃料電池スタックを暖めることができる。このため、燃料電池の起動時及び発電時において、燃料電池スタックにおける熱分布を均一に保つことができ、高い発電効率を実現することができる。
【0013】
本発明の燃料電池において、電気ヒータに対して発電補助部が空隙を隔てて配置されていてもよい。このように電気ヒータを配置すると、電気ヒータの輻射熱によって、発電補助部全体を効率よく暖めることができる。また、局所的な加熱による発電補助部の損傷を防ぐことができる。
【0014】
発電補助部を構成する機器のうちの改質器は、燃料電池スタックの下側に位置する電気ヒータに最も近接して配置されていてもよい。このようにすると、改質器が燃焼器よりも早く暖められるので、その改質器にて燃料ガスを迅速に改質することができる。
【0015】
気化混合器は、燃料電池スタックとの間に改質器を挟み込む電気ヒータの加熱可能な範囲であってその電気ヒータに近接または接触した位置に配置される。この場合、改質器を加熱するための電気ヒータを利用して気化混合器が暖められ、液体燃料と改質水とを迅速に気化、混合することができる。また、改質器の近傍に気化器を配置できるため、気化混合器から改質器に燃料ガスを供給するための供給経路(配管など)を短くすることができる。
【0016】
改質器及び燃焼器に加えて気化混合器が、燃料電池スタックと電気ヒータとの間に配設されていてもよい。ここで、発電時に発熱する部位である燃料電池スタック及び燃焼器を発熱部と定義し、発電時に吸熱する部位である気化混合器及び改質器を吸熱部として定義したとき、発熱部と吸熱部とが交互に配置されていてもよい。具体的には、断熱容器内において、下方側から上方側に向けて電気ヒータ、気化混合器、燃焼器、改質器、燃料電池スタック、電気ヒータの順に配置されていてもよい。このようにすると、断熱容器内において、吸熱部と発熱部とが交互に配置される。このため、燃料電池スタック及び発電補助部の積層方向における温度差を抑えることが可能となり、燃料電池の発電効率を高めることができる。
【0017】
発熱補助部を構成する改質器及び燃焼器は、下側の電気ヒータと燃料電池スタックとの間に設ける必要はなく、発熱補助部の少なくとも一つの機器を上側の電気ヒータと燃料電池スタックとの間に設けてもよい。具体的には、燃料電池スタックとその下側に位置する電気ヒータとの間に燃焼器を配置し、燃料電池スタックとその上側に位置する電気ヒータとの間に改質器を配置してもよい。このように構成しても、上下の電気ヒータを利用して発熱補助部及び燃料電池スタックを効率よく暖めることができる。
【0018】
また、発電補助部を構成する機器のうちの気化混合器は、燃料電池スタックの下側に位置する電気ヒータに最も近接して配置されているとともに、その気化混合器のすぐ上側に改質器が配置されていてもよい。このようにすると、下側の電気ヒータによって気化混合器及び改質器を迅速に暖めることができる。この結果、燃料電池において、発電起動時に必要な液体燃料の気化や燃料ガスの改質を比較的短い時間で行うことが可能となる。
【0019】
電気ヒータは、その少なくとも一部が断熱容器を構成する断熱部材内に埋め込むようにして形成されていてもよい。このようにすると、電気ヒータの設置スペースが少なくて済むため、燃料電池の小型化が可能となる。また、断熱容器を構成する断熱部材を電気ヒータの断熱材として共通利用できるため、部品共通化によって燃料電池の製造コストを低く抑えることができる。
【0020】
断熱容器内に収納される燃料電池スタック及び発電補助部のサイズや配置などによって、その時々で必要となる加熱能力が上下の電気ヒータで異なる。このため、燃料電池スタックの上側に位置する電気ヒータと、燃料電池スタックの下側に位置する電気ヒータとでは、加熱可能な部分であるヒータ実効面積が異なっていてもよい。また、燃料電池スタックの上側に位置する電気ヒータと、燃料電池スタックの下側に位置する電気ヒータとでは、ヒータ最大出力が異なっていてもよい。このような電気ヒータを用いることで、無駄な電力を使用することなく、断熱容器内に収納される燃料電池スタック及び発電補助部を効率よく暖めることができる。
【0021】
燃料電池スタックが発電補助部の上方に積層配置されるとともに、燃料電池スタックと発電補助部とでは、それらの積層方向から見たときの投影面積が異なっていてもよい。例えば、発電補助部の投影面積を燃料電池スタックよりも小さくして燃料電池スタックの下方に発電補助部を配置する場合、発電補助部における燃焼器の加熱によって、燃料電池スタック内の燃料電池セルを効果的に暖めることができる。また、発電補助部の投影面積を燃料電池スタックよりも大きくして燃料電池スタックの下方に発電補助部を配置する場合、発電補助部における燃焼器の加熱によって、燃料電池スタック全体を均一に暖めることができる。
【0022】
燃焼器は、ガスバーナ及び燃焼触媒のうちの少なくともいずれかを用いて構成されている。なお、本発明において、燃焼器は、燃焼触媒を利用して排ガスを燃焼させて浄化する燃焼器に加え、ガスバーナを利用して排ガスを燃焼させる加熱器を含むものとする。ここで、燃焼器がガスバーナを用いて構成される場合、そのガスバーナの着火源として電気ヒータを用いてもよい。このようにすると、ガスバーナの着火源を別途用意する必要がなくなるため、燃料電池の部品コストを抑えることができる。
【0023】
気化混合器は、液体燃料と、燃料ガスの改質に必要な水とを気化して混合させるものである。この場合、気化混合器には、液体燃料の供給に先立ち水が供給される。このようにすると、気化混合器において、液体燃料の熱分解によるカーボンの析出を回避しつつ、燃料ガスと水蒸気とを確実に混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図2】燃料電池スタックを示す拡大断面図。
図3】上側の電気ヒータ及び下側の電気ヒータが同じヒータ実効面積を有する別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図4】発電補助部が電気ヒータに直接接触した状態で配置される別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図5】積層方向から見たときの投影面積が燃料電池スタックと等しい発電補助部を設けた別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図6】積層方向から見たときの投影面積が燃料電池スタックよりも大きい発電補助部を備えた別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図7】発電補助部が燃料電池スタックの上下に分割して配置された別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図8】ガスバーナからなる燃焼器を備えた別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
図9】燃料電池スタックと電気ヒータとの間に気化混合器が設けられた別の実施の形態における燃料電池を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0026】
本実施の形態の燃料電池10は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。図1に示されるように、燃料電池10は、平板形の燃料電池セル11を複数積層してなる燃料電池スタック12と、発電のための補助的な処理を行う発電補助部13と、燃料電池スタック12及び発電補助部13を収容する断熱容器14と、断熱容器14内の上側と下側に設けられる2つの電気ヒータ15,16とを備える。
【0027】
図2に示されるように、燃料電池スタック12を構成する燃料電池セル11は、空気極21、燃料極22及び固体電解質層23を有して構成され、発電反応により電力を発生する。なお、本実施の形態において、燃料電池スタック12における燃料電池セル11の積層数は20枚程度となっている。また、燃料電池スタック12には、燃料電池セル11に加えて、コネクタプレート24、セパレータ25、空気極側集電体27及び燃料極側集電体28等が設けられ、それらが複数個ずつ積層されている。
【0028】
より詳しくは、コネクタプレート24は、ステンレスなどの導電性材料によって形成されており、燃料電池セル11の厚み方向の両側に一対配置される。各コネクタプレート24により板厚方向での燃料電池セル11間の導通が確保される。隣り合う燃料電池セル11の間に配置されるコネクタプレート24は、インターコネクタとなり、隣り合う燃料電池セル11を区分する。
【0029】
セパレータ25は、ステンレスなどの導電性材料によって形成されており、矩形状の開口部29を中央部に有する略矩形枠状をなしている。セパレータ25は、燃料電池セル11間の仕切り板として機能する。
【0030】
固体電解質層23は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのセラミック材料(酸化物)によって矩形板状に形成されている。固体電解質層23は、セパレータ25の下面に固定されるとともに、セパレータ25の開口部29を塞ぐように配置されている。固体電解質層23は、酸素イオン伝導性固体電解質体として機能するようになっている。
【0031】
また、固体電解質層23の上面には、燃料電池スタック12に供給された酸化剤ガスに接する空気極21が貼付され、固体電解質層23の下面には、同じく燃料電池スタック12に供給された燃料ガスに接する燃料極22が貼付されている。即ち、空気極21及び燃料極22は、固体電解質層23の両側に配置されている。また、空気極21は、セパレータ25の開口部29内に配置され、セパレータ25と接触しないようになっている。なお、本実施の形態の燃料電池セル11では、セパレータ25の下方に燃料室31が形成されるとともに、セパレータ25の上方に空気室32が形成されている。
【0032】
本実施の形態の燃料電池セル11において、空気極21は、金属の複合酸化物であるLSCF(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8)によって矩形板状に形成されている。また、燃料極22は、ニッケルとイットリア安定化ジルコニアとの混合物(Ni−YSZ)によって矩形板状に形成されている。燃料電池セル11において、空気極21はカソード層として機能し、燃料極22はアノード層として機能する。空気極21は、空気極側集電体27によってコネクタプレート24に電気的に接続され、燃料極22は、燃料極側集電体28によってコネクタプレート24に電気的に接続されている。空気極側集電体27は、例えばSUS430系フェライト合金等の緻密な金属板からなる。一方、燃料極側集電体28は、燃料ガスの通過が可能なように、例えばニッケル製の多孔体からなる。
【0033】
図1に示されるように、本実施の形態の発電補助部13は、気化混合器35と改質器36と燃焼器37とを含んで構成されている。気化混合器35は、液体燃料(例えば、軽油など)と改質水とを気化して混合し、混合された燃料ガス及び水蒸気を改質器36に供給する。なお、液体燃料としては、軽油などの石油系液体燃料以外に、メタノールやエタノールなどのアルコール燃料を用いてもよい。
【0034】
改質器36は、気化混合器35で気化された燃料ガスと水蒸気とを改質反応させて水素濃度の高い燃料ガスに改質し、その燃料ガスを燃料電池スタック12に供給する。この燃料ガスは、燃料電池スタック12において、各燃料電池セル11の燃料室31に供給されて、燃料極22に接することで発電反応に使用される。
【0035】
燃焼器37は、燃焼触媒を有し、燃料電池スタック12(各燃料電池セル11の燃料室31)から排出される排ガスをその触媒を用いて燃焼させて浄化する。燃焼器37で浄化された排ガスは、排気管38を通じて断熱容器14の外部に排出される。
【0036】
燃料電池10には、その電池10の起動、発電及び停止に必要な制御を実行するための燃料電池制御装置41が設けられている。燃料電池制御装置41は、CPU、ROM、RAM、入出力ポート等からなる周知のコンピュータによって構成される。さらに、燃料電池10には、燃料電池スタック12(各燃料電池セル11の空気室32)に酸化剤ガス(具体的には空気)を供給する空気ポンプ42、気化混合器35に液体燃料を供給する燃料ポンプ43、気化混合器35に改質水を供給する給水ポンプ44等が設けられている。これらポンプ42〜44は、燃料電池制御装置41と電気的に接続されている。その制御装置41から出力される制御信号に基づいて、ポンプ42〜44が駆動され、空気、液体燃料及び改質水の供給タイミングや供給量が制御される。
【0037】
本実施の形態の燃料電池10では、断熱容器14内において、2つの電気ヒータ15,16が燃料電池スタック12を上下方向に挟み込むように配置される。また、下側の電気ヒータ16と燃料電池スタック12との間には、発電補助部13を構成する機器のうちの改質器36及び燃焼器37が配設されている。改質器36及び燃焼器37は、燃料電池スタック12と一体的に設けられている。これら燃料電池スタック12、改質器36及び燃焼器37によって発電モジュール39が構成されており、その発電モジュール39が2つの電気ヒータ15,16によって挟み込まれている。
【0038】
具体的には、発電補助部13における改質器36は、燃料電池スタック12の下側に位置する電気ヒータ16に最も近接して配置されている。この改質器36は、電気ヒータ16に対して空隙を隔てて配置されており、改質器36の上方に燃焼器37が設けられている。さらに、気化混合器35は、改質器36を挟み込んでいる下側の電気ヒータ16の加熱可能な範囲であってその電気ヒータ16に近接した位置に配置されている。このように発電補助部13を構成する各機器は、電気ヒータ16に対して空隙を隔てて配置されている。
【0039】
本実施の形態の燃料電池10では、燃料電池スタック12が発電補助部13(改質器36及び燃焼器37)の上方に積層配置されるとともに、燃料電池スタック12と発電補助部13とでは、積層方向の投影面積が燃料電池スタック12よりも発電補助部13のほうが小さくなるよう形成されている、つまり、燃料電池スタック12の下面の面積は、改質器36や燃焼器37の上面の面積よりも大きくなっている。
【0040】
燃料電池10において、断熱容器14内の各電気ヒータ15,16はヒータ電源46に接続され、ヒータ電源46は燃料電池制御装置41に接続されている。本実施の形態において、燃料電池スタック12の下側に配置する電気ヒータ16は、加熱可能な部分であるヒータ実効面積が上側の電気ヒータ15より小さく、ヒータ最大出力が上側の電気ヒータ15よりも小さいヒータである。
【0041】
燃料電池スタック12には、熱電対等からなるスタック温度検出器47が設けられており、気化混合器35にも、熱電対等からなる気化温度検出器48が設けられている。本実施の形態において、スタック温度検出器47は、燃料電池スタック12の燃料電池セル11の積層方向における上位、中位及び下位の各位置P1,P2,P3の温度を検出する検出部を有している。
【0042】
各温度検出器47,48は、燃料電池制御装置41に接続されている。燃料電池スタック12の各位置P1〜P3の温度や気化混合器35の温度に対応した検出信号が各温度検出器47,48から燃料電池制御装置41に入力される。燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47の検出信号に基づいて、ヒータ電源46に制御信号を出力することにより、ヒータ電源46から各電気ヒータ15,16への通電タイミングや供給電力(ヒータ出力)を制御する。また、燃料電池制御装置41は、気化温度検出器48の検出信号に基づいて、気化混合器35への液体燃料や改質水の供給タイミング(燃料ポンプ43及び給水ポンプ44の駆動タイミング)を制御する。
【0043】
燃料電池スタック12の出力端子51には、セルスタック電圧を検出する電圧検出器52が接続されており、その電圧検出器52が検出したセルスタック電圧が燃料電池制御装置41に取り込まれるようになっている。さらに、燃料電池スタック12の出力端子51には、燃料電池出力変換器53が接続されており、その出力変換器53は燃料電池制御装置41に接続されている。そして、燃料電池出力変換器53は、燃料電池制御装置41からの制御信号に基づいて作動し、燃料電池スタック12の出力電圧を所定規格の電圧に変換した後、その電圧を外部装置に出力する。
【0044】
次に、本実施の形態の燃料電池10の動作について説明する。
【0045】
先ず、燃料電池制御装置41は、ヒータ電源46に制御信号を出力し、そのヒータ電源46から各電気ヒータ15,16への通電を開始させる。この後、燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47からの検出信号に基づいて、燃料電池スタック12における上中下の各位置P1〜P3の温度を監視する。そして、燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47からの検出信号に基づいて、ヒータ電源46から各電気ヒータ15,16への供給電力を制御する。この結果、各電気ヒータ15,16によって、燃料電池スタック12及び発電補助部13からなる発電モジュール39が均一に昇温される。
【0046】
燃料電池制御装置41は、気化温度検出器48の検出信号に基づいて、気化混合器35の温度を判定する。燃料電池制御装置41は、気化混合器35の温度が改質水の気化が十分に可能な温度(本実施の形態では200℃)に達したと判定したとき、給水ポンプ44を駆動させて気化混合器35に改質水を供給する。さらに、燃料電池制御装置41は、気化温度検出器48の検出信号に基づいて、気化混合器35の温度が液体燃料の気化が十分に可能な温度(本実施の形態では230℃)に達したと判定したとき、燃料ポンプ43を駆動させて気化混合器35に液体燃料を供給する。このとき、気化混合器35では、液体燃料と改質水とが気化されて混合される。そして、混合された燃料ガスと水蒸気とが改質器36に導入される。改質器36では、燃料ガスと水蒸気とが改質反応され、水素濃度の高い燃料ガスが得られる。その燃料ガスが改質器36から燃料電池スタック12へ導入され、さらにそのスタック12における各燃料電池セル11の燃料室31に燃料ガスが供給される。
【0047】
また、燃料電池制御装置41は、燃料ポンプ43の駆動に同期させたタイミングで空気ポンプ42を駆動させる。この結果、空気ポンプ42から燃料電池スタック12に空気が導入されるとともに、各燃料電池セル11の空気室32に空気が供給される。そして、燃料電池セル11において、水素と酸素とが固体電解質層23を介して反応(発電反応)することにより、空気極21を正極、燃料極22を負極とする直流の電力が発生する。
【0048】
各燃料電池セル11において発電反応に使用されなかった燃料ガスや酸化剤ガスを含む排ガスは、燃料電池スタック12のガス排出経路(図示略)を通って燃焼器37に導入される。燃焼器37では、その排ガスが燃焼触媒により燃焼され浄化された後、排気管38を通じて断熱容器14の外部に排出される。
【0049】
このように燃焼器37において排ガスの燃焼が開始されると、その燃焼熱によって燃料電池スタック12が加熱される。このとき、上下の加熱バランスを保つため、燃料電池制御装置41は、ヒータ電源46に制御信号を出力し、ヒータ電源46から下側の電気ヒータ16への通電を停止させる。一方、上側の電気ヒータ15への通電は継続され、上側の電気ヒータ15と燃焼器37とによって燃料電池スタック12が昇温される。また、燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47からの検出信号に基づいて、燃料電池スタック12における上中下の各位置P1〜P3の温度を判定し、燃料電池スタック12における積層方向の各位置P1〜P3の温度バランスを保つように、ヒータ電源46から上側の電気ヒータ15への供給電力(ヒータ出力)を調整する。
【0050】
燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47からの検出信号に基づいて、燃料電池スタック12の温度(例えば上中下の各位置P1〜P3の平均温度)が480℃に達したと判定したとき、空気ポンプ42、燃料ポンプ43及び給水ポンプ44の出力を増大させる。この結果、燃料電池スタック12に供給される燃料ガス及び酸化剤ガスを増量させる。このとき、燃焼器37による発熱量が増大するため、燃料電池制御装置41は、その発熱量に応じてヒータ電源46を制御することでヒータ電源46から上側の電気ヒータ15に供給される電力を調整する。具体的には、燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47の検出信号に基づいて、燃料電池スタック12における各位置P1〜P3の温度バランスを保つように、上側の電気ヒータ15のヒータ出力を調整する。このようにして、発電開始温度である610℃の温度まで燃料電池スタック12の温度を昇温させる。
【0051】
またこのとき、燃料電池制御装置41は、電圧検出器52の検出信号に基づいて、セルスタック電圧を判定する。そして、燃料電池制御装置41は、燃料電池スタック12の温度とセルスタック電圧とに基づいて、燃料電池12の発電可能状態と判断した場合、燃料電池出力変換器53を作動させる。この結果、燃料電池スタック12の出力電圧が所定規格の電圧に変換された後、燃料電池出力変換器53から外部装置に出力される。
【0052】
燃料電池10の発電時には、燃料電池制御装置41は、スタック温度検出器47の検出信号に基づいて、燃料電池スタック12の各位置P1〜P3の温度を監視する。そして、燃料電池制御装置41は、燃焼器37による発熱量を考慮して、ヒータ電源46に制御信号を出力し、燃料電池スタック12の各位置P1〜P3の温度を均一に保つように、電気ヒータ15のヒータ出力を制御する。
【0053】
この後、燃料電池10の停止時には、燃料電池制御装置41は、各ポンプ42〜44の駆動を停止させた後、ヒータ電源46による電気ヒータ15への通電を停止させる。以上によって燃料電池10の発電処理が終了する。
【0054】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0055】
(1)本実施の形態の燃料電池10では、燃料電池スタック12を収容する断熱容器14内において、燃料電池スタック12を上下方向に挟み込むように2つの電気ヒータ15,16が配置されている。そして、燃料電池スタック12と下側の電気ヒータ16との間に、発電補助部13を構成する改質器36及び燃焼器37が配設されている。このように構成すると、燃料電池10の起動時において、電気ヒータ16によって改質器36及び燃焼器37を早期に昇温させることができる。このため、気化混合器35で気化された燃料ガスを改質器36で改質し、燃料電池スタック12に早期に供給することができる。さらに、燃料電池スタック12から排出される排ガスを燃焼器37で燃焼させることで浄化することができ、その排ガスの燃焼熱によって燃料電池スタック12及び改質器36を効率よく暖めることができる。このように、本実施の形態では、加熱手段が電気ヒータ15,16に限定され、起動昇温性が課題とされていた液体燃料を気化する燃料電池10においても、液体燃料から燃料ガス(可燃ガス)への変換を迅速に行い、発電時の昇温を効率的に行うことができる。また、電気ヒータ15,16で加熱することによって、発電時に必要な改質器36や燃焼器37を迅速に昇温させて燃料電池10を短時間で稼動させることができる。さらに、各電気ヒータ15,16や燃焼器37を使用して燃料電池スタック12の上側及び下側から燃料電池スタック12を暖めることができる。このため、燃料電池10は、起動時及び発電時において燃料電池スタック12における熱分布を均一に保つことができ、高い発電効率を実現することができる。
【0056】
(2)本実施の形態の燃料電池10では、電気ヒータ16に対して発電補助部13が空隙を隔てて配置されている。このように発電補助部13を配置すると、電気ヒータ16の輻射熱によって、発電補助部13全体を効率よく暖めることができる。さらに、局所的な加熱による発電補助部13の損傷を防ぐことができる。
【0057】
(3)本実施の形態の燃料電池10では、発電補助部13を構成する機器のうちの改質器36は、燃料電池スタック12の下側に位置する電気ヒータ16に最も近接して配置されている。このようにすると、改質器36を早く暖めることができるため、燃料ガスを迅速に改質することが可能となる。
【0058】
(4)本実施の形態の燃料電池10では、気化混合器35は、燃料電池スタック12との間に改質器36を挟み込む下側の電気ヒータ16の加熱可能な範囲であって電気ヒータ16に近接した位置に配置されている。この場合、改質器36を加熱するための下側の電気ヒータ16を利用して気化混合器35が暖められ、液体燃料を迅速に気化することができる。また、改質器36の近傍に気化混合器35を配置できるため、気化混合器35から改質器36に燃料ガスを供給するための供給経路を短くすることができる。
【0059】
(5)本実施の形態の燃料電池10において、下側の電気ヒータ16として、加熱可能な部分であるヒータ実効面積及びヒータ最大出力が上側の電気ヒータ15より小さいものを用いている。燃料電池10では、燃料電池スタック12の下側に燃焼器37が配置され、燃焼器37によって燃料電池スタック12を加熱できる。このため、下側の電気ヒータ16としてヒータ実効面積及びヒータ最大出力の小さいヒータを用いた場合でも、燃料電池スタック12及び発電補助部13を効率よく暖めることができる。
【0060】
(6)本実施の形態の燃料電池10において、気化混合器35には、液体燃料の供給に先立ち改質水が供給される。このようにすると、気化混合器35において、液体燃料の熱分解によるカーボンの析出を回避しつつ、燃料ガスと水蒸気とを確実に混合することができる。
【0061】
(7)本実施の形態の燃料電池10では、燃料電池スタック12が発電補助部13(燃焼器37)の上方に積層配置されている。そして、燃料電池スタック12と発電補助部13の改質器36及び燃焼器37とでは、積層方向の投影面積が燃料電池スタック12よりも発電補助部13のほうが小さくなるよう形成されている。また、改質器36及び燃焼器37が燃料電池スタック12に一体的に設けられている。このように構成すると、燃焼器37の発熱によって、燃料電池スタック12の中央部分に設けられる燃料電池セル11を確実に昇温させることができる。
【0062】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0063】
・上記実施の形態の燃料電池10では、2つの電気ヒータ15,16を備えるものであったが、燃料電池スタック12の上下に挟み込むように各電気ヒータ15,16を配置するものであれば、3つ以上の電気ヒータを備えていてもよい。具体的には、例えば燃料電池スタック12の上側に2つの電気ヒータを配置し、下側に1つの電気ヒータを配置してもよい。
【0064】
・上記実施の形態の燃料電池10では、上側の電気ヒータ15と下側の電気ヒータ16とではヒータ実効面積及びヒータ最大出力が異なるヒータを用いていたが、これに限定されるものではない。図3に示される燃料電池10Aのように、燃料電池スタック12の下側に配置する電気ヒータ16Aとして、ヒータ実効面積及びヒータ最大出力が上側の電気ヒータ15と同じヒータを用いてもよい。この場合、部品共通化によるコスト削減を図ることが可能となる。
【0065】
また、下側の電気ヒータとしてヒータ実効面積が十分に広いヒータを用いる場合、図4に示される燃料電池10Bのように、電気ヒータ16Aと発電補助部13(改質器36)を直接接触させてもよい。このように、吸熱を伴う改質器36を電気ヒータ16Aに直接接触させると、起動時にいち早く改質器36の温度を上げることができる。このため、燃料電池スタック12への燃料ガスの投入タイミングを早めることができ、起動時間を短縮することができる。
【0066】
・上記実施の形態の燃料電池10,10A,10Bにおいて、発電補助部13とその上方に積層配置される燃料電池スタック12とは、積層方向の投影面積が燃料電池スタック12よりも発電補助部13のほうが小さくなるよう形成されていたが、これに限定されるものではない。例えば、図5に示される燃料電池10Cのように、燃料電池スタック12と発電補助部13A(改質器36A及び燃焼器37A)とについて、それらの積層方向からみたときの投影面積がほぼ同じ面積となるように形成してもよい。さらに、図6に示される燃料電池10Dのように、改質器36B及び燃焼器37Bのサイズを大きくし、発電補助部13Bと燃料電池スタック12とにおいて、積層方向の投影面積が燃料電池スタック12よりも発電補助部13Bのほうが大きくなるよう形成してもよい。このようにすると、発電補助部13Bにおける燃焼器37Bの発熱によって、断熱容器14内全体を効率よく昇温させることができる。
【0067】
・上記実施の形態の燃料電池10,10A〜10Dでは、燃料電池スタック12とその下側に位置する電気ヒータ16,16Aとの間に、発電補助部13,13A,13Bを構成する燃焼器37,37A,37B及び改質器36,36A,36Bを配置するものであったが、これに限定されるものではない。図7に示される燃料電池10Eのように、燃料電池スタック12とその下側に位置する電気ヒータ16との間に燃焼器37が配置され、燃料電池スタック12とその上側に位置する電気ヒータ15との間に改質器36が配置されていてもよい。つまり、発電補助部13Cを構成する改質器36及び燃焼器37が燃料電池スタック12の上側及び下側に分割して配置されることとなる。またここでは、気化混合器35は、改質器36を挟み込んでいる上側の電気ヒータ15に近接した位置に配置されている。このように、燃料電池10Eを構成した場合でも、上側の電気ヒータ15と下側の電気ヒータ16とを用いて発熱補助部13C及び燃料電池スタック12を効率よく暖めることができる。なお、燃料電池10Eとは逆に、燃料電池スタック12の下側に改質器36を配置し、燃料電池スタック12の上側に燃焼器37を配置して燃料電池を構成してもよい。
【0068】
・上記実施の形態の燃料電池10,10A〜10Eにおいて、燃焼器37,37A,37Bは、燃焼触媒を含むものであったが、これに限定されるものではない。図8に示される燃料電池10Fのように、燃焼触媒に代えてガスバーナを用いて構成される燃焼器37C(加熱器)を備えていてもよい。図8に示す燃焼器37Cを構成するガスバーナは、パイプ状に細長く形成され、その始端が燃料電池スタック12の上面に接続されている。さらに、燃焼器37Cのガスバーナは、上側の電気ヒータ15の近傍を通過するとともに、燃料電池スタック12の側面及び下面の近傍に沿って配設されている。この燃焼器37Cでは、ガスバーナの着火源として上側の電気ヒータ15を用い、排ガスを燃焼させる。またこの場合、燃焼器37Cのガスバーナの着火に伴って電気ヒータ15への通電を停止させてもよい。さらに、燃焼器37Cのガスバーナが失火した場合には、電気ヒータ15を用いてそのガスバーナを再着火させるように構成する。このようにすると、電気ヒータ15を燃焼器37C(ガスバーナ)の着火源として共通使用することにより、燃料電池10Fの部品コストを低く抑えることができる。また、パイプ状のガスバーナによって燃料電池スタック12の周囲を効率よく暖めることが可能となる。
【0069】
・上記実施の形態の燃料電池10,10A〜10Dでは、燃料電池スタック12とその下側に位置する電気ヒータ16との間に、発電補助部13,13A,13Bを構成する改質器36A,36B及び燃焼器37,37A,37Bが設けられるものであったが、これに限定されるものではない。図9に示される燃料電池10Gのように、発熱補助部13Dを構成する改質器36及び燃焼器37に加えて気化混合器35Aが、燃料電池スタック12と下側の電気ヒータ16との間に配設されていてもよい。燃料電池10Gでは、断熱容器14内において下方側から上方側に向けて電気ヒータ16、気化混合器35A、燃焼器37、改質器36、燃料電池スタック12、電気ヒータ15の順に配置されている。燃料電池10Gの発電時には、燃料電池スタック12及び燃焼器37は発熱する部位であり、気化混合器35A及び改質器36は吸熱する部位である。従って、これら燃料電池スタック12及び燃焼器37を発熱部と定義し、気化混合器35A及び改質器36を吸熱部と定義したとき、断熱容器14内には、発熱部と吸熱部とが交互に配置されている。燃料電池10Gでは、各機器をこのように配置することによって、断熱容器14内における熱分布が所定の箇所に偏らないように構成している。また、燃料電池10Gにおいて、発電補助部13Dを構成する気化混合器35Aは、燃焼器37に対して空隙を隔てて配置されている。なお、発電補助部13における熱分布が偏らない場合には、改質器36や燃焼器37と一体的に気化混合器35Aを設けてもよい。
【0070】
図9に示される燃料電池10Gでは、発電補助部13を構成する機器として、下側から気化混合器35A、燃焼器37、改質器36の順に配置されていたが、これらの配置は適宜変更してもよい。例えば下側から気化混合器35A、改質器36、燃焼器37の順に配置されていてもよい。気化混合器35A及び改質器36は、吸熱部となる部位であるが、これら機器を電気ヒータ15の近傍に配置させることで、電池起動時において各機器を迅速に昇温させることができる。このため、電池起動後に比較的短時間で液体燃料の気化や燃焼ガスの改質を行うことが可能となり、燃料電池の起動時間を短縮することが可能となる。
【0071】
・上記実施の形態では、電気ヒータ15,16,16Aを断熱容器14とは別部材として作製し、上側の電気ヒータ15を断熱容器14の上面に固定し、下側の電気ヒータ16,16Aを断熱容器14の下面に固定していたが、これに限定されるものではない。電気ヒータ15,16,16Aは、その少なくとも一部が断熱容器14を構成する断熱部材に埋め込むように形成されていてもよい。具体的には、断熱容器14において、天板となる断熱部材内に上側の電気ヒータ15を埋め込み、底板となる断熱部材内に下側の電気ヒータ16を埋め込むようにして各電気ヒータ15,16を設けてもよい。つまり、電気ヒータ15,16の断熱材を断熱容器14の断熱部材と共通化した形で燃料電池を構成する。このようにすると、燃料電池の小型化を図ることができる。また、部品共通化によって燃料電池の製造コストを低く抑えることができる。
【0072】
・上記実施の形態では、燃料電池スタック12の温度を検出するスタック温度検出器47、及び気化混合器35,35Aの温度を検出する気化温度検出器48を備えるものであったが、これに限定されるものではない。予め燃料電池10の運転試験等を行って、燃料電池スタック12の温度変化と気化混合器35,35Aの温度変化との相関性を示すデータを取得しておき、燃料電池スタック12の温度に基づいて気化混合器35,35Aの温度を推定するように構成してもよい。この場合、気化温度検出器48を省略することができ、燃料電池10の部品コストを低減することができる。
【0073】
・上記実施の形態の燃料電池10では、燃焼器37における排ガスの燃焼に伴い、下側の電気ヒータ16への通電を停止させていたが、これに限定されるものではない。例えば、燃料電池スタック12を加熱するために燃焼器37の発熱量では不十分となる場合、下側の電気ヒータ16を駆動して燃料電池スタック12を暖めるように構成してもよい。但し、この場合でも燃焼器37における燃焼熱を考慮して電気ヒータ16のヒータ出力を調整することにより、燃料電池スタック12を効率的に昇温させるようにする。
【0074】
・上記実施の形態では、固体酸化物形燃料電池に具体化するものであったが、これ以外に溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)などの他の燃料電池に具体化してもよい。
【0075】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0076】
(1)手段1において、前記気化器は、前記燃料電池スタックとの間に前記改質器を挟み込む前記電気ヒータの加熱可能な範囲であってその電気ヒータに近接または接触した位置に配置されてることを特徴とする燃料電池。
【0077】
(2)手段1において、前記改質器及び前記燃焼器に加えて前記気化器が、前記燃料電池スタックと前記電気ヒータとの間に配設されていることを特徴とする燃料電池。
【0078】
(3)手段1において、前記燃料電池スタックとその下側に位置する前記電気ヒータとの間に前記燃焼器が配置され、前記燃料電池スタックとその上側に位置する前記電気ヒータとの間に前記改質器が配置されていることを特徴とする燃料電池。
【0079】
(4)手段1において、前記発電補助部を構成する機器のうちの前記気化器は、前記燃料電池スタックの下側に位置する前記電気ヒータに最も近接して配置されているとともに、その気化器のすぐ上側に前記改質器が配置されていることを特徴とする燃料電池。
【0080】
(5)手段1において、前記電気ヒータは、その少なくとも一部が前記断熱容器を構成する前記断熱部材内に埋め込むようにして形成されていることを特徴とする燃料電池。
【0081】
(6)手段1において、前記燃料電池スタックの上側に位置する前記電気ヒータと、前記燃料電池スタックの下側に位置する前記電気ヒータとでは、加熱可能な部分であるヒータ実効面積が異なることを特徴とする燃料電池。
【0082】
(7)手段1において、前記燃料電池スタックの上側に位置する前記電気ヒータと、前記燃料電池スタックの下側に位置する前記電気ヒータとでは、ヒータ最大出力が異なることを特徴とする燃料電池。
【0083】
(8)手段1において、前記燃料電池スタックが前記発電補助部の上方に積層配置されるとともに、前記燃料電池スタックと前記発電補助部とでは、それらの積層方向から見たときの投影面積が異なることを特徴とする燃料電池。
【0084】
(9)手段1において、前記燃焼器は、ガスバーナ及び燃焼触媒のうちの少なくともいずれかを用いて構成されていることを特徴とする燃料電池。
【0085】
(10)技術的思想(9)において、前記ガスバーナの着火源として前記電気ヒータを用いることを特徴とする燃料電池。
【0086】
(11)手段1において、前記気化器は、前記液体燃料と、前記燃料ガスの改質に必要な水とを気化して混合させる気化混合器であることを特徴とする燃料電池。
【0087】
(12)技術的思想(11)において、前記気化混合器には、前記液体燃料の供給に先立ち前記水が供給されることを特徴とする燃料電池。
【0088】
(13)手段1において、前記電解質層は、固体酸化物からなる固体電解質層であることを特徴とする燃料電池。
【符号の説明】
【0089】
10,10A〜10G…燃料電池
11…燃料電池セル
12…燃料電池スタック
13,13A〜13D…発電補助部
14…断熱容器
15…上側の電気ヒータ
16,16A…下側の電気ヒータ
21…空気極
22…燃料極
23…電解質層としての固体電解質層
35,35A…気化器としての気化混合器
36,36A,36B…改質器
37,37A〜37C…燃焼器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9