特許第6169921号(P6169921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6169921
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】接合金具
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/16 20060101AFI20170713BHJP
   E04B 9/18 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   E04B9/16 B
   E04B9/18 Q
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-173767(P2013-173767)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-40464(P2015-40464A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】尾方 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 晴夫
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 実公平05−026173(JP,Y2)
【文献】 国際公開第2011/020166(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B9/12−9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野縁受けと、
溝開口部が上方を向いた溝形材からなり、前記野縁受けの下面に当接する野縁と、
を、その交差部において接合する接合金具において、
前記野縁受けを挟持する第一金物及び第二金物を備え、
前記第一金物は、
前記野縁の長手方向と直交する垂直面に沿って延びる板状をなし、前記野縁受けの一方側部に当接する第一当接片部と、
前記垂直面に沿って延びる板状をなし、前記第一当接片部から下方に延びて前記野縁の各側方に位置する一対の垂下片部と、
各々の前記垂下片部の内側端部において前記野縁の長手方向と平行に延びる板状の延設片部と、を含み、
前記第一当接片部と前記一対の垂下片部とは面一に構成され、
前記第二金物は、
前記野縁受けの他方側部に当接する第二当接片部と、
前記第二当接片部の下端から前記第一当接片部へ前記溝開口部を通過して延びる水平片部と、
前記水平片部の端部から起立して、前記一方端部側の前記当接片部の外側に位置する起立片部と、
前記水平片部に設けられ、前記溝開口部の周縁に係合する係合部と、を含む、
ことを特徴とする接合金具。
【請求項2】
前記第二当接片部と前記水平片部との隅角部、及び、前記水平片部と前記起立片部との隅角部の少なくともいずれか一方に、リブを形成した、
ことを特徴とする請求項に記載の接合金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は野縁と野縁受けとを互いに接合する接合金具に関する。
【背景技術】
【0002】
天井下地を構成する金属製の野縁及び野縁受けとして、溝形鋼に代表される溝形材を用いたものが知られている。野縁はその溝開口部が上方を向いた状態で野縁受けの下面に当接するように配置される。野縁と野縁受けとは互いに直交するように配設され、その交差部において接合金具により接合される。この種の接合金具は、一般に、野縁受けに固定される部分と、野縁の溝開口部周縁に係合する爪状の係合部とを備え、野縁受けから野縁を吊り下げるようにして両者を接合する(例えば特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−44205号公報
【特許文献2】特開2012−172487号公報
【特許文献3】特開2007−23738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
野縁はその上部(溝開口部周縁)が支持位置となるため、地震や風荷重による慣性力を天井が受けた場合に、野縁や接合金具が変形する場合がある。野縁や接合金具が変形すると野縁と野縁受けとの間の接合力が低下する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、野縁の変形を抑制し、野縁と野縁受けとの接合力を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、野縁受けと、溝開口部が上方を向いた溝形材からなり、前記野縁受けの下面に当接する野縁と、を、その交差部において接合する接合金具において、前記野縁受けを挟持する第一金物及び第二金物を備え、前記第一金物は、前記野縁の長手方向と直交する垂直面に沿って延びる板状をなし、前記野縁受けの一方側部に当接する第一当接片部と、前記垂直面に沿って延びる板状をなし、前記第一当接片部から下方に延びて前記野縁の各側方に位置する一対の垂下片部と、各々の前記垂下片部の内側端部において前記野縁の長手方向と平行に延びる板状の延設片部と、を含み、前記第一当接片部と前記一対の垂下片部とは面一に構成され、前記第二金物は、前記野縁受けの他方側部に当接する第二当接片部と、前記第二当接片部の下端から前記第一当接片部へ前記溝開口部を通過して延びる水平片部と、前記水平片部の端部から起立して、前記一方端部側の前記当接片部の外側に位置する起立片部と、前記水平片部に設けられ、前記溝開口部の周縁に係合する係合部と、を含む、ことを特徴とする接合金具が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、野縁の変形を抑制し、野縁と野縁受けとの接合力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る接合金具の使用態様を示す斜視図。
図2】(A)は図1の接合金具の分解斜視図、(B)及び(C)はリブの説明図。
図3】(A)は図1の線I-Iに沿う断面図、(B)は図3(A)の線III-IIIに沿う断面図。
図4】(A)は野縁の変形態様の説明図、(B)は従来例の説明図、(C)は垂下片部による変形抑制効果の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図3を参照して本発明の一実施形態に係る接合金具の構成について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る接合金具1の使用態様を示す斜視図、図2(A)は接合金具1の分解斜視図、図3(A)は図1の線I-Iに沿う接合金具1の断面図、図3(B)は図3(A)の線III-IIIに沿う接合金具1の断面図である。図中、矢印X及びYは互いに直交する水平方向、矢印Zは上下方向(垂直方向)を示しており、各方向は接合金具1の使用時を基準としている。
【0010】
接合金具1は、野縁受け100と野縁110とを接合する金具である。野縁受け100と野縁110とは互いに直交するように水平に配設され、野縁受け100は例えば吊りボルトにより天井躯体から吊り下げられる。野縁受け100又は野縁110と天井躯体との間にはブレース材を設けてもよい。
【0011】
野縁受け100はY方向に延設されており、上板部101と下板部102とこれらを接続する側板部103とを備え、例えば、C形の溝形鋼であるが角筒材等であってもよい。野縁110はX方向に延設されており、野縁110は底板部111と一対の側板部112とを備え、溝開口部110aが上方を向いた溝形材からなり、側板部112の上端部は内側に曲折されて溝開口部110aの周縁112aを画定すると共に、断面略逆U字型をなして接合金具1と係合する係合部を形成している。野縁110は例えば、C形のリップ溝形鋼である。野縁110は、周縁112aが野縁受け100の下面(下板部102)に当接して互いに上下に重なった状態に配置される。
【0012】
接合金具1は、本実施形態の場合、金物10と金物20との二部材構成となっており、ボルト30とナット31とにより両者を締結することで野縁受け100と野縁110とをこれらの交差部において接合する。
【0013】
金物10は、一枚の金属板から型抜き及び曲げ加工により一体に形成されており、締結片部11と、当接片部12と、一対の垂下片部13と、一対の延設片部14と、段差部15と、を含む。締結片部11は、野縁110の幅方向の垂直断面方向(Z−Y平面の面方向。以下同じ。)に延びる板状をなし、ボルト30が挿通する孔11aが形成されている。
【0014】
当接片部12は、段差部15を介して締結片部11に接続されており、野縁110の幅方向の垂直断面方向に延びる板状をなしている。すなわち、当接片部12は野縁110の長手方向と直交する垂直面に沿って延びている。
【0015】
段差部15は、締結片部11と当接片部12との間にX方向の段差を形成し、野縁受け100の上板部101に当接する水平板状をなしている。金物20の構成次第で段差部15を省略し、締結片部11と当接片部12とを面一に構成することも可能である。
【0016】
当接片部12には野縁受け100の一方側部が当接する。本実施形態の場合、当接片部12は野縁受け100の溝開口部側に位置しており、上板部101及び下板部102の端縁が当接しているが、側板部103側が当接する構成としてもよい。
【0017】
一対の垂下片部13は、互いにY方向に離間して当接片部12に接続されており、野縁110の幅方向の垂直断面方向に当接片部12から下方に延びる板状をなしている。すなわち、一対の垂下片部13は野縁110の長手方向と直交する垂直面に沿って延びている。
【0018】
当接片部12と一対の垂下片部13とは全体として、下部中央が切り欠かれた門型をなしており、一対の垂下片部13間を野縁110が挿通する。このため、一対の垂下片部13は、それぞれ、野縁110の側板部112の側方に位置している。
【0019】
垂下片部13は、後述する野縁110の変形抑制の点で、側板部112のZ方向中央部よりも下方まで延設されることが好ましく、更に、側板112の下端(底板部111)よりも下方まで延設されることが好ましい。本実施形態の場合、当接片部12と一対の垂下片部13とは面一に構成されているが、当接片部12と一対の垂下片部13との間に段差部15のような曲折部を介在させてもよい。ただし、面一に構成する方が、金物10の曲折加工数を低減することができる。
【0020】
延設片部14は、垂下片部13毎に設けられており、垂下片部13の内側端部(Y方向で側板部112側の端部)において野縁110の長手方向(X方向)と平行に延びる板状をなしている。延設片部14を設けたことにより、垂下片部13と野縁110との間の水平慣性力の伝達を分散できる。本実施形態では、延設片部14は垂下片部13の内側端部からX方向の一方のみに延設しているが、X方向の双方向に延設されるように構成してもよい。ただし、X方向の一方のみに延設する構成の方が、金物10の加工上では有利な場合がある。
【0021】
金物20は、一枚の金属板から型抜き及び曲げ加工により一体に形成されており、締結片部21と、当接片部22と、水平片部23と、起立片部24と、一対の係合部25と、段差部26と、を含む。締結片部21は、野縁110の幅方向の垂直断面方向に延びる板状をなし、ボルト30が挿通する孔21aが形成されている。
【0022】
当接片部22は、段差部26を介して締結片部21に接続されており、野縁110の幅方向の垂直断面方向に延びる板状をなしている。段差部26は、締結片部21と当接片部22との間にX方向の段差を形成し、野縁受け100の上板部101に当接する水平板状をなしている。金物10の構成次第で段差部26を省略し、締結片部21と当接片部22とを面一に構成することも可能である。
【0023】
当接片部22には野縁受け100の他方側部が当接する。本実施形態の場合、当接片部22は野縁受け100の側板部103側に位置しており、側板部103が面で当接しているが、野縁受け100の溝開口部側が当接する構成としてもよい。ボルト30とナット31との締結により、野縁受け100は当接片部12と当接片部13とに挟持され、接合金具1が固定される。
【0024】
水平片部23は、当接片部22の下端から金物10の当接片部12側へ野縁110の水平断面方向(X−Y平面の面方向。)に延びる板状をなしている。水平片部23は、野縁110の底板部111の幅(係合部112a間の距離)よりも幅狭であり、溝開口部110aを通過して延びX方向に延びている。
【0025】
起立片部24は、水平片部23の端部から起立して、野縁110の幅方向の垂直断面方向に延びる板状をなしている。起立片部24は金物10の当接片部12の外側(野縁受け100と反対側)に位置している。野縁受け100は、その周囲が、段差部15及び26、当接片部12及び22並びに水平片部23で囲包され、かつ、起立片部24が当接片部12の外側に位置して、金物10と金物20との開き止めとなっている。よって、ボルト30とナット31との締結により接合金具1と野縁受け100との固定を強固なものとし、野縁受け100の抜け止めや回り止め効果を向上する。
【0026】
図2(A)に示すように、水平片部23と起立片部24との間の隅角部CRや、当接片部22と水平片部23との間の隅角部CRには、少なくとも一方に、補強用のリブを形成してもよい。図2(B)はその一例を示しており、リブRBを設けた隅角部CRを外側から見た斜視図であり、図2(C)は図2(B)の線II-IIに沿う断面図である。同図のリブRBは、隅角部CRをその外側から凹状に変形して形成された三角形状のリブである。このようなリブRBを例えば水平片部23と起立片部24との間の隅角部CRに形成すると、水平片部23と起立片部24とが開くことを防止できる。当接片部22と水平片部23とについても同様である。
【0027】
次に、係合部25について説明する。係合部25は、水平片部23の側部(Y方向の両端縁)から起立して形成されており、図3(B)に示すように野縁110の係合部112aと係合する。このように野縁110は接合金具1を介して野縁受け100から吊り下げられるようにして野縁受け100に接合されることになる。
【0028】
次に、係る構成からなる接合金具1の耐震補強機能について説明する。本実施形態のように、野縁110の係合部112aと係合する形式の接合金具を利用した場合、地震や風荷重により、水平慣性力が天井に作用すると、図4(A)に示すように、野縁110はその上部に支持位置が存在する一方、底板部111に天井板(不図示)が固定されることから、その幅方向に変形する場合がある。これにより、側板部112や係合部112aが開いたり、接合金具自体が変形すると、野縁110と野縁受け110との接合力が低下する。
【0029】
従来例として、例えば、図4(B)に示すように断面C字型の金物200を野縁110の上から装着したものがあるが、上部201と側部202との隅角部に応力が集中して側部202が開いてしまう場合がある。
【0030】
これに対して本実施形態の接合金具1では、垂下片部13及びこれが接続される当接片部12を、野縁110の幅方向の垂直断面方向に延びる板状としたので、応力が集中するような隅角部がなく、図4(C)に示すように野縁110に対する変形抑制効果を向上できる。また、本実施形態では、垂下片部13に延設片部14が設けられているので、野縁110の底板部111に近い位置で、水平慣性力を野縁110の側板部112に伝達することができ、接合金具1と野縁110の側板部112との間での水平慣性力の伝達を分散でき、変形抑制効果を更に向上できる。
【0031】
以上の通り、本実施形態の接合金具1によれば、野縁110の変形を抑制し、野縁110と野縁受け100との接合力を向上することができる。
図1
図2
図3
図4