(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリカ粒子(成分A)と前記水溶性高分子化合物(成分B)との質量比(シリカ粒子の質量/水溶性高分子化合物(成分B)の質量)が1〜50である、請求項1に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、上記一般式(1)で表される構成単位を含み、重量平均分子量が2万以上100万以下の水溶性高分子化合物(成分B)がシリコンウェーハ用研磨液組成物(以下、「研磨液組成物」と略称する場合もある。)に含まれることにより、良好な生産性が担保される研磨速度を確保しながら、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)を顕著に低減できるという知見に基づく。
【0017】
本発明の効果発現機構の詳細は明らかではないが、以下のように推定している。研磨液組成物を用いて研磨されたシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)は、研磨粒子の大きさ(粒子径)に比例する切削力等に影響を受けている。具体的には、研磨液組成物の調製に用いられる水溶性高分子化合物のシリカ粒子との相互作用が強すぎる場合、シリカ粒子同士の凝集を抑制できず、研磨液組成物の保存安定性が低下し、シリカ粒子の凝集物(二次粒子)の粒子径(分散粒径)が大きくなる。その結果、切削力が大きくなりすぎ、シリコンウェーハの表面粗さは悪化してしまう。
【0018】
しかし、水溶性高分子化合物(成分B)は、所定の重量平均分子量を有しており、その構成単位中に、シリカ粒子と相互作用する親水性を呈する部位であるアミド基と、シリコンウェーハと相互作用する疎水性を呈する部位であるアルキル基、モノヒドロキシアルキル基又はジヒドロキシアルキル基の両方を含む。そのため、水溶性高分子化合物(成分B)がシリカ粒子とシリコンウェーハ表面の双方に適度に吸着する。シリカ粒子に水溶性高分子化合物(成分B)が適度に吸着されることによって、シリカ粒子の凝集に起因するシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の悪化が抑制される。
【0019】
また、一般的には、アルカリ条件ではシリカ粒子とシリコンウェーハの表面電荷はともに負に帯電しており、その電荷反発によってシリカ粒子がウェーハに接近できず、研磨速度が十分に発現できない。しかし、本発明では、水溶性高分子化合物(成分B)を存在させることにより、水溶性高分子化合物(成分B)がシリカ粒子とウェーハの両方の表面に吸着することから、水溶性高分子化合物(成分B)が、シリカ粒子とウェーハとのバインダーとして機能する。その結果、シリカ粒子とウェーハとの相互作用が強くなり、シリカ粒子による研磨が効率的に進行するため、水溶性高分子化合物(成分B)はシリコンウェーハの良好な研磨速度の確保に寄与しているものと考えられる。
【0020】
このように、本発明では、上記一般式(1)で表される構成単位を含む水溶性高分子化合物(成分B)が、シリカ粒子同士の凝集を抑制することで、シリコンウェーハの良好な表面粗さ(ヘイズ)を達成するとともに、シリカ粒子とシリコンウェーハとのバインダーとして機能することで、良好な研磨速度の確保に寄与している。但し、本発明はこれらの推定に限定されるものではない。
【0021】
[シリカ粒子(成分A)]
本発明の研磨液組成物には、研磨材としてシリカ粒子が含まれる。シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ等が挙げられるが、シリコンウェーハの表面平滑性を向上させる観点から、コロイダルシリカがより好ましい。
【0022】
シリカ粒子の使用形態としては、操作性の観点からスラリー状が好ましい。本発明の研磨液組成物に含まれる研磨材がコロイダルシリカである場合、アルカリ金属やアルカリ土類金属等によるシリコンウェーハの汚染を防止する観点から、コロイダルシリカは、アルコキシシランの加水分解物から得たものであることが好ましい。アルコキシシランの加水分解物から得られるシリカ粒子は、従来から公知の方法によって作製できる。
【0023】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径は、研磨速度の確保の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、30nm以上が更により好ましい。また、シリカ粒子の平均一次粒子径は、研磨速度の確保とシリコンウェーハの表面粗さの低減の両立の観点から、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、40nm以下が更に好ましい。
【0024】
特に、シリカ粒子としてコロイダルシリカを用いた場合には、平均一次粒子径は、研磨速度の確保の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、30nm以上が更により好ましい。また、コロイダルシリカの平均一次粒子径は、研磨速度の確保とシリコンウェーハの表面粗さの低減との両立の観点から、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、40nm以下が更に好ましい。
【0025】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m
2/g)を用いて算出される。比表面積は、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。
【0026】
シリカ粒子の会合度は、研磨速度の確保、及びシリコンウェーハの表面粗さの低減の観点から、3.0以下が好ましく、1.1〜3.0がより好ましく、1.8〜2.5が更に好ましく、2.0〜2.3が更により好ましい。シリカ粒子の形状はいわゆる球型といわゆるマユ型であることが好ましい。シリカ粒子がコロイダルシリカである場合、その会合度は、研磨速度の確保、及びシリコンウェーハの表面粗さの低減の観点から、3.0以下が好ましく、1.1〜3.0がより好ましく、1.8〜2.5が更に好ましく、2.0〜2.3が更により好ましい。
【0027】
シリカ粒子の会合度とは、シリカ粒子の形状を表す係数であり、下記式により算出される。平均二次粒子径は、動的光散乱法によって測定される値であり、例えば、実施例に記載の装置を用いて測定できる。
会合度=平均二次粒子径/平均一次粒子径
【0028】
シリカ粒子の会合度の調整方法としては、特に限定されないが、例えば、特開平6−254383号公報、特開平11−214338号公報、特開平11−60232号公報、特開2005−060217号公報、特開2005−060219号公報等に記載の方法を採用することができる。
【0029】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の含有量は、研磨速度の確保の観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上が更に好ましく、0.15質量%以上が更に好ましい。また、経済性及び研磨液組成物の保存安定性の向上の観点から1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下が更に好ましく、0.3質量%以下が更により好ましく、0.2質量%以下が更により好ましい。
【0030】
[水溶性高分子化合物(成分B)]
本発明の研磨液組成物は、研磨速度の確保及びシリコンウェーハの表面粗さの低減の観点から、下記一般式(1)で表される構成単位(以下「構成単位I」と称する場合もある。)を含み、重量平均分子量が2万以上100万以下の水溶性高分子化合物(成分B)を含有する。尚、本発明において、水溶性高分子化合物の「水溶性」とは、水に対して2g/100ml以上の溶解度を有することをいう。
【0031】
【化3】
ただし、上記一般式(1)において、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素又は炭素数が1〜2のモノヒドロキシアルキル基を示し、R
3は炭素数が1〜4のアルキル基、炭素数が1〜4のモノヒドロキシアルキル基、又は炭素数が1〜4のジヒドロキシアルキル基を示し、R
4は、水素又は炭素数が1〜4のアルキル基を示し、R
5は、水素又はメチル基を示す。ただし、上記一般式(1)で表される構成単位は、2個以上の水酸基を含む。
【0032】
R
1及びR
2は、研磨速度の確保、及びシリコンウェーハの表面粗さの低減の観点から、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシエチル基、又はヒドロキシメチル基であるが、R
1及びR
2のうちの少なくとも一方がヒドロキシメチル基であると好ましく、R
1及びR
2の双方がヒドロキシメチル基であるとより好ましい。R
3は、シリコンウェーハの表面粗さの低減の観点から、炭素数が1〜4のアルキル基、炭素数が1〜4のモノヒドロキシアルキル基、又は炭素数が1〜4のジヒドロキシアルキル基であるが、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシメチル基がより好ましく、ヒドロキシメチル基が更により好ましい。
【0033】
一般式(1)で表される構成単位Iの供給源である単量体としては、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド(THMMAA)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]メタクリルアミド(THMMMAA)、N−(2,3ジヒドロキシ)プロピルアクリルアミド(PDAA)、N−(2,3ジヒドロキシ)プロピルメタクリルアミド(PDMAA)等が例示できる。これらは、1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの単量体のなかでも、シリコンウェーハの表面粗さの低減と研磨速度の確保の観点から、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド(THMMAA)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]メタクリルアミド(THMMMAA)が好ましく、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド(THMMAA)がより好ましい。
【0034】
水溶性高分子化合物(成分B)の全構成単位中における前記構成単位Iの割合は、シリコンウェーハの表面粗さの低減の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、60質量%以上が更により好ましく、80質量%以上が更により好ましく、90質量%以上が更により好ましく、95質量%以上が更により好ましく、実質的に100質量%が更により好ましく、100質量%が更により好ましい。
【0035】
水溶性高分子化合物(成分B)が、前記構成単位I以外の構成単位を含む場合、当該構成単位I以外の構成単位は、研磨速度の確保と、シリコンウェーハの表面粗さの低減の観点から、下記一般式(2)で表される構成単位IIが好ましい。
【化4】
但し、下記一般式(2)において、R
6及びR
7は、それぞれ独立して、水素、炭素数が1〜4のアルキル基、又は炭素数が1〜2モノヒドロキシアルキル基を示す。ただし、上記一般式(2)で表される構成単位IIは、水酸基を2個以上含まない。
【0036】
一般式(2)で表される構成単位IIの供給源である単量体としては、アクリルアミド(AA)、N−メチルアクリルアミド(MAA)、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、N−ブチルアクリルアミド、N−イソブチルアクリルアミド、N−ターシャリブチルアクリルアミド、N−ヘプチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−ターシャリオクチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N−ジエチルアクリルアミド(DEAA)、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N,N−ジイソブチルアクリルアミド、N,N−ジヘプチルアクリルアミド、N,N−ジオクチルアクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチルアクリルアミド等が例示できる。これらは、1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの単量体のなかでも、シリコンウェーハの表面粗さの低減と研磨速度の確保の観点から、アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドが好ましく、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドがより好ましい。
【0037】
水溶性高分子化合物(成分B)が、前記構成単位Iと、前記構成単位IIとを含む共重合体である場合、全構成単位中における前記構成単位Iの割合は、シリコンウェーハの表面粗さの低減の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、60質量%以上が更により好ましく、80質量%以上が更により好ましく、90質量%以上が更により好ましい。
【0038】
水溶性高分子化合物(成分B)が、前記構成単位Iと前記構成単位IIとを含む共重合体である場合、全構成単位中における前記構成単位IIの割合は、シリコンウェーハの表面粗さ低減の観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましく、40質量%以下が更により好ましく、20質量%以下が更により好ましく、10質量%以下が更により好ましい。
【0039】
水溶性高分子化合物(成分B)は、前記構成単位I及び前記構成単位II以外の構成単位として、構成単位IIIを含んでいてもよい。前記構成単位IIIを形成する単量体成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、スチレン、ビニルピロリドン、オキサゾリン等が挙げられる。
【0040】
尚、水溶性高分子化合物(成分B)が、前記構成単位IIIを含む共重合体である場合、共重合体における各構成単位の配列は、ブロックでもランダムでもよい。
【0041】
水溶性高分子化合物(成分B)の重量平均分子量は、研磨速度向上の観点から、2万以上であり、6万以上が好ましく、9万以上がより好ましく、12万以上が更に好ましい。また、水溶性高分子化合物(成分B)の重量平均分子量は、シリコンウェーハの表面粗さ低減の観点から、100万以下であり、90万以下が好ましく、80万以下がより好ましく、60万以下が更に好ましく、40万以下が更により好ましく、30万以下が更により好ましい。尚、水溶性高分子化合物(成分B)の重量平均分子量は後の実施例に記載の方法により測定される。
【0042】
本発明の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子化合物(成分B)の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さの低減の観点から、0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.002質量%以上が更に好ましく、0.003質量%以上が更により好ましく、0.005質量%以上が更により好ましく、0.007質量%以上が更により好ましく、0.01質量%以上が更により好ましく、0.014質量%以上が更により好ましく、0.018質量%以上が更により好ましい。また、水溶性高分子化合物(成分B)の含有量は、研磨速度の確保の観点から1.0質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が更により好ましく、0.05質量%以下が更により好ましく、0.04質量%以下が更により好ましく、0.03質量%以下が更により好ましく、0.025質量%以下が更により好ましい。
【0043】
本発明の研磨液組成物に含まれる前記シリカ粒子と水溶性高分子化合物(成分B)の質量比(シリカ粒子の質量/水溶性高分子化合物(成分B)の質量)は、シリコンウェーハの表面粗さの低減の観点から、50以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下が更に好ましく、24以下が更に好ましい。また、質量比(シリカ粒子の質量/水溶性高分子化合物の質量)は、研磨速度の確保の観点から、1以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上が更に好ましいく、7以上が更により好ましい。
【0044】
[水系媒体(成分C)]
本発明の研磨液組成物に含まれる水系媒体(成分C)としては、イオン交換水や超純水等の水、又は水と溶媒との混合媒体等が挙げられ、上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が好ましい。水系媒体としては、なかでも、イオン交換水又は超純水がより好ましく、超純水が更に好ましい。本発明の成分Cが、水と溶媒との混合媒体である場合、成分Cである混合媒体全体に対する水の割合は、特に限定されるわけではないが、経済性の観点から、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%が更に好ましい。
【0045】
本発明の研磨液組成物における水系媒体の含有量は、特に限定されるわけではなく、成分A、成分B及び後述する任意成分の残余であってよい。
【0046】
本発明の研磨液組成物の25℃におけるpHは、研磨速度の確保の観点から、8.0以上が好ましく、9.0以上がより好ましく、9.5以上が更に好ましく、また、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましく、11.0以下が更に好ましい。pHの調整は、必要に応じて、後述する含窒素塩基性化合物(成分D)及び/又はpH調整剤を適宜添加して行うことができる。ここで、25℃におけるpHは、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM−30G)を用いて測定でき、電極の研磨液組成物への浸漬後1分後の数値である。
【0047】
[任意成分(助剤)]
本発明の研磨液組成物には、本発明の効果が妨げられない範囲で、更に、含窒素塩基性化合物(成分D)、水溶性高分子化合物(成分B)以外の水溶性高分子化合物、pH調整剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤、アニオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の任意成分が含まれてもよい。
【0048】
[含窒素塩基性化合物(成分D)]
本発明の研磨液組成物は、研磨液組成物の保存安定性の向上、研磨速度の確保、及びシリコンウェーハの表面粗さの低減の観点から、水溶性の塩基性化合物を含有する。水溶性の塩基性化合物としては、アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の含窒素塩基性化合物である。ここで、「水溶性」とは、20℃の水に対して2g/100ml以上の溶解度を有することをいい、「水溶性の塩基性化合物」とは、水に溶解したとき、塩基性を示す化合物をいう。
【0049】
アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の含窒素塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N一メチルエタノールアミン、N−メチル−N,N一ジエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノ−ルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン・六水和物、無水ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、ジエチレントリアミン、及び水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。これらの含窒素塩基性化合物は2種以上を混合して用いてもよい。本発明の研磨液組成物に含まれ得る含窒素塩基性化合物としては、シリコンウェーハの表面粗さの低減、及び研磨液組成物の保存安定性の向上の観点からアンモニアがより好ましい。
【0050】
本発明の研磨液組成物に含まれる含窒素塩基性化合物の含有量は、研磨液組成物の保存安定性の向上、及び研磨速度の確保の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.004質量%以上がより好ましく、0.006質量%以上が更に好ましく、0.008質量%以上が更により好ましく、0.010質量%以上が更により好ましい。また、シリコンウェーハの表面粗さの低減の観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以下が更により好ましく、0.025質量%以下が更により好ましく、0.018質量%以下が更により好ましく、0.014質量%以下が更により好ましい。
【0051】
[水溶性高分子化合物(成分E)]
本発明の研磨液組成物には、シリコンウェーハの表面欠陥の低減の観点から、更に水溶性高分子化合物(成分B)以外の水溶性高分子化合物(成分E)を含有してもよい。この水溶性高分子化合物(成分E)は、親水基を有する高分子化合物であり、水溶性高分子化合物(成分E)の重量平均分子量は、研磨速度の確保、シリコンウェーハの表面欠陥の低減の観点から、10,000以上が好ましく、100,000以上がより好ましく、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。上記成分Eを構成する供給源である単量体としては、例えば、前記成分Bが有する構成単位Iに由来するアミド基以外のアミド基、水酸基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸基等の水溶性基を有する単量体が挙げられる。このような水溶性高分子化合物(成分E)としては、ポリアミド、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。ポリアミドとしては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリン等が挙げられる。ポリ(N−アシルアルキレンイミン)としては、ポリ(N−アセチルエチレンイミン)、ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)、ポリ(N−カプロイルエチレンイミン)、ポリ(N−ベンゾイルエチレンイミン)、ポリ(N−ノナデゾイルエチレンイミン)、ポリ(N−アセチルプロピレンイミン)、ポリ(N−ブチオニルエチレンイミン)等があげられる。セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、及びカルボキシメチルエチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶性高分子化合物は任意の割合で2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
[pH調整剤]
pH調整剤としては、酸性化合物が挙げられる。酸性化合物としては、硫酸、塩酸、硝酸又はリン酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸又は安息香酸等の有機酸等が挙げられる。
【0053】
[防腐剤]
防腐剤としては、ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、(5−クロロ−)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、過酸化水素、又は次亜塩素酸塩等が挙げられる。
【0054】
[アルコール類]
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、2−メチル−2−プロパノオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。本発明の研磨液組成物におけるアルコール類の含有量は、0.1質量%〜5質量%が好ましい。ただし、当該含有量は、水性媒体(成分C)がアルコールを含む場合、水性媒体(成分C)の一部として含まれる当該アルコールに加えて添加される量である。
【0055】
[キレート剤]
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム等が挙げられる。本発明の研磨液組成物におけるキレート剤の含有量は、0.01〜1質量%が好ましい。
【0056】
[アニオン性界面活性剤]
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル等のリン酸エステル塩などが挙げられる。
【0057】
[非イオン性界面活性剤]
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリエチレングリコール型と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型及び脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0058】
尚、上記において説明した各成分の含有量は、使用時における含有量であるが、本発明の研磨液組成物は、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存及び供給されてもよい。この場合、製造及び輸送コストを更に低くできる点で好ましい。濃縮液は、必要に応じて前述の水系媒体で適宜希釈して使用すればよい。濃縮倍率としては、希釈した後の研磨時の濃度を確保できれば、特に限定するものではないが、製造及び輸送コストを更に低くできる観点から、2倍以上が好ましく、10倍以上がより好ましく、20倍以上が更に好ましく、30倍以上が更により好ましく、また、100倍以下が好ましく、80倍以下がより好ましく、60倍以下が更に好ましく、50倍以下が更により好ましい。
【0059】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液におけるシリカ粒子(成分A)の含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましい。また、濃縮液中におけるシリカ粒子の含有量は、保存安定性を向上させる観点から、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、15質量%以下が更により好ましく、9質量%以下が更により好ましい。
【0060】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液における水溶性高分子化合物(成分B)の含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が更により好ましく、0.1質量%以上が更により好ましい。また、濃縮液中における水溶性高分子化合物(成分B)の含有量は、保存安定性の向上の観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が更により好ましい。
【0061】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液における含窒素塩基性化合物(成分D)の含有量は、製造及び輸送コストを低くする観点から、0.02質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。また、濃縮液中における含窒素塩基性化合物(成分D)の含有量は、保存安定性の向上の観点から5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
【0062】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、上記濃縮液の25℃におけるpHは、8.0以上が好ましく、9.0以上がより好ましく、9.5以上が更に好しく、また、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましく、11.0以下が更に好ましい。
【0063】
次に、本発明の研磨液組成物の製造方法の一例について説明する。
【0064】
本発明の研磨液組成物の製造方法の一例は、何ら制限されず、例えば、シリカ粒子(成分A)と、水溶性高分子化合物(成分B)と、水系媒体(成分C)と、必要に応じて任意成分とを混合することによって調製できる。
【0065】
シリカ粒子の水系媒体への分散は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、湿式ボールミル、又はビーズミル等の撹拌機等を用いて行うことができる。シリカ粒子の凝集等により生じた粗大粒子が水系媒体中に含まれる場合、遠心分離やフィルターを用いたろ過等により、当該粗大粒子を除去すると好ましい。シリカ粒子の水系媒体への分散は、水溶性高分子化合物(成分B)の存在下で行うと好ましい。具体的には、水溶性高分子化合物(成分B)と水系媒体(成分C)とを含むシリコンウェーハ研磨用添加剤組成物を調製した後、当該シリコンウェーハ研磨用添加剤組成物とシリカ粒子とを混合し、次いで、必要に応じて、シリコンウェーハ研磨用添加剤組成物とシリカ粒子の混合物を水系媒体(成分C)で希釈すると好ましい。
【0066】
本発明の研磨液組成物は、例えば、半導体基板の製造過程における、シリコンウェーハを研磨する研磨工程や、シリコンウェーハを研磨する研磨工程を含むシリコンウェーハの研磨方法に用いられる。
【0067】
前記シリコンウェーハを研磨する研磨工程には、シリコン単結晶インゴットを薄円板状にスライスすることにより得られたシリコンウェーハを平面化するラッピング(粗研磨)工程と、ラッピングされたシリコンウェーハをエッチングした後、シリコンウェーハ表面を鏡面化する仕上げ研磨工程とがある。本発明の研磨液組成物は、上記仕上げ研磨工程で用いられるとより好ましい。
【0068】
前記半導体基板の製造方法や前記シリコンウェーハの研磨方法では、シリコンウェーハを研磨する研磨工程の前に、本発明の研磨液組成物(濃縮液)を希釈する希釈工程を含んでいてもよい。希釈媒には、水系媒体(成分C)を用いればよい。
【0069】
前記希釈工程で希釈される濃縮液は、製造及び輸送コスト低減、保存安定性の向上の観点から、例えば、成分Aを2〜40質量%、成分Bを0.005〜5質量%含んでいると好ましい。
【0070】
本発明は、さらに以下<1>〜<16>を開示する。
【0071】
<1> シリカ粒子と、下記一般式(1)で表される構成単位を含み、重量平均分子量が2万以上100万以下の水溶性高分子化合物と、を含むシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【化5】
ただし、上記一般式(1)において、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素又は炭素数が1〜2のモノヒドロキシアルキル基を示し、R
3は炭素数が1〜4のアルキル基、炭素数が1〜4のモノヒドロキシアルキル基、又は炭素数が1〜4のジヒドロキシアルキル基を示し、R
4は、水素又は炭素数が1〜4のアルキル基を示し、R
5は、水素又はメチル基を示す。ただし、上記一般式(1)で表される構成単位は、2個以上の水酸基を含む。
<2> 好ましくは前記R
1及びR
2のうちの少なくとも一方がヒドロキシメチル基であり、より好ましくはR
1及びR
2の双方がヒドロキシメチル基である、<1>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<3> 前記R
3が、好ましくはヒドロキシエチル基又はヒドロキシメチル基、より好ましくはヒドロキシメチル基である、<1>又は<2>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<4> 前記一般式(1)で表される構成単位Iの供給源である単量体が、好ましくはN−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド(THMMAA)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]メタクリルアミド(THMMMAA)、N−(2,3ジヒドロキシ)プロピルアクリルアミド(PDAA)、又はN−(2,3ジヒドロキシ)プロピルメタクリルアミド(PDMAA)、より好ましくはN−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド(THMMAA)、又はN−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]メタクリルアミド(THMMMAA)、更に好ましくはN−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド(THMMAA)である、<1>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<5> 前記水溶性高分子化合物の全構成単位中における前記構成単位Iの割合が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更により好ましくは60質量%以上、更により好ましくは80質量%以上、更により好ましくは90質量%以上、更により好ましくは95質量%以上、更により好ましくは実質的に100質量%、更により好ましくは100質量%である、<1>〜<4>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<6> 前記水溶性高分子化合物が前記構成単位I以外の構成単位IIを含み、前記構成単位IIの供給源である単量体は、好ましくはアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、及びN,N−ジエチルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはN−ヒドロキシエチルアクリルアミド及びN,N−ジエチルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、<1>〜<4>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<7> 前記水溶性高分子化合物の全構成単位中における前記構成単位Iの割合が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更により好ましくは60質量%以上、更により好ましくは80質量%以上、更により好ましくは90質量%以上である、<6>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<8> 前記水溶性高分子化合物の全構成単位中における前記構成単位IIの割合が、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更により好ましくは40質量%以下、更により好ましくは20質量%以下、更により好ましくは10質量%以下である、<6>又は<7>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<9>前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量が、好ましくは6万以上、より好ましくは9万以上、更に好ましくは12万以上であり、好ましくは100万以下、より好ましくは90万以下、更に好ましくは80万以下、更により好ましくは60万以下、更により好ましくは40万以下、更により好ましくは30万以下である、<1>〜<8>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<10> 前記シリカ粒子と前記水溶性高分子化合物との質量比(シリカ粒子の質量/水溶性高分子化合物の質量)が、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、更により好ましくは24以下であり、好ましくは1以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、更により好ましいくは7以上である、<1>〜<9>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<11> 前記水溶性高分子化合物の含有量が、好ましくは0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.002質量%以上、更により好ましくは0.003質量%以上、更により好ましくは0.005質量%以上、更により好ましくは0.007質量%以上、更により好ましくは0.01質量%以上、更により好ましくは0.014質量%以上、更により好ましくは0.018質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更により好ましくは0.05質量%以下、更により好ましくは0.04質量%以下、更により好ましくは0.03質量%以下、更により好ましくは0.025質量%以下である、<1>〜<10>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<12> 前記シリカ粒子の含有量が、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上、更により好ましくは0.15質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.4質量%以下、更により好ましくは0.3質量%以下、更により好ましくは0.2質量%以下である、<1>〜<11>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<13> 前記シリカ粒子の平均一次粒子径が、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは15nm以上、更により好ましくは30nm以上であり、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下、更に好ましくは40nm以下である、前記<1>〜<12>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<14> 前記<1>〜<13>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する研磨工程を含む研磨方法。
<15> 前記<1>〜<13>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する研磨工程を含む、半導体基板の製造方法。
<16> 前記<1>〜<13>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物の調製に使用される、シリコンウェーハ研磨用添加剤組成物であって、下記一般式(1)で表される構成単位を含み、重量平均分子量が2万以上100万以下の水溶性高分子化合物と、水系媒体とを含むシリコンウェーハ研磨用添加剤組成物。
【化6】
ただし、上記一般式(1)において、R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素又は炭素数が1〜2のモノヒドロキシアルキル基を示し、R
3は炭素数が1〜4のアルキル基、炭素数が1〜4のモノヒドロキシアルキル基、又は炭素数が1〜4のジヒドロキシアルキル基を示し、R
4は、水素又は炭素数が1〜4のアルキル基を示し、R
5は、水素又はメチル基を示す。ただし、上記一般式(1)で表される構成単位は、2個以上の水酸基を含む。
【実施例】
【0072】
〈水溶性高分子化合物の合成〉
下記の実施例1〜25及び比較例1で用いた水溶性高分子化合物は下記のようにして合成した。
【0073】
(水溶性高分子化合物No.1)
[THMMAAの重合体、重量平均分子量10万]
Tris(hydroxymethyl)methylacrylamide(Aldrich製)24.5g、2,2'-Azobis(2-methyl propionamidine)dihydrochloride 「V−50」(和光純薬工業(株)製)0.035g、及び純水180.5gを300mlガラス製ビーカーに入れ、これらを撹拌して、溶解させた。その後、得られた溶液を、0.45μmのセルロースアセテート製メンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株)製 DISMIC(登録商標)-25CS)にて濾過した。得られた濾液を、還流冷却管、温度計、窒素導入管、撹拌装置を取り付けた300mlセパラブルフラスコ内に入れ、次いで、当該セパラブルフラスコ内に室温で窒素ガスを100ml/min.で30分吹き込み、この窒素雰囲気下でイソプロピルアルコール(和光純薬工業(株)製 特級)22.8gを濾液に加えた。その後、イソプロピルアルコールが添加された濾液を60℃まで加温したのち、6時間60℃で撹拌した。得られた反応物(溶液状)を室温に冷却した後、反応物をアセトン(和光純薬工業(株)製 1級)3Lに加えることにより、固体を析出させ、当該固体を回収した。この固体を70℃減圧下で12時間乾燥し、17.8g(収率78%)白色の固体(水溶性高分子化合物No.1)を得た。
【0074】
(水溶性高分子化合物No.2)
[THMMAAの重合体、重量平均分子量65万]
Tris(hydroxymethyl)methylacrylamide(Aldrich製)2.0g、2,2'-Azobis(2-methyl propionamidine)dihydrochloride 「V−50」(和光純薬工業(株)製)0.014g、及び純水72.4gを100mlガラス製ビーカーに入れ、これらを撹拌して溶解させた。その後、得られた溶液を、5μmのセルロースアセテート製メンブレンフィルター(Sartorius社製 Minisart)にて濾過した。得られた濾液を、110mlのスクリュー管(マルエム社製 No.8)内に入れ、次いで、当該スクリュー管内に室温で窒素ガスを100ml/min.で30分吹き込み、当該スクリュー管を密閉した後、濾液を80℃で12時間静置し、無色透明なポリマー(水溶性高分子化合物No.2)の水溶液を得た。
【0075】
(水溶性高分子化合物No.3)
[THMMAAの重合体、重量平均分子量6万4千]
還流冷却管、温度計、窒素導入管、撹拌装置を取り付けた300mlセパラブルフラスコ内に純水51.9gを入れた後、当該セパラブルフラスコ内を、10KPaまで減圧し次いで窒素ガスにて常圧に戻す作業を3回行い、窒素雰囲気下にした。その後、セパラブルフラスコ内の温度を75℃まで加熱した。別途、Tris(hydroxymethyl)methylacrylamide(AlfaAcer製)15.0g、2,2'-Azobis(2-methyl propionamidine)dihydrochloride 「V−50」(和光純薬工業(株)製)0.116g、及び純水83.0gを混合し溶解させた後、得られた溶液を、0.45μmのセルロースアセテート製メンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株)製 DISMIC(登録商標)-25CS)にて濾過した。得られた濾液を、内部の温度が75℃まで加熱された300mlセパラブルフラスコ内に3時間かけて滴下した。その後、セパラブルフラスコ内の濾液を、75℃で4時間撹拌し、無色透明なポリマー(水溶性高分子化合物No.3)の水溶液を得た。
【0076】
(水溶性高分子化合物No.4)
[THMMAAの重合体、重量平均分子量9万2千]
Tris(hydroxymethyl)methylacrylamide(Aldrich製)12g、2,2'-Azobis(2-methyl propionamidine)dihydrochloride 「V−50」(和光純薬工業(株)製)0.017g、及び純水88.4gを300mlガラス製ビーカーに入れ、これらを撹拌して溶解させた。その後、得られた溶液を、0.45μmのセルロースアセテート製メンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株)製 DISMIC(登録商標)-25CS)にて濾過した。得られた濾液を、還流冷却管、温度計、窒素導入管、撹拌装置を取り付けた200mlセパラブルフラスコ内に入れ、次いで、当該セパラブルフラスコ内に室温で窒素ガスを100ml/min.で30分吹き込み、この窒素雰囲気下でイソプロピルアルコール(和光純薬工業(株)製 特級)11.6gを濾液に加えた。その後、イソプロピルアルコールが添加された濾液を60℃まで加温したのち、6時間60℃で撹拌した。得られた反応物(溶液状)を室温に冷却した後、反応物をアセトン(和光純薬工業(株)製 1級)3Lに加えることにより、固体を析出させ、当該固体を回収した。この固体を70℃減圧下で12時間乾燥し、9.8g(収率88%)白色の固体(水溶性高分子化合物No.4)を得た。
【0077】
(水溶性高分子化合物No.5)
[THMMAAの重合体、重量平均分子量16万]
還流冷却管、温度計、窒素導入管、撹拌装置を取り付けた300mlセパラブルフラスコ内に純水43.3gを入れたのち、当該セパラブルフラスコ内を、10KPaまで減圧し次いで窒素ガスにて常圧に戻す作業を3回行い、窒素雰囲気下にした。その後、セパラブルフラスコ内の温度を75℃まで加熱した。別途、Tris(hydroxymethyl)methylacrylamide(AlfaAcer製)15.0g、2,2'-Azobis(2-methyl propionamidine)dihydrochloride 「V−50」(和光純薬工業(株)製)0.093g、及び純水91.3gを混合し溶解させた後、得られた溶液を、0.45μmのセルロースアセテート製メンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株)製 DISMIC(登録商標)-25CS)にて濾過した。得られた濾液を、内部の温度が75℃まで加熱された300mlセパラブルフラスコ内に3時間かけて滴下した。その後、セパラブルフラスコ内の濾液を、75℃で4時間撹拌し、無色透明なポリマー(水溶性高分子化合物No.5)の水溶液を得た。
【0078】
(水溶性高分子化合物No.6)
[THMMAAの重合体、重量平均分子量37万]
Tris(hydroxymethyl)methylacrylamide(AlfaAcer製)2.0g、2,2'-Azobis(2-methyl propionamidine)dihydrochloride 「V−50」(和光純薬工業(株)製)0.016g、及び純水78.0gを100mlガラス製ビーカーに入れ、これらを攪拌して、溶解させた。その後、得られた溶液を、5μmのセルロースアセテート製メンブレンフィルター(Sartorius社製 Minisart)にて濾過した。得られた濾液を、110mlのスクリュー管(マルエム社製 No.8)内に入れ、次いで、当該スクリュー管内に室温で窒素ガスを100ml/min. で30分吹き込み、当該スクリュー管を密閉した後、濾液を80℃で12時間静置し、無色透明なポリマー(水溶性高分子化合物No.6)の水溶液を得た。
【0079】
(水溶性高分子化合物No.7)
[THMMAAの重合体、重量平均分子量52万]
Tris(hydroxymethyl)methylacrylamide(Aldrich製)12g、2,2'-Azobis(2-methyl propionamidine)dihydrochloride 「V−50」(和光純薬工業(株)製)0.017g、及び純水434.38gを500mlガラス製ビーカーで撹拌して溶解させた。その後、得られた溶液を、還流冷却管、温度計、窒素導入管、撹拌装置を取り付けた500mlセパラブルフラスコ内に加え、次いで、当該セパラブルフラスコ内に室温で窒素ガスを100ml/min.で30分吹き込み、当該セパラブルフラスコ内を窒素雰囲気下とした後、溶液を80℃まで加温したのち、6時間80℃で撹拌した。得られた反応物(溶液状)を室温に冷却した後、反応物をアセトン(和光純薬工業(株)製 1級)3Lに加えることにより、固体を析出させ、当該固体を回収した。この固体を70℃減圧下で12時間乾燥し、9.8g(収率88%)白色の固体(水溶性高分子化合物No.7)を得た。
【0080】
(水溶性高分子化合物No.8)
[THMMAAの重合体、重量平均分子量82万]
還流冷却管、温度計、窒素導入管、撹拌装置を取り付けた300mlセパラブルフラスコ内に純水26.8gを入れた後、当該セパラブルフラスコ内を、10KPaまで減圧し次いで窒素ガスにて常圧に戻す作業を3回行い、窒素雰囲気下にした。その後、セパラブルフラスコ内の温度を68℃まで加熱した。別途、Tris(hydroxymethyl)methylacrylamide(AlfaAcer製)15.0g、2,2'-Azobis(2-methyl propionamidine)dihydrochloride 「V−50」(和光純薬工業(株)製)0.046g、及び純水108.17gを混合し溶解させた後、得られた溶液を、0.45μmのセルロースアセテート製メンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株)製 DISMIC(登録商標)-25CS)にて濾過した。得られた濾液を、内部の温度が68℃まで加熱された300mlセパラブルフラスコに3時間かけて滴下した。その後、セパラブルフラスコ内の濾液を、75℃で4時間撹拌し、無色透明なポリマー(水溶性高分子化合物No.8)の水溶液を得た。
【0081】
(水溶性高分子化合物No.9)
[THMMAAの重合体、重量平均分子量128万]
Tris(hydroxymethyl)methylacrylamide(Aldrich製)3.0g、2,2'-Azobis(2-methyl propionamidine)dihydrochloride 「V−50」(和光純薬工業(株)製)0.004g、及び純水52.8gを110mlのスクリュー管(マルエム社製 No.8)内に入れ、これらを攪拌し溶解させて溶液を得た。次いで、スクリュー管内に室温で窒素ガスを100ml/min.で30分吹き込み、スクリュー管を密閉した後、前記溶液を80℃で12時間静置し、無色透明なポリマー(水溶性高分子化合物No.9)の水溶液を得た。
【0082】
(水溶性高分子化合物No.10)
[THMMAAとDMAAの共重合体、THMMAAとDMAAの質量比95対5、重量平均分子量41万]
Tris(hydroxymethyl)methylacrylamide(AlfaAcer製)1.8g、N,N-Dimethylacrylamide 0.2 g(和光純薬工業(株)製)、2,2'-Azobis(2-methyl propionamidine)dihydrochloride 「V−50」(和光純薬工業(株)製)0.017g、及び純水78.0gを、100mlガラス製ビーカーに入れ、これらを撹拌し溶解させた後、得られた溶液を、5μmのセルロースアセテート製メンブレンフィルター(Sartorius社製 Minisart)にて濾過した。次いで、得られた濾液を、110mlのスクリュー管(マルエム社製 No.8)内に入れ、当該スクリュー管内に室温で窒素ガスを100ml/min.で30分吹き込み、スクリュー管を密閉した後、前記濾液を80℃で12時間静置し、無色透明なポリマー(水溶性高分子化合物No.10)の水溶液を得た。
【0083】
また、表1中の水溶性高分子化合物No.11〜15、及びPEG6000の詳細は下記のとおりである。
(水溶性高分子化合物No.11)
ポリアクリルアミド(PAM、重量平均分子量:80万(カタログ値)、和光純薬社製)
(水溶性高分子化合物No.12)
HEC(商品名CF-V、重量平均分子量:82万、住友精化社製)
(水溶性高分子化合物No.13)
HEC(商品名SE400、重量平均分子量:25万、ダイセル社製)
(水溶性高分子化合物No.14)
ポリビニルピロリドン(商品名K-90、重量平均分子量:36万(カタログ値):和光純薬社製)
(水溶性高分子化合物No.15)
ポリN-ビニルホルムアミド(重量平均分子量:50万(カタログ値)、花王株式会社製)
(PEG6000)
ポリエチレングリコール(重量平均分子量6000(カタログ値):和光純薬社製)
【0084】
〈水溶性高分子化合物の溶解度〉
上記水溶性高分子化合物No.1〜15の20℃の水に対する溶解度は、いずれも2g/100ml以上であった。
【0085】
〈重合平均分子量の測定〉
水溶性高分子化合物No.1〜10および12、13の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を下記の条件で適用して得たクロマトグラム中のピークに基づき算出した。
装置:HLC-8320 GPC(東ソー株式会社、検出器一体型)
カラム:TSKgel α−M+TSKgel α−M(カチオン、東ソー株式会社製)
溶離液:エタノール/水(=3/7)に対して、LiBr (50mmol/L(0.43質量%))、CH3COOH(166.7mmol/L(1.0質量%))を添加
流量:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI 検出器
標準物質:ポリエチレングリコール
【0086】
<研磨材(シリカ粒子)の平均一次粒子径>
研磨材の平均一次粒子径(nm)は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m
2/g)を用いて下記式で算出した。
平均一次粒子径(nm)=2727/S
【0087】
研磨材の比表面積は、下記の[前処理]をした後、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁まで精量し、比表面積の測定直前に110℃の雰囲気下で30分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置 フローソーブIII2305、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
【0088】
[前処理]
(a)スラリー状の研磨材を硝酸水溶液でpH2.5±0.1に調整する。
(b)pH2.5±0.1に調整されたスラリー状の研磨材をシャーレにとり150℃の熱風乾燥機内で1時間乾燥させる。
(c)乾燥後、得られた試料をメノウ乳鉢で細かく粉砕する。
(d)粉砕された試料を40℃のイオン交換水に懸濁させ、孔径1μmのメンブランフィ
ルターで濾過する。
(e)フィルター上の濾過物を20gのイオン交換水(40℃)で5回洗浄する。
(f)濾過物が付着したフィルターをシャーレにとり、110℃の雰囲気下で4時間乾燥させる。
(g)乾燥した濾過物(砥粒)をフィルター屑が混入しないようにとり、乳鉢で細かく粉砕して測定サンプルを得た。
【0089】
<研磨材(シリカ粒子)の平均二次粒子径>
研磨材の平均二次粒子径(nm)は、研磨材の濃度が0.25質量%となるように研磨材をイオン交換水に添加した後、得られた水溶液をDisposable Sizing Cuvette(ポリスチレン製 10mmセル)に下底からの高さ10mmまで入れ、動的光散乱法(装置名:ゼータサイザーNano ZS、シスメックス(株)製)を用いて測定した。
【0090】
(1)研磨液組成物の調製
表1に示すようにシリカ粒子(コロイダルシリカ、平均一次粒子径38nm、平均二次粒子径78nm、会合度2.1)、水溶性高分子化合物、28%アンモニア水(キシダ化学(株)試薬特級)、イオン交換水を攪拌混合して、実施例1〜25、比較例1〜6の研磨液組成物(いずれも濃縮液、pH10.6±0.1(25℃))を得た。尚、表1に記載のシリカ粒子及び水溶性高分子化合物の含有量は、各々、前記濃縮液をイオン交換水で希釈した後の値である(希釈倍率:40倍)。残余はイオン交換水である。前記濃縮液をイオン交換水で希釈して得られた研磨液組成物のpHは、いずれも、pH10.6±0.1(25℃)であった。
【0091】
(2)研磨方法
研磨液組成物(濃縮液)をイオン交換水で40倍に希釈して得た研磨液組成物を研磨直前にフィルター(コンパクトカートリッジフィルター MCP−LX−C10S アドバンテック株式会社)にてろ過を行い、下記の研磨条件で下記のシリコンウェーハ(直径200mmのシリコン片面鏡面ウェーハ(伝導型:P、結晶方位:100、抵抗率0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満)に対して仕上げ研磨を行った。当該仕上げ研磨に先立ってシリコンウェーハに対して市販の研磨剤組成物を用いてあらかじめ粗研磨を実施した。粗研磨を終了し仕上げ研磨に供したシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)は、2.680であった。表面粗さ(ヘイズ)は、KLA Tencor社製のSurfscan SP1(商品名)を用いて測定される暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値である。
【0092】
<仕上げ研磨条件>
研磨機:片面8インチ研磨機GRIND-X SPP600s(岡本工作製)
研磨パッド:スエードパッド(東レ コーテックス社製 アスカー硬度64 厚さ 1.37mm ナップ長450um 開口径60um)
ウェーハ研磨圧力:100g/cm
2
定盤回転速度:60rpm
研磨時間:5分
研磨剤組成物の供給速度:150ml / min
研磨剤組成物の温度:20℃
キャリア回転速度:60rpm
【0093】
仕上げ研磨後、シリコンウェーハに対して、オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を下記のとおり行った。オゾン洗浄では、20ppmのオゾンを含んだ純水をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって3分間噴射した。このときオゾン水の温度は常温とした。次に希フッ酸洗浄を行った。希フッ酸洗浄では、0.5%のフッ化水素アンモニウム(特級:ナカライテクス株式会社)を含んだ純水をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって6秒間噴射した。上記オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を1セットとして計2セット行い、最後にスピン乾燥を行った。スピン乾燥では1500rpmでシリコンウェーハを回転させた。
【0094】
<分散粒径の評価>
研磨液組成物(濃縮液)をイオン交換水で40倍に希釈して得た研磨液組成物(pH10.6±0.1(25℃))を用いて、研磨液組成物中のシリカ粒子の分散粒径の測定を行った。分散粒径測定に使用する粒径測定装置として、光子相関法(動的光散乱法)の原理に基づいているシスメックス社製の粒度分布測定機「ゼータサイザーナノZS」を使用した。前記研磨液組成物を測定液としてDisposable Sizing Cuvette(ポリスチレン製 10mmセル)に1.2mL採取し、測定部に入れて、分散粒径として体積中位粒径(D50)を測定した。この結果を下記表1に示した。D50の値が小さいほど、シリカ粒子の分散性は良好である。
【0095】
<シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の評価>
洗浄後のシリコンウェーハ表面の表面粗さ(ヘイズ)は、KLA Tencor社製のSurfscan SP1(商品名)を用いて測定される暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値を用いた。その結果を表1に示した。表面粗さ(ヘイズ)の評価結果は、数値が小さいほど良好であることを示す。
【0096】
<研磨速度の評価>
研磨速度は以下の方法で評価した。研磨前後の各シリコンウェーハの重さを精密天秤(Sartorius社製「BP−210S」)を用いて測定し、得られた重量差をシリコンウェーハの密度、面積及び研磨時間で除して、単位時間当たりの片面研磨速度を求めた。尚、表1には、比較例4の研磨液組成物を用いた場合の片面研磨速度を「1.0」として、他の研磨液組成物を用いた場合の研磨速度を相対値で示した。数値が大きいほど研磨速度が速いことを示す。尚、比較例4の研磨速度と同等かそれより速ければ実生産における生産性は許容されるレベルである。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示されるように、実施例1〜25の研磨液組成物を用いた方が、比較例1〜5の研磨液組成物を用いるよりも、研磨されたシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)が顕著に小さかった。また、実施例1〜25の研磨液組成物を用いた場合の研磨速度は、比較例2〜5の研磨液組成物を用いた場合よりも大きく、良好な生産性が担保するために十分な速さであった。また、尚、実施例1〜25の研磨液組成物では、分散粒径のサイズは、比較例1〜6の研磨液組成物の場合と同等かそれよりも小さかった。