(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のGPS衛星のうち、上記GPS衛星の電波から得られる複数のGPS衛星の配置情報に基づき、電波を受信可能と想定される位置に存在するGPS衛星である可視衛星の仰角を検出する仰角検出部と、
上記可視衛星に関する電波の受信レベルを検出する受信レベル検出部と、
上記仰角検出部により検出された仰角が閾値を超える可視衛星のうち、上記受信レベル検出部により検出された受信レベルが閾値未満の可視衛星の割合を可視衛星遮蔽率として算出する遮蔽率算出部と、
上記遮蔽率算出部により算出された可視衛星遮蔽率に基づいて、自車が高架上道路と高架下道路のどちらを走行しているのかを判定する走行道路判定部とを備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
上記マップマッチング処理部は、上記走行道路判定部により自車が高架上道路を走行していると判定された場合、上記自車位置測定部により測定された自車位置からの距離が閾値以上となる道路リンクについては、上記高架上にない高速ランプ道路であっても上記修正候補道路から除外しないことを特徴とする請求項13に記載のナビゲーション装置。
ナビゲーション装置の仰角検出部が、複数のGPS衛星のうち、上記GPS衛星の電波から得られる複数のGPS衛星の配置情報に基づき、電波を受信可能と想定される位置に存在するGPS衛星である可視衛星の仰角を検出する第1のステップと、
上記ナビゲーション装置の受信レベル検出部が、上記可視衛星に関する電波の受信レベルを検出する第2のステップと、
上記ナビゲーション装置の遮蔽率算出部が、上記仰角検出部により検出された仰角が閾値を超える可視衛星のうち、上記受信レベル検出部により検出された受信レベルが閾値未満の可視衛星の割合を可視衛星遮蔽率として算出する第3のステップと、
上記ナビゲーション装置の走行道路判定部が、上記遮蔽率算出部により算出された可視衛星遮蔽率に基づいて、自車が高架上道路と高架下道路のどちらを走行しているのかを判定する第4のステップとを有することを特徴とする高架上下道判定方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、車載用のナビゲーション装置では、自立航法センサやGPS(Global Positioning System)受信機などを用いて車両の現在位置を検出し、その近傍の地図データを記録媒体から読み出して画面上に表示する。そして、画面上の所定箇所に自車位置を示す自車位置マークを重ね合わせて表示することにより、車両が現在どこを走行しているのかを一目で分かるようにしている。
【0003】
自立航法センサによって自車位置を測定する場合、マップマッチングによる位置補正処理が必要になる。すなわち、自立航法では、車両が走行するにつれて誤差が累積し、自車位置が道路から外れてしまう。そこで、マップマッチング処理によって自車位置を道路の位置と照合し、必要に応じて自車位置を道路上に修正する。自車位置を道路上に修正するというのは、具体的には自車位置を道路リンク上に引き付ける処理のことをいう。
【0004】
なお、自立航法では、測定誤差が大きくなって自車位置が道路から大きく外れると、自車位置を実際の道路上の現在位置にマップマッチングすることができなくなる。そこで、自立航法によるマップマッチングが不可能になったら、GPS受信機から得られる位置データ(GPS位置)と方位データ(GPS方位)とを用いて、自立航法センサによる車両位置(センサ位置)と走行方位(センサ方位)とを修正することが行われている。
【0005】
ところで、高架上の高速道路とその下にある一般道のように、2つの道路が上下に分岐あるいは並走するケースにおいては、自立航法センサやGPS受信機の情報だけでは、どちらの道路を走行しているのかを正確に特定することが難しくなる。これに対して、分岐先の道路リンクに簡易的な勾配情報(上り/下り/平坦)を付加しておき、この勾配情報と分岐点において車載センサにて検出した勾配角(車両ピッチ角)とを比較することで、実際に走行した分岐先の道路をある程度の精度で特定することが可能となる。
【0006】
しかしながら、仕向け地(特に日本以外の中国、台湾などのアジア圏)によっては、地
図DBの整備状況が悪くて勾配情報のカバレッジが狭く、一部の都市の道路リンクにしか勾配情報が格納されていない場合がある。また、勾配情報が格納されている場合でも、日本向けの製品と比べて地
図DBの精度が悪い場合が多い。そのため、道路リンクの勾配情報とセンサにより検出された車両ピッチ角との比較により高架上下道の判定を行う方法では、機能そのものが動作できない場合や、動作できる場合でも誤判定につながることが多いという問題があった。
【0007】
特に、中国の代表的な2都市(上海、広州)では、高架上の高速道路とその下の一般道とを容易に行き来できるような交通事情になっている。しかし、上下に分岐する道路の判定に必要な勾配情報が地
図DBに格納されていないことや、格納されている場合でも精度が悪く間違った勾配情報になっていることが多く、分岐点でのマッチング精度の劣化の要因になっている。
【0008】
また、上下に分岐する道路で正しい道路にマッチングできない場合、その後の走行中にマップマッチング処理が行われる。しかし、高架上の高速道路とその下の一般道は、上下(高さ方向)には明確な距離差はあるが、平面(水平方向)に対しての明確な距離差が殆どない状況が多いため、マップマッチング処理を行っても正しい道路にマッチングできない可能性が高く、効果的なリカバリを行うことができないという問題があった。また、高架下道路を走行する場合や周囲に高階層の建物がある状況では、GPS測位環境としては非常に厳しく、GPS測位精度が非常に悪くなる。そのため、最も真値として期待できるGPS位置によるリカバリもほとんど期待することができない。
【0009】
なお、GPS受信機の情報を用いて、高架上道路と高架下道路とのどちらを走行しているのかを判定するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1に記載のナビゲーション装置では、サンプリングしたGPSデータのうち、電波の受信が可能なGPS衛星の仰角が全て所定角度以下のときは、高架下道路を走行している可能性が高いと判定する。一方、サンプリングしたGPSデータの中で電波の受信が可能なGPS衛星のうち、仰角が所定角度以上のGPS衛星があれば、高架上道路を走行している可能性が高いと判定する。
【0010】
特許文献2に記載のナビゲーション装置では、各衛星のうち、仰角が所定値以下の衛星からの衛星電波が受信可能で、かつ、他の衛星からの衛星電波が受信不可能である場合に、受信不可能であった各衛星に基づいて受信不能領域の形状を判断する。そして、受信不能領域の形状が所定の基準に合致する場合に、自車が高架下にいると判定する。具体的には、受信不能領域が天空域の中央寄り部分を車両の進行方向に沿って縦断しているときに、自車が高架下にいると判定する。
【0011】
特許文献3に記載のナビゲーション装置では、高架上道路とそれに並走する高架下道路のいずれか一方を車両が走行する際、衛星電波を受信可能な人工衛星(例えば、仰角が20°〜90°の範囲内にある人工衛星)を判別するとともにその位置情報を取得する。そして、車両の走行方向の右側にある人工衛星からの衛星電波の受信レベルが所定レベル以下であれば、高架下道路を走行しているものと判定する一方、所定レベルよりも大きいときには、高架上道路を走行しているものと判定する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態によるナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態のナビゲーション装置は、地図データ記憶部1、自立航法センサ2、GPS受信機3、ディスプレイ4およびナビゲーション制御部10を備えて構成されている。
【0019】
ナビゲーション制御部10は、その機能構成として、地図描画部11、自車位置測定部12、データ記憶部13、マップマッチング処理部14、自車位置マーク発生部15、画像合成部16、仰角検出部17、受信レベル検出部18、遮蔽率算出部19、走行道路判定部20および走行距離検出部21を備えている。
【0020】
地図データ記憶部1は、地図表示や経路探索などに必要な地図データを記憶している。この地図データには、地図表示に必要な各種のデータから成る描画ユニットと、マップマッチングや経路探索、経路案内等の各種の処理に必要なデータから成る道路ユニットとが含まれている。道路ユニットには、交差点や分岐など複数の道路が交わる点に対応するノードに関する情報と、道路や車線等に対応する道路リンクに関する情報とが含まれている。
【0021】
道路リンクに関する情報には、道路種別や道路属性の情報が含まれている。道路種別の情報は、その道路リンクに対応した実際の道路が高速道路であるか一般道であるかといった種別を示す。道路属性の情報は、その道路リンクに関する各種の属性を示す。例えば、その道路リンクに対応した実際の道路が高架上道路または高架下道路であることを表す高架道情報、道路の勾配角を表す勾配情報などが道路属性として示されている。
【0022】
自立航法センサ2は、車両の回転角度を検出する振動ジャイロ等の相対方位センサ(角度センサ)と、所定走行距離毎に1個のパルスを出力する距離センサとを備えている。自立航法センサ2は、これらの角度センサおよび距離センサによって車両の相対位置および方位を検出し、その情報をナビゲーション制御部10に出力する。これらの情報は、数ミリ秒から数秒程度の間隔でナビゲーション制御部10に逐次出力される。
【0023】
GPS受信機3は、複数のGPS衛星から送られてくる電波を受信して、3次元測位処理あるいは2次元測位処理を行って車両の絶対位置および方位を計算する(車両方位は、現時点における自車位置と1サンプリング時間前の自車位置とに基づいて計算する)。そして、これらの計算した車両の絶対位置および方位の情報をナビゲーション制御部10に出力する。このGPS受信機3は、複数のGPS衛星に関する衛星配置情報もナビゲーション制御部10に出力する。衛星配置情報には、GPS衛星の衛星番号、衛星仰角、衛星方位などの情報が含まれている。これらの情報も、数ミリ秒から数秒程度の間隔でナビゲーション制御部10に逐次出力される。
【0024】
ディスプレイ4は、ナビゲーション制御部10から出力される画像データに基づいて、自車位置周辺の地図画像を自車位置マークとともに表示する。ナビゲーション制御部10は、地図データ記憶部1に記憶された地図データ、自立航法センサ2およびGPS受信機3から出力される情報に基づいて、ナビゲーション装置の全体を制御する。以下、このナビゲーション制御部10の詳細を説明する。
【0025】
地図描画部11は、地図データ記憶部1に記憶された地図データに基づいて、自車位置周辺の地図を表す地図画像データを生成する。すなわち、地図描画部11は、後述するようにマップマッチング処理部14によって位置修正された後の自車位置情報に基づいて、画面中心位置を含む所定範囲の地図データを地図データ記憶部1から読み出して、読み出した地図データに基づいて、ディスプレイ4への表示に必要な自車位置周辺の地図画像データを生成する。
【0026】
自車位置測定部12は、自立航法によって自車位置を測定する。具体的には、自車位置測定部12は、自立航法センサ2から出力される自車の相対的な位置情報と方位情報に基づいて、絶対的な自車位置(推定車両位置)および車両方位を計算する。データ記憶部13は、GPS受信機3から出力される自車の絶対的な位置情報と方位情報、GPS衛星の衛星配置情報などを順次格納する。
【0027】
マップマッチング処理部14は、地図描画部11によって地図データ記憶部1から読み出された自車位置周辺の地図データと、自車位置測定部12により計算された自立航法センサ2の出力に基づく推定車両位置および車両方位のデータと、データ記憶部13に格納されたGPS受信機3による車両位置および車両方位のデータとを用いて、車両走行距離毎に投影法によるマップマッチング処理を行って、自車の走行位置を地図データの道路リンク上に修正する。
【0028】
具体的には、マップマッチング処理部14は、自車位置測定部12により測定された自車位置に対して所定条件を満たす1以上の道路リンクを修正候補道路として抽出する。この場合の所定条件とは、自車位置からの距離や角度あるいは道路の連続性などに関する条件である。そして、当該抽出した修正候補道路のそれぞれについて所定の演算式によって評価値を算出し、算出した評価値が最も大きい道路リンク上に自車位置を修正する。
【0029】
自車位置マーク発生部15は、マップマッチング処理部14によりマップマッチング処理された後の自車位置に表示する自車位置マークの画像データを発生する。画像合成部16は、地図描画部11によって描画された地図画像データに、自車位置マーク発生部15により発生された自車位置マークの画像データを重ねて画像合成を行い、ディスプレイ4に出力する。これにより、合成された画像がディスプレイ4の画面上に表示される。
【0030】
仰角検出部17は、データ記憶部13に記憶されたGPS衛星の衛星配置情報に基づいて、複数のGPS衛星のうち、GPS衛星の電波から得られる複数のGPS衛星の配置情報に基づき、電波を受信可能と想定される位置に存在するGPS衛星である可視衛星の仰角を検出する。受信レベル検出部18は、GPS受信機3での電波の受信状況を監視することにより、可視衛星に関する電波の受信レベル(C/N値)を検出する。
【0031】
遮蔽率算出部19は、仰角検出部17により検出された仰角が閾値を超える可視衛星のうち、受信レベル検出部18により検出された受信レベルが閾値未満の可視衛星の割合を可視衛星遮蔽率として算出する。走行道路判定部20は、遮蔽率算出部19により算出された可視衛星遮蔽率に基づいて、自車が高架上道路と高架下道路のどちらを走行しているのかを判定する。そして、その判定結果をマップマッチング処理部14に通知する。
【0032】
マップマッチング処理部14は、走行道路判定部20により自車が高架下道路を走行していると判定された場合は、高架上にある高速道路の道路リンクを修正候補道路から除外してマップマッチング処理を行う。一方、走行道路判定部20により自車が高架上道路を走行していると判定された場合は、マップマッチング処理部14は、高架下の一般道や、高架上にない高速ランプ道路の道路リンクを修正候補道路から除外してマップマッチング処理を行う。ただし、自車が高架上道路を走行していると判定された場合、自車位置測定部12により測定された自車位置からの距離が所定の閾値以上となる道路リンクについては、高架上にない高速ランプ道路であっても修正候補道路から除外しないようにするのが好ましい。
【0033】
走行距離検出部21は、自立航法センサ2が備える距離センサからの出力に基づいて、自車の走行距離を検出する。そして、検出した走行距離を走行道路判定部20に通知する。走行道路判定部20は、遮蔽率算出部19により算出された可視衛星遮蔽率が後述する所定の条件を満たす状態のまま、走行距離検出部21により検出される走行距離が所定値を超えたときに、自車が高架上道路または高架下道路を走行していると判定する。
【0034】
なお、走行道路判定部20は、遮蔽率算出部19により算出された可視衛星遮蔽率の瞬時値に基づいて高架上下道の判定を行ってもよい。ただし、可視衛星遮蔽率が所定の条件を満たす状態のままで一定距離を走行した場合に高架上道路または高架下道路を走行していると判定した方が、突発的なノイズ等の影響を受けずにより正確な判定を行うことができるという点で好ましい。
【0035】
次に、上述した遮蔽率算出部19の具体的な構成について説明する。
図2は、本実施形態による遮蔽率算出部19のより具体的な機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、遮蔽率算出部19は、その具体的な機能構成として、高仰角可視衛星抽出部31、遮蔽高仰角可視衛星抽出部32、高仰角可視衛星遮蔽率算出部33、非低仰角可視衛星抽出部34、遮蔽非低仰角可視衛星抽出部35および非低仰角可視衛星遮蔽率算出部36を備えている。
【0036】
高仰角可視衛星抽出部31、遮蔽高仰角可視衛星抽出部32および高仰角可視衛星遮蔽率算出部33は、例えば
図3のように自車が高架下道路を走行しているか否かを判定するための構成である。一方、非低仰角可視衛星抽出部34、遮蔽非低仰角可視衛星抽出部35および非低仰角可視衛星遮蔽率算出部36は、例えば
図4のように自車が高架上道路を走行しているか否かを判定するための構成である。
【0037】
高仰角可視衛星抽出部31は、複数の可視衛星のうち、仰角検出部17により検出された仰角が第1の仰角閾値θ
1を超えるものを高仰角可視衛星として抽出する。
図3の例では、GPS受信機3において捕捉している可視衛星101
-1〜101
-6が6つあり、このうち仰角が第1の仰角閾値θ
1を超えるものは可視衛星101
-2〜101
-6の5つである。よって、高仰角可視衛星抽出部31は、この5つの可視衛星101
-2〜101
-6を高仰角可視衛星として抽出する。
【0038】
遮蔽高仰角可視衛星抽出部32は、高仰角可視衛星抽出部31により抽出された高仰角可視衛星101
-2〜101
-6のうち、受信レベル検出部18により検出された受信レベルが第1のレベル閾値LTh
1未満のものを遮蔽高仰角可視衛星として抽出する。
図3の例では、4つの高仰角可視衛星101
-3〜101
-6からの電波が高架上道路によって遮られ、GPS受信機3での受信レベルが低くなり、第1のレベル閾値LTh
1未満になっているものとする。よって、遮蔽高仰角可視衛星抽出部32は、これら4つの高仰角可視衛星101
-3〜101
-6を遮蔽高仰角可視衛星として抽出する。
【0039】
高仰角可視衛星遮蔽率算出部33は、以下の式に示すように、高仰角可視衛星の数に対する遮蔽高仰角可視衛星の数の割合を高仰角可視衛星遮蔽率として算出する。
高仰角可視衛星遮蔽率=100×(遮蔽高仰角可視衛星数/高仰角可視衛星数)
図3の例では、高仰角可視衛星遮蔽率は80%となる。
なお、高仰角可視衛星遮蔽率は、ナビゲーション制御部10がGPS受信機3からGPS測位結果を取得する毎に計算する。ただし、高仰角可視衛星が1つもない場合には、高仰角可視衛星遮蔽率は無効値(−1%)に設定する。
【0040】
非低仰角可視衛星抽出部34は、複数の可視衛星のうち、仰角検出部17により検出された仰角が第1の仰角閾値θ
1よりも小さい第2の仰角閾値θ
2を超えるものを非低仰角可視衛星として抽出する。
図4の例では、GPS受信機3において捕捉している可視衛星101
-1〜101
-6が6つあり、これらの全てについて仰角が第2の仰角閾値θ
2を超えている。よって、非低仰角可視衛星抽出部34は、これら6つの可視衛星101
-1〜101
-6を非低仰角可視衛星として抽出する。
【0041】
遮蔽非低仰角可視衛星抽出部35は、非低仰角可視衛星抽出部34により抽出された非低仰角可視衛星101
-1〜101
-6のうち、受信レベル検出部18により検出された受信レベルが第2のレベル閾値LTh
2未満のものを遮蔽非低仰角可視衛星として抽出する。ここで、第2のレベル閾値LTh
2は、第1のレベル閾値LTh
1よりも大きい値とするのが好ましい。高架下道路を走行中の場合には高架上道路により電波が遮蔽され、高架上道路を走行中の場合にはビル等により電波が遮蔽されるという違いがあるからである。
【0042】
図4の例では、6つの非低仰角可視衛星101
-1〜101
-6からの電波は遮られることなくGPS受信機3にて受信されるので、GPS受信機3での受信レベルが何れも高くなり、第2のレベル閾値LTh
2未満にはなっていないものとする。よって、この場合に遮蔽非低仰角可視衛星抽出部35は、6つの非低仰角可視衛星101
-1〜101
-6を何れも遮蔽非低仰角可視衛星として抽出しない。
【0043】
非低仰角可視衛星遮蔽率算出部36は、以下の式に示すように、非低仰角可視衛星の数に対する遮蔽非低仰角可視衛星の数の割合を非低仰角可視衛星遮蔽率として算出する。
非低仰角可視衛星遮蔽率=100×(遮蔽非低仰角可視衛星数/非低仰角可視衛星数)
図4の例では、非低仰角可視衛星遮蔽率は0%となる。
なお、非低仰角可視衛星遮蔽率は、ナビゲーション制御部10がGPS受信機3からGPS測位結果を取得する毎に計算する。ただし、非低仰角可視衛星が1つもない場合には、非低仰角可視衛星遮蔽率は無効値(−1%)に設定する。
【0044】
走行道路判定部20は、高仰角可視衛星遮蔽率算出部33により算出された高仰角可視衛星遮蔽率が第1の遮蔽率閾値STh
1を超える場合に、自車が高架下道路を走行していると判定する。
図3の例では、高仰角可視衛星遮蔽率(=80%)が第1の遮蔽率閾値STh
1を超えるとして、自車が高架下道路を走行していると判定する。
【0045】
また、走行道路判定部20は、非低仰角可視衛星遮蔽率算出部36により算出された非低仰角可視衛星遮蔽率が第2の遮蔽率閾値STh
2以下の場合に、自車が高架上道路を走行していると判定する。ここで、第2の遮蔽率閾値STh
2は、第1の遮蔽率閾値STh
1よりも小さい値とするのが好ましい。
図4の例では、非低仰角可視衛星遮蔽率(=0%)が第2の遮蔽率閾値STh
2以下であるとして、自車が高架上道路を走行していると判定する。
【0046】
走行道路判定部20による判定処理は、ナビゲーション制御部10がGPS受信機3からGPS測位結果を取得する毎に行う。この場合に、走行道路判定部20は、高仰角可視衛星遮蔽率が第1の遮蔽率閾値STh
1を超える状態のままで、走行距離検出部21により検出される走行距離が第1の距離R
1を超えた場合に、自車が高架下道路を走行していると判定するのが好ましい。また、走行道路判定部20は、非低仰角可視衛星遮蔽率が第2の遮蔽率閾値STh
2以下の状態のままで、走行距離検出部21により検出される走行距離が第2の距離R
2を超えた場合に、自車が高架上道路を走行していると判定するのが好ましい。
【0047】
ここで、第2の距離R
2は、第1の距離R
1よりも長い値に設定するのが好ましい。高架上道路を走行していても、ビルの近くや谷間などを走行しているときには電波の受信状態が悪くなり、しばらくの時間、非低仰角可視衛星遮蔽率が第2の遮蔽率閾値STh
2を超えることがある。その場合に、自車が高架上道路を走行していないと誤判定することがないように、第2の距離R
2は比較的長めに設定する必要がある。これに対して、高架下道路を走行しているときは、高仰角可視衛星遮蔽率が第1の遮蔽率閾値STh
1を超える状態が続きやすいので、第1の距離R
1は第2の距離R
2に比べて短く設定することが可能である。
【0048】
したがって、走行道路判定部20は、まず、高仰角可視衛星遮蔽率算出部33により算出される高仰角可視衛星遮蔽率に基づいて、自車が高架下道路を走行しているか否かを判定する。その後、走行道路判定部20は、非低仰角可視衛星遮蔽率算出部36により算出される非低仰角可視衛星遮蔽率に基づいて、自車が高架上道路を走行しているか否かを判定する。
【0049】
図5は、以上のように構成した本実施形態によるナビゲーション制御部10の動作例を示すフローチャートである。なお、
図5に示すフローチャートは、ナビゲーション装置の電源をオンにしたときに開始する。
【0050】
まず、自立航法センサ2によって自車の相対的な位置情報および方位情報を測位し、自車位置測定部12がこの測位情報に基づいて、絶対的な自車位置および車両方位を計算する(ステップS1)。また、GPS受信機3によって自車の絶対的な位置情報、方位情報、GPS衛星の衛星配置情報を測位し、これらの情報をデータ記憶部13に格納する(ステップS2)。
【0051】
次に、仰角検出部17は、データ記憶部13に記憶されたGPS衛星の衛星配置情報に基づいて、電波を受信可能と想定される位置に存在するGPS衛星である可視衛星の仰角を検出する(ステップS3)。また、受信レベル検出部18は、可視衛星に関する電波の受信レベルを検出する(ステップS4)。
【0052】
さらに、高仰角可視衛星抽出部31は、複数の可視衛星のうち、仰角検出部17により検出された仰角が第1の仰角閾値θ
1を超えるものを高仰角可視衛星として抽出する(ステップS5)。また、遮蔽高仰角可視衛星抽出部32は、高仰角可視衛星抽出部31により抽出された高仰角可視衛星のうち、受信レベル検出部18により検出された受信レベルが第1のレベル閾値LTh
1未満のものを遮蔽高仰角可視衛星として抽出する(ステップS6)。
【0053】
そして、高仰角可視衛星遮蔽率算出部33は、高仰角可視衛星の数に対する遮蔽高仰角可視衛星の数の割合を高仰角可視衛星遮蔽率として算出する(ステップS7)。次に、走行道路判定部20は、高仰角可視衛星遮蔽率算出部33により算出された高仰角可視衛星遮蔽率が第1の遮蔽率閾値STh
1を超えるか否かを判定する(ステップS8)。
【0054】
ここで、高仰角可視衛星遮蔽率が第1の遮蔽率閾値STh
1を超えると判定された場合、走行距離検出部21は、自立航法センサ2が備える距離センサからの出力に基づいて、第1の遮蔽率閾値STh
1を超えると初めて判定された時点からの自車の走行距離を検出する(ステップS9)。そして、走行道路判定部20は、高仰角可視衛星遮蔽率が第1の遮蔽率閾値STh
1を超える状態のままで走行距離が第1の距離R
1となったか否かを判定する(ステップS10)。
【0055】
高仰角可視衛星遮蔽率が第1の遮蔽率閾値STh
1を超える状態のままで走行距離が第1の距離R
1となった場合、走行道路判定部20は、自車が高架下道路を走行していると判定する(ステップS11)。その後、処理はステップS24に遷移する。一方、走行距離がまだ第1の距離R
1となっていない場合、処理はステップS1に戻る。
【0056】
上記ステップS8において、高仰角可視衛星遮蔽率が第1の遮蔽率閾値STh
1を超えないと判定された場合、自立航法センサ2によって自車の相対的な位置情報および方位情報を測位し、自車位置測定部12がこの測位情報に基づいて、絶対的な自車位置および車両方位を計算する(ステップS12)。また、GPS受信機3によって自車の絶対的な位置情報、方位情報、GPS衛星の衛星配置情報を測位し、これらの情報をデータ記憶部13に格納する(ステップS13)。
【0057】
次に、仰角検出部17は、データ記憶部13に記憶されたGPS衛星の衛星配置情報に基づいて、電波を受信可能と想定される位置に存在するGPS衛星である可視衛星の仰角を検出する(ステップS14)。また、受信レベル検出部18は、可視衛星に関する電波の受信レベルを検出する(ステップS15)。
【0058】
さらに、非低仰角可視衛星抽出部34は、複数の可視衛星のうち、仰角検出部17により検出された仰角が第2の仰角閾値θ
2を超えるものを非低仰角可視衛星として抽出する(ステップS16)。また、遮蔽非低仰角可視衛星抽出部35は、非低仰角可視衛星抽出部34により抽出された非低仰角可視衛星のうち、受信レベル検出部18により検出された受信レベルが第2のレベル閾値LTh
2未満のものを遮蔽非低仰角可視衛星として抽出する(ステップS17)。
【0059】
そして、非低仰角可視衛星遮蔽率算出部36は、非低仰角可視衛星の数に対する遮蔽非低仰角可視衛星の数の割合を非低仰角可視衛星遮蔽率として算出する(ステップS18)。次に、走行道路判定部20は、非低仰角可視衛星遮蔽率算出部36により算出された非低仰角可視衛星遮蔽率が第2の遮蔽率閾値STh
2以下であるか否かを判定する(ステップS19)。
【0060】
ここで、非低仰角可視衛星遮蔽率が第2の遮蔽率閾値STh
2以下であると判定された場合、走行距離検出部21は、第2の遮蔽率閾値STh
2以下であると初めて判定された時点からの自車の走行距離を検出する(ステップS20)。そして、走行道路判定部20は、非低仰角可視衛星遮蔽率が第2の遮蔽率閾値STh
2以下の状態のままで走行距離が第2の距離R
2となったか否かを判定する(ステップS21)。
【0061】
非低仰角可視衛星遮蔽率が第2の遮蔽率閾値STh
2以下の状態のままで走行距離が第2の距離R
2となった場合、走行道路判定部20は、自車が高架上道路を走行していると判定する(ステップS22)。その後、処理はステップS24に遷移する。一方、走行距離がまだ第2の距離R
2となっていない場合、処理はステップS12に戻る。
【0062】
上記ステップS19において、非低仰角可視衛星遮蔽率が第2の遮蔽率閾値STh
2以下でないと判定された場合、走行道路判定部20は、高架下道路でも高架上道路でもないその他の道路を走行中であると判定する(ステップS23)。その後、処理はステップS24に遷移する。
【0063】
ステップS24では、マップマッチング処理部14は、自車位置測定部12により測定された自車位置に対して所定条件を満たす1以上の道路リンクを修正候補道路として抽出する。このとき、マップマッチング処理部14は、走行道路判定部20により自車が高架下道路または高架上道路を走行していると判定された場合は、上述した一定の道路リンクを修正候補道路から除外する。
【0064】
そして、マップマッチング処理部14は、当該抽出した修正候補道路のそれぞれについて所定の演算式によって評価値を算出し、算出した評価値が最も大きい道路リンク上に自車位置を修正する(ステップS25)。その後、ナビゲーション制御部10は、ナビゲーション装置の電源がオフとされたか否かを判定し(ステップS26)、オフとされていない場合、処理はステップS1に戻る。一方、ナビゲーション装置の電源がオフとされた場合、
図5に示すフローチャートの処理は終了する。
【0065】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、GPS受信機3で電波を捕捉している可視衛星の中で仰角が第1の仰角閾値θ
1を超える可視衛星のうち、電波の受信レベルが第1のレベル閾値LTh
1未満の可視衛星の割合を高仰角可視衛星遮蔽率として算出するとともに、仰角が第2の仰角閾値θ
2を超える可視衛星のうち、電波の受信レベルが第2のレベル閾値LTh
2未満の可視衛星の割合を非低仰角可視衛星遮蔽率として算出し、これらの可視衛星遮蔽率に基づいて、自車が高架上道路と高架下道路のどちらを走行しているのかを判定するようにしている。
【0066】
このように構成した本実施形態によれば、複数のGPS衛星の中から抽出された可視衛星の仰角に基づいて単純に判定を行うのではなく、受信レベルが閾値未満の可視衛星の割合を示す可視衛星遮蔽率に基づいて、自車が高架上道路と高架下道路のどちらを走行しているのかが判定される。これにより、より精細な判定基準に基づいて判定が行われることになるので、高架の高さ、高架上道路の幅、高架上道路と高架下道路との水平方向の位置関係などに関して異なる状況の道路においても、自車が高架上道路と高架下道路のどちらを走行しているのかをより正しく判定することができるようになる。
【0067】
例えば、
図6に示すように、高架下道路が高架上道路の斜めの位置にある場合は、上述した特許文献1に記載の従来技術によると、電波の受信が可能なGPS衛星のうち、仰角が所定角度以上のGPS衛星があるので、高架上道路を走行していると判定されてしまう。また、特許文献2に記載の従来技術でも、受信不能領域の形状が天空域の中央寄り部分を車両の進行方向に沿って縦断している形状にならないため、自車が高架下道路を走行していると判定することはできない。
【0068】
一方、特許文献3に記載の技術であれば、
図6に示す状況下において自車が高架下道路を走行していると判定することができる。しかしながら、
図4のように高架上道路を走行しているときに、車両の右側にある可視衛星101
-4〜101
-6の何れかについて電波の受信レベルがビル等の影響を受けて所定レベル以下になると、高架下道路を走行していると誤判定してしまう。
【0069】
これに対して、本実施形態によれば、
図6のような状況下においても自車が高架下道路を走行していることを正しく判定することができる。すなわち、
図6の例において、GPS受信機3において捕捉している6つ可視衛星101
-1〜101
-6のうち、仰角が第1の仰角閾値θ
1を超えるものは可視衛星101
-1〜101
-6の6つであるため、高仰角可視衛星抽出部31は、6つの可視衛星101
-1〜101
-6を高仰角可視衛星として抽出する。
【0070】
また、これら6つの可視衛星101
-1〜101
-6のうち、4つの高仰角可視衛星101
-2〜101
-6からの電波が高架上道路によって遮られ、第1のレベル閾値LTh
1未満となる。よって、遮蔽高仰角可視衛星抽出部32は、これら4つの高仰角可視衛星101
-2〜101
-6を遮蔽高仰角可視衛星として抽出する。この場合、高仰角可視衛星遮蔽率算出部33によって算出される高仰角可視衛星遮蔽率は66.7%となり、これが第1の遮蔽率閾値STh
1を超えるとして、自車が高架下道路を走行していると判定することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、
図4のような状況下で車両の右側にある可視衛星の電波の受信レベルが所定レベル以下に低下しても、自車が高架上道路を走行していると正しく判定することができる。例えば、
図4において、6つの非低仰角可視衛星101
-1〜101
-6のうち、非低仰角可視衛星101
-6からの電波がビル等によって遮られ、第2のレベル閾値LTh
2未満となった場合、高仰角可視衛星遮蔽率算出部33によって算出される非低仰可視衛星遮蔽率は16.6%となり、これが第2の遮蔽率閾値STh
2以下になるとして、自車が高架上道路を走行していると判定することができる。
【0072】
図7は、本実施形態によるナビゲーション装置の他の構成例を示す図である。なお、この
図7において、
図1に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
図7に示す構成において、ナビゲーション装置は、車両の傾斜角を検出する傾斜センサ5を更に備えている。また、ナビゲーション制御部10は、その機能構成として、勾配角検出部22および第2の走行道路判定部23を更に備えている。また、マップマッチング処理部14に代えてマップマッチング処理部14’を備えている。
【0073】
勾配角検出部22は、傾斜センサ5から出力される情報に基づいて、自車の勾配角を検出する。第2の走行道路判定部23は、地図描画部11によって地図データ記憶部1から読み出された自車位置周辺の地図データの道路リンクに勾配情報が付与されている場合には、その勾配情報と、勾配角検出部22により検出された自車勾配角とを比較することにより、自車が高架上道路と高架下道路のどちらを走行しているのかを判定する。
【0074】
マップマッチング処理部14’は、第2の走行道路判定部23によって走行道路の判定が行われた場合は、まずはその判定結果に基づいてマップマッチング処理を行う。ただし、地図データ記憶部1に格納されている勾配情報の精度が悪く、高架上道路と高架下道路のどちらを走行しているのかが誤判定される可能性もある。そこで、マップマッチング処理部14’は、第2の走行道路判定部23の判定結果に基づくマップマッチング処理を行った後、走行道路判定部20の判定結果に基づくマップマッチング処理も行う。
【0075】
上述したように、走行道路判定部20による走行道路の判定は、可視衛星遮蔽率が所定の条件を満たす状態のままで自車が一定の距離を走行することを条件として行っているため、判定結果が確定するまでにある程度の時間を要する。これに対して、第2の走行道路判定部23による走行道路の判定は、道路リンクに勾配情報が格納された道路を走行しているときに僅かな時間で行うことができる。よって、
図7の構成によれば、第2の走行道路判定部23の判定結果に基づくマップマッチング処理によって短時間のうちに自車位置の修正を行い、間違った位置に修正されてしまった場合でも、その後の走行道路判定部20の判定結果に基づくマップマッチング処理によって正しい道路にリカバリすることができる。
【0076】
なお、上記実施形態では、数ミリ秒から数秒程度の間隔でナビゲーション制御部10が自立航法センサ2およびGPS受信機3から測位結果を取得する毎に走行道路が高架上道路か高架下道路かの判定を随時行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、所定角度以下の微小角度で道路が分岐する分岐点を走行しているときにのみ走行道路の判定を行うようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、走行道路が高架上道路か否かの判定処理と、高架下道路か否かの判定処理との両方を行う例について説明したが、何れか一方のみを行うようにしてもよい。例えば、
図7のように、微小角度の分岐点において、地図データの勾配情報を利用して第2の走行道路判定部23の判定結果に基づくマップマッチング処理を行った後、GPS受信機3の測位結果を利用して走行道路判定部20の判定結果に基づくマップマッチング処理を行う場合に、高架下道路か否かの判定処理のみ行い、高架下道路ではないと判定されたときに高架上道路を走行中であると判断するようにしてもよい。逆に、高架上道路か否かの判定処理のみ行うようにしてもよい。地図データの勾配情報を利用して判定する分岐点の走行場面では、自車は高架下道路または高架上道路のどちらかを走行している可能性が高いからである。
【0078】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。