(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下ではすべての図を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、特に言及しない場合にはその重複する説明を省略する。
【0017】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る鞍乗型電動車両の右側面図である。
図1に示すように、鞍乗型電動車両1は、車体を構成する車体フレーム3と、従動輪である前輪4と、駆動輪である後輪5とを備えている。車体フレーム3は、前下がりに傾斜したヘッドフレーム6と、ヘッドフレーム6の上端部から後方に延びる左右一対のアッパーフレーム7と、ヘッドフレーム6の下端部から後方に延びる左右一対のロアフレーム8と、アッパーフレーム7の前部とロアフレーム8の前部とを上下方向に接続するフロントガセットフレーム9とを有する。各フレーム7〜9はパイプで形成され、互いに溶接により固定されている。
【0018】
ヘッドフレーム6は、前輪4を支持するための上下一対の前側支持部12,13を有している。前輪4には、上下一対の前輪アーム10,11の前端部が回動自在に接続され、前輪4から後方に延びる前輪アーム10,11の後端部が前側支持部12,13に接続されている。前輪アーム10,11の後端部は、前側支持部12,13に対して横方向の軸線周りに回動自在に接続されているので、前輪アーム10,11は、前側支持部12,13に対して上下に揺動自在である。前輪4には、後上方に向けて斜めに延びる左右一対のハンドル支持部材14の下端部が接続されている。ハンドル支持部材14の上端部には、車幅方向内方に向けて突出するハンドルグリップ15が設けられている。
【0019】
アッパーフレーム7およびロアフレーム8の後端部には、クロスフレーム19,20を介して、リアフレーム36が固定されている。リアフレーム36の後部が、後輪5を支持する後輪アーム17の前部に回動自在に接続されている。これにより、後輪アーム17は、リアフレーム36に対して上下に揺動自在である。後輪アーム17は、中空形状である。後輪アーム17には、走行駆動用の電気モータ18が取り付けられる。さらに、後輪アーム17には、電気モータ18が発生する回転動力を後輪5に伝達する図示しない動力伝達機構(例えば、ギヤ等)が収容されている。
【0020】
車体フレーム3には、前輪4と後輪5との間において、電気モータ18に電力を供給するための蓄電ユニット22が搭載されている。蓄電ユニット22は、全体として円柱形状であり、円筒形状の外形を有している。蓄電ユニット22は、蓄電装置24と、蓄電装置24に電気的に接続されかつ蓄電装置24の後方に配置されたインバータ26とを備えている。インバータ26と電気モータ18とは前後方向に延びる3本の高圧電線27(三相交流)により接続されている。
【0021】
ロアフレーム8は、ヘッドフレーム6から後方に水平に延びたフレーム前部8aと、フレーム前部8aの後端から後方に延びて且つ蓄電ユニット22に沿うように前下がりに傾斜したフレーム後部8bとを有している。ロアフレーム8のフレーム後部8bの下方には空間が形成されており、ライダーが足裏を載せるためのステップ部材30が車体フレーム3から当該空間を通って延出されている。車体フレーム3には、車体フレーム3を上から覆うドーム状のカウル31が取り付けられている。カウル31の後方かつ後輪アーム17の上方には、ライダーが跨いで着座するためのシート32が配置されている。シート32は、図示しないシートレールにより車体フレーム3に取り付けられている。
【0022】
図2は、
図1に示す鞍乗型電動車両の上面図である。
図2に示すように、鞍乗型電動車両1の構造は、左右対称である。蓄電ユニット22は、平面視で、車両1の車幅方向中心を通過して車体前後方向に延びる中心線L0上に配置されている。蓄電ユニット22の軸線は、平面視で中心線L0と重なっている。電気モータ18を含む後輪アーム17も、平面視で車体前後方向に延びる中心線L0上に配置されている。本実施形態では、蓄電ユニット22および後輪アーム17の両方が、平面視で中心線L0に対して対称に形成されている。さらに言えば、前輪4、前輪アーム10,11、蓄電ユニット22、電気モータ18、後輪アーム17(
図1参照)、および後輪5が、車幅方向中心を通過する前後方向に延びる鉛直面に対して対称に形成されている。電気モータ18は、シート32の真下に位置している。蓄電ユニット22は、カウル31で上方から覆われている。カウル31の後部31bは、カウル31の前部31aよりも車幅方向の幅が狭い。平面視において、ロアフレーム8のフレーム前部8aは、カウル31により覆われているが、ロアフレーム8のフレーム後部8bは、カウル31の狭幅な後部31bより車幅方向外方にはみ出している。アッパーフレーム7のフレーム後部7bは、カウル31より車幅方向にはみ出していない。
【0023】
電気モータ18は、回転軸42a(後述する
図3から
図5参照)の軸線Sが車幅方向に延びている。また、電気モータ18は、回転軸42aの軸線Sに沿って2つ設けられている。この2つの電気モータ18が中心線L0に対して左右対称に配置されている。
【0024】
図3は、
図1に示す鞍乗型電動車両に適用される電気モータを回転軸方向から視た図である。また、
図4は、
図3に示す電気モータのIV−IV断面図である。なお、
図3および
図4においては2つの電気モータ18のうちの一方(車両右側の電気モータ18)を例示するが、他方の電気モータ18も同様に構成される。
図3および
図4に示すように、電気モータ18は、固定子41と、固定子41に対して回転軸42aの軸線S回りに回転駆動する回転子42とを備え、回転軸42aの軸線S上を延びて当該軸線S方向両側に開放される中空空間43が形成されるように構成されている。中空空間43は、電気モータ18の回転軸42aを貫通するような筒状の内壁44により形成されている。
【0025】
また、鞍乗型電動車両1は、中空空間43が車両1の外部と連通するように構成されている。電気モータ18は、中空空間43における回転軸42aの軸線S方向車両外方側端部(
図4において向かって左側)が車両1の外部に曝されるように配置される。より具体的には、リアフレーム36の車幅方向外端部は、当該箇所における車両1の車幅方向外端部を形成している。そして、リアフレーム36の車幅方向外端部より車幅方向外方に電気モータ18が延出するように配置されている。これにより中空空間43が車両1の外部と連通している。
【0026】
上記構成によれば、電気モータ18に形成された中空空間43と車両1の外部との間で空気の行き来が生じる(
図4において矢符AIRで示す)。このため、冷媒循環機構(図示せず)の容量を大きくするために鞍乗型電動車両1を大型化することなく、電気モータ18の温度上昇を防止することができる。さらに、冷媒循環機構をなくした構成とすることもできる。
【0027】
なお、上記のような構成の電気モータ18を採用する場合であっても、さらに電気モータ18に冷媒を循環させる冷却機構(図示せず)を用いる(併用する)こととしてもよい。この場合でも、冷却機構だけでなく中空空間43によって電気モータ18が冷却されるため、冷却機構の冷却能力を過剰に向上させることなく適切な冷却能力を得ることができる。したがって、鞍乗型電動車両1を大型化することなく、電気モータ18の温度上昇を防止することができる。
【0028】
さらに、本実施形態においては、電気モータ18の回転軸42aが車幅方向に延びているため、中空空間43も車幅方向に延びている。このため、曲り道等を走行する際に車体を傾斜させることにより、中空空間43への外気の流入を促すことができる。このため、走行時において電気モータ18で発生した熱を外部に逃がし易くすることができる。また、停車時においてサイドスタンドを用いて車体を傾斜させることによっても中空空間43内の熱を逃がし易くすることができる。
【0029】
また、
図1および
図2に示すように、電気モータ18は、シート32上面の最下部位置よりも後方に配置される。このため、走行中のライダーによって中空空間43への導入部が塞がれることが防止される。
【0030】
さらに、電気モータ18は、シート32とステップ部材30との上下方向間に設けられる。ライダーがシート32に着座し、ステップ部材30に足裏を載せた際、ライダーは、膝を曲げた状態となる。このため、シート32とステップ部材30との上下方向間に電気モータ18が配置されることにより、走行中のライダーによって中空空間43への導入部が塞がれることが防止される。また、電気モータ18をステップ部材30より後方に配置することとしてもよい。この場合、より確実に走行中のライダーによって中空空間43への導入部が塞がれることが防止される。また、シート32の後方に同乗者シートが配置される場合には、同乗者シートと同乗者用のステップ部材との上下方向間に電気モータ18が配置されることが好ましい。さらに、この場合、同乗者用のステップ部材よりも下方または後方に配置されてもよい。
【0031】
電気モータ18は、回転軸42aの軸線S方向一端側が他端部に対して車幅方向外方に位置する。
図4に示すように、固定子41および回転子42のうちの少なくとも外周側に配置される一方(以下、一方部材)は、少なくとも回転軸42aの軸線S方向一端側の端面Kが前記軸線に対して傾斜している。これによれば、一方部材において回転軸42aの径方向の大きさを大きくすることなく、少なくとも回転軸42aの軸線S方向一端側の端面Kの表面積を大きくすることができる。したがって、電気モータ18が空気に触れる表面積が大きくなり、電気モータ18の温度上昇を好適に防止することができる。さらに、一方部材が径方向外方に向かうに従って軸線方向内方に傾斜することにより、車体を傾斜させたときに路面と電気モータ18との干渉を防ぐことができる。本実施形態においては、固定子41が一方部材として構成されている。すなわち、固定子41が回転子42より外周側に配置されている。
【0032】
鞍乗型電動車両1は、固定子41および回転子42を覆うカバー45を備えている。これにより、電気モータ18を保護することができる。
図4に示すように、カバー45は、固定子41に固定されている。さらに、このカバー45の一部が、前述した一方部材における回転軸42aの軸線方向一端側の端面Kを形成している。さらに、このカバー45の一部が、回転軸42aの径方向内側において軸線S方向に延出し、前述した筒状の内壁44を形成している。
【0033】
このカバー45は、
図3および
図4に示すように、電気モータ18の外周面と内周面との間にわたって回転軸42aの径方向に延びる放熱フィン46を有している。より詳しくは、カバー45は、電気モータ18の外周面を覆う外周壁45aと、電気モータ18の内周面を覆い、中空空間43を形成する筒状の内壁44と、内壁44の回転軸41aの軸線S方向一端部から径方向外方に延びるリング状の外側部材45bと、外周壁45aの回転軸41aの軸線S方向他端部から径方向内方に延びるリング状の内側部材45cとを備える。したがって、電気モータ18の外周面は外周壁45aにより形成され、内周面は内壁44により形成される。内壁44は、円筒形状を有している。当該円筒形状の中心は、回転軸42aの軸線Sに一致する。カバー45は、後述する固定子41の固定子本体41aに固定される。
【0034】
このように、カバー45の一部が放熱フィン46として形成されることにより、電気モータ18が空気に触れる表面積が大きくなり、電気モータ18の温度上昇を好適に防止することができる。放熱フィン46は、回転軸42aの周方向に間隙を空けて複数設けられる。中空空間43と外部とは複数の放熱フィン46間の間隙を介して連通するように構成されている。
【0035】
放熱フィン46は、中空空間43を形成する筒状の内壁44にも延びている。つまり、放熱フィン46は、回転軸42aの径方向に延びる径方向延出部46aと、径方向延出部46aの径方向内端部から回転軸42aの軸線方向に延びる軸方向延出部46bとを備えている。これにより、電気モータ18が空気に触れる表面積が大きくなり、電気モータ18の温度上昇を好適に防止することができる。
【0036】
カバー45の放熱フィン46および外側部材45bは、熱伝導率の高い材料(例えばアルミニウム等の金属材料)により形成される。これにより、電気モータ18で発生した熱が中空空間43から放熱フィン46および外側部材45bに伝達された際の冷却効率を高くすることができる。このように、カバー45を放熱部材として利用することにより冷却効率を高くすることができる。また、外側部材45bに加えて複数の放熱フィン46が設けられることにより、放熱部材として機能する表面積が大きくなるため、冷却効率をさらに高くすることができる。
【0037】
図5は、
図3に示す電気モータの内部構造を示す図である。
図5においては、
図3においてカバー45を外した状態を図示している。
図4および
図5に示すように、固定子41は、回転軸42aに対して垂直な仮想円Cの円周方向に複数配設された第1磁石47を有している。複数の第1磁石47は、等間隔に配設されている。回転子42は、複数の第1磁石47に対向して配置される複数の第2磁石48を有している。複数の第2磁石48は、等間隔に配設されている。本実施形態においては、第1磁石47および第2磁石48は、それぞれ9つずつ設けられている。第1磁石47および第2磁石48の数は、これに限られず、適宜好適に設定される。
【0038】
第1磁石47および第2磁石48の少なくとも一方は、電磁石として構成される。本実施形態においては、固定子41に設けられる第1磁石47が電磁石として構成される。複数の第1磁石47は、導電性を有し、第2磁石48に対向するように径方向に延びる複数の延出部材(ティース)47aを有している。さらに、複数の延出部材47aには、コイル47bが巻回されている。
【0039】
第2磁石48は、永久磁石として構成される。回転子42は、回転軸42aとして構成される回転子本体の軸線S方向一端部から当該軸線S方向に延出した複数(9つ)の腕部42bを有し、腕部42bの先端部において第1磁石47と対向する向きに永久磁石である第2磁石48が取り付けられる。永久磁石には、例えばネオジム磁石等が採用可能である。
【0040】
なお、永久磁石として構成される第2磁石48は、
図4に示すような回転子42の表面に配置される構成(いわゆるSPM構造)でもよいが、これに代えて回転子42の内部に配置される構成(いわゆるIPM構造)としてもよい。また、第1磁石47および第2磁石48の両方を電磁石としてもよい。また、第1磁石47を永久磁石とし、第2磁石48を電磁石としてもよい。さらに、本実施形態においては、固定子41が回転子42より外周側に配置されているが、これに代えて、回転子42が固定子41より外周側に配置されてもよい。
【0041】
本実施形態において、複数の第1磁石47は、回転軸42aの軸線Sに対して所定角度傾けられた状態で配置される。より詳しくは、複数の延出部材47aの先端部(コイル47bの巻回箇所)が一方部材である固定子41における回転軸42aの軸線S方向一端側の端面Kと軸線Sを通る断面視において略平行となるように構成される。複数の延出部47aは、それぞれ、基端部が固定子本体41aに固定され、軸線S方向に延びる第1部47a1と、第1部47a1の先端部から軸線S方向一端側へ向かうほど回転軸41aの径方向中心側に位置する第2部47a2とを備える。第2部47a2の少なくとも一部にコイル47bが巻回される。
【0042】
回転子42における複数の腕部42bは、それぞれ、略J字形状に形成される。複数の腕部42の先端部は、軸線S方向において最も一端側(車幅方向外側)から先端に向かうほど回転軸41aの径方向外側位置するように構成される。これにより、複数の腕部42bの先端部、第2磁石48および第1磁石47を構成する延出部材47a(第2部47a2)が一直線上に配設され得るように構成されている。
【0043】
上記構成によれば、電磁石である第2磁石48が回転軸42aの軸線Sに対して傾斜した位置に配設される。これにより、電気モータ18の回転軸42aの径方向の大きさを変えることなく第1磁石47における第2部47a2の長さを長くすることができる。すなわち、第1磁石47に巻回されるコイル47bの巻き数を増やすことができ、第1磁石47の磁力を向上させることができる。上記構成によれば、第1磁石47の磁力を向上させる代わりに、当該第1磁石47の磁力を変えることなく、電気モータ18の径方向の大きさを小さくすることも可能である。また、電気モータ18の径方向の大きさを変えることなく電気モータ18の表面積を大きくすることができ、電気モータ18の冷却効率を高くすることができる。さらに、回転子42の回転軸42aの径方向の長さに対する軸線S方向長さの割合が大きくなる(中空空間43を形成する内壁44の表面積が大きくなる)。したがって、中空空間43への外気の導入による冷却効率を高くすることができる。
【0044】
回転子42は、回転軸42aを構成する回転子本体が固定子41の固定子本体41aにベアリング49を介して軸支される。回転軸42aの軸線S方向他端側(第2磁石48の取り付け部とは反対側)の端部には、回転子42の回転動力を出力する出力機構が設けられる。例えば、
図4に示すように、出力機構は、回転子42に同軸固定された出力ギヤ50である。この出力ギヤ50は、電気モータ18が発生する回転動力を後輪5に伝達する動力伝達機構の一部を構成する。出力ギヤ50には、中空空間43の軸線S方向他端側の開放端に隣接し、中空空間43と連通する連通孔50aが設けられている。すなわち、出力ギヤ50は、中心部に連通孔50aを有するリング状に形成されている。出力ギヤ50は、後輪アーム17内に収容される。後輪アーム17と電気モータ18のカバー45とは一体的に形成されてもよい。また、電気モータ18および後輪アーム17がリアフレーム36に対して回動自在とするべく、電気モータ18のカバー45または後輪アーム17が、リアフレーム36にベアリング51を介して軸支されている。ベアリング51は、電気モータ18の回転軸42aと軸線Sを共通している。すなわち、リアフレーム36の揺動軸の軸線は、電気モータ18の回転軸42aの軸線Sに一致している。これにより、電気モータ18および後輪アーム17は、リアフレーム36に対して電気モータ18の回転軸42aの軸線S回りに揺動自在に構成されている。この際、電気モータ18は、固定子41および回転子42の双方ともがリアフレーム36に対して揺動する。
【0045】
なお、上記実施形態においては、第1磁石47と、第2磁石48との数を同じにしている。しかし、本発明はこれに限られず、第1磁石47が第2磁石48より多い構成または第1磁石47が第2磁石48より少ない構成にも適用可能である。また、回転子42における複数の腕部42bは、回転子42に設けられる第2磁石48の数だけ設けられる。すなわち、1つの腕部42bに1つの第2磁石48が設けられる。しかし、本発明はこれに限られず、1または複数の腕部42bのそれぞれに複数の第2磁石48を設けることとしてもよい。
【0046】
前述したように、本実施形態においては、2つの電気モータ18が、鞍乗型車両1の中心線L0に対して左右対称に配置されている。
図3〜
図5は、車両右側の電気モータ18を示している。したがって、車両左側の電気モータ18は、
図3〜
図5を左右反転したような形状を有している。なお、出力ギヤ50も、2つの電気モータ18のそれぞれに取り付けられる(2つの出力ギヤ50を有する)が、左右の電気モータ18で共通する1つの出力ギヤを用いることとしてもよい。また、2つの出力ギヤ50を有する場合には、当該2つの出力ギヤ50を接続して連動させたり、互いに遮断して左右独立駆動を可能にしたりしてもよい。
【0047】
<第1実施形態の変形例>
次に、上記第1実施形態の変形例について説明する。
図6は、
図4に示す電気モータの変形例を示す断面図である。なお、上記第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。本変形例における電気モータ18Mが第1実施形態の電気モータ18と異なる点は、
図6に示すように、中空空間43の軸線S方向車両外方側端部OEにおける軸線Sに垂直な断面積が軸線S方向車両内方側端部IEにおける軸線Sに垂直な断面積より大きいように構成されていることである。より詳しくは、中空空間43を形成する筒状の内壁44Mは、軸線S方向の少なくとも一部の領域において軸線S方向車両外方側へ向かうに従って軸線Sに垂直な断面積が大きくなるように構成されている。
図6において、筒状の内壁44Mは、軸線S方向車両内方側端部IEから軸線S方向車両外方へ延び、その内径が一定である定径部44aと、定径部44aの軸線S方向車両外方側端部CPから軸線方向車両外端部OEに向かうに従ってその内径が大きくなる拡径部44bとを備えている。
【0048】
本変形例においても筒状の内壁44Mは、軸線Sに垂直な断面が円形形状を有している。したがって、中空空間43の拡径部44bにおける内周部上壁は、軸線S方向車両外方に向かうに従って上方に傾斜するように形成されている。これにより、電気モータ18Bで生じた熱が外部へ逃げ易い。さらに、中空空間43の拡径部44bにおける内周部下壁は、軸線S方向車両外方に向かうに従って下方に傾斜するように形成されている。これにより、中空空間43内に水が浸入した場合でも外部へ排出され易い。
【0049】
なお、本変形例においては、内壁44Mの一部に拡径部44bを設ける構成としたが、内壁44M全体が拡径部となるように構成してもよい。すなわち、内壁44Mを、軸線S方向車両内方側端部IEから軸線S方向車両外方側端部OEに向かうに従ってその内径が大きくなるような構成としてもよい。
【0050】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係る鞍乗型電動車両の上面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態の鞍乗型電動車両101は、電動二輪車である。車両101は、従動輪である前輪104と駆動輪である後輪105とを備えている。
【0051】
本実施形態においても、電気モータ18がシート32下方の図示しない車体フレームに取り付けられている。電気モータ18は、ステップ部材30より後方に配置される。これにより、走行中のライダーによって中空空間43への導入部が塞がれることが防止される。さらに、電気モータ18は、回転軸の軸線S方向に2つ並べられる。電気モータ18の回転軸の軸線Sは、車幅方向に沿っている。
【0052】
さらに、鞍乗型電動車両101は、電気モータ18の中空空間43の開放端に隣接し、中空空間43と連通する連通路52を備えている。連通路52は、その経路が回転軸の軸線S方向に沿って形成されている。これによれば、中空空間43内において、車両101の外部の空気が回転軸の軸線S方向に通過し易くなるため、電気モータ18の温度上昇を好適に防止することができる。また、外部と電気モータ18の中空空間43とを繋ぐ連通路52を設けることにより、電気モータ18を車両101の内部に設けた場合であっても、好適に空気の行き来を生じさせることができる。
【0053】
連通路52の先端部の形状は特に限定されないが、例えば、
図6に示すように、車両101の外装(カウル等)の形状に沿った形状を有していてもよい。また、連通路52の先端部は、平面視において、車両前方へ向かうに従って車幅方向内方に位置するような形状を有していてもよい。これにより、前方からの空気を取り入れ易くなり、走行時において生じる走行風を、連通路52を介して中空空間43に導入し易くすることができる。
【0054】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図8は、本発明の第3実施形態に係る鞍乗型電動車両の上面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態の鞍乗型電動車両201は、電動二輪車である。車両201は、従動輪である前輪204と駆動輪である後輪205とを備えている。
【0055】
本実施形態においても、電気モータ18がシート32下方の図示しない車体フレームに取り付けられている。さらに、電気モータ18は、回転軸の軸線Sが、車両前後方向に沿うように配置される。電気モータ18の回転軸の軸線Sは、平面視において車両201の車幅方向中心を通過して車体前後方向に延びる中心線L0上に位置している。
【0056】
また、鞍乗型電動車両201は、電気モータ18の中空空間43の開放端に隣接し、中空空間43と連通する連通路53f,53rを備えている。連通路53f,53rは、その経路の少なくとも一部が回転軸の軸線S方向に沿って形成されている。これによれば、中空空間43内において、車両201の外部の空気が回転軸の軸線S方向に通過し易くなるため、電気モータ18の温度上昇を好適に防止することができる。また、外部と電気モータ18の中空空間43とを繋ぐ連通路53f,53rを設けることにより、電気モータ18を車両201の内部に設けた場合であっても、好適に空気の行き来を生じさせることができる。
【0057】
本実施形態において、電気モータ18より前側に設けられる連通路53fは、外部と連通するために曲部を有している。さらに、前側の連通路53fは、車両外部側の端部(外部からの空気取り入れ口)が車両前方を向くように構成されている。これにより、前方からの空気を取り入れ易くなり、走行時において生じる走行風を、連通路52を介して中空空間43に導入し易くすることができる。電気モータ18より後側に設けられる連通路53rは、経路全体にわたって軸線S方向に沿っている。
【0058】
電気モータ18から出力される回転動力は、動力伝達機構54を介して後輪205に伝達される。動力伝達機構54は、電気モータ18による車両前後方向に沿った軸線S回りの回転を傘歯車等の伝達方向変換機構(図示せず)を介して車両幅方向に沿った回転に変換して後輪205に伝達するように構成されている。
【0059】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する好適な態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の趣旨を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。例えば、複数の上記実施形態および変形例における各構成要素を任意に組み合わせることとしてもよい。
【0060】
なお、上記実施形態および変形例においては、電気モータ18の中空空間43の回転軸の軸線Sに垂直な断面の形状が円形である場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、中空空間43の上記断面形状が三角形以上の多角形状を有していてもよい。中空空間43に隣接する連通路52,53についても同様に、その断面形状は適宜選択される。
【0061】
また、上記実施形態においては、電気モータ18の中空空間43は、軸線方向両側にのみ開放される構成について説明したが、中空空間43の軸線方向中間部に車両1の外部と連通する通路が形成されてもよい。この場合、中空空間43の軸線方向中間部から軸線方向両側に流れる空気の流れを発生させることができる。また、中空空間43における空気の流れを軸線方向の何れか一方向に促進させるために、中空空間43の軸線方向両側の開口の形状および/または面積を互いに異ならせてもよい。例えば、中空空間43の軸線方向一端側の開口の面積を他端側の開口の面積より大きくしてもよい。これによって、軸線方向一端側から軸線方向他端側への空気の流れを促進させることができる。
【0062】
また、上記実施形態においては、固定子41および回転子42のうち電気モータ18の中空空間43側(回転子42)に永久磁石48を用いた構成について説明したが、固定子および回転子のうち電気モータ18の中空空間43側にコイルを有する電磁石を配設してもよい。この場合、コイルを構成する電線が通電することにより発熱した場合に、当該コイルが中空空間43に近接することにより、当該中空空間43を通過する空気によって放熱が促進される。
【0063】
また、上記実施形態においては、電気モータ18の回転軸の軸線Sが車幅方向に沿った態様および車両前後方向に沿った態様について説明したが、これらの態様に限られない。例えば、回転軸の軸線Sが車両上下方向に沿った態様でもよい。さらに、軸線Sが車両に対して斜めに向くように電気モータ18を配置してもよい。また、連通路の有無、形状、大きさ等も電気モータ18を設置する鞍乗型電動車両の構成に応じて適宜設定され得る。また、上記実施形態においては、電気モータ18を1または2つ用いた構成について説明したが、より多くの電気モータ18を備えた構成であってもよい。電気モータ18を2つ以上用いた場合、必ずしも上記実施形態のように各電気モータ18の中空空間43同士が1つの経路で連通させなくてもよい。また、電気モータを2つ以上有する場合、必ずしもすべての電気モータに対して上記実施形態のように中空空間43を備えた構成としなくてもよい。言い換えると、複数の電気モータのうちの少なくとも1つを上記実施形態のような構成とすることにより本明細書に記載した効果を奏する。
【0064】
また、上記実施形態においては、車体フレーム3に取り付けられた上下一対の前輪アーム10,11によって前輪4を支持する構成について説明したが、本発明が適用される鞍乗型電動車両は、これに限られない。例えば、鞍乗型電動車両は、車体フレームに支持されたフロントフォークによって前輪が指示される構造を有してもよい。