特許第6170015号(P6170015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170015
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】給送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 9/14 20060101AFI20170713BHJP
   B65H 7/06 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   B65H9/14
   B65H7/06
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-111273(P2014-111273)
(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-224118(P2015-224118A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】小林 優也
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−106380(JP,A)
【文献】 特開2011−190111(JP,A)
【文献】 特開2002−362776(JP,A)
【文献】 特開平04−173655(JP,A)
【文献】 特開2012−226140(JP,A)
【文献】 特開2013−052980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 9/00− 9/20
B65H 13/00−15/02
B65H 7/00− 7/20
B65H 43/00−43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの斜行を補正するレジストローラー対と、
前記レジストローラー対に前記シートを送出する送出ローラー対と、
前記送出ローラー対を制御して、停止中の前記レジストローラー対に向かって前記シートを送出させることによって、前記シートを撓ませる制御部と、
前記シートのカール量を検出するカール量検出部と
を備え、
前記制御部は、
前記レジストローラー対及び前記送出ローラー対を制御して、前記カール量に応じた撓み量の撓みを前記シートに付与させ、
前記カール量が0以上であり下限値以下である場合、前記レジストローラー対及び前記送出ローラー対を制御して、規定の撓み量の撓みを前記シートに付与させ、
前記カール量が上限値よりも大きい場合、前記シートに画像を形成することなく前記シートを排出させ、又は前記シートを除去することをユーザーに通知し、
記カール量が前記上限値以下であり、前記規定の撓み量と前記カール量との合計値が前記上限値より大きい場合、前記レジストローラー対及び前記送出ローラー対を制御して、撓み量と前記カール量との合計値が前記上限値に一致するように前記シートを撓ませる、給送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記カール量が前記上限値以下であり、前記規定の撓み量と前記カール量との合計値が前記上限値以下であり、前記カール量が前記下限値よりも大きい場合、前記レジストローラー対及び前記送出ローラー対を制御して、撓み量と前記カール量との合計値が前記規定の撓み量と前記下限値との合計値に一致するように前記シートを撓ませる、請求項に記載の給送装置。
【請求項3】
前記レジストローラー対と前記送出ローラー対との間に配置され、前記シートを検知するシート検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記シートが検知されてから前記停止中のレジストローラー対を回転させるまでの時間を変更することによって、前記シートに付与する撓み量を変化させる、請求項1又は請求項に記載の給送装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の給送装置と、
前記給送装置によって給送された前記シートに画像を形成する画像形成部と
を備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを給送する給送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された画像形成装置は、用紙の斜行を補正するために、レジストローラー対によって用紙に撓みを付与する。画像形成装置は、用紙の種類に応じて、用紙に付与する撓み量を異ならせる。
【0003】
新聞紙のような再生紙については、第1カールが発生し易い。第1カールは、用紙搬送方向から用紙を見たときに、用紙が弓状に湾曲していることを示す。第1カールの発生した再生紙に、上質紙に付与する撓み量と同じ撓み量を付与しても、再生紙の斜行を補正することは困難である。
【0004】
そこで、特許文献1に記載された画像形成装置は、再生紙に付与する撓み量を、上質紙に付与する撓み量よりも大きくする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−64553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された画像形成装置には、次のような課題がある。すなわち、ユーザーは、一度印刷に用いた用紙、いわゆる裏紙を再び印刷のための用紙として使用する場合がある。一度印刷に用いた用紙は定着部を通過しているため、第2カールが発生することがある。第2カールは、用紙幅方向から用紙を見たときに、用紙が弓状に湾曲していることを示す。
【0007】
用紙の斜行を補正するために、第2カールの発生した用紙に撓みを付与すると、第2カールによるカール量に撓みによる撓み量が加えられ、用紙に過剰な湾曲が発生する。用紙の斜行を補正するための撓みは、第2カールと同様に、用紙幅方向から用紙を見たときに、用紙が弓状に湾曲することだからである。
【0008】
用紙の過剰な湾曲は、ジャム、騒音、及びしわの原因となることがある。ジャムは、画像形成装置の内部でシートが詰まる現象である。しわは、撓みによる湾曲の方向と逆方向に用紙が曲がっている状態を示す。
【0009】
すなわち、用紙の湾曲が大き過ぎると、用紙がレジストローラー対のニップへ適切に搬送されないこともあり、ジャムが発生することがある。また、用紙の先端縁だけでなく、用紙の表面もレジストローラー対に突き当たるため、騒音が発生することがある。さらに、用紙がレジストローラー対に突き当たって、撓みによる湾曲の方向と逆方向に用紙が曲がることがある。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シートが過剰に湾曲することを抑制できる給送装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点に係る給送装置は、レジストローラー対と、送出ローラー対と、制御部と、カール量検出部とを備える。レジストローラー対は、シートの斜行を補正する。送出ローラー対は、前記レジストローラー対に前記シートを送出する。制御部は、前記送出ローラー対を制御して、停止中の前記レジストローラー対に向かって前記シートを送出させることによって、前記シートを撓ませる。カール量検出部は、前記シートのカール量を検出する。前記制御部は、前記レジストローラー対及び前記送出ローラー対を制御して、前記カール量に応じた撓み量の撓みを前記シートに付与させる。
【0012】
本発明の第2の観点に係る画像形成装置は、第1の観点に係る給送装置と、画像形成部とを備える。画像形成部は、前記給送装置によって給送された前記シートに画像を形成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シートのカール量に応じてシートに撓みが付与されるため、シートが過剰に湾曲することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の内部構造を示す模式的断面図である。
図2】(a)〜(c)本発明の実施形態に係る給送装置によってシートに撓みを付与する制御を説明する模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る給送装置によって、カールしたシートに撓みを付与する制御を説明する模式図である。
図4】本発明の実施形態に係る給送装置による撓み制御を説明する図である。
図5】本発明の実施形態に係る給送装置による撓み制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。本実施形態において、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直行し、X軸及びY軸は水平面に平行であり、Z軸は鉛直線に平行である。
【0016】
図1を参照して、本発明の実施形態に係る画像形成装置100について説明する。図1は、画像形成装置100の内部構造を示す。本実施形態では、画像形成装置100は、複写機、プリンター、及びファクシミリの機能を有する複合機である。
【0017】
画像形成装置100は、給送装置1と、画像形成部50と、定着部60と、排出部65と、原稿搬送部70と、画像読取部75と、操作部80とを備える。
【0018】
給送装置1は、給送部10と、複数の搬送ローラー対20と、送出ローラー対22と、レジストローラー対24と、カール量検出部26と、シート検知部28と、制御部90とを備える。給送部10は、複数のカセット12及び手差しトレイ14を含む。
【0019】
制御部90は、給送装置1の各要素を制御する。また、制御部90は、画像形成装置100の各要素を制御する。
【0020】
カセット12及び手差しトレイ14にはシートPが積載される。シートPは、例えば、紙製のシート(例えば、普通紙、再生紙、薄紙、又は厚紙)、又は合成樹脂製のシート(例えば、OHP(Overhead Projector)シート)である。シートPは、カセット12又は手差しトレイ14から、搬送ローラー対20に向けて送出される。そして、シートPは、搬送ローラー対20、送出ローラー対22、及びレジストローラー対24によって、画像形成部50に搬送される。
【0021】
送出ローラー対22は、レジストローラー対24よりもシート搬送方向D(以下、「搬送方向D」と記載する。)の上流に配置される。送出ローラー対22は、レジストローラー対24にシートPを送出する。
【0022】
レジストローラー対24は、画像形成部50よりも搬送方向Dの上流に配置される。レジストローラー対24は、シートPの斜行を補正し、画像形成のタイミングに合わせて、シートPを画像形成部50に向けて送出する。
【0023】
カール量検出部26は、シート検知部28よりも搬送方向Dの上流に配置される。例えば、カール量検出部26は、隣り合う搬送ローラー対20と搬送ローラー対20との間に配置される。カール量検出部26は、搬送ローラー対20から離れた位置に配置されることが好ましい。搬送ローラー対20の直近では、カールが搬送ローラー対20により抑制されているからである。例えば、カール量検出部26は、隣り合う搬送ローラー対20と搬送ローラー対20との中間位置に配置される。
【0024】
カール量検出部26は、シートPのカール量を検出し、検出信号を制御部90に出力する。カール量検出部26は、例えば、ロードセルを含み、カールしたシートPによるロードセルへの押圧力を検出し、検出信号を制御部90に出力する。ロードセルへの押圧力は、カール量に相関するため、押圧力の検出は、カール量の検出に相当する。カール量検出部26は、例えば、発光素子及び位置検出素子を含み、シートPのカールに応じた反射光の受光位置の変位を検出し、検出信号を制御部90に出力する。反射光の受光位置の変位は、カール量に相関するため、変位の検出は、カール量の検出に相当する。
【0025】
シート検知部28は、送出ローラー対22とレジストローラー対24との間に配置される。シート検知部28は、シートPを検知し、検知信号を制御部90に出力する。シート検知部28は、本実施形態では、シートPの接触によって回動するアクチュエーターを含み、シートPによりアクチュエーターが回動したことを示す信号が検知信号として制御部90に出力される。なお、シート検知部28は、アクチュエーターに限定されず、例えば、フォトインターラプターを含み、シートPによる光の遮断又は反射を検知することにより、シートPを検知することもできる。
【0026】
画像形成部50は、給送装置1によって給送されたシートPに画像を形成する。具体的には、画像形成部50は、感光体ドラム51、帯電部52、露光部53、現像部54、及び転写部55によって、シートPに画像を形成する。また、画像形成部50は、感光体ドラム51の残留トナーを除去するクリーニング部56、及び感光体ドラム51の残留電荷を除去する除電部57を含む。
【0027】
画像の形成されたシートPは定着部60に向けて搬送される。定着部60は、シートPを加熱及び加圧して、シートPに画像を定着させる。画像が定着されたシートPは排出部65に向けて搬送される。排出部65はシートPを排出する。
【0028】
原稿搬送部70は、原稿を画像読取部75に向けて搬送する。画像読取部75は、原稿の画像を読み取って画像データを生成する。操作部80は表示部82を含む。表示部82は、例えば、タッチパネルである。操作部80は、ユーザーの各種操作を受け付け、操作信号を制御部90に出力する。制御部90は、操作信号に応じて、画像形成装置100の各要素を制御する。また、表示部82は、画像形成装置100に関する様々な情報(例えば、画像形成装置100に設定された情報、ユーザーによる操作情報、又は制御部90からの通知)を表示する。
【0029】
図2(a)〜図2(c)を参照して、シートPの斜行を補正するために、シートPに撓みを付与する制御(撓み制御)について説明する。図2(a)〜図2(c)は、カールしていないシートPに撓みを付与する制御を示す。制御部90は、送出ローラー対22を制御して、停止中のレジストローラー対24に向かってシートPを送出させることによって、シートPを撓ませる。撓みは、搬送方向Dに直交するシート幅方向からシートPを見たときに、シートが弓状に湾曲することを示す。シート幅方向はY軸に沿っている。
【0030】
すなわち、図2(a)に示すように、制御部90は、レジストローラー対24の回転を停止させ、送出ローラー対22を回転させる。送出ローラー対22は、レジストローラー対24に向かってシートPを送出する。図2(b)に示すように、シートPが、停止中のレジストローラー対24のニップに突き当たる。図2(c)に示すように、シートPがレジストローラー対24に突き当たった後も、送出ローラー対22は回転しているため、シートPは撓む。従って、シートPは、レジストローラー対24に沿った姿勢をとり、シートPの斜行が補正される。
【0031】
具体的には、シート検知部28がシートPを検知すると、制御部90は、シートPが検知された時から撓み制御時間が経過した時に、停止中のレジストローラー対24を回転させる。撓み制御時間が短い程、撓み量は小さく、撓み制御時間が長い程、撓み量が大きくなる。給送装置1には、一定値Tpの撓み制御時間が設定される。従って、シートPには、一定値Tpに対応する規定の撓み量Dpが付与される。
【0032】
図3は、カールしているシートPに撓みを付与する制御を示す。カールは、シート幅方向からシートPを見たときに、シートPが弓状に湾曲していることを示す。シートはカールを有しないほうがよいが、カールは様々な原因により発生し得る。
【0033】
制御部90は、送出ローラー対22を制御して、停止中のレジストローラー対24に向かって、カールしているシートPを送出させることによって、シートPを撓ませる。ただし、制御部90は、送出ローラー対22及びレジストローラー対24を制御して、カール量検出部26によって検出されたカール量に応じた撓み量の撓みをシートPに付与させる。従って、シートPのカール量に応じてシートPに撓みが付与されるため、シートPが過剰に湾曲することを抑制できる。その結果、ジャム、騒音、及びシートPへのしわの発生を抑制できる。
【0034】
図3及び図4を参照して、カール量に応じた撓み制御の詳細を説明する。制御部90は、シート検知部28がシートPを検知してから停止中のレジストローラー対24を回転させるまでの時間、つまり、撓み制御時間を変更することによって、シートPに付与する撓み量を変化させる。
【0035】
図4は、給送装置1による撓み制御を示す。制御部90は、シートPのカール量が第1条件を満足する場合、つまり、カール量が上限値TUよりも大きい場合、シートPに画像を形成することなく排出部65(図1)にシートPを排出させる。上限値TUは、例えば、A4のシートの場合、20mmである。
【0036】
カール量が上限値TUよりも大きい場合、ジャム、騒音、又はしわが発生する可能性がある。そこで、シートPを排出することにより、これらの問題を解決している。又は、制御部90は、シートPを除去することをユーザーに通知することもできる。例えば、制御部90は、シートPを除去することを指示する文章及び/又は画像を表示部82(図1)に表示させる。
【0037】
制御部90は、シートPのカール量が第2条件を満足する場合、つまり、カール量が上限値TU以下であり、規定の撓み量Dpとカール量との合計値が上限値TUより大きい場合、送出ローラー対22及びレジストローラー対24を制御して、撓み量とカール量との合計値(以下、「シート湾曲量」と記載する。)が上限値TUに一致するようにシートPを撓ませる。規定の撓み量Dpは、例えば、A4のシートの場合、5mmである。
【0038】
具体的には、カール量が第2条件を満足する場合、制御部90は、シート湾曲量が上限値TUに一致するように、一定値Tpよりも小さい値に撓み制御時間を短縮する。その結果、規定の撓み量Dpよりも小さい撓み量がシートPに付与され、シート湾曲量が上限値TUに一致するようにシートPが撓む。
【0039】
例えば、規定の撓み量Dpが5mmであり、カール量が17mmである場合、合計値が、22mmになって、20mm(上限値TU)より大きくなる。そこで、制御部90は、撓み量が3mmになるように撓み制御時間を一定値Tpから短縮して、シート湾曲量を20mm(上限値TU)にする。
【0040】
カール量が第1条件を満足しない場合でも、規定の撓み量Dpとカール量との合計値が上限値TUより大きい場合、ジャム、騒音、又はしわが発生する可能性がある。そこで、シート湾曲量を上限値TUに一致させることによって、これらの問題を解決している。また、撓み量は0ではなく、撓み制御時間に対応する撓みがシートPに付与されるため、シートPの斜行を補正することができる。
【0041】
制御部90は、シートPのカール量が第3条件を満足する場合、つまり、カール量が上限値TU以下であり、規定の撓み量Dpとカール量との合計値が上限値TU以下であり、カール量が下限値TLよりも大きい場合、送出ローラー対22及びレジストローラー対24を制御して、シート湾曲量が規定の撓み量Dpと下限値TLとの合計値に一致するようにシートPを撓ませる。下限値TLは、例えば、A4のシートの場合、10mmである。
【0042】
具体的には、カール量が第3条件を満足する場合、制御部90は、シート湾曲量が規定の撓み量Dpと下限値TLとの合計値に一致するように、一定値Tpよりも小さい値に撓み制御時間を短縮する。その結果、規定の撓み量Dpよりも小さい撓み量がシートPに付与され、シート湾曲量が規定の撓み量Dpと下限値TLとの合計値に一致するようにシートPが撓む。
【0043】
例えば、規定の撓み量Dpが5mmであり、カール量が12mmである場合、合計値が、17mmになって、10mm(下限値TL)より大きくなる。そこで、制御部90は、撓み量が3mmになるように撓み制御時間を一定値Tpから短縮して、シート湾曲量を15mm(規定の撓み量Dp+下限値TL)にする。
【0044】
撓み量が第1条件及び第2条件を満足しない場合でも、カール量が下限値TLよりも大きい場合、騒音が発生する可能性がある。そこで、シート湾曲量を規定の撓み量Dpと下限値TLとの合計値に一致させることによって、この問題を解決している。また、撓み量は0ではなく、撓み制御時間に対応する撓みがシートPに付与されるため、シートPの斜行を補正することができる。
【0045】
制御部90は、ユーザーにとって騒音が気にならない環境の場合、操作部80を介したユーザーからの指示により、撓み制御時間を一定値Tpにして、シートPに規定の撓み量Dpを付与することもできる。更に、制御部90は、画像形成装置100の静音モードの設定が解除されている場合、撓み制御時間を一定値Tpにして、シートPに規定の撓み量Dpを付与することもできる。これらの場合は、撓み制御時間を一定値Tpより短縮する場合と比較して、シートPの斜行をより効果的に補正できる。
【0046】
制御部90は、シートPのカール量が第4条件を満足する場合、つまり、カール量が、0以上であり、下限値TL以下である場合、送出ローラー対22及びレジストローラー対24を制御して、規定の撓み量Dpの撓みをシートPに付与させる。
【0047】
シートPがカールしていない場合は、ジャム、騒音、及びしわの発生する可能性は小さい。シートPがカールしていても、カール量が下限値TL以下の場合、ジャム、騒音、及びしわの発生する可能性は小さい。従って、カール量が第4条件を満足する場合は、シートPに規定の撓み量Dpの撓みを付与して、シートPの斜行をより効果的に補正する。
【0048】
なお、カール量と撓み量とは一対一に対応し、カール量のx(xは任意の数値)ミリメートルと撓み量のxミリメートルとは一致する。
【0049】
図3図5を参照して、給送装置1の制御部90による撓み制御方法を説明する。図5は、撓み制御方法を示すフローチャートである。
【0050】
ステップS1において、制御部90は、カール量検出部26が検出したカール量が0より大きいか否かを判定する。制御部90は、肯定的判定を行った場合(ステップS1でYes)、制御をステップS5に進める。一方、制御部90は、否定的判定を行った場合(ステップS1でNo)、カール量が0であるため、第4条件を満足し、制御をステップS3に進める。
【0051】
ステップS3において、制御部90は、シートPに規定の撓み量Dpを付与して、制御を終了する。
【0052】
ステップS5において、制御部90は、カール量が上限値TUより大きいか否かを判定する。制御部90は、否定的判定を行った場合(ステップS5でNo)、制御をステップS9に進める。一方、制御部90は、肯定的判定を行った場合(ステップS5でYes)、つまり、カール量が第1条件を満足する場合、制御をステップS7に進める。
【0053】
ステップS7において、制御部90は、シートPに画像を形成することなく排出部65(図1)にシートPを排出させ、制御を終了する。
【0054】
ステップS9において、制御部90は、カール量が下限値TL以下か否かを判定する。制御部90は、肯定的判定を行った場合(ステップS9でYes)、つまり、カール量が第4条件を満足する場合、制御をステップS3に進める。一方、制御部90は、否定的判定を行った場合(ステップS9でNo)、制御をステップS11に進める。
【0055】
ステップS11において、制御部90は、規定の撓み量Dpとカール量との合計値が上限値TUより大きいか否かを判定する。制御部90は、肯定的判定を行った場合(ステップS11でYes)、つまり、カール量が第2条件を満足する場合、制御をステップS13に進める。ステップS13において、制御部90は、シート湾曲量が上限値TUに一致するように、シートPを撓ませ、制御を終了する。一方、制御部90は、否定的判定を行った場合(ステップS11でNo)、つまり、カール量が第3条件を満足する場合、制御をステップS15に進める。ステップS15において、制御部90は、シート湾曲量が規定の撓み量Dpと下限値TLとの合計値に一致するように、シートPを撓ませ、制御を終了する。
【0056】
以上、図1図5を参照して説明したように、本実施形態によれば、シートPのカール量に応じてシートPに撓みが付与されるため、シートPが過剰に湾曲することを抑制できる。
【0057】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(4))。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0058】
(1)制御部90は、シートPのサイズ及び/又は材質に応じて、一定値Tp、上限値TU、及び下限値を変更することができる。
【0059】
(2)制御部90は、カールの発生原因に依存することなく、図5の撓み制御方法を実行する。また、シートPのカールの方向が、図3に示すカールの方向と反対であっても、制御部90は、図5の撓み制御方法を実行することができる。
【0060】
(3)図1では、両面印刷を実行する機構を省略したが、画像形成装置100は両面印刷を実行できる。制御部90は、両面印刷を実行する場合において、シートの一方面に画像を形成するための給送においても、シートの他方面に画像を形成するための給送においても、図5の撓み制御方法を実行することができる。
【0061】
(4)画像形成装置100は、複写機、プリンター、及びファクシミリのうち2つの機器を備える複合機であってもよく、プリンター、複写機、又はファクシミリであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、シートを給送する給送装置及び画像形成装置の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 給送装置
22 送出ローラー対
24 レジストローラー対
26 カール量検出部
28 シート検知部
50 画像形成部
90 制御部
100 画像形成装置
P シート
図1
図2
図3
図4
図5