(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、商用電源からの電力の供給を受けて動作する電子機器(以下、単に「電子機器」という)は、所定の限界ピーク値以下のピーク値を持つサージ電圧が発生しても破損しないように設計されている。限界ピーク値は、電子機器が破損しないことが保障されるサージ電圧のピーク値である。
【0005】
しかし、電子機器に実際に発生するサージ電圧の大きさは、電子機器が利用される地域によって異なる。電子機器が利用される地域によっては、限界ピーク値よりも大きいピーク値を持つサージ電圧(以下「超過サージ電圧」という)が発生する場合がある。従って、超過サージ電圧が発生し得る地域で利用される電子機器は、当該超過サージ電圧が発生しても破損しないようにカスタマイズされる必要がある。また、超過サージ電圧が発生しない地域で利用される電子機器についても、当該地域で発生するサージ電圧に合わせてカスタマイズされてもよい。例えば、ピーク値の小さいサージ電圧しか発生し得ない地域で利用される電子機器が、当該地域で発生するサージ電圧に合わせてカスタマイズされることで、電子機器の構造の簡素化やコストの削減を図ることができる場合がある。
【0006】
しかし、このような地域ごとのカスタマイズを行う者、例えば電子機器の製造者は、対象の地域において実際にどの程度のピーク値を持つサージ電圧が発生するかを知り得ないため、最適なカスタマイズを行えないという問題がある。なお、特許文献1に開示の技術は、鉄塔に発生したサージ電圧のピーク値を予測する技術であり、商用電源からの電力の供給を受けて動作する電子機器に適用することは困難である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、或る地域において電子機器に発生するサージ電圧のピーク値を特定し得る電子機器管理システム及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点に係る電子機器管理システムは、所定の地域で利用される電子機器と、前記電子機器を管理する管理サーバーとを有する。前記電子機器が、取得部と、送信部とを備える。前記取得部は、前記所定の地域において前記電子機器に発生する第1のサージ電圧が検知された場合に、前記第1のサージ電圧が検知されてから検知されなくなるまでの第1の時間長を示す実測データを取得する。前記送信部は、前記実測データを前記管理サーバーに送信する。前記管理サーバーが、テストデータを記憶する記憶部と、特定部とを備える。前記テストデータは、テスト用の複数の第2のサージ電圧を前記電子機器に発生させて得られるデータであって、前記複数の第2のサージ電圧のそれぞれについて当該第2のサージ電圧のピーク値と当該第2のサージ電圧が検知されてから検知されなくなるまでの第2の時間長とを示す。前記特定部は、前記電子機器から受信した前記実測データと前記テストデータとに基づいて、前記第1のサージ電圧のピーク値を特定する。
【0009】
本発明の別の観点に係る電子機器は、所定の地域で利用される電子機器である。前記電子機器は、テストデータを記憶する記憶部と、取得部と、特定部とを備える。前記テストデータは、テスト用の複数の第2のサージ電圧を前記電子機器に発生させて得られるデータであって、前記複数の第2のサージ電圧のそれぞれについて当該第2のサージ電圧のピーク値と当該第2のサージ電圧が検知されてから検知されなくなるまでの第2の時間長とを示す。前記取得部は、前記所定の地域において前記電子機器に発生する第1のサージ電圧が検知された場合に、前記第1のサージ電圧が検知されてから検知されなくなるまでの第1の時間長を示す実測データを取得する。前記特定部は、前記テストデータ及び前記実測データに基づいて、前記第1のサージ電圧のピーク値を特定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、或る地域において電子機器に発生するサージ電圧のピーク値を特定し得る電子機器管理システム及び電子機器が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明する構成要素の全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。複数の図を通じて同一の符号は、同一の構成要素を示している。
【0013】
図1は、実施形態に係る電子機器管理システムの一例の構成図である。
【0014】
電子機器管理システム100は、電子機器1(電子機器1A及び電子機器1B)に実際に発生したサージ電圧のピーク値を特定し、特定したピーク値を含む情報を、電子機器管理システム100の管理者に提示するためのシステムである。電子機器管理システム100は、複数の電子機器1と、管理サーバー2とを有する。複数の電子機器1のそれぞれと管理サーバー2とは、通信ネットワーク3を介して通信可能に接続される。通信ネットワーク3は、例えば、インターネット又は専用回線である。
【0015】
電子機器1は、商用電源からの電力の供給を受けて動作する機器であり、例えば、複合機(MFP:Multi Function Peripheral)である。本実施形態において、複数の電子機器1のうちの幾つかは、或る地域Aで利用され、他の幾つかは、地域Aとは異なる地域Bで利用される。地域は、例えば国ごとに区分された地域であり、例えば、地域Aは日本国であり、地域Bは米国である。なお、複数の電子機器1のうちの幾つかが、地域A及び地域B以外の地域で利用されてもよい。また、地域は、国ごとに区分された地域に限られず、地方ごとに区分された地域であってもよいし、国及び地方とは異なる単位で区分された地域であってもよい。
【0016】
管理サーバー2は、複数の電子機器1を管理する装置である。管理サーバー2は、電子機器1が市場に投入される前に行われるテストにより得られたテストデータと、電子機器1が市場に投入された後に実際に検知したサージ電圧に関する実測データとに基づいて、電子機器1が利用される地域において発生するサージ電圧のピーク値を特定する。
【0017】
なお、電子機器1が市場に投入される前のテストにおいて、テストを行う者は、テスト用のサージ電圧を発生させる試験機を利用し、限界ピーク値以下のピーク値を持つ種々のテスト用のサージ電圧を電子機器1に発生させて、電子機器1のテストを行う。以下、電子機器1が市場に投入された後に電子機器1に発生するサージ電圧を「第1のサージ電圧」という。また、テスト用のサージ電圧、すなわちテストにおいて試験機が電子機器1に発生させたサージ電圧を「第2のサージ電圧」という。
【0018】
図2は、実施形態に係る電子機器の一例の構成図である。
【0019】
電子機器1は、メイン基板11と、低圧電源基板12とを備える。低圧電源基板12には、商用電源から供給された電力を交流から直流に変換するための回路(以下「変換回路」という)が形成される。変換回路によって変換された後の直流の電力は、メイン基板11に供給される。低圧電源基板12に形成される変換回路は、慣用の変換回路である。低圧電源基板12は、例えば、サージ電圧検知回路121と、制御回路122と、フィルター回路123と、2つの整流平滑回路124、127と、スイッチング回路125と、トランス126とを備える。
【0020】
サージ電圧検知回路121は、電子機器1の変換回路に発生した第1のサージ電圧を検知する。具体的には、サージ電圧検知回路121は、低圧電源基板12に入力された電圧の電圧値が所定のサージ閾値、例えば0.3kV(キロボルト)を超えた場合に、その入力された電圧を第1のサージ電圧として検知する。サージ電圧検知回路121は、第1のサージ電圧を検知した場合に、第1のサージ電圧を検知したことを通知する信号(以下「サージ検知信号」という)をメイン基板11の制御部111に送信する。制御回路122は、制御部111からの指示に基づいて、変換回路の動作を制御する。
【0021】
メイン基板11には、電子機器1の機能を実現するための処理の実行に必要な種々の部品が搭載される。電子機器1の機能は、例えば電子機器1が複合機である場合は、印刷機能やスキャナー機能等である。メイン基板11は、例えば、制御部111と、記憶部112と、データ通信I/F(インターフェイス)113(送信部)と、RTC(Real Time Clock)114とを備える。制御部111、記憶部112、データ通信I/F113、及びRTC114は、内部バス115を介して相互に接続される。
【0022】
制御部111は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、電子機器1の動作を制御する。制御部111は、実測データ取得部116(取得部)を備える。実測データ取得部116は、第1のサージ電圧が検知された場合に、第1のサージ電圧が検知されてから検知されなくなるまでの時間の長さ(以下「第1の時間長」という)を示す実測データを取得する。
【0023】
記憶部112は、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、二次記憶装置とを含む。二次記憶装置は、例えば、ハードディスクやフラッシュメモリー等の不揮発性の記憶装置である。ROMには、制御部111によって実行される種々のコンピュータープログラムが記憶される。制御部111の機能及び実測データ取得部116の機能は、制御部111がROMからRAMにロードされた各種のコンピュータープログラムを実行することにより実現される。なお、実測データ取得部116の機能をソフトウェアで実現することに代えて、当該機能を実現するハードウェアが、電子機器1に搭載されてもよい。データ通信I/F113は、通信ネットワーク3に接続するためのインターフェイス装置である。
【0024】
図3は、実施形態に係る管理サーバーの一例の構成図である。
【0025】
管理サーバー2は、制御部21と、記憶部22と、データ通信I/F23と、入出力部24(表示部)とを有する。制御部21、記憶部22、データ通信I/F23、及び入出力部24は、内部バス25を介して相互に接続される。
【0026】
制御部21は、例えばCPUであり、管理サーバー2の動作を制御する。制御部21は、サージピーク値特定部211(特定部)を有する。サージピーク値特定部211は、電子機器1から受信した実測データとテストデータ4とに基づいて、電子機器1に発生した第1のサージ電圧のピーク値を特定する。
【0027】
記憶部22は、ROMと、RAMと、二次記憶装置とを含む。二次記憶装置は、例えば、ハードディスクやフラッシュメモリー等の不揮発性の記憶装置である。記憶部22のROMには、制御部21によって実行される種々のコンピュータープログラムが記憶される。また、記憶部22には、テストデータ4が記憶される。テストデータ4は、複数の第2のサージ電圧を電子機器1に発生させて得られるデータであって、複数の第2のサージ電圧のそれぞれについて当該第2のサージ電圧のピーク値と当該第2のサージ電圧が検知されてから検知されなくなるまでの時間の長さ(以下「第2の時間長」という)とを示すデータである。
【0028】
制御部21の機能及びサージピーク値特定部211の機能は、制御部21が、ROMからRAMにロードされた各種のコンピュータープログラムを実行することにより実現される。なお、サージピーク値特定部211の機能をソフトウェアで実現することに代えて、当該機能を実現するハードウェアが、管理サーバー2に搭載されてもよい。
【0029】
データ通信I/F23は、通信ネットワーク3に接続するためのインターフェイス装置である。入出力部24は、管理サーバー2を操作する管理者に対して入出力機能を提供する装置である。入出力部24は、管理者からの入力を受け付け、また、管理者へ提示する情報を表示する。入出力部24は、例えばタッチパネル、操作キー、及び/又はディスプレーである。
【0030】
図4は、第2のサージ電圧の波形を示す図である。
【0031】
図4には、3つの第2のサージ電圧の波形、すなわち第1の波形5A、第2の波形5B、及び第3の波形5Cが示されている。第1の波形5Aは、ピーク値が1kVの第2のサージ電圧(以下「第2のサージ電圧A」と表記する)の波形を示している。第2のサージ電圧Aの第2の時間長は、(Tb1−Ta1)μsである。ここで、Ta1は、第2のサージ電圧Aが検知された時刻、本実施形態では第2のサージ電圧Aの電圧値がサージ閾値(例えば、0.3kV)を超えた時刻である。Tb1は、第2のサージ電圧Aが検知されなくなった時刻、本実施形態では第2のサージ電圧Aの電圧値が0kVとなった時刻である。Ta1及びTb1は、例えば、試験機が第2のサージ電圧Aを電子機器1に発生させた際に、電子機器1によって記録される。
【0032】
第2の波形5Bは、ピーク値が2kVの第2のサージ電圧(以下「第2のサージ電圧B」と表記する)の波形を示している。第2のサージ電圧Bの第2の時間長は、(Tb2−Ta2)μsである。ここで、Ta2は、第2のサージ電圧Bが検知された時刻、本実施形態では第2のサージ電圧Bの電圧値がサージ閾値を超えた時刻である。Tb2は、第2のサージ電圧Bが検知されなくなった時刻、本実施形態では第2のサージ電圧Bの電圧値が0kVとなった時刻である。Ta2及びTb2は、例えば、試験機が第2のサージ電圧Bを電子機器1に発生させた際に、電子機器1によって記録される。
【0033】
第3の波形5Cは、ピーク値が5kVの第2のサージ電圧(以下「第2のサージ電圧C」と表記する)の波形を示している。第2のサージ電圧Cの第2の時間長は、(Tb3−Ta3)μsである。ここで、Ta3は、第2のサージ電圧Cが検知された時刻、本実施形態では第2のサージ電圧Cの電圧値がサージ閾値を超えた時刻である。Tb3は、第2のサージ電圧Cが検知されなくなった時刻、本実施形態では第2のサージ電圧Cの電圧値が0kVとなった時刻である。Ta3及びTb3は、例えば、試験機が第2のサージ電圧Cを電子機器1に発生させた際に、電子機器1によって記録される。例えば、第2のサージ電圧Cのピーク値、すなわち5kVは、本実施形態に係る電子機器1の限界ピーク値である。
【0034】
例えば、
図4に示す3つの第2のサージ電圧を電子機器1に発生させて電子機器1のテストが行われた場合は、テストデータ4は、当該3つの第2のサージ電圧のそれぞれのピーク値及び第2の時間長を示すデータとなる。すなわち、当該テストデータ4は、第2のサージ電圧Aのピーク値(1kV)及び第2の時間長((Tb1−Ta1)μs)と、第2のサージ電圧Bのピーク値(2kV)及び第2の時間長((Tb2−Ta2)μs)と、第2のサージ電圧Cのピーク値(5kV)及び第2の時間長((Tb3−Ta3)μs)とを示すデータとなる。
【0035】
なお、テストデータ4には、第2のサージ電圧のピーク値及び第2の時間長に加えて、第2のサージ電圧が検知された時刻を示すデータと、第2のサージ電圧が検知されなくなった時刻を示すデータとが含まれてもよい。また、テスト時に電子機器1に発生させる第2のサージ電圧の種類の数は、3つに限られず、幾つでもよい。例えば、N種類の第2のサージ電圧を電子機器1に発生させて電子機器1のテストが行われた場合は、テストデータ4は、当該N種類の第2のサージ電圧、或いは当該N種類の第2のサージ電圧のうちのいずれか複数種類の第2のサージ電圧のそれぞれのピーク値及び第2の時間長を示すデータとなる。
【0036】
図4からわかるように、第2のサージ電圧のピーク値と第2の時間長との間には、ピーク値が大きくなると、第2の時間長も大きくなるという関係がある。より具体的には、第2のサージ電圧のピーク値と第2の時間長との間には、ピーク値がX倍になると、第2の時間長がaX倍になるという関係がある。ここで、Xは変数であり、aは定数である。定数aは、電子機器1の構造に依存して定まり、同機種の電子機器1間で同じ値となる。定数aが1の場合、第1の波形5A、第2の波形5B、及び第3の波形5Cは、互いに相似関係を有することになる。
【0037】
従って、管理サーバー2は、第1のサージ電圧が検知された場合において当該第1のサージ電圧の第1の時間長を知ることができれば、複数の第2のサージ電圧のそれぞれのピーク値と第2の時間長との間の相関関係に基づいて、当該第1のサージ電圧のピーク値を特定することができる。
【0038】
例えば、
図4の例において、第2のサージ電圧Bの第2の時間長((Tb2−Ta2)μs)が、第2のサージ電圧Aの第2の時間長((Tb1−Ta1)μs)の2倍の時間長であった場合、定数aは、1となる。第2のサージ電圧Bのピーク値(2kV)も、第2のサージ電圧Aのピーク値(1kV)の2倍だからである。つまり、第1の波形5A、第2の波形5B、及び第3の波形5Cは、互いに相似関係を有することになる。この場合、管理サーバー2は、検知された第1のサージ電圧の波形が、第1の波形5A、第2の波形5B、及び第3の波形5Cと相似関係を有するように、当該第1のサージ電圧のピーク値を特定し得る。具体的には、検知された第1のサージ電圧の第1の時間長をTμsとした場合、当該第1の時間長(Tμs)は、第2のサージ電圧Aの第2の時間長((Tb1−Ta1)μs)のT/(Tb1−Ta1)倍の時間長となる。従って、管理サーバー2は、第2のサージ電圧Aのピーク値(1kV)のT/(Tb1−Ta1)倍であるピーク値、すなわちT/(Tb1−Ta1)kVを、検知された第1のサージ電圧のピーク値として特定する。
【0039】
以下、電子機器管理システム100において行われる処理の詳細を説明する。電子機器管理システム100において、電子機器1に発生した第1のサージ電圧に関する実測データを取得する実測データ取得処理と、電子機器1に発生した第1のサージ電圧のピーク値を特定し、特定したピーク値を表示するサージピーク値特定処理とが行われる。
【0040】
図5は、実測データ取得処理のフローチャートである。
【0041】
電子機器1の実測データ取得部116は、サージ電圧検知回路121からサージ検知信号を受信することで、電子機器1に発生した第1のサージ電圧がサージ電圧検知回路121により検知されたことを認識する。実測データ取得部116は、サージ検知信号を受信した場合(ステップS101:YES)、検知された第1のサージ電圧に関する実測データを生成し、生成した実測データを記憶部112に記憶する(ステップS102)。
【0042】
具体的には、実測データ取得部116は、第1のサージ電圧が検知された時刻と、第1のサージ電圧が検知されなくなった時刻とをRTC114から取得する。本実施形態において、第1のサージ電圧が検知された時刻は、当該第1のサージ電圧の電圧値がサージ閾値(例えば、0.3kV)を超えた時刻である。また、第1のサージ電圧が検知されなくなった時刻は、当該第1のサージ電圧の電圧値が0kVとなった時刻である。実測データ取得部116は、第1のサージ電圧が検知された時刻と第1のサージ電圧が検知されなくなった時刻とに基づいて、検知された第1のサージ電圧の第1の時間長を算出する。そして、実測データ取得部116は、算出した第1の時間長を示す実測データを生成し、記憶部112に記憶する。
【0043】
次に、電子機器1の制御部111は、データ通信I/F113を制御して、第1のサージ電圧が発生したことを示す通知(以下「サージ発生通知」という)を、通信ネットワーク3を介して管理サーバー2へ送信する(ステップS102)。サージ発生通知には、ステップS102で生成された実測データが含められる。その後、制御部111は、実測データ取得処理を終了する。
【0044】
図6は、サージピーク値特定処理のフローチャートである。
【0045】
管理サーバー2のサージピーク値特定部211は、対象の地域(地域A又は地域B)で利用されている1以上の電子機器1から受信したサージ発生通知の数をカウントする。受信したサージ発生通知の数が所定数以上である場合(ステップS201:YES)、サージピーク値特定部211は、受信したサージ発生通知に含まれる実測データとテストデータ4とに基づいて、電子機器1に発生した第1のサージ電圧のピーク値を特定する(ステップS202)。
【0046】
本実施形態において、サージピーク値特定部211は、対象の地域において発生した1以上の第1のサージ電圧の最大値、すなわち1以上のサージ発生通知によって発生が通知された1以上の第1のサージ電圧のピーク値のうちの最大値(以下「最大ピーク値」という)を特定する。すなわち、サージピーク値特定部211は、まず、受信した1以上のサージ発生通知のそれぞれに含まれる実測データが示す1以上の第1の時間長の中から、最長の第1の時間長(以下「対象時間長」という)を特定する。そして、サージピーク値特定部211は、対象時間長に対応する第1のサージ電圧(以下「対象サージ電圧」という)のピーク値を、最大ピーク値として特定する。
【0047】
具体的には、サージピーク値特定部211は、次のようにして、対象サージ電圧のピーク値を特定する。すなわち、対象時間長が、テストデータ4が示す複数の第2の時間長のいずれかと一致又は近似する場合、サージピーク値特定部211は、当該一致又は近似する第2の時間長に対応する第2のサージ電圧のピーク値を、対象サージ電圧のピーク値として特定する。一方、対象時間長が、テストデータ4が示す複数の第2の時間長のいずれとも一致及び近似しない場合、サージピーク値特定部211は、テストデータ4が示す複数の第2のサージ電圧のそれぞれのピーク値と第2の時間長との間の相関関係と、対象時間長とに基づいて、対象サージ電圧のピーク値を特定する。
【0048】
その後、管理サーバー2の制御部21は、特定した第1のサージ電圧のピーク値(本実施形態では、最大ピーク値)を入出力部24に表示する(ステップS203)。その後、制御部21は、サージピーク値特定処理を終了する。
【0049】
なお、管理サーバー2は、複数の地域のそれぞれについてサージピーク値特定処理を行って各地域の最大ピーク値を特定し、特定した各地域の最大ピーク値を表示してもよい。また、管理サーバー2は、最大ピーク値だけでなく、1以上のサージ発生通知によって発生が通知された1以上の第1のサージ電圧のそれぞれのピーク値を特定して表示してもよい。
【0050】
本実施形態によれば、電子機器管理システム100は、地域ごとに、当該地域において電子機器1に実際に発生した第1のサージ電圧のピーク値(本実施形態では、最大ピーク値)を特定し、特定したピーク値を表示して管理者に通知する。これにより、管理者は、各地域において実際にどの程度のピーク値を持つサージ電圧が発生するかを知ることができ、地域ごとの電子機器1のカスタマイズを容易且つ的確に行えるようになる。
【0051】
以上、本発明の一つの実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0052】
例えば、本実施形態では、電子機器1に発生した第1のサージ電圧のピーク値の特定及び表示は、管理サーバー2によって行われたが、電子機器1によって行われてもよい。この場合、電子機器1の記憶部112には、テストデータ4が記憶される。また、電子機器1の制御部111は、特定部をさらに備える。また、電子機器1は、表示部をさらに備える。そして、電子機器1は、当該電子機器に発生した第1のサージ電圧に関する実測データを取得した後、その特定部が、取得した実測データと記憶部112に記憶されているテストデータ4とに基づいて、当該第1のサージ電圧のピーク値を特定し、特定したピーク値を表示部に表示してもよい。