(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170046
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】マグネシウム合金から医療用インプラントを製造する方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/04 20060101AFI20170713BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20170713BHJP
A61B 17/58 20060101ALI20170713BHJP
C22C 23/06 20060101ALI20170713BHJP
B22F 3/20 20060101ALI20170713BHJP
B22F 1/00 20060101ALI20170713BHJP
B22F 9/08 20060101ALI20170713BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20170713BHJP
【FI】
A61L27/04
A61L27/58
A61B17/58
C22C23/06
B22F3/20 A
B22F1/00 N
B22F9/08 A
!C22F1/00 621
!C22F1/00 630A
!C22F1/00 640A
!C22F1/00 628
!C22F1/00 691B
!C22F1/00 694B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-527629(P2014-527629)
(86)(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公表番号】特表2014-533967(P2014-533967A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2012066683
(87)【国際公開番号】WO2013034466
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2015年5月19日
(31)【優先権主張番号】102011082210.0
(32)【優先日】2011年9月6日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514054236
【氏名又は名称】シンテリックス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ノイベルト フォルクマー
(72)【発明者】
【氏名】シャファン ロベルト
【審査官】
小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−508644(JP,A)
【文献】
Biomaterials,2005年,Vol.26,No.17,p3557−3563
【文献】
まてりあ,2002年,Vol.41,No.9,p644−649
【文献】
日本金属学会会報,1987年,Vol.26,No.7,p701−705
【文献】
Biomaterials,2009年,Vol.30,No.8,p1512−1523
【文献】
軽金属,2004年,Vol.54,No.11,p503−504
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用インプラントの製造方法であって、
軟組織、腱、筋肉、および靭帯を骨に取り付けるための骨ねじ、骨釘、骨ピン、プレート、縫合糸アンカーの形態、又は内部人工器官もしくは少なくともその一部の形態の医療用インプラントを、マグネシウム含有量が80重量%以上と、希土類金属含有量が2.5〜5重量%と、イットリウム含有量が1.5〜5重量%と、ジルコニウム含有量が0.1〜2.5重量%と、亜鉛含有量が0.01〜0.8重量%と、不可避の不純物と、からなるマグネシウム合金から製造する方法であって、
含まれ得る不純物の合計含有量が1重量%未満であり、アルミニウムの含有量が0.5重量%未満であり、残りが、100重量%になるまでマグネシウムを含み、
a)合金成分を700〜900℃で溶融しその後完全に混合してマグネシウム合金を得て、前記マグネシウム合金を、700〜900℃の温度で型に流し込む工程と、
b)前記マグネシウム合金を溶融して合金融液を得る工程と、
c)前記合金融液を、775〜850℃の温度と17〜23barの圧力下で不活性ガス雰囲気中で噴霧し、同時に、上記噴霧された合金融液をその凝固点より低い温度に冷却して、平均粒子径が5〜50μmである合金粉を得る工程と、
d)前記合金粉を、80bar以上の圧力で、冷間静水圧条件で、圧縮により成形して合金素地を得る工程と、
e)前記合金素地を押出成形して、マグネシウム合金成型部品を得る工程であって、前記合金素地は、押出成形の前に300〜400℃の温度まで加熱され、前記押出成形は、温度が150〜400℃の型に対してパンチを用いることで行われる工程と、
f)前記マグネシウム合金成型部品から前記医療用インプラントを製造する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記合金粉は球形であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
工程d)における圧力はガス雰囲気によって発生されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、
前記マグネシウム合金はイットリウムを含む希土類金属5〜9重量%と、ジルコニウム0.1〜0.8重量%と、亜鉛0.01〜0.25重量%と、残りがマグネシウムと不可避の不純物と、からなることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、軟組織、特に腱、筋肉、および靭帯を骨に取り付けるための骨ねじ、骨釘、骨ピン、プレート、縫合糸アンカー等の形態、又は内部人工器官もしくは少なくともその一部の形態の、マグネシウム含有量が80重量%以上のマグネシウム合金製の医療用インプラントを製造する方法に関する。本発明はまた、上述の方法によって得ることのできる成型マグネシウム部品に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において、骨橋に添え木を当てたり、骨切断を安定させたりする目的で、永続的な金属インプラントが利用可能であるが、治癒後に手術によって除去されなければならない。ポリグリコライド又はポリラクチドのインプラントも存在し、これらは生体吸収性であって除去の必要がないが、特定の状況において、これらは全ての機械的要件を満たすことができない。
【0003】
結合剤と、ステンレス鋼、チタニウム、チタニウム合金、クロム・コバルト系合金等の生体適合性金属材料と、から構成される、また、セラミックとリン酸カルシウムとから構成される医療用の生体適合性部品が、特許文献1によって公知である。生体適合性部品を得るためには、生体適合性材料を結合剤と混合し、射出成型法により所望の形状に成形する。
【0004】
特に海綿骨組織用のアンカーねじとして用いられ、生体吸収性材料から作製され得る骨ねじが、例えば、特許文献2によって公知である。しかしながら、当該出願においては、上記生体吸収性材料の原料が開示されていない。
【0005】
上述した種類のインプラントに加え、マグネシウム合金ベースの生体吸収性金属インプラントが近年実用化されている。このようなインプラントは典型的に、合金中のマグネシウム含有量が高い、典型的には80重量%を超える、ことを特徴とする。手術によって埋め込まれたこのようなインプラントは、身体そのものが持つ分解機構によって徐々に分解され、インプラント材料の一部は骨材へと直接変換される。
【0006】
このような生体分解性のマグネシウム合金と、その医療用インプラントとしての用途は、特許文献3及び特許文献4によって公知である。これらの強度と腐食速度を抑制するために、上記のマグネシウム合金は、ネオジム、イットリウム、ジルコニウム、亜鉛、カルシウム、及びその他の希土類元素等の多数の金属合金添加物を含む。本明細書に記載される合金は鋳込み又は機械的成形によって所望の形状に成型される。しかしながら、このようなインプラントの機械強度及び耐腐食性は、しばしば、要求される機能レベルに達しないことが判明している。したがって、十分な強度を得て、腐食速度を許容可能なレベルへと低下させるためには、例えば、多数の合金添加物を用いることが必要である。これらは、高価な集合体であり、これらの少なくとも一部は、人体内で容易に分解され得ない。
【0007】
最後に、溶錬もしくは粉末冶金、又は機械的合金化によってNgLi4Al4SE2の一般的な化学式を有するマグネシウム合金からインプラントを製造すること、又は、射出成型もしくは焼結技術によって既製インプラントを製造することが、特許文献5によって公知である。先に引用した化学式中、SEは希土類金属を指す。しかしながら、引用出願はマグネシウム合金の粉末冶金処理についての記述を含んでいるが、これをどのように行うかについての詳細な情報を一切含んでいない。しかしこれは、特に自然発火性の高いマグネシウム合金を扱う際、決定的に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願第DE102008008219 A1号
【特許文献2】独国特許出願第DE202005006076 U1号
【特許文献3】国際公開第2007/035791 A2号
【特許文献4】国際公開第2007/125532 A1号
【特許文献5】独国特許出願第DE10128100 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、改善された機械的強度と、ヒト又は動物の体内に見られるような電解条件下での低下された腐食速度を有する医療用インプラントを製造可能な方法を提供することである。また、上述のような特性を有する医療用インプラントを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本目的は、特に、軟組織、特に腱、筋肉、および靭帯を骨に取り付けるための骨ねじ、骨釘、骨ピン、プレート、縫合糸アンカー等の形態、又は内部人工器官もしくは少なくともその一部の形態の医療用インプラントを、マグネシウム含有量が80重量%以上、特に90重量%以上のマグネシウム合金から製造する方法であって、以下の工程を含む方法によって達成される。a)前記マグネシウム合金を溶融して合金融液を得る工程と、b)前記溶融した合金を保護ガス雰囲気中で噴霧し、同時に、上記噴霧された溶融した合金をその凝固点より低い温度に冷却して合金粉を得る工程と、c)前記合金粉を圧縮により成形して合金素地を得る工程と、d)前記合金素地を押出成形して、マグネシウム合金成型品を得る工程と、e)前記マグネシウム合金成型部品から前記医療用インプラントを製造する工程と、を含む、方法。
【0011】
驚くべきことに、本発明の方法によれば、従来の鋳造技術で製造した同じ組成の合金成型部品に比べて、改善された機械的強度を有するマグネシウム合金成型品を製造することが可能であることが判明している。より驚くべきことに、上述された方法によって製造されたマグネシウム合金成型品は、更に、低下された腐食されやすさを特徴とする。つまり、ヒト又は動物の体内に見られるような電解条件下での溶解速度が、同じ組成を有する鋳造合金成型部品よりも遅い。
【0012】
これらの特性の改善の結果として、本発明によるマグネシウム合金成型部品から作られた医療用インプラントは機械強度が高く、この機械強度がより長期間維持され、かつ、該インプラントは非常に高い生体吸収性を有しその後の手術による除去が不要となる。
【0013】
本発明による方法の改良として、工程b)において、噴霧時、前記合金融液の温度が750〜925℃であり、特に775〜850℃である。これらの温度においては、比較的狭い粒子径分布を有する合金粉を得ることができるため、特に有利である。
【0014】
また、本発明による方法の工程b)において、噴霧は15〜25bar、特に17〜23barの圧力下で行われる。更に、上記の圧力及び温度条件下での合金融液の噴霧は、噴霧処理の再現性が高いこと、つまり、高度に均一な平均粒子径と狭い粒子径分布とを有する再現可能な合金粉が得られることが特徴である。
【0015】
本発明によれば、工程b)における噴霧は不活性ガス雰囲気下で行われるものとする。これは、特に上述された温度条件下において、マグネシウム合金が高度に自然発火性であって、酸素の影響下で自然に発火するものである限り、必要である。本発明によれば、したがって、利用可能なシールドガスは周期系の第8族、つまり希ガスから選択され、中でもアルゴン及び/又はヘリウムが、不活性特性と比較的低コストである点から好ましい。
【0016】
噴霧工程b)の後に得られる合金粉は、典型的に、平均粒子径が5〜50μmであり、特に10〜30μmである。これは、合金粉の粒子が主に球形である場合に特に好ましい。これは、合金素地の製造のために工程c)で行われる圧縮を容易にする。
【0017】
本発明の方法の別の実施形態において、工程c)の圧縮は80bar以上、特に100barもしくは150bar以上、の圧力で行われ、かつ、圧縮作業は好ましくは冷間静水圧条件で行われる。このため、合金粉は、例えば軽金属の容器に堆積及び封入されるか、又は冷間静水圧加圧が行われ、合金素地が製造される。後者の方法では、合金粉がゴム型に導入され、すべての辺においてガス、例えば上述したような程度の圧力下の不活性ガス、による均等圧縮が行われる。その後、この圧力は例えば10分以上、好ましくは15分以上の期間にわたって維持され、この期間に合金素地が形成される。
【0018】
本発明による方法の工程d)において、押出成形法によって、合金素地をマグネシウム合金成型品に変換することが提供される。本工程はそれ自体が公知の方法で行われてよく、前記合金素地は、加圧工程の前に250〜450℃、特に300〜400℃の温度まで加熱されることが好ましい。
【0019】
押出成型は、パンチを、好ましくは温度が150〜400℃、特に200〜375℃の型に対して用いることで行われる。マグネシウム合金は大気中の酸素と激しく反応するため、本工程は、上述の種類の保護ガス条件下、つまり、例えばアルゴン及び/又はヘリウム雰囲気下、で行うことがまた望ましい。
【0020】
押出成形において一般的であるように、押出成型の材料の外形は型によって決定される。したがって、例えば、5、6、又は7ミリの直径を有する丸棒が形成され得る。押出成形された丸棒は、マグネシウム合金成型体への半製品であり、マグネシウム合金成型体はこの後、さらに加工されて医療用インプラントが製造される。
【0021】
理論上、本発明による方法で用い得るマグネシウム合金は、任意の合金添加物を含み得る。しかしながら、医療用インプラントの製造には、合金添加物とその量は、健康上の検討事項に照らして許容可能な量でのみ用いられるべきである。したがって、例えば、好適なマグネシウム合金は、2.5〜5重量%の希土類金属(ネオジムミッシュメタル)と、1.5〜5重量%のイットリウムと、0.1〜2.5重量%のジルコニウムと、0.01〜0.8重量%の亜鉛と、残りがマグネシウムと不可避の不純物と、からなる。マグネシウム合金は、特に好ましくは、イットリウムを含む希土類金属(ネオジムミッシュメタル)5〜9重量%と、ジルコニウム0.1〜0.8重量%と、亜鉛0.01〜0.25重量%と、残りがマグネシウムと不可避の不純物と、からなる。上述の合金添加物を含むマグネシウム合金は、本発明による方法のうちマグネシウム合金成型部品への変換に特に適している。これは、特に優れた機械的安定性と、低下した腐食速度とを特徴とする。
【0022】
含まれ得る不純物の総量については、1重量%を超えない量で存在することが好ましい。具体的には、本発明によるマグネシウム合金は実質的にアルミニウムを含まず、つまり、アルミニウム含有量が0.5重量%未満、特に0.1重量%未満である。
【0023】
より好ましくは、マグネシウム合金は、合金成分を700〜900℃で溶融しその後混合することにより、本発明による方法の工程a)に先立って調製されてよい。このようにして調製されたマグネシウム合金は、工程a)に先立って、特に700〜900℃の温度でまずインゴット型に流し込まれてよい。
【0024】
本発明のさらなる目的は、特に軟組織、特に腱、筋肉、および靭帯を骨に取り付けるための骨ねじ、骨釘、骨ピン、プレート、縫合糸アンカー等の形態、または内部人工器官もしくは少なくともその一部の形態の医療用インプラントであって、本発明の方法によって得ることのできる医療用インプラントに関する。
【0025】
本発明による医療用インプラントは、更に、表面コーティング、特に腐食速度を抑制するための表面コーティングが施されてよい。リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、又は、マグネシウム又はカルシウムの(OH、F、Cl)リン酸塩、ならびにこれらの物質の混合物を基にしたコーティングが本目的に好適に用いられ得る。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、例示としての実施形態を参照し、本発明を詳細に説明する。
医療用インプラントを製造するために、以下の添加物を含有するマグネシウム合金を作成する。
イットリウムを含む希土類元素:8.15重量%
ジルコニウム:0.79重量%
亜鉛:0.192重量%
該合金は、以下の検出可能な不純物も含有する。
シリコン:0.02重量%
銅:0.01重量%
鉄:0.013重量%
アルミニウム:0.036重量%
残りがマグネシウムである。
【0027】
上述のマグネシウム合金を調製するために、上記の量のマグネシウムと合金成分とを放射炉(Naber社,Hereus,20kW)で、アルゴン雰囲気下において900℃で溶融し、この温度で約15分間完全に均質化する。混合後、合金は850℃で型に流し込まれ、室温まで冷却される。
【0028】
このようにして製造された合金からマグネシウム合金成型品を製造するために、マグネシウム合金はまず再溶融され、その後噴霧温度875℃、アルゴン保護ガス雰囲気下(PSI2、Phoenix Industries社)でガス噴霧される。このために、合金融液は、上記の保護ガスからなる21barの高速ガス流で細かく噴霧され、それと同時に、その融点未満に冷却される。走査電子顕微鏡による分析によれば、平均粒子径が約50μmの微粒子の球形合金粉が得られる。粒子径分布の測定によって、粒子の70%は、上述の平均粒子径に対して−30μm〜+20μmの範囲の直径を有することが判明した。
【0029】
本方法の次の工程では、冷間静水圧加圧によって合金粉から合金素地が製造された。このために、合金粉はゴム型に移され、すべての辺において、約150barの圧力で、上述の保護ガスによる均等圧縮が行われる。この圧力は約15分間維持され、その後、完成した合金素地は取り除かれる。合金素地は以下の寸法を有する。φ75mm、高さ300mm。この工程ではFielding社のプレスを用いた。
【0030】
押出成形のために、合金素地は、電気加熱抵抗炉内で約300℃に加熱され、Fielding&Platt社製の押出機において、パンチによって、200℃に予熱された6mmの円形開口を有する型に押し通される。このようにして、直径6mmの丸棒形状のマグネシウム合金成型部品が得られる。押出成形は以下のパラメータで行われる。
【0032】
このようにして製造されたマグネシウム合金成型部品は、続いて、機械加工等の、それ自体が公知の方法で、骨インプラント等の医療用インプラントに加工される。
【実施例】
【0033】
機械的特性及び腐食の挙動を比較するため、同一の組成のマグネシウム合金成型部品が製造された。ここで、直径6mmの丸棒は鋳造法により得られた。以下に、2つの(化学的に同一の)材料の機械的特性と腐食の挙動を比較した。
【0034】
機械的特性
DIN EN 10002に従って引張試験が行われ、試料形態はDIN 50125、Form B、4×20を採用した。
【0035】
【表2】
【0036】
腐食の挙動
腐食の挙動を測定するために、本発明によるマグネシウム合金成型部品と、鋳造された同一組成の部品とのサイクリックボルタモグラム(電流電位曲線)が、以下の条件で記録された。
作用電極:マグネシウム合金
電極寸法:20×10×10mm
対向電極:プラチナ板
参照電極:カロメル電極(+242mV vs. SHE)
電解液:リンガー液(Braun社製)
電解液温度:37℃
供給速度:10mV/分
リンガー液は蒸留水と、溶液1リットル当たりで示される量の以下の塩とからなる。
8.60g NaCl
0.30 KCl
0.33 CaCl
2
その組成によって、電解液はヒトの体内の腐食環境を模倣している。このため、電解液の温度も、室温で測定せず、人体の平均体温に昇温された。
【0037】
結果を、dE/d log(i)のグラフ描画として
図1(本発明のマグネシウム合金部品)及び
図2(鋳造されたマグネシウム合金部品の比較試料)に示す。これらの描画からは、陰極及び陽極の枝からプロットされた接線同士の交点を基に、腐食電位及び腐食電流密度について以下の数値が得られる。
【0038】
【表3】
【0039】
本発明のマグネシウム合金成型部品の腐食電流密度i
corrは、わずか半分であり、これにより、同一の化学組成を有する鋳造されたマグネシウム合金成型部品と比較して、腐食速度が大幅に低下されたことが確認された。本発明のマグネシウム合金成型部品は、したがって、体内でより低速に分解され、その保持機能をより長く保持する。