(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170111
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】箔押し装置
(51)【国際特許分類】
B44C 1/17 20060101AFI20170713BHJP
B65D 51/24 20060101ALI20170713BHJP
B65D 23/08 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
B44C1/17 B
B44C1/17 H
B44C1/17 N
B65D51/24
B65D23/08 Z
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-204783(P2015-204783)
(22)【出願日】2015年10月16日
(62)【分割の表示】特願2013-543420(P2013-543420)の分割
【原出願日】2011年12月20日
(65)【公開番号】特開2016-104556(P2016-104556A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2015年11月16日
(31)【優先権主張番号】61/425,915
(32)【優先日】2010年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノーマン ヘンリー ティリッカ
(72)【発明者】
【氏名】スサナ イー.ボレロ
【審査官】
後藤 亮治
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04300974(US,A)
【文献】
特開昭51−135835(JP,A)
【文献】
米国特許第04696714(US,A)
【文献】
特公昭61−024189(JP,B1)
【文献】
実公昭60−023159(JP,Y1)
【文献】
米国特許第04373984(US,A)
【文献】
米国特許第05198059(US,A)
【文献】
特表2014−504578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/16 − 1/175
B41F 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非対称縁部を含むパーツをコーティングする装置であって、
a.フィルム巻き出し機と、
b.フィルム巻き取り機と、
c.マンドレルと、
d.パーツホルダーと、を備え、
前記マンドレル及び前記パーツホルダーの両方が、前記パーツホルダーにより回転される回転軸に対して角度が変化するパーツの非対称縁部に沿うように協働して三次元で動き、マンドレルの表面領域をコーティングされるパーツの縁部と概ね平行に維持し、フィルムがある程度平らにマンドレルとパーツの空隙に入るように、フィルムを送り込む、前記フィルム巻き出し機及び前記フィルム巻き取り機が、前記パーツホルダーに対し、コーティング作業中に、協働して左右のみ又は上下のみ又は上下左右両方に動く、装置。
【請求項2】
第1の端部と、第2の端部とを有するフィルムを更に含み、前記フィルムが、装飾コーティング、保護コーティング、又はこれらの組み合わせと、剥離する側を持つ、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記フィルム巻き出し機が前記フィルムの前記第1の端部を保持し、前記フィルムが前記マンドレルと前記パーツホルダーとの間に配置され、前記フィルム巻き取り機が前記フィルムの第2の端部を保持し、前記フィルム巻き出し機及び前記フィルム巻き取り機の両方が、前記パーツホルダーに対して協働して上下及び左右の両方に動く、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記パーツホルダーによって定位置に保持され、かつ前記フィルムの、装飾コーティング、保護コーティング、又はこれらの組み合わせからなる、コーティング面と物理的に接触する、非対称縁部を備えるパーツを更に備え、前記マンドレルが、前記フィルムの前記剥離する側と接触する、請求項1、2、又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記パーツが前記マンドレルと逆に回転し、前記保護コーティング又は装飾コーティングが前記パーツの前記非対称縁部上に付着される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記パーツが前記マンドレルと逆に回転する際、前記マンドレル及び前記パーツホルダーのいずれか又は両方が互いに角度関係で動く、請求項4又は5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記パーツが回転する間に、前記フィルム巻き出し機及び前記フィルム巻き取り機が連続的に回転し、前記パーツと前記マンドレルとの間にフィルムを連続的に送り込む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記パーツが、瓶、広口瓶、上蓋、ポンプ、蓋、容器、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
非対称縁部を含むパーツをコーティングするシステムであって、2つ以上のモジュールを含み、少なくとも1つのモジュールが、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置を含む、システム。
【請求項10】
対称縁部を有するパーツをコーティングする装置を含む少なくとも1つのモジュールが存在する、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非対称表面に装飾用及び保護用の箔押しを施す装置及びこの装置の使用方法を目的とする。
【背景技術】
【0002】
装飾又は保護目的でのパーツへの箔押しは既知である。パーツを装飾及び保護するための箔も既知である。箔は、通常、薄い多層シート又はリボンである。これらの層は、通常、薄型フィルムの支持体と、揮発性分離物質と、着色剤又は保護コーティングと、金属層と、接着剤とを含む。しかし、従来の機械及びこれらの機械の使用方法は、通常、平坦な対称表面で用いられる。例えば、円筒形及び円錐台のパーツ上で噛合したマンドレルが回転するだけで、これらを被覆する方法が既知である。箔は、パーツとマンドレルとの間に送り込まれ、パーツに均一に付着する。しかしこれらのシステムは、マンドレルが非対称パーツとの不断の接触を維持できないため、非対称形状を有するパーツでは機能しない。
【0003】
また、複雑な形状は、押圧されるパーツのネガ像である押し型を作製することにより箔押しを施すことができる。この方法では、実質上いかなる形状も押圧できるが、このプロセスには、固有の欠点が1つある。箔は平坦であり、複雑な形状の上に押圧されると、必然的に、伸張し、自身の上で折り重ならなければならないので、被覆が不均一になる。したがって、この種の箔押しには幾何学的制限が存在する。
【0004】
非対称表面への箔又はラベルの押圧には、柔軟性の高い、変形可能な押し型も用いられる。炭酸飲料用の容器は、この方法でラベル付けされることが多い。しかし、これらの柔軟性の高い、変形可能な押し型パッドも、上述した欠点と同一の欠点に悩まされる。平箔が曲面に押圧されると、折畳及び伸張によって表面に適合する必要がある。これにより、常に不均一な被覆がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの問題及び従来の方法及び装置に付随する他の問題を克服する装置及び方法に対する必要性が存在する。より具体的には、非対称部分を有するパーツの表面に薄型装飾フィルム又は薄型保護フィルムを貼付できる装置に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、非対称縁部を含むパーツをコーティングする装置を目的とする。この装置は、フィルム巻き出し機と、フィルム巻き取り機と、回転するマンドレルと、パーツホルダーとを有する。マンドレル及びパーツホルダーのいずれか又は両方は、互いに角度関係で動作する。更に、フィルム巻き出し機及びフィルム巻き取り機は、パーツホルダーに対して少なくとも二次元で協働して動作する。装置は、第1の端部と、第2の端部とを有するフィルムを更に含むことができ、このフィルムは、装飾コーティング、保護コーティング、又はこれらの組み合わせである。フィルムは、好ましくは、支持体と、分離化合物と、金属箔と、接着剤とを含む多層フィルムである。
【0007】
本発明は、均一なコーティングをもたらす迅速かつ経済的な方法で、非対称縁部を備えるパーツを装飾箔又は保護箔でコーティングできる装置を提供する。本装置及び方法は、不規則形状のパーツの上で箔を伸張するか、又は広げると、目に見える筋状痕が箔に生じるという、これまでの方法及び装置の欠点に悩まされない。不規則形状のパーツにコーティングする機能は、設計上の相当の新しい自由を設計者らに与える。異なる表面を追加することは、新しいパーツ形状が製造可能及び装飾可能、又は保護可能になるだけではく、1つのパーツ上での複数の装飾を可能にする。当業者には、本発明のこれらの利点及び他の利点が明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書は、本発明を特に指摘し明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本発明は、添付図面と併せてなされる以下の説明から一層理解されるであろうと考えられる。
【
図3】先行技術のマンドレル、パーツ、及びパーツホルダー。
【
図4】本発明によるマンドレル、パーツ、及びパーツホルダー。
【
図6】本発明による非対称縁部を備える蓋を有する広口瓶。
【
図7】本発明による、蓋の残りの表面とは異なる方法で装飾される非対称縁部を有する蓋。
【
図8】本発明による非対称縁部を有する透明な上蓋。
【
図9】本発明による非対称縁部を備えるポンプ及び透明な上蓋を有する広口瓶。
【
図10】本発明による非対称縁部を有するポンプを備える広口瓶。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、以下の、例示的及び好ましい実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって、更に容易に理解することが可能である。本特許請求の範囲は本明細書に記載されている具体的な成分、方法、条件、装置、又はパラメータに限定されないこと、及び本明細書で使用される用語は特許請求される本発明を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。また、添付の特許請求の範囲を含めた本明細書において使用する、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数形を含むものであり、特定の数値の言及は、その文脈において特に明確に断られていないかぎり、少なくともその特定の値を含むものである。値の範囲が述べられている場合、別の実施形態はその一方の特定の値から及び/又は他方の特定の値までを包含する。同様に、ある値が、これに先立つ「約」の使用により近似値として述べられている場合、その特定の値は別の実施形態をなすものと理解される。全ての範囲は、包含的であり、かつ組み合わせ可能である。
【0010】
本明細書で使用するとき、「パーツ」は、容器(例えば、瓶、広口瓶、オーバーパック等)、蓋(例えば、容器の蓋、上蓋等)、消費者製品(例えば、かみそり、歯ブラシ、電動ブラシ、スキンケア装置、ポンプ、電気カミソリ、電化製品等)であり得る。パーツは、既知のプラスチック及び他の高分子組成物、ゴム、金属等の天然由来の化合物、並びに当業者に既知の他の製造用材料のいずれかで作製することができる。同様に、パーツは、当業者に既知の方法で製造することができる。成型及び高光沢成型はパーツ製造の好ましい例である。一方、鍛造、熱成形等も、本発明のパーツ形成の好ましい方法である。
【0011】
本明細書で使用するとき、「非対称縁部を有するパーツ」は、
図1及び2を参照して最適に定義される。
図1は、本発明による広口瓶、瓶等の概ね円形の蓋22の断面図である。より具体的には、
図1において、蓋22は、上縁部12と、第1の傾斜縁部14と、第2の傾斜縁部16とを有する。蓋22は、側壁18と、ねじ山20と、底部24とを更に含む。底部24と平行に引いた線19は、第1の傾斜縁部14と平行に引いた線21と交差して、角度βを形成する。同様に、第2の傾斜縁部16と平行に引いた線23は、線19と交差して、角度αを形成する。したがって、パーツが非対称縁部を有するかどうかを判定するには、パーツの中心点を貫通する垂直断面を切り取り、α及びβを計算する。パーツの中心点を貫通する、少なくとも1つの垂直断面がβに等しくないαをもたらす場合、パーツは非対称縁部を有する。好ましくは、αは、少なくとも3°、より好ましくは少なくとも約5°、更により好ましくは少なくとも約10°の差でβに等しくない。α又はβのいずれかは90°に等しくなり得ると理解される。これは、傾斜縁部が存在しない(つまり、上縁部12が側壁18と直接交わる)場合に生じるが、他の角度が90°超又は90°未満の場合、パーツのごく一部にではあるが、非対称縁部が存在する。
【0012】
ここで、本発明による広口瓶、瓶等概ね円形の蓋32の断面図である
図2を参照する。より具体的には、
図2において、蓋32は、上縁部42と、第1の傾斜縁部34と、第2の傾斜縁部36とを有する。蓋32は、側壁38と、ねじ山40と、底部44とを更に含む。第1の傾斜縁部34は凹状であり、第2の傾斜縁部36は凸状である。
図2は、本発明の縁部は、いずれも平坦である必要がないことを図示している。それでも、角度α’及びβ’は、上述のように計算することができる。角度β’は、第1の傾斜縁部34と側壁38との外側交点31及び第1の傾斜縁部34と上縁部42との間の外側交点33を用いて測定することができる。底部44と平行に引いた線49は、外側交点31及び33を通るように引いた線51と交差して、角度β’を形成する。同様に、外側交点35及び37を通るように引いた線53は、線49と交差して、角度α’を形成する。
【0013】
本明細書で使用するとき、「フィルム」という用語は、一般に、少なくとも1つの層がパーツに付着する多層を有する、任意の薄いシート状材料を説明するために使用する。付着層は、保護コーティング、装飾コーティング等であり得る。金属、色、ラベル、転写シール、印刷、プラスチック、及び更に多くの材料が、フィルムによって本発明のパーツに貼付され得る。本発明で用いるのに好適であり得る例示のフィルムは、例えば、2009年11月19日公開の米国特許出願公開第2009/0286054号(Meikiら)、2008年3月13日公開の同第2008/0063863号(Colellaら)、及び2008年8月12日発行の米国特許第7,410,551号(Bethune)に図示及び説明されている。
【0014】
異なる最終結果を得るために異なるフィルムを用いることができるが、典型的なフィルムは、支持体と、分離化合物と、付着層と、接着剤とを含む。支持体は付着される層を保持し、付着後に、支持体は回収され得る(例えば、フィルム巻き取り機によって取り込まれる)。支持体は、多くの場合、プラスチック、又は熱、圧力、若しくはこれらの付着プロセスの両方に耐え得る他の安価な材料で作製された薄いシートである。分離化合物は、支持体と共に付着層のいずれかを持ち去ることなく、付着層から支持体を容易に引き離せるようにする、通常は液体、ゲル、又は半固体の物質である。好ましくは、支持体が引き離されるときに分離化合物が単に蒸発するように、分離化合物は揮発性である。あるいは、不揮発性の分離化合物は、付着後工程で洗い落とすか、又は拭き落とすことができる。
【0015】
付着層は、任意の数の物質であってよく、それ自体が多層を包含できる。真空金属化金属の薄層は、装飾及び保護の両方にとって一般的な選択肢である。金属層には色層が追加されることが多い。金属フィルムは他の方法でも製造可能であり、所望の結果に応じて厚くても、薄くてもよい。より薄い付着層は明らかに経済的であり、可撓性に富んでいるが、より厚い層は、耐久性が高く、付着したときの色の偏差が小さい。最終的に、接着剤は、単に付着層をパーツに接着させるように機能する。接着剤は当業者に既知であり、温度、圧力、活性化化合物、又はこれら全てによって活性化させることができる。速硬化エポキシの場合、パーツはエポキシのある化学薬品で、フィルム上にある他の化学薬品でコーティングされてよい。フィルムがパーツに接触すると、反応が生じ、接着層が形成される。多くの場合、接着剤は、単にマンドレルとパーツとの間の圧力、及び/又は熱によって活性化される。必然的に、フィルムの支持体側はマンドレルと接触するが、フィルムの接着剤及び付着層側は、パーツと接触する。
【0016】
箔押し操作前の状態である
図3をここで参照する。この図は、本発明の相違点及び利点を強調するために示す。
図3には、マンドレルホルダー61に取り付けられた回転マンドレル60が存在する。パーツ63は、パーツホルダー66によって定位置に保持された状態で示す。パーツ63は、マンドレル60とは反対方向に回転する平面側壁65を有する。フィルム62は、マンドレル60とパーツ63の平面側壁65との間に送り込まれ、両方と接触する。図に示すように、マンドレル60とパーツ63との間の角度は不変である。このため、フィルム62は側面に沿ってのみ移動でき、決してねじれたり、動作平面外に移動させられたりすることはない。この構成は、フィルムにかかる圧力を最小にするか、まったく圧力がかからないようにして、一般に良好な被覆をもたらす。このシステムは、対称の円錐台パーツでも機能することが既知である。しかしこの単純化したシステムは、非対称縁部を有するパーツでは機能しない。
【0017】
図4は、本発明による非対称縁部を含むパーツをコーティングする装置の略図を示す。装置69は、回転し、マンドレルホルダー71に取り付けられたマンドレル70を有する。パーツホルダー76は、非対称縁部80を有するパーツ73を保持する。フィルム72は、マンドレル70とパーツ73との間に配設される。パーツ73は、マンドレル70とは反対方向に回転する。下記で詳述するように、マンドレル70及びパーツホルダー76のいずれか又は両方は、互いに角度関係で動く。
図4では、パーツホルダー76は、ヒンジ82を介してマンドレルホルダー71に取り付けられたプレート81上に置かれている。これは、本発明の必要な角運動を達成する1つの方法に過ぎない。予めプログラムされた方法で、例えばサーボモーター、空気モーター等を用いて、パーツホルダー、マンドレル、又はこれら両方を制御するコンピュータによって、角運動をリモート制御できることを当業者は理解するため、マンドレル及びパーツホルダーが接続されている必要はない。
【0018】
本発明で用いるのに好適なマンドレルは、円錐台形状(例えば、
図4のマンドレル69を参照)、円筒形(例えば、
図5のマンドレル102を参照)、又は他の概ね対称の形状であってよい。同様に、マンドレルは固体又は変形可能であってよい。「変形可能」とは、マンドレルが不規則形状(例えば、凹状又は凸状)に適合できることを意味する。変形可能なマンドレルは、例えば、
図2のパーツ32の第1の傾斜縁部34及び第2の傾斜縁部36をコーティングするために用いられる。変形可能なマンドレルは、例えば、製品名、商標、又はロゴが、装飾を施すパーツに直接成型されるなど、隆起又は陥没したしるしを備えるパーツをコーティングする場合に有用である。
【0019】
図5は、本発明の装置90のやや詳細な略図である。非対称縁部94、側壁96、及び上縁部98を有するパーツ92が図示され、パーツ92はパーツホルダー100に取り付けられている。マンドレルホルダー104に取り付けられたマンドレル102が図示され、マンドレルヒーター106も図示される。マンドレルヒーター106は、フィルムの接着層が加熱によって活性化される場合に用いられ、感圧接着剤、エポキシ等には不要である。フィルム巻き出し機110及びフィルム巻き取り機112に取り付けられたフィルム108が図示される。フィルム108はロールとして図示されるが、最も単純な形態のフィルム108は、フィルム巻き出し機110に取り付けられた第1の端部114と、フィルム巻き取り機112に取り付けられた第2の端部116とを有する。図示するように、マンドレル102及びマンドレルホルダー104は回転する。その一方、パーツ92及びパーツホルダー100は反対方向に回転する。フィルム巻き出し機110及びフィルム巻き取り機112も回転して、マンドレル102とパーツ92との間にフィルム108を送り込むことができる。フィルム巻き出し機110及びフィルム巻き取り機112は連続的に回転できるか、又は各パーツの加工の合間、すなわち割り出し中にのみ回転できる。更に、加工するパーツそれぞれに対して、フィルム巻き出し機110とフィルム巻き取り機112との間に新しいフィルムシートを入れることができる。この場合、フィルム巻き出し機110及びフィルム巻き取り機112は、回転不要である。
【0020】
図5に示すように、フィルム巻き出し機110及びフィルム巻き取り機112は、軸111及び113の周囲を自由に回転できる必要がある。これらが軸111及び113の周囲を左右のみ又は上下のみにしか動けない場合、二次元運動と見なされる。これらが軸111及び113の周囲を上下及び左右の両方に動ける場合、三次元運動である。いずれの理論にも束縛されるものではないが、非対称縁部の角度がパーツの周囲で変化し、パーツホルダー(若しくはマンドレル、又はその両方)がこの角度の変化を補正するために動く際、フィルムに応力が加えられることは既知である。この応力は、平坦なパーツ又は更には円錐台のパーツをコーティングする際には経験されない。これは、フィルム、マンドレル、及びパーツの間の角度が不変であるためである。
【0021】
本明細書で使用するとき、「協働して動く」は、フィルム巻き出し機又はフィルム巻き取り機は、フィルム巻き出し機及びフィルム巻き取り機の両方が軸111及び113の周囲を左右のみ又は上下のみに二次元で動き、好ましくは、フィルム巻き出し機又はフィルム巻き取り機のうちの少なくとも1つが軸111及び113の周囲を上下及び左右の両方に三次元で動き、より好ましくは、フィルム巻き出し機及びフィルム巻き取り機の両方が軸111及び113の周囲を上下及び左右の両方に三次元で動くことを意味する。フィルム貼付プロセス中のフィルムに対する応力を緩和させる、フィルム巻き出し機及びフィルム巻き取り機の動作方法は、個々のパーツの形状に応じる。本発明の意図及び目的は、フィルム貼付プロセス中に角度が少なくとも1回変化する縁部を有するパーツに対処することであるが、変化の程度及び変化の回数はパーツによって異なることを理解されたい。しかし、一般的原理として、本装置は、マンドレルの表面領域をコーティングされるパーツの縁部と概ね平行に維持し、フィルムがある程度平らに(つまり、よじれることなく)マンドレルとパーツとの空隙に入るように、フィルムを送り込むことが最適である。同様に、フィルムが割り出しされる(連続的に送り込まれない)場合、それでもフィルムは、概して平らな状態で、マンドレルとパーツ縁部との境界面に対して平行関係を維持するように操作され得る。当業者は、この一般原則を用いて、個々の非対称のパーツ構成に対するフィルム巻き出し機、フィルム巻き取り機、又はその両方の動きをプログラミングできる。本発明のフィルム巻き出し機及びフィルム巻き取り機等の機械装置の動作方法は、当業者に既知である。空気モーター、サーボモーター等は、フィルム巻き出し機及びフィルム巻き取り機を動かすのに用いることができる一方で、コンピュータを使ったコントローラは、マンドレル及びパーツホルダーの変化する角度に動きを合わせることができる。
【0022】
システム
本発明の装置は、スタンドアローン動作であることができるか、又は既知の構成要素を備えるシステム内で、つまり少なくとも2つのモジュールを含むシステム内の1つのモジュールとして用いることができる。本発明のモジュール装置と共に用いる他のモジュールには、対称縁部を有するパーツをコーティングする装置、ラベル又は転写シールを貼付する装置、非平坦表面をコーティングする変形可能なマンドレルを備える装置等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のシステムにおいて、パーツは、パーツの所望の装飾レベル又は保護レベルが達成されるまで、あるモジュールから次のモジュールへと所定の順序で移動する。
【0023】
モジュールシステムの利点には、各工程間でフィルムを交換せずに、単一のパーツに多くの異なる装飾又は保護コーティングを施すことができること、個々のコーティング工程を段階分けして、最適な外観、及び各工程のコーティング間で最も効率的な重複を提供できること、並びに、操作の最初から最後まで、一連の流れでフィルム、転写シール、ラベル等を層状に形成できることが挙げられるが、これらに限定されない。
図6は、本明細書において特許請求するシステムの利点を例示する目的で、広口瓶又は瓶の蓋であるパーツ120を示す。パーツ120は、傾斜縁部122と、平面側壁124と、凹面である上縁部126とを有する。図示するように、3つの縁部全てが異なる装飾コーティングを有し、凹状上縁部126の装飾面にはラベル128が存在する。パーツ120は、装飾材料を4回交換することにより、1つの装置を含む1つのステーションにおいて4工程で装飾を施し、ラベルを貼付することができる。この非効率的なプロセスは、本発明による4モジュールシステムを用いることによって排除することができる。
【0024】
使用方法
非対称縁部を含むパーツをコーティングする方法は、パーツの非対称縁部の上にフィルムを配置する工程と、次にフィルムがパーツとマンドレルとの間に挟まれた状態で、マンドレルの上でパーツを回転させる工程と、を含む。この方法では、マンドレル及びパーツホルダーのいずれか又は両方が、互いに角度関係で動く。非対称縁部は角度を変化させるが、フィルムも方向を変化させることが好ましい。これを達成するためには、フィルムの縁部が、協働して動き、フィルムをコーティングするパーツの非対称縁部の変化する角度と一致させるフィルム巻き出し機及びフィルム巻き取り機によって保持されることが好ましい。適切なフィルムの位置合わせを達成するための動作方法については、上述した。
【0025】
パーツ
本発明のパーツは、例えば、瓶、広口瓶、上蓋、ポンプ、蓋、消費者製品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてよい。消費者製品の例には、かみそり、歯ブラシ、電動ブラシ、スキンケア装置、電気かみそり、電化製品等が挙げられるが、これらに限定されない。パーツは、既知のプラスチック及び他の高分子組成物、ゴム、金属等の天然由来の化合物、並びに当業者に既知の他の製造用材料のいずれかで作製することができる。同様に、パーツは、当業者に既知の方法で製造することができる。成型及び高光沢成型はパーツ製造の好ましい例であるが、鍛造、熱成形等も、本発明のパーツ形成の好ましい方法である。非対称縁部は、パーツに成型でき、物理的に押圧する、化学的にエッチングする、切り取る、若しくはめ込むことができるか、又は当業者に既知の任意の他の方法で作製できる。
【0026】
更に、本発明のパーツは、本明細書に記載のように薄型フィルムでコーティングされる非対称縁部を有する。
図7〜10は、例示的及び非限定的な本発明のパーツを示す。
図7は、薄型フィルム134で装飾されている非対称縁部133を備える蓋132を有する広口瓶130を示す。この例では、本発明によるパーツは蓋132である。蓋130が装飾された非対称縁部を有する場合、これもまた本発明によるパーツになり得る。
図8は、薄型フィルム装飾コーティング144を備える非対称縁部143を有する、透明プラスチック製の上蓋140を図示する。当業者には明白であるように、上蓋は、通常、ポンプ等の保護又は隠蔽に用いられる。
図9は、薄型フィルム装飾153を備える非対称縁部154を有する透明な上蓋152を備える広口瓶150を示す。更に、上蓋152の下にポンプ156を示す。ポンプ156は、フィルム保護コーティング157を備える非対称縁部158を有する。
図10には、広口瓶160及びポンプ162が図示され、広口瓶160は、保護フィルムコーティング163を備える非対称縁部162を有する。
図7〜10に図示するパーツは単なる例示であり、当業者は、この独自技術を実装できる無数のパーツ及び消費者製品を理解できるであろう。
【0027】
あらゆる相互参照又は関連特許若しくは特許出願を含む、本明細書に引用される文献は全て、明白に除外又は限定されている場合を除いて、本明細書中にその全容を援用するものである。いずれの文献の引用も、こうした文献が本願で開示又は特許請求される全ての発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、また、こうした文献が、単独で、あるいは他の全ての参照文献とのあらゆる組み合わせにおいて、こうした発明のいずれかを参照、教示、示唆又は開示していることを容認するものでもない。更に、本文書において、用語の任意の意味又は定義の範囲が、参考として組み込まれた文書中の同様の用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合には、本文書中で用語に割り当てられる意味又は定義に準拠するものとする。
【0028】
本発明の特定の実施形態が例示され記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を添付の特許請求の範囲で扱うものとする。