(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170235
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】チューブ状バッグ成形機械の成形ショルダ
(51)【国際特許分類】
B65B 9/22 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
B65B9/22
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-508070(P2016-508070)
(86)(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公表番号】特表2016-519024(P2016-519024A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】EP2014056398
(87)【国際公開番号】WO2014170121
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2015年10月15日
(31)【優先権主張番号】102013207151.5
(32)【優先日】2013年4月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】マイスナー,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルケ,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ライヒマン,エレン
(72)【発明者】
【氏名】ストットキエヴィッツ,ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエドゥヴィルト,ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】オベードルファー,ベレンド
【審査官】
新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03042103(US,A)
【文献】
独国特許出願公開第02005640(DE,A1)
【文献】
特開昭48−057784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状バッグの成形機械の成形ショルダにおいて、
前記成形ショルダ(2)が、ガス不透過性の層によって互いに分離されている複数のセグメント(3)を備えており、
前記複数のセグメント(3)のそれぞれには、ガス透過性のガス供給部と、該ガス供給部を介するガスの負荷又は吸込みによって前記成形ショルダ(2)の表面に作用するエアクッション又は負圧を該セグメント(3)毎に個別に制御するための、少なくとも1つのセンサと、が設けられている
ことを特徴とする、チューブ状バッグ成形機械の成形ショルダ。
【請求項2】
前記成形ショルダ(2)が焼結法により製造されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の成形ショルダ。
【請求項3】
前記成形ショルダ(2)が生成的な方法により製造されている
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の成形ショルダ。
【請求項4】
前記センサは、動圧を測定するためのまたは流れ抵抗を測定するための圧力センサである
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の成形ショルダ。
【請求項5】
前記成形ショルダ(2)が多孔質の表面層を有している
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の成形ショルダ。
【請求項6】
前記成形ショルダ(2)の全体が多孔質の材料で構成されている
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の成形ショルダ。
【請求項7】
少なくとも1つの前記セグメント(3)が線形または円形に構成されている
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の成形ショルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ状バッグの成形、充填およびシール機械の成形ショルダに関する。
【背景技術】
【0002】
このような形式の成形ショルダは、従来技術により公知である。この成形ショルダは、プラスチックまたは微細構造化された薄鋼板より製造されており、成形ショルダの表面特性と、成形ショルダによって変形しようとするプラスチック材料(包装材料)の表面特性とは、包装材料が成形ショルダ上で滑動し、次いでフラットなウエブからフィルムチューブを成形できるようにするために、互いに適合されなければならない。包装材料と成形ショルダとの間に発生する摩擦に基づいて、特別な手段を講ずることなしには、微細構造化されたまたは付着性の繊細な包装材料を加工することは不可能である。成形ショルダは特に変形縁部の領域内で摩耗傾向にあることが、特に不都合であることが分かった。
【0003】
特許文献1によれば、アプローチセクションに複数の孔が設けられている成形ショルダが公知である。孔を通って、ガス、好適には空気が供給されるので、成形ショルダ表面と包装材料(フィルム)との間にエアクッションが発生する。
【0004】
特許文献2は、非常に小さいチューブ状バッグを製造するための成形ショルダが示されている。この場合、成形ショルダに複数の孔が形成されており、これらの孔に負圧が供給される。ここでは、包装材料のフィルムが成形ショルダの幾何学的形状に当てつけられる。
【0005】
特許文献3には、チューブ状バッグの成形、充填およびシール機械が開示されており、この機械においては、成形ショルダの縁部に、エアクッションを発生させる、穿孔を備えたチューブが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許公開第1186535号明細書
【特許文献2】国際公開第2009/04998号パンフレット
【特許文献3】旧東ドイツ経済特許第111346号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、成形ショルダ全体および特に成形ショルダの表面が、多孔性材料より製作されていて、個別のセグメントに分割されている。特に成形ショルダの表面の多孔性の構成によって、および個別のセグメントに分割したことによって、包装材料と成形ショルダとの間の直接的な接触を阻止するために、ガス、好適には空気を供給することによって、局所的にエアクッションを適切に発生させることができる。これによって、良好な摩擦比が得られる。成形ショルダ若しくは成形ショルダ表面を個別のセグメントに分割することによって、セグメントは個別に制御されるので、包装材料ウエブの加工および成形時に成形ショルダを介して包装材料ウエブを適切に制御する可能性が得られる。この場合、ウエブ走行を最適化し、制御し、かつ発生した包装材料のウエブ負荷を測定することができる。従って、二進法的な制御(スイッチオフまたはスイッチオン)が行われる従来技術のものとは異なり、本発明によれば個別のセグメントにおいて、包装材料ウエブの運動の制御を可能にするために、また全体的に成形ショルダを介して包装材料ウエブを適切にガイドするために、摩擦比を適切に制御することができる。
【0008】
従属請求項は、本発明の好適な実施態様を示す。
【0009】
本発明の特に好適な実施態様によれば、成形ショルダは、焼結法によってまたは生成的な方法例えばラピッドプロトタイピングによって、製造される。
【0010】
従って、本発明の核心は、特に焼結された、または生成的に製造された、制御機能および測定機能を有する成形ショルダにある。この場合、焼結された成形ショルダにおいて、多孔性が効果的に得られ、例えば成形ショルダ表面とフィルムとの間にエアクッションを発生させるために利用することができる、という利点が提供される。多孔性の面を成形ショルダ表面上に分配する際に、この多孔性の面の形状および態様は自由である。さらに、材料全体が多孔性であることによって、やはりガス透過性である直接的な供給路が形成される。このような変化例は、生成的に製造された成形ショルダにも利用可能である。何故ならば、このような成形ショルダは、例えばラピッドプロトタイピングによって製造可能だからである。この変化例においても、ガス搬送のための様々な通路が実現可能である。別の利点は、このような多孔性の面によって、測定機能を実現することができる、という点にある。この場合、本発明によれば、動圧測定が可能であり、動圧測定は、ウエブ力分配およびひいてはウエブの負荷に関する判断を可能にする。ウエブ特性の制御、およびひいては成形ショルダ上での包装材料ウエブの位置決め制御は、同様に利点とみなされる。この場合、多孔性の面によっておよびこの多孔性の面の空気の貫流によって、成形ショルダの摩擦比およびひいては成形ショルダにおけるフィルムの位置を制御することができる。特に好適には、本発明は、断続的に作業する加工機械に使用することができる。何故ならば、断続的に作業する加工機械は、成形ショルダとフィルムとの間に定置のエアクションを形成することができないからである。これは、このような機械の調歩式運転に基づくものである。
【0011】
本発明の好適な実施態様によれば、さらに、個別のセグメントが、選択的にこれらのセグメントの表面に作用するエアクションまたは負圧を形成するために、ガス供給部を介してガスにより負荷可能であるかまたはガスを吸込み可能である。従って、前記のように個別のセグメント内に選択的にエアクッションを発生させるのに加えて、包装材料を負圧または真空によって成形ショルダに保持することも可能である。これは、機械停止状態または間欠的な走行形式において特にアプローチゾーン内で好適である。
【0012】
成形ショルダの領域内にエアクッションを使用する場合、摩擦が減少され、ひいては必要な引張力も減少される。従って、例えば成形ショルダ材料に対して高い摩擦係数を有する、加工するのが困難な包装材料を使用することができる。包装材料も成形ショルダも、機械的な負荷は僅かである。従って本発明によれば、繊細な表面または構造を有する包装材料の加工が可能である。しかも、機械的な負荷の減少によって、成形ショルダの耐用年数は高められる。包装材料ウエブは成形ショルダに直接保持され得るので、滑り戻りまたは側方へのずれは阻止される。これによって、加工プロセスは安定し、始動所要時間は短縮される。
【0013】
制御を効果的かつ確実に実施できるようにするために、個別のセグメントがそれぞれ、動圧を測定するためのまたは流れ抵抗を測定するための少なくとも1つの圧力センサを備えていれば、特に好適である。
【0014】
本発明によれば、表面層全体を多孔性に構成するか、または成形ショルダの材料全体を多孔性の材料として設けることができる。好適には、個別のセグメントを、特にその多孔性および形態に関連して様々に構成してもよい。これらのセグメントは、本発明によれば好適な形式で線形または円形に構成されていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】セグメント状に分割された本発明による成形ショルダの第1実施例の簡略的な概略図である。
【
図2】本発明による、測定成形ショルダとしての成形ショルダの別の実施例の、
図1に類似した図である。
【
図3】アプローチゾーン内の部分的に微孔性の表面を有する実施例を示す図である。
【
図4】変形縁部における部分的に微孔性の表面を有する実施例を示す図である。
【
図5】アプローチゾーン内の全面的に微孔性の表面を有する別の実施例の、
図3に類似した図である。
【
図6】変形縁部における全面的に微孔性の表面を有する別の実施例の、
図4に類似した図である。
【
図7】エアクッション機能を示すための材料構造の横断面の詳細を示す概略図である。
【
図8】吸込み機能を示すための実施例の、
図7に類似した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施例を、添付の図面を用いて具体的に説明する。
【0017】
図1および
図2はそれぞれ、本発明による成形ショルダの概略図を示す。
図1に示した成形ショルダ2は、セグメント状に分割して構成されていて、その表面1に全部で6つのセグメントI〜VIを有しており、これらのセグメントは概ねストリップ状に構成されている。
【0018】
図2に示した実施例において、セグメント3はそれぞれ測定セグメントとして構成されている。このことはつまり、これらのセグメントがストリップ状ではなく、矩形であるか、或は包装材料ウエブの走行運動を介して、制御または調整のために用いられる測定を実施するために、適当に分割されている、ということを意味する。
【0019】
従って本発明は、上記のように、2つの方法で製造される成形ショルダ2に関するものである。一方では焼結によって、他方では生成的な製造法例えばラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping)によって製造される。
【0020】
このような製造法によって、成形ショルダ2は多孔質の構造を得る。多孔質の構造によって、成形ショルダは測定および位置決め機能を引き受けることができる。多孔質の構造の基本機能は、空気またはその他のガスより成るクッションによる成形ショルダ2の摩擦を減少することである。このために、成形ショルダ体は全体が多孔質の材料より成っている。本発明の核心は、前述のように、成形ショルダ2が引き受ける測定および位置決め機能にある。位置決め機能は、
図1に示したように成形ショルダ体がセグメント状に分割されていることによって実現可能である。セグメント3の機能形式は、摩擦の減少または増加によって説明することができる。包装材料ウエブの搬送方向に対して直交する方向にフィルムを移動させるために、複数のセグメント3は僅かな空気で移動方向に負荷されるので、摩擦は高められ、ウエブ位置を変える横方向力が発生する。例えば、セグメントIの方向に移動させる場合、セグメントIおよびセグメントIIは、残りの複数のセグメント3よりも少ない空気で負荷される。これによって、セグメントIおよびIIに、セグメントIの方向にウエブを移動させる、より高い摩擦力が発生する。この機能のためには、セグメント3がガス不透過性の層によって分離されていることが前提となる。この特徴は、位置決め機能によって示される本発明による成形ショルダ2の制御作用を表す。
【0021】
測定機能は、
図2に示した成形ショルダの構成において可能である。この場合、成形ショルダセグメントの構成は確定されていない。
図2は、セグメントI〜VIがどのように分割され得るかを示す。要求された分解能に応じて、これらのセグメントの大きさは適合可能である。この場合、測定原理は動圧の測定である。この場合、2つの実現可能性が得られる。一方では、フィルムなしの状態で流れ抵抗を測定し(テスト1)、またセグメント3上にフィルムが存在する状態での流れ抵抗を比較することにより(テスト2)動圧の測定を行う。これによって、ウエブ力に関係しているテスト1とテスト2との間の圧力差が得られる。別の可能性は、測定と圧縮空気負荷との分離である。この場合、セグメント3によって、フィルムは空気で負荷され、場合によってはより小さく構成されている周囲の部材によってウエブ力が測定される。セグメント3毎のウエブ力から、成形ショルダ2におけるウエブ力分配が求められる。続いてウエブ力分配からウエブ応力分配が導き出される。選択的に、成形ショルダ2における包装材料ウエブの所定の領域を負荷軽減する、所定のセグメント構造を設けてもよい。本発明によれば、線形のセグメントまたは円形のセグメントが好適である。
【0022】
図3〜
図8はそれぞれ、成形ショルダ2の表面1におけるセグメント3の様々な構成および配置を示す。この場合、微孔性の表面が設けられており、この微孔性の表面は、エアクッションを形成するために圧縮空気によってのみ負荷されるか、または包装材料のフィルムの運動を適切に制御若しくは調整するために、選択的に圧縮空気または負圧を加えることができる。
【0023】
従って、成形ショルダの表面1は微孔性のコーティングを備えている。この微孔性のコーティングは、このコーティングの下にある複数の溝4を通して下方から圧縮空気によって負荷される。これによって、表面1にエアクッションが発生し、包装材料は成形ショルダ2上に沿って無接触でガイドされる。同様に、変形縁部の領域にもこの表面1が設けられているので、機械的な負荷は最小化される。
【0024】
図7は、エアクッションを発生させる際の成形ショルダ材料の横断面を示す。圧縮空気は、溝4を介して微孔性材料の下にもたらされ、微孔性材料の構造によって均一に分配される。表面1の出口側に薄い空気膜が発生する。
図8は、逆の機能における横断面を示す。この場合、微孔性の表面1を通って真空が吸い込まれる。
【0025】
微孔性の表面の構成は、全面的にまたは部分的に形成されていてよい。同様に、それぞれエアクッション発生若しくは真空吸込み機能の領域は、部分的または全面的に設けられているか、または省かれていてよい。
【0026】
図3および
図4は例えば、微孔性材料を有する部分的なコーティングを示し、この場合、
図3並びに
図5は、
図1および
図2と類似した図を示し、これに対して
図4および
図6は、それぞれ
図3および
図5を下から見た図を示す。アプローチゾーンの外側の領域内で追加的に真空の吸込みが可能である。これによって、包装材料は成形ショルダに固定される。
【0027】
図5および
図6の実施例では、微孔性材料による全面的なコーティングが示されている。この場合も、真空ゾーンは外側の縁部領域内だけに示されている。
【0028】
本発明による成形ショルダは、垂直なチューブ状バッグ機械にも、また水平なチューブ状バッグ機械にも使用することができ、この場合、とりわけ加工若しくは微細構造化が困難である包装材料において特に好適であることが分かった。チューブバッグ包装機械に使用する場合、特に垂直な成形、充填およびシール機械も含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1 表面
2 成形ショルダ
3 測定セグメント
4 溝
I〜VI セグメント