【実施例】
【0032】
実施例1
エルゴステロール系化合物(C310−6)の製造
【0033】
一.C310−6粗抽出物の取得
1.超微粉砕:
乾燥したサナギタケ子実体を原料とし、超微粉砕機に投入して超微粉砕を行い、粉砕の全過程で、超微破砕機内部冷却液として5℃の水を用いた。超微粉砕の時間は20分とし、超微粉を得た。
【0034】
2.熱水抽出:
超微粉に対して熱水抽出を行い、3回連続で抽出し、1回の熱水抽出時間は70分(100度まで加熱し、水を40分沸騰させた後、30分加熱を継続)とした。具体的には次のとおりである。
【0035】
第1回熱水抽出:超微粉3kgを超純水24Lに加え、材料液が均一になり明らかな塊状物がなくなるまで充分に撹拌し、30リットル漢方薬抽出タンクで70分熱水抽出し、熱水抽出の終了後、1L遠沈管に小分けして平衡化し、室温まで冷却した後、25℃、6000rpmで30min遠心分離し、沈殿物を収集した。
【0036】
第2回熱水抽出:第1回熱水抽出の沈殿物を超純水12Lに加え、材料液が均一になり明らかな塊状物がなくなるまで充分に撹拌し、30リットル漢方薬抽出タンクで70min熱水抽出し、熱水抽出の終了後、第1回熱水抽出の方法で処理し、沈殿物を収集した。
【0037】
第3回熱水抽出:第2回熱水抽出の沈殿物を超純水9Lに加え、材料液が均一になり明らかな塊状物がなくなるまで充分に撹拌し、30リットル漢方薬抽出タンクで70分熱水抽出し、熱水抽出の終了後、第1回熱水抽出の方法で処理し、沈殿物を収集した。沈殿物を60℃恒温送風乾燥器に移して乾燥させた後、真空乾燥した。
【0038】
3.有機試薬抽出:
乾燥した沈殿物を、粉砕機で粉砕し、1:5(w/v)で有機試薬を加えた。有機試薬は、50%のアセトン−エタノール溶液とした。充分に撹拌して均一に混ぜ、食品用ラップフィルムで口を封じ、一晩浸漬抽出し、上澄液を収集した。上澄液を6000rpmで30min遠心分離し、上澄を収集した。上澄をロータリーエバポレーターで濃縮した後、60℃恒温送風乾燥器に移して乾燥させ、C310−6粗抽出物を得た。
【0039】
二.C310−6中間物の取得
1.DAC 50実験:
C310−6粗抽出物を移動相で完全に溶解させ、50mg/mLの溶液に調製し、液体DAC 50順相カラム(250mm×50mm、10μm、100Å)を作製して分離した。検出波長は260nmとし、A、B二元移動相系を用いて溶出分離した。移動相A及び移動相Bは、それぞれn−ヘキサン及び酢酸エチルとし、溶出方法は、100%n−ヘキサン-100%酢酸エチル60分勾配溶出であり、流速は80mL/minとし、試料注入量20mLとした。クロマトグラムは、
図18を参照。
図18における第10号ピークを収集し、乾燥させた後、C310−6中間物成分を得た。
【0040】
2.DAC 150まで拡大する:
C310−6粗抽出物を移動相で完全に溶解させ、50mg/mLの溶液に調製し、分取液体DAC 150順相カラム(250mm×150mm、10μm、100Å)で分離した。検出波長は260nmとし、A、B二元移動相系を用いて溶出分離した。移動相A及び移動相Bは、それぞれn−ヘキサン及び酢酸エチルとし、溶出方法は、100%n−ヘキサン-100%酢酸エチル60分勾配溶出であり、流速は700mL/minとし、試料注入量180mLとした。クロマトグラムは、
図19を参照。
図19における第10号ピークを収集し、乾燥させた後、C310−6中間物成分を得た。
【0041】
三.C310−6の取得
C310−6中間物成分を移動相で完全に溶解させ、33mg/mLの溶液に調製し、分取液体DAC 150順相カラム(250mm×150mm、10μm、100Å)で分離した。検出波長は260nmとし、A、B二元移動相系を用いて溶出分離した。移動相A及び移動相Bは、n−ヘキサン及び酢酸エチルの組み合わせを用い、溶出方法は、100%n−ヘキサン-100%酢酸エチル180分勾配溶出であり、流速は700mL/minとし、試料注入量300mLとした。クロマトグラムは、
図20を参照。
図20における第6号ピークを収集し、乾燥させた後、成分C310−6を得た。7.2gと秤量した。
【0042】
また、実施例1の具体的な操作を参照し、明細書の技術手法の部分のエルゴステロール系化合物の製造方法及び公知の常識により製造しても、当業者は同様にエルゴステロール系化合物(C310−6)を取得することができる。
【0043】
実施例2
エルゴステロール系化合物(C310−6)結晶の製造
【0044】
実施例1で得られたエルゴステロール系化合物C310−6を150mg秤取し、3mlの良性溶媒を加えた。良性溶媒は50%n−ヘキサン−テトラヒドロフラン溶液とした。16℃の条件下に置き自然揮発させ、保温静止し、晶析し、溶液が1/3まで揮発したときに、底部の結晶をすくい取り、単結晶を得た。得られた単結晶を吸引ろ過し、−20℃のn−ヘキサンで洗浄し、洗浄後、ステロール系化合物(3R,9R,10S,13S,14S,17S)−17−((2S,5R,E)−5,6−ジメチルヘプト−3−エン−2−イル)−10,13−ジメチル−2,3,4,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタジエン[α]フェナントレン−3−オール)の単結晶をX線単結晶回折分析に直接用いた。
【0045】
また、実施例2の具体的な操作を参照し、明細書の技術手法の部分のエルゴステロール系化合物結晶の製造方法及び公知の常識により製造しても、当業者は同様にエルゴステロール系化合物(C310−6)結晶を取得することができる。
【0046】
実施例3
C310−6構造の確認
【0047】
1.HPLCによる純度分析:
C310−6成分を50%のn−ヘキサン−エタノール溶液で全て溶解させ、5mg/mLの溶液に調製し、HPLCで純度分析を行った。Kromasil順相カラム(250mm×4.6mm、5μm、100Å)、検出波長260nmで、検出条件は、移動相がn−ヘキサン及びエタノールであり、100%n−ヘキサン-100%エタノールで30分勾配溶出し、流速は1mL/分とし、試料注入量:20μL、温度30℃で、高速液体検出純度は99%に達した。HPLCクロマトグラムは
図1を参照。
【0048】
2.マススペクトル分析:
C310−6に対して電子衝撃マススペクトル(EI−MS)分析を行った。Varian 450−GC、瀚盟生物技術(天津)有限公司、m/z;396.4[M+H]
+。分子式はC
28H
44Oを示した。マススペクトルは
図2を参照。
【0049】
3.赤外スペクトル(IR)分析:
C310−6に対して赤外スペクトル分析を行った。フーリエ変換赤外分光光度計,瀚盟生物技術(天津)有限公司、cm
−1:3841.3、3752.92、3736.85、3435.27、3042.7、2954.66、2870.84、2796.63、2346.49、1655.01、1458.92、1382.59、1369.26、1325.71、1239.89、1192.49、1158.4、1111.32、1055.93、1038.91、983.23、968.07、946.85、935.01、873.5、834.19、802.11、615.46、603.4。赤外スペクトルは
図3を参照。
【0050】
4.核磁気共鳴分析:
C310−6に対して、それぞれBruker A.G AVIII 600PLUS、瀚盟生物技術(天津)有限公司を行った。核磁気共鳴スペクトルは
図4に示す通りであった。
1H−NMR、
13C−NMR、HMBCスペクトルに基づき得られたC310−6のNMRデータは、表1に示す通りであった。
【0051】
【表1】
【0052】
5.結晶構造の測定:
C310−6を洗浄後に乾燥してX線単結晶回折装置分析に直接用いた。X線単結晶回折装置は、天津大学−国家工業結晶工程技術研究センターが提供した。実施例4の寸法が0.25×0.20×0.15mmのステロール系化合物、すなわち、(3R,9R,10S,13S,14S,17S)−17−((2S,5R,E)−5,6−ジメチルヘプト−3−エン−2−イル)−10,13−ジメチル−2,3,4,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタジエン[α]フェナントレン−3−オール)の単結晶を単結晶X線回折装置に取り、黒鉛単色化Mo−Kα線(λ=0.71073 A)を用いてω−θ走査方式で3.22°≦2θ≦25.50°範囲内で21387個の回折データを収集し、そのうち独立回折点9082個(R(int)=0.1150)であった。収集したデータを、Lp因子及び経験で吸収補正した。直接法を用いて、数回のフーリエ合成を経て、全ての水素原子を探し出した。全ての水素原子の座標は、幾何水素添加法を用いて得られた。全ての非水素原子の座標及びその各項の異性温度因子は、完全行列最小二乗法を用いて修飾した。全ての構造計算作業は、SHELX−97プログラムを用いて行い、これによりC310−6の分子構造がC
28H
44Oであることが得られた。具体的なデータは、以下の表2〜表4に記載の通りであり、構造図は
図5に示す通りである。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
実施例4
新規化合物C310−6の細胞活性実験
【0057】
(一)ヒト肝癌細胞Hep−g2実験:
1.ACEAバイオサイエンス(杭州)有限公司製の8ウェル型プレート(E−Plate L8)をiCELLigenceリアルタイムラベルフリー細胞アナライザーと組み合わせ、各ウェルに150ulの完全F−12K培地を加え、37℃、5%CO
2の培養器に置き、背景データを40〜130の間に調整した。実施例1の化合物C310−6をジメチルスルホキシドで100mg/ml、50mg/ml、25mg/ml、12.5mg/ml、6.3mg/ml、3.1mg/ml、1.6mg/mlに完全に溶解し、更に完全F−12K培地で10mg/ml、5mg/ml、2.5mg/ml、1.25mg/ml、0.63mg/ml、0.31mg/ml、0.16mg/ml作業液に希釈し、培養したヒト肝癌細胞Hep−g2をパンクレアチンで消化し、4×10
4/mlの活細胞懸濁液に希釈し、8ウェル型プレートに接種し、各ウェル345ulとし、C310−6溶液5ulを加え、最終濃度を100μg/ml、50μg/ml、25μg/ml、12.5μg/ml、6.3μg/ml、3.1μg/ml、1.6μg/mlにし、対照ウェルに5ulの1‰ジメチルスルホキシドの完全F−12K培地を加え、37℃、5%CO
2の培地に置いて48時間培養した。
【0058】
具体的な薬の添加方法は表5に示すとおりである。
【0059】
【表5】
【0060】
異なる濃度のC310−6でヒト肝癌細胞Hep−g2の成長を抑制するリアルタイムデータ(48時間)は
図6に示す通りである。
【0061】
2.MTT法
a.50ml、0.01mol/L、PH=7.45のPBSでMTT250mgを溶解し、最終濃度5mg/mlとし、ろ過除菌し、小分けした後−20℃で遮光保存した。
b.単細胞株懸濁液を調製し、96ウェル型プレートに接種し、F−12K基礎培地で細胞を4×10
4/mlまで希釈し、各ウェルに希釈した細胞を100ul加え、37℃、5%CO
2で、飽和温度で20時間培養し、各群4個の複製試料とした。
c.培地を除去し、新しく調製した培地を除去し、一連の濃度で抗癌剤(C310−6)を調製し、溶解し、各ウェル100ulとし、48時間培養した。
d.各ウェルに5mg/mlのMTT 20ulを加え、4時間培養した。
e.ウェル内の培地を吸い出し(できる限り完全に)、DMSO溶液(150ul/ウェル)を加え、10分間振とうし、結晶物を十分に溶解した。
f.マイクロプレートリーダーで各ウェルのOD値を検出し、λ=490nmであった。
g.細胞増殖曲線図を作成し、IC
50値14.152μg/mlが求められた。このことは、この化合物が非常に良好な抗ヒト肝癌Hep−g2の活性を有することを示している。
【0062】
(二)ヒト肺癌細胞A549実験:
1.ACEAバイオサイエンス(杭州)有限公司製の8ウェル型プレート(E−Plate L8)をiCELLigenceリアルタイムラベルフリー細胞アナライザーと組み合わせ、各ウェルに150ulの完全MEM培地を加え、37℃、5%CO
2の培養器に置き、背景データを40〜130の間に調整した。実施例1の化合物C310−6をジメチルスルホキシドで100mg/ml、50mg/ml、25mg/ml、12.5mg/ml、6.3mg/ml、3.1mg/ml、1.6mg/mlに完全に溶解し、さらに完全MEM培地で10mg/ml、5mg/ml、2.5mg/ml、1.25mg/ml、0.63mg/ml、0.31mg/ml、0.16mg/ml作業液に希釈し、培養したヒト肺癌細胞A549をパンクレアチンで消化し、2×10
4/mlの活細胞懸濁液に希釈し、8ウェル型プレートに接種し、各ウェル345ulとし、C310−6溶液5ulを加え、最終濃度を100μg/ml、50μg/ml、25μg/ml、12.5μg/ml、6.3μg/ml、3.1μg/ml、1.6μg/mlにし、対照ウェルに5ulの1‰ジメチルスルホキシドの完全MEM培地を加え、37℃、5%CO
2の培地に置いて48時間培養した。
【0063】
具体的な薬の添加方法は表6に示すとおりである。
【0064】
【表6】
【0065】
異なる濃度のC310−6でヒト肺癌細胞A549の成長を抑制するリアルタイムデータ(48時間)は
図7に示すとおりである。
【0066】
2.MTT法
a.50ml、0.01mol/L、pH=7.45のPBSでMTT250mgを溶解し、最終濃度5mg/mlとし、ろ過除菌し、小分けした後−20℃で遮光保存した。
b.単細胞株懸濁液を調製し、96ウェル型プレートに接種し、MEM基礎培地で細胞を3×10
4/mlまで希釈し、各ウェルに希釈した細胞を100ul加え、37℃、5%CO
2で、飽和温度で20時間培養し、各群4個の複製試料とした。
c.培地を除去し、新しく調製した培地を除去し、一連の濃度で抗癌剤(C310−6)を調製し、溶解し、各ウェル100ulとし、48時間培養した。
d.各ウェルに5mg/mlのMTT 20ulを加え、4時間培養した。
e.ウェル内の培地を吸い出し(できる限り完全に)、DMSO溶液(150ul/ウェル)を加え、10分間振とうし、結晶物を十分に溶解した。
f.マイクロプレートリーダーで各ウェルのOD値を検出し、λ=490nmであった。
g.細胞増殖曲線図を作成し、IC
50値15.727μg/mlが求められた。このことは、この化合物が非常に良好な抗ヒト肺癌A549の活性を有することを示している。
【0067】
実施例5
新規化合物C310−6の動物実験
【0068】
(一)C310−6抗マウスH
22腫瘍実験
この実験の目的は、H
22癌マウスモデルを用いて5種類の混合物の抗肝癌腫瘍作用について考察することである。
【0069】
具体的な手順は次のとおりである。
【0070】
1.マウスH
22肝癌モデルの確立
腫瘍を接種して8〜13日の状態が良好な担癌マウスを頸椎脱臼により安楽死させ、体表をアルコールで消毒し、無菌(クリーンベンチ)環境でマウス腫瘍を剥離し、生理食塩水を入れた滅菌シャーレに入れ、小さな塊に切り、小さな塊の腫瘍をホモジナイザーに入れ、体積比1:3前後で生理食塩水を加えてすりつぶし、ホモジネートを50ml滅菌遠沈管に入れ、使用に備えた。1ml注射器でKMマウス右腋下に0.2ml注射接種し、腫瘍細胞懸濁液の製造は、いずれも無菌条件で(クリーンベンチで)行った。腫瘍の取り出しから腫瘍の接種完了までは60分以内に行った。
【0071】
2.医薬品製造方法
C310−6胃ゾンデ経口投与剤:一定重量のC310−6試料を乳鉢に秤取し、一定量の溶媒体積2%ツイーン−80を加え、充分に研磨した後、一定量体積の生理食塩水を加え、均等に混ぜた後、濃度24mg/ml、8mg/ml、2.7mg/mlに調製し、使用に備えた。
【0072】
シクロホスファミド胃ゾンデ経口投与剤:シクロホスファミド錠の糖衣を除去した後、秤取し、一定重量を乳鉢に秤取し、一定量体積の生理食塩水を加え、充分に研磨し、均等に混ぜ、濃度3.4mg/mlに調製し、使用に備えた。
【0073】
3.割付け及び投与方法
60匹の試験マウスを計6群に分け、各群10匹、雌雄半分ずつとし、(1)C310−6低用量(27mg/kg)群、(2)C310−6中用量(80mg/kg)群、(3)C310−6高用量(240mg/kg)群、(4)シクロホスファミド群、(5)モデル群、(6)ブランク群に分け、以上各群は、モデル群及びブランク群を除き、腫瘍懸濁液を注射した後、いずれも1日1回投与し、1回1匹0.3mlとし、10日間連続で投与した。モデル群及びブランク群は、毎日等体積の2%ツイーン80水溶液を、10日連続胃ゾンデで経口投与した。
【0074】
4.観察指標
4.1 大体の状態
毎日、マウスの体重、飲食量を量って記録し、最後の1回は、腫瘍を除去した後のマウスの正味体重を計算した。
【0075】
4.2 腫瘍重量及び腫瘍抑制率
毎日マウス右腋下を観察し、最後の1回の投与の24時間後に、解剖して腫瘍組織を取り出し、腫瘍重量を秤取し、下記の公式で腫瘍成長抑制率を計算した。
[式1]
【0076】
4.3 肝組織重量及び癌の肝転移率
最後の1回の投与の24時間後に、解剖して肝組織を取り出し、肝組織重量を秤り、肝組織の変化の有無を観察し、肝癌転移があるマウスの数について統計をとった。
【0077】
5.データ統計
各群のマウスの対応するデータは、いずれも
[式2]
で表し、SPSSソフトウェアを用いて統計を行い、各群でone−way ANOVA検定を採用した。
【0078】
6.実験結果
表7、
図8〜
図12の実験結果から、C310−6は、投与量が240mg/kg、服用日数が10日であるときに、H
22肝癌腫瘍モデルマウスと比較して有意差が認められ(P<0.05)、且つ用量が240mg/kg及び80mg/kgのときに、肝癌腫瘍に対して比較的高い抑制率(>40%)を有し、シクロホスファミド群は、モデル群と比較して有意差が認められ(P<0.05)、用量が240mg/kg及び80mg/kgのときに、シクロホスファミド群と比較して、腫瘍抑制率に有意差が認められないことがわかる。
【0079】
肝臓重量の面で比較すると、C310−6は、用量が80mg/kgのときに、マウス肝臓重量をシクロホスファミド群と比較して、極めて有意な差が認められ(P<0.01)、用量が27mg/kgのときに、マウス肝臓重量をシクロホスファミド群と比較して、有意差が認められ(P<0.05)、シクロホスファミド群をモデル群と比較して極めて有意な差が認められた(P<0.01)。
【0080】
正味体重の変化の面で比較すると、各投与群の体重の上昇幅はいずれも比較的小さく、且つシクロホスファミド群のマウスの正味体重の上昇幅が最も小さく、投与量が240mg/kgのときに、モデル群及びブランク群と比較して、いずれも有意差が認められた(P<0.05)。シクロホスファミド群与モデル群及びブランク群と比較して、いずれも極めて有意な差が認められた(P<0.01)。
【0081】
各群のマウスには、いずれも癌細胞肝転移現象が認められなかった。
【0082】
投与治療期間において、C310−6の各投与群のマウスの体重に、いずれも著しい上昇が認められ、その後、安定した状態が維持された。シクロホスファミド群は低体重状態が維持された。モデル群及びブランク群は、体重の上昇幅が他の群よりも大きかった。
【0083】
投与治療期間において、C310−6の各投与群のマウスの平均飲食量は、いずれも投与前期は安定が維持され、後期の飲食量は投与量に反比例した。シクロホスファミド群の飲食量は、比較的低レベルが一貫して保たれた。ブランク群及びモデル群の飲食量は、比較的高レベルが一貫して保たれた。
【0084】
【表7】
【0085】
総合すると、C310−6は、投与量が80mg/kg、服用量が10日間のときに、マウスH
22肝癌腫瘍モデルに対して有意な有効性を有し(腫瘍抑制率41.1%)、その効果にシクロホスファミドとの有意差が認められず、且つシクロホスファミドと同じく、肝腫大を防止する効果を有する可能性があることが推測される。しかしながら、この投与量では、マウスの正味体重変化(腫瘍を除去した後の体重と初期体重との比較)は比較的小さく、シクロホスファミドの作用と相似し、個体の体重及び飲食量に対してある程度の抑制作用がある可能性があり、その抑制作用は、投与量と正比例の関係を有する可能性があることが推測される。投与量が240mg/kgのときに、その腫瘍抑制率(64.4%)は、ひいてはシクロホスファミド(腫瘍抑制率52.9%)よりも優れていた。また、今回の実験モデル群の平均腫瘍重量は比較的軽く(<1g)、実験の最終的な判断結果に対してある程度の影響を及ぼした可能性がある。
【0086】
(二)C310−6抗Lewis腫瘍実験
この実験の目的は、lewis癌マウスモデルを用いてC310−6の抗肺癌腫瘍作用について考察することである。
【0087】
実験手順は次のとおりである。
【0088】
1、マウスLewis肺癌担癌モデルの確立
腫瘍を接種して8〜13日の状態が良好な担癌マウスを頸椎脱臼により安楽死させ、体表をアルコールで消毒し、無菌(クリーンベンチ)環境でマウス腫瘍を剥離し、生理食塩水を入れた滅菌シャーレに入れ、小さな塊に切り、小さな塊の腫瘍をホモジナイザーに入れ、体積比1:3前後で生理食塩水を加えてすりつぶし、ホモジネートを50ml滅菌遠沈管に入れ、使用に備えた。1ml注射器でC57BL/6マウス右腋下に0.2ml注射接種し、腫瘍細胞懸濁液の製造は、いずれも無菌条件で(クリーンベンチで)行った。腫瘍腹水の取り出しから腫瘍の接種完了までは60分以内に行った。
【0089】
2.医薬品製造方法
C310−6胃ゾンデ経口投与剤:一定重量のC310−6試料を乳鉢に秤取し、一定量の溶媒体積2%ツイーン−80を加え、充分に研磨した後、一定量体積の生理食塩水を加え、均等に混ぜ、濃度24mg/ml、8mg/ml、2.7mg/mlに調製し、使用に備えた。
【0090】
シクロホスファミド胃ゾンデ経口投与剤:シクロホスファミド錠の糖衣を除去した後、秤取し、一定重量を乳鉢に秤取し、一定量体積の生理食塩水を加え、充分に研磨し、均等に混ぜ、濃度3.4mg/mlに調製し、使用に備えた。
【0091】
3.割付け及び投与方法
60匹の実験マウスを計6群に分け、各群10匹,雌雄半分ずつとし、(1)C310−6低用量(27mg/kg)群、(2)C310−6中用量(80mg/kg)群、(3)C310−6高用量(240mg/kg)群、(4)シクロホスファミド群、(5)モデル群、(6)ブランク群に分け、以上は、ブランク群及びモデル群を除き、その他の各群は、腫瘍懸濁液を注射した後、いずれも1日1回投与し、1回1匹0.2mlとし、10日間連続で投与した。ブランク群及びモデル群は、同じ投与時刻及び投与時間で胃ゾンデにより2%ツイーン−80水溶液を投与し、10日間連続で投与した。
【0092】
4.観察指標
4.1 大体の状態
毎日、マウスの体重、飲食量を量って記録し、最後の1回は、腫瘍を除去した後のマウスの正味体重を計算した。
【0093】
4.2 腫瘍重量及び腫瘍抑制率
毎日マウス右腋下を観察し、最後の1回の投与の24h後に、解剖して腫瘍組織を取り出し、腫瘍重量を秤取し、下記の公式で腫瘍成長抑制率を計算した。
[式3]
【0094】
4.3 肺組織重量及び癌の肺転移率
最後の1回の投与の24時間後に、解剖して肺組織を取り出し、肺組織重量を秤り、肺組織の変化の有無を観察し、肺癌転移があるマウスの数について統計をとった。
【0095】
5.データ統計
各群のマウスの対応するデータは、いずれも表で示し、SPSSソフトウェアを用いて統計を行い、各群でone−way ANOVA検定を採用した。
【0096】
6.実験結果
表8、
図13〜
図17の実験結果から、C310−6は、投与量が240mg/kg、服用日数が10日であるときに、Lewis肺癌腫瘍モデルマウスと比較して極めて有意な差が認められ(P<0.01)、この用量は、シクロホスファミド群と比較して、有意差が認められなかったことがわかる。
【0097】
肺転移の面では、各群でいずれも20%−50%の肺転移現象が認められたが、統計学的有意差は認められなかった。
【0098】
正味体重の変化の面では、C310−6の各投与群及びシクロホスファミド群で、いずれも体重低下現象が認められ、且つ各群は、モデル群及びブランク群と比較して、いずれも極めて有意な差が認められた(P<0.01)。
【0099】
投与治療期間において、C310−6の各投与群のマウスの体重に、いずれも先に低下が認められた後、著しく上昇し、その後、安定した状態が維持された。シクロホスファミド群は、先に低下した後、低体重状態が維持された。モデル群及びブランク群は、著しい上昇の後、一定の体重レベルが維持された。
【0100】
投与治療期間に、C310−6の各投与群のマウスの平均飲食量は、いずれも投与中期が比較的高く、初期と末期が比較的低かった。シクロホスファミド群の飲食量は、比較的低いレベルが一貫して保たれた。ブランク群の飲食量は、比較的高いレベルが一貫して保たれた。モデル群では、飲食量が徐々に減少した。
【0101】
【表8】
【0102】
総合すると、C310−6は、投与量が240mg/kg、服用量が10日間のときに、マウスLewis肺癌モデルに対して比較的良好な有効性を有する。服用個体に体重低下現象が現れることがあるが、引き起こされる有害反応の強度はシクロホスファミドよりも小さいことが推測される。
【0103】
本発明のエルゴステロール系化合物及び/又はエルゴステロール系化合物結晶は、実験による検証の結果、抗癌活性を有し、in vitro細胞活性レベルで、リアルタイム・ラベルフリー細胞アナライザー及びMTT法を用いてこの化合物に対して活性検出を行い、実験の結果、この化合物は、肺癌及び肝癌細胞の成長を著しく抑制する活性を有することが示され、動物全体レベルでも、実験の結果、この化合物は著しい抗肺癌活性を示すことがわかる。そのため、この化合物は、医薬品賦形剤と、臨床使用に適した抗癌剤を製造することができる。
【0104】
前記具体的な実施形態は、このエルゴステロール系化合物、並びにその製造方法及び使用について詳細に記述したものであり、説明的なものであり、限定的なものではなく、その限定範囲に基づき若干の実施例を列挙することができるため、本発明の全体的な主旨を逸脱しない変更及び修正は、本発明の保護範囲内に属すものとする。