特許第6170246号(P6170246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6170246エルゴステロール系化合物、並びにその製造方法及び使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170246
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】エルゴステロール系化合物、並びにその製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07J 9/00 20060101AFI20170713BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20170713BHJP
   A61K 36/068 20060101ALI20170713BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   C07J9/00CSP
   A61K31/575
   A61K36/068
   A61P35/00
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-524666(P2016-524666)
(86)(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公表番号】特表2016-523934(P2016-523934A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】CN2014081517
(87)【国際公開番号】WO2015184668
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】201410244394.5
(32)【優先日】2014年6月4日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515117800
【氏名又は名称】正源堂(天津▲濱▼海新区)生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼耀洲
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼嘉辰
(72)【発明者】
【氏名】江磊
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲剣▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼玉皎
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲暁▼▲倩▼
(72)【発明者】
【氏名】杜思▲貌▼
(72)【発明者】
【氏名】▲顧▼▲鵬▼▲媛▼
(72)【発明者】
【氏名】崔今松
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/128783(WO,A1)
【文献】 特表平05−508655(JP,A)
【文献】 特開2002−155097(JP,A)
【文献】 特開平09−012594(JP,A)
【文献】 特開平07−188281(JP,A)
【文献】 特開平06−041060(JP,A)
【文献】 特表2013−514338(JP,A)
【文献】 特開2010−229077(JP,A)
【文献】 特表2009−528291(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/043306(WO,A1)
【文献】 特開2006−241106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J 9/00
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子式がC2844O、分子量が396.34であり、(3R,9R,10S,13S,14S,17S)−17−((2S,5R,E)−5,6−ジメチルヘプト−3−エン−2−イル)−10,13−ジメチル−2,3,4,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタジエン[α]フェナントレン−3−オール)であり、化学構造式が図Iに示すとおりであるエルゴステロール系化合物。
【化1】
【請求項2】
具体的な工程が次の通りである、請求項1に記載のエルゴステロール系化合物の製造方法。
(1)乾燥させたサナギタケ子実体を原料とし、超微粉砕して超微粉を得る;
(2)超微粉を熱水抽出し、遠心分離して、沈殿物を取り、1〜5回繰り返す;
(3)ステップ(2)で得られた沈殿物を、アセトン、エタノール、メタノールのうちの1種または複数種の組み合わせである有機試薬で浸漬抽出し、浸漬抽出した上澄を収集し、遠心分離し、上澄液を取り、濃縮、乾燥して、C310−6粗抽出物を得る;
(4)工程(3)で得られたC310−6粗抽出物を、移動相Aもしくは移動相Bまたは両者の組み合わせである移動相で全て溶解させ、分取液体DAC順相カラムで分離し、二元移動相系を用いて溶出分離する。前記移動相Aおよび移動相Bはn−ヘキサン、酢酸エチル、エタノール、ジクロロメタン、メタノールのうちの1種または複数種の組み合わせであり、溶出方法は60分勾配溶出であり、検出波長は260nmとする。標的ピークを収集し、乾燥後にC310−6中間物成分を得る;
(5)工程(4)で得られたC310−6中間物成分を、移動相Aもしくは移動相Bまたは両者の組み合わせである移動相ですべて溶解させ、分取液体DAC順相カラムで分離し、二元移動相系を用いて溶出分離する。前記移動相Aおよび移動相Bはn−ヘキサン、酢酸エチル、エタノール、ジクロロメタン、メタノールのうちの1種または複数種の組み合わせであり、溶出方法は180分勾配溶出であり、検出波長は260nmとする。標的ピークを収集し、乾燥後に標的化合物C310−6を得る。
【請求項3】
前記工程(2)における熱水抽出の温度が70〜100℃、熱水抽出時間が1〜2時間である、請求項2に記載のエルゴステロール系化合物の製造方法。
【請求項4】
前記工程(3)における沈殿物と有機試薬を、1:(3〜8)の重量体積比(Kg:L)で混合し、浸漬抽出する、請求項2または記載のエルゴステロール系化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項に記載のエルゴステロール系化合物を結晶化して得られ、単結晶構造が単斜晶系であり、結晶軸がa=9.848(2)、b=7.5529(15)、c=35.074(7)であり、結晶面角がα=90°、β=95.62(3)°、λ=90°である、エルゴステロール系化合物結晶。
【請求項6】
具体的な工程が次の通りである、請求項5に記載のエルゴステロール系化合物結晶の製造方法。
(1)エルゴステロール系化合物を、150mg毎に良性溶媒3mlを加え、16℃の条件下に置き自然揮発させ、保温静止し、晶析し、溶液が1/3まで揮発したときに、底部の結晶をすくい取り、単結晶を得、前記良性溶媒は、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、エタノール、メタノールのうちの一種または複数種の任意の割合の組み合わせであること;
(2)得られた単結晶を吸引ろ過し、−20℃のn−ヘキサンで洗浄して得ること。
【請求項7】
請求項に記載のエルゴステロール系化合物および/または請求項に記載のエルゴステロール系化合物結晶の、抗腫瘍薬の製造における使用。
【請求項8】
前記腫瘍が、肝癌、肺癌、乳癌、子宮癌または腸癌である、請求項7に記載のエルゴステロール系化合物および/またはエルゴステロール系化合物結晶の使用。
【請求項9】
請求項に記載のエルゴステロール系化合物および/または請求項記載のエルゴステロール系化合物結晶と、1種または複数種の薬理学的に許容される賦形剤と、を含む、抗腫瘍医薬品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サナギタケから分離抽出された化合物、並びにその製造方法及び使用に関するものであり、具体的には、全く新規な構造のエルゴステロール系化合物、並びにその製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、個体の各種発癌要因の作用の下で、局所組織の一つ又は複数の細胞が遺伝子レベルでその成長に対する正常な制御を失い、そのクローン性異常増殖により形成される腫瘍をもたらす、現在、ヒトの健康に対する危害が最も深刻な疾患の一つである。WHOの統計によれば、癌で死亡する患者は世界平均で年間に700万人に達し、新しい発症は800万例である。この数値は年々増加しており、2020年には、世界で毎年2000万例の患者が新しく発生し、癌は既にヒトの健康に対する最大の脅威となっている。
【0003】
現段階の癌治療の主な手段は、放射線療法及び化学療法であり、比較的良好な治療効果を有するが、骨髄抑制、免疫機能低下、脱毛、情緒不安定等の副作用を引き起こし、患者に治療を継続することが難しくなることがよくある。また、放射線療法及び化学療法の医薬品は、治療中に現れる薬剤耐性が、現在の臨床治療において一般に認められている難題の一つとなっている。そのため、治療効果が良好で、副作用が小さく、患者が受け入れやすい治療方法及び医薬品を探し求める必要がある。漢方薬は、リソースが広範で、価格が低廉であり、使用の歴史が長い等の長所のため、抗癌剤の研究で注目を集めている。
【0004】
現在、既に多数の臨床研究によって、漢方薬が、癌患者のクオリティ・オブ・ライフを改善し、生存期間を延長し、癌細胞を安定させ、患者の免疫力を高める作用を有することが実証されている。また、漢方薬は、癌細胞の分化を誘導することによって、細胞のアポトーシスを促進し、免疫機能を調節し、癌細胞を直接殺傷し、癌細胞の生成を抑制し、癌細胞の多剤耐性を逆転させ、癌細胞の転移を防止する等、多種の経路で、癌の進展を有効に防ぐことができる。そのため、天然物から有効な抗腫瘍性物質を探し出すことが、現在、研究の大きな方向となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明で解決しようとする技術的課題は、エルゴステロール系化合物を提供することである。
【0006】
本発明で解決しようとするもう一つの技術的課題は、前記エルゴステロール系化合物の製造方法を提供することである。
【0007】
本発明で解決しようとするもう一つの技術的課題は、前記エルゴステロール系化合物の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するための本発明の技術手法は次のとおりである。
【0009】
分子式がC2844O(略称;C310−6)、分子量396.34であり、(3R,9R,10S,13S,14S,17S)−17−((2S,5R,E)−5,6−ジメチルヘプト−3−エン−2−イル)−10,13−ジメチル−2,3,4,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタジエン[α]フェナントレン−3−オール)、英語名:(3R,9R,10S,13S,14S,17S)−17−((2S,5R,E)−5,6−dimethylhept−3−en−2−yl)−10,13−dimethyl−2,3,4,9,10,11,12,13,14,15,16,17−dodecahydro−1H−cyclopenta[α]phenanthren−3−ol)であり、化学構造式が図Iに示す通りである、エルゴステロール系化合物。
【0010】
【化1】
【0011】
好ましくは、前記エルゴステロール系化合物は、図IIに示すように、前記化合物のC−3、C−9、C−10、C−24キラル炭素原子R配置、C−13、C−14、C−17、C−20キラル炭素原子S配置である。
【0012】
【化2】
【0013】
好ましくは、前記エルゴステロール系化合物は、サナギタケ子実体を粉砕、抽出濃縮、分離して得られる。
【0014】
前記エルゴステロール系化合物の製造方法の具体的な工程は次の通りである。
(1)乾燥させたサナギタケ子実体を原料とし、超微粉砕して超微粉を得る。
(2)超微粉を熱水抽出し、遠心分離して、沈殿物を取り、1〜5回繰り返す。
(3)工程(2)で得られた沈殿物を、アセトン、エタノール、メタノールの組み合わせである有機試薬で浸漬抽出し、浸漬抽出した上澄を収集し、遠心分離し、上澄液を取り、濃縮、乾燥して、C310−6粗抽出物を得る。
(4)工程(3)で得られたC310−6粗抽出物を全て溶解させ、分取液体DAC順相カラムで分離し、二元移動相系を用いて溶出分離する。前記移動相A及び移動相Bは、n−ヘキサン、酢酸エチルの組み合わせを用い、溶出方法は、60分勾配溶出であり、検出波長は260nmとする。標的ピークを収集し、乾燥後にC3−10成分を得る。
(5)工程(4)で得られたC3−10成分を取り、移動相(移動相A若しくは移動相B又は両者の組み合わせ)を用いて全て溶解させ、分取液体DAC順相カラムで分離し、二元移動相系を用いて溶出分離する。前記移動相A及び移動相Bはn−ヘキサン、酢酸エチルの組み合わせを用い、溶出方法は180分勾配溶出であり、検出波長は260nmとする。標的ピークを収集し、乾燥後に標的化合物(C310−6)を得る。
【0015】
好ましくは、前記エルゴステロール系化合物の製造方法において、前記工程(2)の熱水抽出の温度が70〜100℃であり、熱水抽出時間が1〜2時間である。
【0016】
好ましくは、前記エルゴステロール系化合物の製造方法において、前記工程(3)の沈殿物と有機試薬を、1:(3〜8)の重量体積比(Kg:L)で混合し、浸漬抽出する。
【0017】
前記エルゴステロール系化合物を結晶化して得られ、単結晶構造が単斜晶系であり、結晶軸がa=9.848(2)、b=7.5529(15)、c=35.074(7)であり、結晶面角がα=90°、β=95.62(3)°、λ=90°である、エルゴステロール系化合物結晶。
【0018】
前記エルゴステロール系化合物結晶の製造方法の具体的な工程は次のとおりである。
(1)前記エルゴステロール系化合物(C310−6)を、150mg毎に良性溶媒3mlを加え、16℃の条件下に置き自然揮発させ、保温静止し、晶析し、溶液が1/3まで揮発したときに、底部の結晶をすくい取り、単結晶を得る。前記良性溶媒は、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、エタノール、メタノールのうちの一種又は複数種の任意の割合の組み合わせである。
(2)得られた単結晶を吸引ろ過し、−20℃のn−ヘキサンで洗浄して得る。
【0019】
好ましくは、前記エルゴステロール系化合物結晶の製造方法の前記工程(2)で得られた生成物を洗浄した後、X線単結晶回折分析に直接用いる。
【0020】
前記エルゴステロール系化合物及び/又はエルゴステロール系化合物結晶は、抗腫瘍薬の製造に用いる。
【0021】
好ましくは、前記エルゴステロール系化合物及び/又はエルゴステロール系化合物結晶の用途は、前記腫瘍が肝癌、肺癌、乳癌、子宮癌又は腸癌である。
【0022】
前記エルゴステロール系化合物及び/又はエルゴステロール系化合物結晶と、1種又は複数種の薬理学的に許容される賦形剤と、を含む、抗腫瘍作用を有する医薬品組成物。
【0023】
前記薬理学的に許容される賦形剤は、医薬品製剤分野における通常の賦形剤とすることができ、特定の賦形剤の選択は、特定の患者を治療する投与方式又は疾患タイプ及び状態によって決まり、特定の投与方式に用いる適切な医薬品組成物の製造方法は、完全に医薬品分野の当業者の知識範囲内にある。例えば、薬理学的に許容される賦形剤として、薬学分野の通常の希釈剤、担体、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体及び潤滑剤等があり、必要に応じて、医薬品組成物に更に香味剤、防腐剤及び甘味剤等を加えてもよい。
【0024】
前記抗腫瘍作用を有する医薬品組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、懸濁液、シロップ、バッカル錠、舌下錠、注射剤、軟膏剤、坐剤、吸入剤等の多種の剤形に製造することができる。前記各種剤形の医薬品は、いずれも薬学分野の通常の方法で製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の有益な効果は次の通りである。
【0026】
本発明のエルゴステロール系化合物及び/又はエルゴステロール系化合物結晶は、サナギタケ子実体中からの分離精製に成功した新規化合物であり、且つ純度は99%に達し、この化合物は、性質が安定し、非常に顕著な抗癌活性を有し、その製造方法の工程は簡単で、再現性がよく、実用性が高く、大量生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のC310−6成分のHPLC分析図である。
図2】本発明のC310−6の電子衝撃マススペクトル(EI−MS)分析図である。
図3】本発明のC310−6の赤外スペクトルである。
図4】本発明のC310−6の核磁気共鳴分析図であり、(a)は1D1HNMRスペクトル(CDCl3、600MHz)のデータ、(b)は1D13CNMRスペクトル(CDCl3、150MHz)のデータ、(c)はHMBCデータ、(d)はDEPT 135データである。
図5】本発明のC310−6の単結晶構造の分子構造図である。
図6】異なる濃度のC310−6がヒト肝癌細胞Hep−g2の成長を抑制するリアルタイムデータモニター図である。
図7】異なる濃度のC310−6がヒト肺癌細胞A549の成長を抑制するリアルタイムデータモニター図である。
図8】C310−6抗マウスH22腫瘍実験におけるマウス平均腫瘍重量(g)の概略図であり、図中、順に高用量群、中用量群、低用量群、CTX群、モデル群である。
図9】C310−6抗マウスH22腫瘍実験におけるマウス平均肝臓重量(g)の概略図であり、図中、順に高用量群、中用量群、低用量群、CTX群、モデル群である。
図10】C310−6抗マウスH22腫瘍実験におけるマウス正味体重平均変化量(g)の概略図であり、図中、順に、高用量群、中用量群、低用量群、CTX群、モデル群、ブランク群である。
図11】C310−6抗マウスH22腫瘍実験における治療期間のマウス体重変化概略図である。
図12】C310−6抗マウスH22腫瘍実験における治療期間のマウス平均飲食量概略図である。
図13】C310−6抗Lewis腫瘍実験におけるマウス平均腫瘍重量(g)概略図であり、図中、順に高用量群、中用量群、低用量群、CTX群、モデル群である。
図14】C310−6抗Lewis腫瘍実験におけるマウス平均肺重量(g)概略図であり、図中、順に高用量群、中用量群、低用量群、CTX群、モデル群である。
図15】C310−6抗Lewis腫瘍実験におけるマウス正味体重平均変化量(g)概略図であり、図中、順に高用量群、中用量群、低用量群、CTX群、モデル群、ブランク群である。
図16】C310−6抗Lewis腫瘍実験における治療期間のマウス体重変化状況概略図である。
図17】C310−6抗Lewis腫瘍実験における治療期間のマウス平均飲食量概略図である。
図18】実施例8におけるDAC 50順相クロマトグラフィー分離図であり、横座標は採取時間(min)、縦座標は信号強度(MV)、曲線はクロマトグラフィー曲線、折れ線は移動相配合濃度である。
図19】実施例8におけるDAC 150順相クロマトグラフィー分離図であり、横座標は採取時間(min)、縦座標は信号強度(MV)、曲線はクロマトグラフィー曲線、折れ線は移動相配合濃度である。
図20】実施例9におけるDAC 150順相クロマトグラフィー分離図であり、横座標は採取時間(min)、縦座標は信号強度(MV)、曲線はクロマトグラフィー曲線、折れ線は移動相配合濃度である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
当業者が本発明の技術手法をよりよく理解できるようにするため、次に、図面及び具体的な実施形態を合わせて、本発明の技術手法について更に詳細に説明する。別段の説明がある場合を除き、本発明で用いる全ての科学用語及び技術用語は、当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。
【0029】
用いる実験材料は、正源堂(天津)生物科技有限公司より購入したサナギタケ子実体、米国培養細胞系統保存機関(ATCC)より購入したヒト肝癌細胞Hep−g2、米国培養細胞系統保存機関(ATCC)より購入したヒト肺癌細胞A549、中国培養細胞系統保存機関より購入したH22肝癌腫瘍株(第4継代)、中国培養細胞系統保存機関より購入したlewis肺癌腫瘍株(第6継代)、北京バイタル・リバー実験動物技術有限公司より購入したKMマウス(18〜22g)(動物許可証番号:SCXK(京)2012−0001、合格証番号:11400700020779)、北京バイタル・リバー実験動物技術有限公司より購入したC57BL/6マウス(18−22g)(動物許可証番号:SCXK(京)2012−0001、合格証番号:11400700020779)を含む。
【0030】
用いる実験試薬は、天津コンコルド・テクノロジー有限公司より購入したクロマトグラフィー用n−ヘキサン、酢酸エチル、エタノール、ジクロロメタン、メタノール、Life Technologies Corporationより購入したF−12K培地、Life Technologies Corporationより購入したMEM培地、天津金世製薬有限公司より購入したシクロホスファミド錠、北京博潤莱特科技有限公司が小分けしたツイーン80を含む。
【0031】
用いる実験機器設備は、山東三清ステンレス設備有限公司より購入した超微粉砕機、Thermo社より購入したベンチトップ型冷凍遠心分離機、上海順儀実験設備有限公司より購入した30リットル漢方薬抽出タンク、上海一恒科学機器有限公司より購入した恒温送風乾燥器、上海亜容生化機器廠より購入したロータリーエバポレーター、江蘇漢邦科技有限公司より購入したDAC 50順相カラム、DAC 150順相カラム、北京振翔工貿有限責任公司より購入したKromasil順相カラム(250mm×4.6mm、5μm、100A)、ACEAバイオサイエンス(杭州)有限公司より購入したiCELLigenceリアルタイム・ラベルフリー細胞アナライザー、天美(中国)科学機器有限公司より購入した日立高速液体クロマトグラフ、日本株式会社理学公司より購入した単結晶X線回折装置を含む。
【実施例】
【0032】
実施例1
エルゴステロール系化合物(C310−6)の製造
【0033】
一.C310−6粗抽出物の取得
1.超微粉砕:
乾燥したサナギタケ子実体を原料とし、超微粉砕機に投入して超微粉砕を行い、粉砕の全過程で、超微破砕機内部冷却液として5℃の水を用いた。超微粉砕の時間は20分とし、超微粉を得た。
【0034】
2.熱水抽出:
超微粉に対して熱水抽出を行い、3回連続で抽出し、1回の熱水抽出時間は70分(100度まで加熱し、水を40分沸騰させた後、30分加熱を継続)とした。具体的には次のとおりである。
【0035】
第1回熱水抽出:超微粉3kgを超純水24Lに加え、材料液が均一になり明らかな塊状物がなくなるまで充分に撹拌し、30リットル漢方薬抽出タンクで70分熱水抽出し、熱水抽出の終了後、1L遠沈管に小分けして平衡化し、室温まで冷却した後、25℃、6000rpmで30min遠心分離し、沈殿物を収集した。
【0036】
第2回熱水抽出:第1回熱水抽出の沈殿物を超純水12Lに加え、材料液が均一になり明らかな塊状物がなくなるまで充分に撹拌し、30リットル漢方薬抽出タンクで70min熱水抽出し、熱水抽出の終了後、第1回熱水抽出の方法で処理し、沈殿物を収集した。
【0037】
第3回熱水抽出:第2回熱水抽出の沈殿物を超純水9Lに加え、材料液が均一になり明らかな塊状物がなくなるまで充分に撹拌し、30リットル漢方薬抽出タンクで70分熱水抽出し、熱水抽出の終了後、第1回熱水抽出の方法で処理し、沈殿物を収集した。沈殿物を60℃恒温送風乾燥器に移して乾燥させた後、真空乾燥した。
【0038】
3.有機試薬抽出:
乾燥した沈殿物を、粉砕機で粉砕し、1:5(w/v)で有機試薬を加えた。有機試薬は、50%のアセトン−エタノール溶液とした。充分に撹拌して均一に混ぜ、食品用ラップフィルムで口を封じ、一晩浸漬抽出し、上澄液を収集した。上澄液を6000rpmで30min遠心分離し、上澄を収集した。上澄をロータリーエバポレーターで濃縮した後、60℃恒温送風乾燥器に移して乾燥させ、C310−6粗抽出物を得た。
【0039】
二.C310−6中間物の取得
1.DAC 50実験:
C310−6粗抽出物を移動相で完全に溶解させ、50mg/mLの溶液に調製し、液体DAC 50順相カラム(250mm×50mm、10μm、100Å)を作製して分離した。検出波長は260nmとし、A、B二元移動相系を用いて溶出分離した。移動相A及び移動相Bは、それぞれn−ヘキサン及び酢酸エチルとし、溶出方法は、100%n−ヘキサン-100%酢酸エチル60分勾配溶出であり、流速は80mL/minとし、試料注入量20mLとした。クロマトグラムは、図18を参照。図18における第10号ピークを収集し、乾燥させた後、C310−6中間物成分を得た。
【0040】
2.DAC 150まで拡大する:
C310−6粗抽出物を移動相で完全に溶解させ、50mg/mLの溶液に調製し、分取液体DAC 150順相カラム(250mm×150mm、10μm、100Å)で分離した。検出波長は260nmとし、A、B二元移動相系を用いて溶出分離した。移動相A及び移動相Bは、それぞれn−ヘキサン及び酢酸エチルとし、溶出方法は、100%n−ヘキサン-100%酢酸エチル60分勾配溶出であり、流速は700mL/minとし、試料注入量180mLとした。クロマトグラムは、図19を参照。図19における第10号ピークを収集し、乾燥させた後、C310−6中間物成分を得た。
【0041】
三.C310−6の取得
C310−6中間物成分を移動相で完全に溶解させ、33mg/mLの溶液に調製し、分取液体DAC 150順相カラム(250mm×150mm、10μm、100Å)で分離した。検出波長は260nmとし、A、B二元移動相系を用いて溶出分離した。移動相A及び移動相Bは、n−ヘキサン及び酢酸エチルの組み合わせを用い、溶出方法は、100%n−ヘキサン-100%酢酸エチル180分勾配溶出であり、流速は700mL/minとし、試料注入量300mLとした。クロマトグラムは、図20を参照。図20における第6号ピークを収集し、乾燥させた後、成分C310−6を得た。7.2gと秤量した。
【0042】
また、実施例1の具体的な操作を参照し、明細書の技術手法の部分のエルゴステロール系化合物の製造方法及び公知の常識により製造しても、当業者は同様にエルゴステロール系化合物(C310−6)を取得することができる。
【0043】
実施例2
エルゴステロール系化合物(C310−6)結晶の製造
【0044】
実施例1で得られたエルゴステロール系化合物C310−6を150mg秤取し、3mlの良性溶媒を加えた。良性溶媒は50%n−ヘキサン−テトラヒドロフラン溶液とした。16℃の条件下に置き自然揮発させ、保温静止し、晶析し、溶液が1/3まで揮発したときに、底部の結晶をすくい取り、単結晶を得た。得られた単結晶を吸引ろ過し、−20℃のn−ヘキサンで洗浄し、洗浄後、ステロール系化合物(3R,9R,10S,13S,14S,17S)−17−((2S,5R,E)−5,6−ジメチルヘプト−3−エン−2−イル)−10,13−ジメチル−2,3,4,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタジエン[α]フェナントレン−3−オール)の単結晶をX線単結晶回折分析に直接用いた。
【0045】
また、実施例2の具体的な操作を参照し、明細書の技術手法の部分のエルゴステロール系化合物結晶の製造方法及び公知の常識により製造しても、当業者は同様にエルゴステロール系化合物(C310−6)結晶を取得することができる。
【0046】
実施例3
C310−6構造の確認
【0047】
1.HPLCによる純度分析:
C310−6成分を50%のn−ヘキサン−エタノール溶液で全て溶解させ、5mg/mLの溶液に調製し、HPLCで純度分析を行った。Kromasil順相カラム(250mm×4.6mm、5μm、100Å)、検出波長260nmで、検出条件は、移動相がn−ヘキサン及びエタノールであり、100%n−ヘキサン-100%エタノールで30分勾配溶出し、流速は1mL/分とし、試料注入量:20μL、温度30℃で、高速液体検出純度は99%に達した。HPLCクロマトグラムは図1を参照。
【0048】
2.マススペクトル分析:
C310−6に対して電子衝撃マススペクトル(EI−MS)分析を行った。Varian 450−GC、瀚盟生物技術(天津)有限公司、m/z;396.4[M+H]。分子式はC2844Oを示した。マススペクトルは図2を参照。
【0049】
3.赤外スペクトル(IR)分析:
C310−6に対して赤外スペクトル分析を行った。フーリエ変換赤外分光光度計,瀚盟生物技術(天津)有限公司、cm−1:3841.3、3752.92、3736.85、3435.27、3042.7、2954.66、2870.84、2796.63、2346.49、1655.01、1458.92、1382.59、1369.26、1325.71、1239.89、1192.49、1158.4、1111.32、1055.93、1038.91、983.23、968.07、946.85、935.01、873.5、834.19、802.11、615.46、603.4。赤外スペクトルは図3を参照。
【0050】
4.核磁気共鳴分析:
C310−6に対して、それぞれBruker A.G AVIII 600PLUS、瀚盟生物技術(天津)有限公司を行った。核磁気共鳴スペクトルは図4に示す通りであった。H−NMR、13C−NMR、HMBCスペクトルに基づき得られたC310−6のNMRデータは、表1に示す通りであった。
【0051】
【表1】
【0052】
5.結晶構造の測定:
C310−6を洗浄後に乾燥してX線単結晶回折装置分析に直接用いた。X線単結晶回折装置は、天津大学−国家工業結晶工程技術研究センターが提供した。実施例4の寸法が0.25×0.20×0.15mmのステロール系化合物、すなわち、(3R,9R,10S,13S,14S,17S)−17−((2S,5R,E)−5,6−ジメチルヘプト−3−エン−2−イル)−10,13−ジメチル−2,3,4,9,10,11,12,13,14,15,16,17−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタジエン[α]フェナントレン−3−オール)の単結晶を単結晶X線回折装置に取り、黒鉛単色化Mo−Kα線(λ=0.71073 A)を用いてω−θ走査方式で3.22°≦2θ≦25.50°範囲内で21387個の回折データを収集し、そのうち独立回折点9082個(R(int)=0.1150)であった。収集したデータを、Lp因子及び経験で吸収補正した。直接法を用いて、数回のフーリエ合成を経て、全ての水素原子を探し出した。全ての水素原子の座標は、幾何水素添加法を用いて得られた。全ての非水素原子の座標及びその各項の異性温度因子は、完全行列最小二乗法を用いて修飾した。全ての構造計算作業は、SHELX−97プログラムを用いて行い、これによりC310−6の分子構造がC2844Oであることが得られた。具体的なデータは、以下の表2〜表4に記載の通りであり、構造図は図5に示す通りである。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
実施例4
新規化合物C310−6の細胞活性実験
【0057】
(一)ヒト肝癌細胞Hep−g2実験:
1.ACEAバイオサイエンス(杭州)有限公司製の8ウェル型プレート(E−Plate L8)をiCELLigenceリアルタイムラベルフリー細胞アナライザーと組み合わせ、各ウェルに150ulの完全F−12K培地を加え、37℃、5%COの培養器に置き、背景データを40〜130の間に調整した。実施例1の化合物C310−6をジメチルスルホキシドで100mg/ml、50mg/ml、25mg/ml、12.5mg/ml、6.3mg/ml、3.1mg/ml、1.6mg/mlに完全に溶解し、更に完全F−12K培地で10mg/ml、5mg/ml、2.5mg/ml、1.25mg/ml、0.63mg/ml、0.31mg/ml、0.16mg/ml作業液に希釈し、培養したヒト肝癌細胞Hep−g2をパンクレアチンで消化し、4×10/mlの活細胞懸濁液に希釈し、8ウェル型プレートに接種し、各ウェル345ulとし、C310−6溶液5ulを加え、最終濃度を100μg/ml、50μg/ml、25μg/ml、12.5μg/ml、6.3μg/ml、3.1μg/ml、1.6μg/mlにし、対照ウェルに5ulの1‰ジメチルスルホキシドの完全F−12K培地を加え、37℃、5%COの培地に置いて48時間培養した。
【0058】
具体的な薬の添加方法は表5に示すとおりである。
【0059】
【表5】
【0060】
異なる濃度のC310−6でヒト肝癌細胞Hep−g2の成長を抑制するリアルタイムデータ(48時間)は図6に示す通りである。
【0061】
2.MTT法
a.50ml、0.01mol/L、PH=7.45のPBSでMTT250mgを溶解し、最終濃度5mg/mlとし、ろ過除菌し、小分けした後−20℃で遮光保存した。
b.単細胞株懸濁液を調製し、96ウェル型プレートに接種し、F−12K基礎培地で細胞を4×10/mlまで希釈し、各ウェルに希釈した細胞を100ul加え、37℃、5%COで、飽和温度で20時間培養し、各群4個の複製試料とした。
c.培地を除去し、新しく調製した培地を除去し、一連の濃度で抗癌剤(C310−6)を調製し、溶解し、各ウェル100ulとし、48時間培養した。
d.各ウェルに5mg/mlのMTT 20ulを加え、4時間培養した。
e.ウェル内の培地を吸い出し(できる限り完全に)、DMSO溶液(150ul/ウェル)を加え、10分間振とうし、結晶物を十分に溶解した。
f.マイクロプレートリーダーで各ウェルのOD値を検出し、λ=490nmであった。
g.細胞増殖曲線図を作成し、IC50値14.152μg/mlが求められた。このことは、この化合物が非常に良好な抗ヒト肝癌Hep−g2の活性を有することを示している。
【0062】
(二)ヒト肺癌細胞A549実験:
1.ACEAバイオサイエンス(杭州)有限公司製の8ウェル型プレート(E−Plate L8)をiCELLigenceリアルタイムラベルフリー細胞アナライザーと組み合わせ、各ウェルに150ulの完全MEM培地を加え、37℃、5%COの培養器に置き、背景データを40〜130の間に調整した。実施例1の化合物C310−6をジメチルスルホキシドで100mg/ml、50mg/ml、25mg/ml、12.5mg/ml、6.3mg/ml、3.1mg/ml、1.6mg/mlに完全に溶解し、さらに完全MEM培地で10mg/ml、5mg/ml、2.5mg/ml、1.25mg/ml、0.63mg/ml、0.31mg/ml、0.16mg/ml作業液に希釈し、培養したヒト肺癌細胞A549をパンクレアチンで消化し、2×10/mlの活細胞懸濁液に希釈し、8ウェル型プレートに接種し、各ウェル345ulとし、C310−6溶液5ulを加え、最終濃度を100μg/ml、50μg/ml、25μg/ml、12.5μg/ml、6.3μg/ml、3.1μg/ml、1.6μg/mlにし、対照ウェルに5ulの1‰ジメチルスルホキシドの完全MEM培地を加え、37℃、5%COの培地に置いて48時間培養した。
【0063】
具体的な薬の添加方法は表6に示すとおりである。
【0064】
【表6】
【0065】
異なる濃度のC310−6でヒト肺癌細胞A549の成長を抑制するリアルタイムデータ(48時間)は図7に示すとおりである。
【0066】
2.MTT法
a.50ml、0.01mol/L、pH=7.45のPBSでMTT250mgを溶解し、最終濃度5mg/mlとし、ろ過除菌し、小分けした後−20℃で遮光保存した。
b.単細胞株懸濁液を調製し、96ウェル型プレートに接種し、MEM基礎培地で細胞を3×10/mlまで希釈し、各ウェルに希釈した細胞を100ul加え、37℃、5%COで、飽和温度で20時間培養し、各群4個の複製試料とした。
c.培地を除去し、新しく調製した培地を除去し、一連の濃度で抗癌剤(C310−6)を調製し、溶解し、各ウェル100ulとし、48時間培養した。
d.各ウェルに5mg/mlのMTT 20ulを加え、4時間培養した。
e.ウェル内の培地を吸い出し(できる限り完全に)、DMSO溶液(150ul/ウェル)を加え、10分間振とうし、結晶物を十分に溶解した。
f.マイクロプレートリーダーで各ウェルのOD値を検出し、λ=490nmであった。
g.細胞増殖曲線図を作成し、IC50値15.727μg/mlが求められた。このことは、この化合物が非常に良好な抗ヒト肺癌A549の活性を有することを示している。
【0067】
実施例5
新規化合物C310−6の動物実験
【0068】
(一)C310−6抗マウスH22腫瘍実験
この実験の目的は、H22癌マウスモデルを用いて5種類の混合物の抗肝癌腫瘍作用について考察することである。
【0069】
具体的な手順は次のとおりである。
【0070】
1.マウスH22肝癌モデルの確立
腫瘍を接種して8〜13日の状態が良好な担癌マウスを頸椎脱臼により安楽死させ、体表をアルコールで消毒し、無菌(クリーンベンチ)環境でマウス腫瘍を剥離し、生理食塩水を入れた滅菌シャーレに入れ、小さな塊に切り、小さな塊の腫瘍をホモジナイザーに入れ、体積比1:3前後で生理食塩水を加えてすりつぶし、ホモジネートを50ml滅菌遠沈管に入れ、使用に備えた。1ml注射器でKMマウス右腋下に0.2ml注射接種し、腫瘍細胞懸濁液の製造は、いずれも無菌条件で(クリーンベンチで)行った。腫瘍の取り出しから腫瘍の接種完了までは60分以内に行った。
【0071】
2.医薬品製造方法
C310−6胃ゾンデ経口投与剤:一定重量のC310−6試料を乳鉢に秤取し、一定量の溶媒体積2%ツイーン−80を加え、充分に研磨した後、一定量体積の生理食塩水を加え、均等に混ぜた後、濃度24mg/ml、8mg/ml、2.7mg/mlに調製し、使用に備えた。
【0072】
シクロホスファミド胃ゾンデ経口投与剤:シクロホスファミド錠の糖衣を除去した後、秤取し、一定重量を乳鉢に秤取し、一定量体積の生理食塩水を加え、充分に研磨し、均等に混ぜ、濃度3.4mg/mlに調製し、使用に備えた。
【0073】
3.割付け及び投与方法
60匹の試験マウスを計6群に分け、各群10匹、雌雄半分ずつとし、(1)C310−6低用量(27mg/kg)群、(2)C310−6中用量(80mg/kg)群、(3)C310−6高用量(240mg/kg)群、(4)シクロホスファミド群、(5)モデル群、(6)ブランク群に分け、以上各群は、モデル群及びブランク群を除き、腫瘍懸濁液を注射した後、いずれも1日1回投与し、1回1匹0.3mlとし、10日間連続で投与した。モデル群及びブランク群は、毎日等体積の2%ツイーン80水溶液を、10日連続胃ゾンデで経口投与した。
【0074】
4.観察指標
4.1 大体の状態
毎日、マウスの体重、飲食量を量って記録し、最後の1回は、腫瘍を除去した後のマウスの正味体重を計算した。
【0075】
4.2 腫瘍重量及び腫瘍抑制率
毎日マウス右腋下を観察し、最後の1回の投与の24時間後に、解剖して腫瘍組織を取り出し、腫瘍重量を秤取し、下記の公式で腫瘍成長抑制率を計算した。
[式1]
【0076】
4.3 肝組織重量及び癌の肝転移率
最後の1回の投与の24時間後に、解剖して肝組織を取り出し、肝組織重量を秤り、肝組織の変化の有無を観察し、肝癌転移があるマウスの数について統計をとった。
【0077】
5.データ統計
各群のマウスの対応するデータは、いずれも
[式2]

で表し、SPSSソフトウェアを用いて統計を行い、各群でone−way ANOVA検定を採用した。
【0078】
6.実験結果
表7、図8図12の実験結果から、C310−6は、投与量が240mg/kg、服用日数が10日であるときに、H22肝癌腫瘍モデルマウスと比較して有意差が認められ(P<0.05)、且つ用量が240mg/kg及び80mg/kgのときに、肝癌腫瘍に対して比較的高い抑制率(>40%)を有し、シクロホスファミド群は、モデル群と比較して有意差が認められ(P<0.05)、用量が240mg/kg及び80mg/kgのときに、シクロホスファミド群と比較して、腫瘍抑制率に有意差が認められないことがわかる。
【0079】
肝臓重量の面で比較すると、C310−6は、用量が80mg/kgのときに、マウス肝臓重量をシクロホスファミド群と比較して、極めて有意な差が認められ(P<0.01)、用量が27mg/kgのときに、マウス肝臓重量をシクロホスファミド群と比較して、有意差が認められ(P<0.05)、シクロホスファミド群をモデル群と比較して極めて有意な差が認められた(P<0.01)。
【0080】
正味体重の変化の面で比較すると、各投与群の体重の上昇幅はいずれも比較的小さく、且つシクロホスファミド群のマウスの正味体重の上昇幅が最も小さく、投与量が240mg/kgのときに、モデル群及びブランク群と比較して、いずれも有意差が認められた(P<0.05)。シクロホスファミド群与モデル群及びブランク群と比較して、いずれも極めて有意な差が認められた(P<0.01)。
【0081】
各群のマウスには、いずれも癌細胞肝転移現象が認められなかった。
【0082】
投与治療期間において、C310−6の各投与群のマウスの体重に、いずれも著しい上昇が認められ、その後、安定した状態が維持された。シクロホスファミド群は低体重状態が維持された。モデル群及びブランク群は、体重の上昇幅が他の群よりも大きかった。
【0083】
投与治療期間において、C310−6の各投与群のマウスの平均飲食量は、いずれも投与前期は安定が維持され、後期の飲食量は投与量に反比例した。シクロホスファミド群の飲食量は、比較的低レベルが一貫して保たれた。ブランク群及びモデル群の飲食量は、比較的高レベルが一貫して保たれた。
【0084】
【表7】
【0085】
総合すると、C310−6は、投与量が80mg/kg、服用量が10日間のときに、マウスH22肝癌腫瘍モデルに対して有意な有効性を有し(腫瘍抑制率41.1%)、その効果にシクロホスファミドとの有意差が認められず、且つシクロホスファミドと同じく、肝腫大を防止する効果を有する可能性があることが推測される。しかしながら、この投与量では、マウスの正味体重変化(腫瘍を除去した後の体重と初期体重との比較)は比較的小さく、シクロホスファミドの作用と相似し、個体の体重及び飲食量に対してある程度の抑制作用がある可能性があり、その抑制作用は、投与量と正比例の関係を有する可能性があることが推測される。投与量が240mg/kgのときに、その腫瘍抑制率(64.4%)は、ひいてはシクロホスファミド(腫瘍抑制率52.9%)よりも優れていた。また、今回の実験モデル群の平均腫瘍重量は比較的軽く(<1g)、実験の最終的な判断結果に対してある程度の影響を及ぼした可能性がある。
【0086】
(二)C310−6抗Lewis腫瘍実験
この実験の目的は、lewis癌マウスモデルを用いてC310−6の抗肺癌腫瘍作用について考察することである。
【0087】
実験手順は次のとおりである。
【0088】
1、マウスLewis肺癌担癌モデルの確立
腫瘍を接種して8〜13日の状態が良好な担癌マウスを頸椎脱臼により安楽死させ、体表をアルコールで消毒し、無菌(クリーンベンチ)環境でマウス腫瘍を剥離し、生理食塩水を入れた滅菌シャーレに入れ、小さな塊に切り、小さな塊の腫瘍をホモジナイザーに入れ、体積比1:3前後で生理食塩水を加えてすりつぶし、ホモジネートを50ml滅菌遠沈管に入れ、使用に備えた。1ml注射器でC57BL/6マウス右腋下に0.2ml注射接種し、腫瘍細胞懸濁液の製造は、いずれも無菌条件で(クリーンベンチで)行った。腫瘍腹水の取り出しから腫瘍の接種完了までは60分以内に行った。
【0089】
2.医薬品製造方法
C310−6胃ゾンデ経口投与剤:一定重量のC310−6試料を乳鉢に秤取し、一定量の溶媒体積2%ツイーン−80を加え、充分に研磨した後、一定量体積の生理食塩水を加え、均等に混ぜ、濃度24mg/ml、8mg/ml、2.7mg/mlに調製し、使用に備えた。
【0090】
シクロホスファミド胃ゾンデ経口投与剤:シクロホスファミド錠の糖衣を除去した後、秤取し、一定重量を乳鉢に秤取し、一定量体積の生理食塩水を加え、充分に研磨し、均等に混ぜ、濃度3.4mg/mlに調製し、使用に備えた。
【0091】
3.割付け及び投与方法
60匹の実験マウスを計6群に分け、各群10匹,雌雄半分ずつとし、(1)C310−6低用量(27mg/kg)群、(2)C310−6中用量(80mg/kg)群、(3)C310−6高用量(240mg/kg)群、(4)シクロホスファミド群、(5)モデル群、(6)ブランク群に分け、以上は、ブランク群及びモデル群を除き、その他の各群は、腫瘍懸濁液を注射した後、いずれも1日1回投与し、1回1匹0.2mlとし、10日間連続で投与した。ブランク群及びモデル群は、同じ投与時刻及び投与時間で胃ゾンデにより2%ツイーン−80水溶液を投与し、10日間連続で投与した。
【0092】
4.観察指標
4.1 大体の状態
毎日、マウスの体重、飲食量を量って記録し、最後の1回は、腫瘍を除去した後のマウスの正味体重を計算した。
【0093】
4.2 腫瘍重量及び腫瘍抑制率
毎日マウス右腋下を観察し、最後の1回の投与の24h後に、解剖して腫瘍組織を取り出し、腫瘍重量を秤取し、下記の公式で腫瘍成長抑制率を計算した。
[式3]
【0094】
4.3 肺組織重量及び癌の肺転移率
最後の1回の投与の24時間後に、解剖して肺組織を取り出し、肺組織重量を秤り、肺組織の変化の有無を観察し、肺癌転移があるマウスの数について統計をとった。
【0095】
5.データ統計
各群のマウスの対応するデータは、いずれも表で示し、SPSSソフトウェアを用いて統計を行い、各群でone−way ANOVA検定を採用した。
【0096】
6.実験結果
表8、図13図17の実験結果から、C310−6は、投与量が240mg/kg、服用日数が10日であるときに、Lewis肺癌腫瘍モデルマウスと比較して極めて有意な差が認められ(P<0.01)、この用量は、シクロホスファミド群と比較して、有意差が認められなかったことがわかる。
【0097】
肺転移の面では、各群でいずれも20%−50%の肺転移現象が認められたが、統計学的有意差は認められなかった。
【0098】
正味体重の変化の面では、C310−6の各投与群及びシクロホスファミド群で、いずれも体重低下現象が認められ、且つ各群は、モデル群及びブランク群と比較して、いずれも極めて有意な差が認められた(P<0.01)。
【0099】
投与治療期間において、C310−6の各投与群のマウスの体重に、いずれも先に低下が認められた後、著しく上昇し、その後、安定した状態が維持された。シクロホスファミド群は、先に低下した後、低体重状態が維持された。モデル群及びブランク群は、著しい上昇の後、一定の体重レベルが維持された。
【0100】
投与治療期間に、C310−6の各投与群のマウスの平均飲食量は、いずれも投与中期が比較的高く、初期と末期が比較的低かった。シクロホスファミド群の飲食量は、比較的低いレベルが一貫して保たれた。ブランク群の飲食量は、比較的高いレベルが一貫して保たれた。モデル群では、飲食量が徐々に減少した。
【0101】
【表8】
【0102】
総合すると、C310−6は、投与量が240mg/kg、服用量が10日間のときに、マウスLewis肺癌モデルに対して比較的良好な有効性を有する。服用個体に体重低下現象が現れることがあるが、引き起こされる有害反応の強度はシクロホスファミドよりも小さいことが推測される。
【0103】
本発明のエルゴステロール系化合物及び/又はエルゴステロール系化合物結晶は、実験による検証の結果、抗癌活性を有し、in vitro細胞活性レベルで、リアルタイム・ラベルフリー細胞アナライザー及びMTT法を用いてこの化合物に対して活性検出を行い、実験の結果、この化合物は、肺癌及び肝癌細胞の成長を著しく抑制する活性を有することが示され、動物全体レベルでも、実験の結果、この化合物は著しい抗肺癌活性を示すことがわかる。そのため、この化合物は、医薬品賦形剤と、臨床使用に適した抗癌剤を製造することができる。
【0104】
前記具体的な実施形態は、このエルゴステロール系化合物、並びにその製造方法及び使用について詳細に記述したものであり、説明的なものであり、限定的なものではなく、その限定範囲に基づき若干の実施例を列挙することができるため、本発明の全体的な主旨を逸脱しない変更及び修正は、本発明の保護範囲内に属すものとする。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図4(d)】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20