特許第6170262号(P6170262)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6170262
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】災害時避難用シェルター
(51)【国際特許分類】
   B63C 9/06 20060101AFI20170713BHJP
   B63J 2/04 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   B63C9/06
   B63J2/04
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-1096(P2017-1096)
(22)【出願日】2017年1月6日
【審査請求日】2017年1月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504465309
【氏名又は名称】株式会社小野田産業
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野田 良作
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−208591(JP,A)
【文献】 特開2014−061737(JP,A)
【文献】 特開2015−051732(JP,A)
【文献】 特開2015−217932(JP,A)
【文献】 特開2006−158874(JP,A)
【文献】 特開2014−104778(JP,A)
【文献】 特開2013−199259(JP,A)
【文献】 特開2015−105090(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3123161(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3190619(JP,U)
【文献】 特開2013−035541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 9/06
B63J 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡スチロールで形成され、屋根部と、扉のある側壁部と、床部と、腰掛け部と、中央柱と、からなるシェルター本体と、
ソーラーパネルにより充電可能なバッテリーと、
前記バッテリーで駆動される赤色灯及び室内灯と、
前記中央柱に取り付けられる手摺りと、
前記床部を貫通し、外側底部に開口する排出孔と、
前記腰掛け部の下に配列され、飲料水の入った複数のペットボトルと、
が備えられ、
浮遊時、前記床部の発泡スチロールの浮力により、シェルター本体の沈み込みの深さが前記床部の厚さを超えず、室内に入った海水が、自重により前記排出孔から外部に排出され、
通常時は、前記シェルター本体の外部に、空気洗浄機またはコンプレッサーが設けられ、前記排出孔の一端から、洗浄された空気または圧縮空気が室内に送り込まれることを特徴とする災害時避難用シェルター。
【請求項2】
前記シェルター本体の周囲に、複数の浮き袋が設けられることを特徴とする請求項1に記載の災害時避難用シェルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時避難用シェルターに係り、より詳しくは、床部を貫通して外部に開口する排出孔を備えた浮遊型の災害時避難用シェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外側が鉄板からなり、内側壁が発泡スチロールの浮遊型シェルターが示される。底部には、安定して浮くよう重心調整板がある。特許文献2には、津波対応の防災用シェルターが示される。このシェルターは、卵型の中空構造で、底部には浮遊姿勢安定のための水タンク(バラスト)がある。しかしながら、例えば、外壁が損傷して内部に水が浸入するような場合、海水が溜まる一方で排除できず、シェルターが浮くとしても避難者が水浸しとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−61737号公報
【特許文献2】特開2004−322939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、浸入した海水を外部に排出できる使い勝手のよい災害時避難用シェルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による災害時避難用シェルターは、発泡スチロールで形成され、屋根部と、扉のある側壁部と、床部と、腰掛け部と、中央柱と、からなるシェルター本体と、ソーラーパネルにより充電可能なバッテリーと、前記バッテリーで駆動される赤色灯及び室内灯と、前記中央柱に取り付けられる手摺りと、前記床部を貫通し、外側底部に開口する排出孔と、前記腰掛け部の下に配列され、飲料水の入った複数のペットボトルと、が備えられ、浮遊時、前記床部の発泡スチロールの浮力により、シェルター本体の沈み込みの深さが前記床部の厚さを超えず、室内に入った海水が、自重により前記排出孔から外部に排出され、通常時は、前記シェルター本体の外部に、空気洗浄機またはコンプレッサーが設けられ、前記排出孔の一端から、洗浄された空気または圧縮空気が室内に送り込まれることを特徴とする。
【0007】
前記シェルター本体の周囲に、複数の浮き袋が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の災害時避難用シェルターによれば、
(1)床を貫通し、外部に開口する排出孔を設けたので、また床部の発泡スチロールの浮力により、沈み込み深さが床部の高さを超えないので、室内に入った海水が自重により排出孔から外部に排出できる。浸水してもすぐに海水が引ける。
(2)中央柱を設けたので、発泡スチロールの殻構造でありながら、特に上から外力に強い構造にできる。
(3)バッテリーで駆動される赤色灯を設けたので、夜間の津波で流されても、救助隊にシェルターの位置を知らせることができる。また、室内灯により、夜間の内部の照明を確保できる。
(4)手摺りを設けたので、シェルター本体が揺れても安定して着座できる。
(5)腰掛け部の下に、飲料水入りの複数のペットボトルを配列したので、錘をシェルター本体の底部に設けなくても済む。また、漂流時の飲料水にできる。
(6)通常時は、災害時の食料の保管庫として使用できる。
【0009】
外部に空気洗浄機を設け、シェルター本体底部の給気口から室内に空気を送り込むようにしたので、室内の気圧を外部より高くでき、扉の隙間などから火山灰が室内に入り込まないようにできる。つまり、災害時避難用シェルターを火山灰対応ができる装置としても使用できる。外部にコンプレッサーを設けて、シェルター本体底部の給気口から室内に空気を送り込むようにしたので、シェルター本体を酸素カプセルとして使用できる。災害時避難用シェルターを通常状態で有効活用できる。
【0010】
シェルター本体の周囲に複数の浮き袋を設けたので、浮遊時、避難者が室内を移動しても浮き袋の浮力によりシェルター本体が傾かないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による災害時避難用シェルターの正面図である。(実施例1)
図2】本発明による災害時避難用シェルターの平面図である。(実施例1)
図3図2のA−A断面図である。(実施例1)
図4】災害時避難用シェルターの内部を示す図である。
図5】浮遊状態の災害時避難用シェルターの断面図である。
図6】基礎の上に設置された災害時避難用シェルターの例である。
図7】空気清浄器またはコンプレッサーを接続する例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明による災害時避難用シェルターを説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明による災害時避難用シェルター100の正面図である。災害時避難用シェルター100は、シェルター本体1が発泡スチロールで形成される。正面視では、シェルター本体1の屋根部2と、扉18のある側壁部3が見える。屋根部2には赤色灯7とソーラーパネル13が設けられる。ソーラーパネル13は、太陽光により発電し、内部に設けられたバッテリー20を充電する。ソーラーパネル13が機能しない雨の日のために、バッテリー充電用の給電プラグ12が用意されている。家庭用電源に接続してバッテリー20を充電できる。
【0014】
図2は、本発明による災害時避難用シェルター100の平面図である。屋根部2には、赤色灯7とソーラーパネル13が設けられる。赤色灯7は、夜間に津波で流されても、救助隊にシェルターの位置を知らせることができる。扉18は、正面と左側面の2箇所に設けた。これによれば、緊急の場合、複数の避難者がすみやかにシェルター本体1の内部(室内)に避難できる。扉18はアクリル板で形成した。屋根部2や側壁部3は発泡スチロールであるから光を通さないが、扉18をアクリル板としたので、日中、室内に外の光を取り入れることができる。本実施例では、災害時避難用シェルター100の寸法は、一例として、直径が約2.3m、高さが約1.9mとした。室内には5人を収容できる。
【0015】
図3は、図2のA−A断面図である。シェルター本体1は、屋根部2と、側壁部3と、床部4と、腰掛け部5と、中央柱6と、からなる。いずれも発泡スチロールで形成される。発泡スチロールは、密度40倍のものを使用した。これによれば、避難者が側壁にぶつかっても柔らかさがあるので怪我をしない。発泡スチロールの外側は、紫外線硬化塗料を塗布し、フィルムシートで覆った。屋根部2と側壁部3の厚さは約12cmである。床部4は、厚さが約20cmで、床部4で浮力が得られるようにした。中央柱6は、直径が約30cmで、中心には赤色灯7への配線を行なうパイプ22が取り付けられる。中央柱6には、床部4から70〜80cmの高さの位置に、手摺り14が円環状に掛け渡される。手でつかまることができるので、避難者は、災害時避難用シェルター100が揺れても安定して着座できる。室内の天井には、バッテリー20で駆動されるLED(発光ダイオード)の室内灯8が設けられる。
【0016】
扉18は、この寸法に限らないが、高さが約75cm、横が65cmで、腰掛け部5の高さにある。側壁部3の屋根部2に近い位置には、換気孔16が設けられる。一方、床部4には、複数の排出孔9が設けられ、床部4を貫通して外側底部に開口している。排出孔9は、一端が室内側に開口し、他端が凹部である凹部11を通って外部に開口している。床部4には、トイレ用の排出口10も設けた。
【0017】
図4は、災害時避難用シェルター100の内部を示す図である。シェルター本体1の室内には、5人が避難できる。腰掛け部5の下には、飲料水の入った2リットルのペットボトル15を60本ほど格納できる。ペットボトル15をバラスト水の代わりにした。トイレは、おむつや尿瓶で対応できるが、長時間の漂流となった場合に備えて、床部5に排出口10を設けた。排出口10にはカーテン26が設けられる。中央柱6には円環状に手摺り14が設けられる。床部5には、室内に浸入した海水を外部に排出するため、排出孔9が4個設けられている。扉18などが破損して室内に海水が浸入しても、海水は、排出孔9(または排出口10)から外側底部に流れ出る。非常食25も用意できる。バッテリー20が備えられるので、室内灯8や赤色灯7を点灯できる。携帯電話の充電プラグも用意されることが好ましい。救命胴衣や、酸素ボンベなども備えておくと役に立つ。災害時避難用シェルター100の周囲には複数の浮袋24を設置した。これによれば、室内で避難者が移動して、重心が偏っても災害時避難用シェルター100が傾くことを防止できる。浮袋24は、この実施例では、前後左右の4箇所としたが、周囲3箇所に設けるとしてもよい。
【0018】
図5は、浮遊状態の災害時避難用シェルター100の断面図である。床部4は、厚さ(t)が約20cmで、床部4で浮力が得られるようにした。すなわち20cmを越えて沈み込まないようにした。その計算は次のとおりである。
(a)床部4の体積は、円筒体の体積Aから排出口10の体積Bを引いたもので、約0.82(m)と算出できる。円筒体の体積Aは、1.15(m)×1.15(m)×3.14×0.2(m)から約0.83(m)となり、排出口10の体積Bは、約0.01(m)となるので、0.82(m)を得る。
(b)よって、床部4がすべて沈む場合は、820kg(=0.82(m)×1000kg)の浮力がある。床部4の体積と等しい水の重量を浮力とした。
(c)これに対して、避難者は5人×70kgで約350kg、2リットルのペットボトルが60本で約120kg、シェルター本体の重量は、詳しい計算は省略するが、体積約3.2(m)に比重0.025(40倍の発泡スチロールを使用)を掛けたもので、約80kgと算出される。よって総重量は、約550kg(=350kg+120kg+80kg)である。
(d)550kgは、820kgの67%であるから、床部4は、20cm全部は沈まず、約13cm沈む。このように、災害時避難用シェルター100は、床部4の浮力により、床部を超えるほど沈まないので、室内に入った海水27は、自重により排出孔(又は排出口)から外部に排出される。
【0019】
図6は、基礎17の上に設置された災害時避難用シェルターの例である。基礎17の中央に凸部21が設けられ、凹部11に嵌め込んでいる。これにより、通常時、災害時避難用シェルター100が横滑りすることはなく、周囲が海水で満たされるなら、災害時避難用シェルター100が浮上できる。
【0020】
図7は、空気清浄器23またはコンプレッサー19を接続する例である。空気清浄器23またはコンプレッサー19からの配管に設けられた給気口29が、凹部11に接続される。この場合、シェルター本体1の底部に配管を行なう都合上、災害時避難用シェルター100は、架台28の上に設置されることが望ましい。(1)空気洗浄機23を設け、シェルター本体1の底部の凹部11から室内に空気を送り込む場合、シェルター本体1の内部の気圧を外部より高くできる。そのため、扉18の隙間等から火山灰が室内に入り込まないようにできる。
(2)コンプレッサー19を設け、シェルター本体1の底部の凹部口11から室内に空気を送り込む場合、室内の気圧を約1.2気圧程度に高めることができる。すなわちコンプレッサーの吐出口に設けられた減圧弁を約1.2気圧に設定する。なお、シェルター本体1の排出口10や換気口16は、漏れがないようシールされるものとする。これによれば、災害時避難用シェルター100を酸素カプセルとして活用できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、災害時避難用シェルターとして好適である。
【符号の説明】
【0022】
1 シェルター本体
2 屋根部
3 側壁部
4 床部
5 腰掛け部
6 中央柱
7 赤色灯
8 室内灯
排出孔
10 排出口
11 凹部
12 給電プラグ
13 ソーラーパネル
14 手摺り
15 ペットボトル
16 換気口
17 基礎
18 扉
19 コンプレッサー
20 バッテリー
21 凸部
22 パイプ
23 空気洗浄機
24 浮き袋
25 非常食
26 カーテン
27 海水
28 架台
29 給気口
100 災害時波避難用シェルター
【要約】
【課題】浸入した海水を外部に排出できる使い勝手のよい災害時避難用シェルターを提供する。
【解決手段】発泡スチロールで形成され、屋根部と、扉のある側壁部と、床部と、腰掛け部と、中央柱と、からなるシェルター本体と、ソーラーパネルにより充電可能なバッテリーと、バッテリーで駆動される赤色灯及び室内灯と、中央柱に取り付けられる手摺りと、床部を貫通し、外部に開口する排出孔と、腰掛け部の下に配列され、飲料水の入った複数のペットボトルと、が備えられ、浮遊時、床部の発泡スチロールの浮力により、シェルター本体の沈み込みの深さが床部の厚さを超えず、室内に入った海水が、自重により排出孔から外部に排出される。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7