(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のポリカルボジイミド組成物は、1級イソシアネート基を有するポリイソシアネート(以下、単にポリイソシアネートと称する場合がある。)と、アルコール類との反応生成物である。
【0029】
1級イソシアネート基は、イソシアネート基(−NCO)が結合している炭素原子(C)に、水素原子(H)が2つ結合している1価の官能基(−CH
2NCO)と定義される。
【0030】
1級イソシアネート基を有するポリイソシアネートは、1級イソシアネート基を少なくとも1つ有していればよく、例えば、2級イソシアネート基、3級イソシアネート基などを有していてもよい。
【0031】
2級イソシアネート基は、イソシアネート基(−NCO)が結合している炭素原子(C)に、水素原子(H)が1つ結合している2価の官能基(−CHR-NCO(Rは置換基を示す。))と定義される。
【0032】
また、3級イソシアネート基は、イソシアネート基(−NCO)が結合している炭素原子(C)に、水素原子(H)が結合していない3価の官能基(−CR
1R
2−NCO(R
1およびR
2は同種または異種の置換基を示す。))と定義される。
【0033】
1級イソシアネート基を有するポリイソシアネートとしては、例えば、1級イソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネート、1級イソシアネート基を有する脂環族ポリイソシアネート、1級イソシアネート基を有する芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0034】
1級イソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネートは、1級イソシアネート基を有する鎖状(直鎖状または分岐鎖状:非環式)脂肪族ポリイソシアネートであって、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエート、へプタメチレンジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0035】
1級イソシアネート基を有する脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(水添XDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)などの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0036】
1級イソシアネート基を有する芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)などの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0037】
これら1級イソシアネート基を有するポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0038】
1級イソシアネート基を有するポリイソシアネートとして、耐光性、流動性および水分散性の観点から、好ましくは、1級イソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネート、1級イソシアネート基を有する脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、1級イソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0039】
1級イソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネートとして、入手容易性の観点から、好ましくは、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられ、より好ましくは、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)が挙げられる。
【0040】
1,5−ペンタメチレンジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートに比べて炭素数が少なく、分子量が小さい。そのため、同じ分子量のポリカルボジイミド組成物を製造する場合、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを用いると、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを用いる場合に比べ、ポリカルボジイミド組成物中のカルボジイミド基濃度を高くすることができる。その結果、低温速硬化性に優れたポリカルボジイミド組成物を得ることができ、さらに、各種物性(耐水性、耐薬品性など)に優れた樹脂硬化物(後述)を得ることができる。また、炭素数が奇数である1,5−ペンタメチレンジイソシアネートは、炭素数が偶数である1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートに比べ、奇数炭素数に由来する非晶構造によって結晶性が低いため、流動性および分散性に優れ、得られる樹脂硬化物(後述)の物性が向上すると考えられる。
【0041】
さらに、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを用いると、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを用いる場合に比べ、後述するウレトンイミン基の熱分解が起こりやすく、そのため、ポリカルボジイミド組成物を収率よく得ることができる。また、低い温度でもハンドリングできるため、ウレトンイミンの高分子量化を抑制できると考えられる。
【0042】
また、1級イソシアネート基を有するポリイソシアネートを2種類以上併用する場合には、好ましくは、1級イソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネートと、1級イソシアネート基を有する脂環族ポリイソシアネートとを併用する。
【0043】
1級イソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネートと、1級イソシアネート基を有する脂環族ポリイソシアネートとを併用すれば、脂環族ポリイソシアネートの反応性の低さに由来して貯蔵安定性およびポットライフの向上を図ることができ、かつ、脂肪族ポリイソシアネートの反応性の高さに由来して速硬化性の向上を図ることができる。すなわち、貯蔵安定性およびポットライフと、速硬化性とのバランスを図ることができる。
【0044】
1級イソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネートと、1級イソシアネート基を有する脂環族ポリイソシアネートとが併用される場合の併用割合は、1級イソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネート100質量部に対して、例えば、1級イソシアネート基を有する脂肪族ポリイソシアネートが、例えば、20質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、50質量部以下である。
【0045】
また、1級イソシアネート基を有するポリイソシアネートを2種類以上併用する場合、それらを混合するタイミングは、特に制限されず、後述する各工程(第1ウレタン化工程、カルボジイミド化工程および第2ウレタン化工程)のいずれであってもよい。
【0046】
具体的には、例えば、第1ウレタン化工程(後述)において、2種類以上のポリイソシアネートを混合して用いることができる。
【0047】
また、例えば、2種類以上のポリイソシアネートを個別にウレタン化(第1ウレタン化工程(後述))した後、カルボジイミド化工程(後述)において、それらウレタン化された2種類以上のポリイソシアネートを混合して用いることができる。
【0048】
また、例えば、2種類以上のポリイソシアネートを個別にウレタン化(第1ウレタン化工程(後述))およびカルボジイミド化(カルボジイミド化工程(後述))した後、第2ウレタン化工程(後述)において、それらウレタン化およびカルボジイミド化された2種類以上のポリイソシアネートを、混合して用いることができる。
【0049】
さらには、例えば、2種類以上のポリイソシアネートのうちの一部の種類をウレタン化(第1ウレタン化工程(後述))した後、そのウレタン化されたポリイソシアネートと、2種類以上のポリイソシアネートのうちの残りの種類のポリイソシアネート(ウレタン化されていないポリイソシアネート)とを混合し、カルボジイミド化工程(後述)に供することもできる。
【0050】
また、上記の方法は、ポリイソシアネートを2種類以上併用する場合に限定されず、ポリイソシアネートを単独使用する場合にも採用することができる。例えば、単独種類のポリイソシアネートの一部をウレタン化(第1ウレタン化工程(後述))した後、そのウレタン化されたポリイソシアネートと、単独種類のポリイソシアネートの残部(ウレタン化されていないポリイソシアネート)とを混合し、カルボジイミド化工程(後述)に供することもできる。
【0051】
アルコール類としては、例えば、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコール、および、その他のアルコール(すなわち、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有しないアルコール)が挙げられる。
【0052】
3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールとしては、例えば、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するポリオール、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するモノオールなどが挙げられる。
【0053】
3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するポリオールは、1分子中に3つ以上連続するオキシエチレン基と、2つ以上の水酸基とを併有する有機化合物であって、例えば、ポリオキシエチレンポリオールなどが挙げられる。
【0054】
ポリオキシエチレンポリオールは、例えば、低分子量ポリオールなどを開始剤として、オキシエチレン基の繰返し単位数が3以上となるように、エチレンオキサイドを付加反応させることにより、得ることができる。
【0055】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する分子量60以上500未満の化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,2−トリメチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、アルカン(C7〜20)ジオール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0056】
低分子量ポリオールとして、好ましくは、2価アルコールが挙げられる。
【0057】
なお、これら低分子量ポリオールにエチレンオキサイドを付加反応させる方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
【0058】
また、ポリオキシエチレンポリオールの官能基数(水酸基数)は、開始剤(低分子量ポリオールなど)の官能基数(水酸基の数)と同じであり、例えば、開始剤として2価アルコールを用いる場合には、ポリオキシエチレンポリオールとして、ポリオキシエチレングリコールが得られる。
【0059】
これら3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0060】
3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するポリオールとして、好ましくは、ポリオキシエチレングリコールが挙げられる。
【0061】
3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するモノオールは、1分子中に3つ以上連続するオキシエチレン基と、1つの水酸基とを併有する有機化合物であって、例えば、片末端封止ポリオキシエチレングリコールが挙げられる。
【0062】
片末端封止ポリオキシエチレングリコールは、ポリオキシエチレングリコールの片方の末端水酸基を、オキシアルキレン基により置換したポリエチレングリコールモノアルキルエーテルである。
【0063】
ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルにおいて、アルキル基の炭素数は、1以上であり、例えば、20以下、好ましくは、8以下、より好ましくは、6以下、さらに好ましくは、4以下、とりわけ好ましくは、2以下である。すなわち、片末端を封止するためのアルキル基として、メチル基、エチル基が挙げられる。そのようなポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとして、具体的には、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0064】
これら3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するモノオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0065】
これら3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0066】
3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールとして、好ましくは、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するモノオール、より好ましくは、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、さらに好ましくは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0067】
また、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールにおいて、オキシエチレン基の繰返し単位数は、3以上、好ましくは、5以上、より好ましくは、10以上であり、例えば、60以下、好ましくは、50以下である。
【0068】
オキシエチレン基の繰返し単位数が上記範囲であれば、合成時の安定性と、ポリカルボジイミド組成物の水分散性の向上を図ることができる。
【0069】
また、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールの分子量(数平均分子量)は、例えば、100以上、好ましくは、200以上、より好ましくは、300以上、さらに好ましくは、400以上であり、例えば、5000以下、好ましくは、3000以下、より好ましくは、2000以下、さらに好ましくは、1000以下である。
【0070】
3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールの分子量(数平均分子量)が上記範囲であれば、合成時の安定性と、ポリカルボジイミド組成物の水分散性の向上を図ることができる。
【0071】
その他のアルコールは、上記した3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールを除くアルコールであって、具体的には、分子中に3つ以上連続するオキシエチレン基を有していないアルコールである。換言すれば、その他のアルコールは、オキシエチレン基を含有していないか、または、3つ以上連続していないオキシエチレン基(例えば、2つ連続するオキシエチレン基、単独のオキシエチレン基など)を含有するアルコールである。
【0072】
その他のアルコールとして、具体的には、上記3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するポリオールを除くポリオール(以下、その他のポリオールと称する。)、上記3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するモノオールを除くモノオール(以下、その他のモノオールと称する。)などが挙げられる。
【0073】
その他のポリオールは、1分子中に3つ以上連続するオキシエチレン基を有しておらず、かつ、1分子中に2つ以上の水酸基を有するアルコールであって、例えば、デカンジオール(炭素数10)、ドデカンジオール(炭素数12)、テトラデカンジオール(炭素数14)、ヘキサデカンジオール(炭素数16)、オクタデカンジオール(炭素数18)、エイコサンジオール(炭素数20)などのオキシエチレン基を有さない脂肪族ポリオール、例えば、ジエチレングリコールなどのオキシエチレン基を1〜2つ有するエーテルポリオールなどが挙げられる。これらその他のポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0074】
その他のモノオールは、1分子中に3つ以上連続するオキシエチレン基を有しておらず、かつ、1分子中に1つの水酸基を有するアルコールであって、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、デカノール(炭素数10)、ラウリルアルコール(炭素数12)、セチルアルコール(炭素数14)、ステアリルアルコール(炭素数18)、オレイルアルコール(炭素数18)、エイコサノール(炭素数20)などのオキシエチレン基を有さない脂肪族モノオール、例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(別名カルビトール)などのオキシエチレン基を1〜2つ有するエーテルモノオール、例えば、フェノールおよびその誘導体、ベンジルアルコールおよびその誘導体、フェネチルアルコールおよびその誘導体、ナフトールおよびその誘導体などの芳香族アルコールなどが挙げられる。これらその他のモノオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0075】
その他のアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0076】
その他のアルコールとして、好ましくは、その他のモノオール、より好ましくは、オキシエチレン基を有さない脂肪族モノオール、オキシエチレン基を1〜2つ有するエーテルモノオールが挙げられ、水分散性の向上を図る観点から、さらに好ましくは、オキシエチレン基を1〜2つ有するエーテルモノオール、とりわけ好ましくは、1−メトキシ−2−プロパノールが挙げられる。
【0077】
これらアルコール類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0078】
アルコール類は、水分散性の向上を図る観点から、好ましくは、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールを含有し、水分散性と耐水性との両立の観点から、より好ましくは、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールと、その他のアルコールとを併有する。
【0079】
すなわち、アルコール類が、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールを含有していれば、親水性の向上を図ることができるため、ポリカルボジイミド組成物の水分散性の向上を図ることができ、水分散組成物(後述)を効率よく得ることができる。
【0080】
また、アルコール類が、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールを含有している場合、その3つ以上連続するオキシエチレン基の含有割合は、ポリカルボジイミド組成物に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、15質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、35質量%以下である。
【0081】
オキシエチレン基の含有割合が上記範囲であれば、ポリカルボジイミド組成物の低温速硬化性および水分散性の向上を図ることができ、また、耐水性に優れた樹脂硬化物(後述)を得ることができる。
【0082】
なお、上記オキシエチレン基の含有割合は、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールが有するオキシエチレン基の含有割合であって、その他のポリオールが含有するオキシエチレン基(例えば、オキシエチレン基を1〜2つ有するエーテルモノオール中のオキシエチレン基)は含まれない。
【0083】
また、3つ以上連続するオキシエチレン基の含有割合は、仕込み量から算出することができる。
【0084】
また、アルコール類が、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールと、その他のアルコールとを含有する場合、アルコール類の総モルに対して、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールの含有割合が、例えば、5モル%以上、好ましくは、12モル%以上であり、例えば、50モル%以下、好ましくは、48モル%以下である。また、その他のアルコールの含有割合が、例えば、50モル%以上、好ましくは、52モル%以上であり、例えば、95モル%以下、好ましくは、88モル%以下である。
【0085】
3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールと、その他のアルコールとの含有割合が上記範囲であれば、ポリカルボジイミド組成物の低温速硬化性および水分散性の向上を図ることができ、また、耐水性に優れた樹脂硬化物(後述)を得ることができる。
【0086】
一方、アルコール類は、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールを含有せず、その他のアルコールのみを含有することもできる。
【0087】
このような場合、親油性の向上を図ることができるため、ポリカルボジイミド組成物の有機溶媒に対する溶解性の向上を図ることができ、溶液組成物(後述)を効率よく得ることができる。
【0088】
そして、ポリカルボジイミド組成物は、上記のポリイソシアネートと上記のアルコール類とを所定の条件で反応させ、さらに、カルボジイミド化反応させることにより、得ることができる。
【0089】
以下において、ポリカルボジイミド組成物の製造方法について、詳述する。
【0090】
この方法では、まず、上記のポリイソシアネートと上記のアルコール類とをウレタン化反応させる(ウレタン化工程)。
【0091】
ウレタン化工程において、ポリイソシアネートとアルコール類との反応割合は、アルコール類の水酸基に対する、ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、2を超過し、好ましくは、3以上、より好ましくは、4以上であり、例えば、16以下、好ましくは、14以下、より好ましくは、10以下である。すなわち、ウレタン化工程では、好ましくは、水酸基に対してイソシアネート基が過剰となる割合で反応させる。
【0092】
ポリイソシアネートとアルコール類との反応割合が上記範囲内であれば、ポリカルボジイミド組成物の水分散性や低温速硬化性を図ることができる。
【0093】
また、この反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒を添加してもよい。
【0094】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0095】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート(ジラウリン酸ジブチル錫(IV))、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫系化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
【0096】
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
【0097】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0098】
なお、ウレタン化触媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0099】
また、ウレタン化工程における反応条件は、例えば、常圧および不活性ガス(例えば、窒素ガス)雰囲気下において、反応温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、60℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、3時間以上であり、例えば、50時間以下、好ましくは、40時間以下である。
【0100】
これにより、ポリイソシアネートのウレタン変性体(アルコール変性体)を得ることができる。なお、ポリイソシアネートのウレタン変性体(アルコール変性体)は、分子末端にイソシアネート基を有する。
【0101】
次いで、この方法では、上記のウレタン化工程における反応生成物を含む反応液を、カルボジイミド化触媒の存在下において加熱し、カルボジイミド化反応させる(カルボジイミド化工程)。
【0102】
カルボジイミド化触媒としては、特に制限されないが、例えば、トリアルキルリン酸エステル系化合物、フォスフォレンオキシド系化合物、フォスフォレンスルフィド系化合物、ホスフィンオキシド系化合物、ホスフィン系化合物などが挙げられる。
【0103】
トリアルキルリン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリオクチルホスフェートなどの炭素数3〜24のトリアルキルリン酸エステル系化合物などが挙げられる。
【0104】
フォスフォレンオキシド系化合物としては、例えば、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド(MPPO)、1−エチル−3−メチル−2−フォスフォレン−1−オキシド(EMPO)、1,3−ジメチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−メチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−エチル−2−フォスフォレン−1−オキシドおよびこれらの二重結合異性体などの炭素数4〜18のフォスフォレンオキシド系化合物などが挙げられる。
【0105】
フォスフォレンスルフィド系化合物としては、例えば、1−フェニル−2−フォスフォレン−1−スルフィドなどの炭素数4〜18のフォスフォレンスルフィド系化合物などが挙げられる。
【0106】
ホスフィンオキシド系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィンオキシド、トリトリルホスフィンオキシドなどの炭素数3〜21のホスフィンオキシド系化合物などが挙げられる。
【0107】
ホスフィン系化合物としては、例えば、ビス(オキサジフェニルホスフィノ)エタンなどの炭素数3〜30のホスフィン系化合物などが挙げられる。
【0108】
これらカルボジイミド化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0109】
カルボジイミド化触媒として、好ましくは、フォスフォレンオキシド系化合物が挙げられ、より好ましくは、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−エチル−3−メチル−2−フォスフォレン−1−オキシドが挙げられる。
【0110】
上記のカルボジイミド化触媒を用いれば、カルボジイミド化の活性を向上して、反応温度を低下させることができ、また、ウレトンイミン化などの副反応を抑制して、ポリカルボジイミド組成物を収率よく得ることができ、また、カルボジイミド基の含有量の向上を図ることができる。
【0111】
カルボジイミド化触媒として、耐水性に優れた樹脂硬化物(後述)を得る観点から、とりわけ好ましくは、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシドが挙げられる。
【0112】
カルボジイミド化触媒の配合割合は、ポリイソシアネート(ウレタン化工程において用いられたポリイソシアネート)100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
【0113】
また、カルボジイミド化工程における反応条件は、得られるポリカルボジイミド組成物のカルボジイミド基の含有割合が、後述する特定範囲となるように設定される。より具体的には、カルボジイミド化反応の進行を図り、ウレトンイミンの低減を図る観点から、常圧および不活性ガス(窒素ガスなど)雰囲気下において、反応温度が、例えば、125℃以上、好ましくは、130℃以上、より好ましくは、135℃以上であり、例えば、160℃以下、好ましくは、155℃以下、より好ましくは、155℃未満である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、3時間以上であり、例えば、50時間以下、好ましくは、40時間以下である。
【0114】
このような条件で反応させることにより、ウレタン化工程で得られた反応生成物(ポリイソシアネートのウレタン変性体)が、イソシアネート基を介して脱炭酸縮合し、効率よくカルボジイミド基を生成することができる。
【0115】
より具体的には、反応温度が上記下限以上であれば、生成したウレトンイミンがカルボジイミドとイソシアネート基に分解する反応を促進しつつ、カルボジイミド化反応を進行させることができる。上記下限未満の温度であると、この熱分解反応が非常に起こりにくくなり、ウレトンイミンの含有量が増加し、カルボジイミド基の含有率が低下する。また、ウレトンイミンの増加による分子量が増加し、反応液が固化する場合がある。一方、反応温度が上記上限以下であれば、重合ロスを低減することができる。上記上限温度を超えてしまうと、カルボジイミド化、ウレトンイミン化以外の重合反応が促進され、カルボジイミド基の含有量が低下するだけでなく、分子量増加によって反応液が固化しやすくなる。
【0116】
また、カルボジイミド化工程では、円滑にカルボジイミド化反応させ、また、脱炭酸縮合を促進する観点から、好ましくは、有機溶媒の存在下において、反応液を還流させる。すなわち、還流下において、カルボジイミド化反応させる。
【0117】
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル1,2−ジエトキシエタンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することもできる。
【0118】
有機溶媒として、好ましくは、還流時の温度が、上記した反応温度の範囲内である有機溶媒が挙げられる。
【0119】
そのような有機溶媒として、具体的には、キシレン、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0120】
有機溶媒の配合割合は、特に制限されないが、ポリイソシアネート(ウレタン化工程において用いられたポリイソシアネート)100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、100質量部以上であり、例えば、2000質量部以下、好ましくは、500質量部以下である。
【0121】
有機溶媒の存在下で反応液を還流させることにより、ウレトンイミンの分解反応を促進しつつ、円滑にカルボジイミド化反応させることができ、また、イソシアネート基のカルボジイミド化に伴って生じる炭酸ガスを脱離させることができるため、カルボジイミド化の促進を図ることができる。
【0122】
そして、このような方法によって、ウレタン基、カルボジイミド基およびウレトンイミン基を含有するポリカルボジイミド組成物が得られる。
【0123】
より具体的には、まず、ウレタン化工程において、ポリイソシアネートのイソシアネート基に由来するウレタン基が生成する。
【0124】
次いで、ウレタン化工程で得られた反応生成物(ポリイソシアネートのウレタン変性体)が、カルボジイミド化工程において加熱されると、分子末端のイソシアネート基に由来するカルボジイミド基が生成し、生成したカルボジイミド基の一部が分子末端のイソシアネート基と反応し、ウレトンイミン基が生成する。
【0125】
そして、ウレトンイミン基の一部は、カルボジイミド化工程において加熱が継続されることにより熱分解され、カルボジイミド基と、分子末端のイソシアネート基とが再生し、さらに、分子末端のイソシアネート基に由来するカルボジイミド基が生成する。
【0126】
このようにして、ポリイソシアネートのイソシアネート基が、ウレタン基、カルボジイミド基およびウレトンイミン基に変換される。その結果、ウレタン基、カルボジイミド基およびウレトンイミン基を含有するポリカルボジイミド組成物が得られる。
【0127】
そして、上記のポリカルボジイミド組成物の製造方法では、イソシアネート基がウレタン基およびウレトンイミン基に変換される割合よりも、イソシアネート基がカルボジイミド基に変換される割合の方が、相対的に多くなっている。
【0128】
より具体的には、ポリカルボジイミド組成物の赤外吸光スペクトルにおいて、カルボジイミド基の伸縮振動由来の2120cm
−1付近の吸光度IR
CIの、ウレトンイミン基およびウレタン基の伸縮振動由来の1720cm
−1付近の吸光度IR
UI+Uに対する強度比(IR
CI/IR
UI+U)が、1.5以上、好ましくは、1.8以上、より好ましくは、2.4以上であり、4.5以下、好ましくは、4.2以下、より好ましくは、3.6以下である。
【0129】
ポリカルボジイミド組成物における、上記の強度比(IR
CI/IR
UI+U)が、上記下限を下回っている場合には、カルボジイミド基が相対的に少ないため、低温速硬化性が十分ではなく、樹脂組成物(後述)を比較的低温および比較的短時間で硬化させた場合、得られる樹脂硬化物(後述)の各種物性、とりわけ、耐薬品性に劣る。
【0130】
また、上記の強度比(IR
CI/IR
UI+U)が、上記上限を上回っている場合には、カルボジイミド基が相対的に多くなるものの、分子量が高くなり、水に対する分散性、および、有機溶媒に対する溶解性に劣るため、水分散組成物(後述)や溶液組成物(後述)を製造できないという不具合がある。
【0131】
これらに対して、上記の強度比(IR
CI/IR
UI+U)が上記の特定の範囲にあれば、分子量が調整され、水分散組成物(後述)および溶液組成物(後述)を容易に得ることができ、また、カルボジイミド基を相対的に多くして、低温速硬化性に優れる樹脂組成物(後述)を得ることができ、さらに、その樹脂組成物の硬化によって、各種物性に優れる樹脂硬化物(後述)を比較的低温および比較的短時間で得ることができる。
【0132】
なお、ポリカルボジイミド組成物の赤外吸光スペクトルは、後述する実施例に準拠して測定することができる。
【0133】
また、ポリカルボジイミド組成物において、カルボジイミド基とウレトンイミン基との総モルに対するウレトンイミン基の割合が、例えば、1モル%以上、好ましくは、1モル%を超過し、より好ましくは、1.5モル%以上、さらに好ましくは、2モル%以上、とりわけ好ましくは、4モル%以上であり、例えば、20モル%以下、好ましくは、15モル%以下、より好ましくは、10モル%以下、さらに好ましくは、8モル%以下である。
【0134】
ポリカルボジイミド組成物において、カルボジイミド基とウレトンイミン基との総モルに対するウレトンイミン基の割合が上記の特定の範囲にあれば、低温速硬化性の向上を図ることができ、また、各種物性に優れる樹脂硬化物(後述)を得ることができる。さらに、水分散組成物(後述)において、水分散性の向上を図ることもできる。
【0135】
なお、カルボジイミド基とウレトンイミン基との総モルに対するウレトンイミン基の割合は、後述する実施例に準拠して、
13C−NMRスペクトルから求めることができる。
【0136】
また、この方法では、必要に応じて、上記したカルボジイミド化工程において得られたポリカルボジイミド組成物と、アルコール類とを、さらに反応させることもできる。なお、以下において、カルボジイミド化工程の前のウレタン化工程を、第1ウレタン化工程と称し、また、カルボジイミド化工程の後のウレタン化工程を、第2ウレタン化工程と称する場合がある。
【0137】
具体的には、カルボジイミド化工程において得られたポリカルボジイミド組成物が、さらに、分子末端にイソシアネート基を有する場合には、そのポリカルボジイミド組成物とアルコール類とを反応させることにより、分子末端のイソシアネート基をウレタン化することができる。
【0138】
第2ウレタン化工程において、アルコール類としては、上記したその他のアルコール(すなわち、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有しないアルコール)が挙げられる。
【0139】
第2ウレタン化工程におけるアルコール類の配合割合は、第1ウレタン化工程で用いられるアルコール類と、第2ウレタン化工程で用いられるアルコール類との総量が、第1ウレタン化工程で用いられるポリイソシアネートに対して所定の割合となるように、調整される。
【0140】
具体的には、第1ウレタン化工程で用いられるアルコール類の水酸基と、第2ウレタン化工程で用いられるアルコール類の水酸基との総量に対して、ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、2を超過し、好ましくは、3以上、より好ましくは、4以上であり、例えば、16以下、好ましくは、14以下、より好ましくは、10以下である。
【0141】
また、この反応においては、必要に応じて、上記したウレタン化触媒を添加してもよい。なお、ウレタン化触媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0142】
また、第2ウレタン化工程における反応条件は、得られるポリカルボジイミド組成物のウレタン基、カルボジイミド基およびウレトンイミン基の含有割合が、上記した所定範囲となるように設定される。第2ウレタン化工程における反応条件としては、常圧および不活性ガス(例えば、窒素ガス)雰囲気下において、反応温度が、上記カルボジイミド化工程の反応温度と同じ範囲であることが好ましい。また、反応時間が、例えば、15分以上、好ましくは、30分以上であり、例えば、5時間以下、好ましくは、1時間以下である。
【0143】
これにより、ポリカルボジイミド組成物が有する分子末端のイソシアネート基と、アルコール類が有する水酸基とが、ウレタン化反応する。
【0144】
その結果、分子末端にイソシアネート基を有さない、または、分子末端のイソシアネート基が低減されたポリカルボジイミド組成物が得られる。
【0145】
そして、このようにして得られたポリカルボジイミド組成物は、ウレタン基、カルボジイミド基およびウレトンイミン基を、上記した所定割合で含有している。すなわち、上記の強度比(IR
CI/IR
UI+U)が上記の特定の範囲にある。そのため、分子量が調整され、水分散組成物(後述)および溶液組成物(後述)を容易に得ることができ、また、カルボジイミド基を相対的に多くして、低温速硬化性に優れる樹脂組成物(後述)を得ることができ、さらに、その樹脂組成物の硬化によって、各種物性に優れる樹脂硬化物(後述)を比較的低温および比較的短時間で得ることができる。
【0146】
なお、第2ウレタン化工程が実施されると、アルコール類由来の副生成物が多くなり、分子量が急激に増加して流動性が低下し、水分散性、低温速硬化性が低下する場合がある。そのため、好ましくは、第2ウレタン化工程を実施せず、第1ウレタン化工程およびカルボジイミド化工程のみを実施する。
【0147】
なお、ポリカルボジイミド組成物の製造方法は、上記に限定されず、例えばポリイソシアネートとカルボジイミド化触媒とアルコール類とを一括配合し、加熱することもできる。
【0148】
また、必要に応じて、ポリカルボジイミド組成物から、例えば、未反応のポリイソシアネート、未反応のアルコール類、低分子量化合物(副生成物)、有機溶媒、カルボジイミド化触媒、ウレタン化触媒などを、蒸留、抽出、ろ過などの公知の方法によって除去することもできる。
【0149】
また、ポリカルボジイミド組成物には、必要に応じて、さらに、公知の添加剤、例えば、貯蔵安定剤(o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミドなど)、可塑剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤、離型剤、触媒、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤などを、適宜のタイミングで添加することができる。なお、添加剤の添加割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0150】
また、ポリカルボジイミド組成物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0151】
そして、このようなポリカルボジイミド組成物では、カルボジイミド基の伸縮振動由来の2120cm
−1付近の吸光度IR
CIの、ウレトンイミン基およびウレタン基の伸縮振動由来の1720cm
−1付近の吸光度IR
UI+Uに対する強度比(IR
CI/IR
UI+U)が特定の範囲にある。そのため、このようなポリカルボジイミド組成物は、低温速硬化性に優れる。
【0152】
また、上記のポリカルボジイミド組成物の製造方法によれば、ポリカルボジイミド組成物を、効率よく製造することができる。
【0153】
そして、ポリカルボジイミド組成物は、低温速硬化性に優れるため、樹脂組成物における硬化剤として好適に用いられる。
【0154】
樹脂組成物は、ポリカルボジイミド組成物を含む硬化剤と、カルボキシル基を有する主剤とを含有している。
【0155】
硬化剤は、ポリカルボジイミド組成物を含んでいれば、特に制限されないが、例えば、ポリカルボジイミド組成物が水に分散された水分散液(以下、水分散組成物と称する。)や、ポリカルボジイミド組成物が有機溶媒に溶解された溶液(以下、溶液組成物と称する。)などとして調製される。
【0156】
水分散組成物は、ポリカルボジイミド組成物と水とを含有している。
【0157】
水分散組成物におけるポリカルボジイミド組成物として、好ましくは、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールを含むアルコール類とポリイソシアネートとの反応生成物をカルボジイミド化反応させて得られたポリカルボジイミド組成物が挙げられる。
【0158】
すなわち、ポリカルボジイミド組成物の製造において、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールが用いられる場合、ポリカルボジイミド組成物は、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有する。このようなポリカルボジイミド組成物は、親水性であるため、水に容易に分散される。
【0159】
ポリカルボジイミド組成物を水に分散させる方法としては、特に制限されず、ポリカルボジイミド組成物に水を添加し、撹拌する方法や、水にポリカルボジイミド組成物を添加し、撹拌する方法などが挙げられる。好ましくは、ポリカルボジイミド組成物に水を添加する。
【0160】
ポリカルボジイミド組成物と水との割合は、特に制限されないが、水分散組成物におけるポリカルボジイミド組成物(樹脂成分)の濃度(すなわち、固形分濃度)が、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0161】
硬化剤が水分散組成物であれば、水系樹脂(主剤)との相溶性の向上を図ることができ、また、耐水性および耐溶剤性に優れた硬化物を得ることができる。また、このような溶液組成物は、上記ポリカルボジイミド組成物を含むため、低温速硬化性に優れる。
【0162】
溶液組成物は、ポリカルボジイミド組成物と有機溶媒とを含有している。
【0163】
溶液組成物におけるポリカルボジイミド組成物として、好ましくは、その他のポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物をカルボジイミド化反応させて得られたポリカルボジイミド組成物が挙げられる。
【0164】
すなわち、ポリカルボジイミド組成物の製造において、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールが用いられない場合、ポリカルボジイミド組成物は、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有しない。このようなポリカルボジイミド組成物は、疎水性であるため、有機溶媒に容易に溶解される。
【0165】
また、ポリカルボジイミド組成物の製造において、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールが用いられ、ポリカルボジイミド組成物が、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有する場合にも、有機溶媒に溶解可能である。
【0166】
有機溶媒としては、上記した有機溶媒が挙げられ、好ましくは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが挙げられる。
【0167】
ポリカルボジイミド組成物を有機溶媒に溶解させる方法としては、特に制限されず、ポリカルボジイミド組成物に有機溶媒を添加し、撹拌する方法や、有機溶媒にポリカルボジイミド組成物を添加し、撹拌する方法などが挙げられる。好ましくは、ポリカルボジイミド組成物に有機溶媒を添加する。
【0168】
ポリカルボジイミド組成物と有機溶媒との割合は、特に制限されないが、溶液組成物におけるポリカルボジイミド組成物(樹脂成分)の濃度(すなわち、固形分濃度)が、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0169】
硬化剤が溶液組成物であれば、油系樹脂(主剤)との相溶性の向上を図ることができ、また、耐水性および耐溶剤性に優れた硬化物を得ることができる。また、このような溶液組成物は、上記ポリカルボジイミド組成物を含むため、低温速硬化性に優れる。
【0170】
カルボキシル基を有する主剤としては、カルボキシル基を有する水系樹脂、カルボキシル基を有する油系樹脂などが挙げられる。
【0171】
カルボキシル基を有する水系樹脂としては、例えば、カルボキシル基を有する親水性高分子が挙げられ、具体的には、カルボキシル基を有する親水性ポリエステル樹脂、カルボキシル基を有する親水性ポリアミド樹脂、カルボキシル基を有する親水性ポリウレタン樹脂、カルボキシル基を有する親水性アクリル樹脂、カルボキシル基を有する親水性ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン−ポリエチレン(ランダム・ブロック)共重合体、その他、繰り返し単位の炭素数が4以上のポリオレフィン)樹脂などが挙げられる。これらカルボキシル基を有する水系樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0172】
カルボキシル基を有する水系樹脂として、好ましくは、カルボキシル基を有する親水性ポリウレタン樹脂、カルボキシル基を有する親水性アクリル樹脂が挙げられる。
【0173】
カルボキシル基を有する油系樹脂としては、例えば、カルボキシル基を有する疎水性高分子が挙げられ、具体的には、カルボキシル基を有する疎水性ポリエステル樹脂、カルボキシル基を有する疎水性ポリアミド樹脂、カルボキシル基を有する疎水性ポリウレタン樹脂、カルボキシル基を有する疎水性アクリル樹脂、カルボキシル基を有する疎水性ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン−ポリエチレン(ランダム・ブロック)共重合体、その他、繰り返し単位の炭素数が4以上のポリオレフィン)樹脂などが挙げられる。これらカルボキシル基を有する油系樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0174】
カルボキシル基を有する油系樹脂として、好ましくは、カルボキシル基を有する疎水性ポリウレタン樹脂、カルボキシル基を有する疎水性アクリル樹脂が挙げられる。
【0175】
これらは単独使用または2種類以上併用することができる。
【0176】
主剤および硬化剤として、好ましくは、主剤が水系樹脂であり、硬化剤が水分散組成物である組み合わせが挙げられる。また、好ましくは、主剤が油系樹脂であり、硬化剤が溶液組成物である組み合わせも挙げられる。
【0177】
樹脂組成物として、有機溶媒を低減し、地球環境を保護する観点から、好ましくは、水系主剤と水分散組成物との組み合わせが挙げられる。
【0178】
また、樹脂組成物は、上記した主剤と上記した硬化剤とを含有していれば、特に制限はなく、主剤および硬化剤が個別に用意され、使用時に混合される二液タイプであってもよく、また、主剤および硬化剤が予め混合されている一液タイプであってもよい。
【0179】
樹脂組成物として、好ましくは、二液タイプの樹脂組成物が挙げられる。
【0180】
主剤および硬化剤の含有割合は、それらの総量100質量部に対して、主剤が、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上であり、例えば、99.5質量部以下、好ましくは、95.0質量部以下である。また、硬化剤が、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0181】
また、主剤中のカルボキシル基に対する、硬化剤中のカルボジイミド基のモル比が、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上であり、例えば、2.0以下、好ましくは、1.5以下である。
【0182】
また、主剤および硬化剤には、必要に応じて、そのいずれか一方またはその両方に、例えば、エポキシ樹脂、触媒、塗工改良剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤、シランカップリング剤などの添加剤を配合してもよい。これらの添加剤の配合量は、その目的および用途により適宜決定される。
【0183】
また、主剤として、上記したカルボキシル基を有する水系樹脂、および/または、上記したカルボキシル基を有する油系樹脂と、その他の樹脂(例えば、水酸基含有ポリウレタン樹脂、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、メラミン樹脂など)とを併用することもできる。
【0184】
また、硬化剤として、上記したポリカルボジイミド組成物と、その他の硬化剤(例えば、ポリイソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂など)とを併用することもできる。
【0185】
そして、このような樹脂組成物では、硬化剤として、上記したポリカルボジイミド組成物が用いられるため、低温速乾燥性に優れ、また、各種物性(耐水性および耐溶剤性)に優れた樹脂硬化物を得ることができる。
【0186】
樹脂硬化物を製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、樹脂組成物が一液タイプの場合は樹脂組成物をそのまま、被塗物または被着物に塗布する。また、樹脂組成物二液タイプの場合は主剤および硬化剤を混合して、得られた混合物を、被塗物または被着物に塗布する。そして、樹脂組成物を加熱硬化させることにより、樹脂硬化物が得られる。
【0187】
上記の樹脂組成物では、硬化温度が比較的低温であって、具体的には、例えば、100℃以下、好ましくは、80℃以下である。また、例えば、20℃以上、好ましくは、30℃以上である。
【0188】
また、硬化時間が比較的短時間であって、具体的には、例えば、1時間以下、好ましくは、30分以下である。また、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上である。
【0189】
また、必要により、加熱硬化された樹脂硬化物を、さらに乾燥させることもできる。
【0190】
そのような場合、乾燥温度は、室温でよく、例えば、10℃以上、好ましくは、15℃以上であり、例えば、40℃以下、好ましくは、30℃以下である。
【0191】
また、乾燥時間は、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上であり、例えば、2時間以下、好ましくは、1時間以下である。
【0192】
そして、得られた樹脂硬化物は、低温速硬化性に優れる樹脂組成物の硬化物であるため、比較的低温および比較的短時間で得られ、かつ、各種物性(例えば、耐水性、耐薬品性など)に優れる。
【0193】
また、ポリカルボジイミド組成物が、脂肪族ポリイソシアネートを用いて得られている場合、そのポリカルボジイミド組成物を用いて得られる樹脂硬化物は、耐光性(耐候性)にも優れる。
【0194】
そのため、樹脂組成物および樹脂硬化物は、コーティング材料、接着材料(接着剤)、粘着材料(粘着材)、インキ、シーラント、成形材料、フォームおよび光学材料、さらには、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリイミドなどの樹脂を改質する樹脂改質剤などの各種分野において、好適に用いられる。
【0195】
コーティング材料として用いられる場合には、例えば、プラスチック用塗料、自動車外装用塗料、自動車内装用塗料、電気・電子材料用塗料、光学材料(レンズなど)用塗料、建材用塗料、ガラスコート塗料、木工塗料、フィルムコーティング塗料、インキ塗料、人工および合成皮革用塗料(コート剤)、缶用塗料(コート剤)、紙コート塗料などが挙げられる。
【0196】
上記プラスチック塗料としては、例えば、プラスチック材料(例えば、ポリオレフィン類、ABS、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエステル類およびこれらの複合体などの各種高分子材料)が用いられる成形品用塗料、具体的には、筐体(携帯電話、スマートフォン、パソコン、タブレットなど)用塗料、自動車部品(自動車内装材やヘッドランプなど)用塗料、家庭用電化製品用塗料、ロボット材料用塗料、家具用塗料、文具用塗料、ゴム、エラストマーおよびゲルなどの柔軟な素材用の塗料、アイウエア材料(レンズなど)用塗料、電子機器の光学レンズ用塗料(表面コート剤)などが、挙げられる。
【0197】
また、上記自動車外装用塗料としては、例えば、新車向け(中塗り、ベース、トップなど)塗料、自動車補修用(中塗り、ベース、トップなど)塗料、外装部品(アルミニウムホイール、バンパーなど)用塗料などが挙げられる。
【0198】
上記の樹脂組成物を自動車外装用塗料として使用する場合、主剤としては、上記したカルボキシル基を有する水系樹脂、上記したカルボキシル基を有する油系樹脂を使用することができる。好ましくは、カルボキシル基を有する水系樹脂が用いられる。
【0199】
カルボキシル基を有する水系樹脂として、好ましくは、カルボキシル基を有する親水性アクリル樹脂、カルボキシル基を有する親水性ポリウレタン樹脂、カルボキシル基を有する親水性ポリエステル樹脂が挙げられ、より好ましくは、カルボキシル基を有する親水性アクリル樹脂、カルボキシル基を有する親水性ポリエステル樹脂が挙げられる。また、上記したカルボキシル基を有する水系樹脂を2種類以上併用することができる。
【0200】
また、主剤として、上記したカルボキシル基を有する水系樹脂、および/または、上記したカルボキシル基を有する油系樹脂と、その他の樹脂(例えば、水酸基含有ポリウレタン樹脂、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、メラミン樹脂など)とを併用することもできる。
【0201】
上記の樹脂組成物を自動車外装用塗料として使用する場合、主剤の固形分濃度は、通常、5質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、60質量%以下である。
【0202】
また、主剤の固形分換算の酸価は、例えば、5mgKOH/g以上、好ましくは、10mgKOH/g以上であり、例えば、200mgKOH/g以下、好ましくは、100mgKOH/g以下である。
【0203】
硬化剤としては、上記したポリカルボジイミド組成物が挙げられ、また、ポリカルボジイミド組成物と、その他の硬化剤(例えば、ポリイソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂など)とを併用することもできる。
【0204】
また、上記フィルムコーティング塗料としては、例えば、光学用部材(光学フィルム、光学シートなど)用塗料、光学用コーティング材料、繊維用塗料、電子電機材料用塗料、食品パッケージ用塗料、医療フィルム用塗料、化粧品パッケージ用塗料、加飾フィルム用塗料、離形フィルム用塗料などが挙げられる。
【0205】
接着剤としては、例えば、包材用接着剤、電気機器用接着剤、液晶ディスプレイ(LCD)用接着剤、有機ELディスプレイ用接着剤、有機EL照明用接着剤、表示装置(電子ペーパーやプラズマディスプレイなど)用接着剤、LED用接着剤、自動車用内外装向け接着剤、家電用接着剤、太陽電池バックシート用接着剤、各種電池(リチウムイオン電池など)用接着剤などが挙げられる。
【0206】
また、上記インキ用樹脂としては、各種インキ(版インキ、スクリーンインキ、フレキソインキ、グラビアインキ、ジェットインキなど)のビヒクルが挙げられる。
【0207】
なお、ポリカルボジイミド組成物の用途は、上記に限定されず、例えば、固体として、ポリエステルやポリアミド系樹脂やポリ乳酸、あるいは、液状として、ポリエステルポリオールなどの耐加水分解防止剤、酸変性、例えば、マレイン酸変性ポリオレフィンとの複合化、あるいは酸変性ポリオレフィンを水分散したポリオレフィン系エマルション、酸部位を含有するアクリルエマルションとの複合化や硬化剤、カーボンファイバーやガラス繊維など各種繊維の収束材、CFRPやFRPなど繊維強化プラスチックの強化材やサイジング剤や硬化剤などとして、好適に用いることができる。
【実施例】
【0208】
次に、本発明を、製造例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0209】
なお、各種測定方法を下記する。
【0210】
<IR強度比(IR
CI/IR
UI+U)>
反応に使用した有機溶媒を留去したポリカルボジイミド組成物(以下、「脱溶媒品」と称する。)を常法に従って、下記の装置および条件にてIRスペクトルを測定した。
【0211】
そして、カルボジイミド基の伸縮振動由来の2120cm
−1付近の吸光度IR
CIの、ウレトンイミン基およびウレタン基のC=O伸縮振動由来の1720cm
−1付近の吸光度IR
UI+Uに対する強度比(IR
CI/IR
UI+U)を算出した。
【0212】
IR測定装置:Perkin Elmer社製Frontier FT−IR
測定法: ATR(反射法)
波数範囲: 4000〜400cm
−1
分解能 4cm
−1
なお、後述する実施例6のポリカルボジイミド組成物について、上記分析において得られた赤外吸光スペクトルを
図1に示す。
【0213】
<カルボジイミド基とウレトンイミン基との総モルに対するウレトンイミン基の割合>
脱溶媒品を用い、下記の装置および条件にて
13C−NMRを測定し、カルボジイミド基とウレトンイミン基との合計1モルに対する、ウレトンイミン基の含有割合を、以下の式により算出した。なお、化学シフトppmの基準として、CDCL
3溶媒中のテトラメチルシラン(0ppm)を用いた。
装置; ECA−500型(日本電子製)
条件; 測定周波数:125MHz、溶媒:CDCL
3、溶質濃度:50質量%
測定温度:室温、スキャン回数8500回
繰返し時間:3.0秒、パルス幅:30°(3.70μ秒)
カルボジイミド基(カルボジイミド基内のN=C=N基)の炭素の帰属ピーク:139ppm
ウレトンイミン基(ウレトンイミン基内のC=O基)の炭素の帰属ピーク(3H):155ppm
ウレトンイミン基/(ウレトンイミン基+カルボジイミド基)のモル%=(ウレトンイミン基の炭素の帰属ピークの積分値)/(ウレトンイミン基の炭素の帰属ピークの積分値+カルボジイミド基の帰属ピークの積分値)×100
なお、後述する実施例20のポリカルボジイミド組成物について、上記分析において得られた
13C−NMRスペクトルを
図2に示す。
【0214】
<ポリカルボジイミド組成物中における3つ以上連続するオキシエチレン基の含有割合(質量%)>
ポリカルボジイミド組成物に対するオキシエチレン基の含有割合は、仕込み量および化学構造式から算出した。
【0215】
<アルコール類の総モルに対する3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールの含有割合(モル%)>
アルコール類の総モルに対する3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコールの含有割合は、仕込み量および化学構造式から算出した。
【0216】
製造例1(ペンタメチレンジイソシアネートの製造)
国際公開パンフレットWO2012/121291号の明細書における実施例1と同じ操作にて、99.9質量%の1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(以後PDIと略する場合がある。)を得た。
【0217】
より具体的には、電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、ホスゲン導入ライン、凝縮器、原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、o−ジクロロベンゼン2000質量部を仕込んだ。次いで、ホスゲン2300質量部をホスゲン導入ラインから加え、撹拌を開始した。反応器のジャケットには冷水を通し、内温を約10℃に保った。そこへ、ペンタメチレンジアミン(a)400質量部をo−ジクロロベンゼン2600質量部に溶解した溶液を、フィードポンプにて60分かけてフィードし、30℃以下、常圧下で冷ホスゲン化を開始した。フィード終了後、加圧反応器内は淡褐白色スラリー状液となった。
【0218】
次いで、反応器の内液を徐々に160℃まで昇温しながら、0.25MPaに加圧し、さらに圧力0.25MPa、反応温度160℃で90分間熱ホスゲン化した。なお、熱ホスゲン化の途中で、ホスゲン1100質量部を、さらに添加した。熱ホスゲン化の過程で、加圧反応器内液は、淡褐色澄明溶液となった。熱ホスゲン化終了後、100〜140℃において、窒素ガスを100L/時で通気し、脱ガスした。
【0219】
次いで、減圧下でo−ジクロルベンゼンを留去した後、同じく減圧下でペンタメチレンジイソシアネートを留去させ、純度98.7%のペンタメチレンジイソシアネート(a
0)を558質量部得た。
【0220】
次いで、ペンタメチレンジイソシアネート(a
0)558質量部、およびトリス(トリデシル)ホスファイト(城北化学製、商品名:JP−333E)をペンタメチレンジイソシアネート100質量部に対し0.02質量部を、撹拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに装入し、窒素を導入しながら、常圧下で、190℃、2時間加熱処理し、純度98.2%のペンタメチンジイソシアネート(a
1)を553質量部得た。熱処理におけるペンタメチレンジイソシアネートの収率は、99.4%であった。
【0221】
次いで、加熱処理後のペンタメチレンジイソシアネート(a
1)を、ガラス製フラスコに装入し、充填物(住友重機械工業社製、商品名:住友/スルザーラボパッキングEX型)を4エレメント充填した蒸留管、還流比調節タイマーを装着した蒸留塔(柴田科学社製、商品名:蒸留頭K型)、および、冷却器を装備する精留装置を用いて、127〜132℃、2.7KPaの条件下、さらに還流しながら精留し、留出率20〜80%の留分を採取し、ペンタメチレンジイソシアネート(a)を得た。
【0222】
実施例1
・ポリカルボジイミド組成物の製造
撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、製造例1で得られたペンタメチレンジイソシアネートを100.0質量部、ユニオックスM550(日本油脂社製 ポリエチレングリコールモノメチルエーテル 分子量550)を40.0質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを6.0質量部装入した。窒素を導入しながら、常圧下で80℃に加温し、6時間撹拌した(第1ウレタン化工程)。
【0223】
続けて、キシレンを306.5質量部、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド(MPPO)を2.0質量部装入し、還流下(141℃)で8時間撹拌した(カルボジイミド化工程)。
【0224】
さらに還流下のまま、1−メトキシ−2−プロパノールを6.8質量部装入し、30分間撹拌し、反応を終了させた(第2ウレタン化工程)。
【0225】
反応終了後、80℃まで冷却し、キシレンを減圧下で留去させ、ポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物の一部を取り出し、IRスペクトルを測定した結果、IR強度比(IR
CI/IR
UI+U)は2.83であった。また、
13C−NMRを測定した結果、カルボジイミド基とウレトンイミン基との総モルに対するウレトンイミン基の割合は、6.9モル%であった。
【0226】
・ポリカルボジイミド組成物の水分散体(水分散組成物)の調製
ポリカルボジイミド組成物をフラスコに入れ、80℃に加温し、樹脂固形分が40%になるように蒸留水を徐々に加えた。5分間撹拌した後に、室温まで冷却した。これにより、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を得た。その後、後述の方法で水分散性を評価した。
【0227】
・樹脂組成物の調製
得られたポリカルボジイミド組成物の水分散体を硬化剤とした。そして、硬化剤1.5質量部と、主剤としてのポリウレタンディスパージョン(固形分30質量%、カルボキシル基当量3100g/mol)98.5質量部とを混合し、樹脂組成物を調製した。
【0228】
実施例2
撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、製造例1で得られたペンタメチレンジイソシアネートを100.0質量部、ユニオックスM550を40.0質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを12.8質量部装入した。窒素を導入しながら、常圧下で80℃に加温し、6時間撹拌した(ウレタン化工程)。
【0229】
続けて、キシレンを327.7質量部、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホリン−1−オキシドを2.0質量部装入し、還流下(141℃)で8.5時間撹拌して、反応を終了させた(カルボジイミド化工程)。
【0230】
反応終了後、80℃まで冷却し、キシレンを減圧下で留去させ、ポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0231】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0232】
実施例3
ユニオックスM550の代わりにユニオックスM400(日本油脂社製 ポリエチレングリコールモノメチルエーテル 分子量400)を39.0質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを10.7質量部、キシレンを314.1質量部使用し、還流下(141℃)で8.5時間撹拌した以外は、実施例2と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0233】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0234】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0235】
実施例4
ユニオックスM550を51.0質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを30.6質量部、キシレンを380.2質量部使用し、還流下(141℃)で8時間撹拌した以外は、実施例2と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0236】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0237】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0238】
実施例5
ユニオックスM550を47.4質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを21.5質量部、キシレンを353.9質量部使用し、還流下(141℃)で8時間撹拌した以外は、実施例2と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0239】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0240】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0241】
実施例6
ユニオックスM550を43.0質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを9.7質量部、キシレンを320.2質量部使用し、還流下(141℃)で8.5時間撹拌した以外は、実施例2と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0242】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0243】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0244】
実施例7
ユニオックスM550を35.7質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを5.8質量部、キシレンを297.2質量部使用し、還流下(141℃)で9時間撹拌した以外は、実施例2と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0245】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0246】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0247】
実施例8
ユニオックスM550を43.0質量部、1−メトキシ−2−プロパノールの代わりにシクロヘキサノールを10.7質量部、キシレンを322.5質量部使用した以外は、実施例2と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0248】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0249】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0250】
実施例9
ユニオックスM550を11.7質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを14.8質量部、キシレンを263.8質量部使用し、還流下(141℃)で8.5時間撹拌した以外は、実施例2と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0251】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0252】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0253】
実施例10
ユニオックスM1000(日本油脂社製 ポリエチレングリコールモノメチルエーテル 分子量1000)を89.2質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを2.1質量部、キシレンを400.2質量部使用し、還流下(141℃)で8.5時間撹拌した以外は、実施例2と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0254】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0255】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0256】
実施例11
キシレンに代えて、酢酸ブチルを320.2質量部使用し、128℃で12時間撹拌した以外は、実施例6と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0257】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0258】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0259】
実施例12
キシレンに代えて、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)を320.2質量部使用し、128℃で4時間撹拌した以外は、実施例6と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0260】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0261】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0262】
実施例13
3−メチル−1−フェニル−2−ホスホリン−1−オキシド(MPPO)に代えて、1−エチル−3−メチル−3−ホスホリン−1−オキシド(EMPO)を2.00質量部使用し、還流下(141℃)で5時間撹拌した以外は、実施例6と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0263】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0264】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0265】
実施例14
ユニオックスM550を23.8質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを3.9質量部、キシレンの代わりにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)を518.7質量部使用し、還流下(150℃)で10時間撹拌した以外は、実施例2と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0266】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0267】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0268】
実施例15
ユニオックスM550を22.3質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを3.7質量部、キシレンに代えて、エチレングリコールジエチルエーテル1,2−ジエトキシエタン(商品名エチルグライム、三協化学社製)を511.8質量部使用し、還流下(125℃)で16時間撹拌した以外は、実施例2と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0269】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0270】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0271】
実施例16
撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、ペンタメチレンジイソシアネートに代えてヘキサメチレンジイソシアネートを100.0質量部、ユニオックスM550を39.4質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを8.9質量部装入した。窒素を導入しながら、常圧下で80℃に加温し、6時間撹拌した(ウレタン化工程)。
【0272】
続けて、キシレンを311.1質量部、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホリン−1−オキシドを2.0質量部装入し、還流下(141℃)で8時間撹拌して、反応を終了させた(カルボジイミド化工程)。
【0273】
反応終了後、80℃まで冷却し、キシレンを減圧下で留去させ、ポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0274】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0275】
実施例17
撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、1,3−キシリレンジイソシアネートを100.0質量部、ユニオックスM550を36.8質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを7.7質量部装入した。窒素を導入しながら、常圧下で80℃に加温し、2時間撹拌した(ウレタン化工程)。
【0276】
続けて、キシレンを303.2質量部、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホリン−1−オキシドを2.0質量部装入し、還流下(141℃)で3時間撹拌して、反応を終了させた(カルボジイミド化工程)。
【0277】
反応終了後、80℃まで冷却し、キシレンを減圧下で留去させ、ポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0278】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0279】
実施例18
撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを100.0質量部、ユニオックスM550を35.6質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを7.4質量部装入した。窒素を導入しながら、常圧下で80℃に加温し、8時間撹拌した(ウレタン化工程)。
【0280】
続けて、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)を300.3質量部、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホリン−1−オキシドを2.0質量部装入し、還流下(150℃)で10時間撹拌して、反応を終了させた(カルボジイミド化工程)。
【0281】
反応終了後、80℃まで冷却し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)を減圧下で留去させ、ポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0282】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0283】
実施例19
撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、イソホロンジイソシアネートを100.0質量部、ユニオックスM550を31.1質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを6.5質量部装入した。窒素を導入しながら、常圧下で80℃に加温し、10時間撹拌した(ウレタン化工程)。
【0284】
続けて、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)を289.1質量部、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホリン−1−オキシドを2.0質量部装入し、還流下(150℃)で12時間撹拌して、反応を終了させた(カルボジイミド化工程)。
【0285】
反応終了後、80℃まで冷却し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PMA)を減圧下で留去させ、ポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表1〜2に示す。
【0286】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0287】
実施例20
・ポリカルボジイミド組成物の製造
撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、ペンタメチレンジイソシアネートを100.0質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを16.7質量部装入した。窒素を導入しながら、常圧下で80℃に加温し、8.5時間撹拌した(ウレタン化工程)。
【0288】
続けて、キシレンを245.8質量部、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホリン−1−オキシドを2.0質量部装入し、還流下(141℃)で6時間撹拌して、反応を終了させた(カルボジイミド化工程)。
【0289】
反応終了後、80℃まで冷却し、キシレンを減圧下で留去させ、ポリカルボジイミド組成物を得た。その結果を表1〜2に示す。
【0290】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。IR強度比(IR
CI/IR
UI+U)は2.3であった。また、
13C−NMRを測定した結果、カルボジイミド基とウレトンイミン基との総モルに対するウレトンイミン基の割合は、7.1モル%であった。
【0291】
・ポリカルボジイミド組成物の溶液(溶液組成物)の調製
ポリカルボジイミド組成物をフラスコに入れ、80℃に加温し、樹脂固形分が40%になるように酢酸ブチルを徐々に加えた。5分間撹拌した後に、室温まで冷却した。これにより、ポリカルボジイミド組成物の溶液を得た。
【0292】
・樹脂組成物の調製
得られたポリカルボジイミド組成物の溶液を硬化剤とした。そして、硬化剤1.0質量部と、主剤としてのアクリル樹脂(固形分50質量%、固形分のカルボキシル基当量2004g/mol)39.2質量部と、溶剤としての酢酸ブチル59.8質量部とを混合し、樹脂組成物を調製した。
【0293】
実施例21
撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを42.0質量部、ユニオックスM550を52.9質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを10.8質量部装入した。窒素を導入しながら、常圧下で80℃に加温し、7時間撹拌した(ウレタン化工程)。
【0294】
続けて、ペンタメチレンジイソシアネートを100質量部、PMAを431.8質量部、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホリン−1−オキシドを2.8質量部装入し、還流下(150℃)で9時間撹拌して、反応を終了させた(カルボジイミド化工程)。
【0295】
反応終了後、80℃まで冷却し、キシレンを減圧下で留去させ、ポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表3に示す。
【0296】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0297】
実施例22
撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、ペンタメチレンジイソシアネートを100質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを10.8質量部装入した。窒素を導入しながら、常圧下で80℃に加温し、6時間撹拌した。また、撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを42.0質量部、ユニオックスM550を52.9質量部装入した。窒素を導入しながら、常圧下で80℃に加温し、7時間撹拌した。(ウレタン化工程)。
【0298】
続けて、撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコにウレタン化したペンタメチレンジイソシアネートを110.8質量部、ウレタン化した1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを94.9質量部、PMAを431.8質量部、3−メチル−1−フェニル−2−ホスホリン−1−オキシドを2.8質量部装入し、還流下(150℃)で9時間撹拌して、反応を終了させた(カルボジイミド化工程)。
【0299】
反応終了後、80℃まで冷却し、キシレンを減圧下で留去させ、ポリカルボジイミド組成物を得た。得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表3に示す。
【0300】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0301】
比較例1
ユニオックスM550を118.9質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを39.0質量部、キシレンを538.2質量部使用し、還流下(141℃)で7時間撹拌した以外は、実施例2と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0302】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表4に示す。
【0303】
また、実施例1と同じ方法で、ポリカルボジイミド組成物の水分散体を調製し、樹脂組成物を調製した。
【0304】
比較例2
ユニオックスM550を17.8質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを2.92質量部、キシレンに代えてPMAを491.1質量部使用し、還流下(150℃)で11時間撹拌した以外は、実施例2と同じ方法でポリカルボジイミド組成物を得た。
【0305】
また、得られたポリカルボジイミド組成物を取り出し、実施例1と同様に分析した。その結果を表4に示す。
【0306】
その後、実施例1と同様にポリカルボジイミド組成物の水分散体の調製を試みたが、ポリカルボジイミド組成物が沈降してしまい、水分散体は得られなかった。
【0307】
比較例3
キシレンに代えてトルエンを320.2質量部使用し、115℃で撹拌した以外は、実施例6を繰り返したが、115℃で20時間が経過したところで、反応液が固化してしまった。
【0308】
得られたポリカルボジイミド組成物を分析した結果を表4に示す。
【0309】
その後、実施例1と同様にポリカルボジイミド組成物の水分散体の調製を試みたが、ポリカルボジイミド組成物が沈降してしまい、水分散体は得られなかった。
【0310】
比較例4
キシレンに代えてテトラリンを320.2質量部使用し、195℃で撹拌した以外は、実施例6を繰り返したが、195℃で4時間が経過したところで、反応液が固化してしまった。
【0311】
得られたポリカルボジイミド組成物を分析した結果を表4に示す。
【0312】
その後、実施例1と同様にポリカルボジイミド組成物の水分散体の調製を試みたが、ポリカルボジイミド組成物が沈降してしまい、水分散体は得られなかった。
【0313】
比較例5
特許第3630527号の合成例83に記載されている方法を参考にポリカルボジイミド組成物を合成した。
【0314】
具体的には、撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、ヘキサメチレンジイソシアネートを1008質量部、ユニオックスM400(日本油脂社製 ポリエチレングリコールモノメチルエーテル 分子量400)を800質量部装入した。窒素を導入しながら、常圧下で120℃ に加温し、1 時間撹拌した。続けて、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシドを13.5質量部装入し、窒素気流下で185℃に加温して5時間撹拌しようとしたが、2時間が経過したところで反応液が固化してしまった。
【0315】
得られたポリカルボジイミド組成物を分析した結果を表4に示す。
【0316】
その後、実施例1と同様にポリカルボジイミド組成物の水分散体の調製を試みたが、ポリカルボジイミド組成物が沈降してしまい、水分散体は得られなかった。
【0317】
比較例6
米国特許US2853473Aの実施例8に記載されている方法を参考にポリカルボジイミド組成物を合成した。
【0318】
具体的には、撹拌器、温度計、還流管、および窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、室温下で、ヘキサメチレンジイソシアネートを100.0質量部、ユニオックスM550を39.4質量部、1−メトキシ−2−プロパノールを8.9質量部装入した。窒素を導入しながら、常圧下で80℃に加温し、6時間撹拌した。続けて、この溶液に1−エチル−3−メチル−3−フォスフォレン−1−オキシドを2質量部装入し、常圧下で80℃ に加温して、2時間撹拌した。さらに、窒素気流下で120℃に加温して16時間撹拌しようとしたが、14時間が経過したところで反応液が固化してしまった。
【0319】
得られたポリカルボジイミド組成物を分析した結果を表4に示す。
【0320】
その後、実施例1と同様にポリカルボジイミド組成物の水分散体の調製を試みたが、ポリカルボジイミド組成物が沈降してしまい、水分散体は得られなかった。
【0321】
<評価>
・流動性の評価
反応に使用した有機溶媒を留去したポリカルボジイミド組成物の流動性を目視により評価した。評価の基準を下記する。
3 良好な流動性を保っていた。
2 流動しにくかったが、固化はしていなかった。
1 固化してしまい、流動性を完全に失っていた。
【0322】
・水分散性の評価
ポリカルボジイミド組成物(実施例20を除く。)の水分散体の調製において、ポリカルボジイミド組成物の水分散性を目視により評価した。評価の基準を下記する。
4 ブツが確認されず、良好に分散していた。
3 わずかにブツが確認されたが、分散はしていた。
2 ブツが確認されたが、一部は分散していた。
1 まったく分散せず、沈降してしまった。
【0323】
なお、水分散性の評価が1の実施例および比較例については、正確に塗膜を評価(後述)することが困難なため、塗膜を評価しなかった。
【0324】
・塗膜の評価
250ミルのドクターブレードを用いて、樹脂組成物を標準試験板(JIS−G−3303 SPTE)に塗布した後、80℃で10分間および30分間乾燥させ、さらに室温で1時間乾燥させ、樹脂硬化物からなる塗膜を得た。得られた塗膜を下記の方法で評価した。
【0325】
<成膜性>
塗膜(80℃10分間)の外観を目視で評価した。評価の基準を下記する。
4 クリアで平滑な塗膜が確認された。
3 わずかにブツが確認された。
2 ブツが確認された。
1 多くのブツが確認された。
【0326】
<耐水性>
塗膜(80℃10分間)上に、蒸留水をスポットして、23℃24時間後の塗膜外観の変化を目視で確認した。評価の基準を下記する。
4 変化が確認されなかった。
3 わずかに白化が確認された。
2 やや白化が確認された。
1 白化が確認された。
【0327】
<耐溶剤性(耐薬品性)>
上塗膜(80℃10分間及び30分間)に、メチルエチルケトン(実施例20では50%エタノール水溶液)を浸透させたガーゼを、50gの荷重で押し当てながら擦り、塗膜が割れるまでの回数を測定した。評価の基準を下記する。
4 300回以上で塗膜が割れた
3 250回以上300回未満で塗膜が割れた。
2 100回以上250回未満で塗膜が割れた。
1 100回未満で塗膜が割れた。
【0328】
【表1】
【0329】
【表2】
【0330】
【表3】
【0331】
【表4】
【0332】
<考察>
IR強度比(IR
CI/IR
UI+U)が低い比較例1の樹脂組成物は、水分散性および成膜性には優れるものの、塗膜の耐水性および耐薬品性に劣っていた。
【0333】
一方、IR強度比(IR
CI/IR
UI+U)が高い比較例2の樹脂組成物は、ユニオックスM550(すなわち、3つ以上連続するオキシエチレン基を含有するアルコール)を含有し、親水基を十分に含有するにも関わらず、水分散性に劣り、使用できなかった。
【0334】
また、比較例3〜4のように、カルボジイミド化反応における反応温度が過度に高い場合、樹脂組成物が固化し、また、IR強度比(IR
CI/IR
UI+U)が低くなり、カルボジイミド基とウレトンイミン基との総モルに対するウレトンイミン基の割合が高くなった。
【0335】
また、比較例5のように、カルボジイミド化反応における反応温度が過度に低い場合にも、樹脂組成物が固化し、また、IR強度比(IR
CI/IR
UI+U)が低くなり、カルボジイミド基とウレトンイミン基との総モルに対するウレトンイミン基の割合が高くなった。
【0336】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
ポリカルボジイミド組成物が、1級イソシアネート基を有するポリイソシアネートと、アルコール類との反応生成物であり、赤外吸光スペクトルにおいて、カルボジイミド基の伸縮振動由来の2120cm