特許第6170279号(P6170279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイヤモンド電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6170279-内燃機関用点火コイル 図000002
  • 特許6170279-内燃機関用点火コイル 図000003
  • 特許6170279-内燃機関用点火コイル 図000004
  • 特許6170279-内燃機関用点火コイル 図000005
  • 特許6170279-内燃機関用点火コイル 図000006
  • 特許6170279-内燃機関用点火コイル 図000007
  • 特許6170279-内燃機関用点火コイル 図000008
  • 特許6170279-内燃機関用点火コイル 図000009
  • 特許6170279-内燃機関用点火コイル 図000010
  • 特許6170279-内燃機関用点火コイル 図000011
  • 特許6170279-内燃機関用点火コイル 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170279
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】内燃機関用点火コイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/12 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
   H01F38/12 E
   H01F38/12 A
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-48843(P2012-48843)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-187216(P2013-187216A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109093
【氏名又は名称】ダイヤモンド電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 修司
(72)【発明者】
【氏名】庄野 敦士
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−077066(JP,A)
【文献】 特開2008−166582(JP,A)
【文献】 特開2007−081085(JP,A)
【文献】 特開2009−111027(JP,A)
【文献】 特開平03−116704(JP,A)
【文献】 実開平04−005626(JP,U)
【文献】 特開平07−029750(JP,A)
【文献】 特開2012−146896(JP,A)
【文献】 特開2008−277534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/12
F02P 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周鉄芯と、前記外周鉄芯に磁気的に接続される外周鉄芯接続部が設けられた中心鉄芯と、前記中心鉄芯と同軸上に配置される1次ボビンの外周に1次巻線が巻き回された1次コイルと、前記一次コイルの外周側に前記中心鉄芯と同軸的に配置される2次ボビンを具備し且つ当該二次ボビンの外周に2次巻線が巻き回された2次コイルと、前記各鉄芯とコイルを収容し内部にモールド樹脂が充填されたケースと、を備え、
前記中心鉄芯は、前記外周鉄芯接続部の少なくとも一方の断面積が、コイル配置部の断面積より広がっており、
前記外周鉄芯接続部は、前記ケースの開口面へ対向する部分が、前記2次ボビンによって覆われることを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
前記開口面へ対向する部分は、前記2次ボビンに一体的に形成された突部によって覆われることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のプラグホール外に配置される点火コイルに関し、特に、ケース内に充填されるモールド樹脂のクラックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関用点火コイルにおいて、厳しくなる燃焼条件でも確実に着火を行うために鉄芯の磁気性能を向上させて、2次電圧を増大させる必要があり、閉磁路型の点火コイルでは中心鉄芯と外周鉄芯を接続するマグネットの断面積を広くしている。このような点火コイルでは、例えば特開2011−082469号公報(以下「特許文献1」)のような構造が知られている。
【0003】
特許文献1の点火コイルの断面図を図11に示す。図11において、一次コイル16は、絶縁被膜を有するマグネットワイヤを中心コア30の外周に直接巻回して形成してある。また、二次コイル24は、一次コイル16の外周側において、樹脂製のスプール20に対して、一次コイル16を形成するマグネットワイヤよりも細いマグネットワイヤを一次コイル16よりも多い巻回数で巻回して形成してある。
【0004】
高電圧側端面141に形成した凹部143Aは、中心コア30の高電圧側端部において一次コイル16が巻回されていない無巻回部位の内周側位置に形成してある。この無巻回部位における高電圧側端面141は、一次コイル16の軸方向端面よりも所定長さ突出している。そして、高電圧側端面141に形成した凹部143Aの軸方向深さは、無巻回部位144が突出する所定長さよりも浅く(短く)なっている。これにより、一次コイル16が巻回されていない中心コア30の無巻回部位に凹部143Aを形成することになり、凹部143Aの形成により、中心コア30の磁気性能が低下してしまうことを防止することができる。
【0005】
また、中心コア30における低電圧側端部には、永久磁石50を対向配置する面積を確保した鍔部32bが形成されている。本例の低電圧側端面142は、鍔部32bの端面として形成されている。 なお、低電圧側端面142に形成した凹部143Bは、中心コア30の低電圧側端部において一次コイル16が巻回されている部位の内周側位置まで形成されている。ただし、低電圧側端面142には、コアギャップ(間隙)148が隣接して存在することにより、低電圧側端面142の近傍における透磁率はもともと小さく、凹部143Bが存在しても磁気性能に大きな影響はない点火コイル100が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−082469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の内燃機関用点火コイルでは次のような問題が生じている。即ち、特許文献1においては、中心コアにおける低電圧側端部には、鍔部が形成されている。これによって永久磁石を対向配置する面積を確保し、鉄芯の磁気性能を向上させている。しかし、このような構成とすると、中心鉄芯の断面積の広くなる境界部分において、中心鉄芯と1次コイルの対向面がケース開口面に対して垂直方向に生じるため、中心鉄芯と1次コイルの熱膨張係数の違いから発生する中心鉄芯と1次コイル間の剥離によるモールド樹脂のクラックがケース開口面まで波及し、コイル内に水滴が侵入する不具合が発生する恐れがある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、中心鉄芯の断面積の広くなる境界部分において、中心鉄芯と1次コイルの対向面がケース開口面に対して垂直方向に生じても、中心鉄芯と1次コイルの熱膨張係数の違いから発生する中心鉄芯と1次コイル間の剥離によるモールド樹脂のクラックがケース開口面まで波及することのない信頼性に優れた内燃機関用点火コイルを提供することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は次のような構成とする。即ち、外周鉄芯と、前記外周鉄芯に磁気的に接続される外周鉄芯接続部が設けられた中心鉄芯と、前記中心鉄芯と同軸上に配置される1次ボビンの外周に1次巻線が巻き回された1次コイルと、前記一次コイルの外周側に前記中心鉄芯と同軸的に配置される2次ボビンを具備し且つ当該二次ボビンの外周に2次巻線が巻き回された2次コイルと、前記各鉄芯とコイルを収容し内部にモールド樹脂が充填されたケースと、を備え、
前記中心鉄芯は、前記外周鉄芯接続部の少なくとも一方の断面積が、コイル配置部の断面積より広がっており、
前記外周鉄芯接続部は、前記ケースの開口面へ対向する部分が、前記2次ボビンによって覆われることとする。
【0010】
好ましくは、前記開口面へ対向する部分は、前記2次ボビンに一体的に形成された突部によって覆われることとする。
【発明の効果】
【0016】
上記の通り、中心鉄芯のうち外周鉄芯と磁気的に接続される外周鉄芯接続部の少なくとも一方の断面積がコイル配置部の断面積より広がっている内燃機関用点火コイルにおいて、外周鉄芯接続部のケースの開口面側部分は、1次ボビン又は2次ボビンに形成された突部によって覆われることで、中心鉄芯の断面積の広くなる境界部分において、中心鉄芯と1次コイルの対向面がケース開口面に対して垂直方向に生じても、中心鉄芯と1次コイルの熱膨張係数の違いから発生する中心鉄芯と1次コイル間の剥離によるモールド樹脂のクラックがケース開口面まで波及することのない信頼性に優れた内燃機関用点火コイルが実現できる。
【0017】
また、請求項3の発明においては、外周鉄芯の断面積は、中心鉄芯の断面積より広がっている内燃機関用点火コイルにおいて、外周鉄芯のケース開口面側部分は、1次ボビン又は2次ボビンに形成された突部によって覆われることで、外周鉄芯と中心鉄芯の接続部分において、外周鉄芯と1次コイルの対向面がケース開口面に対して垂直方向に生じても、中心鉄芯と1次コイルの熱膨張係数の違いから発生する中心鉄芯と1次コイル間の剥離によるモールド樹脂のクラックがケース開口面まで波及することのない信頼性に優れた内燃機関用点火コイルが実現できる。
【0018】
また、請求項7の発明においては、中心鉄芯のうち外周鉄芯と磁気的に接続される外周鉄芯接続部の少なくとも一方の断面積がコイル配置部の断面積より広がっている内燃機関用点火コイルにおいて、外周鉄芯接続部のケース開口面側部分は、外周鉄芯のコイル対向面又は鉄芯カバーのコイル側鉄芯カバーに形成された突部によって覆われることで、中心鉄芯の断面積の広くなる境界部分において、中心鉄芯と1次コイルの対向面がケース開口面に対して垂直方向に生じても、中心鉄芯と1次コイルの熱膨張係数の違いから発生する中心鉄芯と1次コイル間の剥離によるモールド樹脂のクラックがケース開口面まで波及することのない信頼性に優れた内燃機関用点火コイルが実現できる。
【0019】
さらに、外周鉄芯は鉄芯の磁路がケース開口面と直交する方向になるように配置し、樹脂面から一部が高さ方向上方へ露出している点火コイルでは、ケース開口面方向へ向かうクラックは樹脂面付近の外周鉄芯によって抑止するが、上記構成を用いて開口面から離れた前記ケース側面方向へクラックを波及させた方が更に信頼性に優れた内燃機関用点火コイルが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施例とする内燃機関用点火コイルの断面図である。
図2図1のA部拡大図である。
図3図1のB部拡大図である。
図4】第1の実施例の変形例とする内燃機関用点火コイルの断面図である。
図5】第2の実施例とする内燃機関用点火コイルの断面図である。
図6図5のC部拡大図である。
図7図5のD部拡大図である。
図8】第2の実施例の変形例とする内燃機関用点火コイルの断面図である。
図9】第3の実施例とする内燃機関用点火コイルの断面図である。
図10図9のE部拡大図である。
図11】特許文献1の点火コイルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を示す実施例を図1乃至図10に基づいて説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の第1の実施例とする内燃機関用点火コイルの断面図を図1に、図1のA部拡大図を図2に、図1のB部拡大図を図3に、第1の実施例の変形例とする内燃機関用点火コイルの断面図を図4にそれぞれ示す。
【0023】
図1乃至図3において、内燃機関用点火コイル100の外形を形成するケース60は、絶縁性の樹脂からなる鉛直方向上面に開口面62を有した箱型の一体成形で形成されている。また、当該ケース60には当該点火コイル100をエンジンブロックに取り付け固定するための略三角柱状の取り付けフランジ64を形成している。さらに、当該ケース60の側面にはバッテリからの1次電圧及びECUからの点火信号を受け取るためのコネクタ端子72を有したコネクタ66が形成されている。
【0024】
また、前記点火コイル100の外側側面には2次電圧を点火プラグに供給するための高圧端子70を備える高圧タワー68を形成し、当該高圧タワー68はエンジン上部に形成されたプラグホール内に向かって突出するように形成されている。さらに、前記ケース60の外側底面は当該高圧タワー68方向へ向かってすり鉢状に形成されている。
【0025】
また、前記高圧タワー68には前記高圧端子70と前記点火プラグを電気的に接続するためのスプリングを有したプロテクタを備えている。さらに、前記ケース60は前記プラグホール外に露出して配置されている。
【0026】
また、前記点火コイル100は、珪素鋼板を積層して成形したI字型の中心鉄芯30とロの字型の外周鉄芯40とを日の字型に組み合わせてなる鉄芯と、当該中心鉄芯30の外周に樹脂で成形された略四角柱状の1次ボビン10の外周に銅線の表面にエナメル皮膜加工を施した1次巻線16を100ターン程度巻き回した1次コイルと、当該1次コイルの外周に樹脂で成形された略四角柱状の2次ボビン20の外周に当該1次巻線16より細い銅線の表面にエナメル皮膜加工を施した2次巻線24を8000〜15000ターン程度巻き回した2次コイルと、からなるコイル部で構成されている。
【0027】
また、前記中心鉄芯30は前記珪素鋼板を前記ケース開口面62に対して直交する向きに積層し、前記外周鉄芯40は前記珪素鋼板を前記ケース開口面62に対して直交する向きに積層させて構成している。さらに、前記外周鉄芯40は前記鉄芯の磁路が前記ケース開口面62と並行する方向になるように配置されている。
【0028】
また、前記中心鉄芯30の外周鉄芯接続部32bは前記1次コイルにより発生した磁束と反対方向の磁束を磁路中に発生させるためのマグネット50を備えている。さらに、前記中心鉄芯30は前記1次コイルを配置するコイル配置部32aの高さ方向寸法より当該マグネット50配置側の当該外周鉄芯接続部32bの高さ方向寸法を長くすることで、当該外周鉄芯接続部32bの断面積を確保し、前記鉄芯の磁気性能を向上させている。
【0029】
また、前記中心鉄芯30の外周鉄芯接続部32cは前記外周鉄芯40と直接接続され、当該外周鉄芯接続部32cの高さ方向寸法は前記外周鉄芯40の高さ方向寸法より短くなっている。さらに、前記1次ボビン10の両端には前記1次巻線16の巻き崩れを防止するためのフランジ部12a,12bがそれぞれ形成されている。
【0030】
また、図2に示すように前記外周鉄芯接続部32b側に形成される前記フランジ部12aの前記ケース開口面62方向端部には1次ボビン側突部14aが形成され、当該1次ボビン側突部14aは前記ケース開口面62と平行の向きに突出している。さらに、前記外周鉄芯接続部32bは1次ボビン側面34aからケース開口側面34bに亘る部分を当該1次ボビン側突部14aによって覆われている。
【0031】
また、図3に示すように前記外周鉄芯接続部32c側に形成される前記フランジ部12bの前記ケース開口面62方向端部には1次ボビン側突部14bが形成され、当該1次ボビン側突部14bは前記ケース開口面62と平行の向きに突出している。さらに、前記外周鉄芯40は1次ボビン側面42aからケース開口側面42bに亘る部分を当該1次ボビン側突部14bによって覆われている。
【0032】
また、前記2次ボビン20の一端には前記高圧端子70に2次電圧を供給するための2次高圧端子74が備えられている。さらに前記2次ボビン20の他端には前記1次コイルからの1次電圧を受け取るための2次低圧端子(図示しない)が備えられている。
【0033】
また、前記ケース60内には前記1次コイルへの点火信号を供給するスイッチング素子及びリードフレームを絶縁樹脂モールドしたものからなるイグナイタ80が備えられている。さらに、当該リードフレームは当該スイッチング素子のベース、コレクタ、及び、エミッタのそれぞれが外部と接続するためのイグナイタ端子82としての機能を有している。
【0034】
また、前記コネクタ端子72は前記バッテリから前記1次コイル及び前記2次コイルの低圧側とを結ぶ端子、前記ECUから前記イグナイタ80のベース側に配置された前記イグナイタ端子82を結ぶ端子、及び、前記イグナイタ端子82のエミッタ側に配置された前記イグナイタ端子82からグランドを結ぶ端子の合計3本の端子から構成されている。
【0035】
また、前記イグナイタ端子82及び前記コネクタ端子72は略平板状の金属端子から構成され、前記イグナイタ端子82及び前記コネクタ端子72は前記ケース開口面62と直交する方向に導出され、前記コネクタ端子72は前記ケース60に形成された前記コネクタ66と同一面の前記ケース60の内壁に這って配置されている。さらに、前記イグナイタ端子82及び前記コネクタ端子72のうち2個を同方向に導出させるとともに、それぞれの間で電気的に導通を実現する如く溶接を用いて接続される。
【0036】
また、前記ケース60内には前記点火コイル100の電気的絶縁及び各部材の物理的固定を実現するモールド樹脂90が充填されている。さらに、当該モールド樹脂90は前記ケース開口面62付近まで充填され、前記鉄芯、前記1次コイル、及び、前記2次コイルは前記ケース開口面62付近に形成される樹脂面92より低い位置に備えられている。
【0037】
また、前記フランジ部12aと前記1次ボビン側面34aの間、前記1次ボビン側突部14aと前記ケース開口側面34bの間、前記フランジ12bと前記1次ボビン側面42aの間、及び、前記1次ボビン側突部14bと前記ケース開口側面42bの間には前記モールド樹脂90が充填されている。
【0038】
上記構成により、前記外周鉄芯接続部32b側に形成される前記フランジ部12aの前記ケース開口面62方向端部に前記1次ボビン側突部14aを形成し、前記1次ボビン側突部14aは前記ケース開口面62と平行の向きに突出している。また、前記外周鉄芯接続部32bは前記1次ボビン側面34aから前記ケース開口側面34bに亘る部分を前記1次ボビン側突部14aによって覆われている。これにより、前記フランジ部12aと前記1次ボビン側面34aの間に充填される前記モールド樹脂90に前記1次ボビン10及び前記中心鉄芯30の熱膨張係数の違いによるクラックが発生しても、前記1次ボビン側突部14aによってクラックは前記ケース開口面62と平行する方向(図2矢印)へ曲折されるため、前記ケース開口面62までクラックを波及させない。
【0039】
また、前記外周鉄芯接続部32c側に形成される前記フランジ部12bの前記ケース開口面62方向端部に前記1次ボビン側突部14bを形成し、前記1次ボビン側突部14bは前記ケース開口面62と平行の向きに突出している。さらに、前記外周鉄芯40は前記1次ボビン側面42aから前記ケース開口側面42bに亘る部分を前記1次ボビン側突部14bによって覆われている。これにより、前記フランジ部12bと前記1次ボビン側面42aの間に充填される前記モールド樹脂90に前記1次ボビン10及び前記外周鉄芯40の熱膨張係数の違いによるクラックが発生しても、前記1次ボビン側突部14bによってクラックは前記ケース開口面62と平行する方向(図3矢印)へ曲折されるため、前記ケース開口面62までクラックを波及させない。
【0040】
上記実施例1の変形例として、前記点火コイル100は図4に示すようにコの字型に成形した前記外周鉄芯40を前記鉄芯の磁路が前記ケース開口面62と直交する方向に配置した構成としてもよいし、前記点火コイル100の構成は設計事情によって適宜変更してもよい。また、前記1次ボビン側突部14aは前記中心鉄芯30の前記ケース開口側面34bを覆う形状であれば設計事情によって任意に変更してもよい。さらに、前記1次ボビン側突部14aは前記1次ボビン10の前記フランジ12aに形成する以外にも前記中心鉄芯30の前記ケース開口側面34bを覆う形状であれば設計事情によって任意の位置に形成してもよい。
【0041】
また、前記1次ボビン側突部14bは前記外周鉄芯40の前記ケース開口側面42bを覆う形状であれば設計事情によって任意に変更してもよい。さらに、前記1次ボビン側突部14bは前記1次ボビン10の前記フランジ12bに形成する以外にも前記外周鉄芯40の前記ケース開口側面42bを覆う形状であれば設計事情によって任意の位置に形成してもよい。
【0042】
また、前記点火コイル100は前記外周鉄芯接続部32bが前記1次ボビン側面34aから前記ケース開口側面34bに亘る部分を前記1次ボビン側突部14aによって覆われている構成又は前記外周鉄芯40が前記1次ボビン側面42aから前記ケース開口側面42bに亘る部分を前記1次ボビン側突部14bによって覆われている構成のどちらか一方の構成のみ実施してもよい。さらに、前記点火コイル100は前記中心鉄芯30の外周に前記2次コイルを配置し、前記2次コイルの外周に前記1次コイルを配置する構成としてもよいし、前記鉄芯は2個のコの字型に成形した前記外周鉄芯40を組み合わせて構成してもよい。
【実施例2】
【0043】
第2の実施例とする内燃機関用点火コイルの断面図を図5に、図5のC部拡大図を図6に、図5のD部拡大図を図7に、第2の実施例の変形例とする内燃機関用点火コイルの断面図を図8にそれぞれ示す。
【0044】
第2の実施例においては前記第1の実施例で説明した前記外周鉄芯接続部32bは前記1次ボビン側面34aから前記ケース開口側面34bに亘る部分及び前記外周鉄芯40は前記1次ボビン側面42aから前記ケース開口側面42bに亘る部分を前記1次ボビン側突部14a,14bによって覆われている構成を除いた他の構成は同一であるため説明は省略する。
【0045】
図5乃至図7において、図6に示すように前記外周鉄芯接続部32b側の前記2次ボビン20の前記ケース開口面62側には2次ボビン側突部22aが形成され、当該2次ボビン側突部22aは前記ケース開口側面34b沿いを前記ケース開口面62と平行の向きに突出している。また、前記外周鉄芯接続部32bは前記1次ボビン側面34aを前記1次ボビン10の前記フランジ12aによって覆われ、前記外周鉄芯接続部32bは前記ケース開口側面34bを当該2次ボビン側突部22aによって覆われている。
【0046】
また、図7に示すように前記外周鉄芯接続部32c側の前記2次ボビン20の前記ケース開口面62側には2次ボビン側突部22bが形成され、当該2次ボビン側突部22bは前記ケース開口側面42b沿いを前記ケース開口面62と平行の向きに突出している。さらに、前記外周鉄芯40は前記1次ボビン側面42aを前記1次ボビン10の前記フランジ12bによって覆われ、前記外周鉄芯40の前記ケース開口側面42bを当該2次ボビン側突部22bによって覆われている。
【0047】
また、前記フランジ部12aと前記1次ボビン側面34aの間、前記2次ボビン側突部22aと前記ケース開口側面34bの間、前記フランジ12bと前記1次ボビン側面42aの間、及び、前記2次ボビン側突部22bと前記ケース開口側面42bの間には前記モールド樹脂90が充填されている。
【0048】
上記構成により、前記外周鉄芯接続部32b側の前記2次ボビン20の前記ケース開口面62側に前記2次ボビン側突部22aを形成し、前記2次ボビン側突部22aは前記ケース開口側面34b沿いを前記ケース開口面62と平行の向きに突出している。また、前記外周鉄芯接続部32bは前記ケース開口側面34bを前記2次ボビン側突部22aによって覆われていることで、前記フランジ部12aと前記1次ボビン側面34aの間に充填される前記モールド樹脂90に前記1次ボビン10及び前記中心鉄芯30の熱膨張係数の違いによるクラックが発生しても、前記2次ボビン側突部22aによってクラックは前記ケース開口面62と平行する方向(図6矢印)へ曲折されるため、前記ケース開口面62までクラックを波及させない。
【0049】
また、前記外周鉄芯接続部32c側の前記2次ボビン20の前記ケース開口面62側に前記2次ボビン側突部22bを形成し、前記2次ボビン側突部22bは前記ケース開口側面42b沿いを前記ケース開口面62と平行の向きに突出している。さらに、前記外周鉄芯40の前記ケース開口側面42bを前記2次ボビン側突部22bによって覆われている。これにより、前記フランジ部12bと前記1次ボビン側面42aの間に充填される前記モールド樹脂90に前記1次ボビン10及び前記外周鉄芯40の熱膨張係数の違いによるクラックが発生しても、前記2次ボビン側突部22bによってクラックは前記ケース開口面62と平行する方向(図7矢印)へ曲折されるため、前記ケース開口面62までクラックを波及させない。
【0050】
上記実施例2の変形例として、前記点火コイル100は図8に示すようにコの字型に成形した前記外周鉄芯40を前記鉄芯の磁路が前記ケース開口面62と直交する方向に配置した構成としてもよいし、前記点火コイル100の構成は設計事情によって適宜変更してもよい。また、前記2次ボビン側突部22aは前記中心鉄芯30の前記ケース開口側面34bを覆う形状であれば設計事情によって任意に変更してもよい。さらに、前記2次ボビン側突部22bは前記外周鉄芯40の前記ケース開口側面42bを覆う形状であれば設計事情によって任意に変更してもよい。
【0051】
また、前記点火コイル100は前記外周鉄芯接続部32bが前記ケース開口側面34bを前記2次ボビン側突部22aによって覆われている構成又は前記外周鉄芯40が前記ケース開口側面42bを前記2次ボビン側突部22bによって覆われている構成のどちらか一方の構成のみ実施してもよい。さらに、前記点火コイル100は前記中心鉄芯30の外周に前記2次コイルを配置し、前記2次コイルの外周に前記1次コイルを配置する構成としてもよいし、前記鉄芯は2個のコの字型に成形した前記外周鉄芯40を組み合わせて構成してもよい。
【実施例3】
【0052】
第3の実施例とする内燃機関用点火コイルの断面図を図9に、図9のE部拡大図を図10にそれぞれ示す。
【0053】
第3の実施例においては前記第1の実施例で説明した前記珪素鋼板を積層して成形したI字型の前記中心鉄芯30とロの字型の前記外周鉄芯40とを日の字型に組み合わせてなる前記鉄芯、前記鉄芯の磁路が前記ケース開口面62と並行する方向になるように配置する前記外周鉄芯40、及び、前記外周鉄芯接続部32bは前記1次ボビン側面34aから前記ケース開口側面34bに亘る部分及び前記外周鉄芯40は前記1次ボビン側面42aから前記ケース開口側面42bに亘る部分を前記1次ボビン側突部14a,14bによって覆われている構成を除いた他の構成は同一であるため説明は省略する。
【0054】
図9及び図10において、前記点火コイル100は、珪素鋼板を積層して成形したI字型の前記中心鉄芯30とコの字型の外周鉄芯40とからなる鉄芯としている。また、前記中心鉄芯30及び当該外周鉄芯40は前記珪素鋼板を前記ケース開口面62に対して直交する向きに積層させて構成し、当該外周鉄芯40は当該鉄芯の磁路が前記ケース開口面62と直交する方向になるように配置されている。さらに、当該外周鉄芯40は前記中心鉄芯30及び前記マグネット50との接続面を除いた周囲をポリブチレンテレフタレートで成形された鉄芯カバー52で覆われている。
【0055】
また、図10に示すように前記鉄芯カバー52は前記2次コイル側に配置されるコイル側鉄芯カバー54aと前記フランジ部12a側に配置されるコイル側鉄芯カバー54bとから構成される。さらに、前記外周鉄芯接続部32b側に配置される当該コイル側鉄芯カバー54bには鉄芯カバー側突部56が形成されている。
【0056】
また、前記鉄芯カバー側突部56は前記ケース開口側面34bまで前記ケース開口面62と垂直の向きに突出している。さらに、前記外周鉄芯接続部32bは前記1次ボビン側面34aを前記1次ボビン10の前記フランジ12aによって覆われ、前記外周鉄芯接続部32bは前記ケース開口側面34bを前記鉄芯カバー側突部56によって覆われている。
【0057】
また、前記モールド樹脂90は前記ケース開口面62付近まで充填され、前記鉄芯、前記1次コイル、及び、前記2次コイルは前記ケース開口面62付近に形成される樹脂面92より低い位置に備えられている。さらに、前記外周鉄芯40は当該樹脂面92から一部が高さ方向上方へ露出し、前記コイル側鉄芯カバー54aは当該樹脂面92より低い位置で備えられている。
【0058】
また、前記フランジ部12aと前記1次ボビン側面34aの間及び前記鉄芯カバー側突部56と前記ケース開口側面34bの間には前記モールド樹脂90が充填されている。
【0059】
上記構成により、前記外周鉄芯接続部32b側に配置される前記コイル側鉄芯カバー54bに前記鉄芯カバー側突部56を形成し、前記鉄芯カバー側突部56は前記ケース開口側面34b沿いまで前記ケース開口面62と垂直の向きに突出している。また、前記外周鉄芯接続部32bは前記ケース開口側面34bを前記鉄芯カバー側突部56によって覆われている。これにより、前記フランジ部12aと前記1次ボビン側面34aの間に充填される前記モールド樹脂90に前記1次ボビン10及び前記中心鉄芯30の熱膨張係数の違いによるクラックが発生しても、前記鉄芯カバー側突部56によってクラックは前記ケース開口面62と平行する方向(図10矢印)へ曲折されるため、前記ケース開口面62までクラックを波及させない。
【0060】
また、前記外周鉄芯40は前記鉄芯の磁路が前記ケース開口面62と直交する方向になるように配置し、前記樹脂面92から一部が高さ方向上方へ露出している前記点火コイル100では、前記ケース開口面62方向へ向かうクラックは前記樹脂面92付近の前記外周鉄芯40によって抑止するが、上記構成を用いて前記開口面92から離れた前記ケース60側面方向へクラックを波及させた方が信頼性に優れた内燃機関用点火コイルとなる。
【0061】
上記実施例3の変形例として、前記鉄芯カバー側突部56は前記中心鉄芯30の前記ケース開口側面34bを覆う形状であれば設計事情によって任意に変更してもよい。また、前記鉄芯カバー側突部56を設けずに前記外周鉄芯40によって前記中心鉄芯30の前記ケース開口側面34bを覆う構成としてもよい。さらに、前記点火コイル100は前記中心鉄芯30の外周に前記2次コイルを配置し、前記2次コイルの外周に前記1次コイルを配置する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10:1次ボビン
12a,12b:フランジ部
14a,14b:1次ボビン側突部
16:1次巻線
20:2次ボビン
22a,22b:2次ボビン側突部
24:2次巻線
30:中心鉄芯
32a:コイル配置部
32b,32c:外周鉄芯接続部
34a:1次ボビン側面
34b:ケース開口側面
40:外周鉄芯
42a:1次ボビン側面
42b:ケース開口側面
50:マグネット
52:鉄芯カバー
54a,54b:コイル側鉄芯カバー
56:鉄芯カバー側突部
60:ケース
62:ケース開口面
64:取り付けフランジ
66:コネクタ
68:高圧タワー
70:高圧端子
72:コネクタ端子
74:2次高圧端子
80:イグナイタ
82:イグナイタ端子
90:モールド樹脂
92:樹脂面
100:点火コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11