【実施例1】
【0015】
本発明の第1の実施例とする内燃機関用の点火コイルの斜視図を
図1に、
図1の矢印(A)方向から見たB-B断面図を
図2に、鉄芯アセンブリの組み立てを表す斜視図を
図3に、鉄芯アセンブリの斜視図を
図4に、鉄芯アセンブリの側面断面図を
図5にそれぞれ示す。
【0016】
図1及び
図2において、点火コイル100の外形を形成するケース70は、絶縁性を有した樹脂からなる鉛直方向上面に開口面70aを形成した箱型に成形されている。また、当該ケース70には当該点火コイル100をエンジンブロックに取り付け固定するための略三角柱状のフランジ72を形成している。
【0017】
また、前記点火コイル100は、珪素鋼板を30枚程度積層して形成したI字型の中心鉄芯30とコの字型の外周鉄芯40を組み合わせて閉磁路構造とする鉄芯と、当該中心鉄芯30の外周に樹脂で成形した1次ボビンの外周に1次巻線を100ターン程度巻き回した1次コイル10と、当該1次コイル10の外周に樹脂で成形した2次ボビンの外周に2次巻線を8000〜15000ターン程度巻き回した2次コイル20のコイル部から構成されている。さらに、前記中心鉄芯30及び前記外周鉄芯40は、前記ケース開口面70aに対して平行方向に当該珪素鋼板を積層している。
【0018】
また、前記外周鉄芯40は前記鉄芯の磁路が前記ケース開口面70aと垂直方向になるように配置されている。さらに、前記中心鉄芯30と前記外周鉄芯40の接続面の一方には前記1次コイル10に発生した磁束と反対方向の磁束を磁路中に発生させるためのマグネット32を備えている。
【0019】
また、前記ケース70の外側底面には、エンジン上部に形成されたプラグホール内に向かって突出する高圧タワー74が形成され、当該高圧タワー74は前記2次コイル20から出力される2次電圧を点火プラグに供給するための高圧端子76を備えている。
【0020】
また、前記2次コイル20の一端には前記高圧端子76に2次電圧を供給するための2次高圧端子22が備えられている。さらに、前記2次コイル20の他端には前記1次コイル10からの1次電圧を受け取るための2次低圧端子(図示しない)が備えられている。
【0021】
また、前記ケース70内には前記1次コイル10への点火信号を供給するスイッチング素子及びリードフレームを絶縁樹脂モールドしたものからなるイグナイタ82が備えられている。さらに、当該リードフレームは当該スイッチング素子のベース、コレクタ、及び、エミッタのそれぞれが外部と接続するためのイグナイタ端子84としての機能を有している。
【0022】
また、前記ケース70の側面にはコネクタ78が形成され、当該コネクタ78にはバッテリ、ECU、前記鉄芯、及び、前記イグナイタ82と電気的に接続するためのコネクタ端子80がインサート成形されている。さらに、当該コネクタ端子80は当該バッテリから前記1次コイル10及び前記2次コイル20の低圧側を結ぶ端子と、当該ECUから前記イグナイタ82のベース側に配置された前記イグナイタ端子84を結ぶ端子と、前記イグナイタ82のエミッタ側に配置された前記イグナイタ端子84及び前記鉄芯からグランドを結ぶ端子と、の合計3本の端子から構成されている。
【0023】
また、前記コネクタ端子80及び前記イグナイタ端子84は略平板状の金属端子からなり、前記コネクタ端子80及び前記イグナイタ端子84は前記ケース開口面70aと垂直方向に導出され、前記コネクタ端子80は前記ケース70に形成された前記コネクタ78と同一面の前記ケース70の内壁に沿って配置されている。さらに、前記コネクタ端子80及び前記イグナイタ端子84のうち2個を同方向に導出させるとともに、それぞれの間で電気的に導通を実現する如く溶接を用いて接続されている。
【0024】
また、前記ケース70内には前記点火コイル100の電気的絶縁及び各部材の物理的固定を実現する前記モールド樹脂90が充填されている。さらに、前記モールド樹脂90は前記ケース開口面70a付近まで充填され、前記中心鉄芯30、前記1次コイル10、前記2次コイル20、及び、前記イグナイタ82は前記ケース開口面70a付近に形成される樹脂面92より低い位置に備えられ、前記外周鉄芯40のコイル平行部42の一部は当該樹脂面92から高い位置に露出している。
【0025】
また、前記外周鉄芯40の周囲は前記モールド樹脂90と剥離する材質のエラストマで成形された第1のカバー60を備えている。さらに、当該第1のカバー60は前記外周鉄芯40におけるケース開口面70aに対して垂直となる面44及び前記2次コイル20と対向する面46に2次コイル対向部62を備えている。
【0026】
また、前記第1のカバー60の周囲は前記モールド樹脂90と接着する材質のPBT(ポリブチレンテレフタレート)で成形された第2のカバー50を備えている。さらに、当該第2のカバー50は前記樹脂面92より高い位置に第2のカバー突出部50aを備えている。
【0027】
図3乃至
図5において、前記第1のカバー60は前記2次コイル対向部62と反対側の面に第1のカバー開口部66を形成し、前記外周鉄芯40の露出部42aは当該第1のカバー開口部66により前記第2のカバー50に直接覆われている。また、前記第1のカバー60は前記外周鉄芯40の前記中心鉄芯30及び前記マグネット32との接続面、並びに当該第1のカバー開口部66を除いた周囲を覆っている。さらに、前記第2のカバー50は第1のカバー側面部64及び当該第1のカバー開口部66を覆うように配置され、前記第1のカバー60に嵌合して固定されている。
【0028】
また、前記第2のカバー50の側面部54には前記ケース70に前記コイル部を収用した際に、前記ケース70内壁と圧接して固定するための第2のカバー突部52が形成されている。さらに、前記第2のカバー側面部54は前記樹脂面92より低い位置になるように形成される。
【0029】
上記構成により、前記外周鉄芯40の周囲は前記第1のカバー60を備え、前記第1のカバー60は前記外周鉄芯40の前記中心鉄芯30及び前記マグネット32との接続面、並びに前記第1のカバー開口部66を除いた周囲を覆っている。これにより、前記外周鉄芯40が前記モールド樹脂90から剥離しているため、点火コイル動作時の高温による膨張や停止時放置時の低温による収縮することによるクラック発生を防ぐことができる。また、前記外周鉄芯40は前記ケース開口面70aに対して垂直方向に前記珪素鋼板を積層しているため前記ケース開口面70a方向へのクラックが発生し易いが、上記構成より前記珪素鋼板の積層面が前記モールド樹脂90と剥離することで前記樹脂面92に対するクラックの発生を防ぐことができる。
【0030】
また、前記第1のカバー開口部66は前記鉄芯の高さ寸法Hに前記第1のカバー60の厚さが含まれない位置となるように形成し、前記外周鉄芯40の前記露出部42aは前記第1のカバー開口部66により前記第2のカバー50に直接覆われることで、前記鉄芯の高さ寸法H(
図5記載)が前記第2のカバー50の厚さCh(
図5記載)のみに抑えられるため、前記点火コイル100の高さ寸法を抑え、小型化することができる。
【0031】
また、前記外周鉄芯40は前記鉄芯の磁路が前記ケース開口面70aと垂直方向になるように配置され、前記外周鉄芯40の前記コイル平行部42の一部は当該樹脂面92から高い位置に露出しているとともに、前記第1のカバー60の周囲は前記第2のカバー50を備え、前記外周鉄芯40の前記露出部42aは前記第1のカバー開口部66により前記第2のカバー50に直接覆われている。これにより、前記外周鉄芯40の前記露出部42aを外部環境から保護することができる。
【0032】
上記実施例1の変形例として、前記中心鉄芯30及び前記外周鉄芯40の形状並びに積層する珪素鋼板の枚数は設計事情によって適宜変更してもよいし、前記1次コイル10及び前記2次コイル20に巻き回す巻線の巻数は前記点火コイル100に要求される出力等、設計事情によって任意に変更してもよい。また、前記第1のカバー60は弾性及び前記モールド樹脂90と剥離する性質を有していればシリコンなどエラストマ以外の材質を用いて成形してもよい。さらに、前記第2のカバー50は前記モールド樹脂90と接着する性質を有していればPET((ポリエチレンテレフタレート)などPBT以外の材質を用いて成形してもよい。
【0033】
また、前記第1のカバー60は前記外周鉄芯40の前記2次コイル対向面46及び前記外周鉄芯側面44の少なくとも一部を覆う位置に配置してもよいし、前記第1のカバー60は前記外周鉄芯40の角部のみを覆う位置に配置してもよい。さらに、前記第2のカバー50は少なくとも前記外周鉄芯40の前記露出部42aに配置すれば、その他の構成は設計事情によって任意に変更してもよい。
【0034】
また、前記点火コイル100は、少なくとも前記第2のカバー50の前記第2のカバー突出部50aが前記樹脂面92から突出すれば、その他の構成は設計事情によって任意の形状に変更してもよい。さらに、前記第2のカバー50と前記第1のカバー60の固定方法は嵌合以外でも、例えば接着剤等を用いて固定してもよい。
【0035】
また、前記第1のカバー開口部66は前記第1のカバー60の厚さによって前記鉄芯の高さ寸法が増加すること防ぐ位置であれば、設計事情によって任意の形状に変更してもよい。