特許第6170291号(P6170291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170291
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】自動水遣り装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 27/00 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
   A01G27/00 503B
   A01G27/00 502F
   A01G27/00 502W
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-235431(P2012-235431)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-83013(P2014-83013A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】597047956
【氏名又は名称】株式会社サイテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100103148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 輝美
(72)【発明者】
【氏名】外西 伊知郎
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−056342(JP,U)
【文献】 特開昭63−146728(JP,A)
【文献】 特開昭63−137624(JP,A)
【文献】 特開2004−298140(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3177959(JP,U)
【文献】 実開平01−149934(JP,U)
【文献】 欧州特許第00876755(EP,B1)
【文献】 米国特許第03603034(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00−29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を収納する容器と、
プランター内に設置され、前記容器から水の供給を受ける水遣りパイプと、を有する自動水遣り装置であって、
前記水遣りパイプの下面には長手方向に所定の深さと、所定の幅を有する溝が形成され、前記水遣りパイプの下面の溝には一定間隔で所定サイズの水遣り穴が形成され、前記容器から送られた水を前記水遣り穴から自動的に前記プランターに供給し、
前記水遣り穴近傍に位置する前記プランター内の土に含まれる水分量が一定値を超えると該土側からの圧力によって前記水遣り穴が塞がり、前記水遣り穴からの水の供給が停止し、前記水遣り穴近傍の前記土が乾くと、該土側からの圧力が下がり、前記水遣り穴から前記水遣りパイプに残る水が前記プランターに供給され、前記プランターに自動的に水を供給することを特徴とする自動水遣り装置。
【請求項2】
前記容器にはコックが設けられ、該コックを一定時間開くことによって、前記プランターに水の供給を行ない、前記水遣りパイプに形成する前記水遣り穴の大きさ、及び前記コックを開く時間の実測値を計測し、前記コックを開く回数や時間を予め設定することを特徴とする請求項1に記載の自動水遣り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水道等の給水設備のない、例えばマンションのベランダ等で行う家庭菜園やガーデニングにおける自動水遣り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日のガーデニングブームに伴い、一般家庭でも家庭菜園や草花等の栽培が行われ、庭を持たないマンションやオフィースのベランダ等を利用して植物の栽培が行われている。このような家庭菜園や草花等の栽培には適宜間隔を置いて水遣りを行わなければならない。しかし、一般にマンションやオフィースのベランダには水道等の施設がなく、例えば台所や風呂場等から水を運び、植物に与えているのが現状である。また、仕事や旅行等によって長期間植物に水遣りを行うことができない場合もある。
【0003】
このような問題を解決するため、特許文献1は雨水を利用して植物への水遣りを行うプランターを開示する。例えば、直接降り注ぐ雨や雨樋を通して流れ込む雨水を濾過し、プランターに供給し、植物への水遣りを行う発明である。
【0004】
また、特許文献2は水槽に電磁弁とタイマを設け、タイマ時間に合わせて電磁弁を駆動して水槽内の水を植物に定期的に与える発明を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−189355号公報
【特許文献2】特開2002−369632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の発明によれば、雨水を利用するため雨の少ない時期には、植物に充分な水遣りを行うことができない。また、特許文献2の発明の場合、電磁弁やタイマを使用するため電源装置が必要になる。しかし、一般にマンション等のベランダには電源設備が設けられていない場合が多く、延長コード等を使用して室内の電源を使用することになる。
【0007】
そこで、本発明は水道施設や電源設備がない、例えばマンションのベランダ等で家庭菜園や草花等の栽培を行う場合でも、植物に充分な水遣りを自動的に行うことができる自動水遣り装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は本発明によれば、水を収納する容器と、プランター内に設置され、前記容器から水の供給を受ける水遣りパイプとを有する自動水遣り装置であって、前記水遣りパイプの下面には長手方向に所定の深さと、所定の幅を有する溝が形成され、前記水遣りパイプの下面の溝には一定間隔で所定サイズの水遣り穴が形成され、前記容器から送られた水を前記水遣り穴から自動的に前記プランターに供給し、 前記水遣り穴近傍に位置する前記プランター内の土に含まれる水分量が一定値を超えると該土側からの圧力によって前記水遣り穴が塞がり、前記水遣り穴からの水の供給が停止し、前記水遣り穴近傍の前記土が乾くと、該土側からの圧力が下がり、前記水遣り穴から前記水遣りパイプに残る水が前記プランターに供給され、前記プランターに自動的に水を供給する自動水遣り装置を提供することによって達成できる。
【0009】
また、上記容器にはコックが設けられ、該コックを一定時間開くことによって、上記プランターに水の供給を行ない、前記水遣りパイプに形成する前記水遣り穴の大きさ、及び前記コックを開く時間の実測値を計測し、前記コックを開く回数や時間を予め設定する
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリタンク等の容器からプランター内に配設された水遣りパイプに水を供給することによって、水遣りパイプに形成された溝及び水遣り穴を介して一定間隔で植物に水を供給することができ、更に長期間留守にする場合でも、自動的に植物に水遣りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の自動水遣り装置を使用したプランターの例である。
図2】プランターの構成を示す図である。
図3】水遣りパイプの構成を説明する図である。
図4】(a)は、図3のA−A断面図を示し、(b)は、図3のB−B断面図を示す。
図5】本発明の変形例の自動水遣り装置を説明する図である。
図6】本発明の他の変形例の自動水遣り装置を説明する図である。
図7】他の自動水遣り装置の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施形態の自動水遣り装置を使用したプランターの例である。本例において、プランター1はポリタンク2から自動的に水遣りが行われ、プランター3はポリタンク4から自動的に水遣りが行われる。プランター1及び3、ポリタンク2及び4は上中下の3段で構成されたプランタ等置台5に載置され、上段5aにはポリタンク2及び4が載置され、中段5bにはプランター1が載置され、下段5cにはプランター3が載置されている。
尚、プランタ等置台5の各段5a〜5cは4本の支柱5d〜5gに螺子等で締着され、例えばマンションのベランダ等に置かれている。
【0015】
ポリタンク2及び4は、例えば10リットルの容器であり、市販のポリタンクを使用することもできる。このポリタンク2及び4にはコック6及び7が設けられ、このコック6及び7を開くことによってポリタンク2及び4からプランター1及び3に水を供給することができる。例えば、ポリタンク2に設けられたコック6を開くことによってプランター1に水を供給し、ポリタンク4に設けられたコック7を開くことによってプランター3に水を供給することができる。
【0016】
ポリタンク2及び4には所謂空気穴8及び9が設けられ、ポリタンク2及び4からの給水時、空気穴8からポリタンク2に空気を流入し、空気穴9からポリタンク4に空気を流入する。尚、ポリタンク2及び4に給水を行う場合には、例えばコック6及び7を取り外し、コック6及び7の取り付け部(開口)から水を補給する。この場合、上記空気穴8又は9の直下まで給水を行う。
【0017】
また、図1に示すように、ポリタンク2からプランター1に水遣りホース10が延びており、水遣りホース10の一端は上記コック6に取り付けられ、他端はプランター1内に配設された水遣りパイプに取り付けられている。同様に、ポリタンク4からプランター3に水遣りホース11が延びており、水遣りホース11の一端は上記コック7に取り付けられ、他端はプランター3内に配設された水遣りパイプに取り付けられている。
【0018】
図2はプランター1及び3の構成を説明する図である。尚、プランター1及び3は基本的に同じ構成であり、本例ではプランター1について具体的に説明する。
【0019】
プランター1内には水遣りパイプ13が配設されている。この水遣りパイプ13には上記水遣りホース10の一端が取り付けられている。また、水遣りパイプ13には足部材13a、13bが設けられ、この足部材13a、13bを利用してプランター1に水遣りパイプ13を置くことによって、水遣りパイプ13はプランター1内の所定の位置に設置される。
【0020】
尚、プランター1内には、例えば腐葉土等を含む土14が入っており、家庭菜園や草花等の植物が栽培される。また、水遣りパイプ13は、例えば土14を2cm程度被った位置に配設されている。
また、プランター3については具体的に説明しないが、上記プランター1の構成と同様であり、プランター3の所定位置に水遣りパイプ13が配設されている。
【0021】
次に、プランター1及び3に配設された上記水遣りパイプ13の構成について説明する。図3は水遣りパイプ13の構成を説明する図であり、本例の水遣りパイプ13には長手方向に沿って所定の深さで、所定幅の溝15が形成されている。例えば、本例において水遣りパイプ13の厚さを4mmとした場合、溝15の深さは2mmに形成され、所定幅は1〜3mmに形成されている。
【0022】
さらに、上記溝15にはパイプ13の長手方向に沿って一定間隔に小さな水遣り穴16が形成されている。図4(a)、(b)は上記水遣りパイプ13の構成を説明する図である。ここで、図4(a)は上記図3のA−A断面を示し、同図(b)は上記図3のB−B断面を示す。すなわち、図4(a)は上記水遣り穴16が溝15に形成された位置の水遣りパイプ13の断面であり、同図(b)は上記水遣り穴16が溝15に形成されていない位置の水遣りパイプ13の断面である。上記水遣り穴16は、例えば直径2mm程度であり、プランター1及び3内の土14に自動的に水遣りを行うための構成である。尚、本例において、上記溝15に形成する水遣り穴16は、例えば2cmの配設間隔で設けられている。
【0023】
以上の構成の自動水遣り装置において、プランター1及び3に自動的に水遣りを行う場合、以下のようにして行う。尚、ポリタンク2及び4には夫々10リットルの水が入っているものとする。
【0024】
先ず、コック6を10秒ほど開き、ポリタンク2から水遣りホース10を通してプランター1の水遣りパイプ13に水を供給する。水遣りパイプ13に流れ込んだ水は水遣りパイプ13に形成された水遣り穴16を介して土14に流れ込み、プランター1に植えられた野菜や草花等の植物に水を供給する。同様に、コック7を10秒ほど開き、ポリタンク4から水遣りホース11を通してプランター3の水遣りパイプ13に水を供給し、水遣りパイプ13に形成された水遣り穴16を介してプランター3に植えられた野菜や草花等の植物に水を供給する。
【0025】
この場合、水遣りパイプ13内に流れ込んだ水は全て水遣り穴16を介してプランター1に供給される訳ではなく、水遣り穴16近傍の溝15に位置する土14に含まれる水分量が一定値を超えると、水遣り穴16が土14側からの圧力によって塞がり、水遣り穴16からの水の供給が止まる。同様に、プランター3側でも、水遣り穴16近傍の溝15に位置する土14に含まれる水分量が一定値を超えると、水遣り穴16からの水の供給が止まる。
【0026】
その後、水遣り穴16近傍の溝15に位置する土14が乾くと、土14側からの圧力が下がり、水遣り穴16が開いて水遣りパイプ13に残る水が水遣り穴16を介してプランター1及び3に供給される。その後、水遣り穴16近傍の溝15に位置する土14に含まれる水分量が一定値を超えると、再度水遣り穴16が塞がりプランター1及び3への水の供給が止まる。
【0027】
以下、同様の動作が繰り返され、水遣りパイプ13を介してプランター1及び3に水が供給される。そして、例えば最初にコック6及び7を開いて12時間後に水遣りパイプ13に残る水が無くなる。尚、この時間は前述の水遣り穴16の直径やコック6及び7を開く時間等によって決まり、例えば上記例では朝夕2回10秒程度コック6及び7を開き水遣りパイプ13に水を供給することによって、この間自動的にプランター1及び3に水遣りを行うことができる。
【0028】
また、上記例では朝夕2回10秒程度コック6及び7を開き、10リットルのポリタンク2及び4を使用することによって、例えば1週間プランター1及び3に水遣りを行うことが可能である。また、予め水遣りパイプ13に形成する水遣り穴16の大きさやコック6及び7を開く時間等の実測値を計測することによって、コック6及び7を開く回数や時間等を任意に設定でき、極めて利便性のよい自動水遣り装置とすることができる。
【0029】
また、コック6及び7を開放したままにすることによって、例えば仕事や旅行で数週間家を留守にする場合でも対応でき、この間プランター1及び3に自動的に水遣りを行うことができる。
【0030】
また、上記実施形態の説明では、ポリタンク2及び4に水を補給する場合、コック6及び7を取り外して行うように説明したが、ポリタンク2及び4の上面に蓋付きの開口を設け、ポリタンク2及び4に水の補給を行うように構成してもよい。
【0031】
図5は、本発明の変形例の自動水遣り装置を説明する図である。この自動水遣り装置は、同図に示すように、ポリタンク20の下面にパイプ差込口21が設けられ、パイプ22をこのパイプ差込口21に差し込み、プランター20とパイプ22を一体とする構成である。この場合、パイプ22の先端は前述の水遣りパイプ13に接続され、前述の例と同様、自動的にプランター1及び3に水遣りを行うことができる。
【0032】
また、図6は本発明の他の変形例の自動水遣り装置を説明する図である。この場合、同図に示すように、更にパイプ22に水遣りパイプ23を連結する。ここで、水遣りパイプ23はゴム製又はスパイラル金属製のフレキシブルな連結パイプ24を介装して上記パイプ22に接続する。このように構成することによっても、自動的にプランター1及び3に水遣りを行うことができる。
【0033】
特に、この構成の自動水遣り装置を使用する場合、上段5aにポリタンク20を置き、中段5b又は下段5cに置かれたプランター1及び3の土14の中に水遣りパイプ23を入れることによって、簡単に自動水遣り装置をプランター1及び3に設置することができる。
【0034】
尚、上記図5及び図6の構成の自動水遣り装置の場合も、パイプ差込口21にコック等を設けることによって、前述の自動水遣り装置と同じように、一定時間間隔でコックを開き、プランター1及び3に水遣りを行うこともできる。
【0035】
また、コックを設けることなく使用する場合でも、自動的にプランター1及び3に水遣りを行うことができ、ポリタンク20の水が無くなるまで自動的に水遣りを行うことができる。
【0036】
さらに、図7は他の自動水遣り装置の例を説明する図である。同図に示す自動水遣り装置はプランタ置台26の後板27の裏面にポリタンク28を配設する構成である。このようにポリタンク28を後板27の裏面に配設することによって、ポリタンク28は正面側から隠れ、例えば正面側からグリーンネット29を容易に張設でき、プランター30に植えた植物31をグリーンネット29に沿って栽培することができる。
尚、プランター30内には水遣りパイプ32が配設され、水遣りパイプ32へは水遣りホース33を介してポリタンク28から水の供給が行なわれる。このように構成することによって、例えば弦状に伸びる植物を栽培する場合有効な自動水遣り装置となる。
【0037】
尚、上記実施形態の説明では、水の補給はポリタンクを使用して行う構成としたが、例えばプラスチック容器や市販のペットボトル等の容器を使用することもできる。また、ポリタンク等の容器の容量も10リットルに限定される訳ではなく、栽培する野菜や育てる草花の種類やプランター等の容器によって適宜選択することができる。
【0038】
また、前述の水遣りパイプ13の長手方向に形成する溝15の深さや幅、及び水遣り穴16の大きさも上記栽培する野菜や育てる草花の種類やプランター等の容器によって適宜選択することができる。
【0039】
さらに、上記実施形態の説明では水遣りパイプ13に形成する溝15は水遣りパイプ13の長手方向に沿って形成したが、溝15を水遣りパイプに螺旋状に形成するようにしてもよい。このように構成することによって、プランター内に効率よく水を供給することができる。
【符号の説明】
【0040】
1、3・・プランター
2、4・・ポリタンク
5・・・プランタ等置台
5a・・上段
5b・・中段
5c・・下段
5d〜5g・・支柱
6、7・・コック
9・・・空気穴
10、11・・水遣りホース
13・・水遣りパイプ
14・・腐葉土
15・・溝
16・・水遣り穴
20・・ポリタンク
21・・パイプ差込口
22・・パイプ
23・・水遣りパイプ
24・・連結パイプ
26・・プランタ置台
27・・後板
28・・ポリタンク
29・・グリーンネット
30・・プランター
31・・植物
32・・水遣りパイプ
33・・水遣りホース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7