(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170292
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】シート包装体及びそれに用いる支持部材
(51)【国際特許分類】
B65D 25/52 20060101AFI20170713BHJP
B65D 5/72 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
B65D25/52 E
B65D5/72 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-244223(P2012-244223)
(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公開番号】特開2014-91565(P2014-91565A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(72)【発明者】
【氏名】島津 忠秀
【審査官】
高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3097658(JP,U)
【文献】
実開平06−081398(JP,U)
【文献】
特開2004−276915(JP,A)
【文献】
特開平09−254965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/00− 5/76
B65D23/00−25/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙管にシートが巻き付けられたシートロール体が、該シートロール体から引き出した前記シートを切断するための切断刃を備えた箱体に収納されたシート包装体において、
前記紙管の両端をそれぞれ前記箱体の内部で回転可能に支持する支持部材を備えており、前記支持部材の少なくとも一方は、ラチェットを介して前記紙管を支持しており、
前記ラチェットは、環状のホイール周側壁を有するラチェットホイールと、前記ホイール周側壁上に被さる環状のケース周側壁を有し、前記ラチェットホイールに対して回転可能なラチェットケースとを備え、前記ラチェットホイールが前記箱体内に立設された支持台部に取り付けられていると共に、前記ラチェットケースが、その回転軸を前記紙管の中心軸方向に向けて前記紙管の端部に嵌合されている一方、
前記ホイール周側壁の外面に、前記シートの引き出し時の前記シートロール体の回転方向に傾斜した歯が連なったラチェット歯車が形成されていると共に、前記ケース周側壁の一部が、前記ラチェット歯車の歯の傾斜方向とは逆向きで前記ラチェット歯車側に延出した爪部を構成しており、前記爪部を構成する前記一部のケース周側壁が外側に凸に湾曲しており、
前記ラチェットホイールは、前記ホイール周側壁の前記紙管との嵌合方向先端側の開口部を覆う端板部を有し、前記ラチェットケースは、前記ケース周側壁の前記紙管との嵌合方向先端側の開口部を覆う端板部を有し、
前記2枚の端板部の一方は、中央部に該一方の端板部を貫通する軸孔を有し、他方の端板部は中央部に前記一方の端板部側に突出し、前記軸孔内に回転可能に嵌め込まれた突出軸を有し、該突出軸の先端には、前記軸孔に係止する返し部が形成されていることを特徴とするシート包装体。
【請求項2】
他方の支持部材が、前記箱体内に立設された支持台部と、該支持台部に突設された凸部とを備えており、前記紙管の端部が該凸部に差し込まれて回転可能に保持されていることを特徴とする請求項1に記載のシート包装体。
【請求項3】
前記ラチェットケースが、その回転軸と平行な方向に長さ方向を向けて外面に突設されたフィンを介して前記紙管に嵌合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート包装体。
【請求項4】
前記フィンの前記紙管との嵌合方向先端側頂点を結ぶ円の直径が、前記紙管の内径よりも1.5mm〜2.0mm大きいことを特徴とする請求項3に記載のシート包装体。
【請求項5】
紙管にシートが巻き付けられたシートロール体が、該シートロール体から引き出した前記シートを切断するための切断刃を備えた箱体に収納されたシート包装体に用いられる前記シートロール体の支持部材であって、
一端が前記箱体内に立設可能な支持台部に接続された環状のホイール周側壁を有するラチェットホイールと、前記ホイール周側壁上に被さる環状のケース周側壁を有し、前記ラチェットホイールに対して回転可能で、その回転軸を前記紙管の中心軸方向に向けて前記紙管の端部に嵌合可能なラチェットケースとを備え、
前記ホイール周側壁の外面に、その周方向の一方向に傾斜した歯が連なったラチェット歯車が形成されていると共に、前記ケース周側壁の一部が、前記ラチェット歯車の歯の傾斜方向とは逆向きで前記ラチェット歯車側に延出した爪部を構成しており、前記爪部を構成する前記一部のケース周側壁が外側に凸に湾曲しており、
前記ラチェットホイールは、前記ホイール周側壁の前記紙管との嵌合方向先端側の開口部を覆う端板部を有し、前記ラチェットケースは、前記ケース周側壁の前記紙管との嵌合方向先端側の開口部を覆う端板部を有し、
前記2枚の端板部の一方は、中央部に該一方の端板部を貫通する軸孔を有し、他方の端板部は中央部に前記一方の端板部側に突出し、前記軸孔内に回転可能に嵌め込まれた突出軸を有し、該突出軸の先端には、前記軸孔に係止する返し部が形成されていることを特徴とする支持部材。
【請求項6】
前記ラチェットケースが、その回転軸と平行な方向に長さ方向を向けて外面に突設されたフィンを有することを特徴とする請求項5に記載の支持部材。
【請求項7】
前記フィンの前記紙管との嵌合方向先端側頂点を結ぶ円の直径が、前記紙管の内径よりも1.5mm〜2.0mm大きいことを特徴とする請求項6に記載の支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙管にシートが巻き付けられたシートロール体を、このシートロール体から引き出したシートを切断するための切断刃を備えた箱体に収納したシート包装体におけるシート切断後のシート端部の巻き戻り防止に関する。更に詳しくは、切断後のシートロール体の逆回転によるシート端部の巻き戻り防止機能を有するシート包装体及びそれに用いるシートロール体の支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート端部の巻き戻り防止機能を有するシート包装体として、凸部(横部材)が突設された板状の支持台部(縦部材)を、凸部をシートロールの紙管に差し込んで、シートロール体の両端に設けてシートロール体を支持する一方、凸部の周囲に、シートを引き出す際のシートロール体の回転方向に傾斜した歯を形成した包装体が知られている(例えば、特許文献1参照)。この包装体の場合、シートの引き出し時には、凸部の歯の傾斜方向に紙管が回転するので、紙管は歯の背面側から擦れ合う。このため、歯が強く紙管と擦れ合うことがないので、凸部を軸としてシートロール体を容易に回転させることができる。しかし、シートロール体を逆回転させるには、凸部の歯の傾斜方向とは逆方向に紙管を回転させることになるので、紙管は歯との対向方向から擦れ合うことになる。このため、歯が紙管に引っかかって回転しにくくなる。特許文献1の包装体は、これを利用してシートロール体の逆回転によるシート端部の巻き戻りを抑制しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−1340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紙管の径はばらつきが大きく、逆回転時の凸部の歯の引っ掛かり状態を紙管毎に均一に維持するのは困難である。このため、シートロール体の逆回転によるシート端部の巻き戻り防止機能がシート包装体毎にばらついてしまう問題がある。また、凸部の歯の傾斜に対して順方向であるとはいえ、シートの引き出しの都度、紙管の内面が凸部の歯に擦られることになる。そして、これによって経時的に紙管の内面が削られる結果、凸部と紙管の嵌め合せが緩くなって、逆回転時の凸部の歯の引っ掛かり状態が悪くなり、シートロールの逆回転によるシート端部の巻き戻り防止機能が低下してしまいやすい問題もある。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、紙管にシートが捲回されたシートロール体をこのシートロール体から引き出したシートを切断するための切断刃を備えた箱体に収納したシート包装体において、切断後のシートロール体の逆回転によるシート端部の巻き戻りを安定かつ確実に防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1は、紙管にシートが巻き付けられたシートロール体が、該シートロール体から引き出した前記シートを切断するための切断刃を備えた箱体に収納されたシート包装体において、
前記紙管の両端をそれぞれ前記箱体の内部で回転可能に支持する支持部材を備えており、前記支持部材の少なくとも一方は、ラチェットを介して前記紙管を支持しており、
前記ラチェットは、環状のホイール周側壁を有するラチェットホイールと、前記ホイール周側壁上に被さる環状のケース周側壁を有し、前記ラチェットホイールに対して回転可能なラチェットケースとを備え、前記ラチェットホイールが前記箱体内に立設された支持台部に取り付けられていると共に、前記ラチェットケースが、その回転軸を前記紙管の中心軸方向に向けて前記紙管の端部に嵌合されている一方、
前記ホイール周側壁の外面に、前記シートの引き出し時の前記シートロール体の回転方向に傾斜した歯が連なったラチェット歯車が形成されていると共に、前記ケース周側壁の一部が、前記ラチェット歯車の歯の傾斜方向とは逆向きで前記ラチェット歯車側に延出した爪部を構成しており、前記爪部を構成する前記一部のケース周側壁が外側に凸に湾曲して
おり、
前記ラチェットホイールは、前記ホイール周側壁の前記紙管との嵌合方向先端側の開口部を覆う端板部を有し、前記ラチェットケースは、前記ケース周側壁の前記紙管との嵌合方向先端側の開口部を覆う端板部を有し、
前記2枚の端板部の一方は、中央部に該一方の端板部を貫通する軸孔を有し、他方の端板部は中央部に前記一方の端板部側に突出し、前記軸孔内に回転可能に嵌め込まれた突出軸を有し、該突出軸の先端には、前記軸孔に係止する返し部が形成されていることを特徴とするシート包装体を提供するものである。
【0007】
上記本発明の第1は
、他方の支持部材が、前記箱体内に立設された支持台部と、該支持台部に突設された凸部とを備えており、前記紙管の端部が該凸部に差し込まれて回転可能に保持されていること、
前記ラチェットケースが、その回転軸と平行な方向に長さ方向を向けて外面に突設されたフィンを介して前記紙管に嵌合されていること、
前記フィンの前記紙管との嵌合方向先端側頂点を結ぶ円の直径が、前記紙管の内径よりも1.5mm〜2.0mm大きいこと、
をその好ましい態様として含むものである。
【0008】
また、本発明の第2は、紙管にシートが巻き付けられたシートロール体が、該シートロール体から引き出した前記シートを切断するための切断刃を備えた箱体に収納されたシート包装体に用いられる前記シートロール体の支持部材であって、
一端が前記箱体内に立設可能な支持台部に接続された環状のホイール周側壁を有するラチェットホイールと、前記ホイール周側壁上に被さる環状のケース周側壁を有し、前記ラチェットホイールに対して回転可能で、その回転軸を前記紙管の中心軸方向に向けて前記紙管の端部に嵌合可能なラチェットケースとを備え、
前記ホイール周側壁の外面に、その周方向の一方向に傾斜した歯が連なったラチェット歯車が形成されていると共に、前記ケース周側壁の一部が、前記ラチェット歯車の歯の傾斜方向とは逆向きで前記ラチェット歯車側に延出した爪部を構成しており、前記爪部を構成する前記一部のケース周側壁が外側に凸に湾曲して
おり、
前記ラチェットホイールは、前記ホイール周側壁の前記紙管との嵌合方向先端側の開口部を覆う端板部を有し、前記ラチェットケースは、前記ケース周側壁の前記紙管との嵌合方向先端側の開口部を覆う端板部を有し、
前記2枚の端板部の一方は、中央部に該一方の端板部を貫通する軸孔を有し、他方の端板部は中央部に前記一方の端板部側に突出し、前記軸孔内に回転可能に嵌め込まれた突出軸を有し、該突出軸の先端には、前記軸孔に係止する返し部が形成されていることを特徴とする支持部材を提供するものである。
【0009】
上記本発明の第2は
、前記ラチェットケースが、その回転軸と平行な方向に長さ方向を向けて外面に突設されたフィンを有すること、
前記フィンの前記紙管との嵌合方向先端側頂点を結ぶ円の直径が、前記紙管の内径よりも1.5mm〜2.0mm大きいこと、
を好ましい態様として含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に用いられるラチェットのラチェット歯車と爪部は、シートの引き出し時のシートロール体の回転方向の回転を許容し逆回転を係止する構成となっている。本発明のシート包装体においては、このラチェットを介して紙管を回転可能に支持している。ラチェットは、紙管をしっかり保持できるように取り付けてさえあれば、紙管の径のばらつきに拘わらず、確実に逆転を抑制できるので、安定して確実にシートロール体の逆回転によるシート端部の巻き戻りを防止することができる。また、本発明の支持部材を用いれば、巻き戻りを生じないシート包装体を容易に得ることができる。
【0011】
また、本発明に用いられるラチェットは、ラチェットホイールのホイール周側壁の外側に、ラチェットケースのケース周側壁を被せ、この両者間のわずかな隙間を利用して、ラチェット歯車と爪部の組み合わせ構造を構成できるようにしているので、ラチェット全体を小型なものとすることができる。そして、本発明のシート包装体及び支持部材によれば、小型化したラチェット全体を紙管内に嵌め込むことができるので、わざわざ箱体3を大きくしてシートロール体との間にラチェットを収容する隙間を形成することなく、巻き戻り防止を図ることができる。
【0012】
なお、その他の本発明の効果については、本発明の実施の形態の説明と共に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のシート包装体の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明のシート包装体に用いる本発明の支持部材の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示される支持部材の(a)は正面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【
図4】
図2及び
図3に示される支持部材のラチェットケースを外した状態の斜視図である。
【
図6】本発明のシート包装体に用いる凸部を備えた支持部材の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明するが、本発明は下記実施形態に限定されない。また、以下に参照する図面において、同じ符号は同様の構成要素を示す。
【0015】
本発明に係るシート包装体と支持部材の一例を
図1〜
図6を用いて詳細に説明する。
【0016】
シート包装体は、シート1を紙管2に多重に巻き付けたシートロール体5と、箱体3と、支持部材4a,4bとを備えている。
【0017】
シート1は、紙管2に捲回されて、シートロール体5として箱体3に収納されている。シート1とは、薄い平坦な材料で、具体的にはラップフィルム、アルミホイル、クッキングペーパー等を挙げることができる。本発明は、これらのいずれの包装体に対しても適用することができるが、巻き戻りが発生した場合に次の引き出し作業がしにくくなりやすいラップフィルムに適用するのが最も効果的である。
【0018】
箱体3は、横長の直方体で、シートロール体5を収容する本体6と、本体6上に開閉可能に被さる蓋体7を備えている。本体6は、前面板6a、側面板6b,6c、背面板6d及び底面板6eを備えている。前面板6a、側面板6b,6c及び背面板6dは、底面板6eの周囲から立ち上げられて本体6の周壁を構成している。蓋体7は、蓋体7を閉じた時に本体6の前面板6aの上部外面側に被さる前縁板7aと、本体6の側面板6b,6cの上部外面側に被さる側縁板7b,7cと、本体6の開口部上に被さる天面板7dとを備えている。天面板7dの後縁は本体6の背面板6bの上縁に連なっており、前縁板7aと側縁板7b,7cは天面板7dの前縁と側縁にそれぞれ連接されている。また、箱体3は、シートロール体5から引き出したシート1を切断するための切断刃8を備えている。本例における切断刃8は蓋体3bの前縁板7aに下向きに取り付けられているが、本体6の底面板6eに前向きに取り付けたり、その他の位置に取り付けたりすることもできる。
【0019】
支持部材4a,4bは、シートロール体5を本体3aの底面板6eから若干持ち上げた状態となるよう、紙管2の両端を回転可能に支持するもので、シートロール体5の両端に位置している。本例においては、紙管2の一端を支持する支持部材4aが、支持台部9にラチェット20を突設した構造で、ラチェット20を介して紙管2を支持している。また、紙管2の他端を支持する支持部材4bは、支持台部9に凸部10を突設した構造で、凸部10を介して紙管2を支持している。紙管2の両端を、ラチェット20が突設された支持部材4aで支持することも可能であるが、コストを抑えるためには、本例のように、紙管2の一端についてはラチェット20が設けられていない支持部材4bで支持することが好ましい。
【0020】
支持部材4a,4bの支持台部9は、シートロール体5と、箱体3の本体6の側面板6b,6cとの間の隙間に立設可能な矩形の板状をなしており、その中央部分にラチェット20又は凸部10が突設されている。支持台部9に突設されたラチェット20は、外面に突設されたフィン42を介して、紙管2の内周側に嵌合されている。ラチェット20と紙管2は、紙管2とラチェット20の間で空転しないよう、しっかり嵌め合わされている。ラチェット20は、後述するように、外面を構成しているラチェットケース40が、その内側に設けられているラチェットホイール30の周囲を、シート1の引き出し時のシートロール体5の回転方向に回転可能に組み合わされたものとなっている。また、支持台部9に突設された凸部10も、紙管2の内周側に嵌め合わされているが、この凸部10は、紙管2が回転可能となるように嵌め合わされている。
【0021】
更にラチェット20が突設された支持部材4aについて、
図2〜
図5に基づいて説明する。
【0022】
ラチェット20は、シート1の引き出し時のシートロール体5の回転方向(順方向)への回転を許容し、この方向とは逆の方向(逆方向)への回転を係止するもので、ラチェットホイール30と、ラチェットホイール30に対して回転可能なラチェットケース40とを組み合わせたものとなっている。ラチェットホイール30は、
図3(b)及び
図4に示されるように、環状のホイール周側壁31を有しており、ラチェットケース40は、
図2、
図3及び
図5に示されるように、ホイール周側壁31上に被さる環状のケース周側壁41を有している。ラチェット20は、ラチェットケース40の回転軸を紙管2の中心軸方向に向けて紙管2の端部に嵌合されている。
【0023】
ホイール周側壁31の外面に、周方向の一方向(順方向)に傾斜した歯が連なったラチェット歯車32が形成されている。また、ホイール周側壁31の紙管2(
図1参照)との嵌合方向先端側の開口部を覆って端板部33が設けられており、この端板部33の中央部には軸孔34が端板部33を貫通して形成されている。ホイール周側壁31の後端側は支持台部9に接続されている。ラチェットホイール30と支持台部9は、例えば合成樹脂で別々に成形したものを接着してもよいが、一体成形すると製造が容易となるので好ましい。
【0024】
支持台部9は、箱体3の本体部6の側面板6bより一回り小さな矩形をなしている。支持台部9の周囲は、ラチェットホイール30の突設側に屈曲されて縁部11を構成している。この縁部11を設けると、支持台部9の全体厚さを大きくすることなく剛性を高めることができるので好ましい。また、支持台部9の周縁には、箱体3からの出し入れをしやすくするために、取手部12を設けておくことが好ましい。
【0025】
ラチェット歯車32の歯の数は、紙管2やラチェットホイール30の径等に応じて選択されるが、一般的なラップフィルムのシートロール体5を想定した場合、9〜24個程度であることが好ましい。歯の数が少なすぎても多すぎても、シート1を引き出す際の抵抗感や引き出しやすさが低下する。また、歯の高さは、やはり紙管2やラチェットホイール30の径等に応じて選択されるが、一般的なラップフィルムのシートロール体5を想定した場合、0.60〜0.90mmであることが好ましい。歯の高さが低すぎると、確実な逆転防止性が得にくくなり、歯の高さが高すぎると、シート1を引き出す際のラチェット20の回転音が大きくなったり、抵抗が大きくなって引き出しにくくなったりしやすい。ここでいう歯の高さとは、ホイール周側壁からの最大の突出量をいう。
【0026】
ラチェットケース40は、
図2、
図3及び
図5に示されるように、ラチェットホイール30のホイール周側壁31上に被さる環状のケース周側壁41を有しており、ラチェットホイール30の外側に回転可能に装着されている。ケース周側壁41の外面には、フィン42が設けられている。このフィン42は、長さ方向をラチェットケース40の回転軸に平行な方向に向けてケース周側壁41の外面に突設されており、紙管2へのラチェット20の嵌合は、このフィン42を介して行われている。紙管2へのラチェット20の嵌合を、フィン42を介して行うと、紙管2の内径のばらつきをフィン42の紙管2への食い込み量で吸収して、紙管2の径のばらつきに拘わらずしっかり嵌合させやすくなり、紙管2とラチェットケース40との間での空転を防止しやすくなる。また、後述するように、ケース周側壁41の一部は、爪部43として内側に斜めに延出されているので、ケース周側壁41は、部分的に窪んだ状態となり、弾性変形しやすい構造となっている。このことによっても、紙管2との良好な嵌合状態が得やすくなっている。
【0027】
フィン42は、紙管2との嵌合方向先端側から後端側へ徐々に高さが高くなっていることが好ましい。このようにしておくと、紙管2との嵌合作業を妨げることなく強固な嵌合状態を得やすくすることができる。また、フィン42の紙管2との嵌合方向先端側コーナー部に丸味を付けておくことで、紙管2へ差し込みやすくすることができる。
【0028】
フィン42は、嵌合力を安定した状態で分散支持するために、ケース周側壁41の周方向に等間隔で3箇所以上儲けることが好ましく、紙管2との嵌合状態をより安定させるために、6〜15箇所に等間隔で設けることがより好ましい。また、フィン42の高さは、紙管2やラチェットホイール30の径等に応じて選択されるが、一般的なラップフィルムのシートロール体5を想定した場合、紙管2との嵌合方向先端側頂点を結ぶ円の直径が、紙管2の内径よりも1.5mm〜2.0mm大きくなる高さとすることが好ましい。このようにすることによって、紙管2との嵌合作業を妨げることなく強固な嵌合状態を得やすくすることができる。なお、ここでいうフィン42の高さとは、ケース周側壁の外面からの突出量をいう。
【0029】
ラチェットケース40のケース周側壁41の一部は、ラチェットホイール30のラチェット歯車32側(内側)に屈曲して斜めに延出し、ラチェット歯車32と組み合わされる爪部43を構成している。この爪部43の先端は、ラチェット歯車32の歯の傾斜方向とは逆向きに延出しており、ラチェット歯車32に弾性的に押し付けられている。前記のように、ラチェット歯車32の歯は、順方向に傾斜している。このため、ラチェットケース40が順方向に回転する場合、この爪部43の先端は、ラチェット歯車32の歯の傾斜面に沿って歯と歯の間の段差の上部へ移動し、段差の下部へ落ちた後、再度歯の傾斜面に沿って段差の上部へ移動する動作を繰り返し、回転が妨げられることはない。これに対して、ラチェットケース40が逆方向に回転する場合、爪部43の先端は、ラチェット歯車32の歯の傾斜面に沿って歯と歯の間の段差の下部へ移動し、そこで係止されることから、回転が阻止されることになる。
【0030】
爪部43は、外側に凸に湾曲させてお
く。爪部43
にこのような湾曲を持たせることで、爪部43の先端が歯と歯の間の段差にぶつかった時に外側に反らないようにすることができ、これによって爪部43が段差を越えてしまうことを防止することができる。
【0031】
爪部43は、ラチェット20に偏った力が作用して破損しやすくなるのを抑制するため、ケース周側壁41の周方向に等間隔で複数個所設けることが好ましい。爪部43の数は特に制限はないが、6箇所以上に形成するとラチェットケース40自体の耐久性が低下しやすいことから、3〜5箇所とすることが好ましい。
【0032】
ラチェットケース40は、紙管2との嵌合方向先端側のケース周側壁41の開口部を覆う端板部44を有している。この端板部44の中央部の内側には突出軸45が突出している。突出軸45は、ラチェットホイール30の端板部32に設けられている軸孔34内に回転可能に嵌め込まれており、これによってラチェットホイール30にラチェットケース40が回転可能に保持されている。突出軸45の先端には返し部46が形成されており、これによって軸孔34からの突出軸45の抜けが係止されている。
【0033】
なお、本例においては、ラチェットホイール30側に軸孔34、ラチェットケース40側に突出軸45を設けているが、ラチェットホイール30側に突出軸45、ラチェットケース40側に軸孔34を設けるようにすることもできる。
【0034】
本例のラチェット20は、ラチェットホイール30のホイール周側壁31と、ラチェットケース40のケース周側壁41とを嵌め合せて重ね、この両者間のわずかな隙間を利用して、ラチェット歯車32と爪部43の組み合わせ構造を構成している。このため、ラチェット20全体を紙管2内に嵌め込むことができる程度に小型化でき、わざわざ箱体3を大きくしてシートロール体5との間に隙間を形成することなく、既存の箱体3でも容易に設置することができる。
【0035】
図6に示されるように、ラチェット20を備えた支持部材4aとは反対側に設けられる支持部材4bにおける支持台部9は、既に説明した支持部材4aにおける支持台部9と同様の構成である。支持部材4bにおける支持台部9は、
図1に示されるシートロール体5の端部と箱体3の側面板6cとの間の隙間に立設されるものである。また、凸部10は、紙管2に対して若干の遊びをもって嵌め込まれるもので、紙管2を回転可能に支持するものとなっている。支持部材4bは、凸部10を設ける代わりに、中央部に紙管2の端部を回転可能に嵌め込むことができる穴を形成したものとすることもできる。
【0036】
以上説明した支持部材4a,4bは、合成樹脂で形成することができる。使用する合成樹脂に特に制限はないが、割れにくく弾力性を求めるのであればポリプロピレン、耐久性が必要であればポリアセタール等を選択することができる。
【0037】
本発明のシート包装体及び支持部材4aの使用形態を説明する。
【0038】
図1に示されるように、シートロール体5の紙管2は両端が支持部材4a,4bで支持され、シートロール体5が箱体3の底面板6eから若干浮き上がった状態で箱体3内に保持されている。このため、シート1を引き出す際に、シートロール体5が底面板6e等の箱体3の内面と擦れ合わないので、スムーズな引き出しが可能となる。また、シート1の引き出しに伴い、シートロール体5が回転し、紙管2の一端は支持部材4bの凸部10に沿って回転し、紙管2の他端は、
図3に示されるラチェットホイール30に対してラチェットケース40を回転させることで回転する。この場合、順方向の回転であることから、ラチェット20で係止されることなく回転することができる。必要量のシート1を引き出して切断刃8で切断すると、箱体3を持つ角度や切断の反動などによって、シートロール体5を逆回転させようとする力が加わる場合がある。このような力が加わってシートロール体5が逆回転しようとした場合、前記のように、ラチェットケース40の爪部43が、ラチェットホイール30が有するラチェット歯車32の歯で係止されることで、逆回転が係止される。このため、シートロール体5が逆回転し、これに伴ってシート1の先端が箱体3の内部に巻き戻され、シートロール体5に巻き付いてしまって、次の使用時にこの先端を引き出しにくくなることが防止される。
【符号の説明】
【0039】
1:シート、2:紙管、3:箱体、4a,4b:支持部材、5:シートロール体、6:本体、6a:前面板、6b,6c:側面板、6d:背面板、6e:底面板、7:蓋体、7a:前縁板、7b,7c側縁版、7d:底面板、8:切断刃、9:支持台部、10:凸部、11:縁部、12:取手部、20:ラチェット、30:ラチェットホイール、31:ホイール周側壁、32:ラチェット歯車、33:端板部、34:軸孔、40:ラチェットケース、41:ケース周側壁、42:フィン、43:爪部、44:端板部、45:突出軸、46:返し部