(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170295
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】排気熱回収用排気パイプの構造
(51)【国際特許分類】
F28D 7/10 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
F28D7/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-269144(P2012-269144)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-40990(P2014-40990A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年12月3日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0091909
(32)【優先日】2012年8月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク ギ チョル
【審査官】
小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−025380(JP,A)
【文献】
特開2007−298228(JP,A)
【文献】
実開平06−084168(JP,U)
【文献】
特開2006−258084(JP,A)
【文献】
特開2012−122687(JP,A)
【文献】
特開2000−356482(JP,A)
【文献】
特開平08−318312(JP,A)
【文献】
特開平10−263688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/10
F28D 9/00
F28F 3/04
F01N 5/02
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの熱によって冷却水を加熱する排気熱回収用排気パイプの構造であって、
車両進行方向前方から流入した排気ガスを後方へ流出するように前記排気パイプに連結され、前記冷却水が流入する第1ニップルと、前記冷却水が流出する第2ニップルと、が形成されたハウジングと、
前記第1ニップルと前記第2ニップルとが前記ハウジングの内部において連通され、前記冷却水が流動する冷却水通路が複数の層をなして形成されるように直径が異なる複数個が結合され前記ハウジング内に取り付けられた熱交換パイプと、
を含み、
隣り合う前記冷却水通路の間に排気ガスが流動する排気ガス通路が層をなして形成され、前記第1ニップルは前記第2ニップルより車両進行方向後方に配置され、
前記熱交換パイプには表面から突出した折り畳み部が形成され、
前記折り畳み部は、前記熱交換パイプの内周面と外周面において、窪んだ地点と膨らんだ地点とが繰り返し形成されるように、前記熱交換パイプが連続して折り曲げられて形成され、
前記折り畳み部に形成された前記窪んだ地点と膨らんだ地点とは、前記排気パイプの長さ方向に沿って、一側は車両進行方向前方側に偏り、他側は車両進行方向後方側に偏った模様をなすように形成された第1折り畳み部と、前記第1折り畳み部と連結され、前記第1折り畳み部と前記排気パイプの長さ方向に沿って対称をなすように反対方向に偏った模様をなすように形成された第2折り畳み部と、を含むことを特徴とする排気熱回収用排気パイプの構造。
【請求項2】
前記第1ニップルは前記ハウジングの下端に形成され、前記第2ニップルは前記ハウジングの上端に形成されることを特徴とする請求項1に記載の排気熱回収用排気パイプの構造。
【請求項3】
複数の前記熱交換パイプのうちの最も内側に配置された熱交換パイプは、最も内側に配置された熱交換パイプを開閉させるバイパスバルブが結合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気熱回収用排気パイプの構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気熱回収用排気パイプの構造に係り、より詳しくは、排気ガスの排気熱と冷たい冷却水との熱交換が行われる面積を増大させ、冷却水の流動方向を排気ガスの流動方向とは反対に配置して、冷却水の温度をより速かに高めることができる排気熱回収用排気パイプの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
冬季に冷気に露出された車両は、エンジンの正常作動および燃料の燃焼効率を増加させるために、走行前又は走行初期時にウォーミングアップ(warming up)が要求される。
排気熱回収装置は冬季の初期走行時に捨てられる排気熱によって冷たい冷却水を速かに加熱する装置であって、エンジンのウォーミングアップ時間を短縮して、エンジン内部の摩擦損失の低減を通じて燃費を改善するために開発されている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
図1は、従来の排気熱回収用排気パイプを単純化して示す断面図である。
図1に示すように、エンジンから生成された排気ガスが流動する排気パイプ1の所定位置には、直径が拡張された筒状のハウジング2が取り付けられる。
【0004】
また、ハウジング2には(エンジンおよびラジエータを循環する)冷却水が出入りする入口と出口とが各々形成され、ハウジング2の内部には冷却水が流動するチャネルが形成されるように熱交換板3が配置される。さらに、ハウジング2の内部に位置した排気管には、(電気的信号に応じて)前記排気パイプ1を開閉できるようにバイパスバルブ4が結合され、ハウジング2の内部において排気パイプの表面には孔4aが穿孔される。従って、バイパスバルブ4が閉じられると、ハウジング2の内部において、排気ガスが熱交換板3が位置した空間に流動できる通路(矢印で示す部分)が形成される。
【0005】
従って、エンジンが正常温度である場合には、バイパスバルブ4を開いて多量の排気ガスが熱交換板3と接触せずに(出口側に)流動し、エンジンが低い温度である場合には、バイパスバルブ4を閉じて冷却水をハウジング2の内部に循環させることによって、冷却水を加熱するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−175461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の構成において、熱交換板3は単純なパイプ形状であって、熱交換が行われる面積に限界があり、排気ガスの移動経路が単純ではないために流動抵抗が発生するという問題点があった。
従って、本発明は、ハウジングの大きさを増加させることなく熱交換が行われる面積を増加させ、(渦流発生を誘導することにより)排気ガスをより効率的に流動させ、冷却水の流動方向を排気ガスの流動方向とは反対に設定してより速やかに冷却水を加熱できる排気熱回収用排気パイプの構造を提供することに主な目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明の排気熱回収用排気パイプの構造は、排気ガスの熱によって冷却水を加熱する排気熱回収用排気パイプの構造であって、車両進行方向前方から流入した排気ガスを後方へ流出するように前記排気パイプに連結され、前記冷却水が流入する第1ニップルと、前記冷却水が流出する第2ニップルと、が形成されたハウジングと、前記第1ニップルと前記第2ニップルとが前記ハウジングの内部において連通され、前記冷却水が流動する冷却水通路が複数の層をなして形成されるように直径が異なる複数個が結合され前記ハウジング内に取り付けられた熱交換パイプと、を含み、隣り合う前記冷却水通路の間に排気ガスが流動する排気ガス通路が層をなして形成され、前記第1ニップルは前記第2ニップルより車両進行方向後方に配置され、
前記熱交換パイプには表面から突出した折り畳み部が形成され、前記折り畳み部は、前記熱交換パイプの内周面と外周面において、窪んだ地点と膨らんだ地点とが繰り返し形成されるように、前記熱交換パイプが連続して折り曲げられて形成され、前記折り畳み部に形成された前記窪んだ地点と膨らんだ地点とは、前記排気パイプの長さ方向に沿って、一側は車両進行方向前方側に偏り、他側は車両進行方向後方側に偏った模様をなすように形成された第1折り畳み部と、前記第1折り畳み部と連結され、前記第1折り畳み部と前記排気パイプの長さ方向に沿って対称をなすように反対方向に偏った模様をなすように形成された第2折り畳み部と、を含むことを特徴とする。
【0009】
前記第1ニップルは前記ハウジングの下端に形成され、前記第2ニップルは前記ハウジングの上端に形成されることを特徴と
する。
【0010】
また、複数の前記熱交換パイプのうちの最も内側に配置された熱交換パイプは、最も内側に配置された熱交換パイプを開閉させるバイパスバルブが結合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
前記のような構成の本発明は、冷却水の流動方向が排気ガスの流動方向とは反対になるように構成されて熱交換効率をより増大させることができ、冷却水はハウジングの下側から流入して上側へ流出するように構成されて加熱されることにより、密度が低くなった冷却水はハウジング内でより円滑に流動することができる。
【0013】
さらに、一側面は排気ガスと接触し、他側面は冷却水と接触して、熱交換が行われる熱交換パイプの表面には、折り畳み部が形成され、ハウジングの大きさの増加がなくても熱交換面積を増大させてより迅速に冷却水を加熱する効果がある。
【0014】
折り畳み部は、ヘリンボーンパターンを形成するように互いに対称をなすように形成された第1折り畳み部と第2折り畳み部で構成され、排気ガスの流動時に渦流形成を誘発して(排気ガスの流動低下による)エンジン出力の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来の排気熱回収用排気パイプを単純化して示す断面図である。
【
図2】本発明の好ましい実施形態による排気熱回収用排気パイプを長さ方向に沿って切開して示す斜視図である。
【
図3】本発明の好ましい実施形態による排気熱回収用排気パイプの断面図である。
【
図4】従来の熱交換パイプと本発明の熱交換パイプの断面長さを単純化して示す図面であり、(a)は従来構造による熱交換パイプの断面長さであり、(b)は本発明による熱交換パイプの断面長さである。
【
図5】本発明の他の実施形態による排気熱回収用排気パイプを長さ方向に沿って切開して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態による排気熱回収用排気パイプの構造をより詳細に説明する。
図2は、本発明の好ましい実施形態による排気熱回収用排気パイプを、長さ方向に沿って切開して示す斜視図であり、
図3は、本発明の好ましい実施形態による排気熱回収用排気パイプの断面図である。
図2および
図3に示すように、本発明の排気パイプ1(1a、1b)は、排気ガスの熱によって冷却水を加熱するためにハウジング10および複数の熱交換パイプ20が取り付けられた構造を有する。
【0017】
ハウジング10は、直径が排気パイプ1より拡張された筒状又はパイプ状を有する。また、ハウジング10は、排気ガスが車両進行方向の前後方向(長さ方向)に沿って流動するように排気パイプの所定位置に連結されるか、又はマフラーなどに一体で構成される。
【0018】
ハウジング10には、(エンジンおよびラジエータを循環する)冷却水が内部へ出入り可能に、冷却水の入口となる第1ニップル11aと、冷却水の出口となる第2ニップル11bと、が各々形成される。本発明の好ましい実施形態において、第1ニップル11aは、第2ニップル11bより車両進行方向の後方に配置される。また、加熱された冷却水は比重が小さくなることを考慮し、第1ニップル11aはハウジング10の下端に形成され、第2ニップル11bはハウジング10の上端に形成される。
【0019】
また、ハウジング10の内部には直径が相互に異なる複数の熱交換パイプ20が取り付けられ、複数の熱交換パイプ20の間に冷却水の入口となる第1ニップル11aと、出口となる第2ニップル11bと、がハウジング10の内部で連通され、チャンネル(通路)を形成するように取り付けられる。従って、熱交換パイプ20の間において、冷却水が流動する冷却水通路が(ハウジング内部において放射状に)直径が異なる複数の層をなして形成される。
【0020】
例えば、熱交換パイプ20の間において形成された冷却水通路は、熱交換パイプ20の一側末端と他側末端において内側から、隣り合う熱交換パイプ20の末端又は外側から隣り合う熱交換パイプ20の末端に順次交差して(溶接などにより)接合又は密封させ、
図2に示すように(垂直方向に沿って)冷却水が流動するように熱交換パイプ20を連結する通路をさらに形成することにより形成される。
【0021】
従って、冷却水通路は、ハウジング10内において、(周縁に沿って漸次的に拡張された)層をなすように形成される。この時、隣り合う冷却水通路の間に排気ガスが流動する排気ガス通路が層をなして形成される。
図3は、本発明の好ましい実施形態による排気熱回収用排気パイプの断面図であり、
図4は、従来の熱交換パイプと本発明の熱交換パイプの断面長さを単純化して示す図面であり、(a)は従来構造による熱交換パイプの断面長さであり、(b)は本発明による熱交換パイプの断面長さである。
図3で矢印で示すように、排気パイプは、冷却水の内側と外側に排気ガスが流動し、排気ガスの内側と外側に冷却水が流動するように構成される。
【0022】
本発明の熱交換パイプ20は、熱交換パイプ20の表面から突出した折り畳み部21が形成される。
図3に示すように、
折り畳み部21は、熱交換パイプ20の内周面と外周面において、窪んだ地点と膨らんだ地点とが繰り返し形成されるように(例えば、鋸歯状、正弦波などのように、凹凸が繰り返される模様が形成されるように)、熱交換パイプ20が(
図4の断面模様のように)連続して折り曲げられることによって形成される。
【0023】
また、本発明の実施形態において、折り畳み部21は、(ヘリンボーンパターンをなすように)第1折り畳み部21aと第2折り畳み部21bとを含む。すなわち、折り畳み部21に形成された窪んだ地点と、膨らんだ地点とは、排気パイプ1の車両進行方向前後方向(長さ方向)に沿って、一側は排気ガスの入口1a側(すなわち、車両進行方向前方側)に偏り、他側は排気ガスの出口1b側(すなわち、車両進行方向後方側)に偏った模様をなすように形成された第1折り畳み部21aと、第1折り畳み部21aと連結され、第1折り畳み部21aと排気パイプ1の長さ方向に従って対称をなすように反対方向に偏った模様をなすように形成された第2折り畳み部21bと、で構成される。
【0024】
図4に示すように、このようなヘリンボーンパターンの折り畳み部21は、(従来の構造に比べ)断面長さを増加させて熱交換面積を増大させることができるだけでなく、流動する排気ガスおよび冷却水の渦流形成を誘導して流動速度を増大させることができる。
【0025】
一方、前記のような渦流形成をより効率的に誘導するために、本発明の実施形態は、隣り合う熱交換パイプ20は、垂直方向に向かい合う部分において、相異なる模様同士で向かい合うように構成される。
すなわち、本発明の熱交換パイプ20は、第1折り畳み部21aと第2折り畳み部21bとが周縁に沿って繰り返し連結された模様に形成される。この時、内側と外側に配置されて隣り合う2つの熱交換パイプ20は、内側に位置した熱交換パイプの第1折り畳み部21aが外側に位置した熱交換パイプ20の第2折り畳み部21bと向かい合うように取り付けられる。
【0026】
一方、本発明の実施形態は、エンジンが正常温度である時には、排気ガスが迅速に流動し、エンジンが低い温度である時には、排気ガスが冷却水と効率的に熱交換できるようにバイパスバルブ30が付け加えられる。
すなわち、
図2と
図3に示すように、熱交換パイプ20のうちの最も内側に配置された熱交換パイプには、前記最も内側に配置された熱交換パイプを(電気的信号に応じて)開閉させるように構成されたバイパスバルブ30が取り付けられる。
【0027】
図5は、本発明の他の実施形態による排気熱回収用排気パイプを長さ方向に沿って切開して示す斜視図である。
図5に示すように、排気ガスの流動抵抗又は誘導速度がハウジング10内で急に変わることを防止するために、最も内側に配置された熱交換パイプの内周面を、折り畳み部21が消された滑らかな面で構成することができる。
また、前述したように内周面を滑らかな面で構成することにより、最も内側に配置された熱交換パイプは、冷却水が所定温度まで加熱されて、バイパスバルブ30が開放された時は、冷却水がさらに加熱されないように断熱層の機能を果たすことができる。
【0028】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1 排気パイプ
1a 排気パイプ(排気ガスの入口側)
1b 排気パイプ(排気ガスの出口側)
10 ハウジング
11a 第1ニップル
11b 第2ニップル
20 熱交換パイプ
21 折り畳み部
21a 第1折り畳み部
21b 第2折り畳み部
30 バイパスバルブ