【文献】
Castro H.P. et al,Journal of Applied Microbiology,1997年,Vol.82,pp.87-94
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明でいう微生物とは産業上有用な微生物である限り特に限定されず、例えば、カビ、酵母、放線菌、枯草菌、酢酸菌、乳酸菌、その他の細菌をも包含する。これら微生物は、菌体懸濁液の状態で、パルス燃焼式乾燥機にかけ乾燥することができる。本発明に用いる微生物菌体懸濁液としては、まず、栄養物を含む滅菌された液体培地に微生物菌体の種培養液を無菌的に植菌し、当該微生物を増殖させ主培養液を得、次いでこれに含まれる微生物菌体に安定化基剤を共存せしめ、比較的短時間追加培養し得られる追加培養液を用いる。主培養時の液体培地に用いられる栄養物としては、微生物菌体の増殖に適したものが好ましく、通常、炭素原、窒素原、ミネラル源及びビタミン源などや、更には、これらを複合的に含有している天然物由来物質などが適宜用いられる。炭素源としては、例えば、グルコース、フラクトース、異性化糖、スクロース、マルトース、乳糖、マルトオリゴ糖、水飴、澱粉などがある。窒素源としては、例えば、尿素、アンモニウム塩、硝酸塩、アミノ酸、ペプチド類などがある。ミネラル源としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩、硫酸塩、鉄塩、亜鉛塩、マンガン塩、銅塩などがある。ビタミン源としては、例えば、チアミン、リボフラビン、ビオチン、パントテン酸、ニコチン酸アミドなどがある。天然物由来物質としては、例えば、酵母エキス、糖蜜、脱脂大豆、脱脂米ぬか、小麦フスマ、コーンスティープリカー、ビール粕、酒粕などがある。上記の栄養物を含む液体培地は、通常、121℃、20分間オートクレーブして滅菌される。主培養培地に植菌される種培養液の量は、通常、0.5乃至5%(v/v)が採用される。主培養は、当該微生物の増殖に至適な条件、例えば、嫌気性、好気性、温度、pHなどに配慮しつつ、通常、20乃至64時間程度行なわれる。
【0013】
本発明の乾燥原料に用いる微生物菌体懸濁液は、安定化基剤共存下での追加培養工程が必須である。この追加培養工程は主培養と違って、時間も比較的短時間、好ましくは4乃至10時間程度で、微生物菌体の増殖がほとんどないか、若しくは、あったとしても極めてわずかである。換言すれば、追加培養工程は、乾燥工程までに微生物菌体を予め安定化基剤と共存、接触させ、わずか数時間培養環境下に保持することにより、乾燥微生物菌体の生存率を格段に向上させることのできる工程である。追加培養時に微生物菌体に共存せしめる安定化基剤としては、それの増殖を目的とするものではなく、追加培養工程、その後の乾燥工程、更には乾燥後の乾燥菌体の安定維持に寄与できるものであればよく、例えば、糖質、蛋白質、ミネラル、天然物由来物質、pH調整剤などから選ばれる物質、望ましくは、2種以上の物質が採用される。糖質としては、例えば、トレハロース、スクロース、グルコシルトレハロース、エルロース、シクロニゲロシルニゲロース、シクロマルトシルマルトース、シクロデキストリンなどの非還元オリゴ糖、アミロース、アミロペクチン、澱粉、プルラン、マンナンなどの多糖類などが好適であり、これらから選ばれる1種又は2種以上の糖質が、濃度、好ましくは、1乃至30%(w/v)、より好ましくは、2乃至10%(w/v)で用いられる。また、蛋白質としては、例えば、カゼイン、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、コラーゲンなどから選ばれる1種又は2種以上の蛋白質が、濃度、好ましくは、0.1乃至20%(w/v)、より好ましくは、0.5乃至10%(w/v)で用いられる。またミネラルとしては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リン酸塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、マンガン塩などから選ばれる1種又は2種以上のミネラルが、濃度、好ましくは、0.0001乃至6%(w/v)、より好ましくは、0.0001乃至3%(w/v)で用いられる。また、天然物由来物質としては、スキムミルク、酵母エキス、脱脂大豆、脱脂米ぬか、小麦フスマ、焼酎粕、ウィスキー粕などが好適であり、これらから選ばれる1種又は2種以上の天然物由来物質が、濃度、好ましくは、0.01乃至20%(w/v)、より好ましくは、0.1乃至10%(w/v)で用いられる。また、pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩酸、硫酸、リン酸、有機酸などが利用され、通常、好適環境として弱酸性乃至中性附近、より好ましくはpH5.0乃至7.0の範囲に保持するのが望ましい。
【0014】
本発明の製造方法において用いる乾燥方法としては、パルス燃焼式乾燥又は噴霧乾燥を用いることができる。
【0015】
パルス燃焼式乾燥に用いることのできるパルス燃焼式乾燥機としては、パルス燃焼ガスを発生し、且つ、空気を吹き込むことによりパルス燃焼ガスの温度を調節できるものであるかぎり特に限定されることなく用いることができる。具体的なパルス燃焼式乾燥機としては、例えば、パルテック株式会社製、登録商標『ハイパルコン』などが挙げられる。微生物菌体を乾燥させる際の温度として、対象微生物の生存率を高く維持するには、できるだけ低い温度が好ましく、一方、低い温度ではその乾燥効率は低下する。好ましい乾燥温度は対象とする微生物の種類によって異なるものの、通常80℃以下、望ましくは、50乃至70℃の範囲で行うのが好ましい。
【0016】
噴霧乾燥としては、公知の噴霧乾燥装置を用いることができ、高圧ノズル式、回転円板法、及び、圧縮空気を利用した2流路ノズル又は4流路ノズルのものを例示することができる。また、乾燥風の乾燥室の入口における温度は、通常15乃至400℃、好ましくは25乃至200℃、より好ましくは50乃至130℃であり、乾燥風の乾燥室の出口における温度は、通常5乃至130℃、好ましくは10乃至100℃、より好ましくは20乃至70℃である。
【0017】
本発明の製造方法により採取される乾燥微生物菌体製剤は、微生物の生存率が高く維持された高品質な微生物菌体を含有せしめた粉末製剤である。本粉末製剤は、必要に応じて、顆粒、錠剤等に成形して、各種食品、医薬品、化粧品、飼料等の分野に有利に利用できる。
【0018】
以下、本発明を実験でより詳細に説明し、次いで若干の実施態様を実施例で説明する。
【0019】
<乾燥微生物の生存率に及ぼす微生物菌体懸濁液及び安定化基剤の影響>
微生物として乳酸菌を用い、菌体懸濁液の調製方法の違い及び安定化基剤共存の有無が与えるパルス燃焼式乾燥又は噴霧乾燥により得られる乾燥乳酸菌の生存率への影響について比較検討した。
【0020】
<乳酸菌の培養と菌体懸濁液の調製>
エンテロコッカス・ファエシウム(Enterococus faecium) HL−5(FERM BP−4504)を乳酸菌用MRS培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社販売)10mlに植菌し、35℃で24時間静置培養したものを第一の種培養液とした。別途調製した培地組成%(w/v)が酵母エキス2.0、粉飴5.0、リン酸二カリウム0.2、クエン酸二アンモニウム0.2、酢酸ナトリウム0.5、硫酸マグネシウム0.02、硫酸マンガン0.004 及びフスマ(微粉)1.0からなる滅菌された液体培地200mlに第一の種培養液2mlを無菌的に植菌し、同様に35℃で24時間静置培養し、第2の種培養液とした。次いで、この第2の培養液100mlを別途新たに調製した前記の培地組成からなる液体培地10Lに対し無菌的に植菌し、35℃で24時間静置培養して、生菌数が3.61×10
9/mlの主培養液を得た。
【0021】
<乳酸菌懸濁液の乾燥方法>
上記乳酸菌主培養液10.1Lからそれぞれ均一になるように1Lずつ採取し下記の実験1乃至7に供した。それぞれの実験で調製した乳酸菌懸濁液を乾燥原料とし、パルス燃焼式乾燥機(「ハイパルコン小型テスト機」、パルテック株式会社製)を用い、温度60℃、蒸発量2L/時間の条件で運転して、乳酸菌懸濁液を脱水、乾燥し、乾燥乳酸菌製剤を得た。
【0022】
<実験1>
主培養液1Lに、別途調製した水500mlにトレハロース50g、スキムミルク50g及び炭酸カルシウム5gを懸濁溶解させ加熱滅菌した安定化基材含有溶液を加え、35℃、6時間追加培養を行い、得られる追加培養液を乾燥原料用乳酸菌懸濁液としてパルス燃焼式乾燥機にかけ、脱水・乾燥し、乾燥乳酸菌製剤として約110gを得た。
【0023】
<実験2>
主培養液1Lを、4℃にて遠心分離(8,000r.p.m. 20分間)し、菌体を沈殿として回収した。この湿菌体に対し、更にトレハロース50g、スキムミルク50g及び炭酸カルシウム5gを水に懸濁・溶解した安定化基材含有溶液1.5Lを加え、湿菌体を均一に懸濁・分散させ、実験1と同様に追加培養した。得られる追加培養液を乾燥原料用菌体懸濁液として、実験1と同様にパルス燃焼式乾燥機にかけ脱水、乾燥し、乾燥乳酸菌製剤として約105gを得た。
【0024】
<実験3>
主培養液1Lに、実験1と同様に安定化基材含有溶液500mlを加え追加培養し、次いでこの培養液に対し、更にトレハロース30g、スキムミルク30g及び炭酸カルシウム3gを懸濁・溶解させ、得られる懸濁液を乾燥原料用乳酸菌懸濁液として、実験1と同様にパルス燃焼式乾燥機にかけ、脱水・乾燥し、乾燥乳酸菌製剤約170gを得た。
【0025】
<実験4>
主培養液1Lを、追加培養することなく、そのまま実験1と同様にパルス燃焼式乾燥機にかけ乾燥乳酸菌製剤約20gを得た。
【0026】
<実験5>
主培養液1Lを、安定化基材を加えることなく、主培養と同じ培養条件で6時間追加培養し、これを実験1と同様にパルス燃焼式乾燥機にかけ乾燥乳酸菌製剤として約20gを得た。
【0027】
<実験6>
主培養液1Lを、追加培養することなく、4℃にて遠心分離(8,000rpm、20分間)し菌体を沈殿として回収した。この菌体に対し、更にトレハロース50g、スキムミルク50g及び炭酸カルシウム5gを水に懸濁・溶解した安定化基材含有溶液1.5Lを加え、菌体を均一に懸濁・分散させ得られる菌体懸濁液を実験1と同様にパルス燃焼式乾燥機にかけ、脱水・乾燥し、乾燥乳酸菌製剤として約110gを得た。
【0028】
<実験7>
主培養液1Lを、追加培養することなく、これに安定化基材としてトレハロース50g、スキムミルク50g及び炭酸カルシウム5gを懸濁・溶解させ、得られる菌体懸濁液を実験1と同様にパルス燃焼式乾燥機にかけ脱水・乾燥し、乾燥乳酸菌製剤として約110gを得た。
【0029】
<生菌数測定と生存率(%)>
乾燥原料である乳酸菌懸濁液及び各乾燥方法により得た乾燥乳酸菌製剤の生菌数は以下のようにして測定した。すなわち、乳酸菌培養液1ml又は乾燥乳酸菌製剤1gを適宜、滅菌水にて希釈した。次いで、希釈乳酸菌懸濁液1mlを、常法に従い、予め滅菌しておいたBCP加プレートカウント寒天培地(極東製薬株式会社販売)20mlと混釈してシャーレに播き、35℃で24時間静置することにより平板培養し、平板上に生じたコロニーの数を計測した。このコロニー数にそれぞれの試料における希釈倍率、及び、培養液量又は乾燥乳酸菌製剤の質量を乗じて総生菌数を算出した。また、乾燥原料である乳酸菌培養液の生菌数を基に、各乾燥乳酸菌製剤における乳酸菌の生存率を次式、生存率(%)=(乾燥乳酸菌製剤の総生菌数/乾燥原料の総生菌数)×100にて算出した。結果は表1に示す。
【0031】
表1の結果から明らかなように、対照の乾燥処理する前の主培養液1,000mlの総菌数が3.61×10
12個であったのに対し、実験4の安定化基剤を含有させることなく、主培養液をそのまま乾燥処理したものの総菌数は、3.18×10
11個、乾燥処理前に対する生存率は8.8%であり、また、実験5の安定化基剤を含有させることなく主培養液の培養をそのまま6時間延長した乾燥処理前の総菌数が3.34×10
12個であったのに対し、これを乾燥処理したものの総菌数は、2.51×10
11個、乾燥処理前に対する生存率は7.5%である。実験4、5の結果から、追加培養の有無にかかわらず安定化基剤を含有させない培養液を乾燥したものの生存率は極めて低く、10%未満である。また、実験6の主培養液を追加培養することなく遠心分離し、得られる菌体を安定化基剤含有溶液に懸濁させた乾燥処理前の総菌数が3.50×10
12個であったのに対し、これを乾燥処理したものの総菌数は1.53×10
12個、乾燥処理前に対する生存率は43.7%であり、また実験7の主培養液を追加培養することなく、これに安定化基剤を加え懸濁・溶解させた乾燥処理前の総菌数が3.55×10
12個であったのに対し、これを乾燥処理したものの総菌数は、1.86×10
12個、乾燥処理前に対する生存率は52.4%である。実験6、7の結果から、安定化基剤を含有させても追加培養せずに培養液を乾燥したものの生存率は44乃至52%程度である。一方、実験1の主培養液に安定化基剤を含有させ追加培養し、得られる追加培養液に含まれる、乾燥処理前の総菌数が4.18×10
12個であったのに対し、これを乾燥処理したものの総菌数は4.12×10
12個、乾燥処理前に対する生存率は99.5%であり、また、実験2の主培養液を遠心分離し、この沈殿菌体を安定化基剤溶液に懸濁に安定化基剤を含有させ追加培養し、得られる追加培養液に含まれる乾燥処理前の総菌数が3.82×10
12個であったのに対し、これを乾燥処理したものの総菌数は3.40×10
12個、乾燥処理前に対する生存率は89.0%であり、また、実験3の主培養液に安定化基剤を含有させ、追加培養し、得られる追加培養液に、更に安定化基剤を含有せしめた乾燥処理前の総菌数が4.07×10
12個であったのに対し、これを乾燥処理したものの総菌数は3.95×10
12個、乾燥処理前に対する生存率は97.1%である。実験1、2、及び3の結果から安定化剤共存下で追加培養した培養液を菌体懸濁液としてパルス燃焼式乾燥機にかけ、得られる乾燥乳酸菌はその生存率が、80%以上、好ましくは90%以上にもなり格段に向上している。
【0032】
次いで、上記の結果を受け、乾燥方法をパルス燃焼式乾燥から噴霧乾燥に変更して同様に比較検討した。すなわち、実験1、4、5、6及び7において乾燥方法をパルス燃焼式乾燥から噴霧乾燥に変更した実験8、9、10、11及び12を行い、菌体懸濁液の調製方法の違い及び安定化基剤共存の有無が与える噴霧乾燥により得られる乾燥乳酸菌の生存率への影響について比較検討した。乳酸菌の培養、菌体懸濁液調製、生菌数測定及び生存率(%)の算出については、パルス燃焼式乾燥の場合と同様に行い、表2に結果を示した。
【0033】
なお、噴霧乾燥は卓上型スプレードライヤー(SD−1型 東京理化器械株式会社製)を用い、乾燥風の乾燥室の入口での温度が100℃、出口での温度が50℃の条件で行った。
【0035】
表2の結果から明らかなように、対照の乾燥処理する前の主培養液1,000mlの総菌数が3.62×10
12個であったのに対し、実験9の安定化基剤を含有させることなく、主培養液をそのまま乾燥処理したものの総菌数は、3.30×10
11個、乾燥処理前に対する生存率は9.2%であり、また、実験10の安定化基剤を含有させることなく主培養液の培養をそのまま6時間延長した乾燥処理前の総菌数が3.42×10
12個であったのに対し、これを乾燥処理したものの総菌数は、2.90×10
11個、乾燥処理前に対する生存率は8.6%である。実験9、10の結果から、追加培養の有無にかかわらず安定化基剤を含有させない培養液を乾燥したものの生存率は極めて低く、10%未満である。また、実験11の主培養液を追加培養することなく遠心分離し、得られる菌体を安定化基剤含有溶液に懸濁させた乾燥処理前の総菌数が3.48×10
12個であったのに対し、これを乾燥処理したものの総菌数は1.75×10
12個、乾燥処理前に対する生存率は50.4%であり、また実験12の主培養液を追加培養することなく、これに安定化基剤を加え懸濁・溶解させた乾燥処理前の総菌数が3.60×10
12個であったのに対し、これを乾燥処理したものの総菌数は、1.93×10
12個、乾燥処理前に対する生存率は53.6%である。実験11、12の結果から、安定化基剤を含有させても追加培養せずに培養液を乾燥したものの生存率は50乃至54%程度である。一方、実験8の主培養液に安定化基剤を含有させ追加培養し、得られる追加培養液に含まれる、乾燥処理前の総菌数が4.15×10
12個であったのに対し、これを乾燥処理したものの総菌数は4.00×10
12個、乾燥処理前に対する生存率は96.4%であることから、乾燥法を噴霧乾燥にした場合においても安定化剤共存下で追加培養した培養液を菌体懸濁液として乾燥し、得られる乾燥乳酸菌はその生存率が90%以上にもなり格段に向上している。
【0036】
以上の結果から、本発明の生存率を向上させた乾燥微生物を製造するためには、乾燥原料である微生物懸濁液を、主培養後に安定化基剤と共存、接触せしめる追加培養工程は、主培養とは違って、時間も比較的短時間、好ましくは、4乃至10時間程度で、微生物菌体の増殖もほとんどないか、若しくは、あったとしてもわずかなものである。追加培養を経た微生物は、予め安定化基剤と共存、接触しつつ、わずか数時間培養環境下に保持されるだけで、その後の脱水・乾燥などで被るであろうストレス障害を上手に緩和若しくは回避する能力を獲得しているものと推察できる。本発明の方法により得られた乾燥微生物菌体は、生存率が高く、本来の活性を維持した高品質の乾燥微生物製剤であり、各種食品、医薬品、化粧品、飼料等向け微生物製剤として有利に利用できる。
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
<乾燥乳酸菌製剤>
ラクトバチルス・プランタム(Lactobacillus plantarum)IFO 3070を10mlの乳酸菌用MRS培地(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社販売)に無菌的に植菌し、35℃で24時間静置液体培養したものを第2の種培養液とした。別途、同様に調製した200mlのMRS培地に種培養液1mlを植菌し、同様に35℃で24時間静置培養したものを第2の種培養液とした。次いで、第2の種培養液を、別途調製した培地組成%(w/v)が、酵母エキス2.0、粉飴5.0、リン酸二カリウム0.2、クエン酸二アンモニウム0.2、酢酸ナトリウム0.5、硫酸マグネシウム0.02、硫酸第一鉄0.004及び脱脂大豆(微粉)1.0からなる滅菌された液体培地5.4Lに1%(v/v)の割合で植菌し、35℃で24時間静置培養し、主培養液を得た。主培養液の生菌数はml当り2.92×10
9個であった。この主培養液5Lに対し、別途調製したトレハロース500g、スクロース250g、スキムミルク250g、小麦フスマ(微粉)25g、炭酸カルシウム50gを水2.5Lに懸濁溶解させ加熱滅菌した安定化基剤含有溶液を加え、35℃、7時間追加培養を行い得られる追加培養液を乳酸菌懸濁液として実験で述べたのと同様の条件でパルス燃焼式乾燥機にかけ脱水乾燥し、乾燥乳酸菌製剤として約1,050gを得た。生菌数を測定したところ、乾燥にかける前の乳酸菌総数は1.25×10
13個であり、これを乾燥したものの総菌数は1.22×10
13個で、その生存率は約98%であった。本品は、乳酸菌の生存率が高く、本来の活性を維持した高品質の乾燥乳酸菌製剤であり、食用又は飼料用乳酸菌などとして有利に利用できる。
【実施例2】
【0039】
<乾燥酵母菌製剤>
グルコース2g、酵母エキス1g、ポリペプトン2gを含む液体培養200mlにパン酵母(Saccharomyces cereviae)を無菌的に植菌し、27℃で40時間好気的に培養したものを種培養液とした。別途、同様に調製した同組成の液体培地5Lに2%(v/v)の割合で植菌し、27℃で40時間好気的に培養し、主培養液を得た。主培養液の菌数はml当り2.0×10
8個であった。この主培養液に対し、別途調製したトレハロース500g、スキムミルク250g及び炭酸カルシウム10gを水2.5Lに懸濁・溶解させ加熱滅菌した安定化基剤含有溶液を加え、27℃で10時間追加培養を行い、得られた追加培養液を酵母懸濁液として、実験で述べた同様の条件で、パルス燃焼式乾燥機にかけ乾燥酵母菌製剤として約760gを得た。生菌数を、公知のYM寒天培地(和光純薬工業株式会社販売)を使用する方法により、乳酸菌の場合に準じて、測定したところ、乾燥にかける前の酵母菌総数は2.0×10
12個であり、これを乾燥したものの総菌数は1.9×10
12個で、その生存率は約95%であった。本品は酵母菌の生存率が高く、本来の活性を維持した高品質の乾燥酵母菌製剤であり、食品又は飼料用酵母などとして有利に利用できる。
【実施例3】
【0040】
<乾燥乳酸菌製剤>
実施例1と同じ操作にて、安定化基剤を含有させ追加培養して得た乳酸菌懸濁液0.5Lを、卓上型スプレードライヤー(SD−1型 東京理化器械株式会社製)にて、乾燥風の乾燥室の入口での温度が100℃、出口での温度が70℃にて噴霧乾燥を行い、乾燥乳酸菌製剤として約350g得た。生菌数を測定したところ、乾燥にかける前の乳酸菌総数は1.23×10
13個であり、これを乾燥したものの総菌数は1.19×10
13個で、その生存率は約97%であった。本品は、乳酸菌の生存率が高く、本来の活性を維持した高品質の乾燥乳酸菌製剤であり、食用又は飼料用乳酸菌などとして有利に利用できる。
【実施例4】
【0041】
<乾燥酵母菌製剤>
実施例2と同じ操作にて、安定化基剤を含有させ追加培養して得た酵母懸濁液0.5Lを、実施例3と同じ操作にて噴霧乾燥し、乾燥酵母菌製剤として約350gを得た。生菌数を、実施例2に準じて、測定したところ、乾燥にかける前の酵母菌総数は1.9×10
12個であり、これを乾燥したものの総菌数は1.8×10
12個で、その生存率は約96%であった。本品は酵母菌の生存率が高く、本来の活性を維持した高品質の乾燥酵母菌製剤であり、食品又は飼料用酵母などとして有利に利用できる。