(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記原料投入装置は、前記原料を前記反応器に投入するピストンポンプと、前記ピストンポンプで投入する原料の原料供給口を具備した投入管を開閉するゲート弁とを有し、
前記ピストンポンプのピストンは、前記投入管の原料供給口のゲート側端部からゲート弁との間でシールするシール部を備え、前記ピストンが前記原料供給口のゲート側端部からゲート弁との間の投入管と接した状態で前記シール部によって高圧の反応器側と低圧の原料供給口側とをシールするように構成されている請求項1に記載の糖化反応設備。
前記ピストンポンプは、前記原料の嵩密度を調整できるように、前記原料供給口のゲート側端部に対する前記ピストンのゲート弁側停止位置及び原料供給口側停止位置のいずれかを制御できるように構成されている請求項2に記載の糖化反応設備。
前記加熱蒸気供給部は、前記反応器の内部の上部気層圧力が、前記送り機構で送る原料の液温度の飽和蒸気圧力と蒸気以外の気体の分圧との合計よりも高い圧力となる加熱蒸気を供給するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の糖化反応設備。
【背景技術】
【0002】
バイオマスエネルギー利用の一環として、バガス、稲藁などの植物の主成分であるセルロース又はヘミセルロースを糖化分解した後、その糖液からエタノールを得ようとする試みがある。そして、得られたエタノールは、燃料用として自動車燃料に一部混入させたり、ガソリンの代替燃料として利用することが計画されている。
【0003】
セルロース又はヘミセルロースのようなセルロース系バイオマスを糖類に分解する方法として、高温高圧の超臨界水又は亜臨界水で糖化分解させる方法がある。
【0004】
この方法として、例えば、バガス、稲藁などの粉砕物であるバイオマス原料(この明細書及び特許請求の範囲の書類中においては、単に「原料」ともいう)を反応器に投入し、反応器で糖化分解させてC5糖液を得て、そのC5糖液の脱水ケーキを更に反応器で糖化分解させてC6糖液を得るものがある。そして、これらの糖液を発酵させて蒸留することでエタノールを生成している。
【0005】
しかし、高温高圧の超臨界水又は亜臨界水を用いると、その強力な酸化力のために数秒〜数分という短時間でセルロース及びヘミセルロースの糖化分解が完了してしまう。
【0006】
そのため、バイオマス原料を短時間で糖化反応させるのに適した状態で反応器に投入し、反応器で効率良く糖化分解させることで、糖化率を高くできる糖化反応設備が切望されている。
【0007】
この種のバイオマス原料などを供給する装置の先行技術として、被処理物を加圧容器内に供給する供給装置に、水抜き手段が設けられた中空体内において、加圧容器に臨む開口から被処理物をピストンで押し出すようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、他の先行技術として、シリンダ部の内部を移動するピストンによってスラリーと固形物を含む被注入物を高温高圧反応装置に供給するようにし、固形物の詰まりを防止するためにピストンの貫通孔内を貫通するスピンドルを設けた注入装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
さらに、他の先行技術として、細かく粉砕された固体を円筒のスロットから挿入室に重力落下させ、その後、円筒のスロットを閉じ、ピストンで挿入室から高圧の反応容器内に固体を供給するようにした乾式供給機がある(例えば、特許文献3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、バイオマス原料を反応器に投入する方法として、原料に水分を含ませて圧密した状態で投入する方法がある。しかし、原料を圧密した状態で反応器に投入すると、その原料を糖化反応温度まで上昇させるのに時間を要する。これは、原料を圧密した状態で反応器に投入すると、塊の状態のままで砕けにくく、蒸気と迅速に混合することができずに温度上昇速度が遅くなるものと考えられる。そのため、原料を圧密して投入すると糖化率が下がる。このことは、上記特許文献1に記載された装置によって原料を供給した場合も同様である。また、上記特許文献2に記載された装置の場合も、固形物を迅速に糖化反応温度まで上昇させるのは難しい。
【0012】
一方、原料を圧密しない状態で高圧の反応器に投入する方法もある。この方法として、一般的なロックホッパによる投入方法がある。しかし、ロックホッパによる投入方法は、上部に設けられたゲート弁を開放して低圧のホッパ内に原料を投入してゲート弁を閉じ、下部に設けられた調圧弁を開放してホッパ内を反応器と同じ高圧にした後に調圧弁を閉じる。そして、下部に設けられたゲート弁を開放することにより原料を反応器に投入する。その後、ゲート弁を閉じ、上部に設けられた調圧弁を開放することによりホッパ内を低圧にした後に調圧弁を閉じる。その後は、上部のゲート弁を開放し、次の原料をホッパ内に投入する。そのため、ロックホッパによる原料投入には、これらの動作を繰り返すための投入間隔を要する。この投入間隔は、例えば、2〜3分に1回となる。
【0013】
しかしながら、上記したように、反応器においてバイオマス原料を糖化分解する反応時間は短い。特に、セルロースの糖化分解に要する反応時間は非常に短く、例えば1分以下の短時間で糖化分解が完了してしまう。そのため、上記ロックホッパを採用したとすると、糖化分解の時間よりも原料の投入間隔が長くなってしまう。そのため、ロックホッパのような完全混合槽の場合、順次投入する原料を混ぜてしまうことになり、結果として反応時間が長いものと短いものとが同時に排出されて、糖化率が下がることになる。このことは、上記特許文献3に記載された装置によって原料を供給した場合も同様である。
【0014】
そこで、本発明は、原料投入装置によって糖化分解に適した状態で原料を反応器に投入し、反応器で効率良く糖化分解させることができる糖化反応設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明者は、反応器で効率良く糖化分解させることができるように種々の原料を異なる圧密状態で反応器に投入して糖化反応させる実験を行った。そして、原料を所定の圧密しない状態で投入すれば、その原料を蒸気で迅速に糖化反応温度まで上昇させることができるのではないかと考えた。
【0016】
そして、種々の実験を行った結果から、ピストンポンプ方式の原料投入装置によってプラグフロー型の反応器に圧密しない状態の原料を投入する方法を考えた。この方法によれば、投入した原料を反応器で糖化反応に適した温度まで迅速に上昇させ、その後短時間で効率良く糖化分解させることができ、従来回収が困難とされていたC6糖液も回収することができる、という知見を得た。
【0017】
本発明に係る糖化反応設備は、原料を糖化反応させる反応器と、前記原料を所定間隔で前記反応器に投入する原料投入装置と、を備え、前記原料投入装置は、前記原料を前記反応器に投入することで崩れて分散する嵩密度で反応器に投入するように構成され、前記反応器は、前記原料投入装置から投入された前記原料を糖化反応温度まで上昇させる加熱蒸気供給部と、投入された原料を高温高圧下で所定時間糖化反応させた後、排出口から排出する送り機構とを有している。
【0018】
この構成により、原料投入装置によって反応器の糖化反応速度に適した嵩密度で原料を反応器に投入するので、反応器に投入された原料は分散されて比表面積を大きくとることができ、短時間で温度上昇させることができる。従って、投入後の原料を迅速に糖化反応温度まで昇温し、所定の糖化分解時間で効率良く糖化分解させて、糖化率の高い糖化反応をさせることができる。
【0019】
また、前記原料投入装置は、前記原料を前記反応器に投入するピストンポンプと、前記ピストンポンプで投入する原料の原料供給口を具備した投入管を開閉するゲート弁とを有し、前記ピストンポンプのピストンは、前記投入管の原料供給口のゲート側端部からゲート弁との間でシールするシール部を備え、前記ピストンが前記原料供給口のゲート側端部からゲート弁との間の投入管と接した状態で前記シール部によって高圧の反応器側と低圧の原料供給口側とをシールするように構成されていてもよい。
【0020】
このように構成すれば、ピストンポンプで高圧の反応器に原料を投入するときに、ピストンが投入管の原料供給口のゲート側端部に達するとシール部によって投入管をシールすることができるので、反応器と原料供給口との間をシールすることができる。これにより、反応器の高圧をピストンでシールした状態でゲート弁を開放し、原料を高圧の反応器内に安定して投入することができる。
【0021】
また、前記ピストンポンプは、前記原料の嵩密度を調整できるように、前記原料供給口のゲート側端部に対する前記ピストンのゲート弁側停止位置及び原料供給口側停止位置のいずれかを制御できるように構成されていてもよい。
【0022】
このように構成すれば、ピストンで送る原料の嵩密度を反応器における糖化分解に適した状態に調整することができる。
【0023】
また、前記加熱蒸気供給部は、前記反応器の内部の上部気層圧力が、前記送り機構で送る原料の液温度の飽和蒸気圧力と内部の蒸気以外の気体の分圧との合計よりも高い圧力となる加熱蒸気を供給するように構成されていてもよい。
【0024】
このように構成すれば、圧密しない所定の嵩密度で反応器に投入された原料は、原料に包含されて投入された空気の分圧により水蒸気の凝縮が邪魔されない。そのため、原料の大きい比表面積を、糖化分解温度の液温度の飽和蒸気圧力と内部の蒸気以外の気体の分圧との合計よりも高い圧力の蒸気で一気に加熱することができ、原料を短時間で糖化分解に適した温度まで一気に上昇させて短時間で糖化分解させることができる。
【0025】
また、前記反応器は、前記原料投入装置から投入された原料中の空気を排出するベント部を有していてもよい。
【0026】
このように構成すれば、圧密しない所定の嵩密度で投入された原料中の空気を排出し、空気分圧による水蒸気の凝縮が邪魔されないようにでき、これによっても原料の昇温時間を短くでき、糖化率を上げることができる。
【0027】
また、前記原料に蒸気を混合して予熱し、該予熱された原料を前記原料投入装置に供給する混合機と、前記反応器から排出した原料を減温・減圧するフラッシュタンクとを備え、前記フラッシュタンクで減圧した蒸気を前記混合機に戻して原料に混合することで原料温度を反応温度以下で予熱するように構成されていてもよい。
【0028】
このように構成すれば、反応器から排出した原料をフラッシュタンクで減温・減圧した後の蒸気を利用して反応器に投入する原料を予熱し、設備の省エネルギ化を図ることができる。
【0029】
また、前記混合機は、前記原料に酸触媒を混合するように構成されていてもよい。
【0030】
このように構成すれば、反応器に投入する前に原料の基準酸濃度を一定に保ち、反応器において酸触媒を供給する場合に比べて糖化率のばらつきによる糖化率低下を抑止することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、原料投入装置によって反応器における糖化反応に適した嵩密度で原料を投入することができるので、反応器において原料を短時間で糖化分解に適した温度に上昇させて効率良く糖化分解させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、
図1に示すような糖化反応設備を含むバイオエタノール製造設備を例に説明する。このバイオエタノール製造設備では、2段階の糖化分解によってC5糖液及びC6糖液を得るようにしている。
【0034】
まず、
図1に基づいて、バイオエタノール製造設備の概要を説明する。バガス、稲藁などのバイオマス原料1が、前処理2にて所定の大きさまで粉砕される。この原料は、混合機3において蒸気4、酸触媒5と混合される。そして、この原料が、所定の温度、圧力条件に設定された反応器6に投入される。この原料は、反応器6で所定時間糖化分解させられ、フラッシュタンク7に供給されてフラッシュ減圧される。このフラッシュタンク7におけるフラッシュ減圧は、反応器6から排出されるスラリー状原料を一気に減圧して一部を気化させて温度を下げるものである。これにより、反応を停止させる。このフラッシュタンク7で減温・減圧された固体及び液体は、固液分離装置8によってC5糖液9と一次脱水ケーキ10とに分離される。
【0035】
そして、一次脱水ケーキ10は、次の混合機11において蒸気12、酸触媒13と混合されて次の原料となる。この原料が、次の温度、圧力条件に設定された反応器14に投入される。この原料は、反応器14で所定時間糖化分解させられ、フラッシュタンク15に供給されてフラッシュ減圧される。このフラッシュタンク15で減温・減圧された固体及び液体は、固液分離装置16によってC6糖液17と二次脱水ケーキ18とに分離される。
【0036】
このようにして得られたC5糖液9及びC6糖液17が、アルコール発酵させられた後、蒸留されてバイオエタノールが製造される。
【0037】
次に、
図2に基づいて、上記一次脱水ケーキ10からC6糖液17を得るための混合機11及び反応器14と、これらの間に設けられた原料投入装置20とを備えた糖化反応設備60について詳細に説明する。反応器14においてC6糖液を得るための条件としては、反応器6においてC5糖液を得るための条件に比べて、反応温度及び圧力が高くて糖化反応時間が短い。
【0038】
図2に示すように、混合機11において原料(この例では、一次脱水ケーキ)10に酸触媒13と蒸気12が混合されている。このように、反応器14に投入する前の原料10に対して酸触媒13を混ぜておくことで、原料基準の酸濃度を一定に保ち、反応器14において酸触媒13を供給する場合に比べて糖化率のばらつきによる糖化率低下を抑止している。
【0039】
また、この実施形態では、混合機11で原料10を蒸気12によって予熱しているので、以下に説明する反応器14において反応温度まで上昇させる温度差(Δt)を小さくできる。この蒸気12による予熱は、原料10の温度を反応器14における反応温度以下に予熱している。例えば、原料10を約120℃程度に予熱する。なお、この原料10の蒸気12による予熱は、必要に応じて行えばよい。
【0040】
この混合機11で酸触媒13と蒸気12が混合される原料10は、例えば、水分が50重量%以下の場合には反応器14においてスラリー状になり難いので、水分が50〜80重量%程度にされる。
【0041】
そして、混合機11で酸触媒13を混合した原料10は、
図3にも示すように、この原料10を反応器14に投入する原料投入装置20のホッパ21に供給される。原料投入装置20は、ピストンポンプ30によってホッパ21から一定量の原料10を所定間隔で投入管22を介して反応器14に投入するようになっている。ピストンポンプ30は、ホッパ21に供給された原料10を反応器14に向けて押し出して投入するようになっている。
【0042】
ピストンポンプ30と反応器14との間にはゲート弁26が設けられている。反応器14側が高圧であるため、ピストンポンプ30のピストン31が所定位置に達した時点で反応器14側との間をシールし、その後、ゲート弁26を開いて原料10を反応器14に所定間隔で投入するように制御されている。この所定間隔は、反応器14での滞留時間よりも短い時間、例えば、20〜60秒に1回の間隔に設定される。なお、原料投入の詳細は、後述する。
【0043】
また、この原料投入装置20で反応器14に投入される原料10は、上記したように混合機11で水分が50〜80重量%程度にされている。しかし、水分が50〜80重量%程度の原料10でも、液体ではないため反応器14において蒸気と混ざりにくい。
【0044】
そこで、この原料投入装置20により、反応器14に投入する原料10を圧密しない嵩密度で投入し、反応器14に投入したときに分散させることで短時間で糖化反応温度まで上昇させるようにしている。
【0045】
つまり、原料10を圧密しないパサパサの状態の嵩密度で反応器14に投入することで、投入された原料10は分散されて粉状になり、加熱蒸気と接触する表面積が大きくなるようにしている。すなわち、これにより、投入されて粉状になった原料10は加熱蒸気と接触する比表面積が大きくなり、その比表面積で加熱蒸気によって一気に加熱された原料10は、糖化反応に適した温度まで短時間で上昇させられるようにしている。原料10を圧密しない嵩密度としては、例えば、0.3〜0.6程度に設定される。
【0046】
一方、上記反応器14は、高温・高圧でバイオマス原料を糖化分解して糖液を得るものである。上記ピストンポンプ30から原料10が投入される上部に所定の体積を有する気層部50が設けられ、下部に原料10を所定の反応時間で排出口56に向けて送りながら糖化分解させる液層部51が設けられている。
【0047】
上部の気層部50に原料投入口52が設けられ、この原料投入口52に上記ピストンポンプ30の投入管22の先端が接続されている。この原料投入口52から投入された原料10は、下部の液層部51に設けられた横送り装置53の上部に落下するようになっている。気層部50には上部気層用圧力計41が設けられ、液層部51には液用温度計42が設けられている。
【0048】
反応器14の下部に設けられた横送り装置53は、二軸の送り機構54が駆動モータ55で回転させられることで、原料10を混ぜながら糖化分解に適した時間で横送りして排出口56から糖化分解したスラリー状原料を排出するようになっている。反応器14は、原料投入口52から投入された原料10を順次排出口56に向けて送るプラグフロー型の反応器14となっている。原料10は、反応器14内の高温高圧環境下で横送り装置53で送られる間に反応によって高濃度のスラリー状になる。
【0049】
この実施形態では、上記横送り装置53の送り機構54を、二軸の送り機構としているが、この送り機構54は、原料10を所定の反応時間で排出口56まで搬送できるものであればよい。
【0050】
また、反応器14の原料投入口52側には、この原料投入口52から投入されて落下する原料10に対して加熱蒸気57が供給されている。この加熱蒸気57は、反応器14の内部の上部気層圧力が、液層部温度の飽和蒸気圧と蒸気以外の気体の分圧との合計よりも高い圧力となるような高温の加熱蒸気57が加熱蒸気供給部58から投入されている。この加熱蒸気57により、原料投入口52から投入された原料10を迅速に温度上昇させている。例えば、反応器14における液層部温度が240〜280℃の場合、加熱蒸気57は250〜300℃程度の高温蒸気が供給される。この高温の加熱蒸気57を供給することにより、原料10を短時間で糖化反応温度まで上昇させるようになっている。この糖化反応温度まで上昇させる時間としては、例えば、10秒以内に約20〜120℃の原料10を240〜280℃まで上昇させることができるようにしている。
【0051】
上記加熱蒸気57としては、液層部51の飽和蒸気圧+空気分圧<内部の上部気層圧力、となるように、加熱蒸気供給部58から圧力の高い蒸気が投入される。この例では、250〜300℃の蒸気を投入している。このように、反応器14の内部を、液層部51の飽和蒸気圧に蒸気以外の気体の分圧を加えた圧力に比べて上部空間の気層の圧力を高くすることで、空気分圧により水蒸気の凝縮が邪魔されないようにしている。これによっても、原料10の温度上昇時間を短くして、糖化率向上を図っている。
【0052】
また、この実施形態では、原料投入口52の上方と横送り装置53の終端上方から、ベント管40によってエア抜きされている。上記したように、ピストンポンプ30によって圧密しない状態の嵩密度で原料10を反応器14に投入すると、その原料10の中に空気を包含する。そこで、その空気をベント管40から排出することで、反応器14の内部で蒸気分圧が下がって蒸気が凝縮し難くなることによる原料10の温度上昇が遅くなるのを防いでいる。ベント管40によるエア抜きは、上記原料投入装置20の投入管22からも行うようにしてもよい。このように、反応器14の内部に空気が溜まりすぎないように抜くことで、内部の空気分圧を下げて水蒸気の凝縮を促進させている。これによっても、原料10の温度上昇時間を短くして、糖化率向上を図っている。
【0053】
上記横送り装置53の送り方向端部には、糖化分解させた原料10を排出する排出口56が設けられている。この排出口56から排出された原料10は、フラッシュタンク15に供給されてフラッシュ減圧された後、固液分離装置(
図1)16に供給される。
【0054】
また、この実施形態では、フラッシュタンク15において減圧してタンク上部に発生する蒸気を、上記混合機11に導いて原料予熱用の蒸気12として利用している。このようにフラッシュタンク15の蒸気12を原料予熱用として混合機11に供給することで、設備全体の省エネルギ化を図っている。
【0055】
次に、
図3に基づいて、上記原料投入装置20を詳細に説明する。原料投入装置20は、反応器14の原料投入口52から少し離れた位置に設けられたゲート弁26と、このゲート弁26から所定距離で離れた位置に設けられた上記ホッパ21と、このホッパ21に供給された原料10を押し出すピストンポンプ30とを有している。
【0056】
ゲート弁26は、制御装置によって投入管22を開放又は閉鎖するように制御されている。ゲート部材27は、投入管22を開放又は閉鎖する。
【0057】
ゲート部材27のホッパ側端面とホッパ21の下部に設けられた原料供給口23のゲート側端部(原料供給口端部)24との距離L1は、ホッパ21の下部における原料供給口距離L2に対して少し短くなっている。
【0058】
また、ピストンポンプ30のピストン31は、先端部分に上記原料供給口23のゲート側端部24からゲート弁側の投入管22の内面との間でシール機能を発揮するシール部32が設けられている。これにより、ピストンポンプ30のピストン31は、原料供給口23に供給された原料10を、この原料供給口23のピストンポンプ側端部25からゲート弁側に押し、そのピストン31が原料供給口23のゲート側端部24から投入管22に挿入されると、シール部32によって投入管22との間がシールされるようになっている。なお、以下の説明では、上記距離L1の原料供給口側基準位置をゲート側端部24として説明するが、ピストン31のシール部32で投入管22が完全にシールされた状態でゲート部材27を開放するように、二点鎖線で示すように、距離L1の原料供給口側基準位置をゲート側端部24から少しゲート弁側に入った位置28としてもよい。
【0059】
従って、ピストン31のシール部32で投入管22との間がシールされた状態でゲート弁26を開放したとしても、高圧の反応器14側から低圧の原料供給口23の方向に圧が抜けることはない。
【0060】
そして、このピストン31で投入管22をシールをした状態でゲート部材27を開放し、ピストンポンプ30のピストン31をゲート弁26の位置まで伸張させれば、投入管22の内部の原料10が反応器14の内部に投入される。
【0061】
その後、ピストン31を後退させて、原料供給口23のゲート側端部24に達する前にゲート部材27が閉じられる。これにより、ピストン31のシール部32で投入管22がシールされた状態でゲート弁26が閉じられるので、高圧の反応器14側から低圧の原料供給口23の方向に圧が抜けることはない。
【0062】
また、この実施形態では、上記ピストンポンプ30のピストン31を伸縮させる距離をセンサでストローク制御するようにしている。この例では、ピストン31を伸縮させるシリンダ部33に位置センサ35〜39が設けられており、これらの位置センサ35〜39でピストン31の位置が検出され、そのピストン31の位置に応じて上記したようにゲート弁26のゲート部材27が開閉制御されるようになっている。
【0063】
この実施形態では、後述する
図4A〜
図4Cに示すように、ピストンポンプ30のピストン31が、原料供給口23のピストンポンプ側端部25に位置したときに検知する位置センサ35と、ピストン31が原料供給口23のゲート側端部24に位置したときに検知する位置センサ36と、ピストン31がゲート部材27のホッパ側端面に位置したときに検知する位置センサ37とが設けられている。また、後述する
図5A、
図5Bに示すように、距離L4,距離L5の位置に達したときに検知する位置センサ38,39も設けられている。これらの位置センサ35〜39は、リミットスイッチや他の構成を利用することができる。
【0064】
次に、
図4A〜
図4Cに基づいて、上記投入管22のゲート部材27から原料供給口23のゲート側端部24までの距離L1と、ホッパ21の原料供給口距離L2と、ピストン31がゲート部材27のホッパ側端面に位置するまでのピストンポンプ30のストロークL3との動作位置制御について説明する。
【0065】
図4Aに示す状態は、上記
図3に示す状態からピストンポンプ30のピストン31を伸張させた状態である。ピストン31を伸張させて、ホッパ21の下部の原料供給口距離L2分の原料10をゲート弁26に向けて押圧する。そして、ピストン31が原料供給口23のゲート側端部24に達すると、周囲のシール部32が投入管22と接して投入管22がシールされる。これにより、原料供給口距離L2分の原料10が、ゲート弁26のゲート部材27と原料供給口23のゲート側端部24との間の距離L1の部分に移送されて少し押圧された状態となる。
【0066】
次に、
図4Bに示すように、ゲート部材27が開放され、ピストン31がストロークL1だけ伸張され、原料10が反応器14の内部に投入される。この例では、投入管22において原料10を少し押圧して所定の嵩密度(例えば、0.3〜0.6程度)にしてから投入することで、反応器14の内部に投入したときに崩れて粉状に分散するようにしている。原料10を投入時に分散させることで、原料10の比表面積が大きくなり、加熱蒸気によって迅速に糖化反応温度まで加熱されるようにしている。
【0067】
また、この実施形態では、上記したように原料10を糖化反応が進まない程度の温度(例えば、100〜120℃以下の温度)に予熱しているため、投入後に加熱する温度を小さくして反応温度まで一気に昇温させるようにしている。しかも、このようにすることで、上述したようにフラッシュタンク15の蒸気を有効利用し、反応器14で温度上昇させる昇温幅を小さくして省エネルギ化を図っている。
【0068】
次に、
図4Cに示すように、ピストン31が原料供給口23のゲート側端部24までの距離L1だけ縮められる間に、ゲート部材27が閉じられる。その後、ピストン31が原料供給口23のピストンポンプ側端部25まで縮められて、
図3に示す初期状態となる。
【0069】
このようなピストンポンプ30による原料10の投入間隔としては、例えば、20〜60秒に1回の頻度で投入される。反応器14における原料10の滞留時間(搬送時間)としては、例えば、数十秒〜1分程度と非常に短いが、更に短い間隔で原料10が投入される。このように、原料10を、短いサイクルで上記したように圧密しないパサパサの状態の嵩密度で反応器14に投入することにより、反応器14で原料10を順次送りながら所定の短い糖化分解時間で効率良く糖化分解させて、糖化率を上げるようにしている。
【0070】
次に、
図5A、
図5Bに基づいて、上記ピストンポンプ30とゲート弁26とによる異なる動作位置制御例を説明する。なお、
図5A、
図5Bにおける距離L4,L5は、説明上の誇張した位置を示している。
【0071】
図5Aに示す例は、上記
図4A〜
図4Cに示す例よりも原料10の嵩密度を少し高くしたい(圧密したい)場合の設定例である。この例では、原料投入時(ゲート部材27の開時)のピストン31の伸張位置をゲート部材27のホッパ側端面に達しない距離L4で止めるようにしている。距離L4は、シリンダ部33に設けられた位置センサ38によって検知させている。
【0072】
このように、ピストン31の伸張長さを制限することにより、投入管22から反応器14の内部に投入する原料10がゲート部材27の手前に少し残った状態となる。そのため、次にピストン31で原料供給口距離L2分の原料10を投入管22に向けて移送してピストン31がゲート側端部24に達した状態では、ゲート部材27の手前に残っている原料10に新たな原料10が押圧されることになる。これにより、投入管22において原料10を少し圧密することができる。
【0073】
そして、ゲート部材27を開放させてピストン31を距離L4分だけ伸張させることにより、嵩密度を高くした原料10を反応器14の内部に投入することができる。この動作位置制御例は、原料を反応器14に投入する前に少し圧密させる必要がある場合に用いられる。
【0074】
一方、原料10を投入するためにピストン31を伸張するときに、上記ゲート部材27を二点鎖線で示すように閉じた状態とし、ピストン31をゲート側端部24から距離L4の位置まで押し込むようにしてもよい。そして、ピストン31が距離L4の位置に達した状態でゲート部材27を開放し、更にピストン31を距離L1まで伸張させることで原料10を反応器14に投入するようにしてもよい。このようにすれば、原料供給口距離L2分の原料10をゲート部材27の手前の投入管22の内部で距離L4分だけ圧密して嵩密度を高くし、その原料10を反応器14の内部に投入することができる。この動作位置制御例も、原料を反応器14に投入する前に少し圧密させる必要がある場合に用いられる。
【0075】
図5Bに示す例は、上記
図4A〜
図4Cに示す例よりも原料10の嵩密度を少し低くしたい(よりパサパサにしたい)場合又は供給量を減らしたい場合の設定例である。この例では、ピストン31の縮小位置をホッパ21の下部の原料供給口距離L2の途中までの距離L5で止めるようにしている。距離L5は、シリンダ部33に設けられた位置センサ39によって検知させている。
【0076】
このように、ピストン31の縮小長さを制限することにより、ホッパ21の下部の原料供給口距離L2分の内の距離L5分の原料10をピストン31がゲート側端部24でシールされるまでに投入管22のゲート側端部24とゲート部材27との間に押し込むことになり、原料10の押し込み量が少なくなる。これにより、投入管22に移送される原料10の量が少なくなり、原料10が圧縮されないようにできる。また、供給量を減らすことができる。
【0077】
そして、ゲート部材27を開放させてピストン31を距離L1分だけ伸張させることにより、嵩密度を低くした原料10を反応器14の内部に投入することができる。この動作位置制御例は、少し圧密された原料10を、それ以上圧密することなく反応器14に投入する場合などに用いられる。
【0078】
このような原料10の嵩密度の調整は、上記距離L1と原料供給口距離L2とが決まれば、投入管22のゲート側端部24の位置を基準として、ピストン31の伸縮位置を調整することによって行うことができる。このピストン31の伸縮位置の調整は、位置センサ38,39の位置を調整することにより行うことができる。
【0079】
以上のように、上記糖化反応設備60によれば、バイオエタノールの製造時等において、原料10を短い間隔で反応器14に投入したい場合に、原料投入装置20のピストンポンプ30によって高い頻度で原料10を反応器14に投入することができる。しかも、原料10を反応器14において短い時間で反応に適した温度まで昇温させることができるような嵩密度で投入することが可能となる。
【0080】
その上、原料10によって水分状態などが変化したとしても、反応器14に投入する原料10の圧密状態などを原料投入装置20のピストンポンプ30を制御することで調整することができるので、原料10を反応器14に適した嵩密度に調整して投入し、反応器14で糖化率の高い反応を安定してさせることが可能となる。
【0081】
また、ピストンポンプ30によって原料10を投入することで、投入管22の内部に原料10を残すことなく反応器14に投入することができる。
【0082】
なお、上記実施形態では、バイオマス原料10を二段階で糖化分解させてC5糖液とC6糖液とを得てバイオエタノールを製造する設備を例に説明したが、他の設備であっても同様の原料を反応器に投入して短時間で反応させたい場合には適用でき、上記実施形態に限定されるものではない。
【0083】
また、上記実施形態では、ピストンポンプ30のピストン31を移動制御する動作例として2つの例(
図5A,
図5B)を説明したが、これらを組合わせたり、他の条件に応じて異なる動作位置制御を行うことも可能であり、ピストンポンプ30の動作位置制御は上記実施形態に限定されるものではない。しかも、ピストン31の動作位置制御は、リミットスイッチの他に、ピストン31を駆動する液圧で原料10の嵩密度が適した状態になるようにすることもでき、上記実施形態に限定されるものではない。
【0084】
さらに、上記実施形態における投入管22のゲート弁26に近い原料供給口側に、ドレン弁、圧抜き弁、均圧弁などを設けるようにしてもよい。
【0085】
また、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。