(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主捕集部は、さらに、前記1対のローラに巻き回されたプレフィルタが前記メインフィルタから離れる側に撓むのを規制する規制部材を備える請求項1に記載のエアフィルタユニット。
前記プレフィルタでは、前記メインフィルタのフィルタ領域に合わせた使用領域が印により区画されている請求項1から3のいずれか1項に記載のエアフィルタユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の空気調和機は、プレフィルタのみで空気の清浄化を行う。清浄度を上げるために、さらに、中性能フィルタまたは高性能フィルタを設けようとすると、これらフィルタを配置するスペースがケーシング内に必要となり、大型化する。特に、天井埋込み型の室内機は、スペースに制約があるため、プレフィルタ、および、中性能フィルタまたは高性能フィルタ、のいずれかを選択せざるを得ない。プレフィルタを採用した場合は、微小なサイズの塵埃を捕集できず、高清浄化できない。中性能フィルタまたは高性能フィルタを採用した場合は、すぐに目詰まりが生じ、交換頻度が増えてしまう。
【0007】
一方、特許文献2の空気調和機では、一般に、大規模に空気調和(空気の温度、湿度等の調節)が行われ、大型のケーシングの内部に、大面積のロールフィルタおよびフィルタユニットが設置されている。このため、上記特許文献1の室内機等におけるフィルタ交換と比べ、作業に手間がかかる。
【0008】
本発明は、捕集性能の異なる2種のフィルタを備えた、コンパクトなエアフィルタユニットを提供することを目的とする。また、そのようなエアフィルタユニットを備えたビル用マルチ空気調和システム、及びエアハンドリング用空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、気流中の微粒子を捕集するエアフィルタユニットである。当該ユニットは、
プリーツ加工されたメインフィルタを有する主捕集部と、
前記主捕集部に対し、気流の上流側に配され、一部の微粒子を捕集するプレ捕集部と、を備え、
前記プレ捕集部は、互いに離間した1対のローラと、前記1対のローラに巻き回される長尺のシート状のプレフィルタとを有し、前記1対のローラのうち一方のローラから前記プレフィルタの未使用領域を引き出して前記メインフィルタの前面に前記未使用領域を移動させるとともに、前記プレフィルタの使用済み領域を前記1対のローラのうち他方のローラに巻き取らせるように構成され、
前記主捕集部は、前記メインフィルタが接して固定され、前記メインフィルタの外周側端部を保持する枠体と、前記枠体に取り付けられ、前記ローラの軸を支持する取付治具と、をさらに備え、
前記主捕集部は、前記1対のローラの間に挟まれるように設けられ、かつ、前記メインフィルタは、前記主捕集部と前記メインフィルタの前面に位置する前記プレフィルタとの間の距離が前記1対のローラの直径に比べて小さくなるように、前記プレフィルタに対して対向配置され
、
前記ローラの上流側の端は、前記メインフィルタの前面に位置する前記プレフィルタが前記メインフィルタから離反して配置されるように、前記主捕集部に対し上流側に位置している。
【0011】
前記主捕集部は、さらに、前記ローラ間に掛け渡されたプレフィルタが前記メインフィルタから離れる側に撓むのを規制する規制部材を備えることが好ましい。
【0012】
本発明の別の一態様は、気流中の微粒子を捕集するエアフィルタユニットであって、当該ユニットは、
メインフィルタを有する主捕集部と、
前記主捕集部に対し気流の上流側に配され、一部の微粒子を捕集するプレ捕集部と、
互いに嵌め合わされる第1の蓋及び第2の蓋を有するケーシングと、を備え、
前記プレ捕集部は、互いに離間した1対のローラと、前記1対のローラに巻き回される長尺のシート状のプレフィルタとを有し、前記1対のローラのうち一方のローラから前記プレフィルタの未使用領域を引き出して前記メインフィルタの前面に前記未使用領域を移動させるとともに、前記プレフィルタの使用済み領域を前記1対のローラのうち他方のローラに巻き取らせるように構成され、
前記主捕集部は、前記1対のローラの間に挟まれるように設けられ、かつ、前記メインフィルタは、前記主
捕集部と前記メインフィルタの前面に位置する前記プレフィルタとの間の距離が前記1対のローラの直径に比べて小さくなるように、前記プレフィルタに対して対向配置されており、
前記プレ捕集部は前記第1の蓋及び第2の蓋の一方に取り付けられ、前記主捕集部は前記第1の蓋及び第2の蓋の他方に取り付けられ、
前記メインフィルタと前記プレフィルタは、前記第1の蓋と前記第2の蓋が嵌め合わされることで互いに対向して配置される。
【0013】
前記プレフィルタでは、前記メインフィルタのフィルタ領域に合わせた使用領域が印により区画されていることが好ましい。
【0014】
前記プレフィルタの前記使用領域ごとの寿命の合計量と、前記メインフィルタの寿命が等しいことが好ましい。
【0015】
本発明の別の一態様は、複数の室内機と、室外機とを備えたビル用マルチ空気調和システムである。当該空気調和システムは、
前記複数の室内機のそれぞれは、
前記エアフィルタユニットと、前記エアフィルタユニットを介して室内から取り込まれた空気との間で熱交換を行う熱交換器と、を有し、
前記室外機は、前記複数の室内機との間で冷媒が循環するよう、前記室内機の熱交換器と接続された他の熱交換器を有する。
【0016】
本発明のさらに別の一態様は、複数の部屋に空気を供給するエアハンドリングユニット用空気調和機である。当該空気調和機は、
前記エアフィルタユニットと、
外部熱源を利用して、前記エアフィルタユニットを介して取り込まれた空気との間で熱交換を行う熱交換器と、
湿度を調整する加湿器と、
熱交換が行われた空気を前記複数の部屋に向けて送り出すためのファンと、
前記エアフィルタユニット、前記熱交換器、前記加湿器を収納するケーシングと、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、捕集性能の異なる2種のフィルタを備えた、コンパクトなエアフィルタユニットが提供される。また、そのようなエアフィルタユニットを備えたビル用マルチ空気調和システム、および、エアハンドリングユニット用空気調和機が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のエアフィルタユニット、ビル用マルチ空気調和システム、エアハンドリングユニット用空気調和機について詳細に説明する。
【0020】
(エアフィルタユニット)
図1は、本発明の一実施形態によるエアフィルタユニット(以降、単にユニットという)1である。
図2の(a)は、本実施形態のエアフィルタユニットの側面図であり、(b)は、エアフィルタユニットの底面図であり、(c)は、エアフィルタユニットのプレ捕集部を示す図である。
ユニット1は、気流中の塵埃等の微粒子を捕集する。ユニット1は、主捕集部3と、プレ捕集部5とを備える。
【0021】
主捕集部3は、メインフィルタ11と、枠体13とを有する。
メインフィルタ11は、プレ捕集部5を通過した微小な塵埃を捕集するためのフィルタである。このため、下記の中性能フィルタまたは高性能フィルタが好ましく用いられる。
中性能フィルタは、粒径1μm以上、濃度0.1〜6mg/m
3の粉塵の除去に用いられるフィルタである。中性能フィルタとしては、捕集効率が、重量法(質量法)で90〜96%、比色法(光散乱積算法)で50〜80%、計数法で5〜50%のいずれか、圧力損失が79〜247Pa、粉塵保持容量が300〜800g/m
3のものが用いられる。捕集効率の測定において、重量法では、JIS Z8901に規定される15種の粉体、又は、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)に規定される粉塵が用いられる。比色法では、JIS Z8901に規定される11種の粉体が用いられる。計数法では、粒径0.3mmの、大気塵、ポリアルファオレフィン(PAO)、シリカのいずれかの粒子が用いられる。粉塵保持容量は、フィルタが所定の最終圧力損失に達するまでに捕集した粉塵量である。
高性能フィルタは、粒径1μm以下、濃度が0.3mg/m
3以下の粉塵の除去に用いられるフィルタである。高性能フィルタとしては、計数法による捕集効率が80%以上、圧力損失が79〜493Pa、粉塵保持容量が200〜800g/m
3のものが用いられる。
【0022】
メインフィルタ11には、具体的に、ガラス繊維または合成繊維からなる、不織布、マット、フェルト状の濾材にプリーツ加工を施したものが用いられる。濾材は、枠体13に収納された状態で、ホットメルトリボン、セパレータ、あるいは、濾材の表面に施されたエンボス突起によってプリーツ間隔が保持される。メインフィルタ11は、エレクトレット処理が施されてもよい。これにより、濾材本来の捕集性能に対し、濾材の繊維が帯電することによる捕集性能が付与される。また、メインフィルタ11は、抗菌剤を付着させる抗菌処理を施して、抗菌性能を付与してもよい。これらエレクトレット処理および抗菌処理は、組み合わせて行なってもよい。
【0023】
枠体13は、メインフィルタ11の外周側端部を保持する。枠体13は、亜鉛鉄板、ステンレス板等の枠材を組み合わせて作られ、主捕集部3を平板状に保つ。メインフィルタ11は、ホットメルト等の接着剤で枠体13に固定される。
【0024】
プレ捕集部5は、主捕集部3に対し気流の上流側に配され、比較的粗大な塵埃を捕集する。プレ捕集部5は、1対のローラ21,23と、プレフィルタ25とを有する。
ローラ21,23は、互いに離間してほぼ平行に配される。具体的に、ローラ21,23は、主
捕集部3の横方向(
図1の紙面水平方向)長さより僅かに長い距離をあけて配される。1対のローラ21,23のうち、ローラ21は、プレフィルタ25を巻き取るためのローラである。ローラ23にはプレフィルタ25の未使用領域が巻き回される。ローラ21,23の図示されない軸は例えば中空の紙管からなり、ユニット1の交換時に、使用済みのプレフィルタ25と一体に廃棄することができる。ロール21の軸の一方の端部には、回転操作されるハンドル27が取り付けられている。具体的には、ハンドル27には、ローラ21の紙管内にねじ込まれる軸が設けられ、この軸が紙管内で滑って回動しないよう、例えば紙管を貫通するピンで止められる。
【0025】
プレフィルタ25は、ローラ21,23に巻き回される長尺のシート状の濾材である。プレフィルタ25は、例えば、長手方向の両端がそれぞれ両面テープでローラ21,23の軸に貼り付けられている。プレフィルタ25は、粒径5μm以上、濃度0.4〜7mg/m
3の粉塵の除去に用いられるフィルタである。プレフィルタ25としては、捕集効率が、重量法で70〜90%、比色法で15〜40%、計数法で5〜10%のいずれかであり、圧力損失が30〜296Pa、粉塵保持容量が500〜2000g/m
3である。捕集効率の測定に用いられる粒子は、メインフィルタ11について上述したのと同じものが用いられる。プレフィルタ25には、具体的に、ガラス繊維または合成繊維からなる、不織布、マット、フェルト状の濾材が用いられる。プレフィルタ25は、上述のエレクトレット処理、抗菌処理が施されてもよい。
【0026】
プレ
捕集部5では、ハンドル27が回転操作されることで、プレフィルタ25の使用済み領域がローラ21に巻き取られるとともに、ローラ23からプレフィルタ25の未使用領域が引き出され、メインフィルタ11の前面(上流側の面)に未使用領域が移動する。プレ捕集部5は、プレフィルタ25の巻き取りが自動で行われるよう、ハンドル27に代えて歯車が取り付けられてもよい。この場合、ユニット1が設置される空気調和機のケーシング内に、この歯車と噛み合う別の歯車及びモータが設けられる。プレフィルタ25の送り量は、公知の方法で制御でき、例えば、ローラ21の回転数をリミットスイッチで検出し、所定回数カウントされた場合にローラ21が停止するようにしてもよい。
【0027】
主
捕集部3は、1対のローラ21,23の間に挟まれるように設けられる。
図2(a)に示すように、主捕集部3の厚み(
図1の上下方向長さ)は、枠体13の厚みと同じであるが、主捕集部3の厚みは特に制限されない。主捕集部3は、例えば、ローラ21,23の軸同士を含む平面を遮断するよう設けられればよく、主捕集部3の厚みが、ローラ21,23の直径より大きくまたは小さくてもよく、あるいは、等しくてもよい。また、主
捕集部3と、メインフィルタ11の前面に位置するプレフィルタ5との間の距離は1対のローラ21,23の直径に比べて小さくなるように、メインフィルタ11は、プレフィルタ5に対して対向配置されている。主
捕集部3とプレフィルタ25との間の距離は、枠体13とプレフィルタ25との間の、
図1の上下方向の隙間である。なお、
図1等に示す、枠体13とプレフィルタ25との間の距離は、説明のために、誇張して長く示している。ローラ21,23の直径は、プレフィルタ25が巻き回された状態でのプレフィルタ25を含めた径であり、前記距離は、いずれか大きい方の径より小さければよい。なお、主捕集部3と、メインフィルタ11の前面に位置するプレフィルタ25との間の距離は、メインフィルタ11の上流側の先端が枠体13よりも上流側に配される場合、あるいは、主捕集部3が枠体13を有しない場合は、メインフィルタ11とプレフィルタ25との間の距離をいう。
【0028】
主捕集部3は、さらに、枠体13に取り付けられ、ローラ21,23の軸を支持する取付治具15を備えることが好ましい。取付治具15は、枠体13の4つの頂角に1つずつ取り付けられている。具体的には、取付治具15は、枠体13の4つの側面のうちローラ21,23が配される側以外の2つ側面の両端に取り付けられ、一部が枠体13から外側に突出するよう取り付けられる。これにより、枠体13の前記2つの側面において、ローラ21,23のそれぞれが2つの取付治具15の間に挟まれるとともに、ローラ21,23の軸を支持することができる。取付治具15の形状は、詳細には図示しないが、例えば断面コ字形状のものが用いられる。取付治具15は、枠体13に対しリベット15aで固定されるとともに、ローラ21,23の軸の両側の端部内に挿入されるネジ15bが設けられ、ローラ21,23は回転自在になっている。このようにして、主捕集部3とプレ捕集部5が一体化されている。このようなユニット1によれば、主捕集部3及びプレ捕集部5をまとめて空気調和機から取り外し、取り付けることができ、これらが別々に設置されている場合と比べ、作業時間が少なくて済む。
【0029】
主捕集部3は、さらに、ローラ21,23に巻き回されたプレフィルタ25がメインフィルタ11から離れる側に撓むのを規制する、図示されない規制部材を備えることが好ましい。規制部材は、例えば、プレフィルタ25の幅方向(
図2(b)において上下方向)の端部を枠体13との間で挟むよう、枠体13との間に僅かに隙間をあけて設けた面を有する部材であってもよい。また、例えば、プレフィルタ25の幅方向の端部を枠体13との間に挟持し、回転することで送り出すローラ部材であってもよい。コシの強いプレフィルタ25などは、ローラ21とローラ23との間で、メインフィルタ11から離れるよう撓む可能性がある。規制部材が設けられることで、主捕集部3とプレフィルタ25との隙間を短くすることができる。
さらに、規制部材を用いるのに代えて、または、規制部材を用いるのと併せて、プレフィルタ25を、
図3(b)に示すように、ローラ21,23に巻き回してもよい。
図3(a)は、本実施形態のエアフィルタユニットのプレ捕集部と主捕集部の位置関係を説明する図であり、(b)は、その変形例を示す図である。本実施形態では、プレフィルタ25は、
図3(a)に示されるように、ローラ21,23に巻き回されている。これに代えて、
図3(b)に示すように、ローラ21,23に巻き回すことで、プレフィルタ25が枠体13の横方向(
図3の左右方向)の両端に接触し、上流側への撓みが抑えられる。
【0030】
プレフィルタ25には、
図2(c)に示すように、メインフィルタ11のフィルタ領域に合わせた使用領域が識別線(印)26により区画されていることが好ましい。プレフィルタ25には、例えば5個の使用領域が含まれている。作業者は、この識別線26の位置を目視で確認しながらハンドル27を回転操作することで、使用済み領域を確実に巻き取ることができる。識別線26の態様は特に制限されず、他の種類の線、模様等であってもよく、また、ヒートシールやエンボス加工が施されて他の領域と区別できるよう設けられたものであってもよい。
【0031】
ユニット1では、プレフィルタ25の使用領域ごとの寿命の合計量と、メインフィルタ11の寿命が等しいことが好ましい。寿命は、フィルタを使い始めてから所定の圧力損失(最終圧力損失)に達するまでの時間をいう。プレフィルタ25に例えば5個の使用領域が含まれている場合は、メインフィルタ11の寿命は、プレフィルタ25の1つの使用領域の寿命の5倍に設定される。このようにして定めた寿命に応じて、各フィルタに用いる濾材の選択、メインフィルタ11のプリーツの折り幅、数の設定を行うことで、2つの寿命を等しくする。このような構成によれば、プレフィルタの最後の使用領域が寿命に達した時点で、メインフィルタ11も寿命に達するので、ユニット1の交換時に、両方のフィルタをまとめて交換できる。プレ捕集部5と主捕集部3が一体化されている場合は、ユニット1の交換と合わせて各フィルタ11,25の交換を行えるので、より一層便利である。
【0032】
以上説明したユニット1のプレフィルタ、メインフィルタとして、下記仕様、性能のものを例示できる。なお、いずれも縦610mm×横610mm×高さ65mmの主捕集層を直径約70mmのプレ捕集層のローラで挟んだ場合の仕様である。上記縦、横、高さは、それぞれ、
図2(a)の奥行き方向、左右方向、上下方向である。
【0033】
(a)プレフィルタ
厚さ0.21mm、目付け60g/m
2、平均繊維径約50μm、濾材面積0.37m
2のポリエステル樹脂製スパンボンド不織布。
捕集効率(質量法):70%
圧力損失(ろ過速度5.3cm/秒):10Pa
粉塵保持量:約500g/m
2
【0034】
(b)メインフィルタ
平均繊維径約2μmのポリプロピレン樹脂製メルトブローン不織布にエレクトレット処理を施したものを主濾材とし、平均繊維径約30μmのポリエステル樹脂製サーマルボンド不織布を補強材として、主濾材の片側に補強材を熱ラミネートにより接合してなる、厚さ0.63mm、目付け133g/m
2、濾材面積8m
2の濾材。
捕集効率(比色法):90%
初期圧力損失(風量53m
3/分):83Pa
粉塵保持量:約340g/m
2
寿命:プレフィルタの寿命の約5倍
【0035】
以上説明した各仕様、性能は、例えば下記の測定法により測定される。
(厚さ)
試験サンプルに10mmφで2.5Nの荷重をかけたときの厚さを、ダイヤルシックネスゲージを用いて測定する。
(目付)
試験サンプルから採取した100mm×100mmの試験片の重さを測定し、1m
2当たりの重さに換算して求める。
(平均繊維径)
試験サンプルの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した画像上で直交した2本の線を引き、これらの線と交わった繊維の像の太さを繊維径として、500本測定し、これらの算術平均を平均繊維径とする。
【0036】
(メインフィルタの捕集効率)
JIS B9908 形式2に準拠し、JIS Z8901に規定するJIS11種の粉塵含有空気を試験風速2.5m/秒で通過させ、JIS Z8813に準拠する光散乱光量積算方式により、通過前および通過後の粉塵濃度を同時に連続的に測定し、次式により捕集効率を求める。
捕集効率(%)=(通過後の粉塵濃度(個数/L)−通過前の粉塵濃度(個数/L))/(通過前の粉塵濃度(個数/L))×100
(プレフィルタの捕集効率)
JIS B9908 形式3に準拠し、タテ型試験装置を用いて、JIS Z8901に規定するJIS11種の粉塵による、試験風速2.5m/秒での捕集効率を測定する。
【0037】
(初期圧力損失)
JIS B9908 形式2、形式3に準拠し、610mm×610mmの寸法のダクトを用いて、風速2.5m/秒での圧力損失を測定する。
(粉塵保持量)
JIS B9908 形式2、形式3に準拠して、JIS Z8901に規定するJIS11種の粉体による、粉塵濃度70±30mg/m
3、試験風速2.5m/秒での圧力損失が最終圧力損失(プレフィルタでは200Pa、メインフィルタでは294Pa)に達するまでの粉塵供給量を測定する。
(寿命)
JIS B9908 形式2、形式3に準拠して、JIS Z8901に規定するJIS11種の粉体による、粉塵濃度70±30mg/m
3、試験風速2.5m/秒での圧力損失が最終圧力損失(プレフィルタでは200Pa、メインフィルタでは294Pa)に達するまでの時間を測定する。
【0038】
以上のユニット1は、2種の異なる捕集性能のプレ捕集部5および主捕集部3を備えるため、メインフィルタ11による高清浄化を達成しつつ、プレフィルタ25によってメインフィルタ11の負担を軽減し、メインフィルタ11を長寿命化でき、交換の頻度を減らすことができる。そして、ユニット1によれば、メインフィルタ11が、ローラ21,23の間に挟まれるよう配置され、かつ、主捕集部3とプレフィルタ25との距離がローラ21,23の直径に比べて小さくなるよう、プレフィルタ25に対し対向配置されている。このため、ユニット1は、主捕集部3、プレ捕集部5の厚み方向長さの和より、厚さが小さく、コンパクト化されている。したがって、プレ捕集部を備えた空気調和機において、主捕集部3のスペースをさらに設けることなく、主捕集部3を配置できる。また、ユニット1がコンパクト化されているので、大面積のプレフィルタおよびメインフィルタを設置する場合に、取り外し、取り付けの作業が楽に行える。
【0039】
(ビル用マルチ空気調和システム)
次に、本実施形態のビル用マルチ空気調和システムについて説明する。
図4は、本実施形態のビル用マルチ空気調和システム(以降、単にシステムという)31の概略構成を示す図である。
【0040】
ビル用マルチ空気調和システム31は、複数の室内機41と、1台の室外機43とを備える。各室内機41は、例えばビル内の各部屋に設置され、室外機43は、ビルの屋上を含む、建物の外側に設置されている。各室内機41、室外機43はそれぞれ熱交換器を備え、室内機41と室外機43との間で冷媒が循環するよう、室内機41及び室外機43の熱交換器同士が冷媒が通る配管によって接続されている。室内機41のそれぞれは、温度、風量等を個別に設定できるようになっている。室内機41の設置態様は特に制限されず、天井埋込み型、床置き型、壁掛け型等であってもよい。例えば、天井埋込み型である。
【0041】
図5は、本実施形態のシステム31の室内機41を、ユニット1に注目して示す図である。室内機41はケーシング53を備え、ケーシング53は、本体ケーシング54と、グリル55とを有する。
本体ケーシング54には、ファン52、図示されない熱交換器、ドレンパン、制御装置が配されている。ファン52は、回転駆動することで、室内の空気をケーシング53内に取り込み、本体ケーシング54に設けられた、図示されない吹き出し口から室内に供給する。ドレンパンは、熱交換器で結露した水を受け、外部に排出する。制御装置は、リモコン等との通信を行なって、設定温度、風量に応じてファン52の制御等を行う。本体ケーシング54の底面は開口され、グリル55が取り付けられるようになっている。
【0042】
グリル55は、室内の空気を取り込むために、底面に図示されないメッシュ等が設けられている。グリル55には、留め具55aを介してユニット1が取り付けられ、ユニット1は、グリル55と一体に本体ケーシング54に取り付けられる。
ユニット1は、グリル55に対し、プレフィルタ25が下方を向くよう取り付けられる。ユニット1とグリル55は、プレフィルタ25が枠体13とグリル55との間に挟まれるよう対向配置されるが、プレフィルタ25が移動することができる程度に僅かに隙間をあけて配置される。ユニット1と本体ケーシング54との間にはガスケットが設けられ、清浄化されていない空気の進入が防止されている。本実施形態のユニット1では、例えば、ハンドル27が取り付けられたローラ21の軸の他方の端部に歯車28が取り付けられている。グリル55には、この歯車28と噛み合う別の歯車58が設けられ、歯車58には、プレフィルタの巻き取りを行うときに作業者によって回転操作される操作棒57を差し込めるようになっている。なお、
図5では、説明のため、操作棒57を歯車58に差し込んだ状態で示す。また、歯車28に隣接するユニット1の頂角に取り付けられる取付治具15は、図示を省略する。操作棒57は、歯車58と同軸に回転し、図示されない下方の端部には、回転操作のための円板、ハンドル等が適宜設けられてよい。作業者は、操作棒57を回転操作することで歯車28を回転させてローラ21を回転させ、プレフィルタ25の使用済み領域を巻き取ることができる。
【0043】
なお、室内機1には、プレフィルタ25の交換時期を知らせるための機能が備えられてもよい。ここでの交換は、プレフィルタ25の使用済み領域を巻き取って未使用領域をメインフィルタ11の前面に移動させることを意味する。交換時期は、公知の方法で知らせることができる。例えば、制御装置によってファン52の運転時間を積算し、所定の値に達した場合に知らせてもよく、また、透過型センサによってフィルタの目詰りによる透過光量の減少を検出して、所定量減少した場合に知らせてもよい。また、例えば、圧力損失が所定の大きさに達した場合に寿命に達したと判断し、知らせてもよい。また、交換時期は公知の方法で知らせることができ、例えば、室内機41に設けられたLED、液晶表示部等への表示、チャイム音等の音声出力によって行うことができる。また、室内機1には、プレフィルタ25の交換時期になった場合に、上述した自動で巻き取る機能が備えられてもよい。
室外機43には、ケーシング内に、ファン、熱交換器が配されている。
【0044】
このシステム31では、室内機41のファン52が回転駆動することで、底面側から室内の空気がユニット1を通過してケーシング53内に取り込まれる。このとき、プレフィルタ25およびメインフィルタ11によって清浄化が行われる。清浄化された空気は、ケーシング53内で熱交換器に接触して冷媒との間で熱交換が行われ、吹き出し口から室内に吹き出される。
このシステム31で用いられるユニット1は、主捕集部3を、プレ捕集部5のローラ21,23間のあいたスペースに配置することでコンパクトになっており、室内機41内に、主捕集部3を配置するためのスペースを別途設けなくて済む。また、室内機41において、プレフィルタ25が寿命に達した場合は、操作棒57を回転操作することでローラ21を回転させ、使用済み領域を巻き取るとともに、未使用領域をローラ23から引き出す。また、メインフィルタ11が寿命に達した場合は、ユニット1をグリル55ごと、本体ケーシング54から取り外し、枠体13ごと新たな主捕集部3と交換することができる。その際、プレフィルタ25の交換も同時に行うことができる。
【0045】
(変形例)
ここで、室内機41の変形例について説明する。
図6(a)は、
図5の室内機41の変形例を示す図であり、(b)は、その変形例のエアフィルタユニットを分解して示す図である。なお、
図6において、ユニット1のプレ捕集部5およびケーシング17は、奥行き方向の断面を示す。
【0046】
この変形例で、室内機41のユニット1は、取付治具15に代えて、互いに嵌め合わされる上蓋18と下蓋19を有するケーシング17を用いることで、主捕集部3とプレ捕集部5とが一体化されている。具体的には、上蓋18にプレ捕集部5が取り付けられ、下蓋19に主捕集部3が取り付けられ、
図6(b)に示されるように、上蓋18と下蓋19を互いに嵌め合わせると両部が一体化される。なお、上蓋18および下蓋19は、便宜的に、サイズの大きい方を上蓋18、小さい方を下蓋19と称し、実際の両者の位置の上下関係とは関係しない。上蓋18には、プレ捕集部5のローラ21,23の軸が固定され、下蓋19には、主捕集部3の枠体13が取り付けられている。メインフィルタ11とプレフィルタ25は、上蓋18と下蓋19が嵌め合わされることで互いに対向配置される。ユニット1は、上蓋18と下蓋19が嵌め合わされた状態で、本体ケーシング54の底面に対し取り付け、取り外しを行うことができる。取り付けのための手段は、特に制限されず、例えば、ケーシング17を本体ケーシング54に係合させられる構造である。なお、下蓋19の底面には、本体ケーシング54との間でリークを防止するためのガスケットが設けられるのが好ましい。
【0047】
この変形例によれば、メインフィルタ11が寿命に達した場合は、まず、グリル55を本体ケーシング54から取り外し、次いで、ケーシング17を本体ケーシング54から外すことで、ユニット1が取り外される。そして、新たなユニット1を、上蓋18及び下蓋19が嵌め合わされた状態のまま本体ケーシング54の底面に取り付けることで、主捕集部3およびプレ捕集部5をまとめて交換することができる。
なお、上記したケーシング17の態様に代えて、上蓋18が室内機41のグリル55に取り付けられ、下蓋19が本体ケーシング54の底面に取り付けられて、グリル55を本体ケーシング54に取り付けることで、上蓋18と下蓋18を嵌め合わせることができるようになっていてもよい。
【0048】
(AHU用空気調和機)
次に、AHU用空気調和機61について説明する。
図7は、本実施形態のAHU用空気調和機(以降、単に空気調和機という)61を含むシステムの概略構成を示す図である。
空気調和機61は、ビル、商業施設等、複数の部屋を備える建物の中に設置され、例えば専用の部屋に設置される。空気調和機61は、建物内の各部屋(
図7で1つのみ示す)と、還気用ダクト62及び給気用ダクト63を介して接続され、吸込口64から吸い込まれた各部屋の空気が還気用ダクト62を通じて空気調和機61内に運ばれるとともに、空気調和機61で調和空気が吸気用ダクト62を通って供給口65から各室内に供給される。調和空気は、少なくとも温度、湿度が調節された空気である。
空気調和機61は、取り込まれた空気の流路に沿って順に、ユニット1、熱交換器73、加湿器75、ファン77が、ケーシング71内に配されている。ユニット1には、本実施形態では、複数(例えば8個)の主捕集部3が平面方向に並べて互いに連結されたものが用いられる。また、これに応じて、プレ捕集部5も大面積化され、プレフィルタ25、ローラ21,23のサイズが定められる。熱交換器73は、空気調和機61とは別に設けられた冷温水器、ボイラーと接続され、これらから供給される冷水、温水、蒸気が流れるコイルが設けられている。加湿器75は、例えば高圧水スプレー式のものが用いられる。ファン77は、ケーシング71内に空気を取り込み、調和空気を吸気用ダクト63を通じて各部屋へ送り出す。なお、ユニット1の上流側に、主に空気を取り込むための別のファンが設けられてもよい。
【0049】
図8は、本実施形態の空気調和機61を、エアフィルタユニットに注目して示す図である。ユニット1は、ケーシング71の外側部分から内部に延びてチャンバを形成する仕切り部71aに、空気の流路を覆うよう取り付けられる。また、ケーシング71には、外部からケーシング71内の様子を確認するための窓72が設けられ、作業者がユニット1を見ることができる。
ユニット1は、上述のシステム41の変形例で説明したのと同様の、上蓋18及び下蓋19を有するケーシング17によって、主捕集部3及びプレ捕集部5が一体化されている。本実施形態では、歯車28と噛み合う歯車58は、上述のシステム31における歯車58と異なる向きで設けられ、操作棒57は、ユニット1の平面方向に延びるよう取り付けられる。プレフィルタ25の巻き取りは、ケーシング71の外側で操作棒57を回転操作することにより行われる。
【0050】
この空気調和機61において、ユニット1は、主捕集部とプレ捕集部を別々に設けたものと比べ、厚み方向にコンパクトになっており、取り外し、取り付けの作業をスムーズに行える。この空気調和機61において、プレフィルタ25の巻き取りは、ケーシング71の窓72から、プレフィルタ25の識別線26の位置を確認しながら、操作棒57を操作することで行うことができる。メインフィルタ11が寿命に達した場合は、ユニット1の取り外しを行うために、ケーシング71内に入って、ユニット1を仕切り71aから取り外す。ここでも、ユニット1は、上蓋18と下蓋19が嵌め合わされた状態で取り外すことによって、主捕集部3とプレ捕集部5を一体に取り外すことができる。そして、メインフィルタ11およびプレフィルタ25をまとめて交換できる。
従来のAHUでは、主捕集部とロールフィルタ(プレ捕集部)が別々に設置されていたため、交換の際には、それぞれを取り外し、さらに、取り外した各部を新たなフィルタと取り替えた後、フィルタが取り替えられた各部をケーシング内にそれぞれ取り付ける必要があった。特にAHUでは、大面積化された主捕集部、プレ捕集部が用いられているため、この作業に手間がかかっていた。上述の空気調和機61によれば、取り外し、取り付けをそれぞれ一度の作業で行うことができる。
なお、空気調和機61のユニット1は、上蓋18及び下蓋19を有するケーシング17に代えて、取付治具15を用いて、主捕集部3とプレ捕集部5が一体化されてもよい。
【0051】
以上、エアフィルタユニット、ビル用マルチ空気調和システム、エアハンドリングユニット用空気調和機について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。