(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170307
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】内燃機関の燃費告知方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
G01F 9/00 20060101AFI20170713BHJP
G01D 7/00 20060101ALI20170713BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20170713BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20170713BHJP
F02M 65/00 20060101ALI20170713BHJP
B63H 21/14 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
G01F9/00 F
G01D7/00 K
G09G5/36 510A
G09G5/00 550C
F02M65/00 302
B63H21/14
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-25721(P2013-25721)
(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公開番号】特開2014-153319(P2014-153319A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年1月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508272204
【氏名又は名称】株式会社ボルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】大野 直幸
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 弘顕
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 真澄
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−200895(JP,A)
【文献】
特許第5542705(JP,B2)
【文献】
特開2010−210240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F9
B63H
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を動力源として搭載した船舶において、燃料消費量を検出するとともに、その検出結果に基づき燃費を算出し、この燃費を前記船舶に設けられたタッチパネル式の表示部を有する表示装置に表示するようにした内燃機関の燃費告知方法であって、前記燃料消費量を、前記内燃機関に設けられている燃料噴射装置における燃料噴射量の情報と、前記内燃機関の回転数の情報とに基づき算出するとともに、前記内燃機関の稼働時間を計測しておき、この計測された稼働時間と前記燃料消費量とによって単位時間毎の燃費を算出し、この算出結果を、前記表示部における燃料の瞬間流量の表示画面に、数字表示領域とメーター表示領域とで表示するようにし、前記メーター表示領域に、燃費を棒グラフ状に表示する指針部と、この指針部に沿って表示する目盛り部と、を表示し、前記目盛り部を最適領域、注意領域、過剰領域に区分して色分け表示し、前記目盛り部の各領域の範囲を船舶の使用目的等に応じて適宜変更することを特徴とする内燃機関の燃費告知方法。
【請求項2】
船舶に搭載された内燃機関へ燃料を供給する燃料噴射装置と、前記内燃機関の回転数を検出する回転計と、前記内燃機関の稼働時間を積算するタイマーと、前記燃料噴射装置からの情報に基づき燃料消費量を算出するとともに、前記タイマーからの情報に基づき前記内燃機関の稼働時間を算出する演算装置と、この演算装置から出力される情報を表示画面で表示するタッチパネル式の表示部を有する表示装置とを備え、前記演算装置が、前記燃料消費量と前記稼働時間とに基づき、前記内燃機関の単位時間毎の燃費を算出し前記表示装置に送出するようになされ、前記表示装置は、燃料の瞬間流量を表示する数字表示領域とメーター表示領域の両方を有し、前記メーター表示領域が燃費を棒グラフ状に表示する指針部と、この指針部に沿って表示される目盛り部とを有し、前記目盛り部が最適領域、注意領域、過剰領域に区分されて色分け表示され、前記目盛り部の各領域の範囲を適宜変更することができることを特徴とする内燃機関の燃費告知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の燃費告知方法およびその装置に係わり、特に、前記内燃機関を動力源として搭載した移動体に好適に用いられる燃費告知方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関を動力源として搭載した移動体にあっては、移動可能距離の目安とするために、燃料の残量を監視する装置が設けられている。
【0003】
この燃料残量監視装置として、燃料タンク内に、収容した燃料の増減とともに上下動するフロートを設け、このフロートの位置情報を燃料の残量として検出する構造のものが知られている。
【0004】
このようなフロートを用いた燃料残量監視装置では、移動体の動きや傾斜によって燃料タンク内の燃料の液位が変化し、これに伴って、前述したフロートの位置情報も変化することから、燃料の残量の検出結果が不安定なものとなってしまう。
【0005】
このような不具合へ対処するために、たとえば、前記燃料タンクの重量を検出し、その重量変化を計測して燃料の残量を算出し、その算出結果を表示装置において表示することにより、燃料の残量を移動体の操縦者へ告知する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−134054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した何れの燃料残量監視装置も、移動可能距離を把握するために重要な装置である。
しかしながら、移動可能距離は、燃料の残量のみならず燃料の消費率、すなわち燃費によっても大きく変化する。
【0008】
そして、前述した燃料消費率は、前記内燃機関の運転形態によって変化し、また、その運転形態は前記移動体の操縦者毎に異なる。この点の問題は、タグボートなどのように、船体の大きさに比べて極端に大出力の内燃機関を搭載している移動体において特に顕著になる傾向にある。
【0009】
したがって、移動体においては、前記内燃機関を最適な燃料消費率で稼働させて移動可能距離を極力延ばすために、操縦者へ前述した燃料消費率を告知して燃料消費量に対する意識を高め、かつ、操縦者間の燃料消費量のばらつきを少なくするような機能が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明
の内燃機関の燃費告知方法は、内燃機関を動力源として搭載した移動体において、燃費消費量を検出するとともに、その検出結果に基づき燃費を算出し、この燃費を前記移動体に設けられた表示装置に表示するようにした内燃機関の燃費告知方法であって、前記燃料消費量を、前記内燃機関に設けられている燃料噴射装置における燃料噴射量の情報と、前記内燃機関の回転数の情報とに基づき算出するとともに、前記移動体に搭載されたGPS装置の位置情報に基づき前記移動体の移動距離を算出し、この算出された移動距離と前記燃料消費量とによって単位距離毎の燃費を算出し、この算出結果を前記表示装置において表示するようにしたことを特徴としている。
【0011】
このような構成とすることにより、前記内燃機関に供給される燃料量と前記移動体の移動距離とが逐次検出されるとともに、これらの情報に基づき単位距離毎の燃費が連続して算出され、かつ、この燃費情報が表示装置により操縦者へ告知される。
【0012】
この結果、操縦者は、前記表示装置によって現時点における燃費を確認しつつ運転を行なうことができるので、最適な燃費状態を維持しつつ操縦することができる。
【0013】
このような単位距離毎の燃費を算出する形態では、前記内燃機関の出力軸の回転が駆動輪へ伝達され、この駆動輪の回転数がほぼ移動距離に等しい車両等に好適に用いられる。
【0014】
本発明
の内燃機関の燃費告知方法は、内燃機関を動力源として搭載した移動体において、燃費消費量を検出するとともに、その検出結果に基づき燃費を算出し、この燃費を前記移動体に設けられた表示装置に表示するようにした内燃機関の燃費告知方法であって、前記燃料消費量を、前記内燃機関に設けられている燃料噴射装置における燃料噴射量の情報と、前記内燃機関の回転数の情報とに基づき算出するとともに、前記内燃機関の稼働時間を計測しておき、この計測された稼働時間と前記燃料消費量とによって単位時間毎の燃費を算出し、この算出結果を前記表示装置において表示するようにしたことを特徴としている。
【0015】
このような構成とすることにより、前記内燃機関に供給される燃料量と前記内燃機関の稼働時間とが逐次検出されるとともに、これらの情報に基づき単位時間毎の燃費が連続して算出され、かつ、この燃費情報が表示装置により操縦者へ告知される。
【0016】
この結果、操縦者は、前記表示装置によって現時点における燃費を確認しつつ運転を行なうことができるので、内燃機関を最適な燃費状態に維持するように操縦することができる。
【0017】
このような単位時間毎の燃費を算出する形態で
は、前記内燃機関の出力軸によって回転させられるスクリューで推進力を得るようにした船舶等で、前記出力軸の回転数をそのまま移動距離として見なすことができない移動体に好適に用いられる。
【0018】
本発明
の内燃機関の燃費告知装置は、移動体に搭載された内燃機関へ燃料を供給する燃料噴射装置と、前記内燃機関の回転数を検出する回転計と、前記移動体に搭載されたGPS装置と、前記燃料噴射装置からの情報に基づき燃料消費量を算出するとともに、前記GPS装置からの位置情報に基づき前記移動体の移動距離を算出する演算装置と、この演算装置から出力される情報を表示する表示装置とを備え、前記演算装置が、前記燃料消費量と前記移動距離とに基づき、前記内燃機関の単位距離毎の燃費を算出し前記表示装置に送出するようになされていることを特徴としている。
【0019】
このような構成とすることによ
り、内燃機関の燃費告知方法を有効に実施することができる。
【0020】
本発明
の内燃機関の燃費告知装置は、移動体に搭載された内燃機関へ燃料を供給する燃料噴射装置と、前記内燃機関の回転数を検出する回転計と、前記内燃機関の稼働時間を積算するタイマーと、前記燃料噴射装置からの情報に基づき燃料消費量を算出するとともに、前記タイマーからの情報に基づき前記内燃機関の稼働時間を算出する演算装置と、この演算装置から出力される情報を表示する表示装置とを備え、前記演算装置が、前記燃料消費量と前記稼働時間とに基づき、前記内燃機関の単位時間毎の燃費を算出し前記表示装置に送出するようになされていることを特徴としている。
【0021】
このような構成とすることにより、内燃機関の燃費告知方法を有効に実施することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、内燃機関を搭載した移動体を運転する操縦者に対し、前記内燃機関の燃料消費率を逐次告知して、最適な燃費状態での運転を可能にし、これによって、移動体の移動可能距離を増加させることができるとともに、操縦者間における燃料消費量のばらつきを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態が適用された船舶の側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態のシステムブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態の表示装置の外観図である。
【
図4】本発明の一実施形態の表示装置における表示形態の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態の表示装置における表示形態の他の例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態の表示装置における表示形態の他の例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態の表示装置における表示形態の他の例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態における計測データーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の内燃機関の燃費告知装置を船舶等の移動体に適用した実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1中、符号1は移動体としての船舶を示し、図示例ではタグボートを示した。
この船舶1には、船体内にディーゼルエンジン等の内燃機関2が搭載され、その出力軸3が船体下部後方の船外に設けられているスクリュー4へ接続されている。
【0026】
また、船体内には、前記内燃機関2へ供給される燃料が貯留されている燃料タンク5が設けられている。
【0027】
また、前記船舶1の船橋6には、船橋6内の操縦者へ燃費情報等の情報を告知するための後述する表示装置が設置されている。
【0028】
さらに、前記内燃機関2には、この内燃機関2へ燃料を送り込む周知構造の燃料噴射装置が設けられており、この燃料噴射装置は、前記船橋内の操縦者によって遠隔操作されて燃料噴射量を調整するラックを備えている。
【0029】
前記ラックは、前述した遠隔操作により位置調整されることにより燃料噴射量を設定するようになされ、本実施形態においては、前記ラック位置を検出することにより、燃料噴射量を検出するようになっている。
【0030】
ついで、
図2を参照して本実施形態に係わる内燃機関の燃費告知装置について説明する。
【0031】
本実施形態に係わる内燃機関の燃費告知装置は、前記内燃機関2に設置された前記燃料噴射装置7と、この内燃機関2の前記出力軸3の回転数を検出するタコメーター(回転計)8、前記船橋6に設置されたGPSセンサー9、演算装置10、表示装置11、および、記録装置12とを備えている。
【0032】
前記演算装置10は、前記燃料噴射装置7のラック位置センサーからの信号、前記タコメーター8からの信号、および、前記GPSセンサー9からの信号が入力されるようになっている。
【0033】
そして、前記演算装置10は、前述した諸信号を所定の間隔(たとえば1分間隔)で取得するようになされており、前記燃料噴射装置7のラック位置センサーからの信号に基づき単位燃料噴射量を検出し、この単位燃料噴射量と前記タコメーター8からの回転数の信号に基づき燃料噴射量を算出し、さらに、これらの情報に基づき燃費を算出する燃費算出手段13を備えている。
【0034】
また、前記演算装置10は、前記GPSセンサー9からの位置信号に基づき位置情報を取得し、また、この位置情報に基づき船舶1の移動距離を算出する移動距離算出手段14と、前記タコメーター8からの信号に基づき、前記内燃機関2の出力軸の回転の有無を検出し、回転中である場合を前記内燃機関2が稼働状態にあると見なし、前記内燃機関2が回転させられている時間をタイマーによって計測し、その時間を積算することにより内燃機関2の稼働時間とする稼働時間積算手段15とを備えている。
【0035】
そして、前記演算装置10によって算出されあるいは取得された諸情報は、前記表示装置11および前記記録装置12へ送出されるようになっている。
【0036】
前記表示装置11は、
図3に示すように、タッチパネル式の表示部11aを備え、複数の情報画面を切り替え表示するようになっている。
【0037】
前述した情報画面は、たとえば、
図4に示すような燃料の瞬間流量の表示画面、
図5に示すような運行全体にかかる情報の表示画面、
図6に示すようなGPS情報の表示画面、
図7に示すような内燃機関に関する表示画面等が選択的に表示されるようになっている。
【0038】
前記燃料の瞬間流量の表示画面では、たとえば、単位時間あたりの燃料消費量、すなわち時間毎の燃費が、数字表示領域Aとメーター表示領域Bとにおいて表示されるようになっている。
【0039】
前記メーター表示領域Bは、燃費を棒グラフ状に表示する指針部Sと、この指針部Sに沿って設けられた目盛り部Mとによって構成されている。
【0040】
前記目盛り部Mは、たとえば、燃費の最適領域M1、注意領域M2、過剰領域M3との3領域に区分されて、それぞれ、青、黄、赤に色分け表示されている。
【0041】
前記目盛り部の各領域M1、M2、M3は、その範囲が、本装置が搭載された船舶1の使用目的等に応じて適宜変更できるようになっている。
【0042】
このような内燃機関の燃費告知装置は、起動に伴って、燃費情報や位置情報、航行距離情報、燃料消費量情報、平均燃費情報、GPS情報、内燃機関情報(主機関情報)を継続して取得若しくは算出する。
【0043】
そして、船舶1の操縦者は、前記表示装置11の表示を切り替えることにより、種々の情報を得ることができるが、その表示を
図4に示すような瞬間流量の表示に切り替えることにより、現状の燃費状況を即座に確認することができる。
【0044】
したがって、操縦者は、運転状況、すなわち、燃料消費量が適切であるか否かを即座に判断することができ、その運転状況を迅速に調整することができる。
この結果、過剰な燃費状態での運転を抑制して、移動可能距離、若しくは、航行可能時間を大幅に延ばすことができる。
【0045】
本実施形態に示したように、前記目盛り部Mを、燃費の最適領域M1、注意領域M2、過剰領域M3との3領域に区分し、それぞれ、青、黄、赤に色分け表示したことにより、前述した運転状況を視覚的に判断することができるので、運転状況の調整をより迅速に行なうことができる。
【0046】
そして、前述した告知は、操縦者の全てに対して共通して行なわれるものであり、この結果、操縦者間における運転のばらつきを軽減する効果が期待できる。
【0047】
一方、前述した燃費情報や位置情報、航行距離情報、燃料消費量情報、平均燃費情報、GPS情報、内燃機関情報(主機関情報)は、記録装置12へ送出されて、
図8に示すように、時系列的に記録される。
【0048】
このような記録により、航行後における航行状況の検証、または、航行の事前研修等に用いることができる。
ここで、前記燃費情報として、時間あたりの燃料消費量(L/h)、距離あたりの燃料消費量(L/mile)、あるいは、単位燃料量あたりの航行距離(mile/L)等、任意に設定・表示することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 船舶
2 内燃機関
3 出力軸
4 スクリュー
5 燃料タンク
6 船橋
7 燃料噴射装置
8 タコメーター
9 GPSセンサー
10 演算装置
11 表示装置
11a 表示部
12 記録装置
13 燃費算出手段
14 移動距離算出手段
15 稼働時間積算手段
A 数字表示領域
B メーター表示領域
M 目盛り部
M1 最適領域
M2 注意領域
M3 過剰領域
S 指針部