特許第6170336号(P6170336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170336
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】塗装ブース
(51)【国際特許分類】
   B05B 15/12 20060101AFI20170713BHJP
   B62D 65/00 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   B05B15/12
   B62D65/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-97474(P2013-97474)
(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-217798(P2014-217798A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年5月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】305040101
【氏名又は名称】三陽保安産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131897
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100171778
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 寛子
(72)【発明者】
【氏名】江濱 良三
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−81322(JP,A)
【文献】 特開昭60−114326(JP,A)
【文献】 特開2009−285572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 15/00−15/12
B62D 41/00−67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の領域に区画された塗装室を備え、前記各領域で各別に塗装処理を行う塗装ブースであって、
前記各領域から排出される排気を集約して外部に排出する排気経路と、
前記排気経路において、集約した排気の揮発性有機化合物濃度を測定する測定部と、
前記各領域から排出される排気を集約して前記測定部の上流側に導入する処理経路と、
前記処理経路に設けられ、集約した排気に含まれる揮発性有機化合物を除去する排気処理部と、
前記各領域に対応して設けられ、前記各領域と前記排気経路との連通状態および前記各領域と前記処理経路との連通状態を制御する第一切替部とを備え、
前記第一切替部は、前記測定部にて測定した揮発性有機化合物濃度が所定値以上であるときには、前記塗装処理を行っている領域と前記処理経路とを接続する排気浄化処理を実行する
ことを特徴とする塗装ブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VOCの発生する塗装処理に用いる塗装ブースに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や車両といった被塗装物に塗装を行うときには、塗料に含まれるVOC(揮発性有機化合物)等が空気中に発生する。VOCは、人体や環境に有害であるため、塗装処理中は、換気を行い、塗装室内のVOC濃度を所定値以下に維持しなければならない。一方、外部に排出する排気についても、VOC濃度を所定値以下に維持しなければならない旨、定められている。
【0003】
そこで、従来、塗装処理には、塗装室内で発生するVOCを処理することができる塗装ブースが用いられている。
このような塗装ブースは、一般に、被塗装物を収容する塗装室と、塗装室から排気を排出する排気経路と、塗装室から排出される排気のVOC濃度を測定するセンサと、排気中のVOCを除去する排気処理部とを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような塗装ブースでは、センサにて測定したVOC濃度が所定値未満であるときには、排気を塗装ブースの外部に直接排出する一方、センサにて測定したVOC濃度が所定値以上であるときには、排気を排気処理部に通すことで、当該排気のVOCを除去した後、外部に排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−154145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両や電車といった大型の構造物の塗装に用いられる塗装ブースの塗装室は、一般に、複数の領域に区画され、各領域で各別に塗装処理が行われる。塗装処理が行われる領域のVOC濃度は高い値となるが、塗装処理が行われていない領域では、VOC濃度は低い値に維持される。
【0006】
圧力損失の発生や排気処理部の経年劣化を抑制するため、VOC濃度が所定値未満の領域の排気は、排気処理部を通過させずに外部に排出することが好ましい。
そこで、上述した排気経路とは別に、各領域を個別に直接外部に連通させる連通路を設け、VOC濃度の高い領域からの排気は排気処理部に送る一方、VOC濃度の低い領域からの排気は連通路を介して、すなわち排気処理部を介さずに外部に直接排出することも考えられる。
しかしながら、このような外部と各領域とを直接連通させる連通路を各領域に対して各別に設けると、塗装ブースは大型化してしまい、初期費用やランニングコストが増加してしまう。
【0007】
また、塗装処理を行っている領域の排気のVOC濃度が所定値以上であったとしても、当該排気を塗装処理を行っていない領域の排気と混合することで、VOC濃度を所定値未満に抑えると、排気処理部を通過させることなく排気を外部に排出することができる。
しかしながら、特許文献1に記載の塗装ブースでは、塗装処理を行っている領域の排気については、強制的に除去装置を通過させるようにしている。このため、必要がない場合であっても、排気を除去装置を通過させることとなり、圧力損失が発生したり、排気処理部の経年劣化を招くといった問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであって、大型化することを抑制するとともに、VOC濃度が低い場合は、排気処理部を通過させることなく排気を外部に排出することができる塗装ブースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一態様は、複数の領域に区画された塗装室を備え、前記各領域で各別に塗装処理を行う塗装ブースであって、前記各領域から排出される排気を集約して外部に排出する排気経路と、前記排気経路において、集約した排気の揮発性有機化合物濃度を測定する測定部と、前記各領域から排出される排気を集約して前記測定部の上流側に導入する処理経路と、前記処理経路に設けられ、集約した排気に含まれる揮発性有機化合物を除去する排気処理部と、前記各領域に対応して設けられ、前記各領域と前記排気経路との連通状態および前記各領域と前記処理経路との連通状態を制御する第一切替部とを備え、前記第一切替部は、前記測定部にて測定した揮発性有機化合物濃度が所定値以上であるときには、前記塗装処理を行っている領域と前記処理経路とを接続する排気浄化処理を実行することを特徴とする。
【0010】
同構成では、各領域と排気経路との連通状態および各領域と処理経路との連通状態を第一切替部の制御を通じて制御することができる。すなわち、揮発性有機化合物濃度が高いときには、塗装処理を行っている領域と処理経路とを接続してこの領域からの排気を排気処理部で処理する一方、塗装処理を行っていない領域は排気経路に接続してこの領域からの排気は直接外部に排出することができる。また、揮発性有機化合物濃度が低いときには、第一切替部の制御を通じて、全ての領域からの排気を排気処理部を通すことなく外部に排出させることができる。このように、第一切替部の制御を通じて排気の流通経路を変更することができるため、直接外部に連通させるような処理経路を設ける必要がない。したがって、塗装ブースの大型化を抑制するとともに、揮発性有機化合物濃度が低いときには塗装室からの排気を直接外部に排出する一方、揮発性有機化合物濃度が高いときには排気を排気処理部に通して処理することができる。また、第一切替部は、集約した排気の揮発性有機化合物濃度を測定し、この測定結果に基づいて処理経路と塗装処理を行う領域との連通状態を切り替えるようにしている。このため、特定の領域からの排気の揮発性有機化合物濃度が高い場合であっても、集約した排気の化合物濃度が低いときには、排気処理部を通過させることなく、排気を排出することができる。したがって、圧力損失や排気処理部の経年劣化が発生することをより好適に抑制することができる。
【0011】
本発明の第二態様は、第一態様にかかる塗装ブースであって、前記排気浄化処理の実行時に、前記処理経路に接続された領域と前記排気経路とを遮断することを特徴とする。
【0012】
同構成によれば、排気経路を通じて化合物が外部に排出されることを抑制することができる。
【0013】
本発明の第三態様は、第一態様または第二態様にかかる塗装ブースであって、前記排気経路は、流量を調整する流量調整部を備えており、前記排気浄化処理の実行時に、前記排気経路において流量を調整する流量調整処理を実行することを特徴とする。
【0014】
排気が排気処理部を流通する場合は、この排気処理部を流通しない場合よりも大きな圧力損失が発生する。同構成によれば、流量調整処理を実行することで、流圧を調整することができるため、流圧の変動を抑制することができる。
【0015】
本発明の第四態様は、第一態様〜第三態様のいずれかにかかる塗装ブースであって、前記各領域から排出される排気を前記各領域に循環させる循環経路と、前記循環経路に設けられる複数の昇温装置と、前記各領域と前記循環経路との連通状態を制御する第二切替部とを備えることを特徴とする。
【0016】
同構成によれば、塗装処理を行った後、被塗装物を乾燥させる乾燥処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、大型化することを抑制するとともに、VOC濃度が低い場合は、排気処理部を通過させることなく排気を外部に排出することができる、塗装ブースを提供することを課題とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態にかかる塗装ブースの全体構成図。
図2】同実施形態にかかる塗装ブースおよび塗装ブースに接続する給気機構、排気機構、処理機構および循環機構の一部の模式図。
図3】同実施形態にかかる処理の全体の流れを説明するフローチャート。
図4】同実施形態にかかる塗装時ダンパ開閉処理の流れを説明するフローチャート。
図5】同実施形態にかかる乾燥時ダンパ開閉処理の流れを説明するフローチャート。
図6】他の実施形態にかかる塗装ブースの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1図5に基づいて説明する。まず、図1を参照しながら、本実施形態にかかる塗装ブース1の全体構造について説明する。
図1に示されるように、塗装ブース1は、車両等の大型の構造物を収容することができる密閉状の塗装室5を備えている。塗装室5は、複数の領域B1〜B10に区画され、各領域B1〜B10を移動可能な2台の塗装装置7が配設されている。
【0020】
このような塗装室5では、塗装装置7が領域B1〜B10を移動しながら塗料を被塗装物に吹き付ける塗装処理が行われる。塗装処理が終了すると、被塗装物を乾燥させる乾燥処理が行われる。
【0021】
塗装ブース1は、塗装室5に新鮮な空気を供給する給気機構91と、領域B1〜B10からそれぞれ排出される排気を集約して外部に排出する排気機構93と、排気に含まれるVOCを除去する処理機構95と、乾燥処理の実行中に排気を塗装室5に戻す循環機構97とを備えている。
【0022】
給気機構91は塗装室5に接続する給気ラインLC1〜LC4からなる給気経路92と、給気経路92に配設され、塗装室5に空気を送るファン65〜68と、空気中の塵や埃を除去するフィルタ69と、塗装室5に供給する空気を昇温させる昇温機構6と、給気機構91と外部との連通状態を制御するダンパ61〜64と、フィルタ69の上流側に設けられ、給気ラインLC1〜LC4の流通を遮断または許可するダンパ55〜58(本発明の「第二切替部」に相当)とを含んで構成される。
【0023】
排気機構93は、塗装室5と第一連通路3とを接続する排気ラインLA1〜LA10と、第一連通路3を外部に連通させる外部排出ラインLE1〜LE4とからなる排気経路94を含んで構成される。なお、第一連通路3は、各排気ラインLA1〜LA10から排出された排気を集約するものであり、各排気ラインLA1〜LA10から排出された排気は、当該第一連通路3で合流し、外部排出ラインLE1〜LE4を通じて外部に排出される。
【0024】
また、排気機構93は、排気ラインLA1〜LA10にそれぞれ設けられて排気ラインLA1〜LA10の流通を遮断または許可するダンパ21〜30(本発明の「第一切替部」に相当)、外部排出ラインLE1〜LE4に設けられて外部排出ラインLE1〜LE4の排気の流通を遮断または許可するダンパ11〜14、排気ラインLA1〜LA10の流量を調整する調整ダンパ71〜80(本発明の「流量調整部」に相当)を含んで構成される。さらに、排気機構93は、外部排出ラインLE1〜LE4に設けられて、排気ラインLA1〜LA10および外部排出ラインLE1〜LE4の排気を外部に排出するファン15〜18を含んで構成される。
【0025】
図1に示されるように、外部排出ラインLE1と外部排出ラインLE2とは、下流側が合流している。この合流部分の下流側には、排気中のVOC濃度を測定するセンサ2(本発明の「測定部」に相当)が設けられている。同様に、外部排出ラインLE3と外部排出ラインLE4とは、下流側が合流しており、この合流部分の下流側には、排気中のVOC濃度を測定するセンサ2が設けられている。
【0026】
処理機構95は、排気ラインLA1〜LA10からそれぞれ分岐し第二連通路4に接続する分岐ラインLB1〜LB10と、第二連通路4と外部排出ラインLE2とを接続する処理ラインLP1とからなる処理経路96を含んで構成される。なお、第二連通路4は、各分岐ラインLB1〜LB10から排出された排気を集約するものであり、各分岐ラインLB1〜LB10から排出された排気は、当該第二連通路4で合流し、処理ラインLP1に排出される。
【0027】
また、処理機構95は、処理経路96に設けられ、分岐ラインLB1〜LB10の流通を遮断または許可するダンパ41〜50(本発明の「第一切替部」に相当)と、処理ラインLP1を流通する排気のVOCを除去する除去装置40(本発明の「排気処理部」に相当)を含んで構成されている。
【0028】
循環機構97は、給気ラインLC1〜LC4を第一連通路3に接続する循環ラインLC5を含んで構成される。なお、循環経路には、循環ラインLC5、排気ラインLA1〜LA10、給気経路LC1〜LC4が含まれている。
【0029】
上述したセンサ2、塗装装置7、ダンパ11〜14、ダンパ21〜30、ダンパ41〜51、ダンパ55〜58、ダンパ61〜64、調整ダンパ71〜80、ファン15〜18、ファン65〜68は、制御装置(図示せず)に電気的に接続されている。なお、これらダンパ11〜14、ダンパ21〜30、ダンパ41〜51、ダンパ55〜58、ダンパ61〜64は、電動機が取り付けられており、流量を機械的に調整することができるモーターダンパからなる。調整ダンパ71〜80は、流量を可変に調整することができるボリュームダンパからなる。
【0030】
制御装置は、センサ2から取り込んだ検出信号や各種要求に基づいて、ダンパ11〜14、ダンパ21〜30、ダンパ41〜51、ダンパ55〜58、ダンパ61〜64、調整ダンパ71〜80の開度調整、ファン15〜18、ファン65〜68の風量調整を実行する。また、制御装置は、塗装装置7の駆動を制御するとともに、塗装装置7が領域B1〜10のいずれに位置しているかを検出する。
【0031】
図2に、領域B10側から見た塗装ブース1、および領域B10に接続する給気機構91、排気機構93、処理機構95および循環機構97の一部の模式図を示す。
図2に示されるように、外気を供給する給気ラインLC4は、塗装室5の上部に接続している。また、塗装室5の排気を排出する排気ラインLA10は、塗装室5の下部に接続している。
給気機構91から供給される新鮮な空気は、塗装ブース5の上部に供給される。そして、排気は、塗装室5の下部から吸引されて、外部に放出される。
【0032】
次に、図3図5を参照しながら、制御装置によって実行される各種制御について説明する。
まず、図3を参照しながら、制御装置によって実行される本処理の全体の流れを説明する。同図3に示されるように、制御装置は、まず、塗装時ダンパ開閉処理を実行する(ステップS100)。塗装時ダンパ開閉処理は、塗装室5で塗料を被塗装物に吹き付ける塗装処理が行われている間実行されるものであり、具体的には、センサ2の検出信号等に基づいて、ダンパ11〜14、ダンパ21〜30、ダンパ41〜51、ダンパ55〜58、ダンパ61〜64、調整ダンパ71〜80の開度調整等を行う。
【0033】
塗装時ダンパ開閉処理(ステップS100)が終了すると、次に、乾燥時ダンパ開閉処理を実行する(ステップS101)。乾燥時ダンパ開閉処理は、塗装が終了した被塗装物を乾燥させるため、昇温した空気を循環させる乾燥処理が行われている間実行されるものであり、具体的には、ダンパ11〜14、ダンパ21〜30、ダンパ41〜51、ダンパ55〜58、ダンパ61〜64の開度調整等を行う。
【0034】
なお、同図3にて説明した処理は、塗装ブース1全体がオンになった後、自動的に開始されるようにしてもよい。また、乾燥時ダンパ開閉処理(ステップS101)が終了すると、塗装ブース1を自動的にオフにするようにしてもよい。
【0035】
次に、塗装時ダンパ開閉処理について、図4を参照しながら詳細に説明する。
本処理が開始されると、制御装置は、まずファン15〜18,65〜68を稼働させる(ステップS201)。そして、ダンパ11〜14、ダンパ21〜30および調整ダンパ71〜80を開状態とする一方、ダンパ41〜51、ダンパ55〜58を閉状態とする(ステップS202)。なお、ダンパ61〜64の開度は、外気を取り込むため、所定の開度θ1(例えば、流量が800m/minとなる開度)に調整される。
【0036】
次に、制御装置は、センサ2から取り込んだ検出信号に基づき、VOC濃度C1が所定値C以上であるか否かを判断する(ステップS203)。所定値Cは、700ppmとすることが好ましい。
【0037】
VOC濃度C1が所定値C未満であると判断する場合(ステップS203;NO)、塗装処理が終了したか否かを判断する(ステップS211)。塗装処理が終了したと判断する場合(ステップS211;YES)、この処理を終了する。一方、塗装処理が終了していないと判断する場合(ステップS211;NO)、ステップS203を繰り返し実行する。
【0038】
これに対して、VOC濃度C1が所定値C以上であると判断する場合(ステップS203;YES)、まず、ダンパ51を開状態とし(ステップS204)、次に塗装装置7の位置を検出する(ステップS205)。すなわち、塗装装置7が領域B1〜B10のいずれに位置しているかを検出する。
【0039】
次に、ダンパ41〜50のうち、塗装装置7が位置している領域のものを開状態とする。例えば、図1に示される領域に塗装装置7が位置している場合は、ダンパ43,45を開状態とする(ステップS206)。
そして、ダンパ21〜30のうち、塗装装置7が位置している領域のものを閉状態とする(ステップS207)。例えば、図1に示される領域に塗装装置7が位置している場合は、ダンパ23,25を閉状態とする。
【0040】
これにより、領域B3、B5からの排気は、処理経路96を流通する。すなわち、領域B3,B5から排出される排気は、除去装置40を通過して、VOCが除去された状態で外部に排出される。一方、領域B1,B2,B4,B6〜B10からの排気は、排気経路94を流通して、すなわち除去装置40を通過することなく、外部に排出される。
【0041】
次に、調整ダンパ71〜80を用いて風量調整を行う(ステップS208)。排気が処理経路96を流通する場合は、排気経路94を流通する場合よりも大きな圧力損失が発生する。すなわち、排気経路94の方が、処理経路96よりも流圧が高くなる。そこで、調整ダンパ71〜80を用いて、排気経路94の流圧と処理経路96の流圧とが略等しい値となるように調整する。
【0042】
次に、制御装置は、センサ2の検出信号に基づいて、所定時間A以上、継続してVOC濃度C1が所定値C未満であるか否かを判断する(ステップS209)。所定時間A以上、継続してVOC濃度C1が所定値C未満でないと判断する場合(ステップS209;NO)、すなわち、VOC濃度C1が所定値C未満である状態が所定時間A以上継続していないと判断する場合、ステップS204〜ステップS208の処理を繰り返し実行する。
【0043】
一方、所定時間A以上、継続してVOC濃度C1が所定値C未満であると判断する場合(ステップS209;YES)、ダンパ41〜51を全て閉状態とし、ダンパ21〜30を全て開状態とする(ステップS210)。すなわち、上述したようにダンパ43,45を開状態とし、ダンパ23,25を閉状態とした場合、ダンパ43,45を閉状態とし、ダンパ23,25を開状態とする。
【0044】
次に、制御装置は、塗装処理は終了したか否かを判断する(ステップS211)。塗装処理が終了したと判断する場合(ステップS211;YES)、この処理を終了する。一方、塗装処理は終了していないと判断する場合(ステップS211;NO)、ステップS203以降の処理を繰り返し実行する。
【0045】
このような塗装時ダンパ制御処理によれば、例えば、図1に示されるように、領域B3,B5に塗装装置7が位置している場合、各ダンパは以下のように制御される。
センサ2の検出信号に基づいてVOC濃度C1が所定値C未満であると判断する場合は、ダンパ11〜14,21〜30を開状態とし、ダンパ41〜50,51を閉状態とする。この場合、塗装室5から排出される排気は全て処理機構95を通過することなく、直接外部に排出される。
【0046】
一方、センサ2の検出信号に基づいてVOC濃度C1が所定値C以上であると判断する場合は、ダンパ11,13,14,21,22,24,26〜30,43,45,51を開状態、ダンパ12,23,25,41,42,44,46〜50を閉状態とする。この場合は、領域B3,B5から排出される排気は処理機構95を通過して外部に排出される一方、他の領域、すなわち領域B1,B2,B4,B6〜B10から排出される排気は処理機構95を通過することなく直接外部に排出される。
【0047】
そして、VOC濃度C1が所定値C未満となり、その状態、すなわちVOC濃度C1が所定値C未満である状態が所定時間A以上と継続したことをもって、ダンパ12,23,25を開状態とし、ダンパ43,45,51を閉状態とする。
【0048】
次に、図5を参照しながら、乾燥時ダンパ開閉処理について詳細に説明する。
本処理が開始されると、制御装置は、まずダンパ55〜58を開状態とし、ダンパ41〜51を全て閉状態とする(ステップS301)。この際、ダンパ61〜64の開度は、上述した所定開度θ1よりも小さい開度(例えば、流量が200m/minとなる開度)に調整する。
【0049】
次に、ファン65〜68を稼働させ(ステップS302)、通過する空気を昇温させる昇温機構6を稼働させる(ステップS303)。
これにより、一部に外気を含む昇温された空気が、給気ラインLC1〜LC4を通過して、塗装室5に導入される。
【0050】
次に、ダンパ13の開度を所定開度θ2(例えば、開状態の半分の開度)とし、ダンパ11,12,14を閉状態とする(ステップS304)。そして、ファン17を稼働させる(ステップS305)。これにより、塗装室5から排出される排気の一部が外部に排出され、循環空気のVOC濃度が過度に高くなることを抑制することができる。
【0051】
次に、ダンパ21〜30を開状態とする(ステップS306)。塗装室5から排出された空気のうち、外部排出ラインLE3を通過して外部に排出される空気以外の空気は、排気ラインLA1〜LA10を通過して第一連通路3に導入された後、循環ラインLC5を通過して、塗装室5に再度導入される。すなわち、塗装室5から排出された空気は、循環するようになる。なお、ダンパ41〜50は閉状態とし、除去装置40に排気が導入されないようにする。
【0052】
次に、制御装置は、所定時間T1が経過したか否かを判断する(ステップS307)。所定時間T1が経過していないと判断する場合(ステップS307;NO)、所定時間T1が経過するまで、ステップS307の処理を繰り返す一方、所定時間T1が経過したと判断する場合(ステップS307;YES)、本処理を終了する。すなわち、制御装置は、所定時間T1が経過するまでステップS307にて待機する。なお、所定時間T1は、被塗装物が乾燥するのに要する時間であり、制御装置は、本乾燥時ダンパ開閉処理が開始されたときに計時を開始する。
【0053】
上述した本実施形態によれば、以下に記載する作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、各領域B1〜B10と排気経路94との連通状態および各領域B1〜B10と処理経路96との連通状態をダンパ12,21〜30,ダンパ41〜51を通じて制御することができる。このため、処理経路96を直接外部に連通させる必要がない。したがって、VOC処理装置の大型化を抑制することができる。
【0054】
(2)また、各領域B1〜B10から排出された排気を集約し、この集約した排気のVOC濃度を測定し、この測定結果に基づいて処理経路96と塗装処理を行う領域との連通状態を切り替えるようにしている。このため、特定の領域からの排気のVOC濃度が高い場合であっても、集約した排気のVOC濃度が低いときには、除去装置40を通過させることなく、排気を排出することができる。したがって、圧力損失や排気処理部の経年劣化が発生することをより好適に抑制することができる。
【0055】
(3)また、排気が処理ラインLP1を流通する場合は、排気ラインLA1〜LA10を流通する場合よりも大きな圧力損失が発生する。このため、排気の流通経路が排気ラインLA1〜LA10から処理ラインLP1に変更されると、流圧が大きく変動するおそれがある。本実施形態では、調整ダンパ71〜80を用いて排気ラインLA1〜LA10の流圧を調整することができるため、排気の流通経路が変更されたことに伴う流圧の変動を抑制することができる。
【0056】
(4)塗装時ダンパ開閉処理において、仮に、センサ2にて検出したVOC濃度C1が所定値C未満となったことをもって直ちにステップS210の処理を実行すると、ダンパが開閉を繰り返す状態、いわゆるハンチングが発生するおそれがある。本実施形態では、ステップS209において、センサ2で検出したVOC濃度C1が所定値C未満である状態が所定期間A以上継続したことをもってステップS210を実行するようにしたため、ハンチングの発生を抑制しつつ、ダンパ12,21〜30,41〜51を適切に開閉することができる。
【0057】
(その他の実施形態)
なお、この発明にかかる塗装ブース1は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、同実施の形態を適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0058】
図6に示されるように、各領域B1〜B10にそれぞれ接続する排気ラインLF1〜LF10にそれぞれ排気ファン101〜110を設けてもよい。この場合、同図6に示されるように、第一連通路3を排気ラインLF1〜LF10にそれぞれ接続する接続ラインLG1〜LG10を設ける。本実施形態においても、上記作用効果に準じた作用効果を奏することができる。
【0059】
・上述した実施形態では塗装時ダンパ開閉処理のステップS209において、センサ2で検出したVOC濃度C1が所定値C未満である状態が所定期間A以上継続したことをもってステップS210を実行するようにしたが、本発明における塗装時ダンパ開閉処理はこれに限られるものではない。例えば、検出したVOC濃度C1が所定値C未満となり、且つ塗装装置7の位置する領域が変更したことをもって、ステップS204に戻るようにしてもよい。本変形例では、検出したVOC濃度C1が所定値C以上となった場合、塗装装置7の位置する領域が変更されるまで、ダンパ12,21〜30,41〜51の開閉状態を維持することができる。このため、ハンチングの発生を抑制しつつ、ダンパ12,21〜30,41〜51を適切に開閉することができる。
【0060】
・上述した実施形態では塗装時ダンパ開閉処理のステップS209において、センサ2で検出したVOC濃度C1が所定値C未満である状態が所定期間A以上継続したことをもってステップS210を実行するようにしたが、本発明における塗装時ダンパ開閉処理はこれに限られるものではない。例えば、排気ラインLA1〜LA10にVOC濃度を検出する排気センサ(図示せず)を設けてもよい。そして、ステップS203でセンサ2が検出したVOC濃度C1が所定値C以上であると判断した場合、制御装置は、塗装装置7が位置する領域の排気センサの検出結果を取り込む。そして、塗装装置7が位置する領域の排気センサの検出結果が予め定める値以下となったことをもって、ステップS210に移行してもよい。
【0061】
・上述した実施形態では塗装時ダンパ開閉処理のステップS209において、センサ2で検出したVOC濃度C1が所定値C未満である状態が所定期間続いたことをもってステップS210を実行するようにしたが、本発明における塗装時ダンパ開閉処理はこれに限られるものではなく、センサ2で検出したVOC濃度C1が所定値C未満となったことをもって、直ちにステップS210に移行するようにしてもよい。
【0062】
・上述した実施形態では、調整ダンパ71〜80を制御装置(図示せず)に電気的に接続させ、その開度を電動機にて調整するようにしたが、本発明はこれに限られるものではない。調整ダンパ71〜80の開度は、手動にて調整してもよい。また、所定の開度に固定してもよい。調整ダンパ71〜80の開度は、流量が等しい場合、排気ラインLA1〜LA10の流圧が分岐ラインLB1〜LB10の流圧と略等しくなる開度に調整することが好ましい。
【0063】
・上記実施形態では、検出したVOC濃度C1が所定値C以上であると判断した場合(ステップS203;YES)、ダンパ21〜30のうち、塗装装置7がある領域のものを閉状態とするようにした(ステップS207)が、本発明はこれに限られるものではない。例えば、検出したVOC濃度C1が所定値C以上であると判断した場合(ステップS203;YES)、ダンパ21〜30のうち、塗装装置7がある領域のものの開度を、閉状態よりも大きい開度であって、開状態よりも小さい開度としてもよい(例えば、開状態の半分の開度)。本変形例によれば、除去装置40を通過する排気の流量をVOC濃度に応じて調整することができるため、排気中の化合物を処理する際、不必要に圧力損失が発生したり、排気処理部が経年劣化することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…塗装ブース
2…センサ
3…第一連通路
4…第二連通路
5…塗装室
6…昇温機構
11〜14…ダンパ
15〜18…ファン
21〜30…ダンパ
40…除去装置
41〜50…ダンパ
51…ダンパ
55〜58…ダンパ
61〜64…ダンパ
65〜68…ファン
69…フィルタ
71〜80…調整ダンパ
91…給気機構
92…給気経路
93…排気機構
94…排気経路
95…処理機構
96…処理経路
97…循環機構
101〜110…排気ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6