(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170353
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】ラップフィルム包装箱
(51)【国際特許分類】
B65D 5/72 20060101AFI20170713BHJP
B65D 25/52 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
B65D5/72 A
B65D25/52 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-131281(P2013-131281)
(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公開番号】特開2015-3760(P2015-3760A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年3月29日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日:平成25年1月30日 販売場所:■
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(72)【発明者】
【氏名】岡野 亮太
(72)【発明者】
【氏名】海野 誠
(72)【発明者】
【氏名】新井 亜清
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/023539(WO,A1)
【文献】
特開2008−239251(JP,A)
【文献】
特開2005−178901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/00−5/76
B65D83/08
B65D25/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラップフィルムの捲回ロールを収納する箱型の本体と、該本体の上面開口を開閉可能に覆うと共に、前記本体の前面板の外側に被さる掩蓋片を有する蓋体と、掩蓋片の先端縁に設けられた切断刃とを備え、前記捲回ロールから前記本体の前記前面板側に引き出したラップフィルムを前記切断刃で切断可能なラップフィルム包装箱において、
前記本体の前面板の上縁に連なり、この上縁に沿った折り部を介して内側に折り返されて前面板に接着された内面板を有している一方、前記前面板の幅方向の中間部に、逆等脚台形状をなす突出片が形成されており、前記突出片の上底が間隔をあけて前記折り部と対向し、前記突出片の両脚がそれぞれ前記折り部との間に間隔をあけて形成された互いに等しい大きさの切り欠き部によって規定され、前記突出片の下底が前記両切り欠き部を結ぶ切り込みによって形成されており、
前記突出片の前記下底の長さをA、前記両切り欠き部の下辺側の最大幅をそれぞれB、前記突出片の前記上底の長さをa、前記両切り欠き部の上辺側の最大幅をそれぞれbとした時に、A:B=1:0.7〜1:1.2で、a:b=1:0.2〜1:0.1であることを特徴とするラップフィルム包装箱。
【請求項2】
前記上底及び前記両切り欠き部と、前記折り部との間の前記間隔をh、前記前面板の高さをHとした時に、h=H/3〜H/10であることを特徴とする請求項1に記載のラップフィルム包装箱。
【請求項3】
前記内面板の幅をWとし、L=a+2・b=A+2・Bとした時に、L=W/4〜W/2であることを特徴とする請求項2に記載のラップフィルム包装箱。
【請求項4】
前記突出片の外面に粘着部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のラップフィルム包装箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱型の本体内に収納したラップフィルムの捲回ロールから引き出したラップフィルムを、本体の前面板と、蓋体の掩蓋片との間に挟み、掩蓋片の先端部に設けられた切断刃で切断することができるラップフィルム包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような切断刃付きの掩蓋片を有するラップフィルム包装箱において、本体の前面板(第1壁体)の上縁に連なり、この上縁に沿った折り部を介して内側に折り返された内面板(第2壁体)を設け、前面板の上部に、上記折り部に両脚部が接する上向きコ字形の切れ目を形成し、この切れ目の内側を突出片としたラップフィルム包装箱が知られている(特許文献1参照)。このラップフィルム包装箱の場合、折り部の弾性反発力によって突出片が外方へ突き出るので、切断した後の捲回ロール側のラップフィルムの先端部を浮かせて摘まみやすくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4753481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のラップフィルム包装箱に設けられている突出片は、突出力が弱く、ラップフィルムを十分押し上げにくい問題がある。特に、ラップフィルムの切断時に、掩蓋片上に指を当て、前面板との間にラップフィルムを挟み付けることから、切断の都度突出片が押し込まれる方向に押圧される。このため、当初はラップフィルムを押し上げることができても、徐々に突出力が弱まって、ラップフィルムを十分押し上げられなくなる。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、切断した後のラップフィルムの捲回ロール側先端部を、次の使用時に摘まみやすいように確実に浮き上がらせることができるラップフィルム包装箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的のために、ラップフィルムの捲回ロールを収納する箱型の本体と、該本体の上面開口を開閉可能に覆うと共に、前記本体の前面板の外側に被さる掩蓋片を有する蓋体と、掩蓋片の先端縁に設けられた切断刃とを備え、前記捲回ロールから前記本体の前記前面板側に引き出したラップフィルムを前記切断刃で切断可能なラップフィルム包装箱において、
前記本体の前面板の上縁に連なり、この上縁に沿った折り部を介して内側に折り返されて前面板に接着された内面板を有している一方、前記前面板の幅方向の中間部に、逆
等脚台形状をなす突出片が形成されており、前記突出片の上底が間隔をあけて前記折り部と対向し、前記突出片の両脚がそれぞれ前記折り部との間に間隔をあけて形成された
互いに等しい大きさの切り欠き部によって規定され、前記突出片の下底が前記両切り欠き部を結ぶ切り込みによって形成されて
おり、
前記突出片の前記下底の長さをA、前記両切り欠き部の下辺側の最大幅をそれぞれB、前記突出片の前記上底の長さをa、前記両切り欠き部の上辺側の最大幅をそれぞれbとした時に、A:B=1:0.7〜1:1.2で、a:b=1:0.2〜1:0.1であることを特徴とするラップフィルム包装箱を提供するものである。
【0007】
また、上記本発明は
、前記上底及び前記両切り欠き部と、折り部との間の前記間隔をh、前記前面板の高さをHとした時に、h=H/3〜H/10であること、
前記内面板が折り返されて重なった前記前面板の領域の幅をWとし、L=a+2・b=A+2・Bとした時に、L=W/4〜W/2であること、
前記突出片の外面に粘着部が設けられていること
をその好ましい態様として含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のラップフィルム包装箱においては、両切り欠き部及び切り込みと、折り部とで挟まれた領域全体に作用する折り部の弾性復帰力によって、突出片の下底側が浮き上がって外方へ突出しようとする。しかし、両切り欠き部と折り部との間にあけられている間隔部分の浮き上がりは、切り欠き部が形成されていない前面板の左右の領域の剛性によって抑えられる。このため、突出片は、その下底側の中央部が最も大きく浮き上がり、両側部の浮き上がりが抑えられた湾曲した状態で外方へ突出する。すなわち、本発明における突出片は、いわば折り部をヒンジ部として全体が等角度で傾動して突出するのではなく、突出部の下底及び両切り欠き部と、折り部との間にあけられた間隔部分に生ずる歪によって突出するものであり、突出力が強く、押し込まれにくいので、切断した後の捲回ロール側先端部を、次の使用時に摘まみやすいように確実に浮き上がらせることができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一例に係るラップフィルム包装箱の開封後の状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されるラップフィルム包装箱の中央部の拡大縦断面図である。
【
図3】
図1に示されるラップフィルム包装箱を構成するブランクを示す平面図である。
【
図4】
図1に示されるラップフィルム包装箱を開封する途中の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1〜
図4に基づいて本発明の一例を説明する。以下に参照する図面において、同じ符号は同様の構成要素を示す。また、
図3における一点鎖線は折りラインを示し、(8)として示す折りラインは後述する折り部8を形成する折りラインを示す。
【0011】
本例のラップフィルム包装箱は、長方形の箱型の本体100と、本体100の上面開口を開閉可能に覆う蓋体200を備えている。本ラップフィルム包装箱は、通常、厚紙を打ち抜いた
図3に示されるようなブランクから構成されている。
【0012】
本体100は、前面板1、底面板2、背面板3及び側面板4a,4bを備えている。前面板1の下縁と背面板2の下縁はそれぞれ底面板2の前縁と後縁に連接されており、側面板4a,4bの下縁は底面板2の両側縁に連接されている。前面板1の両側縁には補助片5a,5b(
図2,3参照)が連接され、背面板3の両側縁には補助片6a,6b(
図2,3参照)が連接されている。前面板1、背面板3及び左右の側面板4a,4bは、底面板2の四周を囲むように立ち上げられ、補助片5a,5bと補助片6a,6bとをそれぞれ側面板4a,4bの内面に宛がって接着することで上面が開放された箱型の本体100を構成している。また、前面板1の上縁には内面板7が連なり、前面板1の上縁に沿った折り部8を介して内側に折り返されて、前面板1の内面に重ねられ、前面板1に接着されている。
【0013】
蓋体200は、上面板9、掩蓋片10及び側端板11a,11bを備えている。上面板9の後縁は背面板3の上縁に連接され、上面板9の前縁に掩蓋片10の上縁が連接されている。掩蓋片10には、掩蓋片10の先端側を分離するためのミシン目等の切り離しライン12が設けられていると共に、この切り離しライン12より上面板9側の両側縁には補助片13a,13b(
図2,3参照)が連なっている。上面板9は、背面板3の上縁から本体100の開口部側に傾動可能に折られ、掩蓋片10及び側端板11a,11bはそれぞれ上面板9から下向きに折られ、補助片13a,13bをそれぞれ側端板11a,11bの内面に宛がって接着することで蓋体200を構成している。
【0014】
本ラップフィルム包装箱は、本体100内にラップフィルム14の捲回ロール15を収納し、蓋体200を閉じ、本体100の前面板1の外面に重なる蓋体200の掩蓋片10の切り離しライン12より先端側を前面板1に接合することで、封止された包装体を構成する。その開封は、
図4に示されるように、掩蓋片10の先端側を、切り離しライン12を介して切り離すことで行われる。この開封により、残った掩蓋片10の先端縁に設けられた切断刃16が露出する。ラップフィルム14は、捲回ロール15から必要な側だけ本体100の前面板1側に引き出され、掩蓋片10と前面板1の間に挟み付けた状態で切断刃16を擦り付けることで切断することができる。
【0015】
本発明のラップフィルム包装箱は、その本体100の前面板1に突出片17が形成されている。突出片17は、上底が下底より長い逆台形状をなし、前面板1の幅方向(両側面板4a,4bの対向方向)の中間部で、蓋体200を閉めた時に掩蓋片10で覆われる高さに形成されている。突出片17の上底は間隔をあけて折り部8と対向し、突出片17の両脚がそれぞれ折り部8との間に間隔をあけて形成された切り欠き部18a,18bによって規定され、突出片17の下底が両切り欠き部18a,18bを結ぶ切り込み19によって形成されている。突出片17の下底側は、切り欠き部18a,18bと切り込み部19によって自由端側となっており、突出片17の上底側は、上底と折り部8間に設けた間隔を介して前面板1に連なっている。突出片17及び両切り欠き部18a,18bの内面側には内面板7が位置しており、突出片17の外方への突出と、両切り欠き部18a,18bの存在による、本体100内への異物の侵入を防止できるようになっている。
【0016】
上記のような突出片17とすると、効果の欄でも説明したように、両切り欠き部18a,18b及び切り込み19と、折り部8とで挟まれた領域全体に作用する折り部8の弾性復帰力によって、突出片17の下底側が浮き上がって外方へ突出しようとする。しかし、両切り欠き部18a,18bと、折り部8との間にあけられている間隔部分の浮き上がりは、切り欠き部18a,18bが形成されていない前面板1の左右の領域の剛性によって抑えられる。このため、突出片17は、その下底側の中央部が最も大きく浮き上がり、両側部の浮き上がりが抑えられた湾曲した状態で外方へ突出する。切断刃16で切断した後のラップフィルム14の捲回ロール15側の端部は、この突出片17上に被さり、前面板1から浮き上げられて、次に使用する際に摘まみやすい状態で支持されることになる。また、内面板7が前面板1の内面に接着されていることで、内面板7が本体100の内方へ開いて折り部8の弾性復帰力が弱まり、突出片17が十分突出できなくなるのが防止されている。
【0017】
図示される突出片17は逆等脚台形状をなし、両切り欠き部18a,18bの大きさは等しいものとなっている。
図3に示されるように、この突出片17の下底の長さをA、両切り欠き部18a,18bの下辺側の最大幅をそれぞれB、突出片17の上底の長さをa、両切り欠き部18a,18bの上辺側の最大幅をそれぞれbとした時に、A:B=1:0.7〜1:1.2で、a:b=1:0.2〜1:0.1であることが好ましい。Aに対するBの比率及びaに対するbの比率の両者が上記範囲より小さくなると突出部17の十分な突出力が得にくくなりやすい。逆に、Aに対するBの比率及びaに対するbの比率の両者が大きくなりすぎると、突出部17の突出力が大きくなりすぎて、蓋体200を閉じにくくなりやすい。
【0018】
図示される両切り欠き片18a,18bの上側の辺は折り部8と平行に形成されており、両切り欠き片18a,18bの上側の辺の延長線上に突出部17の上底が位置している。また、両切り欠き片18a,18bの下側の辺も折り部8と平行に形成されている。図示される突出片17の下底は両切り欠き片18a,18bの下側の辺の延長線より若干下方に形成されているが、両切り欠き片18a,18bの下側の辺の延長線上に位置させてもよい。
【0019】
図3に示されるように、突出片17の上底及び両切り欠き部18a,18bと、折り部8との間の間隔をh、前面板の高さをHとした時に、h=H/3〜H/10であることが好ましい。Hに対してhが大きくなりすぎても小さくなりすぎても突出片17の突出力が不十分になりやすい。
【0020】
図示される例の内面板7は、前面板1の上縁の全長に亘って連なっているが、突出部17、両切り欠き部18a,18b及び切り込み19が、内面板7が折り返されて重なった前面板1の領域の中間部に形成されていれば、前面板1の幅より狭い幅の内面板7とすることもできる。また、内面板7の幅をWとし、L=a+2・b=A+2・Bとした時に、L=W/4〜W/2であることが好ましい。LがWに対して小さすぎても大きすぎても突出片17の突出力が不十分になりやすくなる。
【0021】
突出片17の外面には、粘着性の巻き戻り防止膜20を設けておくことが好ましい。巻き戻り防止膜20としては、主剤としてゴム系、ポリウレタン系、アクリル樹脂系等の粘弾性ポリマーを用い、前記主剤にロジン系、石油樹脂等の粘着付与樹脂を配合した粘着剤を用いることができ、このような粘着剤を塗布したり、シール状にして貼着させることで設けることができる。巻き戻り防止膜20を突出片17の外面に設けておくと、切断時にラップフィルム14を掩蓋片10と前面板1との間に挟み付けた時に、ラップフィルム14を巻き戻り防止膜20へ密着させることができる。そして、これによって、切断後、ラップフィルム14の捲回ロール15側の切断端部が本体100内へ引き込まれて捲回ロール15に張り付いてしまうのを防止することができる。
【0022】
本発明に係るラップフィルム包装箱を構成する厚紙としては、坪量325〜550g/m
2のコート紙を好ましく用いることができる。坪量が大きすぎると突出片17の突出力が大きくなりすぎやすく、逆に小さすぎると突出片17の突出力が不足しやすくなる。
【実施例】
【0023】
実施例
坪量360g/m
2のコート紙を用い、本体の幅(W)が312mm、高さ(H)が42mm、奥行きが44mmで、
図3に示されるようなブランクの本発明に係るラップフィルム包装箱を作製した。なお、A+2・B=a+2・b=L=141mm、内面板の幅と高さは前面板と揃えた。
【0024】
作成したラップフィルム包装箱のA:Bとa:bは次の3種類とした。
【0025】
サンプル1
A:B=1:0.3
a:b=1:0.3
サンプル2
A:B=1:1.2
a:b=1:0.35
サンプル3
A:B=1:0.9
a:b=1:0.2
【0026】
上記サンプル1〜3について、それぞれ蓋体の開閉とラップフィルムの切断作業を繰り返し、蓋体の開閉のしやすさと、ラップフィルムの切断端部の摘まみやすさを調べた。
【0027】
その結果、サンプル1は蓋体の開閉には問題は認められなかったが、突出片の突出力がやや弱く、使用を繰り返すうちに徐々に突出片の突出量が少なくなる傾向が認められた。
【0028】
サンプル2は、突出片の突出力が強く、蓋体を閉じるときに突出片が邪魔になりやすい傾向が認められたが、ラップフィルムの摘まみやすさには問題は認められなかった。
【0029】
サンプル3は、突出片の突出力が最も適当で、蓋体の開閉のしやすさと、ラップフィルムの摘まみやすさのいずれについても問題は認められなかった。
【符号の説明】
【0030】
100 本体
200 蓋体
1 前面板
2 底面板
3 背面板
4a,4b 側面板
5a,5b 補助片
6a,6b 補助片
7 内面板
8 折り部
9 上面板
10 掩蓋片
11a,11b 側端板
12 切り離しライン
13a,13b 補助片
14 ラップフィルム
15 捲回ロール
16 切断刃
17 突出片
18a,18b 切り欠き部
19 切り込み
20 巻き戻り防止膜