(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170365
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】スロットルセンサ
(51)【国際特許分類】
B62K 23/04 20060101AFI20170713BHJP
B62J 99/00 20090101ALI20170713BHJP
B62K 11/14 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
B62K23/04
B62J99/00 J
B62K11/14
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-151814(P2013-151814)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2015-20659(P2015-20659A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】平山 育男
(72)【発明者】
【氏名】岩田 宏昭
【審査官】
岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−252274(JP,A)
【文献】
実開昭58−086939(JP,U)
【文献】
特開2001−214762(JP,A)
【文献】
特開2010−195188(JP,A)
【文献】
特開2006−182178(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0095163(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 23/04
B62K 11/14
F16F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットルグリップが回転可能に取り付けられたハンドルバーに取り付けられたスロットルセンサであって、
前記ハンドルバーが挿通されるハウジングと、
前記ハウジングに収容されるとともに前記ハンドルバーに回転可能に取り付けられて前記スロットルグリップの回転に連動して回転するギヤと、
前記ギヤの回転を検出するセンサとを備え、
前記ギヤは前記ハンドルバーの中心軸方向の両側へ向けて前記ギヤから部分的に突出する突出部を有し、
該突出部は前記ハウジングへ当接するとともに、前記ギヤの回転方向に関して当該ギヤに対する相対的な移動が規制され、
前記中心軸方向の両側へ向けて突出する突出部のいずれも摺動によって摩擦力を生じさせることを特徴とするスロットルセンサ。
【請求項2】
前記ハンドルバーの中心軸方向の一方側に突出する突出部を前記ギヤと別部材で構成し、前記別部材を前記ハンドルバーの中心軸方向の一方側に付勢する付勢部材をさらに有し、
前記中心軸方向に関して前記別部材は前記ギヤに対して自在に動くことを特徴とする請求項1記載のスロットルセンサ。
【請求項3】
前記ギヤは前記ハンドルバーの中心軸方向の両側のそれぞれにおいて複数の前記突出部を有し、複数の前記突出部は前記ギヤの回転方向に関して等間隔に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載のスロットルセンサ。
【請求項4】
前記突出部は前記ハウジングへ直接的に当接することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスロットルセンサ。
【請求項5】
前記突出部は前記ハウジングへ間接的に当接し、前記突出部及び前記ハウジングの間には板状部材が介在し、前記板状部材は前記ギヤの回転方向に関して前記ハウジングに対する相対的な移動が規制されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスロットルセンサ。
【請求項6】
前記突出部は樹脂からなり、前記板状部材は金属からなることを特徴とする請求項5記載のスロットルセンサ。
【請求項7】
前記ハウジングは少なくとも2つの部材に分割されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のスロットルセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車等の車両のハンドルバーに取り付けられるスロットルグリップの回転角を検出するスロットルセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車等のハンドルバーを有する車両では、運転者のアクセル開閉要求を受け付けるスロットルグリップがハンドルバーへ設けられる。スロットルグリップはハンドルバーへ当該ハンドルバーの中心軸周りに回転可能に取り付けられ、運転者の操作によって回転する。スロットルグリップの回転角は、当該スロットルグリップに隣接してハンドルバーに取り付けられたハンドルスイッチアッシーに内蔵されるスロットルセンサによって検出される。
【0003】
スロットルセンサは、スロットルグリップと連動して当該スロットルグリップと同一方向に回転する駆動プーリと、該駆動プーリの下部に形成された駆動歯車と、該駆動歯車と噛み合って回転する検出用歯車と、該検出用歯車の回転を検出するポテンションメータと、駆動プーリ、駆動歯車、検出用歯車及びポテンションメータを内蔵するケースとを有する(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ポテンションメータによって検出された検出用歯車の回転の角度はスロットルグリップの回転角、すなわち、スロットル開度であり、ポテンションメータはスロットル開度に対応する電気信号を発生させ、車両の制御装置、例えば、ECU(Engine Control Unit)は、当該電気信号に基づいてエンジンの点火時期等を制御する。
【0005】
また、スロットルセンサでは、駆動プーリにスロットルワイヤの一端が固定され、スロットルグリップの回転に伴って駆動プーリが回転すると、スロットルワイヤが引っ張られて当該スロットルワイヤの他端に接続されたスロットルバルブが開弁又は閉弁する。
【0006】
ところで、スロットルワイヤは、駆動プーリの回転によって引っ張られるため、スロットルグリップの回転時には過大な張力が付与されて切断等が生じることがある。また、スロットルワイヤはアウターチューブによって保護されるが、該アウターチューブ内をスライドするので、当該アウターチューブ内の作動油が無くなるとスロットルグリップの回転動作に力を要する。
【0007】
これらの問題に対応するために、スロットル開度に対応する電気信号に基づいてECUがスロットルバルブの開度を制御することにより、スロットルワイヤを廃止したスロットルセンサが開発されている。但し、スロットルワイヤを廃止したスロットルセンサでは、従前にスロットルワイヤが生じさせていたスロットルグリップの回転負荷が生じないため、極めて小さい回転力でスロットルグリップを回転させることが可能となり、スロットルグリップの操作に関して運転者が違和感を抱くようになり、スロットルグリップの回転量の調整が困難となる。
【0008】
そこで、スロットルグリップの操作に関する違和感の解消のために、
図9に示すように、スロットルセンサのハウジング(図示しない)内に配置されたプレートケース80に摩擦板81を設け、該摩擦板81を駆動プーリ(図示しない)へ当接させることにより、摩擦板81に対する駆動プーリの摺動に起因する摩擦力によってスロットルグリップ(図示しない)の回転負荷を生じさせることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
特許文献2記載のスロットルグリップでは、摩擦板81はハンドルバーが挿通可能な穴が略中央に形成された円環形状を呈し、摩擦板81はハンドルバーの中心軸に沿う方向(以下、「スラスト方向」という。)へスプリング82によって押圧されて駆動プーリへ当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−254278号公報
【特許文献2】特許第4112876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2記載のスロットルグリップでは、摩擦板81がプレートケース80に対して固定されていないため、スロットルグリップを回転させる際、駆動プーリが摩擦板81に対して摺動することもあれば、摩擦板81が駆動プーリと共周りしてプレートケース80に対して摺動することもある。したがって、スロットルグリップの回転負荷が安定して発生しないという問題がある。
【0012】
また、摩擦板81は円環形状を呈するため、略中央に形成された穴にハンドルバーを挿通させた場合、摩擦板81はスラスト方向に対して垂直且つ広範囲に展開し、スロットルセンサのハウジング内の空間の大部分を遮断する。その結果、スロットルセンサのハウジング内において構成部品の適切な配置が困難となり、スロットルセンサが大型化するという問題もある。
【0013】
本発明の目的は、スロットルグリップの回転負荷を安定して発生させることができるとともに、大型化する必要を無くすことができるスロットルセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1記載のスロットルセンサは、スロットルグリップが回転可能に取り付けられたハンドルバーに取り付けられたスロットルセンサであって、前記ハンドルバーが挿通されるハウジングと、前記ハウジングに収容されるとともに前記ハンドルバーに回転可能に取り付けられて前記スロットルグリップの回転に連動して回転するギヤと、前記ギヤの回転を検出するセンサとを備え、前記ギヤは前記ハンドルバーの中心軸方向の両側へ向けて前記ギヤから部分的に突出する突出部を有し、該突出部は前記ハウジングへ当接するとともに、前記ギヤの回転方向に関して当該ギヤに対する相対的な移動が規制され
、前記中心軸方向の両側へ向けて突出する突出部のいずれも摺動によって摩擦力を生じさせることを特徴とする。
【0015】
請求項2記載のスロットルセンサは、請求項1記載のスロットルセンサにおいて、前記ハンドルバーの中心軸方向の一方側に突出する突出部を前記ギヤと別部材で構成し、前記別部材を前記ハンドルバーの中心軸方向の一方側に付勢する付勢部材をさらに有
し、前記中心軸方向に関して前記別部材は前記ギヤに対して自在に動くことを特徴とする。
【0016】
請求項3記載のスロットルセンサは、請求項1又は2記載のスロットルセンサにおいて、前記ギヤは前記ハンドルバーの中心軸方向の両側のそれぞれにおいて複数の前記突出部を有し、複数の前記突出部は前記ギヤの回転方向に関して等間隔に配置されることを特徴とする。
【0017】
請求項4記載のスロットルセンサは、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスロットルセンサにおいて、前記突出部は前記ハウジングへ直接的に当接することを特徴とする。
【0018】
請求項5記載のスロットルセンサは、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスロットルセンサにおいて、前記突出部は前記ハウジングへ間接的に当接し、前記突出部及び前記ハウジングの間には板状部材が介在し、前記板状部材は前記ギヤの回転方向に関して前記ハウジングに対する相対的な移動が規制されることを特徴とする。
【0019】
請求項6記載のスロットルセンサは、請求項
5記載のスロットルセンサにおいて、前記突出部は樹脂からなり、前記板状部材は金属からなることを特徴とする。
【0020】
請求項7記載のスロットルセンサは、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のスロットルセンサにおいて、前記ハウジングは少なくとも2つの部材に分割されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スロットルグリップの回転に連動して回転するギヤにおいて、ハンドルバーの中心軸方向の両側に突出する突出部はハウジングへ当接するため、ハウジングに対して摺動することにより、回転負荷としての摩擦力を生じさせるが、突出部はギヤの回転方向に関して当該ギヤに対する相対的な移動が規制されるので、突出部は常にギヤと共に回転して必ずハウジングに対して摺動する。その結果、スロットルグリップの回転負荷を安定して発生させることができる。
【0022】
また、本発明によれば、ギヤの突出部はハンドルバーの中心軸方向の両側へ向けてギヤから部分的に突出するため、ハンドルバーの中心軸方向に対して垂直且つ広範囲に展開しない。その結果、スロットルセンサのハウジング内において構成部品を適切に配置することができ、もって、スロットルセンサを大型化する必要を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係るスロットルセンサを内蔵するハンドルスイッチアッシーの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1のハンドルスイッチアッシーの構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図3】
図2におけるスロットルセンサを車両の後方から眺めた場合の構成を示す分解斜視図である。
【
図4】
図2におけるスロットルセンサを車両の前方から眺めた場合の構成を示す分解斜視図である。
【
図5】
図2におけるスロットルセンサを先端側から眺めた側面図である。
【
図6】
図5における線VI−VIに沿う断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るスロットルセンサの第1の変形例を車両の前方から眺めた場合の構成を示す分解斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係るスロットルセンサの第2の変形例を車両の前方から眺めた場合の構成を示す分解斜視図である。
【
図9】従来のスロットルセンサにおける回転負荷発生機構の構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係るスロットルセンサを内蔵するハンドルスイッチアッシーの外観を示す斜視図であり、
図2は、
図1のハンドルスイッチアッシーの構成を概略的に示す分解斜視図である。なお、
図2において、ハンドルバーは図示されないが、ハンドルバーの中心軸(以下、単に「中心軸」という。)は一点鎖線で図示される。
【0026】
図1及び
図2において、ハンドルスイッチアッシー10は、スロットルグリップ16に隣接するようにハンドルバーへ取り付けられ、テーパ状の円筒形状を呈する本体11と、該本体11の表面において円周方向へ順に配列されたスタータースイッチ12、ハザードスイッチ13及びエンジンストップスイッチ14とを備える。本体11はスロットルグリップ16側の端部において環状の膨張部11aを有し、該膨張部11aにおいて略円環状のスロットルセンサ15を内蔵する。また、本体11は、
図2に示すように、車両の前後方向に関して2つの部材11b、11cに分割される。
【0027】
本体11が2つの部材11b、11cに分割されたときに、スタータースイッチ12、ハザードスイッチ13、エンジンストップスイッチ14やスロットルセンサ15が本体11の内部へ組み込まれ、特に、スロットルセンサ15は中心軸と同軸に配置されるが、スロットルセンサ15が本体11の内部へ組み込まれた際、スロットルセンサ15の一部、具体的には、後述する主動ギヤ20の係合部23が本体11の側面から突出して、スロットルセンサ15と同様に中心軸と同軸に配置されるスロットルグリップ16と係合し、スロットルグリップ16の回転が主動ギヤ20に伝達され、主動ギヤ20はスロットルグリップ16の回転に連動して回転する。
【0028】
なお、本実施の形態では、ハンドルスイッチアッシー10がスタータースイッチ12、ハザードスイッチ13及びエンジンストップスイッチ14を備えるが、スイッチの数は用途に応じて変更される。
【0029】
図3及び
図4は、
図2におけるスロットルセンサの構成を示す分解斜視図であり、
図3は車両の後方から眺めた場合を示し、
図4は車両の前方から眺めた場合を示す。なお、
図3及び
図4において、ハンドルバーは図示されないが、中心軸は一点鎖線で図示される。
【0030】
図3及び
図4において、スロットルセンサ15は、ハンドルバーの車両(根本)側から先端側へ向けて順位配置されたセンサケース17と、第1の摺動板18(板状部材)と、リターンスプリング19と、主動ギヤ20と、第2の摺動板21(板状部材)と、センサカバー22とを有する。
【0031】
センサケース17は、中心軸と同軸に配置された円筒部材からなり、ハンドルバーの先端側(以下、単に「先端側」という。)の端部が開放されている。また、センサケース17は、略中心において中心軸と同軸に形成され且つ両端が開放されている円筒状のハンドルバー挿入部17aを有し、ハンドルバー挿入部17aにハンドルバーが挿通される。さらに、センサケース17は、中心軸からオフセットして配置され、且つ中心軸と平行に延伸する従動ギヤ軸17bを有する。
【0032】
スロットルセンサ15はビス32によって本体11における部材11bへ固定的に取り付けられ、ビス(図示しない)によって組み合わされる部材11bと部材11cとがハンドルバーを締め付ける際、部材11cに設けられた位置決めピン11dはハンドルバーに設けられる位置決めピン穴(図示しない)に挿入される。すなわち、スロットルセンサ15は部材11bや部材11cを介してハンドルバーに固定されるため、スロットルセンサ15のセンサケース17はハンドルバーに対して相対的に移動しない。
【0033】
第1の摺動板18は、金属、例えば、ステンレスからなる環状板部材からなり、略中心において開口する円形開口18aと、後述する摺動ピン29が当接する範囲において径方向へ扇状に展伸する摺動部18bを有する。
【0034】
リターンスプリング19は、中心軸周りに巻回されたバネからなり、中心軸周りの変位に対する反発力を発生し、バネの両端のそれぞれが屈曲されて形成されたフック19a,19bを有する。
【0035】
主動ギヤ20は、中心軸周りに回転し、周縁の一部に歯が形成された平歯車からなり、中心軸に沿って先端側へ突出する、側面の一部が欠落した円筒からなる係合部23と、該係合部23を囲むように形成されたフランジ部24と、該フランジ部24から先端側へ突出する複数の摺動突起25(突出部)と、当該主動ギヤ20の周縁近傍からハンドルバーの車両側(以下、単に「車両側」という。)へ突出する複数のピンボス26とを有する。主動ギヤ20では、平歯車、係合部23、摺動突起25及びピンボス26は可塑性材料、例えば、樹脂からなり、インジェクション法等によって一体的に形成される。
【0036】
第2の摺動板21は、金属、例えば、ステンレスからなる環状板部材からなり、略中心において開口する円形開口21aと、摺動突起25が当接する範囲において径方向へ扇状に展伸する摺動部21bを有する。なお、本実施の形態では、第2の摺動板21は第1の摺動板18と同一形状の部品によって構成されるが、第2の摺動板21を第1の摺動板18と別形状の部品によって構成してもよい。
【0037】
センサカバー22は、略円環状の板状部材からなり、略中心において開口する円形開口22aを有する。センサカバー22とセンサケース17はねじ28によって互いに接合されてハウジング27を形成する。
【0038】
第1の摺動板18、リターンスプリング19、主動ギヤ20及び第2の摺動板21がハウジング27に収容される際、センサケース17のハンドルバー挿入部17aが第1の摺動板18の円形開口18a、リターンスプリング19、主動ギヤ20の係合部23及び第2の摺動板21の円形開口21aに挿通されるので、第1の摺動板18、リターンスプリング19、主動ギヤ20及び第2の摺動板21がハンドルバー挿入部17aに関して同軸に、引いては、中心軸に関して同軸に配列される。このとき、主動ギヤ20の係合部23はハウジング27の側面から突出するが、さらに、本体11の側面から突出してスロットルグリップ16と係合する。
【0039】
スロットルセンサ15は、小径の平歯車からなる従動ギヤ31をさらに有する。従動ギヤ31は従動ギヤ軸17bに回転可能に取り付けられ、従動ギヤ31の歯は主動ギヤ20の歯と噛み合うため、従動ギヤ31は主動ギヤ20の回転に連動して回転する。
【0040】
センサケース17には回転検出基板17c(センサ)が従動ギヤ31に対向するように配置され、回転検出基板17cは従動ギヤ31の回転角、すなわち、スロットルグリップ16の回転角であるスロットル開度を検出し、スロットル開度に対応する電気信号を発生する。
【0041】
主動ギヤ20の各ピンボス26には中心軸に沿うように形成されたピン穴26aが穿設され、ピン穴26aにはピストン状の摺動ピン29(突出部、別部材)が遊合し、該摺動ピン29はピン穴26aに収容されたスプリング30(付勢部材)によって車両側へ向けて付勢される。なお、摺動ピン29は、可塑性材料、例えば、樹脂からなる。
【0042】
主動ギヤ20では、複数の摺動突起25が中心軸周りの主動ギヤ20の回転方向(以下、単に「回転方向」という。)に関して等間隔に配置され、複数のピンボス26も回転方向に関して等間隔に配置される。すなわち、摺動突起25やピンボス26は、回転方向に関して全域に亘って存在することなく、中心軸方向の両側(先端側、車両側)へ向けて部分的に突出する。本実施の形態では、例えば、6つの摺動突起25が回転方向に関して60°ピッチで配置されて車両側へ突出し、2つのピンボス26が回転方向に関して180°ピッチで配置されて先端側へ突出する。なお、2つのピンボス26のそれぞれはフランジ部24を介して摺動突起25と対向する。
【0043】
図5は、
図2におけるスロットルセンサを先端側から眺めた側面図であり、
図6は、
図5における線VI−VIに沿う断面図である。なお、
図6において、右側は先端側に該当し、左側は車両側に該当する。
【0044】
図6において、各摺動ピン29はスプリング30によって車両側へ向けて付勢されて第1の摺動板18の摺動部18bに当接し、主動ギヤ20はスプリング30の付勢力の反力を受け、各摺動突起25は第2の摺動板21の摺動部21bに当接する。
【0045】
主動ギヤ20では、平歯車、各摺動突起25及び各ピンボス26が一体的に形成され、各ピンボス26のピン穴26aには摺動ピン29が挿嵌されるため、摺動突起25や摺動ピン29は、回転方向に関して平歯車に対する相対的な移動が規制されて主動ギヤ20と共に中心軸周りに回転する。
【0046】
また、第1の摺動板18はセンサケース17に対して、例えば、接着又はインサート成形によって取り付けられ、第2の摺動板21はセンサカバー22に対して、例えば、接着又はインサート成形によって取り付けられる。すなわち、第1の摺動板18は回転方向に関してセンサケース17に対する相対的な移動が規制され、第2の摺動板21も回転方向に関してセンサカバー22に対する相対的な移動が規制される。また、上述したように、スロットルセンサ15は本体11における部材11bに固定され、部材11bと組み合わされる部材11cにはハンドルバーに対する周り止め処置が施されるため、スロットルセンサ15のセンサケース17やセンサカバー22はハンドルバーに対して回転方向に移動しない。したがって、第1の摺動板18及び第2の摺動板21は回転方向に関して移動しない。
【0047】
したがって、スロットルグリップ16の回転に伴って主動ギヤ20が中心軸周りに回転する際、各摺動ピン29は摺動部18bに対して摺動し、各摺動突起25は摺動部21bに対して摺動するが、第1の摺動板18及び第2の摺動板21はステンレスからなり、各摺動突起25や各摺動ピン29は樹脂からなるので、上述した摺動の際、各摺動突起25、各摺動ピン29、第1の摺動板18や第2の摺動板21の摩耗を防ぎつつ、各摺動突起25や各摺動ピン29を第1の摺動板18や第2の摺動板21に対して円滑に摺動させることができ、もって、所望値のスロットルグリップ16の回転負荷を容易に実現することができる。なお、各摺動突起25や各摺動ピン29を金属、例えば、アルミやステンレスで構成し、第1の摺動板18や第2の摺動板21を樹脂で構成しても同様の効果を得ることができる。
【0048】
第1の摺動板18や第2の摺動板21において、摺動部18b,21bは回転方向に関して全周に亘って形成される必要はないが、運転者のアクセル操作に対してスロットルグリップ16の回転負荷を付与するために、摺動部18b,21bの回転方向に関する長さは、スロットルグリップ16の回転可能角度に対応する長さよりも大きく設定される。
【0049】
リターンスプリング19のフック19bはセンサケース17に係合し、フック19aは主動ギヤ20に係合するため、リターンスプリング19が発生する中心軸周りの変位に対する反発力は主動ギヤ20に作用する。例えば、
図5において、運転者のアクセル操作によって反時計回りに回転した主動ギヤ20には、リターンスプリング19から時計回りの反発力(モーメント)が作用し、運転者のアクセル操作が終了すると、主動ギヤ20の位置が中心軸周りの回転方向に関して元に戻る。
【0050】
本実施の形態に係るスロットルセンサ15によれば、スロットルグリップ16の回転に連動して回転する主動ギヤ20において中心軸方向の両側(先端側、車両側)に突出する各摺動突起25や各摺動ピン29は、第1の摺動板18や第2の摺動板21へ当接するため、第1の摺動板18や第2の摺動板21に対して摺動することによって回転負荷としての摩擦力を生じさせるが、各摺動突起25や各摺動ピン29は回転方向に関して主動ギヤ20の平歯車に対する相対的な移動が規制される。また、第1の摺動板18や第2の摺動板21は、回転方向に関してセンサカバー22やセンサケース17に対する移動が規制される。したがって、各摺動突起25や各摺動ピン29は常に主動ギヤ20と共に回転して必ず第1の摺動板18や第2の摺動板21に対して摺動する。その結果、スロットルグリップ16の回転負荷を安定して発生させることができる。
【0051】
また、スロットルセンサ15によれば、各摺動突起25や各摺動ピン29は中心軸方向の両側へ向けて主動ギヤ20から部分的に突出するため、中心軸方向に対して垂直且つ広範囲に展開しない。その結果、スロットルセンサ15のハウジング内において構成部品を適切に配置することができ、もって、スロットルセンサ15を大型化する必要を無くすことができる。
【0052】
上述したスロットルセンサ15では、主動ギヤ20と別部材で構成される複数の摺動ピン29が車両側に付勢されるので、複数の摺動ピン29は付勢力によって第1の摺動板18へ確実に当接するとともに、先端側に突出する複数の摺動突起25は付勢力の反力を受けて第2の摺動板21へ確実に当接する。これにより、スロットルグリップ16の回転負荷を確実に発生させることができる。
【0053】
また、上述したスロットルセンサ15では、各摺動突起25や各摺動ピン29は回転方向に関して等間隔に配置されるので、主動ギヤ20には各摺動突起25や各摺動ピン29の当接に起因する反力が回転方向に関して等間隔に作用する。その結果、主動ギヤ20が傾くのを防止することができ、主動ギヤ20の円滑な回転を実現することができる。
【0054】
上述したスロットルセンサ15では、第1の摺動板18や第2の摺動板21が、各摺動突起25や各摺動ピン29と、センサカバー22やセンサケース17との間に介在し、各摺動突起25や各摺動ピン29はセンサカバー22やセンサケース17へ間接的に当接するので、摺動によってセンサカバー22やセンサケース17が摩耗するのを防止することができる。
【0055】
また、上述したスロットルセンサ15では、ハウジング27はセンサケース17及びセンサカバー22に分割されるので、ハウジング27を分割することによって主動ギヤ20をハウジング27へ容易に収容することができる。
【0056】
さらに、上述したスロットルセンサ15では、各摺動ピン29が車両側に付勢されてセンサケース17へ取り付けられた第1の摺動板18に当接する。センサケース17は円筒部材からなり、剛性が高いため、第1の摺動板18へ摺動ピン29を介して付勢力が負荷されても変形しにくく、もって、第1の摺動板18に対する摺動ピン29の円滑な摺動を実現することができる。
【0057】
また、
図7に示すように、各ピンボス26を先端側に突出するように形成して各摺動ピン29を第2の摺動板21の摺動部21bに対して摺動させるとともに、各摺動突起25を車両側に突出するように形成して各摺動突起25を第1の摺動板18の摺動部18bに対して摺動させてもよく、さらに、
図8に示すように、摺動ピン29やスプリング30を廃止してピンボス26を車両側へ延出させ、各ピンボス26を直接第1の摺動板18へ当接させて各ピンボス26を第1の摺動板18の摺動部18bに対して摺動させてもよい。
【0058】
なお、上述したスロットルセンサ15では、ピンボス26(摺動ピン29)や摺動突起25の数、スプリング30の強さを変更することにより、得られるスロットルグリップ16の回転負荷を変更することができるため、スロットルグリップ16の回転負荷の設定値に幅を持たすことができ、回転負荷の設定の自由度を増すことができる。
【0059】
以上、本発明について、上記実施の形態を用いて説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0060】
例えば、上述したスロットルセンサ15では、6つの摺動突起25が回転方向に関して60°ピッチで配置され、2つのピンボス26が回転方向に関して180°ピッチで配置されたが、摺動突起25やピンボス26(摺動ピン29)の数はそれぞれ少なくとも2つ以上であればよい。また、各摺動突起25や各ピンボス26(摺動ピン29)は回転方向に関して等間隔に配置されなくてもよい。但し、主動ギヤ20の傾き抑制の観点からは摺動突起25やピンボス26の数が多い方が好ましく、各摺動突起25や各ピンボス26が回転方向に関して等間隔に配置されるのが好ましい。
【0061】
また、上述したスロットルセンサ15では、第1の摺動板18や第2の摺動板21が、各摺動突起25や各摺動ピン29と、センサカバー22やセンサケース17との間に介在したが、第1の摺動板18や第2の摺動板21を設けることなく、各摺動突起25や各摺動ピン29をセンサカバー22やセンサケース17へ直接的に当接させて、該センサカバー22やセンサケース17に対して摺動させてもよい。これにより、スロットルグリップ16の回転負荷を発生させるためにスロットルセンサ15の構成部品の点数を増やす必要を無くすことができる。
【符号の説明】
【0062】
10 ハンドルスイッチアッシー
15 スロットルセンサ
16 スロットルグリップ
17 センサケース
17c 回転検出基板
18 第1の摺動板
18b,21b 摺動部
20 主動ギヤ
21 第2の摺動板
22 センサカバー
25 摺動突起
26 ピンボス
27 ハウジング
29 摺動ピン
30 スプリング