(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体基板は、前記第一主面側において前記第四半導体領域の周囲を囲むように前記第四半導体領域と前記第五半導体領域との間に位置し、前記第一半導体領域よりも不純物濃度が高い第一導電型の半導体領域を更に有することを特徴とする請求項1に記載の半導体エネルギー線検出素子。
前記半導体基板は、前記半導体基板の側面に前記第一半導体領域が露出しないように前記側面側に位置し、前記第一半導体領域よりも不純物濃度が高い第一導電型の半導体領域を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体エネルギー線検出素子。
前記半導体基板の側面として露出する前記第一半導体領域の表面を覆うように配置され、覆われた前記第一半導体領域の前記表面側に所定の極性の固定電荷を存在させるためのパッシベーション材料からなる膜と、を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体エネルギー線検出素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体エネルギー線検出素子を動作させるために、半導体エネルギー線検出素子に高いバイアス電圧(たとえば、数百〜一千V程度)が印加される。この場合、第一半導体領域は、第三半導体領域から拡がる空乏層が第一主面側から第二半導体領域との界面まで到達した完全空乏化状態とされる必要がある。しかしながら、半導体エネルギー線検出素子に高いバイアス電圧が印加される場合、以下のような問題点が生じる懼れがある。
【0006】
半導体エネルギー線検出素子には、一般に、半導体エネルギー線検出素子からの信号を読み出すROIC(Read-out IC)チップが接続される。半導体エネルギー線検出素子とROICチップとは、対応する電極同士がバンプ接続されるため、互いに近接して配置される。半導体エネルギー線検出素子に高いバイアス電圧が印加されると、上記外縁半導体領域が、第一半導体領域と同じ導電型であるため、外縁半導体領域の電位が第一半導体領域と同程度の高電位となる。このため、ROICチップと外縁半導体領域との間の電位差が大きく、当該外縁半導体領域とROICチップとの間で放電が生じやすい。特に、外縁半導体領域は、半導体基板の外縁の形状(角形状)に起因して電界が集中し易く、放電が生じやすい。ROICチップとの間で放電が生じると、半導体エネルギー線検出素子が破壊されてしまう懼れがある。
【0007】
本発明は、放電の発生を抑制することが可能な半導体エネルギー線検出素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、互いに対向する第一主面と第二主面とを有する半導体基板を備えた半導体エネルギー線検出素子であって、半導体基板は、第一主面側に位置する第一導電型の第一半導体領域と、第二主面側に位置し、第一半導体領域よりも不純物濃度が高い第一導電型の第二半導体領域と、第一主面側に位置し、第一半導体領域とでエネルギー線感応領域を構成する、第二導電型の第三半導体領域と、第一主面側において第三半導体領域が位置する領域の周囲を囲むように位置する、第二導電型の第四半導体領域と、第一主面側において半導体基板の外縁に沿うように位置する、第二導電型の第五半導体領域と、を有する。
【0009】
本発明では、半導体基板は、第一主面側において半導体基板の外縁に沿うように位置する第五半導体領域を有する。第五半導体領域は、第一半導体領域の導電型と異なる、第二導電型であるため、第一半導体領域と第五半導体領域との間で、PN障壁が形成される。これにより、半導体エネルギー線検出素子に高いバイアス電圧が印加される場合、第一半導体領域と第五半導体領域との間で形成されるPN障壁により、電圧降下が生じ、第五半導体領域の電位が第一半導体領域の電位よりも下がる。したがって、半導体基板(第五半導体領域)とROICチップとの電位差が小さくなり、半導体基板とROICチップとの間で放電が生じにくい。
【0010】
半導体基板の形状に起因して、放電は、半導体基板の外縁で生じやすく、半導体基板の側面に沿って放電経路(電流経路)が形成されやすい。本発明では、この電流経路上に、第一半導体領域と第五半導体領域との間で形成されるPN障壁が位置することから、当該電流経路を電流が流れ難い。これによっても、半導体基板とROICチップとの間で放電が生じにくい。
【0011】
半導体基板は、第一主面側において第四半導体領域の周囲を囲むように第四半導体領域と第五半導体領域との間に位置し、第一半導体領域よりも不純物濃度が高い第一導電型の半導体領域を更に有していてもよい。この場合、第一半導体領域が完全空乏化された状態で、空乏層が半導体基板の側面に到達するのが抑制される。
【0012】
半導体基板は、半導体基板の側面に第一半導体領域が露出しないように側面側に位置し、第一半導体領域よりも不純物濃度が高い第一導電型の半導体領域を更に有していてもよい。この場合、第一半導体領域が完全空乏化された状態で、空乏層が半導体基板の側面に到達するのが抑制される。
【0013】
半導体基板の側面として露出する第一半導体領域の表面を覆うように配置され、覆われた第一半導体領域の表面側に所定の極性の固定電荷を存在させるためのパッシベーション材料からなる膜と、を更に備えていてもよい。この場合、上記パッシベーション材料からなる膜で覆われた第一半導体領域の表面側に、所定の極性の固定電荷が存在することとなり、所定の極性の固定電荷が存在している第一半導体領域の上記表面側の領域は、アキュムレーション層として機能する。上記パッシベーション材料からなる膜は、側面側において第一半導体領域が側面に露出しないように位置しているため、空乏層が半導体基板の側面に到達するのが確実に抑制される。
【0014】
第一導電型がP型であると共に、第二導電型がN型であり、パッシベーション材料が、Al
2O
3であってもよい。この場合、上記パッシベーション材料からなる膜で覆われた第一半導体領域の表面側に、正の固定電荷が存在する。
【0015】
半導体基板の第一主面として第二半導体領域と第三半導体領域との間の領域において露出する第一半導体領域の表面を覆うように配置され、覆われた第一半導体領域の表面側に所定の極性の固定電荷を存在させるためのパッシベーション材料からなる膜と、を更に備えていてもよい。この場合、上記パッシベーション材料からなる膜で覆われた第一半導体領域の表面側に、所定の極性の固定電荷が存在することとなり、所定の極性の固定電荷が存在している第一半導体領域の上記表面側の領域は、アキュムレーション層として機能する。上記パッシベーション材料からなる膜は、第二半導体領域と第三半導体領域との間の領域において露出する第一半導体領域の表面を覆うように配置されているため、空乏層が半導体基板の側面に到達するのが抑制される。
【0016】
第一導電型がN型であると共に、第二導電型がP型であり、パッシベーション材料が、SiO
2又はSi
3N
4であってもよい。この場合、上記パッシベーション材料からなる膜で覆われた第一半導体領域の表面側に、負の固定電荷が存在する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放電の発生を抑制することが可能な半導体エネルギー線検出素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る半導体エネルギー線検出素子ED1の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体エネルギー線検出素子の断面構成を説明するための図である。
図2は、本実施形態に係る半導体エネルギー線検出素子の平面図である。
図2では、後述する絶縁膜13、電極15,17,19、パッシベーション膜21、及びバンプ電極23の図示を省略している。
【0021】
半導体エネルギー線検出素子ED1は、
図1に示されるように、半導体基板1を備える。半導体基板1は、互いに対向する一対の主面1a,1bと、側面1cと、を有する、第一導電型(たとえば、P型)のシリコン基板である。側面1cは、一対の主面1a,1b間を連結するように一対の主面1a,1bの対向方向に延びている。本実施形態では、半導体基板1は、
図2に示されるように、平面視で矩形形状を呈しており、4つの側面1cを有する。
【0022】
半導体基板1は、主面1a側に位置する第一導電型(たとえば、P型)の第一半導体領域3と、主面1b側に位置する第一導電型(たとえば、P型)の第二半導体領域5と、を有している。第二半導体領域5は、第一導電型の不純物(硼素など)が添加された領域であり、第一半導体領域3よりも不純物濃度が高い。第二半導体領域5は、たとえば、イオン注入法又は拡散法により、第一導電型の不純物を主面1b側から半導体基板1に添加することにより形成される。
【0023】
半導体基板1は、半導体基板1(第一半導体領域3)の主面1a側に、複数の第二導電型(たとえば、N型)の第三半導体領域7を有している。各第三半導体領域7の間には、第一半導体領域3の一部領域が介在している。すなわち、第三半導体領域7同士は、離隔している。各第三半導体領域7は、第二導電型の不純物(アンチモン、砒素、又はリンなど)が添加された領域であり、第一半導体領域3よりも不純物濃度が高い。半導体エネルギー線検出素子ED1では、第一半導体領域3と各第三半導体領域7とでPN接合が形成されている。すなわち、各第三半導体領域7は、第一半導体領域3とでエネルギー線感応領域を構成している。
【0024】
半導体基板1は、半導体基板1(第一半導体領域3)の主面1a側に、第二導電型(たとえば、N型)の第四及び第五半導体領域9,11を有している。第四及び第五半導体領域9,11も、第二導電型の不純物(アンチモン、砒素、又はリンなど)が添加された領域であり、第一半導体領域3よりも不純物濃度が高い。
【0025】
第四半導体領域9は、
図2に示されるように、主面1aと主面1bとの対向方向から見て、複数の第三半導体領域7が位置する領域の周囲を囲むように位置している。第四半導体領域9は、ガードリングとして機能する。第三半導体領域7と第四半導体領域9との間には、第一半導体領域3の一部領域が介在している。すなわち、第三半導体領域7と第四半導体領域9とは、離隔している。
【0026】
第五半導体領域11は、
図2に示されるように、主面1a側において半導体基板1の外縁に沿うように位置している。第四半導体領域9は、複数の第三半導体領域7が位置する領域と、第五半導体領域11と、の間に位置している。すなわち、第五半導体領域11は、主面1aと主面1bとの対向方向から見て、第四半導体領域9の周囲を囲むように位置している。第四半導体領域9と第五半導体領域11との間には、第一半導体領域3の一部領域が介在している。すなわち、第四半導体領域9と第五半導体領域11とは、離隔している。
【0027】
第三、第四、及び第五半導体領域7,9,11は、たとえば、イオン注入法又は拡散法により、第二導電型の不純物を主面1a側から半導体基板1に添加することにより形成される。
【0028】
半導体基板1には、
図1に示されるように、絶縁膜13及び電極15,17,19が配置されている。絶縁膜13は、半導体基板1の主面1a側に、半導体基板1の主面1aを覆うように、配置されている。絶縁膜13は、たとえばSiO
2からなる。絶縁膜13は、たとえば、熱酸化法、スパッタ法、又はPECVD(Plasma-enhanced Chemical Vapor Deposition)法などにより形成される。電極15,17,19は、半導体領域7,9,11上に形成された絶縁膜13の一部を除去した後、対応する半導体領域7,9,11毎に形成される。これにより、電極15は第三半導体領域7に接続され、電極17は第四半導体領域9に接続され、電極19は第五半導体領域11に接続される。電極15,17,19は、たとえば、アルミニウムなどの電極材料からなる。図示は省略するが、半導体基板1の主面1b側にも、第二半導体領域5に接続される電極が形成される。
【0029】
半導体基板1には、更に、パッシベーション膜21及びバンプ電極23が配置されている。パッシベーション膜21は、半導体基板1の主面1a側に、絶縁膜13及び電極15,17,19覆うように、配置されている。パッシベーション膜21は、たとえばSiNからなる。パッシベーション膜21は、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される。バンプ電極23は、第三半導体領域7上に形成されたパッシベーション膜21の一部を除去した後、対応する第三半導体領域7毎に形成される。バンプ電極23は、対応する電極15とそれぞれ電気的に接続されている。バンプ電極23は、たとえばSn−Agからなる。バンプ電極23の形成方法は、ハンダボールを搭載する手法又は印刷法を用いることができる。電極17,19は、パッシベーション膜21に覆われている。
【0030】
半導体エネルギー線検出素子ED1は、
図1に示されるように、ROICチップRCに実装されている。具体的には、半導体エネルギー線検出素子ED1は、ROICチップRCにバンプ接続される。ROICチップRCは、複数のパッド電極25を備えており、対応するパッド電極25とバンプ電極23とが接続される。半導体エネルギー線検出素子ED1とROICチップRCとは、互いに近接して配置される。半導体基板1の主面1aが、ROICチップRCに対向している。
【0031】
半導体エネルギー線検出素子ED1では、第二半導体領域5と第三半導体領域7との間にバイアス電圧(逆バイアス電圧)が印加されることにより、第三半導体領域7から第一半導体領域3に空乏層が拡がる。空乏層が第二半導体領域5に到達した状態が、完全空乏化状態である。
【0032】
以上のように、本実施形態では、半導体基板1は、主面1a側において半導体基板1の外縁に沿うように位置する第五半導体領域11を有する。第五半導体領域11は、第一半導体領域3の導電型と異なる、第二導電型であるため、第一半導体領域3と第五半導体領域との間で、PN障壁が形成される。これにより、半導体エネルギー線検出素子ED1に高いバイアス電圧(たとえば、数百〜一千V程度)が印加される場合、第一半導体領域3と第五半導体領域11との間で形成されるPN障壁により、電圧降下が生じ、第五半導体領域11の電位が第一半導体領域3の電位よりも下がる。したがって、半導体基板1(第五半導体領域11)とROICチップRCとの電位差が小さくなり、半導体基板1とROICチップRCとの間で放電が生じにくい。
【0033】
半導体基板1の形状に起因して、放電は、半導体基板1の外縁で生じやすく、半導体基板1の側面1cに沿って放電経路(電流経路)が形成されやすい。半導体エネルギー線検出素子ED1では、この電流経路上に、第一半導体領域3と第五半導体領域11との間で形成されるPN障壁が位置することから、当該電流経路を電流が流れ難い。これによっても、半導体基板1とROICチップRCとの間で放電が生じにくい。
【0034】
これらの結果、半導体エネルギー線検出素子ED1では、放電の発生を抑制することができる。なお、第四半導体領域9と第五半導体領域11の間隔を所定の値に設定することにより、空乏層が側面1cに到達することを抑制することは可能である。
【0035】
半導体基板とROICチップとの間の放電を抑制する構成として、半導体基板とROICチップとの電位差が小さくする構成が考えられる。具体的には、半導体基板の端部において、一対の主面側の電位をROICチップの電位と同程度とする両面構造を半導体エネルギー線検出素子に採用することが考えられる。しかしながら、この場合、半導体エネルギー線検出素子を製造するために両面プロセス(Double sided process)を実施する必要があり、製造プロセスの煩雑化及び高コスト化を招く懼れがある。
【0036】
片面プロセス(Single sided process)により半導体エネルギー線検出素子を製造する場合、上述した製造プロセスの煩雑化及び高コスト化を防ぐことができる。片面プロセスにより製造された半導体エネルギー線検出素子では、放電対策として、半導体基板の端部とROICチップとの間に絶縁樹脂を充填する構成が考えられる。しかしながら、この場合には、絶縁樹脂を充填する工程を、半導体エネルギー線検出をROICチップに実装する際に、又は、実装後に、追加する必要があり、結果的に、製造プロセスの煩雑化は避けられない。
【0037】
これらに対して、本実施形態の半導体エネルギー線検出素子ED1では、半導体基板1が、上記第五半導体領域11を有することにより、放電の発生が抑制されるため、製造プロセスの煩雑化及び高コスト化を招くことはない。
【0038】
次に、
図3を参照して、本実施形態の第一変形例に係る半導体エネルギー線検出素子ED2の構成を説明する。
図3は、本実施形態の第一変形例に係る半導体エネルギー線検出素子の断面構成を説明するための図である。
【0039】
半導体エネルギー線検出素子ED2では、半導体基板1は、半導体基板1(第一半導体領域3)の主面1a側に、第一導電型(たとえば、P型)の半導体領域31を有している。半導体領域31は、主面1aと主面1bとの対向方向から見て、第四半導体領域9の周囲を囲むように第四半導体領域9と第五半導体領域11との間に位置している。半導体領域31は、第一導電型の不純物(硼素など)が添加された領域であり、第一半導体領域3よりも不純物濃度が高い。
【0040】
半導体領域31は、第四半導体領域9と第五半導体領域11とに接触している。このため、半導体領域31における不純物濃度は、第三、第四、及び第五半導体領域7,9,11における不純物濃度より低いことが好ましい。半導体領域31の厚みは、第三、第四、及び第五半導体領域7,9,11の厚みよりも小さい。
【0041】
半導体領域31は、たとえばイオン注入法により形成される。半導体領域31が、所定の開口が形成されたマスクを用いることなくイオン注入法により形成される場合、半導体基板1の主面1aとして露出している第一半導体領域3の表面側に、第一導電型(たとえば、P型)の半導体領域33も形成される。半導体領域33は、第三半導体領域7同士の間、及び、第三半導体領域7と第四半導体領域9との間に、それぞれ形成される。半導体基板1の主面1aとして露出している第三、第四、及び第五半導体領域7,9,11の表面側にも、第一導電型(たとえば、P型)の不純物が存在する領域35が形成される。この場合でも、半導体領域31,33における不純物濃度が、第三、第四、及び第五半導体領域7,9,11における不純物濃度より低く設定されることにより、第三、第四、及び第五半導体領域7,9,11の機能に支障が生じるのを抑制できる。
【0042】
本変形例では、半導体基板1が、主面1a側において第四半導体領域9の周囲を囲むように第四半導体領域9と第五半導体領域11との間に位置し、第一半導体領域3よりも不純物濃度が高い第一導電型の半導体領域31を有している。これにより、第一半導体領域3が完全空乏化された状態で、空乏層が半導体基板1の側面1cに到達するのが抑制される。
【0043】
次に、
図4及び
図5を参照して、本実施形態の第二変形例に係る半導体エネルギー線検出素子ED3の構成を説明する。
図4は、本実施形態の第二変形例に係る半導体エネルギー線検出素子の断面構成を説明するための図である。
図5は、本第二変形例に係る半導体エネルギー線検出素子の平面図である。
図5では、
図2と同様に、絶縁膜13、電極15,17,19、パッシベーション膜21、及びバンプ電極23の図示を省略している。
【0044】
半導体エネルギー線検出素子ED3では、半導体基板1は、半導体基板1(第一半導体領域3)の主面1a側に、第一導電型(たとえば、P型)の半導体領域37を有している。半導体領域37は、主面1aと主面1bとの対向方向から見て、第四半導体領域9の周囲を囲むように第四半導体領域9と第五半導体領域11との間に位置している。半導体領域37は、第一導電型の不純物(硼素など)が添加された領域であり、第一半導体領域3よりも不純物濃度が高い。半導体領域37は、たとえば、イオン注入法又は拡散法により、第一導電型の不純物を主面1a側から半導体基板1に添加することにより形成される。
【0045】
第四半導体領域9と半導体領域37との間には、第一半導体領域3の一部領域が介在しており、第五半導体領域11と半導体領域37との間にも、第一半導体領域3の一部領域が介在している。すなわち、第四半導体領域9と半導体領域37とは離隔していると共に、第五半導体領域11と半導体領域37とは離隔している。したがって、半導体領域37の不純物濃度は、上述した半導体領域31の不純物濃度よりも高く設定することができる。半導体領域37における不純物濃度は、第三、第四、及び第五半導体領域7,9,11における不純物濃度と同程度であってもよい。半導体領域37の厚みは、第三、第四、及び第五半導体領域7,9,11の厚みよりも小さい。
【0046】
本変形例では、半導体基板1が、主面1a側において第四半導体領域9の周囲を囲むように第四半導体領域9と第五半導体領域11との間に位置し、第一半導体領域3よりも不純物濃度が高い第一導電型の半導体領域37を有している。これにより、第一半導体領域3が完全空乏化された状態で、空乏層が半導体基板1の側面1cに到達するのが抑制される。
【0047】
次に、
図6を参照して、本実施形態の第三変形例に係る半導体エネルギー線検出素子ED4の構成を説明する。
図6は、本実施形態の第三変形例に係る半導体エネルギー線検出素子の断面構成を説明するための図である。
【0048】
半導体エネルギー線検出素子ED4では、半導体基板1は、第一半導体領域3が側面1cに露出しないように側面1c側に位置する半導体領域39を有している。半導体領域39は、第一半導体領域3が側面1cに露出しないように、一対の主面1a,1bの対向方向に延びている。半導体領域39における主面1a側の縁は、第五半導体領域11に接触している。半導体領域39における主面1b側の縁は、第二半導体領域5に接触している。半導体領域39は、第一導電型の不純物(硼素など)が添加された領域であり、第一半導体領域3よりも不純物濃度が高い。半導体領域39は、第五半導体領域11と接触しているため、半導体領域39における不純物濃度は、第五半導体領域11における不純物濃度より低いことが好ましい。半導体領域39は、たとえばイオン注入法により形成される。
【0049】
本変形例では、半導体基板1が、第一半導体領域3が側面1cに露出しないように側面1c側に位置し、第一半導体領域3よりも不純物濃度が高い第一導電型の半導体領域39を有している。これにより、第一半導体領域3が完全空乏化された状態で、空乏層が半導体基板1の側面1cに到達するのが抑制される。
【0050】
本変形例では、半導体基板1は、必ずしも半導体領域37を有している必要はない。しかしながら、上述したように、半導体領域39の不純物濃度が比較的低く設定されるので、空乏層が半導体基板1の側面1cに到達するのを確実に抑制するためには、半導体基板1は、半導体領域37を有していることが好ましい。
【0051】
次に、
図7を参照して、本実施形態の第四変形例に係る半導体エネルギー線検出素子ED5の構成を説明する。
図7は、本実施形態の第四変形例に係る半導体エネルギー線検出素子の断面構成を説明するための図である。
【0052】
半導体エネルギー線検出素子ED5は、Al
2O
3からなる膜41を備えている。膜41は、半導体基板1の側面1cとして露出する第一半導体領域3の表面を覆うように配置されている。Al
2O
3は、覆われた第一半導体領域3の表面側に正の固定電荷を存在させるためのパッシベーション材料である。膜41は、半導体基板1の側面1c上に形成され、側面1cが膜41で覆われる。すなわち、第一半導体領域3だけでなく、半導体基板1の側面1cとして露出する第二半導体領域5及び第五半導体領域11の表面も、膜41で覆われている。膜41は、たとえば、ALD(Atomic Layer Deposition)法により成膜される。
【0053】
半導体エネルギー線検出素子ED5では、Al
2O
3からなる膜41で覆われた第一半導体領域3の表面側には、正の固定電荷が存在する。正の固定電荷が存在している第一半導体領域3の上記表面側の領域は、アキュムレーション層43として機能する。膜41は、第一半導体領域3の表面上において、第五半導体領域11との界面と、第二半導体領域5との界面と、にわたって半導体基板1の厚み方向に延びている。これにより、第一半導体領域3が完全空乏化された状態で、空乏層が半導体基板1の側面1cに到達するのが抑制される。
【0054】
膜41は、半導体基板1の側面1cにおいて、第一半導体領域3の表面だけでなく、第二半導体領域5及び第五半導体領域11の表面も覆っている。これにより、第一半導体領域3の上記表面が、膜41で確実に覆われるため、空乏層が第一半導体領域3の上記表面(半導体基板1の側面1c)に到達するのをより一層確実に抑制することができる。
【0055】
本変形例においても、半導体基板1は、必ずしも半導体領域37を有している必要はない。しかしながら、空乏層が半導体基板1の側面1cに到達するのを確実に抑制するためには、半導体基板1は、半導体領域37を有していることが好ましい。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0057】
第一導電型がN型であると共に、第二導電型がP型であってもよい。この場合には、絶縁膜13が、上述したSiO
2、又はSi
3N
4からなることが好ましい。SiO
2又はSi
3N
4は、覆われたN型の第一半導体領域3の表面側に負の固定電荷を存在させるためのパッシベーション材料である。
【0058】
絶縁膜13は、半導体基板1の主面1aとして露出する第一半導体領域3の表面を覆うように配置されている。したがって、絶縁膜13が、SiO
2又はSi
3N
4からなる場合、絶縁膜13で覆われた第一半導体領域3の表面側には、負の固定電荷が存在する。負の固定電荷が存在している第一半導体領域3の上記表面側の領域は、
図8に示されるように、アキュムレーション層45として機能する。アキュムレーション層45のうち、第四半導体領域9と第五半導体領域11との間に位置する領域は、第四半導体領域9と第五半導体領域11とを電気的に分離する。これにより、第一半導体領域3が完全空乏化された状態で、空乏層が半導体基板1の側面1cに到達するのが抑制される。
【0059】
半導体基板1の形状、第三半導体領域7の数及び形状、並びに、第四及び第五半導体領域9,11の形状は、上述した実施形態及び変形例に限られない。