特許第6170383号(P6170383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太平洋マテリアル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6170383-タイル接着材 図000019
  • 特許6170383-タイル接着材 図000020
  • 特許6170383-タイル接着材 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170383
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】タイル接着材
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20170713BHJP
   C04B 16/08 20060101ALI20170713BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20170713BHJP
   C04B 24/24 20060101ALI20170713BHJP
   C04B 14/42 20060101ALI20170713BHJP
   C04B 14/38 20060101ALI20170713BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20170713BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20170713BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B16/08
   C04B22/14 A
   C04B22/14 B
   C04B24/24 A
   C04B14/42 Z
   C04B14/38 A
   C04B16/06 B
   C04B18/08 Z
   C04B24/38 B
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-181941(P2013-181941)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-48283(P2015-48283A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 俊之
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−012621(JP,A)
【文献】 特開2010−150075(JP,A)
【文献】 特開2010−132477(JP,A)
【文献】 特開2012−116694(JP,A)
【文献】 特開2009−084092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セメント100質量部に対し、(B1)粒径0.09〜2.0mmの軽量細骨材と(B2)普通細骨材92〜160質量部とからなる(B)細骨材を97〜161質量部、(C)硫酸塩を0.10〜2.53質量部、(D)再乳化形粉末樹脂及びポリマーディスパージョンから選ばれるポリマーを固形分換算で0.04〜6.0質量部、(E)繊維長13〜25mmの耐アルカリ性繊維を0.3〜1.9質量部含有し、(B)細骨材中の(B1)軽量細骨材の質量比((B1)/(B1)+(B2))が0.002〜0.037であり、(D)ポリマーと(E)耐アルカリ性繊維の質量比(D/E)が0.021〜20.0であるタイル接着材。
【請求項2】
(A)セメント100質量部に対し、(G)ポゾラン物質を5〜11質量部含有する請求項1記載のタイル接着材。
【請求項3】
(F)保水剤を含有し、(F)保水剤と(D)再乳化形粉末樹脂及びポリマーディスパージョンから選ばれるポリマーとの質量比(F/D)が0.06〜15.00である請求項1又は2記載のタイル接着材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形追従性と施工性に優れたポリマーセメント系弾性タイル接着材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集合住宅の外壁、エントランス部の内壁、床、室内の床等にタイルが施工されることが多く、その場合の張付け材としては施工が容易であることから変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが使用されることが増えてきている。タイルを外壁に使用する場合には、躯体コンクリートの含水率が高い場合には良好な付着力が得られ難いという課題がある。
【0003】
一般に外壁にタイルを張り付ける場合は、剥落の危険を考慮して付着強度の高いセメントモルタルを用いて張り付けている。その場合、施工費用を低廉化するため、躯体コンクリートに直接セメントモルタルで張り付ける直張り工法を採用する事例が増加してきた。直張り工法は、施工管理が難しく、施工面積が大きい現場では、躯体コンクリートとの付着力を施工箇所全体に安定的に出すことが困難である。そのため、水溶性高分子エマルジョンや再乳化形粉末樹脂を使用することにより躯体コンクリートとの付着力の向上と安定性を図る技術が報告されている(特許文献1)。また、非イオン性水溶性セルロースエーテルと水に溶けてマイナス電荷を持つポリアクリル化合物を混和し、タイルを張り付けた後ダレにくいタイル接着材が考案されている(特許文献2)。その他、非イオン性水溶性セルロースエーテルとセメントに対し凝集効果を示す凝集性水溶性高分子を混和することでタイルを施工後ダレにくいタイル接着材が考案されている(特許文献3)。また、モルタル硬化後の乾燥収縮や膨張等に追従させるためガラス転移温度が−50〜10 ℃ のセメント混和用ポリマーと繊維長2〜10mmの短繊維を混和したタイル接着材が考案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−299220号公報
【特許文献2】特開平9−255395号公報
【特許文献3】特開平10−17353号公報
【特許文献4】特開2004−189569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、軽量骨材とポリマーの併用や非イオン性水溶性セルロースエーテル、ガラス転移温度が−50〜10℃のセメント混和用ポリマーを混和して施工性の改善とタイルの熱膨張と収縮に追従させようとしてもその機能には限界があった。セルロースエーテルを使用したタイル接着材は施工性を改善したが、変形追従性は改善されていないため、近年頻発する地震による変形には追従できない恐れがある。軽量骨材を使用したタイル接着材は、従来から使用されてきたセメント、普通細骨材、粉末樹脂を使用したタイル接着材と骨材粒度、骨材粒径、比重が違い、タイルの裏足に十分充填されない恐れがあり、タイルとタイル接着材の界面で破断する恐れがある。
従って、本発明の課題は、タイルの熱膨張と収縮だけでなく、地震による変形にも追従し、長期間安定して高い付着強度を有し、かつコテ作業性、タイルとの接着性等の施工性も良好なタイル接着材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、タイル接着材について種々検討した結果、普通細骨材と軽量細骨材の量、又は骨材中の軽量細骨材の質量比、ポリマーと耐アルカリ性繊維の質量比をある一定の範囲で調整することにより、コテ作業性とタイルとの密着性等の施工性を向上し、さらにタイルの熱膨張と収縮に追従し、さらに地震による変形にも追従し長期間安定して高い付着強度を発現するタイル接着材が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔3〕を提供するものである。
【0008】
〔1〕(A)セメント100質量部に対し、(B1)粒径0.09〜2.0mmの軽量細骨材と(B2)普通細骨材92〜160質量部とからなる(B)細骨材を97〜161質量部、(C)硫酸塩を0.10〜2.53質量部、(D)再乳化形粉末樹脂及びポリマーディスパージョンから選ばれるポリマーを固形分換算で0.04〜6.0質量部、(E)繊維長13〜25mmの耐アルカリ性繊維を0.3〜1.9質量部含有し、(B)細骨材中の(B1)軽量細骨材の質量比((B1)/(B1)+(B2))が0.002〜0.037であり、(D)ポリマーと(E)耐アルカリ性繊維の質量比(D/E)が0.021〜20.0であるタイル接着材。
〔2〕(A)セメント100質量部に対し、(G)ポゾラン物質を5〜11質量部含有する〔1〕記載のタイル接着材。
〔3〕(F)保水剤を含有し、(F)保水剤と(D)再乳化形粉末樹脂及びポリマーディスパージョンから選ばれるポリマーとの質量比(F/D)が0.06〜15.00である〔1〕又は〔2〕記載のタイル接着材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によりコテ作業性、タイルとの密着性等の施工性に優れ、さらに変形追従にも優れ、長期間安定的に高い付着強度を発現するタイル接着材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】曲げタフネス試験における一次曲げ強さ及び二次曲げ強さの評価方法を示す図である。
図2】熱冷繰り返しによる付着強さ試験方法におけるタイルの張り付け状態を示す図である。
図3】コテ作業性及びタイルとの密着性の評価試験におけるタイルの張り付け状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のタイル接着材は、硬化成分としてセメントを含有する。本発明の(A)セメントとしては、市販のポルトランドセメントが使用可能である。例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントなどが使用できる。その他、高炉セメント、シリカセメント等の混合セメント、白色セメント、アルミナセメント、ジェットセメント等の特殊セメントも使用可能である。
【0012】
本発明のタイル接着材は、(B)細骨材を含有し、その細骨材は(B1)粒径0.09〜2.0mmの軽量骨材と(B2)普通細骨材とからなる。
本発明に用いられる(B1)軽量細骨材としては、有機材質の軽量細骨材、特に断熱性及び防変性を付与するうえで、気孔率の高い軽量細骨材が好ましい。例えば気孔率40〜90%の軽量細骨材が好ましく、さらに気孔率50〜90%の軽量骨材がより好ましい。具体例としては、エチレン酢酸ビニル共重合体発泡体が挙げられる。軽量細骨材の粒径は、施工性及び強度の点から0.09〜2.0mmが好ましく、さらに0.15〜2.0mmが好ましい。なお、本発明において施工性には、通常の流動性に加えて、ポットライフ(左官工法で塗り付け可能な時間)及びオープンタイム(接着材が接着性を有している時間)が十分であることが含まれる。
【0013】
(B1)軽量細骨材の配合量は、タイル接着材のヤング率が大きくなり、曲げじん性、変形追従性が低下するのを防ぐ点及び施工性と強度を確保する点から、(A)セメント100質量部に対し0.3〜3.6質量部が好ましく、0.4〜2.4質量部がより好ましい。
【0014】
(B2)普通細骨材としては、珪砂、寒水石、石灰砂、川砂、陸砂、砕砂等が挙げられ、その粒径は1.2〜0.045mmが好ましい。粗粒率は、1.4〜1.9が好ましい。(B2)普通細骨材の配合量は、(A)セメント100質量部に対し92〜160質量部が好ましく、94〜160質量部がより好ましく、100〜160質量部がさらに好ましく、100〜113質量部がさらに好ましい。92質量部未満では、強度が低下し混和した効果がない。160質量部を超えるとタイル接着材のヤング率が大きくなり、曲げじん性、変形追従性が低下する。
【0015】
(B)細骨材(軽量細骨材及び普通細骨材)の合計含有量は、(A)セメント100質量部に対し、95〜161質量部が好ましく、97〜161質量部がより好ましく、100〜161質量部がさらに好ましく、100〜120質量部がさらに好ましい。(B)細骨材が97質量部未満では、強度が低下し混和した効果がない。161質量部を超えるとタイル接着材のヤング率が大きくなり、曲げじん性、変形追従性が低下する。
【0016】
(B1)軽量細骨材と(B)細骨材の質量比(B1/(B1+B2))で0.002〜0.037である。当該質量比(B1/(B1+B2))が0.002未満では、タイル接着材のヤング率が大きくなり、曲げじん性、変形追従性が低下する。質量比(B1/(B1+B2))が0.037を超えると、施工性が低下するとともに強度も低下する。この質量比は、0.003〜0.03がより好ましく、0.005〜0.02がさらに好ましい。
【0017】
(C)硫酸塩としては、二水石膏、II型無水石膏、硫酸マグネシウム等アルカリ土類金属硫酸塩が凝結調整剤として使用可能である。これらを2種以上併用することも可能であるが、1種のみの使用で十分である。
【0018】
(C)硫酸塩の配合量は、(A)セメント100質量部に対し0.10〜2.53質量部が好ましく、0.16〜2.40質量部がより好ましく、0.20〜2.40質量部がさらに好ましい。0.10未満では混和した効果が得られず、2.53質量部を超えると施工性が低下するとともに付着強さが低下する。
【0019】
(D)ポリマーとしては、再乳化形粉末樹脂、ポリマーディスパージョンが使用可能である。再乳化形粉末樹脂としては、JIS A 6203に規定されたものを使用でき、ポリマーディスパージョンとしては、同じくJIS A 6203に規定されたものを使用することができる。すなわち、前記再乳化形粉末樹脂としては、エチレン酢酸ビニル、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニル/アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルなどを主成分とする粉末状の樹脂を使用することができる。また、再乳化形粉末樹脂の製造方法は限定されることなく、粉末化方法やブロッキング防止法などのいずれの製法によって製造してもよい。また、前記ポリマーディスパージョンとしては、エチレン酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、又はスチレンブタジエンなどを主成分とする樹脂を使用することができる。
【0020】
(D)ポリマーの配合量は、(A)セメント100質量部に対し固形分換算で0.04〜6.0質量 部が好ましく、0.04〜5.0質量部がより好ましく、1.0〜4.0質量部がさらに好ましい。0.04質量部未満では、躯体コンクリートと タイルへの付着力が低下し、さらに変形追従性も低下する。6.0質量部を超えるとタイルを張り付け る際、ずれが発生し、施工性が低下する。
【0021】
本発明に使用できる(E)耐アルカリ繊維は、タイル接着材としてタイルとの密着性と曲げ強度を低下させないように、繊維長13〜25mmが好ましい。市販の繊維には短繊維と収束型があるがどちらも使用可能である。耐アルカリ性を有すればモルタルに混和可能な有機繊維、ガラス繊維とも使用可能であり、併用することも可能である。有機繊維としては、カーボン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル等が使用可能であり、ガラス繊維は耐アルカリ性を有するガラス繊維が使用可能である。
【0022】
タイルとの密着性、曲げ強度、コテ作業性を同時に向上させるためには、ダレ防止、コテ作業性の向上に有用な繊維長が13〜25mmの繊維を使用することが効果的である。繊維長が13mm未満では、ダレ防止、コテ作業性の向上には有用であるが、モルタル破断時にモルタルとの付着性が失われる恐れがある。25mmを超えると曲げ強度は向上するがコテ作業性は低下する。耐アルカリ繊維の使用量は、(A)セメント100質量部に対し0.3〜1.9質量部が好ましく、0.4〜1.4質量部がより好ましく、0.4〜1.2質量部がさらに好ましい。0.3質量部未満では混和した効果がなく、1.9質量部を超えるとコテ作業性が低下し混和した効果が失われる。
【0023】
本発明のタイル接着材の(D)ポリマーと(E)耐アルカリ性繊維の質量比(D/E)を0.021〜20.0に調整することにより曲げタフネス、タイルとの密着性、曲げ強度を向上させることが可能である。0.029〜16.7がより好ましく、0.030〜13.3がさらに好ましい。
【0024】
本発明のタイル接着材においては、さらに(F)保水剤を含有するのが好ましい。(F)保水剤としてはセルロース誘導体が好ましい。(F)保水剤に使用するセルロース誘導体としては、水に溶解するものであればいずれのものでも良く、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸エステル等の水溶性セルロース誘導体が挙げられる。これらの中でもメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースが好ましい。
【0025】
)保水剤の配合量は、ドライアウト防止、施工性及び凝結遅延防止の点から、(A)セメント100質量部に対し0.30〜0.54質量部が好ましく、0.31〜0.54質量部がより好ましい。
【0026】
本発明においては、(F)保水剤と(D)ポリマーをタイル接着材に混和することにより保水性及び躯体コンクリートとタイルへの付着力を向上させることが可能である。しかし、粘性が増すため施工性は低下する。(F)保水剤と(D)ポリマーの配合比を質量比(F/D)で0.06〜15.00に調整することによりタイル接着材のコテ塗り作業性を向上しタイルのずれを防止することが可能である。
【0027】
その他本発明のタイル接着材には(G)ポゾラン物質が混和することができる例えばJISA6201に規定するフライアッシュあるいは分級して最大粒径20μmにしたフライアッシュ、ブレーン比表面積10000cm2/g以上のメタカオリンなどである。配合量は、(A)セメント100質量部に対し5〜11質量部が好ましい。
【0028】
本発明のタイル接着材の製造方法は、特に限定されるものではなく、一般的なセメントモルタルやセメントペーストと概ね同様な方法で製造することができる。例えば、市販のモルタルミキサーに配合材料を投入し、適宜練り混ぜるだけで容易に得ることができる。
【0029】
本発明のタイル接着材を練り混ぜる際の水量は(A)セメント100質量部に対し44〜58質量部が好ましく、より好ましくは45〜56質量部であり、さらに好ましくは47〜52質量部である。
【0030】
また、本発明のタイル接着材の施工は、従来から行われているコテ塗りによる左官工法で例えば床面や壁面の何れにも施工することができる。本発明のタイル接着材施工後にタイルを張り付けることにより、躯体コンクリートへのタイル張りができる。
【実施例】
【0031】
次に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
【0032】
実施例1〜16及び比較例1〜12
表1記載の材料を用い、表12〜表16記載のタイル接着材を製造した。
【0033】
【表1】
【0034】
得られたタイル接着材を用いて、以下の各種性状を評価した。
【0035】
<フレッシュ性状の確認>
1−1.フロー試験
20℃の試験室でJISR5201により測定した。
1−2.単位容積質量の測定
20℃の試験室で500mlステンレス製容器を用い、JISA1171により測定した。
1−3.保水試験
20℃の試験室で公共建築協会規格に従い、5Aのろ紙を用い60分後の保水率を測定した。
1−4.評価方法
フレッシュ性状の評価は、表2に評価項目と評価基準を示し、表3に評価方法を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
<硬化性状の確認>
2−1.曲げ・圧縮強さ試験
公共建築協会規格に従い、温度20℃湿度60%の実験室で作製した4×4×16cmの供試体を用い、JISR5201に従い、曲げ強さを測定した。尚、供試体は、温度20℃湿度80%に保った養生槽で48時問湿空養生を行った後、所定材齢まで温度20℃湿度60%の試験室で養生を行った。曲げ強さ試験は、材齢28日で実施した。圧縮強さ試験は、曲げ強さ試験の終了した供試体を用いn=6で実施した。試験結果は、それぞれ平均値とした。曲げ・圧縮強さの評価は、表4に評価方法を示す。
【0039】
【表4】
【0040】
2−2.曲げタフネス試験
前記と同様の方法で作製した材齢28日の供試体を用い、たわみ量0.5mm/min一定で中央集中載荷により試験を行った。一次曲げ強さと二次曲げ強さは、図1のように測定した。一次曲げ強さは、試験開始から最大曲げ応力を測定し、(1)式により算出した。二次曲げ強さは、最大曲げ応力発現後から最大変曲点時の曲げ応力とした。二次曲げ強さは、(2)式により算出した。曲げタフネス試験の評価項目を表5に示す。
【0041】
【数1】
【0042】
【表5】
【0043】
2−3.付着強さ試験
タイル業協会規格に従い、温度20℃、湿度60%の実験室で300×300×60mmのコンクリート平板にタイル接着材を4mm厚さで塗り付け、45×45mmタイルを張り付けた。所定材齢まで温度20℃、湿度60%の実験室で養生し、材齢14日で付着強さを測定した。付着強さの評価方法を表6に示す。
【0044】
【表6】
【0045】
2−4.熱冷繰り返しによる付着強さ
日本建築仕上学会規格M−101セメントモルタル塗り用吸水調整材の試験方法により温度20℃、湿度60%の実験室で300×300×60mmのコンクリート平板にタイル接着材を5mm厚さで塗り付け、図2のように、小口タイルを張り付けた。材齢10日でシリコンシーリング材でタイル張付け面以外の5面をシールし、材齢14日で試験を開始した。試験は300サイクル実施し、その後付着強さを測定した。
300サイクル後の付着強さの評価方法を表7に示す。
【0046】
【表7】
【0047】
2−5.硬化性状の評価方法
硬化性状の評価方法を表8に示す。
【0048】
【表8】
【0049】
<施工性の確認>
コテ作業性及びタイルとの密着性の評価試験
20℃の試験室で450×900×60mmコンクリート版に4mm厚さで400×450mmの範囲に金ゴテでタイル接着材を塗り付け、コテ作業性の評価を行った。その後、図3のように、300×300mmの紙シートに張り付けられた45二丁掛けタイル12枚をユニット張り工法でシート1枚張り付けた。5分後に剥がしタイル裏面へのタイル接着材の付着状況を確認した。評価方法を表9に示し評価基準を表10に示す。
【0050】
【表9】
【0051】
【表10】
【0052】
<総合評価>
本発明のタイル接着材の評価は、フレッシュ性状、硬化性状、施工性を総合的に評価する。総合評価方法を表11に示す。
【0053】
【表11】
【0054】
得られた結果を表12〜表16に示す。
【0055】
【表12】
【0056】
【表13】
【0057】
【表14】
【0058】
【表15】
【0059】
【表16】
【0060】
表12〜表16から明らかなように、本発明のタイル接着材は、長期的に優れた曲げタフネスを有し、優れた変形対従性を有するとともに、熱冷繰り返し後も優れた接着性を有していた。また、コテ作業性及び施工時のタイルとの密着性も良好であった。
一方、軽量骨材及び普通細骨材の含有量及び比率や各成分の含有量が本発明の範囲外のタイル接着材は、変形追従性や施工性が十分でなかった。
図1
図2
図3