特許第6170393号(P6170393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170393
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20170713BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20170713BHJP
   F21S 9/03 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   F21S8/10 190
   F21V7/00 590
   F21S9/03
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-197039(P2013-197039)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-64963(P2015-64963A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀忠
【審査官】 河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/122905(WO,A1)
【文献】 特開2011−090793(JP,A)
【文献】 実開平06−045208(JP,U)
【文献】 特開平09−104288(JP,A)
【文献】 特開2004−210125(JP,A)
【文献】 特開2012−190594(JP,A)
【文献】 特開平08−138425(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0196636(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
F21S 9/03
F21V 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
入射した光を灯具前方に投影する投影光学部材と、
前記光源からの光源光を前記投影光学部材に向けて反射する第1状態と、前記光源光を前記投影光学部材外に向けて反射する第2状態とを個別に切り替え可能な複数の光学素子が配列されてなる光学素子アレイと、
前記投影光学部材を通過して前記第2状態にある前記光学素子で反射した太陽光を受光する太陽光受光部材と、
を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記太陽光受光部材は、太陽光を電力に変換する太陽電池であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
当該車両用灯具が灯具前方に光を照射しないとき、前記光学素子アレイの少なくとも一部の光学素子は、前記第2状態に維持されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記光学素子アレイの各光学素子は、給電時に前記第1状態となり、非給電時に前記第2状態となることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記太陽光受光部材は、前記光源から離間した位置に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、特にMEMS(micro electro mechanical systems)ミラーアレイ等の光学素子アレイを用いた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光源と、光源からの光を反射することによって配光を制御するMEMSミラーアレイと、集光レンズとを備えた配光可変ライトが開示されている。この配光可変ライトは、MEMSミラーアレイが備える複数のマイクロミラーのそれぞれをオン/オフ制御することで、所望の配光パターンを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−81975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、例えば車体のルーフにソーラーパネルを設けるなど、太陽光エネルギーの利用が進んできている。しかしながら、車両用灯具における太陽光エネルギーの利用に関しては依然として改善の余地がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、太陽光エネルギーを利用可能な車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、光源と、入射した光を灯具前方に投影する投影光学部材と、光源からの光源光を投影光学部材に向けて反射する第1状態と、光源光を投影光学部材外に向けて反射する第2状態とを個別に切り替え可能な複数の光学素子が配列されてなる光学素子アレイと、投影光学部材を通過して第2状態にある光学素子で反射した太陽光を受光する太陽光受光部材とを備える。
【0007】
太陽光受光部材は、太陽光を電力に変換する太陽電池であってもよい。
【0008】
当該車両用灯具が灯具前方に光を照射しないとき、光学素子アレイの少なくとも一部の光学素子は、第2状態に維持されてもよい。
【0009】
光学素子アレイの各光学素子は、給電時に第1状態となり、非給電時に第2状態となってもよい。
【0010】
太陽光受光部材は、光源から離間した位置に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太陽光エネルギーを利用可能な車両用灯具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。
図2】本実施形態に係る車両用灯具が形成する配光パターンの一例を示す模式図である。
図3】本実施形態に係る車両用灯具が形成する配光パターンの一例を示す模式図である。
図4】本実施形態に係る車両用灯具が形成する配光パターンの一例を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る車両用灯具における太陽光の受光を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る車両用灯具について詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。本実施形態に係る車両用灯具1は、車両前方の左右に配置される一対の前照灯ユニットを有する車両用前照灯装置である。一対の前照灯ユニットは左右対称の構造を有する点以外は実質的に同一の構成であるため、図1には車両用灯具1として一方の前照灯ユニットの構造を示す。
【0015】
車両用灯具1は、車両前方側に開口部を有するランプボディ2と、ランプボディ2の開口部を覆うように取り付けられた透光カバー4とを備える。透光カバー4は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成される。ランプボディ2と透光カバー4とにより形成される灯室3内には、光源10と、第1リフレクタ20と、第2リフレクタ22と、光学素子アレイ30と、光吸収部材40と、投影レンズ50と、太陽電池60とが収容される。各構成要素は、図示しない支持機構によりランプボディ2に取り付けられる。
【0016】
光源10は、LED、半導体レーザ、バルブなどであってよい。光源10は、第1リフレクタ20に向けて光(以下「光源光」と呼ぶ)を照射するよう配置される。第1リフレクタ20は、曲面状の反射面20aを有する。第1リフレクタ20は、光源10からの光源光を光学素子アレイ30に向けて反射する。図1に示すように、光源10および第1リフレクタ20は、灯室3内の高さ方向略中央に配置された投影レンズ50の下方に設けられている。
【0017】
本実施形態の光学素子アレイ30は、複数のマイクロミラーがアレイ状に配列されたMEMSミラーアレイである。各マイクロミラーは、制御部300からの給電の有無に応じて2種類の傾斜角度を切り替えることができる。MEMSミラーアレイは公知であるので、本明細書ではその詳細な構造については説明を省略する。
【0018】
本実施形態において、光学素子アレイ30の各マイクロミラーは、第1リフレクタ20からの光源光を投影レンズ50に向けて反射する傾斜角度の状態(以下「オン状態」と呼ぶ)と、第1リフレクタ20からの光源光を投影レンズ50外に向けて反射する傾斜角度の状態(以下「オフ状態」と呼ぶ)とを個別に切り替え可能である。オン状態とオフ状態とでは、マイクロミラーの傾斜角度が異なり、従って光源光の反射方向が異なる。
【0019】
図1には、一例として、光学素子アレイ30が有する2つのマイクロミラー(第1マイクロミラー30aおよび第2マイクロミラー30b)が図示されている。図1において、第1マイクロミラー30aはオン状態にあり、第2マイクロミラー30bはオフ状態にある。
【0020】
第1リフレクタ20から光学素子アレイ30に向けて反射した後、オン状態にある第1マイクロミラー30aで反射した光源光VL1は、光学素子アレイ30の灯具前方側に配置された投影レンズ50の入射面50aに入射する。一方、第1リフレクタ20から光学素子アレイ30に向けて反射した後、オフ状態にある第2マイクロミラー30bで反射した光源光VL2は、投影レンズ50の入射面50aには入射せず、投影レンズ50から外れた位置に配置された光吸収部材40により吸収される。光吸収部材40は、灯室3内で光源光が不要に乱反射するのを防止するための設けられる。光吸収部材40は、光吸収性樹脂を用いて形成されてよい。
【0021】
投影レンズ50は、例えば、前方側表面及び後方側表面が自由曲面形状を有する自由曲面レンズからなり、投影レンズ50の後方焦点を含む後方焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。投影レンズ50は、その後方焦点が車両用灯具1の光軸上、且つ光学素子アレイ30の光出射面(すなわち、MEMSミラーアレイの反射面)の近傍に位置するように配置される。従って、投影レンズ50は、その入射面50aに入射した光学素子アレイ30からの光を、所定の配光パターンを形成するために灯具前方に投影する。本実施形態では、投影レンズ50から投影された光は、種々のハイビーム用配光パターンを形成可能である。投影されるハイビーム配光パターンについては後述する。
【0022】
本実施形態に係る車両用灯具1において、第2リフレクタ22および太陽光受光部材としての太陽電池60は、太陽光エネルギーを利用するために設けられている。図1に示すように、第2リフレクタ22および太陽電池60は、投影レンズ50の上方に設けられている。第2リフレクタ22は、曲面状の反射面22aを有する。第2リフレクタ22および太陽電池60については後述する。
【0023】
光源10の出射強度調節および光学素子アレイ30の各マイクロミラーの傾斜角度の制御は、制御部300により実行される。制御部300は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。なお、制御部300は、図1では灯室3外に設けられているが、灯室3内に設けられてもよい。制御部300は、撮像装置312に接続された画像処理装置310、図示しないライトスイッチ等からの信号を受信する。そして、制御部300は、受信した信号に応じて、光源10および光学素子アレイ30に各種の制御信号を送信する。
【0024】
図2図4は、本実施形態に係る車両用灯具が形成する配光パターンの一例を示す模式図である。図2図4では、灯具前方の所定位置、例えば灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成された配光パターンを示している。
【0025】
光学素子アレイ30上の略楕円状領域内に位置するマイクロミラーがオン状態とされ、該略楕円状領域外に位置するマイクロミラーがオフ状態とされると、オン状態のマイクロミラーで反射した光が投影レンズ50を介して灯具前方に照射される。これにより、図2に示すように、略楕円形状のハイビーム用配光パターンPHが形成される。
【0026】
また、車両用灯具1は、略楕円状領域内に位置するマイクロミラーの一部をオン状態とし、残部をオフ状態とすることで、所望の形状の配光パターンを形成することができる。例えば、図3に示すように、水平線Hより上方且つ左側に光照射領域を有し、右側に遮光領域が形成された、いわゆる左片ハイ用配光パターンPHLを形成することができる。また、左片ハイ用配光パターンPHLに限らず、右片ハイ用配光パターンや、水平線Hより上方の中央部に遮光領域を有し、この遮光領域の水平方向両側に光照射領域を有するいわゆるスプリット配光パターン等も形成することができる。
【0027】
また、図4に示すように、車両用灯具1は、ハイビーム用配光パターンPHにおける他車両や歩行者と重なる領域に、遮光領域Sを形成することができる。これにより、他車両や歩行者にグレアを与えるおそれの低減と、運転者の視認性の向上との両立を図ることができる。図4では、対向車と重なる位置に遮光領域Sが形成されたハイビーム用配光パターンPHを図示している。遮光領域Sは、例えば次のようにして形成することができる。
【0028】
すなわち、画像処理装置310は、カメラ等の撮像装置312で撮像された画像データを取得し、画像処理を施す。これにより、画像処理装置310は、画像データ中に含まれる車両や歩行者を特定し、これらの位置を検出する。車両や歩行者を特定する技術や位置を検出する技術は公知であるため説明を省略する。検出された車両や歩行者の位置情報は制御部300に送られる。制御部300は、車両や歩行者の位置情報を用いて、ハイビーム用配光パターンPHにおける車両や歩行者の存在位置に遮光領域Sを形成するよう、光学素子アレイ30を制御する。制御部300は、光学素子アレイ30上の略楕円状領域外に位置するマイクロミラーと、略楕円状領域内に位置するマイクロミラーのうち遮光領域Sに対応するマイクロミラーとをオフ状態とし、該略楕円状領域内に位置する他のマイクロミラーをオン状態とする。これにより、ハイビーム用配光パターンPH中に遮光領域Sが形成される。
【0029】
図5は、本発明の実施形態に係る車両用灯具1における太陽光の受光を説明するための図である。本実施形態では、車両用灯具1が灯具前方に光を照射しないとき(例えば昼間時等)、光学素子アレイ30の全てのマイクロミラーは、オフ状態に維持される。図5には、第1マイクロミラー30aおよび第2マイクロミラー30bがオフ状態に維持された様子が図示されている。光学素子アレイ30におけるオフ状態のマイクロミラーは、灯室3内に入射して投影レンズ50を通過した後、光学素子アレイ30に入射した太陽光SLを、第2リフレクタ22に向けて反射する。第2リフレクタ22は、光学素子アレイ30からの太陽光を、太陽電池60に向けて反射する。太陽電池60は、光学素子アレイ30で反射した太陽光を受光し、太陽光を電力に変換する。太陽電池60にて発生した電力は、蓄電装置(図示せず)に蓄えられ、車両に搭載された種々の電子機器に利用される。この蓄電装置は、灯室3内に設けられてもよいし、灯室3外に設けられてもよい。このように、本実施形態に係る車両用灯具1においては、オフ状態のマイクロミラーを利用して太陽光を太陽電池60に導くことで、太陽光エネルギーを利用することができる。
【0030】
光学素子アレイ30の各マイクロミラーは、制御部300から給電されたときにオン状態となり、制御部300から給電されないときにオフ状態となるように構成されることが好ましい。例えば、マイクロミラーをオフ状態の傾斜角度に付勢する付勢手段と、制御部300から供給された電力を用いて、付勢力に抗してマイクロミラーをオン状態の傾斜角度に動かす駆動手段とを各マイクロミラーに対し設けてもよい。このような構成とすることで、光学素子アレイ30のマイクロミラーをオフ状態に維持するための電力が不要となるので、省電力化を図ることができる。
【0031】
本実施形態では、光源10は投影レンズ50よりも下方に設けられ、太陽電池60は投影レンズ50よりも上方に設けられている。すなわち、光源10と太陽電池60は、互いに離間した位置に配置されている。このように光源10と太陽電池60とが離間している場合、光学素子アレイ30のオフ状態のマイクロミラーで反射した太陽光が光源10に当たるのを防ぐことができるので、光源10を保護することができる。
【0032】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0033】
上述の実施形態では、車両用灯具が灯具前方に光を照射しないとき、光学素子アレイの全てのマイクロミラーがオフ状態に維持されるが、光学素子アレイの一部のマイクロミラーがオフ状態に維持されてもよい。この場合も、オフ状態のマイクロミラーを利用して太陽光を太陽電池に導くことができる。
【0034】
また、上述の実施形態では、太陽光受光部材として太陽電池を例示したが、太陽光受光部材は太陽電池に限定されず、例えば、太陽光を集光し、その熱で蒸気発電する太陽熱発電装置であってもよい。
【0035】
また、上述の実施形態では、光学素子アレイからの反射光を灯具前方に投影する投影光学部材として投影レンズを例示したが、投影光学部材は投影レンズに限られず、例えばリフレクタであってもよい。
【0036】
また、上述の実施形態では、第2リフレクタを用いて光学素子アレイからの太陽光を太陽電池に反射する構成としたが、第2リフレクタの位置に太陽電池を配置し、光学素子アレイからの太陽光を直接太陽電池が受光するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 車両用灯具、 3 灯室、 4 透光カバー、 10 光源、 20 第1リフレクタ、 22 第2リフレクタ、 30 光学素子アレイ、 40 光吸収部材、 50 投影レンズ、 60 太陽電池、 300 制御部。
図1
図2
図3
図4
図5