(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170409
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】屋根の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04B 7/02 20060101AFI20170713BHJP
【FI】
E04B7/02 521Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-224630(P2013-224630)
(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公開番号】特開2015-86556(P2015-86556A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081385
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 修治
(72)【発明者】
【氏名】上島 潤一
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−042096(JP,A)
【文献】
米国特許第04485598(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 7/02 − 7/04
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂木と、これを支持する支持部材からなる屋根ユニットを、垂木の延在方向に間隔を置いて複数設置し、隔離された垂木の端部同士の間にユニット間垂木を延在させるように配し、垂木の端部とユニット間垂木の端部とを接続部材で接続する屋根の構築方法であって、
上記垂木とユニット間垂木と接続部材とは型鋼からなり、
接続部材を、垂木とユニット間垂木とに嵌合させることを特徴とする屋根の構築方法。
【請求項2】
上記の垂木、ユニット間垂木、接続部材は断面形状が同じものであるとともに、
更に、接続部材は、その断面が垂木やユニット間垂木の断面に対して点対称をなす状態で垂木やユニット間垂木に嵌合する形状であることを特徴とする請求項1記載の屋根の構築方法。
【請求項3】
複数の上記ユニット間垂木が、これと直交する線状部材で接合されて予め面状部材とされており、この面状部材を屋根ユニット間に配することを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根の構築方法。
【請求項4】
屋根ユニットと、ユニット間垂木の上面に、防水シートと屋根葺き材を積層することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の屋根の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋根の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物における屋根の構築方法として、特許文献1に記載の如く、木材からなる垂木と、これを支持する支持部材からなる木質系屋根ユニットを、垂木の延在方向に複数設置し、相隣る屋根ユニットの垂木の端部同士を帯金物で接続するものがある。
【0003】
他方、最近の建物では、森林資源の保護のために、垂木等を木材に代わる型鋼にて形成した鉄骨系屋根ユニットが採用されつつある。このような鉄骨系屋根ユニットにおいても、特許文献1に記載の屋根の構築方法を用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-300815
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術には以下の問題点がある。
(1)屋根の全部が複数の屋根ユニットだけにより構築される。広い屋根を構築するときには、多数の屋根ユニットを用いるものになり、高コストになる。
【0006】
(2)相隣る屋根ユニットの垂木の端部同士を接続する接続部材として帯金物を用いるものであり、それらの垂木の側面に沿わせた帯金物によってそれらの垂木同士を接続するに過ぎない。このため、それらの垂木同士を同一直線上に固定化することに困難があり、それらの垂木同士の位置合せ精度が悪い。
【0007】
(3)相隣る屋根ユニットの垂木の端部同士を接続する接続部材としてそれらの垂木と全く異なる板状帯金物を用いるものであり、コスト高になる。
【0008】
本発明の課題は、屋根の構築方向において、屋根の一部のみを屋根ユニットだけにより構築し、屋根の構成の簡素を図ることにある。
【0009】
本発明の他の課題は、屋根の構築方向において、相隣る垂木同士を高い位置合せ精度で位置合せして強固に接続することにある。
【0010】
本発明の他の課題は、相隣る垂木同士を低コストで接続することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、垂木と、これを支持する支持部材からなる屋根ユニットを、垂木の延在方向に間隔を置いて複数設置し、隔離された垂木の端部同士の間にユニット間垂木を延在させるように配し、垂木の端部とユニット間垂木の端部とを接続部材で接続する屋根の構築方法であって、上記垂木とユニット間垂木と接続部材とは型鋼からなり、接続部材を、垂木とユニット間垂木とに嵌合させるようにしたものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、上記の垂木、ユニット間垂木、接続部材は断面形状が同じものであるとともに、更に、接続部材は、その断面が垂木やユニット間垂木の断面に対して点対称をなす状態で垂木やユニット間垂木に嵌合する形状であるようにしたものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において更に、複数の上記ユニット間垂木が、これと直交する線状部材で接合されて予め面状部材とされており、この面状部材を屋根ユニット間に配するようにしたものである。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに係る発明において更に、屋根ユニットと、ユニット間垂木の上面に、防水シートと屋根葺き材を積層するようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
(請求項1)
(a)間隔をおいて設置された屋根ユニットの垂木の端部同士の間にユニット間垂木を配して屋根を構築する。従って、屋根の一部のみを屋根ユニットだけにより構築し、屋根の残部は主としてユニット間垂木により構築するものになる。屋根の構成の簡素を図り、低コストを実現できる。
【0016】
(b)屋根ユニットの垂木とユニット間垂木とが型鋼からなり、これらの型鋼からなる垂木の端部とユニット間垂木の端部とが同じく型鋼からなる接続部材との嵌合により接続される。従って、垂木とユニット間垂木は、垂木を構成する型鋼と接続部材を構成する型鋼の嵌合、及びユニット間垂木を構成する型鋼と接続部材を構成する型鋼の嵌合により簡易かつ確実に同一直線上に固定化され、それらの垂木同士を高い位置合せ精度で位置合せして強固に接続できる。
【0017】
(請求項2)
(c)上述(a)、(b)の垂木、ユニット間垂木、接続部材は断面形状が同じものであるとともに、更に、接続部材は、その断面が垂木やユニット間垂木の断面に対して点対称をなす状態で垂木やユニット間垂木に嵌合する形状とされる。従って、屋根ユニットの垂木とユニット間垂木とを接続する接続部材として、それらの垂木と同じ断面形状の型鋼を用いるものになり、それらの垂木同士を低コストで接続できる。
【0018】
(請求項3)
(d)上述(a)〜(c)のユニット間垂木が、これと直交する線状部材で接合されて予め面状部材とされており、この面状部材を屋根ユニット間に配する。従って、屋根の構成と構築作業の簡素を図り、低コストを実現できる。
【0019】
(請求項4)
(e)上述(a)〜(d)の屋根ユニットと、ユニット間垂木の上面に、防水シートと屋根葺き材を積層することにより、低コストで高品質の屋根を構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】
図2は隔離された屋根ユニットと、それらの屋根ユニットの間に配されるユニット間垂木とを分離して示す斜視図である。
【
図3】
図3は接続部材を用いて屋根ユニットの垂木とユニット間垂木を接続する過程を示す斜視図である。
【
図4】
図4は接続部材を垂木に嵌合した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、一般の建物、又は相隣接する複数の建物ユニットを接合してなるユニット建物の上部に搭載された屋根1の一部(全部であっても可)を示すものである。
【0022】
屋根1は、
図2に分離して示す如く、相離隔される複数個、本実施例では2個の屋根ユニット10、20と、それらの屋根ユニット10、20が後述する如くに備える垂木11、21同士の間に配置される複数本のユニット間垂木31とを有して構築される。本実施例において、ユニット間垂木31は、2個の屋根ユニット10、20の間に配置される屋根パネル30の構成要素とされている。
【0023】
ここで、屋根ユニット10は、
図2に示す如く、複数本の垂木11と、これを支持する支持部材12からなる。支持部材12は、各垂木11を含む鉛直面内に配置される下弦材12A、束材12B、斜材12Cからなり、垂木11と下弦材12Aを束材12B、斜材12Cによって連結したトラス単位体13を構成する。複数個のトラス単位体13が棟方向に一定のモジュール毎に配列され、これらのトラス単位体13が複数本の水平連結材14により結合されて屋根ユニット10を形成する。水平連結材14は、各トラス単位体13の下弦材12Aに架け渡し、或いは各トラス単位体13の束材12Bに架け渡すことができる。尚、各トラス単位体13を構成する垂木11の上部には複数本の母屋15が架け渡されて固定される。
【0024】
本実施例において、屋根ユニット10の上述の構成部材は鉄骨材料からなる。そして、垂木11は後述する如くの型鋼からなるものとされる。尚、支持部材12(下弦材12A、束材12B、斜材12C)、水平連結材14、母屋15としては、鋼管(型鋼でも可)を採用できる。
【0025】
屋根ユニット20も、
図2に示す如く、屋根ユニット10と同様に構成され、複数本の垂木21と、これを支持する支持部材22からなる。支持部材22は、屋根ユニット10の支持部材12と同様に構成され、下弦材22A、束材22B、斜材22Cからなり、垂木21とともにトラス単位体23を構成する。複数個のトラス単位体23が複数本の水平連結材24により結合され、屋根ユニット20を形成する。各トラス単位体23を構成する垂木21の上部には複数本の母屋25が架け渡されて固定される。
【0026】
本実施例において、屋根ユニット20の上述の構成部材は鉄骨材料からなる。そして、垂木21は後述する如くの型鋼からなるものとされる。尚、支持部材22(下弦材22A、束材22B、斜材22C)、水平連結材24、母屋25としては、鋼管(型鋼でも可)を採用できる。
【0027】
屋根パネル30は、
図2に示す如く、複数本のユニット間垂木31を有し、それらのユニット間垂木31をこれと直交する線状部材としての母屋32で接合され、予め面状部材とされたものである。
【0028】
本実施例において、屋根パネル30の上述の構成部材は鉄骨材料からなる。そして、ユニット間垂木31は後述する如くの型鋼からなるものとされる。尚、母屋32としては、鋼管(型鋼でも可)を採用できる。
【0029】
しかるに、屋根1は以下の如くに構築される。
(1)建物の上部に、複数個、本実施例では2個の屋根ユニット10、20を、それらの垂木11、21の延在方向に間隔をおいて配置する(
図2)。
【0030】
(2)建物の上部に上述(1)で配置された2個の屋根ユニット10、20の間に、屋根パネル30を配置する。2個の屋根ユニット10、20の隔離された垂木11、21の端部同士の間に、屋根パネル30のユニット間垂木31を延在させるように配置する(
図2)。
【0031】
(3)上述(2)の屋根ユニット10の垂木11の端部と屋根パネル30のユニット間垂木31の一端部とを接続部材40で接続する。屋根ユニット20の垂木21の端部と屋根パネル30のユニット間垂木31の他端部も接続部材40で接続する。
【0032】
(4)上述(3)において、接続部材40は垂木11、21、ユニット間垂木31の構成材料と同様に、型鋼からなるものとされる。そして、接続部材40を垂木11の端部とユニット間垂木31の一端部に嵌合させることにより、垂木11とユニット間垂木31を接続部材40で接続する。また、接続部材40を垂木21の端部とユニット間垂木31の他端部に嵌合させることにより、垂木21とユニット間垂木31を接続部材40で接続する。
【0033】
(5)上述(4)において、垂木11、21、ユニット間垂木31、接続部材40を断面形状が同じもの(
図3、
図4に示したリップ付C型鋼)とする。そして、接続部材40は、その断面が垂木11(又は垂木21)やユニット間垂木31の断面に対して点対称をなすように転回した状態で、垂木11(又は垂木21)の端部やユニット間垂木31の端部に嵌合する形状とする(
図3、
図4)。
【0034】
具体的には、垂木11(又は垂木21、ユニット間垂木31)と接続部材40は、
図4に示す如くの断面形状を有し、ウェブWの一端部と他端部のそれぞれに第1フランジF1と第2フランジF2を備え、第1フランジF1の先端に第1リップL1を備え、第2フランジF2の先端に第2リップL2を備える。そして、第1フランジF1の長さ(相対するウェブWと第1リップL1の内法長さ)をaとし、第2フランジF2の長さ(相対するウェブWと第2リップL2の外法長さ)をbとし、aをbより僅かに大きく設定してある。これにより、
図4に示す如く、垂木11(又は垂木21、ユニット間垂木31)の断面に対し、接続部材40の断面を両者の点対称の中心cのまわりで180度転回したとき、垂木11の第1フランジF1及び第1リップL1の内側面に接続部材40の第2フランジF2及び第2リップL2の外側面が重なるように嵌合するとともに、垂木11の第2フランジF2及び第2リップL2の外側面に接続部材40の第1フランジF1及び第1リップL1の内側面が重なるように嵌合し、結果として接続部材40が垂木11(又は垂木21、ユニット間垂木31)の端部に殆ど隙間なく嵌合するものになる。
【0035】
接続部材40と垂木11(又は垂木21、ユニット間垂木31)の上述の嵌合状態で、接続部材40の第1リップL1(又は第2リップL2)と垂木11の第1リップL1(又は第2リップL2)の先端とが、点対称の中心Cを通る直線上にあって、その中心cから互いに等距離をなして対応する(
図4)。
【0036】
接続部材40と垂木11(又は垂木21、ユニット間垂木31)の上述の嵌合状態は、
図3に示した止め具50を用いる等により、相嵌合する垂木11の第1フランジF1と接続部材40の第2フランジF2とをねじ止め、リベット止め等により固定化し、及び/又は相嵌合する垂木11の第2フランジF2と接続部材40の第1フランジF1とをねじ止め、リベット止め等により固定化できる。
【0037】
(6)上述(3)〜(5)により接続された屋根ユニット10、20の垂木11、21と、屋根パネル30のユニット間垂木31の上面に(本実施例では屋根ユニット10、20の母屋15、25、屋根パネル30の母屋32を介して)、不図示の防水シートと屋根葺き材を積層する。
【0038】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)間隔をおいて設置された屋根ユニット10、20の垂木11、21の端部同士の間にユニット間垂木31を配して屋根1を構築する。従って、屋根1の一部のみを屋根ユニット10、20だけにより構築し、屋根1の残部は主としてユニット間垂木31により構築するものになる。屋根1の構成の簡素を図り、低コストを実現できる。
【0039】
(b)屋根ユニット10、20の垂木11、21とユニット間垂木31とが型鋼からなり、これらの型鋼からなる垂木11、21の端部とユニット間垂木31の端部とが同じく型鋼からなる接続部材40との嵌合により接続される。従って、垂木11、21とユニット間垂木31は、垂木11、21を構成する型鋼と接続部材40を構成する型鋼の嵌合、及びユニット間垂木31を構成する型鋼と接続部材40を構成する型鋼の嵌合により簡易かつ確実に同一直線上に固定化され、それらの垂木11、21、31同士を高い位置合せ精度で位置合せして強固に接続できる。
【0040】
(c)上述(a)、(b)の垂木11、21、ユニット間垂木31、接続部材40は断面形状が同じものであるとともに、更に、接続部材40は、その断面が垂木11、21やユニット間垂木31の断面に対して点対称をなす状態で垂木11、21やユニット間垂木31に嵌合する形状とされる。従って、屋根ユニット10、20の垂木11、21とユニット間垂木31とを接続する接続部材40として、それらの垂木11、21、31と同じ断面形状の型鋼を用いるものになり、それらの垂木11、21、31同士を低コストで接続できる。
【0041】
(d)上述(a)〜(c)のユニット間垂木31が、これと直交する線状部材としての母屋32で接合されて予め面状部材(屋根パネル30)とされており、この屋根パネル30を屋根ユニット10、20間に配する。従って、屋根1の構成と構築作業の簡素を図り、低コストを実現できる。
【0042】
(e)上述(a)〜(d)の屋根ユニット10、20と、屋根パネル30のユニット間垂木31の上面に、防水シートと屋根葺き材を積層することにより、低コストで高品質の屋根1を構築できる。
【0043】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、垂木11、21、ユニット間垂木31、接続部材40の断面形状は、型鋼であれば良く、リップ付C型鋼に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、垂木と、これを支持する支持部材からなる屋根ユニットを、垂木の延在方向に間隔を置いて複数設置し、隔離された垂木の端部同士の間にユニット間垂木を延在させるように配し、垂木の端部とユニット間垂木の端部とを接続部材で接続する屋根の構築方法であって、上記垂木とユニット間続垂木と接続部材とは型鋼からなり、接続部材を、垂木とユニット間垂木とに嵌合させるようにしたものである。これにより、屋根の構築方向において、屋根の一部のみを屋根ユニットだけにより構築し、屋根の構成の簡素を図ることができる。また、屋根の構築方向において、相隣る垂木同士を高い位置合せ精度で位置合せして強固に接続することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 屋根
10、20 屋根ユニット
11、21 垂木
12、22 支持部材
30 屋根パネル(面状部材)
31 ユニット間垂木
32 母屋(線状部材)
40 接続部材