(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態(以下、これを実施の形態と呼ぶ)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
[1.第1の実施の形態]
[1−1.LEDプリンターの全体構成]
図1に、LEDプリンターの全体構成の概略を示す。この
図1に示すように、LEDプリンター1は、略箱型の筐体2を有している。尚、以下の説明では、筐体2の正面から見て左側を筐体2の左側、筐体2の正面から見て右側を筐体2の右側とする。また、筐体2の左側から右側への方向を右方向、筐体2の右側から左側への方向を左方向、筐体2の下側から上側への方向を上方向、筐体2の上側から下側への方向を下方向、筐体2の背面側から正面側への方向を前方向、筐体2の正面側から背面側への方向を後ろ方向とする。
【0015】
この筐体2内には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色の画像を、電子写真方式を用いて形成する4つのプロセスユニット3A〜3Dが設けられている。4つのプロセスユニット3A〜3Dは、記録媒体Pの搬送経路4に沿って前後方向に並べて配置されている。
【0016】
各プロセスユニット3A〜3Dは、像担持体としての感光体ドラム5と、この感光体ドラム5の周囲に配置され、感光体ドラム5の表面を帯電させる帯電装置6と、帯電された感光体ドラム5の表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置7を有している。この露光装置7には、光源として後述するLEDプリントヘッド8(
図2参照)が搭載されている。さらに、各プロセスユニット3A〜3Dは、静電潜像が形成された感光体ドラム5の表面にトナーを供給して静電潜像を現像することにより感光体ドラム5の表面にトナー像を形成する現像装置9と、感光体ドラム5の表面に残留したトナーを除去するクリーニング装置10とを有している。尚、感光体ドラム5は、図示しない駆動源及びギヤなどからなる駆動機構によって図中時計回り方向に回転するようになっている。
【0017】
また、筐体2内には、用紙などの記録媒体Pを収納する用紙カセット11が設けられ、さらにこの用紙カセット11の近傍に、用紙カセット11に収納されている記録媒体Pを1枚ずつ分離して搬送する為のホッピングローラ12が設けられている。さらに、筐体2内には、搬送経路4の、ホッピングローラ12とプロセスユニット3A〜3Dとの間に、ピンチローラ13、14と、記録媒体Pを挟み付け、ピンチローラ13、14とともに記録媒体Pの斜行を修正してプロセスユニット3A〜3Dに搬送するレジストローラ15、16が設けられている。ホッピングローラ12及びレジストローラ15、16は、図示しない駆動源に連動して回転するようになっている。
【0018】
さらに、筐体2内には、プロセスユニット3A〜3Dの各々の感光体ドラム5の下側に、搬送経路4を挟んで感光体ドラム5と対向配置される転写ローラ17が設けられている。転写ローラ17は、半導電性のゴムなどから構成されている。LEDプリンター1では、感光体ドラム5上のトナー像が記録媒体P上に転写されるように、感光体ドラム5の電位と転写ローラ17の電位が設定されている。
【0019】
さらに、筐体2内には、プロセスユニット3A〜3Dより搬送経路4の下流側に、定着装置18が設けられ、さらにこの定着装置18より搬送経路4の下流側に、記録媒体Pを、筐体2の上面に設けられたスタッカ19へと排出する為の排出ローラ20、21及び22、23が設けられている。
【0020】
LEDプリンター1は、このような構成でなり、用紙カセット11に収納された記録媒体Pが、ホッピングローラ12により1枚ずつ分離され、搬送経路4に沿って搬送される。このとき、記録媒体Pは、ピンチローラ13、14及びレジストローラ15、16を通過して、さらに、4つのプロセスユニット3A〜3Dを順に通過する。記録媒体Pは、4つのプロセスユニット3A〜3Dを順に通過する際、各々の感光体ドラム5と転写ローラ17の間を通過することにより、各色のトナー像が順に転写される。そして、記録媒体Pは、定着装置18によって加熱及び加圧されることにより各色のトナー像が定着させられた後、排出ローラ20〜23によってスタッカ19へと排出される。
【0021】
[1−2.LEDプリントヘッドの構成]
次に、プロセスユニット3A〜3Dの各々の露光装置7に搭載されるLEDプリントヘッド8の構成について説明する。
図2に、LEDプリントヘッド8の外観と、その断面を示す。この
図2に示すように、LEDプリントヘッド8は、断面略コの字型で棒状のフレーム30を有している。このフレーム30は、例えば、アルミ、板金あるいは液晶ポリマーなどの樹脂から構成されている。尚、ここでは、説明を分かり易くする為、コの字の開口側をフレーム30の下側、反対側を上側とする。
【0022】
フレーム30の下側には、開口31がフレーム30の長手方向に沿って形成されている。また、フレーム30の上側には、下側の開口31まで貫通する孔32が、フレーム30の長手方向に沿って形成されている。このフレーム30には、下側の開口31に嵌合するようにして、COB(Chip On Board)33が組み込まれている。COB33は、長方形板状のプリント配線基板34の表面に、複数の半導体発光素子アレイチップ35がプリント配線基板34の長手方向に沿って千鳥状に並べて配置された構成を有している。COB33は、プリント配線基板34の表面が、フレーム30の内側を向くようにして組み込まれ、組み込まれたときに、表面の半導体発光素子アレイチップ35が、フレーム30上側の孔32と対向するようになっている。尚、矢印αで示すCOB33の長手方向が主走査方向、COB33の短手方向が副走査方向となっている。
【0023】
さらに、このフレーム30には、上側の孔32に挿入されるようにして、直方体形状のロッドレンズアレイ36が組み込まれている。このロッドレンズアレイ36は、半導体発光素子アレイチップ35から発光される光を正立等倍像として感光体ドラム5上に結像する為のものであり、プリント配線基板34上の半導体発光素子アレイチップ35と対向する一面が、半導体発光素子アレイチップと所定の間隔Lを隔てるとともに、他面側がフレーム30の孔32から外側に突出するようになっている。尚、ロッドレンズアレイ36と半導体発光素子アレイチップ35との距離Lは、ロッドレンズアレイ36が半導体発光素子アレイチップ35上に焦点を結ぶように設計及び調整されている。
【0024】
LEDプリントヘッド8は、このような構成でなり、実際、フレーム30から突出しているロッドレンズアレイ33の他面が、感光体ドラム5の表面と対向するようにして、プロセスユニット3A〜3Dの各々に取り付けられるようになっている。
【0025】
ここで、COB33を構成するプリント配線基板34と、このプリント配線基板34上に設けられた半導体発光素子アレイチップ35についてさらに詳しく説明する。
図3に、COB33の外観と断面を示す。この
図3に示すように、プリント配線基板34の表面には、導電性あるいは絶縁性の接着剤40を用いて複数の長方形板状の半導体発光素子アレイチップ35が矢印αで示す主走査方向に沿って千鳥状に並べて実装されている。このとき、隣接する2つの半導体発光素子アレイチップ35は、主走査方向と平行な端面同士を副走査方向に対向させるようにして実装される。
【0026】
各半導体発光素子アレイチップ35の表面41には、例えばGaAs化合物半導体を主材料とする発光ダイオードからなる複数の発光部42が、例えば600dpi(約42.3umピッチ)あるいは1200dpi(約21.2umピッチ)の配列ピッチD1で一次元アレイ状に配列されている。この発光部42は、P型半導体とN型半導体をPN接合してなるLED構造とすることができ、またPNPN接合あるいはNPNP接合してなるサイリスタ構造とすることもできる。
【0027】
発光部42は、半導体発光素子アレイチップ35の表面41の、隣接する半導体発光素子アレイチップ35と対向する主走査方向と平行な対向面寄りに、主走査方向に沿って配列されている。また、半導体発光素子アレイチップ35は、主走査方向の両端側に、最端の発光部42の位置から主走査方向に例えば100umから500um延伸されてなる延伸部分43を有している。尚、最端の発光部42を他の発光部42とは区別する為に、以下、最端発光部42xと呼ぶことにする。
【0028】
半導体発光素子アレイチップ35の両端の延伸部分43には、それぞれ隣接する半導体発光素子アレイチップ35と対向する対向面とは反対の面(これを非対向面と呼ぶ)側に、表面41より一段低い四角形状の段差面44を有するテラス状の段差部45が形成されている。この段差部45は、主走査方向においては最端発光部42x近傍から延伸部分43の先端に亘って形成され、副走査方向においては延伸部分43の非対向面から副走査方向のほぼ中央に亘って形成され、深さ方向においては半導体発光素子アレイチップ35の表面41から例えば20um〜200um掘り下げて形成されている。
【0029】
さらに段差部45の段差面44上には、SiあるいはSi02などからなる絶縁膜46が形成され、この絶縁膜46上に、複数(例えば2個)のワイヤボンディング用パッド47が主走査方向に沿って所定の間隔を隔てて形成されている。尚、ワイヤボンディング用パッド47は、少なくとも、延伸部分43の表面(すなわち壁部の上面)41よりは低くなるように形成される。また、このように、主走査方向に延伸されてなる延伸部分43にワイヤボンディング用パッド47を形成するようにしたことで、半導体発光素子アレイチップ35の副走査方向の長さを短くすることができ、1ウェハから切り出せるチップの数を多くすることができる。
【0030】
上述の段差部45を形成する方法として、半導体発光素子アレイチップ35がGaAs基板から構成される場合、まず、ウェハから切り出された長方形板状の半導体発光素子アレイチップ35の表面41の段差部45となる領域外をフォトレジストなどで保護する。次に、CF4ドライエッチングなどを用いて、段差部45となる領域内のパッシベーション膜、あるいは層間絶縁膜などを取り除くことでGa
As基板を露出させる。そして、露出させたGa
As基板を、塩素系ガスなどを用いたケミカルドライエッチング、あるいは硫酸、過酸化水素水及び水などの混合液からなるエッチャントを用いたウエットエッチングにより、例えば20um〜200umエッチングする。こうすることで、半導体発光素子アレイチップ35に段差部45が形成される。最後に、半導体発光素子アレイチップ35の表面41を保護しているフォトレジスタを除去する。
【0031】
一方、半導体発光素子アレイチップ35がSiからなるIC駆動回路基板によって構成される場合、半導体発光素子アレイチップ35の段差部45となる領域内には回路を形成しないように設計しておく。そのうえで、半導体発光素子アレイチップ35がGa
As基板から構成される場合の方法と同様、半導体発光素子アレイチップ35の表面41の段差部45となる領域外をフォトレジストなどで保護しておき、CF4ドライエッチングなどを用いて、段差部45となる領域内のパッシベーション膜、あるいは層間絶縁膜などを取り除くことでSi基板を露出させる。そして、露出させたSi基板を、SF6などのガスを用いたケミカルドライエッチングにより、20um〜200umエッチングする。こうすることで、半導体発光素子アレイチップ35に段差部45が形成される。最後に、半導体発光素子アレイチップ35の表面41を保護しているフォトレジスタを除去する。
【0032】
ここで、段差部45に形成されるワイヤボンディング用パッド47は、発光部42と電気的に接続する必要がある。この為、段差部45の段差面44と、半導体発光素子アレイチップ35の表面41とを繋ぐ壁面は、例えば表面41から段差面44へと傾斜するスロープ形状となっている。そして、このスロープ形状の壁面上に薄膜配線が形成されていて、この薄膜配線により発光部42とワイヤボンディング用パッド47が電気的に接続されるようになっている。
【0033】
因みに、スロープ形状の壁面は、例えば、フォトリソグラフィにより形成可能な有機絶縁膜により形成することができる。あるいは半導体発光素子アレイチップ35がGa
As基板から構成される場合、段差部45を形成する際に、ウエットエッチングによる垂直方向、及び水平方向のエッチングレートを調整することでエッチング端面(すなわち壁面)をスロープ形状とすることもできる。さらに、半導体発光素子アレイチップ35がSi基板から構成される場合、ドライエッチングによる垂直方向、及び水平方向のエッチングレートを調整することで、エッチング端面(壁面)をスロープ形状とすることもできる。
【0034】
このようにして段差部45が形成された半導体発光素子アレイチップ35は、例えばCEM3(Composite epoxy material3)、あるいはFR4(Flame retardant4)などからなるプリント配線基板34上に、接着剤40を介して、主走査方向に沿って千鳥状に並べて実装される。このとき、各々の延伸部分43は、隣接する半導体発光素子アレイチップ35の延伸部分43より中央に位置する発光部42と副走査方向に対向することになる。
【0035】
また、その際、隣接する半導体発光素子アレイチップ35の各々の最端発光部42xの主走査方向の間隔D2が、半導体発光素子アレイチップ35上の発光部42の配列ピッチD1と等しくなるように、半導体発光素子アレイチップ35がプリント配線基板34上に実装される。
【0036】
くわえて、隣接する2つの半導体発光素子アレイチップ35の各々の発光部42の副走査方向の間隔D3が極力狭くなるように、半導体発光素子アレイチップ35をプリント配線基板34上に実装することが望ましい。これは、千鳥状に並べて実装される半導体発光素子アレイチップ35の各々の発光部42とロッドレンズアレイ36との副走査方向の位置関係を極力近づけることで、半導体発光素子アレイチップ35の発光部42間のロッドレンズアレイ36における光伝達効率の差を極力小さくし、その結果として、半導体発光素子アレイチップ35間の光量差を極力小さくする為である。
【0037】
また、隣接する2つの半導体発光素子アレイチップ35の各々の発光部42の副走査方向の間隔D3を極力狭くする為には、隣接する2つの半導体発光素子アレイチップ35同士の間隔D4も極力狭くすることが望ましい。そして、このように、隣接する2つの半導体発光素子アレイチップ35同士の間隔D4を狭くすることにともなって、半導体発光素子アレイチップ35の延伸部分43に形成されているワイヤボンディング用パッド47と、隣接する半導体発光素子アレイチップ35の発光部42との距離も狭くなる。実際、発光部42の中心と、副走査方向に対向するワイヤボンディング用パッド47の中心との距離は、設計値で例えば100um程度とされる。
【0038】
一方で、プリント配線基板34上には、ワイヤボンディング用パッド48が、各半導体発光素子アレイチップ35上のワイヤボンディング用パッド47と一対に形成されている。プリント配線基板34上のワイヤボンディング用パッド48は、各半導体発光素子アレイチップ35上の各ワイヤボンディング用パッド47と副走査方向に所定の間隔を隔てて形成されている。
【0039】
そして、各半導体発光素子アレイチップ35上のワイヤボンディング用パッド47と、プリント配線基板34上の対になるワイヤボンディング用パッド48とが、Auワイヤ49を用いて結線される。その際、半導体発光素子アレイチップ35上のワイヤボンディング用パッド47側をボールボンディング、あるいはステッチボンディングすることになるが、ワイヤボンディング用パッド47の面積を小さくする為には、一般的にボールボンディングすることが望ましい。実際、ボールボンディングする場合、ワイヤボンディング用パッド47の面積は、例えば50um角まで縮小化することができ、ワイヤボンディング用パッド47との接続部となるAuワイヤ49のボール部50は、例えば、φ50umで高さ20um以上の略半球体状とすることができる。この場合、ワイヤボンディング用パッド48が形成される段差部45は、ボール部50の高さよりも、段差面44までの深さが深くなっていて、これにより、ボール部50の上端が、半導体発光素子アレイチップ35の表面41より上方に突出しないようになっている。尚、ワイヤボンディング用パッド48の厚さも考慮して、表面41から段差面44までの深さが、ボール部50の高さとワイヤボンディング用パッド48の厚さとを足した長さより深くするようにしてもよい。
【0040】
一方で、図は省略するが、ステッチボンディングする場合、ワイヤボンディング用パッド47の面積は、約80um角以上とすることが望ましい。そして、ワイヤボンディング用パッド47との接続部となるAuワイヤ49のステッチ部は、例えば、Auワイヤ49の径以下の高さとすることができる。この場合、ワイヤボンディング用パッド48が形成される段差部45は、ステッチ部の高さよりも、段差面44までの深さが深くなっていて、これにより、ステップ部の上端が、半導体発光素子アレイチップ35の表面41より上方に突出しないようになっている。
【0041】
さらに、プリント配線基板34に、データ書き込み用のROM(図示せず)、チップコンデンサ(図示せず)、及びLEDプリンター1側とのデータ入出力用のコネクタ(図示せず)などを実装することで、LEDプリントヘッド8用のCOB33が構成される。そして、このCOB33が、上述したように、LEDプリントヘッド8のフレーム30に組み込まれる。
【0042】
[1−3.第1の実施の形態の効果]
ここで、半導体発光素子アレイチップ35に段差部45を形成したことによる効果について説明する。尚、ここでは、段差部45の無い半導体発光素子アレイチップを有するCOBを比較対象として、本実施の形態の効果を説明する。
【0043】
まず、
図4に、段差部45の無い半導体発光素子アレイチップ60がプリント配線基板61上に千鳥実装された比較用COB62を示す。この比較用COB
62は、半導体発光素子アレイチップ60に段差部45が形成されていない点を除けば、上述した第1の実施の形態のCOB33と同様の構成である。
【0044】
簡単に説明すると、比較用COB62は、プリント配線基板61の表面に、接着剤63を用いて、複数の半導体発光素子アレイチップ60が千鳥状に並べて実装されている。その際、隣接する半導体発光素子アレイチップ60の各々の最端発光部64xの間隔D2が、半導体発光素子アレイチップ60上の発光部64の配列ピッチD1と等しくなるように、半導体発光素子アレイチップ60がプリント配線基板61上に実装される。
【0045】
また、その際、隣接する半導体発光素子アレイチップ60の各々の発光部64の副走査方向の間隔D3は、組み合わせるロッドレンズアレイ36との副走査方向の位置関係を極力近づけることが望ましく、実際、例えば50umから100um前後とされる。また、この為、隣接する半導体発光素子アレイチップ60同士の間隔D4も極力狭くすることが望ましく、実際、比較用COB62は、隣接する半導体発光素子アレイチップ60同士の間隔D4が例えば10umから50umの間となるように設計されている。
【0046】
この結果、半導体発光素子アレイチップ60の延伸部分65に形成されているワイヤボンディング用パッド66と、隣接する半導体発光素子アレイチップ60の発光部64との距離が近くなり、これにともなって、ワイヤボンディング用パッド66に接続されるAuワイヤ67と、発光部64との距離も近くなる。
【0047】
さらに、プリント配線基板61上には、複数のワイヤボンディング用パッド68が、半導体発光素子アレイチップ60のワイヤボンディング用パッド66と一対に形成されていて、半導体発光素子アレイチップ60のワイヤボンディング用パッド66と、プリント配線基板61のワイヤボンディング用パッド68とが、Auワイヤ67により結線されている。尚、上述したように、ワイヤボンディング用パッド66の面積を極力小さくする為には、ボールボンディングによりAuワイヤ67を結線することが望ましく、この場合、Auワイヤ67の接続部となるボール部69の高さは一般的に20um以上となる。
【0048】
この比較用COB62のように、半導体発光素子アレイチップ60を千鳥状に並べて実装する場合、隣接する半導体発光素子アレイチップ60の各々の延伸部分65も千鳥配置となる。すなわち、各半導体発光素子アレイチップ60の延伸部分65が、隣接する半導体発光素子アレイチップ60の延伸部分65より中央側の部分(すなわち発光部64が形成されている部分)と副走査方向に対向するようにして実装される。
【0049】
そして、この場合、発光部64側から副走査方向に対向する延伸部分65側を見ると、この延伸部分65上のワイヤボンディング用パッド66に形成されるAuワイヤ67のボール部69のほぼ全体が露になっていることになる。ゆえに、Auワイヤ67のボール部69は、発光部64から放射される光の放射角範囲内に位置することになる為、発光部64からの出射光が、Auワイヤ67のボール部69へと届いて反射してしまう。
【0050】
これに対して、本実施の形態のCOB33の場合、半導体発光素子アレイチップ35の各々の発光部42の副走査方向の間隔D3や、隣接する2つの半導体発光素子アレイチップ35同士の間隔D4は、比較用COB62と同じとする一方で、
図5に示すように、ワイヤボンディング用パッド47を、発光部42が形成されている表面41より少なくともボール部50の高さより深く(例えば20umから200um)掘り下げた段差部45の段差面44に形成するようにした。
【0051】
こうすることで、半導体発光素子アレイチップ35のワイヤボンディング用パッド47上に形成されるボール部50は、副走査方向に隣接する半導体発光素子アレイチップ35の発光部42が形成されている表面41より低い位置に形成されることになり、発光部42から放射される光の放射角範囲外に位置することになる。そして、このように、ボール部50を発光部42から放射される光の放射角範囲外へと退避させるようにしたことで、発光部42から放射される光がボール部50に反射することを抑制することができる。
【0052】
尚、本実施の形態のCOB33では、従来技術のように、半導体発光素子アレイチップの表面に発光部より高い遮光壁を形成することでボール部による反射を防ぐのではなく、半導体発光素子アレイチップ35の表面を掘り下げた段差部45にワイヤボンディング用パッド47を形成してワイヤボンディング用パッド47上のボール部50を発光部42から放射される光の放射角範囲
外へと退避させることでボール部50による反射を防ぐようにした。すなわち、本実施の形態のCOB33は、遮光壁のような光を反射する部位を別途形成しない為、発光部42からの光が遮光壁に反射しないようにする工夫などを必要とせず、表面41より低い段差部45を有するだけの簡易な構造でありながら、ボール部50による反射を従来と比して一段と抑制することができる。
【0053】
実際、比較用COB62のように、発光部64からの出射光がAuワイヤ67のボール部69に届いて反射してしまうと、この反射した光によって、例えば、感光体ドラム5の意図しない部分が露光され、この結果、印刷結果に筋や線などが入ってしまい、印刷品質が低下してしまう。つまり、本実施の形態のCOB33では、発光部42からの出射光がAuワイヤ49のボール部50に反射することを抑制することで、印刷結果に筋や線が入ってしまうことを防ぐことができ、より高品位な印刷が可能となっている。
【0054】
尚、本実施の形態では、ワイヤボンディング用パッド47と接続するAuワイヤ49のボンディング方法としてボールボンディングを用いるようにしたが、ステッチボンディングを用いるようにしてもよい。このようにステッチボンディングを用いる場合、一般的には、ワイヤボンディング用パッドの面積を、ボールボンディングを用いる場合と比して大きく形成する必要がある。この為、半導体発光素子アレイチップ35のチップ幅も、ボールボンディングを用いる場合と比して大きくなってしまうが、一方で、ステッチ部の高さをボール部50の高さより低くすることができる為、光の反射を一段と抑制することができ、且つ段差部45の深さを例えば10um前後へと浅くすることができる。
【0055】
ここまで説明したように、本実施の形態のCOB33によれば、半導体発光素子アレイチップ35をプリント配線基板34上に接着剤40を用いて千鳥状に並べて実装する構造において、簡易な構造でありながら、半導体発光素子アレイチップ35の発光部42から放射される光が、隣接する半導体発光素子アレイチップ35のワイヤボンディング用パッド47に接続されるAuワイヤ49のボール部50に反射すること
を従来と比して一段と抑制することができる。そして、このCOB33を実装したLEDプリントヘッド8をLEDプリンター1に用いることで、印刷結果に筋や線が入ってしまうことを防ぐことができ、より高品位な印刷が可能となる。
【0056】
[2.第2の実施の形態]
次に第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態は、第1の実施の形態の半導体発光素子アレイチップ35に、段差部を追加した実施の形態であり、LEDプリンター1の全体構成の概略、及びLEDプリントヘッド8の基本的な構成については、第1の実施の形態と同様である為、説明を省略する。ゆえに、ここでは、COBについて詳しく説明する。
【0057】
[2−1.COBの構成]
図6及び
図7に、第2の実施の形態のCOB100の外観と断面を示す。尚、
図7は、COB100の一部を拡大して、且つ説明を簡単にする為に、プリント配線基板101と半導体発光素子アレイチップ102とを接続するAuワイヤ103を省略したものである。この
図6及び
図7に示すように、プリント配線基板101の表面には、第1の実施の形態と同様、導電性あるいは絶縁性の接着剤104を用いて複数の長方形板状の半導体発光素子アレイチップ102が矢印αで示す主走査方向に沿って千鳥状に並べて実装されている。このとき、隣接する2つの半導体発光素子アレイチップ102は、主走査方向と平行な端面同士を副走査方向に対向させるようにして実装される。
【0058】
各半導体発光素子アレイチップ102は、第1の実施の形態と同様、Ga
As基板あるいはIC駆動回路基板とすることができる。また、半導体発光素子アレイチップ102の厚さは例えば200umから600umとすることができる。各半導体発光素子アレイチップ102の表面105には、第
1の実施の形態と同様、複数の発光部106が、例えば600dpi(約42.3umピッチ)あるいは1200dpi(約21.2umピッチ)の配列ピッチD1で一次元アレイ状に配列されている。
【0059】
発光部106は、半導体発光素子アレイチップ102の表面105の、隣接する半導体発光素子アレイチップ102と対向する対向面寄りに、主走査方向に沿って配列されている。また、半導体発光素子アレイチップ102は、主走査方向の両端側に、第1の実施の形態と同様、最端発光部106xの位置から主走査方向に例えば100umから500um延伸されてなる延伸部分107を有している。
【0060】
両端の延伸部分107には、第1の実施の形態と同様、それぞれ隣接する半導体発光素子アレイチップ102と対向する対向面とは反
対の非対向面側に、表面105より一段低い四角形状の段差面108を有するテラス状の段差部109が形成されている。さらに、この段差部109の段差面108上には、第1の実施の形態と同様、絶縁膜110が形成され、この絶縁膜110上に、複数(例えば2個)のワイヤボンディング用パッド111が主走査方向に沿って所定の間隔を隔てて形成されている。
【0061】
くわえて、この第2の実施の形態では、両端の延伸部分107の、対向面側の端部にも、表面105より一段低い四角形状の段差面112を有するテラス状の段差部113が形成されている。この段差部113も、半導体発光素子アレイチップ102の表面105から例えば20um〜200um掘り下げて形成されている。すなわち、延伸部分107には、副走査方向の両端側にそれぞれ段差部109、113が形成されていて、これら2つの段差部109、113は、間に位置する壁部114により副走査方向に分断されている。
【0062】
対向面側の段差部113は、主走査方向においては最端発光部106x近傍から延伸部分107の先端に亘って形成され、副走査方向においては延伸部分107の対向面から内側に20um以上に亘って形成され、深さ方向においては半導体発光素子アレイチップ102の表面105から例えば20um〜200um掘り下げて形成されている。
【0063】
このような対向面側の段差部113は、非対向面側の段差部109と同様の方法、すなわちエッチングで掘り下げることにより形成することができる。また、段差部109、113は、半導体発光素子アレイチップ102の延伸部分107上に同時に形成することができる。そして、延伸部分107の副走査方向の両端側にそれぞれ段差部109、113を形成したときに、これら2つの段差部109、113の間のエッチングされずに残された部分が壁部114となる。
【0064】
さらに、対向面側の段差部113の出っ張った角をR形状としてもよい。具体的には、
図7に示すように、半導体発光素子アレイチップ102の主走査方向の一端側において、半導体発光素子アレイチップ102の表面105と段差面112とを繋ぐ壁面のうちの、主走査方向と平行な壁面と、半導体発光素子アレイチップ102の主走査方向に直交する端面とで形成される角115をR形状とするとともに、副走査方向と平行な壁面と、半導体発光素子アレイチップ102の副走査方向に直交する対向面とで形成される角116をR形状とする。他端側についても同様にこれら2つの角115、116をR形状とする。
【0065】
このようにして段差部109、113が形成された半導体発光素子アレイチップ102は、プリント配線基板101上に、接着剤104を介して、主走査方向に沿って千鳥状に並べて実装される。このとき、各々の延伸部分107は、隣接する半導体発光素子アレイチップ102の延伸部分107より中央側に位置する発光部106と副走査方向に対向することになる。
【0066】
さらに、このようにして実装される際、隣接する半導体発光素子アレイチップ102の各々の発光部106の副走査方向の間隔D3が極力狭くなるように、半導体発光素子アレイチップ102をプリント配線基板101上に実装することが望ましい。この為、隣接する半導体発光素子アレイチップ102同士の間隔D4も極力狭くすることが望ましく、実際、この間隔D4は、例えば10umから50um程度となっている。
【0067】
また、接着剤104は、ダイボン装置(図示せず)に備えられているスタンプ機能を用いてプリント配線基板101上に転写形成することができ、ディスペンサー装置(図示せず)により予めプリント配線基板101上に形成することもできる。このとき、接着剤104は、半導体発光素子アレイチップ102の裏面全体と接するように形成される。
【0068】
さらに、各半導体発光素子アレイチップ102の段差部109上のワイヤボンディング用パッド111と、プリント配線基板101上の対になるワイヤボンディング用パッド117とが、Auワイヤ103を用いてボールボンディングにより結線される。
【0069】
そして、プリント配線基板101に、データ書き込み用のROM(図示せず)、チップコンデンサ(図示せず)、及びLEDプリンター1側とのデータ入出力用のコネクタ(図示せず)などを実装することで、LEDプリントヘッド8用のCOB100が構成される。そして、このCOB100が、第1の実施の形態と同様に、LEDプリントヘッド8のフレーム30に組み込まれる。
【0070】
[2−2.第2の実施の形態の効果]
ここで、第2の実施の形態による効果について説明する。尚、半導体発光素子アレイチップ102の延伸部分107の非対向面側に段差部109を設けたことによる効果は、第1の実施の形態と同様である為、詳しい説明は省略する。
【0071】
この第2の実施の形態では、上述したように、半導体発光素子アレイチップ102の延伸部分107の非対向面側だけでなく対向面側の端部にも、表面105より一段低い段差面112を有する段差部113を設けるようにした。
【0072】
こうすることで、本実施の形態のCOB100によれば、隣接する半導体発光素子アレイチップ102同士の隙間を毛管現象により這い上がってくる接着剤104を、半導体発光素子アレイチップ102の表面105より一段低い段差部113の段差面112に流れ出すようにして主走査方向に逃がすことで、接着剤104が表面105まで這い上がってくることを抑制することができるとともに、接着剤104が非対向面側の段差部109へと流れてその段差面108に這い上がってしまうことを防止できる。
【0073】
これにより、本実施の形態のCOB100では、半導体発光素子アレイチップ102の表面105に形成される発光部106が接着剤104により汚染されてしまうことを防ぐことができ、また段差面108に形成されたワイヤボンディング用パッド111が接着剤104により汚染されてしまうことや、接着剤104により短絡してしまうことを防止できる。
【0074】
さらに、本実施の形態のCOB100では、対向面側の段差部113と、非対向面側の段差部109とを、エッチングにより半導体発光素子アレイチップ102に同時に形成することができるので、工程を増やすことなく、2つの段差部109、113を形成することができる。
【0075】
さらに、本実施の形態のCOB100によれば、段差部113の主走査方向と平行な壁面と、半導体発光素子アレイチップ102の主走査方向と直行する端面とで形成される角115と、段差部113の副走査方向と平行な壁面と、半導体発光素子アレイチップ102の副走査方向と直交する端面(対向面)とで形成される角116をR形状とした。こうすることで、隣接する半導体発光素子アレイチップ102と対向する対向面の面積を小さくすることができ、接着剤104が表面105まで這い上がってくるのを一段
と確実に防止できるとともに、隣接する半導体発光素子アレイチップ102同士の対向面の間を這い上がってこようとする接着剤104を、段差面112へ、さらに段差面112からプリント配線基板101上へと流れ出し易くすることができる。
【0076】
ここまで説明したように、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができることにくわえて、接着剤104による発光部106及びワイヤボンディング用パッド111の汚染を防止することができる。
【0077】
尚、非対向面側の段差部109の主走査方向に平行な壁面と、半導体発光素子アレイチップ102の主走査方向と直行する端面とで形成される角に、非対向面側の段差部109の段差面108に接着剤104が進入するのを防ぐ為のフード118を形成するようにしてもよい。このようにすれば、対向面側の段差面112から、プリント配線基板101上に流れ出した接着剤104が、非対向面側の段差部109へと回り込んで、その段差面108へと這い上がってくるのを抑制することができ、接着剤104によるワイヤボンディング用パッド111の汚染を一段と確実に防止できる。
【0078】
[3.他の実施の形態]
[3−1.他の実施の形態1]
尚、上述した第1の実施の形態では、延伸部分43の非対向面側に、表面41より低い低面部としての段差部45を設け、その段差面44上にワイヤボンディング用パッド47を形成するようにしたが、これに限らず、例えば、段差部45の代わりに、延伸部分43の非対向面側に凹部(図示せず)を形成するようにして、凹部の底面上にワイヤボンディング用パッドを形成することで、この凹部内にAuワイヤ49のボール部50を隠すようにしてもよい。この場合、凹部の深さを、ボール部50の高さより深くするようにすればよい。このような構造でも、発光部42からの出射光がAuワイヤ49のボール部50
で反射することを抑制することができる。尚、この場合、凹部をワイヤボンディング用パッド47ごとに形成するようにしてもよいし、凹部の大きさを大きくして、1つの凹部内に、複数のワイヤボンディング用パッド47を形成するようにしてもよい。第2の実施の形態についても同様である。
【0079】
[3−2.他の実施の形態2]
また、上述した第1及び第2の実施の形態では、LEDプリンター1に搭載される露光ヘッドとしてのLEDプリントヘッド8に本発明を適用したが、本発明はこれに限らず、LED以外の発光素子を用いる露光ヘッドに適用することもできる。
【0080】
さらに、上述した第1及び第2の実施の形態では、半導体装置としてのCOB33、100に本発明を適用したが、これに限らず、基板上に半導体チップを千鳥状に並べて実装するような構造の半導体装置であれば、上述した第1及び第2の実施の形態と同様にして、本発明を適用することができる。
【0081】
さらに、上述した第1及び第2の実施の形態では、画像形成装置としてのLEDプリンター1に本発明を適用したが、これに限らず、LED以外の発光素子を用いる露光ヘッドを搭載したプリンターや、ファクシミリ、MFP(Multi Function Product:複合機)などの画像形成装置に適用することもできる。
【0082】
さらに、上述した第1及び第2の実施の形態では、ワイヤとしてAuワイヤ49、103を用いるようにしたが、これに限らず、導電性のワイヤであれば、Cuワイヤなどを用いるようにしてもよい。
【0083】
[3−3.他の実施の形態3]
さらに、本発明は、上述した第1及び第2の実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した実施の形態と他の実施の形態の一部または全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。