(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載される熱エネルギー回収装置では、蒸発器から流出した加熱媒体は、気相、液相又は気液二相のいずれかの状態で予熱器に流入する。この場合、予熱器でいわゆるウォータハンマー現象が生じ得ることが知られている。このウォータハンマー現象は、主に以下の原理で生じていると推測される。
【0005】
気相の加熱媒体(蒸気や高温ガス)が予熱器の加熱媒体流路に流入すると、この加熱媒体は、加熱媒体流路内の液体(ドレインもしくはミスト)に冷却されることにより凝縮することによって急激に体積が小さくなる。そうすると、加熱媒体流路内に相対的に圧力の低い領域が発生する。この結果、その相対的に圧力の低い領域へ向かって加熱媒体流路内の液体が移動することにより、当該液体が加熱媒体流路の内面に衝突する。
【0006】
本発明の目的は、予熱器におけるウォータハンマー現象の発生を抑制可能な熱エネルギー回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する手段として、本発明は、外部から供給される気相の加熱媒体と作動媒体とを熱交換させることによって前記作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器から流出した加熱媒体と前記蒸発器に流入する前の作動媒体とを熱交換させることによって作動媒体を加熱する予熱器と、前記蒸発器から流出した作動媒体の膨張エネルギーを回収するとともに当該作動媒体を前記予熱器に送るエネルギー回収部と、前記予熱器に流入する加熱媒体の過冷却度が0度よりも大きくない場合に当該加熱媒体の前記予熱器への流入を禁止し、かつ、前記予熱器に流入する加熱媒体の過冷却度が0度よりも大きい場合に当該加熱媒体を前記予熱器へ流入させる操作を行う制御部と、を備える、熱エネルギー回収装置を提供する。
【0008】
本熱エネルギー回収装置では、予熱器及び蒸発器で作動媒体が得た熱エネルギーをエネルギー回収部により回収しつつ、予熱器でのウォータハンマー現象の発生を抑制することができる。具体的に、予熱器に流入する加熱媒体の過冷却度が0度よりも大きくない場合(気相の加熱媒体が存在し得る場合)に加熱媒体の予熱器への流入が禁止され、前記過冷却度が0度よりも大きい場合に予熱器に加熱媒体が流入する。つまり、予熱器には、液相の加熱媒体が流入する。よって、予熱器内でのウォータハンマー現象の発生が抑制される。より詳細には、気相の加熱媒体が予熱器に流入した後に当該予熱器内で凝縮することに起因して生じるウォータハンマー現象の発生が抑制される。
【0009】
この場合において、前記制御部は、前記予熱器に流入する加熱媒体の過冷却度が0度よりも大きく、かつ、前記蒸発器から流出した加熱媒体の過冷却度が特定の下限値以上である場合に加熱媒体を前記予熱器へ流入させる一方、前記予熱器に流入する加熱媒体の過冷却度が0度よりも大きくない、あるいは、当該過冷却度が0度よりも大きくても前記蒸発器から流出した加熱媒体の過冷却度が前記下限値未満である場合に加熱媒体の前記予熱器への流入を禁止する操作を行うことが好ましい。
【0010】
このようにすれば、予熱器でのウォータハンマー現象の発生が抑制されることに加え、蒸発器でのウォータハンマー現象の発生も抑制される。具体的に、蒸発器から流出した加熱媒体の過冷却度が下限値未満の場合、加熱媒体が例えば気液二相の状態の場合もある。この場合において加熱媒体が予熱器に流入する際、予熱器で圧力損失が生じるため、加熱媒体が予熱器を通過しにくくなる。このため、予熱器での熱交換効率が低下し、さらに、前記圧力損失が原因(抵抗)となり、蒸発器内から液相の加熱媒体(ドレイン)が流出しにくくなる。この状態で蒸発器に気相の加熱媒体が流入すると、当該気相の加熱媒体が前記ドレインに冷却されることによって急激にその体積を減少させるので、蒸発器においてウォータハンマー現象が生じる懸念がある。これに対し、本エネルギー回収装置では、蒸発器から流出した加熱媒体の過冷却度が下限値未満の場合に加熱媒体の予熱器への流入を禁止することにより、予熱器での熱交換効率の低下が抑制され、さらに、前記圧力損失に起因して蒸発器内から液相の加熱媒体(ドレイン)が流出しにくくなる状態が回避される(液相の加熱媒体の流出が促進される)ので、蒸発器でのウォータハンマー現象の発生が抑制される。
【0011】
また、本発明において、前記制御部は、前記予熱器に流入する加熱媒体の過冷却度が0度よりも大きく、かつ、前記蒸発器から流出した加熱媒体の過冷却度が特定の上限値以下である場合に加熱媒体を前記予熱器へ流入させる一方、前記予熱器に流入する加熱媒体の過冷却度が0度よりも大きくない、あるいは、当該過冷却度が0度よりも大きくても前記蒸発器から流出した加熱媒体の過冷却度が前記上限値よりも大きい場合に加熱媒体を前記予熱器へ流入させることなく外部に排出させる操作を行うことが好ましい。
【0012】
このようにすれば、予熱器でのウォータハンマー現象の発生が抑制されることに加え、蒸発器からの液相の加熱媒体(ドレイン)の流出が促進されるので、蒸発器でのウォータハンマー現象の発生が抑制される。具体的に、蒸発器から流出した加熱媒体の過冷却度が上限値よりも大きい(高過ぎる)場合は、蒸発器における加熱媒体が流れる流路の流出口付近に相当程度の液相の加熱媒体(ドレイン)が溜まった状態になっている。この状態で蒸発器に気相の加熱媒体が流入すると、当該気相の加熱媒体が前記ドレインに冷却されることによって急激にその体積を減少させるので、蒸発器においてウォータハンマー現象が生じる懸念がある。一方、その状態において液相の加熱媒体が予熱器に流入する場合、当該液相の加熱媒体が予熱器を通過するのに時間を要するため、蒸発器内から液相の加熱媒体(ドレイン)が流出しにくくなる。これに対し、本エネルギー回収装置では、蒸発器から流出した加熱媒体の過冷却度が前記上限値よりも大きい場合(蒸発器において作動媒体により加熱媒体の潜熱のみならず顕熱も十分に回収されている場合)に加熱媒体を予熱器へ流入させることなく外部に排出させることにより、液相の加熱媒体が蒸発器から外部に排出されるまでに要する時間が短縮されるため、蒸発器からのドレインの流出が促進される。よって、蒸発器でのウォータハンマー現象の発生が抑制される。
【0013】
また、本発明において、前記制御部は、前記予熱器に流入する加熱媒体の過冷却度が0度よりも大きく、かつ、前記蒸発器に流入する作動媒体の過冷却度が0度よりも大きい場合に加熱媒体を前記予熱器へ流入させる一方、前記予熱器に流入する加熱媒体の過冷却度が0度よりも大きくない、あるいは、当該過冷却度が0度よりも大きくても前記蒸発器に流入する作動媒体の過冷却度が0度よりも大きくない場合に加熱媒体の前記予熱器への流入を禁止する操作を行うことが好ましい。
【0014】
このようにすれば、予熱器でのウォータハンマー現象の発生が抑制されることに加え、蒸発器内での作動媒体の偏流が抑制されるので、蒸発器での熱交換効率、すなわち、エネルギー回収部のエネルギー回収効率が向上する。例えば、気液二相の作動媒体が蒸発器に流入した場合、気相の作動媒体の比重と液相の作動媒体の比重とは互いに異なることから、蒸発器内には、気相の作動媒体の通過する領域と液相の作動媒体が通過する領域とが形成される。このため、蒸発器において作動媒体と加熱媒体との均一な熱交換が行われないこと(熱交換効率の低下)が懸念される。これに対し、本エネルギー回収装置では、蒸発器に流入する作動媒体の過冷却度が0度よりも大きくない場合(気相の作動媒体が存在し得る場合)に、加熱媒体の予熱器への流入を禁止するので、つまり、予熱器での加熱媒体による作動媒体の加熱を停止するので、予熱器から流出する作動媒体に気相の作動媒体が含まれることが抑制される。よって、蒸発器での作動媒体の偏流が抑制される。
【0015】
また、本発明において、前記制御部は、予め定められた停止条件が成立したときに、加熱媒体を前記予熱器へ流入させることなく外部に排出させる操作を行うことが好ましい。
【0016】
このようにすれば、停止時において蒸発器からの液相の加熱媒体(ドレイン)の流出が促進されるので、熱エネルギー回収装置の起動時における蒸発器でのウォータハンマー現象の発生が抑制される。具体的に、停止条件が成立したとき(本装置の停止時)に、加熱媒体を予熱器へ流入させることなく外部に排出させることにより、予熱器での圧力損失が生じないため、蒸発器からのドレインの流出が促進される。よって、本装置の起動時における蒸発器でのウォータハンマー現象の発生が抑制される。
【0017】
また、本発明において、前記予熱器と前記蒸発器とを接続する接続流路をさらに備え、前記接続流路は、一直線上に延びる形状を有することが好ましい。
【0018】
このようにすれば、接続流路で生じる圧力損失が低減されるので、作動媒体に油が含まれる場合にその油の接続流路への滞留が抑制される。これにより、適切な量の油がエネルギー回収部に流入する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、予熱器におけるウォータハンマー現象の発生を抑制可能な熱エネルギー回収装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態の熱エネルギー回収装置について、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示されるように、熱エネルギー回収装置は、蒸発器10と、予熱器12と、エネルギー回収部20と、加熱媒体供給流路30と、制御部40と、を備えている。
【0023】
蒸発器10は、外部から供給される気相の加熱媒体(工場の排ガス等)と作動媒体(HFC245fa等)とを熱交換させることによって作動媒体を蒸発させる。蒸発器10は、作動媒体が流れる作動媒体流路10aと、加熱媒体が流れる加熱媒体流路10bと、を有している。本実施形態では、蒸発器10として、プレート式の熱交換器が用いられている。ただし、蒸発器10として、いわゆるシェル&チューブ式の熱交換器が用いられてもよい。
【0024】
予熱器12は、蒸発器10から流出した加熱媒体と蒸発器10に流入する前の作動媒体とを熱交換させることによって作動媒体を加熱する。予熱器12は、作動媒体が流れる作動媒体流路12aと、加熱媒体が流れる加熱媒体流路12bと、を有している。本実施形態では、予熱器12としても、プレート式の熱交換器が用いられている。ただし、予熱器12として、いわゆるシェル&チューブ式の熱交換器が用いられてもよいことは、蒸発器10の場合と同様である。予熱器12の加熱媒体流路12bの上流側の端部の高さ位置は、蒸発器10の加熱媒体流路10bの下流側の端部の高さ位置と同じかそれよりも低くなるように設定されている。予熱器12の作動媒体流路12aの下流側の端部の高さ位置は、蒸発器10の作動媒体流路10aの上流側の端部の高さ位置と同じになるように設定されている。また、予熱器12の作動媒体流路12aの下流側の端部と蒸発器10の作動媒体流路10aの上流側の端部とは、接続流路29により接続されている。本実施形態では、接続流路29は、屈曲する部位を有することなく一直線上に延びる形状を有している。
【0025】
エネルギー回収部20は、膨張機22と、動力回収機23と、凝縮器24と、ポンプ26と、回収流路28と、を備えている。
【0026】
回収流路28は、蒸発器10と膨張機22との間、膨張機22と凝縮器24との間、凝縮器24とポンプ26との間、及び、ポンプ26と予熱器12との間を接続している。つまり、回収流路28及び接続流路29により、閉回路(作動媒体が、蒸発器10、膨張機22、凝縮器24、ポンプ26及び予熱器12をこの順に通過するように循環する循環回路)が形成される。本実施形態では、作動媒体とともに油が前記閉回路を循環する。
【0027】
膨張機22は、回収流路28における蒸発器10の下流側の部位に設けられている。膨張機22は、蒸発器10から流出した気相の作動媒体を膨張させる。本実施形態では、膨張機22として、蒸発器10から流出した気相の作動媒体の膨張エネルギーにより回転駆動されるロータを有する容積式のスクリュー膨張機が用いられている。具体的に、膨張機22は、雌雄一対のスクリュロータを有している。
【0028】
動力回収機23は、膨張機22に接続されている。本実施形態では、動力回収機23として発電機が用いられている。この動力回収機23は、膨張機22の一対のスクリュロータのうちの一方に接続された回転軸を有している。動力回収機23は、前記回転軸が前記スクリュロータの回転に伴って回転することにより電力を発生させる。なお、動力回収機23として、発電機の他、圧縮機等が用いられてもよい。
【0029】
凝縮器24は、回収流路28における膨張機22の下流側の部位に設けられている。凝縮器24は、膨張機22から流出した作動媒体を外部から供給される冷却媒体(冷却水等)で冷却することにより凝縮(液化)させる。
【0030】
ポンプ26は、回収流路28における凝縮器24の下流側の部位に設けられている。ポンプ26は、液相の作動媒体を所定の圧力まで加圧して予熱器12へ送り出す。ポンプ26としては、インペラをロータとして備える遠心ポンプや、ロータが一対のギアからなるギアポンプ、スクリュポンプ、トロコイドポンプ等が用いられる。
【0031】
加熱媒体供給流路30は、気相の加熱媒体を生成する外部の熱源から蒸発器10及び予熱器12にこの順に加熱媒体を供給するための流路である。加熱媒体供給流路30は、蒸発器10の加熱媒体流路10bに接続可能に構成されており、予熱器12の加熱媒体流路12bに接続可能に構成されている。
【0032】
本実施形態では、加熱媒体供給流路30のうち蒸発器10と予熱器12との間の部位にドレインタンク32及びスチームトラップ34が設けられている。ドレインタンク32は、蒸発器10から流出した加熱媒体のうち液相の加熱媒体を貯留する。スチームトラップ34は、ドレインタンク32から流出した加熱媒体のうち気相の加熱媒体の通過を禁止するとともに液相の加熱媒体の通過を許容する。
【0033】
加熱媒体供給流路30には、予熱器12をバイパスするバイパス流路36が接続されている。具体的に、バイパス流路36の上流側の端部は、加熱媒体供給流路30のうちスチームトラップ34と予熱器12との間の部位に接続されており、バイパス流路36の下流側の端部は、加熱媒体供給流路30のうち予熱器12よりも下流側の部位に接続されている。
【0034】
加熱媒体供給流路30には、第1排出流路38及び第2排出流路39が接続されている。第1排出流路38は、ドレインタンク32から流出した加熱媒体を外部に排出するための流路であり、加熱媒体供給流路30のうちドレインタンク32とスチームトラップ34との間の部位に接続されている。第2排出流路39は、蒸発器10に流入する前の加熱媒体を外部に排出するための流路であり、加熱媒体供給流路30のうち蒸発器10の上流側の部位に接続されている。
【0035】
バイパス流路36には、第1開閉弁V1が設けられている。加熱媒体供給流路30のうち当該加熱媒体供給流路30とバイパス流路36の上流側の端部との接続部よりも下流側でかつ予熱器12よりも上流側の部位には、第2開閉弁V2が設けられている。加熱媒体供給流路30のうち予熱器12よりも下流側でかつ当該加熱媒体供給流路30とバイパス流路36の下流側の端部との接続部よりも上流側の部位には、第3開閉弁V3が設けられている。第1排出流路38には、第4開閉弁V4が設けられている。第2排出流路39には、第5開閉弁V5が設けられている。加熱媒体供給流路30のうち当該加熱媒体供給流路30と第2排出流路39との接続部よりも上流側の部位には、第6開閉弁V6が設けられている。本実施形態では、各開閉弁V1〜V6として、開状態と閉状態とを切り替え可能な電磁弁が用いられている。
【0036】
制御部40は、予め定められた条件に応じて各開閉弁V1〜V6の開閉を切り替える切替操作を行う。前記条件は、予熱器12に流入する加熱媒体の過冷却度α1が0度よりも大きいか否か、蒸発器10から流出する加熱媒体の過冷却度α2が一定の範囲内に収まっているか否か、予熱器12から流出する作動媒体の過冷却度βが0度よりも大きいか否か、そして、蒸発器10に流入する気相の加熱媒体の圧力Pが所定値P0未満か否か、である。前記過冷却度α1は、加熱媒体供給流路30のうち予熱器12の上流側の部位(予熱器12と第2開閉弁V2との間の部位)に設けられた温度センサ41及び圧力センサ42の各検出値に基づいて導出される。前記過冷却度α2は、加熱媒体供給流路30のうち蒸発器10の下流側の部位(蒸発器10とドレインタンク32との間の部位)に設けられた温度センサ43及び圧力センサ44の各検出値から導出される。前記過冷却度βは、接続流路29に設けられた温度センサ45及び圧力センサ46の各検出値から導出される。ここで、過冷却度とは、飽和温度(凝縮温度)からの温度低下のことをいう。具体的には、「過冷却度=飽和温度(凝縮温度)−加熱媒体または作動媒体の温度」で計算される。つまり、「過冷却度が0度」ということは、加熱媒体または作動媒体の温度が、飽和温度(凝縮温度)と等しいことを意味する。前記圧力Pは、加熱媒体供給流路30のうち蒸発器10の上流側の部位(蒸発器10と第2排出流路39の上流側の端部との間の部位)に設けられた圧力センサ47により検知される。なお、制御部40は、蒸発器10から流出する作動媒体の過熱度が所定の範囲内に収まるようにポンプ26の回転数を調整する操作を行いながら、前記切替操作を行う。
【0037】
次に、
図2を参照しながら、起動時及び通常運転時における制御部40の具体的な制御内容を説明する。エネルギー回収装置の運転開始前(起動前)は、第1開閉弁V1は開状態であり、第2開閉弁V2及び第3開閉弁V3は閉状態であり、第4開閉弁V4及び第5開閉弁V5は開状態であり、第6開閉弁V6は閉状態である。
【0038】
本装置の運転が開始されると(ステップS10)、制御部40は、第1開閉弁V1を開状態、第2開閉弁V2及び第3開閉弁V3を閉状態、第4開閉弁V4及び第5開閉弁V5を閉状態、第6開閉弁V6を開状態とする(ステップS11)。これにより、加熱媒体は、蒸発器10を通過した後に予熱器12に流入することなくバイパス流路36を介して外部に排出される。また、運転の開始により、冷却媒体の凝縮器24への供給及びポンプ26の駆動も開始される。これにより、作動媒体は前記閉回路を循環するので、動力回収機23により動力(本実施形態では電力)が回収される。
【0039】
次に、制御部40は、蒸発器10から流出した加熱媒体の過冷却度α2が特定の下限値a以上かつ特定の上限値b以下であるか否かを判定する(ステップS12)。この結果、過冷却度α2が下限値a未満、または、上限値bよりも大きい場合(ステップS12でNO)、制御部40は、ステップS12に戻る、すなわち、蒸発器10から流出した加熱媒体がバイパス流路36を介して外部に排出する状態(以下、「バイパス状態」という)を維持する。
【0040】
過冷却度α2が上限値bよりも大きい(高過ぎる)場合に前記バイパス状態を維持する理由は、蒸発器10でのウォータハンマー現象の発生を抑制することにある。具体的に、本装置の起動時は、蒸発器10の温度が定常運転時のそれに比べて低いため、当該蒸発器10に流入した加熱媒体が凝縮しやすく、よって加熱媒体流路10b内に液相の加熱媒体(ドレイン)が溜まりやすい状態にある。加熱媒体流路10b内にドレインが溜まると、当該加熱媒体流路10bから流出した過冷却度α2が高くなる。換言すれば、前記過冷却度α2が高い場合(上限値bよりも大きい場合)、加熱媒体流路10b内にドレインが相当程度溜まった状態にあると考えられる。この状態で蒸発器10に気相の加熱媒体が流入すると、当該気相の加熱媒体が前記ドレインに冷却されることによって急激にその体積を減少させるので、蒸発器10においてウォータハンマー現象が生じる懸念がある。一方、その状態において液相の加熱媒体が予熱器12に流入する場合、当該液相の加熱媒体が予熱器12の加熱媒体流路12bを通過するのに時間を要するため、蒸発器10内から液相の加熱媒体(ドレイン)が流出しにくくなる。よって、過冷却度α2が上限値bよりも大きい場合に前記バイパス状態を維持することにより、液相の加熱媒体が蒸発器10から外部に排出されるまでに要する時間が短縮されるため、蒸発器10からのドレインの流出が促進される。よって、蒸発器10でのウォータハンマー現象の発生が抑制される。
【0041】
逆に、過冷却度α2が下限値a未満の場合に前記バイパス状態を維持する理由は、主として、予熱器12での熱交換効率の低下を抑制すること、及び、蒸発器10でのウォータハンマー現象の発生を抑制することにある。具体的に、過冷却度α2が下限値a未満の場合、加熱媒体が例えば気液二相の状態の場合もある。この場合において加熱媒体が予熱器12に流入する際、予熱器12で圧力損失が生じるため、加熱媒体が予熱器12を通過しにくくなる。このため、予熱器12での熱交換効率が低下する。さらに、前記圧力損失が原因(抵抗)となり、蒸発器10内から液相の加熱媒体(ドレイン)が流出しにくくなる。よって、過冷却度α2が下限値a未満の場合に前記バイパス状態を維持することにより、すなわち、加熱媒体の予熱器12への流入を禁止することにより、予熱器12での熱交換効率の低下が抑制され、さらに、前記圧力損失に起因して蒸発器10内から液相の加熱媒体(ドレイン)が流出しにくくなる状態が回避される(液相の加熱媒体の流出が促進される)ので、蒸発器10でのウォータハンマー現象の発生が抑制される。
【0042】
またこのとき、予熱器12での作動媒体による熱回収が行われなくなるので、予熱器12に加熱媒体が流入する場合に比べて低温の作動媒体が予熱器12から流出して蒸発器10に流入する。これにより、蒸発器10で作動媒体により加熱媒体が十分に冷却される。そして、蒸発器10から流出する加熱媒体の過冷却度α2が下限値a以上となるまでの間加熱媒体の予熱器12への流入が禁止されるので、蒸発器10での熱交換効率が低くなる状態が回避される。
【0043】
そして、過冷却度α2が下限値a以上かつ上限値b以下である場合(ステップS12でYES)、制御部40は、蒸発器10に流入する作動媒体の過冷却度βが0度よりも大きいか否かを判定する(ステップS13)。この結果、過冷却度βが0度よりも大きくない場合(ステップS13でNO)、制御部40は、再びステップS12に戻る、すなわち、バイパス状態を維持する。
【0044】
過冷却度βが0度よりも大きくない場合にバイパス状態を維持する理由は、蒸発器10での熱交換効率、すなわち、エネルギー回収部20のエネルギー回収効率を向上させることにある。例えば、気液二相の作動媒体が蒸発器10に流入した場合、気相の作動媒体の比重と液相の作動媒体の比重とは互いに異なることから、蒸発器10の作動媒体流路10a内には、気相の作動媒体の通過する領域と液相の作動媒体が通過する領域とが形成される。このため、蒸発器10において作動媒体と加熱媒体との均一な熱交換が行われないこと(熱交換効率の低下)が懸念される。よって、過冷却度βが0度よりも大きくない場合(気相の作動媒体が存在し得る場合)、バイパス状態を維持する、すなわち、加熱媒体の予熱器12への流入を禁止する。これにより、予熱器12での加熱媒体による作動媒体の加熱が停止されるので、予熱器12から流出する作動媒体に気相の作動媒体が含まれることが抑制される。よって、蒸発器10での作動媒体の偏流が抑制され、蒸発器10での熱交換効率が向上する。
【0045】
そして、過冷却度βが0度よりも大きい場合(ステップS13でYES)、制御部40は、第1開閉弁V1を閉状態、第2開閉弁V2及び第3開閉弁V3を開状態、第4開閉弁V4及び第5開閉弁V5を閉状態、第6開閉弁V6を開状態とする(ステップS14)。これにより、加熱媒体は、蒸発器10を通過した後に予熱器12を通過してから外部に排出される。つまり、本熱エネルギー回収装置は、通常運転状態となる。
【0046】
続いて、制御部40は、予熱器12に流入する加熱媒体の過冷却度α1が0度よりも大きいか否かを判定する(ステップS15)。この結果、過冷却度α1が0度よりも大きくない場合(ステップS15でNO)、制御部40は、ステップS11に戻り、前記バイパス状態に戻す。
【0047】
過冷却度α1が0度よりも大きくない場合にバイパス状態とする理由は、予熱器12でのウォータハンマー現象の発生を抑制することにある。具体的に、過冷却度α1が0度よりも大きくない場合(気相の加熱媒体が存在し得る場合)に加熱媒体が予熱器12へ流入すると、気相の加熱媒体が予熱器12に流入した後に当該予熱器12内で凝縮することに起因してウォータハンマー現象が生じるおそれがある。よって、過冷却度α1が0度よりも大きくない場合、バイパス状態を維持する、すなわち、加熱媒体の予熱器12への流入を禁止する。これにより、予熱器12内でのウォータハンマー現象の発生が抑制される。
【0048】
一方、過冷却度α1が0度よりも大きい場合(ステップS15でYES)、制御部40は、過冷却度α2が下限値a以上かつ上限値b以下であるか否かを判定する(ステップS16)。この結果、過冷却度α2が下限値a未満、または、上限値bよりも大きい場合(ステップS16でNO)、制御部40は、ステップS11に戻り、前記バイパス状態に戻す。この理由は、上記のとおりである。また、過冷却度α2が下限値a未満の場合に前記バイパス状態に戻すことにより、蒸発器10での熱交換効率が低くなる状態が回避されることに加え、予熱器12でのウォータハンマー現状の発生も抑制される。
【0049】
そして、過冷却度α2が下限値a以上かつ上限値b以下である場合(ステップS16でYES)、制御部40は、蒸発器10に流入する作動媒体の過冷却度βが0度よりも大きいか否かを判定する(ステップS17)。この結果、過冷却度βが0度よりも大きくない場合(ステップS17でNO)、制御部40は、ステップS11に戻り、前記バイパス状態に戻す。この理由は、上記のとおりである。
【0050】
一方、過冷却度βが0度よりも大きい場合(ステップS17でYES)、制御部40は、ステップS15に戻る、すなわち、前記通常運転状態を継続する。
【0051】
次に、
図3を参照しながら、停止時における制御部40の具体的な制御内容を説明する。
【0052】
制御部40は、停止信号を受信すると(ステップS20)、加熱媒体の蒸発器10及び予熱器12への供給を停止するとともに前記バイパス状態とするために、第1開閉弁V1を開状態、第2開閉弁V2及び第3開閉弁V3を閉状態、第4開閉弁V4及び第5開閉弁V5を閉状態、第6開閉弁V6を閉状態とする(ステップS21)。
【0053】
その後、制御部40は、ポンプ26を停止する(ステップS22)。なお、ポンプ26の停止と同時、あるいはそれに前後して、凝縮器24への冷却媒体の供給も停止される。
【0054】
続いて、制御部40は、蒸発器10に流入する気相の加熱媒体の圧力Pが所定値P0未満か否かを判定する(ステップS23)。本実施形態では、この条件を「停止条件」という。
【0055】
そして、前記圧力Pが所定値P0以上であれば(ステップS23でNO)、すなわち、停止条件が成立していなければ、制御部40は、ステップS23に戻る。
【0056】
一方、前記圧力Pが所定値P0未満であれば(ステップS23でYES)、制御部40は、第1開閉弁V1を開状態、第2開閉弁V2及び第3開閉弁V3を閉状態、第4開閉弁V4及び第5開閉弁V5を開状態、第6開閉弁V6を閉状態とする(ステップS24)。この理由は、蒸発器10の加熱媒体流路10b内の加熱媒体の外部への排出を促進するためである。具体的に、第4開閉弁V4及び第5開閉弁V5を開状態とすることにより、加熱媒体供給流路30内が外部に開放されるので、蒸発器10の加熱媒体流路10b内の加熱媒体が重力により外部へ排出される。
【0057】
以上に説明したように、本熱エネルギー回収装置では、蒸発器10及び予熱器12で作動媒体が得た熱エネルギーをエネルギー回収部20により回収しつつ、予熱器12でのウォータハンマー現象の発生を抑制することができる。具体的に、予熱器12に流入する加熱媒体の過冷却度α1が0度よりも大きくない場合(気相の加熱媒体が存在し得る場合)に加熱媒体の予熱器12への流入が禁止され、過冷却度α1が0度よりも大きい場合に予熱器12への加熱媒体の流入が許容される。つまり、予熱器12には、液相の加熱媒体が流入する。よって、予熱器12内でのウォータハンマー現象の発生が抑制される。より詳細には、気相の加熱媒体が予熱器12に流入した後に当該予熱器12内で凝縮することに起因して生じるウォータハンマー現象の発生が抑制される。
【0058】
また、本実施形態では、蒸発器10において作動媒体により加熱媒体の潜熱がすべて回収されるので、蒸発器10での熱交換効率、すなわち、エネルギー回収部20のエネルギー回収効率が向上する。具体的に、本エネルギー回収装置では、蒸発器10から流出した加熱媒体の過冷却度α2が下限値a未満の場合に加熱媒体の予熱器12への流入を禁止する。これにより、予熱器12での作動媒体による熱回収が行われなくなるので、予熱器12に加熱媒体が流入する場合に比べて低温の作動媒体が予熱器12から流出して蒸発器10に流入する。このため、蒸発器10で作動媒体により加熱媒体が十分に冷却される。そして、蒸発器10から流出する加熱媒体の過冷却度α2が下限値a以上となるまでの間加熱媒体の予熱器12への流入が禁止されるので、予熱器12でのウォータハンマー現象の発生の抑制と蒸発器10での熱交換効率が低くなる状態との双方が回避される。さらに、加熱媒体が予熱器12を通過する際の圧力損失に起因して蒸発器10内から液相の加熱媒体(ドレイン)が流出しにくくなる状態が回避されるので、蒸発器10でのウォータハンマー現象の発生も抑制される。
【0059】
加えて、本実施形態では、本熱エネルギー回収装置の起動時及び通常運転時において蒸発器10からの液相の加熱媒体(ドレイン)の流出が促進されるので、蒸発器10でのウォータハンマー現象の発生がさらに抑制される。具体的に、本エネルギー回収装置では、蒸発器10から流出した加熱媒体の過冷却度α2が上限値bよりも大きい場合(蒸発器10において作動媒体により加熱媒体の潜熱のみならず顕熱も十分に回収されている場合)に加熱媒体を予熱器12へ流入させることなく外部に排出させる。これにより、液相の加熱媒体が蒸発器10から外部に排出されるまでに要する時間が短縮されるため、蒸発器10からのドレインの流出が促進される。よって、起動時及び通常運転時における蒸発器10でのウォータハンマー現象の発生が抑制される。
【0060】
さらに、本実施形態では、本熱エネルギー回収装置の停止時において蒸発器10からの液相の加熱媒体の流出を促進される操作(加熱媒体を予熱器12へ流入させることなく外部に排出させる操作)が行われるので、本装置の起動時における蒸発器10でのウォータハンマー現象の発生が一層抑制される。
【0061】
また、本実施形態では、蒸発器10内での作動媒体の偏流が抑制されるので、蒸発器10での熱交換効率が一層向上する。具体的に、本エネルギー回収装置では、蒸発器10に流入する作動媒体の過冷却度βが0度よりも大きくない場合(気相の作動媒体が存在し得る場合)に、加熱媒体の予熱器12への流入が禁止されるので、つまり、予熱器12での加熱媒体による作動媒体の加熱が停止されるので、予熱器12から流出する作動媒体に気相の作動媒体が含まれることが抑制される。よって、蒸発器10での作動媒体の偏流が抑制され、蒸発器10での熱交換効率が向上する。
【0062】
また、接続流路29は、一直線上に延びる形状を有するので、当該接続流路29で生じる圧力損失が低減される。このため、作動媒体に含まれる油の接続流路29への滞留が抑制される。よって、適切な量の油がエネルギー回収部20の膨張機22に流入する。
【0063】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0064】
例えば、蒸発器10から流出した加熱媒体の過冷却度α2が上限値bよりも大きい場合、制御部40は、第4開閉弁V4を開いてもよい。このようにすれば、液相の加熱媒体がスチームトラップ34を通過した後にバイパス流路36を介して外部に排出される場合に比べて、当該液相の加熱媒体が第1排出流路38を通じてより円滑に外部に排出される。よって、蒸発器10の加熱媒体流路10bからの液相の加熱媒体(ドレイン)の排出が促進されるので、蒸発器10でのウォータハンマー現象の発生が一層抑制される。