特許第6170489号(P6170489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170489
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】短カット微小繊維
(51)【国際特許分類】
   D21H 15/02 20060101AFI20170713BHJP
   D21H 17/53 20060101ALI20170713BHJP
   D01F 6/84 20060101ALI20170713BHJP
   D01F 6/92 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
   D21H15/02
   D21H17/53
   D01F6/84 305C
   D01F6/92 301J
【請求項の数】18
【全頁数】65
(21)【出願番号】特願2014-503698(P2014-503698)
(86)(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公表番号】特表2014-511947(P2014-511947A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】US2012031364
(87)【国際公開番号】WO2012138552
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2015年3月17日
(31)【優先権主張番号】13/433,854
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/472,964
(32)【優先日】2011年4月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,マーク・ドワイト
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,マーヴィン・リン
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,メルヴィン・グレン
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−092235(JP,A)
【文献】 特表2010−514956(JP,A)
【文献】 特表2009−525409(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/123678(WO,A1)
【文献】 特表2006−528282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00− 11/14
D21D 1/00− 99/00
D21F 1/00− 13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00− 27/42
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
短カット微小繊維含有混合物であって、前記混合物が:
0.5d/f以下の繊度を持つ複数の水非分散性短カット重合体微小繊維であって、前記水非分散性短カット重合体微小繊維は300〜750のアスペクト比を持つ、前記微小繊維と;
水と;
前記水に分散されたスルホポリエステルと、
を含んでなり、
前記スルホポリエステルは少なくとも40℃のガラス転移温度(Tg)を持ち、
前記スルホポリエステルは
(i) 1種以上のジカルボン酸の残基と;
(ii) 全反復単位に対し4〜40モル%の、2つの官能基と、芳香族環または脂環式環に結合した1つ以上のスルホン酸基とを持つ少なくとも1種のスルホ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜25モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と、を含んでなる、
前記混合物。
【請求項2】
前記水非分散性短カット重合体微小繊維が300〜650のアスペクト比を持つ、
請求項1の水非分散性短カット重合体微小繊維。
【請求項3】
前記水非分散性短カット重合体微小繊維が300〜550のアスペクト比を持つ、
請求項1の水非分散性短カット重合体微小繊維。
【請求項4】
前記水非分散性短カット重合体微小繊維が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロースエステル、およびポリ塩化ビニルからなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体を含んでなる、
請求項1の短カット微小繊維含有混合物。
【請求項5】
前記スルホポリエステルが少なくとも40℃のガラス転移温度(Tg)を持ち、前記スルホポリエステルが、240℃、1rad/秒の歪速度で測定すると、12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し、前記水非分散性短カット重合体微小繊維がセルロースエステルを含んでなる、
請求項1の短カット微小繊維含有混合物。
【請求項6】
前記水非分散性短カット重合体微小繊維がポリエチレンテレフタレート(PET),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエチレンの単重合体および共重合体、ポリプロピレンの単重合体および共重合体、およびナイロン−6からなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体を含んでなる、
請求項1の短カット微小繊維含有混合物。
【請求項7】
前記水非分散性短カット重合体微小繊維がポリエチレンテレフタレート(PET)を含んでなる、
請求項6の短カット微小繊維含有混合物。
【請求項8】
前記スルホポリエステルが、240℃、1rad/秒の歪速度で測定すると、12,000ポアズ未満の溶融粘度を示す、
請求項1の短カット微小繊維含有混合物。
【請求項9】
前記水非分散性短カット微小繊維が単成分微小繊維である、
請求項1の短カット微小繊維含有混合物。
【請求項10】
前記短カット微小繊維含有混合物がスラリーの形態である、
請求項1の短カット微小繊維含有混合物。
【請求項11】
前記水非分散性短カット重合体微小繊維同士が互いに結合していない、
請求項1の短カット微小繊維含有混合物。
【請求項12】
前記短カット微小繊維含有混合物が不織ウェブの形態にない、
請求項1の短カット微小繊維含有混合物。
【請求項13】
前記短カット微小繊維含有混合物が、複数の短カット多成分繊維を洗浄水と接触させる工程を含んでなる方法により形成され、前記短カット多成分繊維の各々が、前記スルホポリエステルの少なくとも一部により結合された複数の前記水非分散性短カット重合体微小繊維を含んでなる、
請求項1の短カット微小繊維含有混合物。
【請求項14】
前記短カット多成分繊維と前記洗浄水との前記接触は、前記スルホポリエステルを分散させ、前記水非分散性短カット微小繊維を開放する、
請求項13の短カット微小繊維含有混合物。
【請求項15】
前記短カット微小繊維含有混合物の前記水は前記洗浄水の少なくとも一部を含んでなる、
請求項14の短カット微小繊維含有混合物。
【請求項16】
請求項1に記載の短カット重合体微小繊維含有混合物を含んでなる繊維物品。
【請求項17】
前記繊維物品が、空気ろ過用ろ材、水ろ過用ろ材、体液ろ過用ろ材、溶媒ろ過用ろ材、炭化水素ろ過用ろ材、製紙工程用ろ材、不織布、不織ウェブ、湿式堆積ウェブ、乾式堆積ウェブ、メルトブローウェブ、スパンボンドウェブ、熱ボンドウェブ、水力交絡ウェブ、人工皮革、スエード革、清浄拭き取り具、多層不織布、積層体、複合体、ガーゼ、包帯、おむつ、練習用パンツ、タンポン、外科用ガウン、外科用マスク、女性用ナプキン、個人衛生製品用の交換挿入品、洗浄製品用の交換挿入品、食品製造用ろ材、医療用ろ材、および紙製品からなる群から選ばれた不織物品である、
請求項16の繊維物品。
【請求項18】
前記スルホポリエステルが、240℃、1rad/秒の歪速度で測定すると、12,000ポアズ未満の溶融粘度を示す、
請求項1に記載の混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホポリエステルを含んでなる水分散性繊維と繊維物品に関する。さらに、本発明は、スルホポリエステルを含んでなる多成分繊維、短カット微小繊維を含むマイクロデニール繊維、およびこれらの繊維から作られた繊維物品に関する。また本発明は、水分散性で多成分のマイクロデニール繊維の製造法、およびこの繊維から作られる不織布にも関する。これらの繊維と繊維物品は、水で流せるパーソナルケア製品および医療用製品に用途がある。
【背景技術】
【0002】
繊維、メルトブローウェブ、その他の溶融紡糸繊維物品は、ポリ(プロピレン)、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性重合体から作られてきた。これらの繊維および繊維物品の1つの共通の用途は、不織布であり、特に、清拭具、女性用衛生製品、乳児用おむつ、成人用失禁ブリーフ、病院/外科用その他医療用使い捨て製品、防護布および保護層、ジオテキスタイル製品、工業用清拭具、ろ材のようなパーソナルケア製品にある。残念ながら、従来の熱可塑性重合体から作られたパーソナルケア製品は、処分が難しく、普通は埋立地に置かれる。有望な他の処分法の1つは、これらの製品またはその構成材料を“水に流せる”ようにすること、すなわち、公共下水システムと適合するようにすることである。水分散性または水溶性材料の使用もパーソナルケア製品のリサイクル性と再生活用を増大させる。パーソナルケア製品に現在用いられている各種熱可塑性重合体は、元来水分散性または水溶性でないので、容易に崩壊して下水システム中に処分できるか又は容易にリサイクルできる物品の製造に使用されることはない。
【0003】
水に流せるパーソナルケア製品が望まれた結果、様々な程度の水応答性を示す繊維、不織製品、その他の繊維物品が必要とされてきた。これらのニーズに応える種々のアプローチが例えば米国特許第6,548,592号;第6,552,162号;第5,281,306号;第5,292,581号;第5,935,880号;および第5,509,913号;米国特許出願第09/775,312号;および第09/752,017号;およびPCT国際公開WO01/66666 A2に記載されてきた。しかしながら、これらのアプローチは多くの不利益を伴っており、湿潤条件下でも乾燥条件下でも引張強さ、吸収性、柔軟性、布保全性のような性能特性の良好なバランスのとれた繊維または不織布のような繊維物品を与えない。
【0004】
例えば、典型的な不織技術は、樹脂結合接着剤で処理されることにより、強力な保全性、その他の所望の特性を示すウェブを形成する繊維の多方向堆積に基づいている。しかしながら、これにより得られる組立品は一般的に水応答性に乏しく、水に流せる用途には適さない。結合剤の存在は、シート湿潤性の低下、剛性の増大、粘着性、製造費の増大のような望ましくない性質を最終製品にもたらすこともある。使用時には充分な湿潤強度を示すが、処分後には速やかに分散するような結合剤を調製するのも難しい。したがって、これらの結合剤を用いた不織組立品は周囲条件下で緩徐に崩壊するか、または体液の存在下で充分とは言えない湿潤強度特性を示すと思われる。この問題に対処するため、塩を添加した又は添加しないアクリルまたはメタクリル酸を含有する格子状構造物のようなイオン感受性水分散性結合剤とpHが知られており、例えば米国特許第6,548,592 B1号に記載されている。しかしながら、公共下水システムおよび居住地域の汚水処理システムにおけるイオン濃度やpH値は、地理的位置で広くばらつく可能性があり、結合剤が可溶化し、分散するのに充分でないことがある。この場合、繊維物品は処分後に分解せず、配水管や下水道枝道を詰まらせる可能性がある。
【0005】
水分散性成分と熱可塑性水非分散性成分を含有する多成分繊維が例えば米国特許第5,916,678号;第5,405,698号;第4,966,808号;第5,525,282号;第5,366,804号;および第5,486,418号に記載されている。例えば、これらの多成分繊維は、例えば海島型、さや芯型、並列型または分割パイ形のような造形または設計された横断面を持つ二成分繊維と思われる。この多成分繊維は水または希釈アルカリ溶液に付すことができ、その中で水分散性成分が溶けてなくなり、水非分散性成分が極めて小さな繊度の個々の独立した繊維として後に残る。しかしながら、良好な水分散性を持つ重合体は得られた多成分繊維に粘着性を与えることが多く、その結果、巻付または貯蔵中、数日後に特に高温湿潤条件下で繊維がくっ付きあうか、かたまるか、融合する。融合を防ぐため、繊維の表面に脂肪酸または油を基材とした仕上剤を施すことが多い。さらに、例えば米国特許第6,171,685号に記載されたように、高い比率の顔料または充填剤を水分散性重合体に時に添加して、繊維の融合を防ぐ。このような油性仕上剤、顔料および充填剤は追加の処理工程を必要とし、最終繊維に望ましくない性質を与える可能性がある。多くの水分散性重合体も除去するのにアルカリ溶液が必要であり、このため繊維の他の重合体成分の分解を引起し、例えば固有粘度、靭性、溶融強度の低下のような事態を起こす可能性がある。さらに、水分散性重合体には水力交絡中の水への暴露に耐えられないものもあるので、これらは不織ウェブや布の製造に適していない。
【0006】
あるいは、水分散性成分は不織ウェブ中の熱可塑性繊維の結合剤として働くことがある。水に曝されると、繊維−繊維結合が分離し、不織ウェブがその保全性を失い個々の繊維に分解する。しかしながら、これらの不織ウェブの熱可塑性繊維成分は水分散性でなく、水性媒体中に存在したままであるので、地方公共団体の排水処理施設から最終的に除去しなければならない。水力交絡は、繊維をまとめるために添加される結合剤を含有しないか、または極めて低濃度(5重量%未満)で含有する分解性不織布を製造するのに用いられることがある。これらの布は処分すると分解すると思われるが、それらは水溶性または水分散性でない繊維を利用することが多く、下水道システム内で絡み合ったり、塞いだりすることがある。添加する水分散性結合剤は水力交絡からほとんど影響を受けてはならず、ゼラチン状の堆積層や架橋を形成することにより布の取扱や下水道関連の諸問題を引起す一因となってはならない。
【0007】
少数の水溶性または水分散性重合体が入手可能であるが、一般的にメルトブロー繊維形成操作または溶融紡糸全般には適用できない。ポリビニールアルコール、ポリビニールピロリドン、ポリアクリル酸のような重合体は、適した溶融粘度が達成される点より低い温度で起こる熱分解のため溶融加工できない。高分子量ポリエチレンオキシドは好適な熱安定性を有すると思われるが、重合体界面に高粘度溶液をもたらすので、分解速度が遅いであろう。水分散性スルホポリエステルは例えば米国特許第6,171,685号、第5,543,488号;第5,853,701号;第4,304,901号;第6,211,309号;第5,570,605号;第6,428,900号;および第3,779,993号に記載されている。しかしながら、典型的スルホポリエステル類は低分子量熱可塑性樹脂であり脆く、かつ、割れたり崩れたりしない材料のロールを得るための巻取操作に耐える柔軟性を欠いている。スルホポリエステル類もフィルムや繊維に加工する過程で互いに粘着するか溶融する可能性があるので、これを避けるため油性仕上剤か大量の顔料または充填剤の使用を必要とすることがある。低分子量ポリエチレンオキシド(より一般的にはポリエチレングリコールとして知られている)は弱い/脆い重合体であり、繊維の用途に必要とされる物性を持たない。溶液法を介して既知の水溶性重合体から繊維を形成するという別法もあるが、溶媒、特に水、を除去するという煩雑さが加わるので、製造費が増加する。
【0008】
したがって、水分散性繊維およびこの繊維から作られた繊維物品であって、湿気の存在下で、特に人の体液に曝されている状態で、充分な引張強さ、吸収性、柔軟性および布保全性を示すものが必要である。さらに、結合剤を必要とせず、住宅や自治体の下水設備中に完全に分散するか溶解する繊維物品が必要である。可能性のある用途としては、メルトブローウェブ、スパンボンド不織布、水力交絡布、湿式堆積不織布、乾式堆積不織布、二成分繊維成分、接着促進層、セルロース系材料用のバインダー、水で流せる不織布およびフィルム、溶解性バインダー繊維、保護層、および水中に放出または溶解される有効成分用の担体が含まれるが、これらに限定されることはない。また、水分散性成分であって、紡糸操作中にフィラメントの過度の粘着や融合を示さず、中性またはやや酸性のpHで熱湯により容易に除去され、水力交絡法で不織布を製造するのに適している水分散性成分を持つ多成分繊維も必要である。これらの多成分繊維は、各種物品を製造するのに使用できる微小繊維を製造するのに利用できる。他の押出可能な溶融紡糸繊維材料も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,548,592号
【特許文献2】米国特許第6,552,162号
【特許文献3】米国特許第5,281,306号
【特許文献4】米国特許第5,292,581号
【特許文献5】米国特許第5,935,880号
【特許文献6】米国特許第5,509,913号
【特許文献7】米国特許出願第09/775,312号
【特許文献8】米国特許出願第09/752,017号
【特許文献9】PCT国際公開WO01/66666 A2
【特許文献10】米国特許第6,548,592 B1号
【特許文献11】米国特許第5,916,678号
【特許文献12】米国特許第5,405,698号
【特許文献13】米国特許第4,966,808号
【特許文献14】米国特許第5,525,282号
【特許文献15】米国特許第5,366,804号
【特許文献16】米国特許第5,486,418号
【特許文献17】米国特許第6,171,685号
【特許文献18】米国特許第5,543,488号
【特許文献19】米国特許第5,853,701号
【特許文献20】米国特許第4,304,901号
【特許文献21】米国特許第6,211,309号
【特許文献22】米国特許第5,570,605号
【特許文献23】米国特許第6,428,900号
【特許文献24】米国特許第3,779,993号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
我々は、軟質水分散性繊維はスルホポリエステルから調製されることがあることを予想外に発見した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、
(A) 少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を持つスルホポリエステルであって、前記スルホポリエステルは
(i) 1種以上のジカルボン酸の残基と;
(ii) 全反復単位に対し約4〜約40モル%の、2つの官能基と芳香族環または脂環式環に結合した1つ以上のスルホン酸基とを持つ少なくとも1種のスルホ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基とを含んでなる、
前記スルホポリエステルと;
(B) 必要であれば、前記スルホポリエステルと配合された水分散性重合体と;
(C) 必要であれば、前記スルホポリエステルと配合された水非分散性重合体(但し、本配合物は非混和性配合物である)と、
を含んでなる水分散性繊維であって、
前記繊維は、前記繊維の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有する、
前記繊維を提供する。
【0012】
本発明の繊維は、速やかに水に分散または溶解する一成分繊維でよく、メルトブローまたは溶融紡糸により製造してよい。この繊維は、単一のスルホポリエステル、または当該スルホポリエステルと水分散性または水非分散性重合体とのブレンドから調製してよい。したがって、本発明の繊維は必要に応じ、スルホポリエステルとブレンドされた水分散性重合体を含んでよい。さらに、この繊維は必要に応じ、スルホポリエステルとブレンドされた水非分散性重合体を含んでよいが、このブレンドは非混和性ブレンドである。本発明は、上記水分散性繊維を含んでなる繊維物品も含む。したがって、本発明の繊維は、糸、メルトブローウェブ、スパンボンドウェブ、不織布であって、水分散性または水で流せるもの、等の様々な繊維物品を作るのに用いてよい。本発明のステープルファイバーも紙、不織ウェブ、織編用糸中で天然繊維または合成繊維とブレンドもできる。
【0013】
本発明の他の態様は、
(A) 少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を持つスルホポリエステルであって、当該スルホポリエステルが
(i) 全酸残基に対し約50〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸残基と;
(ii) 全酸残基に対し、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約20モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、これら官能基はヒドロキシル、カルボキシルまたはそれらの組合せである残基と、
を含んでなるスルホポリエステルと;
(B) 必要であれば、前記スルホポリエステルと配合された第1の水分散性重合体と;
(C) 必要であれば、前記スルホポリエステルと配合されて配合物を形成する水非分散性重合体(但し、本配合物は非混和性配合物である)と、
を含んでなる水分散性繊維であって、
前記繊維は、前記繊維の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有する、
前記繊維である。
【0014】
本発明の水分散性繊維物品には、例えば清拭具、ガーゼ、ティシュー、おむつ、幼児の練習用パンツ、衛生ナプキン、包帯、傷保護具、外科用包帯のようなパーソナルケア物品が含まれる。本発明の繊維物品は、水分散性であることに加え、水で流せる、すなわち、住宅および自治体の下水システムに適合し、そこに処分するのに適している。
【0015】
本発明は、水分散性スルホポリエステルと1種以上の水非分散性重合体とを含んでなる多成分繊維も提供する。この繊維は、水非分散性重合体がセグメントとして存在し、これらのセグメントは介在するスルホポリエステルにより互いに実質的に分離されている状態に設計された形状をしている。この際、スルホポリエステルは水非分散性セグメント同士のバインダーまたは包封用母材として作用する。
【0016】
したがって、本発明の他の態様は、造形された断面を持つ多成分繊維であって、
(A) 少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を持つ水分散性スルホポリエステルであって、当該スルホポリエステルは
(i) 1種以上のジカルボン酸の残基と;
(ii) 全反復単位に対し約4〜約40モル%の、2つの官能基と、芳香族環または脂環式環に結合した1つ以上のスルホン酸基とを持つ少なくとも1種のスルホ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基とを含んでなる、
前記スルホポリエステルと;
(B) 前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体を含んでなる複数のセグメントであって、前記セグメントは前記セグメント間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されているセグメントと、
を含んでなる多成分繊維であって、
前記繊維は、前記繊維の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有する、
前記繊維である。
【0017】
前記スルホポリエステルは、少なくとも57℃のガラス転移温度を持つので、巻取や長期の貯蔵の過程で繊維の粘着や融合を大きく低下させる。
【0018】
このスルホポリエステルは、多成分繊維を水と接触させて取除いてもよく、後には、水非分散性のセグメントがマイクロデニール繊維として残る。したがって、本発明は、マイクロデニール繊維の製造法において、以下の工程を含んでなる方法であって:
(A) 少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を持つ水分散性スルホポリエステルと、当該スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを紡糸して多成分繊維にし、前記スルホポリエステルが
(i) 全酸残基に対し約50〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸残基と;
(ii) 全酸残基に対し、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約20モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、これら官能基はヒドロキシル、カルボキシルまたはそれらの組合せである残基と、
を含んでなるスルホポリエステルと;
前記繊維は、水非分散性重合体を含んでなる複数のセグメントを持ち、前記セグメントは前記セグメント間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており、前記繊維は、前記繊維の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有し;
(B) 前記多成分繊維を水と接触させて前記スルホポリエステルを除去することにより、マイクロデニール繊維を形成する、
方法も提供する。
【0019】
水非分散性重合体は、DIN基準54900により規定されたように生物崩壊性および/またはASTM基準法D6340−98により規定されたように生分解性でよい。多成分繊維は、糸、布、メルトブローウェブ、スパンボンドウェブ、または不織布のような繊維物品の製造に用いてよく、1層以上の繊維を含んでなってもよい。多成分繊維を持つ繊維物品は水と接触されて、マイクロデニール繊維を含有する繊維物品を製造してもよい。
【0020】
したがって、本発明の他の態様は、マイクロデニール繊維ウェブの製造法において、以下の工程:
(A) 少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を持つ水分散性スルホポリエステルと、当該スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを紡糸して多成分繊維にする工程であって、前記スルホポリエステルが
(i) 全酸残基に対し約50〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸残基と;
(ii) 全酸残基に対し、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約20モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、これら官能基はヒドロキシル、カルボキシルまたはそれらの組合せである残基と、
を含んでなるスルホポリエステルであり;
前記多成分繊維は、前記水非分散性重合体を含んでなる複数のセグメントを持ち、前記セグメントは前記セグメント間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており、前記繊維は、前記繊維の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有する工程と;
(B) 工程Aの前記多成分繊維を積層し、集めて、不織ウェブを形成する工程と;
(C) 前記不織ウェブを水と接触させて前記スルホポリエステルを除去することにより、マイクロデニール繊維ウェブを形成する工程、
を含んでなる方法である。
【0021】
本発明は、水分散性不織布を製造する方法において、以下の工程:
(A) 水分散性重合体組成物をその流動点より高い温度に加熱する工程において、前記重合体組成物が
(i) 少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を持つスルホポリエステルであって、前記スルホポリエステルは
(a) 1種以上のジカルボン酸の残基と;
(b) 全反復単位に対し約4〜約40モル%の、2つの官能基と、芳香族環または脂環式環に結合した1つ以上の金属スルホン酸基とを持つ少なくとも1種のスルホ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と;
(c) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも20モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(d) 全反復単位に対し0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基とを含んでなる、
前記スルホポリエステルと;
(ii) 必要であれば、前記スルホポリエステルと配合された水分散性重合体と;
(iii) 必要であれば、前記スルホポリエステルと配合されて配合物を形成する水非分散性重合体(但し、本配合物は非混和性配合物である)と、
を含んでなる重合体組成物であって、
前記重合体組成物は、前記重合体組成物の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有する、
工程と;
(B) フィラメントを溶融紡糸する工程と;
(C) 工程Bの前記フィラメントを積層し、集めて、不織ウェブを形成する工程、
からなる方法も提供する。
【0022】
本発明の他の態様において、造形された断面を持つ多成分繊維であって、この多成分繊維は
(A) 少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと;
(B) 前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体を含んでなる複数の微小繊維ドメインと
を含んでなり、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており
前記繊維はフィラメント当り約6デニール未満の紡糸時デニールを有し;
前記水分散性スルホポリエステルは、240℃、1rad/秒のひずみ速度で測定すると、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し、前記スルホポリエステルは、二酸またはジオール残基の総モルに対し少なくとも1種のスルホ単量体の残基約25モル%未満を含んでなる、
前記繊維が提供される。
【0023】
本発明の他の態様において、造形された断面を持つ多成分押出物であって、この押出物は
(A) 少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと;
(B) 前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体を含んでなる複数の微小繊維ドメインと
を含んでなり、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており、前記押出物は少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸可能である、
前記押出物が提供される。
【0024】
本発明の他の態様において、造形された断面を持つ多成分繊維の製造方法であって、この方法は、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと、前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを紡糸することを含んでなり、前記多成分繊維は前記水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインを有し、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており;前記多成分繊維はフィラメント当り約6デニール未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃、1rad/秒のひずみ速度で測定すると、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し、前記スルホポリエステルは、二酸またはジオール残基の総モルに対し少なくとも1種のスルホ単量体の残基約25モル%未満を含んでなる、前記方法が提供される。
【0025】
本発明の他の態様において、造形された断面を持つ多成分繊維の製造方法であって、この方法は、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと、前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを押出すことにより、多成分押出物を製造する工程において、前記多成分押出物は前記水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインを有し、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されている工程と;前記多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸することにより、前記多成分繊維を製造する工程と、を含んでなる方法が提供される。
【0026】
他の態様において、本発明はマイクロデニール繊維の製造方法であって、以下の工程:
(A) 少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと、前記水分散性スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを紡糸して、多成分繊維にする工程において、前記多成分繊維は前記水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインを有し、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており;前記多成分繊維はフィラメント当り約6デニール未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃、1rad/秒のひずみ速度で測定すると、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し、前記スルホポリエステルは、二酸またはジオール残基の総モルに対し少なくとも1種のスルホ単量体の残基約25モル%未満を含んでなる、工程と;
(B) 前記多成分繊維を水と接触させて、前記水分散性スルホポリエステルを除去することにより、前記水非分散性重合体のマイクロデニール繊維を形成する工程と、
を含んでなる方法を提供する。
【0027】
他の態様において、本発明はマイクロデニール繊維の製造方法であって、以下の工程:
(A) 少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと、前記水分散性スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを押出すことにより、多成分押出物を製造する工程において、前記多成分押出物は前記水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインを有し、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されている工程と;
(B) 前記多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸することにより、多成分繊維を形成する工程と;
(C) 前記多成分繊維を水と接触させて、前記水分散性スルホポリエステルを除去することにより、前記水非分散性重合体のマイクロデニール繊維を形成する工程と、
を含んでなる方法を提供する。
【0028】
本発明の他の態様において、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法であって、以下の工程:
(A) 少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと、前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを紡糸して、多成分繊維にする工程において、前記多成分繊維は前記水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインを有し、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記水分散性スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており;前記多成分繊維はフィラメント当り約6デニール未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃、1rad/秒のひずみ速度で測定すると、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し、前記スルホポリエステルは、二酸またはジオール残基の総モルに対し少なくとも1種のスルホ単量体の残基約25モル%未満を含んでなる、工程と;
(B) 工程(A)の前記多成分繊維を集めて、不織ウェブを形成する工程と;
(C) 前記不織ウェブを水と接触させて、前記スルホポリエステルを除去することにより、マイクロデニール繊維ウェブを形成する工程と、
を含んでなる方法が提供される。
【0029】
本発明の他の態様において、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法であって、以下の工程:
(A) 少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと、前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを押出して、多成分押出物を製造する工程において、前記多成分押出物は前記水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインを有し、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されている、工程と;
(B) 少なくとも約2000m/分の速度で前記多成分押出物を溶融延伸して、多成分繊維を形成する工程と;
(C) 工程(B)の前記多成分繊維を集めて、不織ウェブを形成する工程と;
(D) 前記不織ウェブを水と接触させて、前記スルホポリエステルを除去することにより、マイクロデニール繊維ウェブを形成する工程と、
を含んでなる方法が提供される。
【0030】
本発明の他の態様において、水非分散性重合体微小繊維の製造方法であって、以下の工程:
a) 多成分繊維を切断して、切断多成分繊維にする工程と;
b) 繊維含有供給原料を水と接触させて、繊維混合スラリを製造する工程において、前記繊維含有供給原料は切断多成分繊維を含んでなる工程と;
c) 前記繊維混合スラリを加熱して、加熱繊維混合スラリを製造する工程と;
d) 必要であれば、前記繊維混合スラリを剪断区域中で混合する工程と;
e) 前記多成分繊維から前記スルホポリエステルの少なくとも一部を除去して、スルホポリエステル分散液と前記水非分散性重合体微小繊維とを含んでなるスラリ混合物を製造する工程と;
f) 前記スラリ混合物から前記水非分散性重合体微小繊維を分離する工程と、
を含んでなる方法が提供される。
【0031】
本発明の他の態様においては、少なくとも1種の水非分散性重合体を含んでなる前記水非分散性重合体微小繊維であって、前記水非分散性重合体微小繊維は5ミクロン未満の等価直径と25mm未満の長さを持つ、同微小繊維が提供される。
【0032】
本発明の他の態様において、前記水非分散性重合体微小繊維から不織物品を製造する方法であって、以下の工程:
a) 多成分繊維から製造された水非分散性重合体微小繊維を用意する工程と;
b) 湿式堆積法または乾式堆積法を利用して前記不織物品を製造する工程と、
を含んでなる前記方法が提供される。
【0033】
本発明の他の態様において、少なくとも1種の水非分散性重合体を含んでなる水非分散性短カット重合体微小繊維であって、前記水非分散性短カット重合体微小繊維がフィラメント当たり1デニール未満の平均繊度を持ち;前記水非分散性短カット重合体微小繊維が約300〜約1000のアスペクト比を持つ、同微小繊維が提供される。
【0034】
本発明の他の態様において、短カット微小繊維含有混合物であって、前記混合物が:
1d/f以下の繊度を持つ複数の水非分散性短カット重合体微小繊維であって、前記水非分散性短カット重合体微小繊維は約300〜約1000のアスペクト比を持つ、同微小繊維と;
水と;
前記水に分散されたスルホポリエステルと、
を含んでなり、
前記スルホポリエステルは少なくとも40℃のガラス転移温度(Tg)を持ち、
前記スルホポリエステルは
(i) 1種以上のジカルボン酸の残基と;
(ii) 全反復単位に対し約4〜約40モル%の、2つの官能基と、芳香族環または脂環式環に結合した1つ以上のスルホン酸基とを持つ少なくとも1種のスルホ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基とを含んでなる、
前記混合物が提供される。
【0035】
多成分繊維、多成分繊維の製造法、多成分繊維から製造される微小繊維、多成分繊維から微小繊維を製造する方法、および微小繊維から製造される物品は以下の米国特許および特許出願に開示されている: 米国特許第6,989,193号;米国特許第7,902,094号;米国特許第7,892,993号;米国特許第7,687,143号;2008年8月27日出願の米国特許出願第12/199,304号;2010年11月21日出願の米国特許出願第12/909,574号;2012年1月18日出願の米国特許出願第13/352,362号;米国特許出願第13/273,692号、第13/273,648号、第13/273,710号、第13/273,720号、第13/273,927号、第13/273,937号、第13/273,727号、第13/273,737号、第13/273,745号、そして第13/273,749号(全て2011年10月14日出願);これら特許と出願の開示を本明細書中の記載に矛盾しない程度に本明細書中に引用して援用する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施例41〜42で製造された手すき紙の特性を示す。
図2】実施例41〜42で製造された手すき紙の特性を示す。
図3】実施例41〜42で製造された手すき紙の特性を示す。
図4】実施例41〜42で製造された手すき紙の特性を示す。
図5】実施例41〜42で製造された手すき紙の特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、湿気の存在下、特にヒト体液に暴露された状態で、引張強さ、吸収性、柔軟性、布保全性を示す水分散性繊維および繊維物品を提供する。本発明の繊維および繊維物品は、加工中の繊維の粘着や融合を防ぐための油、ワックス、または脂肪酸仕上剤の存在、または大量の(典型的には10重量%以上)顔料や充填剤の使用を必要としない。さらに、本発明の新規な繊維から調製された繊維物品はバインダーを必要とせず、住宅または公共の下水システム内にたやすく分散または溶解する。
【0038】
一般的態様において、本発明は、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を持つスルホポリエステルを含んでなる水分散性繊維であって、前記スルホポリエステルは
(A) 1種以上のジカルボン酸の残基と;
(B) 全反復単位に対し約4〜約40モル%の、2つの官能基と、芳香族環または脂環式環に結合した1つ以上のスルホン酸基とを持つ少なくとも1種のスルホ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と;
(C) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(D) 全反復単位に対し0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と、
を含んでなる、
前記繊維を提供する。本発明の繊維は、必要であれば、前記スルホポリエステルと配合された水分散性重合体と、必要であれば、前記スルホポリエステルと配合された水非分散性重合体を含んでよいが、本配合物は非混和性配合物である。本発明の繊維は、前記繊維の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有する。本発明は、これらの繊維を含んでなる繊維物品も含み、また、清拭具、ガーゼ、ティシュー、おむつ、成人の失禁用ブリーフ、小児の練習用パンツ、衛生ナプキン、包帯、外科用包帯のようなパーソナルケア製品を含んでもよい。この繊維物品は、繊維の吸収層を1層以上持っていてもよい。
【0039】
本発明の繊維は一成分繊維、二成分繊維または多成分繊維でよい。例えば、本発明の繊維は、単一のスルホポリエステルまたはスルホポリエステルブレンドを溶融紡糸することにより調製してよく、造形された断面を持つステープルファイバー、モノフィラメントファイバー、マルチフィラメントファイバーを含む。さらに、本発明は例えば米国特許第5,916,678号に記載されたような多成分繊維を提供するが、この繊維は、前記スルホポリエステルと、前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを、例えば“海島”、さや芯、並列、またはセグメント分けされたパイ形状のような、造形または工学的に設計された横方向形状寸法を持つ紡糸口金を通して、別個に押出すことにより作製してもよい。上記のスルホポリエステルはその後に、界面層またはパイ状セグメントを溶解させて、水非分散性重合体の比較的小さなフィラメントまたはマイクロデニール繊維を残すことにより除去してもよい。これらの水非分散性重合体の繊維は、スルホポリエステルを除去する前の多成分繊維よりはるかに小さな繊維サイズを持つ。例えば、上記スルホポリエステルと水非分散性重合体とを重合体分布系に供給してもよく、この系の中で重合体はセグメント分けされた防止口金板に導入される。重合体は繊維紡糸口金への個々の流路を辿り、紡糸口金孔で集められる。この紡糸口金孔は、さや芯型繊維を与える2つの同心円形穴か、または、直径に沿って多数部分に分割されて並列型繊維を与える円形防止口金穴からなる。あるいは、非混和性水分散性スルホポリエステルと水非分散性重合体とは、複数の放射状流路を持つ紡糸口金に個々に導入されて、セグメント分けされたパイ状断面を持つ多成分繊維を製造してもよい。典型的には、スルホポリエステルはさや芯形状の“さや”成分を形成するであろう。複数のセグメントを持つ繊維断面においては、典型的には水非分散性セグメントはスルホポリエステルにより実質的に互いに分離されている。または、多成分繊維は、スルホポリエステルと水非分散性重合体とを個々の押出機中で溶融し、小さな細い管またはセグメントの形をした複数の分配流路を持つ1つの紡糸口金中にこれらの重合体流を導きいれて、海島型断面を持つ繊維を与えることにより形成してもよい。そのような紡糸口金の例は米国特許第5,366,804号に記載されている。本発明では、スルホポリエステルが“海”成分を形成し、水非分散性重合体が“島”成分を形成するのが典型的である。
【0040】
特記しない限り、明細書や請求項に用いた成分の量、分子量のような特性、反応条件等を表す全ての数字は全ての事例において用語“約”により変更されるものと理解すべきである。したがって、反対のことを記載しない限り、以下の明細書や添付の請求項に述べられた数値パラメータは、本発明により得ようとする所望の特性に応じ変わることがある近似値である。いずれにしても、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の個数を考慮し、通常の丸め技法を適用することにより、解釈すべきである。さらに、本開示および請求項中に述べた範囲は、全範囲を特定的に含めており、終点だけを含んだものではない。例えば、0〜10と述べた範囲は、例えば1、2、3、4等のような0から10までの全ての整数、例えば1.5、2.3、4.57、6.113等のような0から10までの全ての分数、および終点0と10を開示したものとする。さらに、例えば“C1〜C5炭化水素”のような化学置換基に関連する範囲は、C1炭化水素、C5炭化水素だけでなく、C2、C3およびC4炭化水素も特定的に含み、開示するものである。
【0041】
本発明の広い範囲を述べた数値範囲とパラメータは近似値であるにも拘らず、特定の例に述べられている数値はできるだけ正確に報告する。しかしながら、どのような数値も、それぞれの試験測定値に認められる標準偏差から必然的に生まれるある種の誤差を元来含んでいる。
【0042】
本発明の一成分繊維および一成分繊維から製造される繊維物品は水分散性であり、室温で完全に分散するのが典型的である。それらの分散性と不織繊維や多成分繊維からの除去速度を速めるために、比較的高い水温を用いることができる。一成分繊維および一成分繊維から製造される繊維物品に関して本明細書中で用いている用語“水分散性”は、用語“水放散性”、“水崩壊性”、“水溶解性”、“水消散性”、“水溶性”(water-soluble)、“水除去性”、“水溶性”(hydrosoluble)、および“水分散性”と同義であり、繊維または繊維物品が水の作用により水中に分散または溶解されることを意味するものとする。用語“分散される”、“分散性の”、“放散する”、または“放散性の”は、充分量の脱イオン水(例えば水:繊維=100:1、重量比)を用いて、約60℃の温度で5日間までの期間内で繊維または繊維物品の緩い懸濁液またはスラリを形成すると、繊維または繊維物品が溶解、崩壊、または分離して、複数のばらばらの断片または粒子になり、これらの断片または粒子は多かれ少なかれ媒体全体に分布して、例えばろ過または蒸発により水を除去しても認識可能なフィラメントは媒体から回収できないことを意味する。したがって、本明細書中に用いた“水分散性”は、絡み合いまたは結合しているが、水不溶性または水非分散性繊維の集成体であって、水中でばらばらになって水中の繊維スラリを作り、この繊維は水を除去すると回収できる繊維集成体、の単純な崩壊を含むものではない。本発明においては、これらの用語の全ては、本明細書中に記載したスルホポリエステルに対する水または水の混合物、および水混和性補助溶媒の活性を意味する。そのような水混和性補助溶媒の例としては、アルコール類、ケトン類、グリコールエーテル類、エステル類等が含まれる。上記用語には、スルホポリエステルが溶解されて、真溶液が生成される条件や、スルホポリエステルが水性媒体内で分散される条件を含むように考えられている。スルホポリエステル組成物の統計的性質に起因して、単一のスルホポリエステル試料を水性媒体中に入れると、可溶性画分と分散画分が得られる可能性が多い。
【0043】
同様に、多成分繊維または繊維物品の一成分としてのスルホポリエステルに関して本明細書中に用いられている用語“水分散性”(water-dispersible)も用語“水放散性”、“水崩壊性”、“水溶解性”、“水消散性”、“水溶性”(water-soluble)、“水除去性”、“水溶性”(hydrosoluble)、および“水分散性”(hydrodispersible)と同義と考えられており、スルホポリエステル成分が多成分繊維から充分に除去され、水の作用により水中に分散または溶解されて、その中に含有されている水非分散性繊維の放出と分離を可能にすることを意味するものとする。用語“分散される”、“分散性の”、“放散する”、または“放散性の”は、充分量の脱イオン水(例えば水:繊維=100:1、重量比)を用いて、約60℃の温度で5日間までの期間内で繊維または繊維物品の緩い懸濁液またはスラリを形成すると、スルホポリエステル成分が多成分繊維から溶解、崩壊、または分離して、水非分散性セグメントからなる複数のマイクロデニール繊維を後に残すことを意味する。
【0044】
多成分繊維の造形された断面を記載するのに用いられる場合の用語“セグメント”または“ドメイン”または“区域”は、水非分散性重合体からなる断面内の領域であって、これらのドメインまたはセグメントがセグメントまたはドメイン間に介在する水分散性スルホポリエステルにより実質的に互いに分離される領域を意味する。本明細書中で用いる用語“実質的に分離される”は、セグメントまたはドメインが互いに分けられて、スルホポリエステルを除去すると、それぞれが個々の繊維を形成できること、を意味するものとする。セグメントまたはドメインまたは区域は、同様の大きさと形状であるか、異なった大きさと形状であることができる。また、セグメントまたはドメインまたは区域は、どのような構成でも配置できる。これらのセグメントまたはドメインまたは区域は、多成分押出物または繊維の長さに沿って“実質的に連続して”いる。用語“実質的に連続して”は、多成分繊維の少なくとも10cmの長さに沿って連続していることを意味する。多成分繊維のこれらのセグメントまたはドメインまたは区域は、水分散性スルホポリエステルを取除くと、水非分散性重合体微小繊維を作る。
【0045】
本開示内に述べたように、多成分繊維の造形された断面は例えばさや芯、海島、セグメント化パイ、中空セグメント化パイ;偏心セグメント化パイ、等の形状であることができる。
【0046】
本発明の水分散性繊維は、ジカルボン酸単量体残基、スルホ単量体残基、ジオール単量体残基、および反復単位からなるポリエステル、より具体的には、スルホポリエステルから調製される。スルホ単量体はジカルボン酸、ジオール、またはヒドロキシカルボン酸でよい。したがって、本明細書中で用いる用語“単量体残基”は、ジカルボン酸、ジオール、またはヒドロキシカルボン酸の残基を意味する。本明細書中で用いる“反復単位”は、カルボニルオキシ基を介して結合された2つの単量体残基を持つ有機構造を意味する。本発明のスルホポリエステルは、実質的に等モル比の酸残基(100モル%)とジオール残基(100モル%)を含有しており、これらの残基は、反復単位の総モルが100モル%と等しくなるように実質的に等しい比率で反応する。したがって、本開示中で与えられたモル%は、酸残基の総モル、ジオール残基の総モル、または反復単位の総モルに基づいてよい。例えば、全反復単位に対し、ジカルボン酸、ジオールまたはヒドロキシカルボン酸でよいスルホ単量体30モル%を含有するスルホポリエステルは、このスルホポリエステルが合計100モル%の反復単位のうち30モル%のスルホ単量体を含有していることを意味する。したがって、反復単位100モルにつきスルホ単量体残基が30モル存在する。同様に、全酸残基に対し30モル%のジカルボン酸スルホ単量体を含有するスルホポリエステルは、このスルホポリエステルが合計100モル%の酸残基のうち30モル%のスルホ単量体を含有していることを意味する。したがって、後者のケースでは、酸残基100モルにつきスルホ単量体残基が30モル存在する。
【0047】
本明細書中に記載したスルホポリエステルは、25℃でフェノール/テトラクロロエタン溶媒60/40重量部の溶液において、溶媒100mL中スルホポリエステル約0.5gの濃度で測定すると、少なくとも約0.1dL/g、好ましくは約0.2〜0.3dL/g,もっとも好ましくは約0.3dL/gより大の固有粘度(以下、“Ih.V.”と省略)を持つ。本明細書中に用いる用語“ポリエステル”は、“ホモポリエステル”と“コポリエステル”との両方を包含し、二官能カルボン酸と二官能ヒドロキシル化合物との重縮合により調製された合成重合体を意味する。本明細書中で用いる用語“スルホポリエステル”は、スルホ単量体を含んでなるいずれのポリエステルも意味する。典型的には、二官能カルボン酸はジカルボン酸であり、二官能ヒドロキシル化合物は例えばグリコールやジオールのような二価アルコールである。あるいは、二官能カルボン酸は例えばp−ヒドロキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸でよく、二官能ヒドロキシル化合物は例えばヒドロキノンのような2つのヒドロキシ置換基を持つ芳香核でよい。本明細書中で用いる用語“残基”は、相当する単量体が関与する重縮合反応を介して重合体中に組み込まれた有機構造を意味する。したがって、ジカルボン酸残基はジカルボン酸単量体、またはその関連した酸ハロゲン化物、エステル、塩、無水物、またはこれらの混合物から誘導されたものでよい。したがって、本明細書中で用いる用語、ジカルボン酸、は、ジカルボン酸類とジカルボン酸の誘導体類であって、その関連する酸ハロゲン化物類、エステル類、半エステル類、塩類、半塩類、無水物類、混合無水物類、またはこれらの混合物を含み、ジオールとの重縮合工程において高分子量ポリエステルを作るのに有用のものを含むように考えられている。
【0048】
本発明のスルホポリエステルは、1種以上のジカルボン酸残基を含む。スルホ単量体の種類と濃度によっては、ジカルボン酸残基は約60〜約100モル%の酸残基を含んでなってもよい。ジカルボン酸残基の濃度範囲の他の例は、約60モル%〜約95モル%と約70モル%〜約95モル%である。用いてよいジカルボン酸の例には、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、またはこれらの酸の2種以上の混合物が含まれる。したがって、好適なジカルボン酸には、コハク酸;グルタル酸;アジピン酸;アゼライン酸;セバシン酸;フマル酸;マレイン酸;イタコン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸;ジグリコール酸;2,5−ノルボルナンジカルボン酸;フタル酸;テレフタル酸;1,4−ナフタレンジカルボン酸;2,5−ナフタレンジカルボン酸;ジフェン酸;4,4’−オキシ二安息香酸;4,4’−スルホニル二安息香酸;およびイソフタル酸が含まれるが、これらに限定されない。好ましいジカルボン酸残基は、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、またはジエステルが用いられるならば、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、およびジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートで、イソフタル酸とテレフタル酸の残基が特に好ましい。ジカルボン酸メチルエステルが最も好ましい態様であるが、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル等のような高次アルキルエステルを含めることも可能である。さらに、芳香族エステル、特にフェニルを用いてもよい。
【0049】
スルホポリエステルは、全反復単位に対し約4〜約40モル%の、2つの官能基と、芳香族環または脂環式環に結合した1つ以上のスルホン酸基とを持つ少なくとも1種のスルホ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基を含む。このスルホ単量体残基の濃度範囲の追加例は、全反復単位に対し約4〜約35モル%、約8〜約30モル%、および約8〜約25モル%である。スルホ単量体は、スルホン酸基を含有するジカルボン酸またはそのエステル、スルホン酸基を含有するジオール、またはスルホン酸基を含有するヒドロキシ酸でよい。用語“スルホン酸基”は、構造“−SOM”(式中、Mはスルホン酸塩の陽イオンである)を持つスルホン酸の塩を意味する。上記スルホン酸塩の陽イオンは、Li、Na、K、Mg++、Ca++、Ni++、Fe++等のような金属イオンでよい。あるいは、スルホン酸塩の陽イオンは、例えば米国特許第4,304,901号に記載されたように窒素塩基のような非金属陽イオンでよい。窒素系陽イオンは窒素含有塩基由来であり、これらの塩基は脂肪族、脂環式または芳香族化合物でよい。このような窒素含有塩基の例には、アンモニア、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、モルホリン、ピペリジンが含まれる。典型的には、窒素系スルホン酸塩を含有する単量体は溶融液中で重合体を作るのに必要な条件では熱安定性がないので、窒素系スルホン酸塩の基を含有するスルホポリエステルを調製する本発明の方法は、所要量のスルホン酸基を含有する重合体をそのアルカリ金属塩の形で水に分散、放散または溶解させ、その後にアルカリ金属陽イオンを窒素系陽イオンに交換する。
【0050】
一価のアルカリ金属イオンをスルホン酸塩の陽イオンとして用いると、得られるスルホポリエステルは、重合体中のスルホ単量体の含量、水の温度、スルホポリエステルの表面積/厚さ等に依存した分散速度で水に完全に分散できる。二価の金属イオンを用いると、得られるスルホポリエステルは冷水に容易には分散せず、温水にはより容易に分散する。単一の重合体組成内に1つより多い対イオンを利用することは可能であり、それにより、得られる製造品の水応答性を微調整する手段を提供してもよい。スルホ単量体残基の例には、スルホン酸塩の基が例えばベンゼン;ナフタレン;ジフェニル;オキシジフェニル;スルホニルジフェニル;メチレンジフェニルのような芳香族酸核、または例えばシクロヘキシル;シクロペンチル;シクロブチル;シクロヘプチル;シクロオクチルのような脂環式環に結合している単量体残基が含まれる。本発明で用いてよいスルホ単量体残基の他の例としては、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸の金属スルホン酸塩、またはそれらの組合せがある。用いてよいスルホ単量体の他の例は、5−ソジオスルホイソフタル酸およびそのエステルである。スルホ単量体残基が5−ソジオスルホイソフタル酸に由来するものであれば、典型的なスルホ単量体濃度範囲は、酸残基の総モルに対し約4〜約35モル%、約8〜約30モル%、約8〜約25モル%である。
【0051】
スルホポリエステルの製造に用いられるスルホ単量体は既知の化合物であり、当業界で周知の方法を用いて製造してよい。例えば、スルホン酸基が芳香環に結合したスルホ単量体は、芳香族化合物を発煙硫酸でスルホン化して、相当するスルホン酸を得、次に金属酸化物または塩基、例えば酢酸ナトリウム、と反応させてスルホン酸塩を調製することにより製造してよい。種々のスルホ単量体を製造する手順は、例えば米国特許第3,779,993号、第3,018,272号、第3,528,947号に記載されている。
【0052】
例えばスルホン酸ナトリウム塩を用いてポリエステルを調製し、重合体が分散した状態にあるとき、ナトリウムを亜鉛のような異なったイオンで置換することも可能である。一般的に、この種のイオン交換法は、ナトリウム塩が普通は重合体反応物質溶融相でより溶けやすい限り、二価塩で重合体を調製するより優れている。
【0053】
スルホポリエステルは1種以上のジオール残基を含み、これらの残基は脂肪族、脂環式、そしてアラルキルグリコールを含んでよい。脂環式ジオール、例えば1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、は純粋なシスまたはトランス異性体として、またはシス異性体とトランス異性体の混合物として存在してよい。本明細書中で用いる用語“ジオール”は用語“グリコール”と同義であり、二価のアルコールを意味する。ジオールの例には、エチレングリコール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;ポリエチレングリコール;1,3−プロパンジオール;2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール;2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール;1,3−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール;チオジエタノール;1,2−シクロヘキサンジメタノール;1,3−シクロヘキサンジメタノール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール;p−キシリレンジオール、またはこれらのグリコールのうちの1種以上の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
ジオール残基は、全ジオール残基に対し約25モル%〜約100モル%の、構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)の残基を含んでよい。低分子量ポリエチレングリコール(例えばnは2〜6である)の非限定的な例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールである。これらの低分子量グリコールのうち、ジエチレンおよびトリエチレングリコールが最も好ましい。高分子量ポリエチレングリコール(本明細書中では“PEG”と略す)(nは7〜約500である)はCARBOWAX(登録商標)の名称で知られている市販品(ダウケミカルカンパニー(旧ユニオンカーバイド)の製品)を含む。典型的には、PEG類は、例えばジエチレングリコールやエチレングリコールのような他のジオール類と併用される。6〜500より大きなnの数値に基づき、分子量は300〜約22,000g/モルでよい。分子量とモル%は互いに反比例する。特に、分子量が大きくなると、モル%は指定された親水度を達成するために小さくなる。例えば、1,000の分子量を持つPEGは全ジオールの10モル%までを構成し、10,000の分子量を持つPEGは全ジオールの1モル%未満の濃度で導入されるのが普通であることを考慮するのは、この考え方を例示している。
【0055】
ある二量体、三量体および四量体ジオールが、副反応に起因してその場で形成されてもよく、この副反応はプロセス条件を変えることにより制御してもよい。例えば、重縮合反応を酸性条件下で行う場合、容易に起こる酸により触媒された脱水反応を用いて、様々な量のジエチレン、トリエチレンおよびテトラエチレングリコールをエチレングリコールから形成してもよい。当業者によく知られている緩衝液を反応混合物に加えて、これらの副反応を遅らせてもよい。しかしながら、緩衝剤を省略して、二量化、三量化、四量化反応を進行させようとするなら、それ以上の組成の自由裁量が可能である。
【0056】
本発明のスルホポリエステルは、全反復単位に対し、0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、これら官能基がヒドロキシル、カルボキシルまたはそれらの組合せである残基を含んでよい。枝分かれ単量体の非限定的な例は、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリトリトール、エリトリトール、トレイトール、ジペンタエリトリトール、ソルビトール、トリメリト酸無水物、無水ピロメリト酸、ジメチロールプロピオン酸、またはそれらの組合せである。枝分かれ単量体濃度範囲のさらなる例は、0〜約20モル%と0〜約10モル%である。枝分かれ単量体が存在すると、本発明のスルホポリエステルに多くの利益がもたらされる可能性があり、これらの利益には流動学的特性、溶解度特性、引張特性を調整できることが含まれるが、これに限定されない。例えば、一定の分子量では、枝分かれスルホポリエステルは線状類似体に比べより高濃度の末端基を持ち、そのため重合後の架橋反応が容易になると思われる。しかしながら、枝分かれ剤が高濃度であると、スルホポリエステルはゲル化しやすいことがある。
【0057】
本発明の繊維に用いられるスルホポリエステルは、少なくとも25℃のガラス転移温度(本明細書中では“Tg”と略す;差動走査熱量法(“DSC”)のような当業者によく知られている標準的手技を用いて乾燥重合体で測定)を持つ。本発明のスルホポリエステルのTg測定は、“乾燥重合体”、すなわち、重合体を約200℃の温度に加熱し、重合体試料を室温に戻すことにより外来水または吸収された水を駆逐した重合体試料、を用いて行う。典型的には、スルホポリエステルをDSC装置で以下のように乾燥させる:すなわち、試料を水気化温度より高い温度に加熱する第1の熱走査を実施し、重合体中に吸収された水の気化が完了(大きく広い吸熱により示される)するまで、試料をその温度に保持し、試料を室温に冷却し、その後、第2の熱走査を実施して、Tg測定値を得る。スルホポリエステルにより示されたガラス転移温度のさらなる例は、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃、少なくとも90℃である。他のTgも可能であるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの典型的ガラス転移温度は約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃、約90℃である。
【0058】
本発明の新規な繊維は、上述したスルホポリエステルを主成分とするか、または上記スルホポリエステルからなる。しかしながら、他の態様においては、本発明のスルホポリエステルは単一のポリエステルでよいが、得られる繊維の特性を変えるための1種以上の補助重合体と配合してもよい。補助重合体は、用途により水分散性であってもなくてもよく、スルホポリエステルと混和性でも非混和性でもよい。補助重合体が水非分散性であれば、スルホポリエステルとの配合物は非混和性であるのが好ましい。本明細書中で用いる用語“混和性”は、単一組成依存性Tgにより示されるように、この配合物が単一の均質非晶相を持つことを意味するものとする。例えば、第2の重合体と混和性の第1の重合体を用いて第2の重合体を“可塑化”してよい。これは、例えば米国特許第6,211,309号に示した通りである。対照的に、本明細書中で用いる用語“非混和性(混和しない)”は、少なくとも2つの無作為に混合された相を示し、1つより多いTgを示す配合物を表す。スルホポリエステルと非混和性であるが、相溶性である重合体でもよい。混和性および非混和性重合体配合物とそれらの特性決定のための様々な分析技法のいっそうの全般的記載は、Polymer Blends Volumes 1 and 2,Edited by D.R.Paul and C.B.Bucknall,2000(ジョンワイリーアンドサンズ社)に見られよう。
【0059】
スルホポリエステルと配合してよい水分散性重合体の非限定的例は、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン−アクリル酸共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、イソプロピルセルロース、メチルエーテル澱粉、ポリアクリルアミド、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリエチルオキサゾリン、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)、ポリビニルメチルオキサゾリドン、水分散性スルホポリエステル、ポリビニルメチルオキサゾリジモン、ポリ(2,4−ジメチル−6−トリアジニルエチレン)、およびエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体である。スルホポリエステルと配合してよい水非分散性重合体の例には、ポリエチレンとポリプロピレンの単重合体と共重合体のようなポリオレフィン;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリ(ブチレンテレフタレート);ナイロン−6のようなポリアミド;ポリラクチド;カプロラクトン;Eastar Bio(登録商標)(ポリ(テトラメチレンアジペート−コテレフタレート)、イーストマンケミカルカンパニーの製品);ポリカーボネート;ポリウレタン;およびポリ塩化ビニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明によると、1種より多いスルホポリエステル同士の配合物を用いて、得られる繊維または繊維物品、例えば不織布またはウェブ、の最終用途特性を調整してもよい。1種以上のスルホポリエステルの配合物は、水分散性単成分繊維では少なくとも25℃のTgであり、多成分繊維では少なくとも57℃のTgであろう。したがって、配合を利用して、スルホポリエステルの加工特性を変化させることにより、不織物品の二次加工を容易にしてもよい。他の例では、ポリプロピレンとスルホポリエステルの非混和配合物は従来の不織ウェブを提供してもよい。この不織ウェブは、真の可溶性が必要でないので、バラバラになり、水に完全に分散するものである。この後者の例では、所望の性能はポリプロピレンの物性を維持することに関係があり、一方、スルホポリエステルは製品の実際の使用においては何の働きもしない。あるいは、スルホポリエステルは不安定で、製品の最終形が利用される前に除去される。
【0061】
スルホポリエステルと補助重合体は、バッチ、半連続または連続工程で配合してもよい。繊維を溶融紡糸する前に、バンバリーミキサーのような当業者に周知の強力混合装置で小規模のバッチを簡単に調製してよい。これらの成分を適当な溶媒において溶液で配合してもよい。溶融配合法は、スルホポリエステルと補助重合体を重合体の溶融に充分な温度で配合することを含む。配合物は冷却、ペレット化して更に使用できるようにして良く、または、溶融配合物を溶融配合状態から直接溶融紡糸して、繊維形にすることもできる。本明細書中で用いる用語“溶融”は、単にポリエステルを軟化することを含むが、これに限定されない。重合体業界で一般的に知られている溶融混合法については、Mixing and Compounding of Polymers(I.Manas−Zloczower & Z.Tadmor編集, Carl Hanser Verlag出版, 1994、New York, N.Y.参照)。
【0062】
本発明はまた、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を持つスルホポリエステルを含んでなる水分散性繊維であって、前記スルホポリエステルは
(A) 全酸残基に対し約50〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸残基と;
(B) 全酸残基に対し約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸残基と;
(C) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(D) 全反復単位に対し0〜約20モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、これら官能基はヒドロキシル、カルボキシルまたはそれらの組合せである残基と、
を含んでなる、
繊維を提供する。上述のように、この繊維は、必要であれば、前記スルホポリエステルと配合される第1の水分散性重合体と;必要であれば、前記スルホポリエステルと配合されて得られる配合物が非混和性配合物であるような水非分散性重合体と、を含んでよい。この繊維は、前記繊維の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有する。第1の水分散性重合体は上述の通りである。スルホポリエステルは、少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を持つべきであるが、例えば約35℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃、約90℃のTgを持ってもよい。スルホポリエステルは、他の濃度、例えば約60〜約95モル%と約75〜約95モル%のイソフタル酸残基を含有してもよい。イソフタル酸残基濃度範囲のいっそうの例は、約70〜約85モル%、約85〜約95モル%、および約90〜約95モル%である。スルホポリエステルは、約25〜約95モル%のジエチルグリコール残基を含んでなってもよい。ジエチルグリコール残基濃度範囲のいっそうの例は、約50〜約95モル%、約70〜約95モル%、および約75〜約95モル%を含む。スルホポリエステルは、エチレングリコールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノール(本明細書中では“CHDM”と略す)の残基を含んでもよい。CHDM残基の典型的濃度範囲は、約10〜約75モル%、約25〜約65モル%、および約40〜約60モル%である。エチレングリコール残基の典型的濃度範囲は、約10〜約75モル%、約25〜約65モル%、および約40〜約60モル%である。他の態様では、スルホポリエステルは、約75〜約96モル%のイソフタル酸残基と約25〜約95モル%のジエチレングリコール残基とを含んでなる。
【0063】
本発明のスルホポリエステルは、典型的重縮合反応条件を用いて、該当するジカルボン酸、エステル、無水物または塩、スルホ単量体、および該当するジオールまたはジオール混合物から容易に調製される。これらのスルホポリエステルは、連続、半連続、バッチ方式の操作により作製してよく、様々な種類の反応器を利用してよい。適した反応器の種類としては、攪拌槽、連続攪拌槽、スラリー型、筒型、薄膜型、落下膜型、または押出型反応器が含まれるが、これらに限定されない。本明細書中で用いられる用語“連続(的)”は、反応物質が導入され、同時に製品がとぎれなく取り出されるプロセスを意味する。“連続的”により、このプロセスが実質的または完全に連続的に操作され、“バッチ”方式と対照的になることを意味する。“連続的”は、例えば始動、反応器の保守、または予定された運転停止期間に起因して、プロセスの連続性が正常に中断されることを禁止することを意味するものではない。本明細書中で用いられる用語“バッチ”方式は、全ての反応物質が反応器に添加され、その後に所定の経過をたどる反応により処理され、その間、物質は反応器へ供給されず、反応器から除去もされないプロセスを意味する。用語“半連続(的)”は、反応物質の幾つかがプロセスの開始時に充填され、残りの反応物質は反応の進行と共に連続的に供給されるプロセスを意味する。または、半連続プロセスは、バッチ方式に類似したプロセスであって、全ての反応物質がプロセスの開始時に添加されるが、1つ以上の製品が反応の進行と共に連続的に除去されるプロセスを含んでもよい。このプロセスは、経済的理由と、重合体の優れた着色をもたらすために、連続プロセスとして操作されるのが有利である。これは、あまり長期間高温で反応器内に留めておくとスルホポリエステルの外観が悪化する恐れがあるからである。
【0064】
本発明のスルホポリエステルは、当業者に知られた手順により調製する。スルホ単量体は、重合体が作られる反応混合物に直接添加されることが最も多い。但し、他の方法も知られており、例えば米国特許第3,018,272号、米国特許第3,075,952号、米国特許第3,033,822号に記載されたように、これらの他法を用いてもよい。スルホ単量体、ジオール成分とジカルボン酸成分の反応は、従来のポリエステル重合条件を用いて実施してよい。例えば、エステル交換反応により、すなわちジカルボン酸成分のエステル形から、スルホポリエステルを調製する場合、反応プロセスは2つの工程を含んでなってよい。第1の工程では、ジオール成分と、例えばイソフタル酸ジメチルのようなジカルボン酸成分を典型的には約150℃〜約250℃の高温、約0.0kPaゲージ〜約414kPaゲージ(60ポンド/平方インチ、“psig”)の圧力で約0.5〜約8時間反応させる。好ましくは、エステル交換反応の温度は約180℃〜約230℃で約1〜約4時間継続し、好ましい圧力は約103kPaゲージ(15psig)〜約276kPaゲージ(40psig)である。その後、反応生成物を高温、減圧下で加熱して、スルホポリエステルを生成し、ジオールは消失させる。このジオールはこれらの条件下で容易に揮発し、系から除去される。この第2の工程、重縮合工程、は高真空下、一般的に約230℃〜約350℃、好ましくは約250℃〜約310℃、最も好ましくは約260℃〜約290℃の温度で、約0.1〜約6時間、好ましくは約0.2〜約2時間、所望の重合度(固有粘度で決定)を持つ重合体が得られるまで、継続する。この重縮合工程は、約53kPa(400トル)〜約0.013kPa(0.1トル)の減圧下で行なってよい。両段階においては攪拌または適切な条件を用いて、反応混合物の充分な熱伝達と表面更新を確保する。両段階の反応は、例えばアルコキシチタン化合物、アルカリ金属水酸化物およびアルコーラート、有機カルボン酸の塩、アルキルスズ化合物、金属酸化物等のような適切な触媒により容易となる。米国特許第5,290,631号に記載されたものと類似した3段階の製造手順も、特に酸とエステルとの混合単量体供給材料を用いる場合には、使用してよい。
【0065】
エステル交換反応機序によりジオール成分とジカルボン酸成分との反応が完了に至るようにするためには、ジカルボン酸成分1モルに対しジオール成分約1.05〜約2.5モルを用いるのが好ましい。しかしながら、ジオール成分とジカルボン酸成分との比率は一般的に、反応プロセスが生じる反応器の設計により決定されることを、当業者は理解するであろう。
【0066】
直接エステル化によるスルホポリエステルの調製、すなわち、ジカルボン酸成分の酸形からのスルホポリエステルの調製、において、ジカルボン酸またはジカルボン酸の混合物をジオール成分またはジオール成分の混合物と反応させることによりスルホポリエステルが製造される。この反応は、約7kPaゲージ(1psig)〜約1,379kPaゲージ(200psig)、好ましくは689kPa(100psig)未満の圧力で行い、約1.4〜約10の平均重合度を持つ低分子量の線状または枝分かれスルホポリエステル製品を製造する。直接エステル化反応中に用いられる温度は、約180℃〜約280℃、より好ましくは約220℃〜約270℃であるのが普通である。この低分子量重合体は次に重縮合反応により重合させてよい。
【0067】
本発明の水分散性繊維および多成分繊維、繊維物品は、それらの最終用途に悪影響を与えない他の従来の添加剤および成分を含有してもよい。例えば、充填剤、表面摩擦調節剤、光/熱安定剤、押出助剤、帯電防止剤、着色剤、色素、顔料、蛍光増白剤、抗菌剤、偽造防止マーカー、疎水性/親水性上昇剤、粘度調整剤、スリップ剤、強化剤、接着促進剤等のような添加剤を用いてよい。
【0068】
本発明の繊維および繊維物品は、加工中の粘着や融合を防ぐため例えば顔料、充填剤、油、ワックスまたは脂肪酸仕上剤のような添加剤の存在を必要とすることはない。本明細書中で用いる用語“粘着または融合”は、繊維や繊維物品が互いにくっつくか融合して塊になり、繊維が加工できず、意図した目的に使用できないようになることを意味するものである。粘着と融合は、繊維や繊維物品の加工中、または何日間か何週間もの貯蔵中に起こる可能性があり、高温多湿条件下で悪化する。
【0069】
本発明の1つの態様においては、繊維と繊維物品は、繊維や繊維物品の総重量に対し10重量%未満の粘着防止剤を含有する。例えば、繊維と繊維物品は10重量%未満の顔料または充填剤を含有してよい。他の例では、繊維と繊維物品は、繊維の総重量に対し9重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、1重量%未満、0重量%の顔料または充填剤を含有してよい。時にトナーと呼ばれる着色剤を添加して、スルホポリエステルに所望の中性の色相および/または明るさを与えてもよい。色付き繊維を望むなら、ジオール単量体とジカルボン酸単量体との反応においてスルホポリエステル反応混合物中に顔料または着色剤を含めてよく、あるいは、予備成形したスルホポリエステルとそれらを溶融配合してもよい。着色剤を含める好ましい方法は、反応基を持つ熱安定性の着色された有機化合物を持つ着色剤であって、共重合されスルホポリエステルに組み込まれることによりその色相を向上させるような着色剤を用いることである。例えば、反応性ヒドロキシルおよび/またはカルボキシル基を持つ染料―これには青色および赤色置換アントラキノンが含まれるが、これらに限定されない―のような着色剤を重合体鎖中に共重合させてもよい。染料を着色剤として用いる場合、エステル交換または直接エステル化反応の後に、それらをコポリエステル反応プロセスに添加してよい。
【0070】
本発明の目的上、用語“繊維”は、織布または不織布のような二次元または三次元物品に形成可能な高いアスペクト比を持つ高分子体を指す。本発明において、用語“繊維(fiber)”は“繊維(fibers)”と同義であり、1本以上の繊維を意味するものとする。本発明の繊維は、一成分繊維、二成分繊維、または多成分繊維でよい。本明細書中で用いる用語“一成分繊維”は、単一のスルホポリエステル、1種以上のスルホポリエステルの配合物、または1種以上のスルホポリエステルと1種以上の追加の重合体との配合物を溶融紡糸することにより調製される繊維を意味するものとし、ステープル繊維、モノフィラメント繊維、マルチフィラメント繊維を含む。“一成分(unicomponent)”は用語“単成分(monocomponent)”と同義であり、“二成分(biconstituent)”や“多成分(multiconstituent)”繊維を含み、配合物として同一の押出機から押出された少なくとも2種の重合体から形成された繊維を指す。一成分(unicomponent)または二成分(biconstituent)繊維では、各種重合体成分は繊維の断面積にわたり比較的一定に位置づけされた別個の区域に配置されていることはなく、様々な重合体が普通は繊維の全長に沿って連続しておらず、代わりに、無作為に始まりかつ終わる原繊維または前原繊維を形成するのが普通である。したがって、用語“一成分(unicomponent)”は、着色、帯電防止性、潤滑、親水性等のために少量の添加剤を添加してよい重合体または1種以上の重合体同士の配合物から形成される繊維を除外するものではない。
【0071】
対照的に、本明細書中で用いる用語“多成分繊維”は、2種以上の繊維形成性重合体を個別の押出機で溶融し、得られる多くの重合体流を複数の分配流路を有するが紡糸し合って1つの繊維を形成する1つの紡糸口金に導きいれることにより調製される繊維を意味するものとする。多成分繊維は、複合繊維または二成分繊維と呼ばれることもある。重合体は、複合繊維の断面にわたり実質的に一定に位置づけされた別個のセグメントまたは区画に配置され、複合繊維の長さに沿い連続的に延在している。そのような多成分繊維の複合化は例えば、1つの重合体が他の重合体により囲まれたさや/芯配置でも、並列配置でも、パイ状配置でも、“海島”配置でもよい。例えば、多成分繊維は、スルホポリエステルおよび1種以上の水非分散性重合体を、例えば“海島”またはセグメント化されたパイ形状のような造形または工学設計された横断形状寸法を持つ紡糸口金から別個に押出すことにより調製してよい。典型的には、多成分繊維は付形されたまたは円形の断面を持つステープル、モノフィラメントまたはマルチフィラメント繊維である。ほとんどの繊維形状は加熱硬化される。繊維は、本明細書中で記載するような様々な酸化防止剤、顔料、添加剤を含んでよい。
【0072】
モノフィラメント繊維の大きさは一般的に約15〜約8000デニール/フィラメント(本明細書中では“d/f”と略す)である。本発明の新規な繊維は約40〜約5000の範囲内のd/f値を持つのが普通である。モノフィラメントは一成分または多成分繊維の形態でよい。本発明のマルチフィラメント繊維の大きさは、メルトブローウェブには約1.5μm、ステープル繊維には約0.5〜約50d/f、モノフィラメント繊維には約5000d/fまでであるのが好ましい。マルチフィラメント繊維は、けん縮または非けん縮糸やトウとして用いてもよい。メルトブローウェブや溶融紡糸布で用いられる繊維はマイクロデニール単位の大きさで製造してよい。本明細書中で用いる用語“マイクロデニール”は、1d/f以下のd/f値を意味するものとする。例えば、本発明のマイクロデニール繊維は普通1以下、0.5以下、または0.1以下のd/f値を持つ。ナノ繊維も静電紡糸により製造できる。
【0073】
デニールをミクロンに変換するには、以下の手順を用いるべきである:1)繊維の密度を1ミリリットル当たりのグラム(g/ml)に変換する(例えば、繊維Xは1.5kg/リットルまたは1.5g/mlの密度を持つ)。2)繊維のデニールを繊維の密度で割る。例えば、繊維Xは2の既知デニールを持つ。デニールを1.5で割ると1.333に等しくなる。3)この数の平方根を計算する。繊維Xの場合、平方根は1.155である。4)この平方根に11.89を掛ける。これにより、直径(ミクロン)が得られる。繊維Xの直径は13.73ミクロンである。
【0074】
上記のように、スルホポリエステルも造形された断面を持つ二成分繊維や多成分繊維の製造に好都合である。少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を持つスルホポリエステルまたはスルホポリエステル配合物は、紡糸と巻取中の繊維の粘着と融合を防止する上で多成分繊維に特に有用であることを我々は発見した。したがって、本発明は、
(A) 少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を持つス水分散性ルホポリエステルであって、前記スルホポリエステルは
(i) 1種以上のジカルボン酸の残基と;
(ii) 全反復単位に対し約4〜約40モル%の、2つの官能基と、芳香族環または脂環式環に結合した1つ以上のスルホン酸基とを持つ少なくとも1種のスルホ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基とを含んでなる、
前記スルホポリエステルと;
(B) 前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体を含んでなる複数のセグメントであって、前記セグメントは前記セグメント間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されているセグメントと、
を含んでなる造形された断面を持つ多成分繊維において、
前記繊維は海島状またはセグメント化されたパイ状断面を持ち、前記繊維の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有する、
前記繊維を提供する。
【0075】
上記のジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホ単量体、および枝分かれ単量体残基は、本発明の他の態様について既に述べたとおりである。多成分繊維については、スルホポリエステルが少なくとも57℃のTgを持つのが有利である。本発明の多成分繊維のスルホポリエステルまたはスルホポリエステル配合物が示してよいガラス転移温度のいっそうの例は、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、少なくとも85℃、および少なくとも90℃である。さらに、少なくとも57℃のTgを持つスルホポリエステルを得るために、1種以上のスルホポリエステルの配合物を様々な比率で用いて、所望のTgを持つスルホポリエステル配合物を得てもよい。スルホポリエステル配合物のTgは、スルホポリエステル諸成分のTgの重み付き平均を用いて算出してよい。例えば、48℃のTgを持つスルホポリエステルは65℃のTgを持つ他のスルホポリエステルと25:75の重量:重量比率で配合して、約61℃のTgを持つスルホポリエステル配合物を得てもよい。
【0076】
本発明の他の態様では、多成分繊維の水分散性スルホポリエステル成分は以下のうち少なくとも1つを可能とする特性を持つ:
(A) 多成分繊維が所望の低いデニールを持つように紡糸される;
(B) これらの多成分繊維中のスルホポリエステルは繊維から形成されるウェブの水力交絡中に除去されまいとするが、水力交絡後に高温で効率的に除去される;
(C) 多成分繊維は熱硬化でき、安定で強い布が得られる。
ある溶融粘度とスルホ単量体残基濃度を持つスルホポリエステルを用いてこれらの目的を追求するうちに、驚くべき予想外の結果が達成された。
【0077】
したがって、本発明の上記態様において、造形された断面を持つ多成分繊維であって、この多成分繊維は
(A) 少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと;
(B) 前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインと
を含んでなり、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており、
前記繊維はフィラメント当り約6デニール未満の紡糸時デニールを有し;
前記水分散性スルホポリエステルは、240℃、1rad/秒のひずみ速度で測定すると、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し、
前記スルホポリエステルは、二酸またはジオール残基の総モルに対し少なくとも1種のスルホ単量体の残基約25モル%未満を含んでなる、
前記繊維が提供される。
【0078】
これらの多成分繊維に利用されているスルホポリエステルは、一般的に約12,000ポアズ未満の溶融粘度を持つ。好ましくは、スルホポリエステルの溶融粘度は、240℃、1rad/秒の剪断速度で測定すると、10,000ポアズ未満、より好ましくは6,000ポアズ未満、最も好ましくは4,000ポアズ未満である。他の態様では、スルホポリエステルは、240℃、1rad/秒の剪断速度で測定すると、約1,000〜12,000ポアズ、より好ましくは2,000〜6,000ポアズ、最も好ましくは2,500〜4,000ポアズの溶融粘度を示す。粘度を決定する前に、試料を真空炉中60℃で2日間乾燥させる。溶融粘度は、1mm間隙を設けた直径25mmの平行板配置を用いたレオメータで測定する。1〜400ラジアン毎秒のひずみ速度、10%のひずみ振幅で動的周波数掃引を行う。その後、240℃、1ラジアン毎秒のひずみ速度で粘度を測定する。
【0079】
本発明のこの態様にしたがい用いられるスルホポリエステル重合体中のスルホ単量体残基の濃度は、一般的には約25モル%未満、好ましくは20モル%未満(スルホポリエステル中の全二酸またはジオール残基の百分率として報告)である。より好ましくは、この濃度は約4〜約20モル%、さらに好ましくは約5〜約12モル%、最も好ましくは約7〜約10モル%である。本発明で用いられるスルホ単量体は、2つの官能基と、芳香族または脂環式の環に結合した1つ以上のスルホネート基を持ち、官能基はヒドロキシル、カルボキシルまたはこれらの組合せを持つのが好ましい。ソジオスルホイソフタル酸単量体が特に好ましい。
【0080】
これまでに記載したスルホ単量体に加え、スルホポリエステルは、1種以上のジカルボン酸の残基;1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し、少なくとも25モル%がH−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)という構造を持つポリ(エチレングリコール)であるジオール残基;全反復単位に対し、0〜約20モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、これら官能基はヒドロキシル、カルボキシルまたはそれらの組合せである残基を含んでなるのが好ましい。
【0081】
特に好ましい態様では、スルホポリエステルは、約80〜96モル%のジカルボン酸残基、約4〜約20モル%のスルホ単量体残基、および100モル%のジオール残基(全モル%は200%、すなわち、二酸100モル%とジオール100モル%である)を含んでなる。より具体的には、スルホポリエステルのジカルボン酸部分は約60〜80モル%のテレフタル酸と、約0〜30モル%のイソフタル酸、および約4〜20モル%の5−ソジオスルホイソフタル酸(5−SSIPA)を含んでなる。ジオール部分は約0〜50モル%のジエチレングリコールと、約50〜100モル%のエチレングリコールを含んでなる。本発明のこの態様に係る配合例は以下に述べる。
【0082】
【表1】
【0083】
多成分繊維の水非分散性成分は、本明細書中に記載した水非分散性重合体のいずれを含んでなってもよい。繊維の紡糸は、本明細書中に記載したどのような方法で実施されてもよい。しかしながら、本発明のこの態様に係る多成分繊維の改善された流動学的特性は、増大した延伸速度をもたらすものである。スルホポリエステルと水非分散性重合体を押出して多成分押出物を製造すると、この多成分押出物は溶融延伸でき、本明細書中に開示されたいずれの方法を用いても少なくとも約2000m/分、より好ましくは少なくとも約3000m/分、いっそう好ましくは少なくとも約4000m/分、最も好ましくは少なくとも約4500m/分の速度で多成分繊維が製造される。理論に縛られるつもりはないが、これらの速度で多成分押出物を溶融延伸すると、多成分繊維の水非分散性成分中に少なくともある程度の配向結晶性が導入される。この配向結晶性は、その後の処理の過程で多成分繊維から作られた不織材料の寸法安定性を高めることができる。
【0084】
多成分押出物のもう一つの利点は、6デニール/フィラメント未満の紡糸時繊度を持つ多成分繊維に溶融延伸できることである。多成分繊維の大きさの他の範囲には、4デニール/フィラメント未満と2.5デニール/フィラメント未満の紡糸時繊度が含まれる。
【0085】
したがって、本発明の他の態様では、造形された断面を持つ多成分押出物であって、この多成分押出物は:
(A) 少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと;
(B) 前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインと、
を含んでなり、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており、
前記押出物は少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸できる、
前記押出物が提供される。
【0086】
上記多成分繊維は、上記スルホポリエステルと非混和性の1種以上の水非分散性重合体の複数のセグメントまたはドメインからなり、これらのセグメントまたはドメインは、これらセグメントまたはドメイン同士の間に介在する上記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されている。本明細書中、“実質的に分離されている”という用語は、セグメント同士またはドメイン同士が互いに離隔された位置にあり、スルホポリエステルを除去するとセグメントまたはドメインが個々の繊維を形成することができる状態を意味するものとする。例えば、セグメント同士またはドメイン同士は例えばセグメント化パイ形状で互いに触れていることがあるが、衝撃により、またはスルホポリエステルが除去されると分断される可能性がある。
【0087】
本発明の多成分繊維における水非分散性重合体成分に対するスルホポリエステルの重量比は一般的には約60:40〜約2:98の範囲内、他の例では、約50:50〜約5:95の範囲内にある。典型的には、スルホポリエステルは多成分繊維の総重量の50重量%以下を含んでなる。
【0088】
多成分繊維のセグメントまたはドメインは、1種以上の水非分散性重合体からなってよい。多成分繊維のセグメントに用いてよい水非分散性重合体の例には、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロースエステル、およびポリ塩化ビニルが含まれるが、これらに限定されない。例えば、水非分散性重合体は、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキシレン)シクロヘキサンジカルボキシレート、ポリ(シクロヘキシレン)テレフタレート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート等のようなポリエステルでよい。他の例では、水非分散性重合体はDIN基準54900で測定されるように生崩壊性であることができ、および/またはASTM基準法D6340−98で測定されるように生分解性であることができる。生分解性ポリエステルおよびポリエステルブレンドの例は、米国特許第5,599,858号、第5,580,911号、第5,446,079号および第5,559,171号に開示されている。本発明の水非分散性重合体について本明細書中に用いられた用語“生分解性”は、この重合体が例えば適正で証明可能な期間で堆肥化環境におけるような環境の影響下で分解する(例えばASTM標準法D6340−98(表題“Standard Test Methods for Determining Aerobic Biodegradation of Radiolabeled Plastic Materials in an Aqueous or Compost Environment”)に規定されたように)ことを意味するものとする。本発明の水非分散性重合体は“生崩壊性”であってもよく、これは、重合体が、例えばDIN基準54900に規定されたように堆肥化環境において容易に断片化されることを意味する。例えば、生分解性重合体ははじめ、熱、水、空気、微生物、その他の因子の作用により環境下で分子量が低下する。この分子量低下は物性(靭性)の喪失をもたらし、しばしば繊維の破壊をもたらす。重合体の分子量が一旦充分に低下すると、次に単量体と低重合体が微生物に同化される。好気的環境では、これらの単量体または低重合体は最終的にCO、HOおよび新しい細胞バイオマスへと酸化される。嫌気的環境では、それらの単量体または低重合体は最終的にCO、H、酢酸塩、メタン、および細胞バイオマスへと変換される。
【0089】
例えば、水非分散性重合体は脂肪族−芳香族ポリエステル(本明細書中では“AAPE”と略す)でよい。本明細書中に用いられる用語“脂肪族−芳香族ポリエステル”とは、脂肪族または脂環式ジカルボン酸またはジオールおよび芳香族ジカルボン酸またはジオールに由来する残基の混合物を含んでなるポリエステルを意味する。本発明のジカルボン酸およびジオール単量体に関して本明細書中に用いられる用語“非芳香族”とは、これら単量体のカルボキシルまたはヒドロキシル基は芳香核を介して結合していないことを意味する。例えば、アジピン酸はその主鎖(すなわち、カルボン酸基同士を結合している炭素原子の鎖)内に芳香核を含有していないので、“非芳香族”である。対照的に、用語“芳香族”は、ジカルボン酸またはジオールがその主鎖内に例えばテレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸のような芳香核を含有していることを意味する。したがって、“非芳香族”は、飽和または性質上パラフィン系、不飽和(すなわち、非芳香族炭素−炭素二重結合を持つ)、またはアセチレン系(すなわち、炭素−炭素三重結合を持つ)でよい構成炭素原子の直鎖または枝分かれ鎖または環状配列を主鎖として含有する、例えばジオールやジカルボン酸のような脂肪族および脂環式構造の両方を含むものとする。したがって、本発明の明細書と請求項においては、非芳香族は、線状および分枝鎖構造(本明細書中では“脂肪族”と称する)と環状構造(本明細書中では“脂環式”と称する)を含むものとする。しかしながら、用語“非芳香族”は、脂肪族あるいは脂環式ジオールまたはジカルボン酸の主鎖に結合していてよい芳香族置換基を除外するものではない。本発明においては、二官能カルボン酸は、例えばアジピン酸のような脂肪族ジカルボン酸、または例えばテレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸であるのが普通である。二官能ヒドロキシル化合物は、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールのような脂環式ジオール、例えば1,4−ブタンジオールのような線状または分岐脂肪族ジオール、または例えばヒドロキノンのような芳香族ジオールでよい。
【0090】
AAPEは、2〜約8個の炭素原子を持つ脂肪族ジオール、2〜8個の炭素原子を持つポリアルキレンエーテルグリコール、約4〜約12個の炭素原子を持つ脂環式ジオールから選ばれた1種以上の置換または未置換の線状または分岐ジオールの残基を含んでなるジオール残基を含んでなる線状または分岐ランダムコポリエステルおよび/または鎖長延長コポリエステルでよい。典型的には、置換ジオールはハロ、C−C10アリールおよびC−Cアルコキシから互いに独立に選ばれた1〜約4個の置換基を含んでなる。用いてよいジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、トリエチレングリコール、およびテトラエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されず、好ましいジオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、または1,4−シクロヘキサンジメタノールから選ばれた1種以上のジオールを含んでなる。AAPEはまた、2〜約12個の炭素原子を持つ脂肪族ジカルボン酸と約5〜約10個の炭素原子を持つ脂環式酸から選ばれた1種以上の置換または未置換の線状または分岐非芳香族ジカルボン酸の残基を二酸残基の総モルに対し約35〜約99モル%含有する二酸残基を含んでなる。置換非芳香族ジカルボン酸は、ハロゲン、C−C10アリールおよびC−Cアルコキシから選ばれた1〜約4個の置換基を含有するのが普通である。非芳香族二酸の非限定的な例には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸、および2,5−ノルボルナンジカルボン酸が含まれる。これらの非芳香族ジカルボン酸に加え、AAPEは炭素数6〜約10の1種以上の置換または未置換の芳香族ジカルボン酸の残基を二酸残基の総モルに対し約1〜約65モル%含んでなる。置換された芳香族ジカルボン酸が使用される場合には、それらはハロゲン、C−C10アリールおよびC−Cアルコキシから選ばれた1〜約4個の置換基を含有するのが普通である。本発明のAAPEに用いてよい芳香族ジカルボン酸の非限定的な例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸の塩、および2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。より好ましくは、非芳香族ジカルボン酸はアジピン酸を含んでなり、芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸を含んでなり、ジオールは1,4−ブタンジオールを含んでなる。
【0091】
本発明のAAPEの組成物として可能性のある他のものは、二酸成分100モル%とジオール成分100モル%に対し以下のモル百分率のジオールとジカルボン酸(またはジエステルのような、それらのポリエステル形成性同等物)から調製されたものである:
(1) グルタル酸(約30〜約75%)、テレフタル酸(約25〜約70%)、1,4−ブタンジオール(約90〜約100%)および変性用ジオール(0〜約10%);
(2) コハク酸(約30〜約95%)、テレフタル酸(約5〜約70%)、1,4−ブタンジオール(約90〜100%)および変性用ジオール(0〜約10%);および
(3) アジピン酸(約30〜約75%)、テレフタル酸(約25〜約70%)、1,4−ブタンジオール(約90〜100%)および変性用ジオール(0〜約10%)。
【0092】
変性用ジオールは、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびネオペンチルグリコールから選ばれるのが好ましい。最も好ましいAAPEは、約50〜約60モル%のアジピン酸残基、約40〜約50モル%のテレフタル酸残基、および少なくとも95モル%の1,4−ブタンジオール残基を含んでなる線状、分岐、または鎖長延長コポリエステルである。アジピン酸残基は約55〜約60モル%を構成し、テレフタル酸残基は約40〜約45モル%を構成し、ジオール残基は約95モル%の1,4−ブタンジオール残基を含んでなるのがよりいっそう好ましい。このような組成物は、商標EASTAR BIO(登録商標)のコポリエステルとしてイーストマンケミカルカンパニー(テネシー州キングスポート)から、また、商標ECOFLEX(登録商標)としてBASFコーポレーションから市販されている。
【0093】
好ましいAAPEの追加の具体例には、(a)50モル%のグルタル酸残基、50モル%のテレフタル酸残基、および100モル%の1,4−ブタンジオール残基、(b)60モル%のグルタル酸残基、40モル%のテレフタル酸残基、および100モル%の1,4−ブタンジオール残基、または(c)40モル%のグルタル酸残基、60モル%のテレフタル酸残基、および100モル%の1,4−ブタンジオール残基を含有するポリ(テトラメチレングルタレート−コ−テレフタレート);(a)85モル%のコハク酸残基、15モル%のテレフタル酸残基、および100モル%の1,4−ブタンジオール残基、または(b)70モル%のコハク酸残基、30モル%のテレフタル酸残基、および100モル%の1,4−ブタンジオール残基を含有するポリ(テトラメチレンスクシネート−コ−テレフタレート);70モル%のコハク酸残基、30モル%のテレフタル酸残基、および100モル%のエチレングリコール残基を含有するポリ(エチレンスクシネート−コ−テレフタレート);および(a)85モル%のアジピン酸残基、15モル%のテレフタル酸残基、および100モル%の1,4−ブタンジオール残基、または(b)55モル%のアジピン酸残基、45モル%のテレフタル酸残基、および100モル%の1,4−ブタンジオール残基を含有するポリ(テトラメチレンアジペート−コ−テレフタレート)が含まれる。
【0094】
AAPEは、約10〜約1000個の反復単位、好ましくは約15〜約600個の反復単位を含んでなるのが好ましい。AAPEは、約0.4〜約2.0dL/g、より好ましくは約0.7〜約1.6dL/g(60/40重量比のフェノール/テトラクロロエタン溶液100ml中でコポリエステル0.5gの濃度を用いて25℃の温度で測定)の固有粘度を有してよい。
【0095】
AAPEは必要であれば分岐剤の残基を含有してよい。分岐剤のモル%範囲は、二酸またはジオール残基の総モルに対し約0〜約2モル%、好ましくは約0.1〜約1モル%、最も好ましくは約0.1〜約0.5モル%である(分岐剤がカルボキシルまたはヒドロキシル基を持っているかどうかによる)。分岐剤は、約50〜約5000、より好ましくは約92〜約3000の重量平均分子量と約3〜約6の官能価を持つのが好ましい。例えば、分岐剤は、3〜6個のヒドロキシル基を持つポリオール、3または4個のカルボキシル基(またはエステル形成性の同等の基)を持つポリカルボン酸、または合計3〜6個のヒドロキシルおよびカルボキシル基を持つヒドロキシ酸のエステル化された残基でよい。さらに、AAPEは反応押出成形中に過酸化物の添加により分岐させてよい。
【0096】
水非分散性重合体の各セグメントは他のものと細度が異なってもよく、当業者に知られた造形または工学設計された横断面形状寸法で配列されてよい。例えば、スルホポリエステルと水非分散性重合体を用いて、並列型、“海島型”、分割パイ形、他の分割形、さや芯型、または当業者に知られた他の形態のような工学設計された形状寸法を持つ二成分繊維を調製してよい。他の多成分形態も可能である。側面、“海”または“パイ”の部分を後に除去すると、極めて微細な繊維を得ることができる。二成分繊維を調製する方法も当業者によく知られている。二成分繊維において、本発明のスルホポリエステル繊維は約10〜約90重量%の量で存在してよく、一般的にさや/芯繊維のさや部分に用いられる。水不溶性または水非分散性重合体が用いられる場合、得られる二成分または多成分繊維は完全に水分散性ではないのが普通である。熱収縮率の著明な差と並列形状の組合わせを利用すると、らせん状けん縮を表すことができる。けん縮を望むなら、のこ歯またはスタッフィングボックスによるけん縮が多くの用途には一般的に適している。第2の重合体成分がさや/芯形状の芯に存在するなら、このような芯は必要であれば安定化させてもよい。
【0097】
“海島”または“セグメント化パイ”状断面を持つ繊維にはスルホポリエステルが特に有用である。これらのスルホポリエステルは、多成分繊維から他の水分散性重合体を除去するのに必要とされることがある苛性アルカリ含有溶液に比べ、分散に中性またはやや酸性の水(すなわち、“軟”水)を必要とするだけだからである。本明細書の開示中に用いられる用語“軟水”は、この水がCaCOとして5グレーン/ガロンまで(CaCO 1グレーン/ガロンは17.1ppmに相当する)を持つことを意味する。したがって、本発明の他の態様は、多成分繊維であって、
(A) 少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を持つ水分散性スルホポリエステルであって、当該スルホポリエステルは
(i) 全酸残基に対し約50〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸残基と;
(ii) 全酸残基に対し、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約20モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、これら官能基はヒドロキシル、カルボキシルまたはそれらの組合せである残基と、
を含んでなるスルホポリエステルと;
(B) 前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体を含んでなる複数のセグメントであって、前記セグメントは前記セグメント間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されているセグメントと、
を含んでなる多成分繊維であって、
前記繊維は、海島またはセグメント化パイ状の断面を持ち、前記繊維の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有する、
前記繊維である。
【0098】
上記ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホ単量体、枝分かれ単量体残基、および水非分散性重合体は、前述の通りである。多成分繊維では、スルホポリエステルが少なくとも57℃のTgを有するのが有利である。このスルホポリエステルは単一のスルホポリエステルでも、1種以上のスルホポリエステル重合体の配合物でもよい。スルホポリエステルまたはスルホポリエステル配合物が示してよいガラス転移温度のさらなる例は、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも85℃、そして少なくとも90℃である。例えば、スルホポリエステルは約75〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸残基と、約25〜約95モル%のジエチレングリコール残基とを含んでなってよい。上述のように、水非分散性重合体としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロースエステル、およびポリ塩化ビニルが挙げられる。さらに、水非分散性重合体は生分解性または生崩壊性でよい。例えば、水非分散性重合体は、既に述べたような脂肪族−芳香族ポリエステルでよい。
【0099】
本発明の新規な多成分繊維は、当業者に知られた幾つの方法で調製されてもよい。したがって、本発明は、造形された断面を持つ多成分繊維の製造法において、少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を持つ水分散性スルホポリエステルと、このスルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを紡糸することを含んでなる方法であって、上記スルホポリエステルは
(i) 1種以上のジカルボン酸の残基と;
(ii) 全反復単位に対し約4〜約40モル%の、2つの官能基と、芳香族環または脂環式環に結合した1つ以上のスルホン酸基とを持つ少なくとも1種のスルホ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と、
を含んでなり、
前記繊維は、前記水非分散性重合体を含んでなる複数のセグメントを持ち、前記セグメントは前記セグメント間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており、前記繊維は、前記繊維の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有する、方法を提供する。例えば、多成分繊維は、スルホポリエステルと1種以上の水非分散性重合体を別個の押出機で溶融し、個々の重合体流を複数の分配流路を持つ1つの紡糸口金または押出ダイに導き入れることにより調製されてよく、この際、水非分散性重合体成分が、介在するスルホポリエステルにより実質的に互いに分離された小さなセグメントまたは細いストランドを形成するようにする。このような繊維の断面は、例えばセグメント化パイ状配列または海島状配列でよい。他の例では、スルホポリエステルと1種以上の水非分散性重合体を別個に紡糸口金オリフィスに送り、次にさや−芯形に押出すが、水非分散性重合体は“芯”を形成し、この芯は実質的にスルホポリエステル“さや”重合体により包囲されている。このような同心繊維の場合、“芯”重合体を供給するオリフィスは紡糸オリフィス出口の中心にあり、芯重合体流体の流動条件は紡糸時の両成分の同心性を維持するように厳密に制御される。紡糸口金オリフィスを改造すると、繊維断面内に様々な形の芯および/またはさやを得ることができる。他の例では、並列状断面または形状を持つ多成分繊維は、水分散性スルホポリエステルと水非分散性重合体を別個にオリフィスを通して同時押出し、別個の重合体流を実質的に同一の速度で集めて、紡糸口金の表面の下方で並列に合流して結合流とすることにより調製してよく;または(2)2つの重合体流を別個にオリフィスを通して供給すると、これらは紡糸口金の表面で実質的に同一の速度で集まり、紡糸口金の表面で並列に合流して結合流となるように調製してもよい。どちらの場合でも、合流点での各重合体流の速度は、計量ポンプの速度、オリフィスの個数、オリフィスの大きさにより決定される。
【0100】
上記ジカルボン酸、ジオール、スルホポリエステル、スルホ単量体、枝分かれ単量体残基、および水非分散性重合体は、前述の通りである。スルホポリエステルは、少なくとも57℃のガラス転移温度を有している。スルホポリエステルまたはスルホポリエステル配合物が示してよいガラス転移温度のさらなる例は、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも85℃、そして少なくとも90℃である。一つの例では、スルホポリエステルは、全酸残基に対し約50〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸残基と;全酸残基に対し約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸残基と;全反復単位に対し0〜約20モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、これら官能基はヒドロキシル、カルボキシルまたはそれらの組合せである残基と、を含んでなってよい。他の例では、スルホポリエステルは、約75〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸残基と、約25〜約95モル%のジエチレングリコール残基とを含んでなってよい。上述のように、水非分散性重合体としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリウレタン、およびポリ塩化ビニルが挙げられる。さらに、水非分散性重合体は生分解性または生崩壊性でよい。例えば、水非分散性重合体は、既に述べたような脂肪族−芳香族ポリエステルでよい。造形された断面の例としては、海島、並列、さや−芯、またはセグメント化パイ形状が含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
本発明の他の態様において、造形された断面を持つ多成分繊維の製造方法であって、この方法は、少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと、前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを紡糸して多成分繊維を製造することを含んでなり、前記多成分繊維は前記水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインを有し、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃、1rad/秒のひずみ速度で測定すると、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し、前記スルホポリエステルは、二酸またはジオール残基の総モルに対し少なくとも1種のスルホ単量体の残基約25モル%未満を含んでなり;前記多成分繊維はフィラメント当り約6デニール未満の紡糸時デニールを有する、前記方法が提供される。
【0102】
この多成分繊維に利用されているスルホポリエステルと水非分散性重合体は、本明細書の開示中で既に述べられている。
【0103】
本発明の他の態様において、造形された断面を持つ多成分繊維の製造方法であって、この方法は、
(A) 少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと、前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを押出すことにより、多成分押出物を製造する工程において、前記多成分押出物は前記水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインを有し、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されている工程と;
(B) 前記多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸することにより、前記多成分繊維を製造する工程と、
を含んでなる方法が提供される。
【0104】
この方法が、上記多成分押出物を少なくとも約2000m/分、より好ましくは少なくとも約3000m/分、最も好ましくは少なくとも約4500m/分、の速度で溶融延伸する工程を含むのも、本発明の上記態様の構成である。
【0105】
典型的には、紡糸口金を出ると、上記繊維は直交する空気流で急冷され、固化する。この段階で各種仕上剤と糊剤を繊維に施してもよい。その後、冷却された繊維を延伸し、巻取スプールに巻き取る。乳化剤、帯電防止剤、抗菌剤、消泡剤、潤滑剤、熱安定剤、紫外線安定剤等の他の添加剤を有効量で仕上剤に加えいれてもよい。
【0106】
必要であれば、延伸繊維をテクスチャ処理し、巻き取って、嵩だか連続フィラメントを形成してよい。この一工程技法は、スピンドローテクスチャリングとして当業界で知られている。他の態様は、けん縮または未けん縮の、扁平フィラメント(非テクスチャ処理)糸またはカットステープルファイバーを含む。
【0107】
このスルホポリエステルは、界面層またはパイ状セグメントを溶解させ、水非分散性重合体の比較的小さいフィラメントまたはマイクロデニール繊維を残すことにより、後に除去してもよい。したがって、本発明は、マイクロデニール繊維の製造法において、以下の工程を含んでなる方法:
(A) 少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を持つ水分散性スルホポリエステルと、当該スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを紡糸して多成分繊維にし、前記スルホポリエステルが
(i) 全酸残基に対し約50〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸残基と;
(ii) 全酸残基に対し、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約20モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、これら官能基はヒドロキシル、カルボキシルまたはそれらの組合せである残基と、
を含んでなり;
前記繊維は、前記水非分散性重合体を含んでなる複数のセグメントを持ち、前記セグメントは前記セグメント間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており、前記繊維は、前記繊維の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有し;
(B) 前記多成分繊維を水と接触させて前記スルホポリエステルを除去することにより、マイクロデニール繊維を形成する、
方法を提供する。
【0108】
典型的には、多成分繊維は約25℃〜約100℃、好ましくは約50℃〜約80℃の温度の水と約10〜約600秒間接触させて、スルホポリエステルを散逸または溶解させる。スルホポリエステルの除去後、残った水非分散性重合体微小繊維は1d/f以下、典型的には0.5d/f以下、より典型的には0.1d/f以下の平均繊度を持つのが普通である。これら残存水非分散性重合体微小繊維の一般的な用途には、例えば人工皮革、スエード革、清拭具、ろ材のような不織布が含まれる。これらの微小繊維から製造されたろ材は、空気または液体をろ過するのに利用できる。液体には、水、体液、溶媒、炭化水素が含まれるが、これらに限定されない。スルホポリエステルのイオン性は、体液のような塩媒体への“溶解性”が悪いという利点ももたらす。このような特性は、水に流せるか、さもなければ衛生下水システムで処分されるパーソナルケア製品や清拭具に望ましい。選ばれたスルホポリエステルも染浴の分散剤や、洗濯サイクル時の土壌再堆積防止剤としても利用されてきた。
【0109】
本発明の他の態様において、マイクロデニール繊維の製造方法であって、以下の工程:少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと、前記水分散性スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを紡糸して、多成分繊維にする工程において、前記多成分繊維は前記水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインを有し、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており;前記繊維はフィラメント当り約6デニール未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃、1rad/秒のひずみ速度で測定すると、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し、前記スルホポリエステルは、二酸またはジオール残基の総モルに対し少なくとも1種のスルホ単量体の残基約25モル%未満を含んでなる、工程と;前記多成分繊維を水と接触させて、前記水分散性スルホポリエステルを除去することにより、マイクロデニール繊維を形成する工程と、を含んでなる方法が提供される。
【0110】
本発明の他の態様において、マイクロデニール繊維の製造方法であって、以下の工程:
(A) 少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと、前記水分散性スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを押出すことにより、多成分押出物を製造する工程において、前記多成分押出物は前記水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインを有し、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されている工程と;
(B) 前記多成分押出物を少なくとも約2000m/分の速度で溶融延伸することにより、多成分繊維を製造する工程と;
(C) 前記多成分繊維を水と接触させて、前記水分散性スルホポリエステルを除去することにより、マイクロデニール繊維を形成する工程と、を含んでなる方法が提供される。
【0111】
上記多成分押出物の溶融延伸は、好ましくは少なくとも約2000m/分、より好ましくは少なくとも約3000m/分、最も好ましくは少なくとも約4500m/分の速度で行う。
【0112】
本発明に係る使用に適したこのようなスルホ単量体とスルホポリエステルは、上述の通りである。
【0113】
本発明の上記態様に係る使用に好適なスルホポリエステルは一般的に以後の水力交絡プロセス中の除去に抵抗するので、多成分繊維からスルホポリエステルを除去するのに用いられる水は、室温より高いのが好ましく、この水はより好ましくは少なくとも約45℃、さらに好ましくは少なくとも約60℃、最も好ましくは少なくとも約80℃である。
【0114】
本発明の他の態様において、水非分散性重合体微小繊維を製造する他の方法が提供される。この方法は、以下の工程からなる:
a) 多成分繊維を切断して、切断多成分繊維にする工程と;
b) 繊維含有供給原料を水と接触させて、繊維混合スラリを製造する工程において、前記繊維含有供給原料は切断多成分繊維を含んでなる工程と;
c) 繊維混合スラリを加熱して、加熱繊維混合スラリを製造する工程と;
d) 必要であれば、前記繊維混合スラリを剪断区域中で混合する工程と;
e) 前記多成分繊維から前記スルホポリエステルの少なくとも一部を除去して、スルホポリエステル分散液と前記水非分散性重合体微小繊維とを含んでなるスラリ混合物を製造する工程と;
f) 前記スラリ混合物から前記水非分散性重合体微小繊維を分離する工程。
【0115】
上記多成分繊維は、不織物品を製造するのに利用可能などのような長さにも切断できる。本発明の一つの態様においては、多成分繊維は約1mm〜約50mmの長さに切断される。本発明の他の態様においては、多成分繊維は様々な長さの混合物に切断できる。
【0116】
上記繊維含有供給原料は、不織物品の製造に有用な他のどのような種類の繊維を含んでなることもできる。一つの態様では、繊維含有供給原料は、セルロース系繊維パルプ、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、およびセルロースエステル繊維からなる群から選ばれた少なくとも1種の繊維をさらに含んでなる。
【0117】
繊維含有供給原料は水と混合されて、繊維混合スラリを調製する。好ましくは、水分散性スルホポリエステルの除去を容易にするために、利用される水は軟水または脱イオン水であることができる。軟水は、本開示中に既に規定した。本発明の一つの態様において、少なくとも1種の硬水軟化剤を用いて、多成分繊維からの水分散性スルホポリエステルの除去を容易にしてよい。当業界で知られているどのような硬水軟化剤を利用することも可能である。1つの態様では、硬水軟化剤は、キレート剤またはカルシウムイオン封鎖剤である。適用可能なキレート剤またはカルシウムイオン封鎖剤は、1分子当たり複数のカルボン酸基を含有している化合物であって、キレート剤の分子構造内のカルボキシル基が2〜6個の原子により分離されている化合物である。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウムは、最も普通のキレート剤の具体例であり、1分子構造当たり4つのカルボン酸部分を含有し、隣り合ったカルボン酸基が3つの原子で分離されている。ポリアクリル酸ナトリウム塩は、カルボキシル基の間の2つの原子により分離されたカルボキシル酸基を持つカルシウム封鎖剤の一例である。マレイン酸またはコハク酸のナトリウム塩は、最も基本的なキレート剤化合物の例である。適用可能なキレート剤のさらなる例には、共通して分子構造内に多くのカルボン酸基を持つ化合物であって、カルシウムのような2価または多価陽イオンとの有利な立体相互作用をもたらす所要の距離(2〜6原子単位)だけカルボン酸基同士が離されており、これによりキレート剤が2価または多価陽イオンと優先的に結合するような化合物が含まれる。このような化合物には、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸;ジエチレントリアミン−N,N,N’,N’,N”−五酢酸;ペンテト酸;N,N−ビス(2−(ビス−(カルボキシメチル)アミノ)エチル)−グリシン;ジエチレントリアミン五酢酸;[[(カルボキシメチル)イミノ]ビス(エチレンニトリロ)]−四酢酸;エデト酸;エチレンジニトリロ四酢酸;EDTA遊離塩基;EDTA遊離酸;エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸;ハンペン;ベルセン;N,N’−1,2−エタンジイルビス−(N−(カルボキシメチル)グリシン);エチレンジアミン四酢酸;N,N−ビス(カルボキシメチル)グリシン;トリグリコラミン酸;トリロンA;α,α’,α”−トリメチルアミントリカルボン酸;トリ(カルボキシメチル)アミン;アミノ三酢酸;ハンプシャーNTA酸;ニトリロ−2,2’、2”−三酢酸;チトリプレックス i;ニトリロ三酢酸;およびこれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。
【0118】
必要な硬水軟化剤の量は、Ca++、その他の多価イオンの点で利用される水の硬度に依存する。
【0119】
繊維混合スラリを加熱して、加熱繊維混合スラリを製造する。温度は、多成分繊維からスルホポリエステルの一部を除去するのに充分な温度である。本発明の1つの態様では、繊維混合スラリを約50℃〜約100℃の温度に加熱する。他の温度範囲は約70℃〜約100℃、約80℃〜約100℃、および約90℃〜約100℃である。
【0120】
必要であれば、繊維混合スラリを剪断区域中で混合する。混合量は、水分散性スルホポリエステルの一部を分散し、多成分繊維から除去し、水非分散性重合体微小繊維を分離するのに充分な量である。本発明の1つの態様では、スルホポリエステルの90%が除去される。他の態様では、スルホポリエステルの95%が除去され、さらに他の態様では、スルホポリエステルの98%以上が除去される。剪断区域は、水分散性スルホポリエステルの一部を分散し、多成分繊維から除去し、水非分散性重合体微小繊維を分離するのに必要な剪断作用を与えることができるタイプの設備を含んでなることができる。そのような設備の例には、パルパーと精砕機が含まれるが、これらに限定されない。
【0121】
水と接触し、加熱後の多成分繊維内の水分散性スルホポリエステルは分散し、水非分散性重合体繊維から分離して、スルホポリエステル分散液と水非分散性重合体微小繊維とを含んでなるスラリ混合物を製造する。次に、水非分散性重合体微小繊維は当業界で知られているどのような手段でもスルホポリエステル分散液から分離できる。例えば、スラリ混合物は例えばスクリーンとフィルタのような分離設備を通すことができる。必要であれば、水非分散性重合体微小繊維は1回または多数回洗って、水分散性スルホポリエステルのより多くを除去してよい。
【0122】
水分散性スルホポリエステルの除去は、スラリ混合物の物理的観察により決定できる。水非分散性重合体微小繊維を水洗いするのに利用された水は、水分散性スルホポリエステルがほとんど除去されると、透明になる。水分散性スルホポリエステルがまだ除去されている過程にあると、水非分散性重合体微小繊維を水洗いするのに利用された水は乳濁している可能性がある。さらに、水分散性スルホポリエステルが水非分散性重合体微小繊維上に残っていると、微小繊維は触ると幾分べたつくことがある。
【0123】
水分散性スルホポリエステルは、当業界で知られているどのような方法でもスルホポリエステル分散液から回収できる。
【0124】
本発明の他の態様においては、短カット水非分散性重合体微小繊維であって、少なくとも1種の水非分散性重合体を含んでなる微小繊維において、前記水非分散性重合体微小繊維は5ミクロン未満の等価直径と25mm未満の長さを持つ、同微小繊維が提供される。この短カット水非分散性重合体微小繊維は、既に述べた微小繊維の製造法により製造される。本発明の他の側面では、この短カット水非分散性重合体微小繊維は3ミクロン未満の等価直径と25mm未満の長さを持つ。本発明の他の態様では、上記短カット水非分散性重合体微小繊維は5ミクロン未満または3ミクロン未満の等価直径を持つ。本発明の他の態様では、上記短カット水非分散性重合体微小繊維は12mm未満、10mm未満、6.5mm未満、および3.5mm未満の長さを持つ。一旦分離された多成分繊維内のドメインまたはセグメントは水非分散性重合体微小繊維をもたらす。
【0125】
アスペクト比は、短カット水非分散性重合体微小繊維の長さを直径で割った比と定義される。短カット水非分散性重合体微小繊維のアスペクト比の選択は、不織工程における微小繊維の加工に影響を及ぼす可能性がある。適切なアスペクト比を選択すると、不織工程における短カット水非分散性重合体微小繊維同士、またはこれと他の成分との塊または結節を防ぐことにより、短カット水非分散性重合体微小繊維の不織工程における分散を向上できる。さらに、適切なアスペクト比を選択すると、長さが充分なため短カット水非分散性重合体微小繊維がそれ自身および/または他の繊維と絡み合うことができるので、短カット水非分散性重合体微小繊維を含有する不織物品の強度を向上できる。
【0126】
本発明の1つの態様では、アスペクト比が充分に低いので、スルホポリエステルを除去しているとき、または不織工程中、短カット水非分散性重合体微小繊維同士が絡み合って、短カット水非分散性重合体微小繊維が互いに、または他の成分や他の繊維と凝集して、結節や塊を作るということがなくなる。本発明の他の態様では、短カット水非分散性重合体微小繊維のアスペクト比は充分に高いので、不織物品内で短カット水非分散性重合体微小繊維が互いに、および/または他の繊維と絡み合うことができ、不織物品に強度を与える。
【0127】
本発明の一つの態様では、短カット水非分散性重合体微小繊維は、約300〜約1000のアスペクト比(長さ/直径)を持つ。本発明の他の態様では、このアスペクト比は約300〜約750、約300〜約650、約300〜約550、約300〜約450である。他のアスペクト比範囲は、約400〜約850と約500〜約700である。本発明の他の態様では、短カット水非分散性重合体微小繊維のアスペクト比は、約300、約400、約500、約600、約700、および約800である。
【0128】
本発明の他の態様において、短カット微小繊維含有混合物であって、前記混合物が:
1d/f以下の繊度を持つ複数の水非分散性短カット重合体微小繊維であって、前記水非分散性短カット重合体微小繊維は約300〜約1000のアスペクト比を持つ、同微小繊維と;
水と;
前記水に分散されたスルホポリエステルと、
を含んでなり、
前記スルホポリエステルは少なくとも40℃のガラス転移温度(Tg)を持ち、
前記スルホポリエステルは
(i) 1種以上のジカルボン酸の残基と;
(ii) 全反復単位に対し約4〜約40モル%の、2つの官能基と、芳香族環または脂環式環に結合した1つ以上のスルホン酸基とを持つ少なくとも1種のスルホ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基とを含んでなる、
前記混合物が提供される。
【0129】
本発明は、上述の水分散性繊維、多成分繊維、マイクロデニール繊維、または水非分散性重合体微小繊維を含んでなる繊維物品も含む。用語“繊維物品”は、繊維を持つ、または繊維に似たどのような物品も意味するものと解する。繊維物品の非限定例としては、マルチフィラメント繊維、糸、コード、テープ、生地、湿式堆積ウェブ、乾式堆積ウェブ、メルトブローウェブ、スパンボンドウェブ、熱ボンドウェブ、水力交絡ウェブ、不織ウェブと不織布、およびこれらの組合せ;例えば多層不織布、積層体、このような繊維の複合体、ガーゼ、包帯、おむつ、練習用パンツ、タンポン、外科用ガウンおよびマスク、女性用ナプキンのような、繊維の一層以上を持つ品目等が含まれる。さらに、水非分散性微小繊維は、空気ろ過、液体ろ過、食品調製用ろ過、医療用ろ過、製紙工程や紙製品用のろ過のためのろ材に利用できる。さらに、繊維物品は各種個人衛生および洗浄製品用の交換挿入具を含んでもよい。本発明の繊維物品は、水分散性であってもなくてもよい他の材料に接合、積層、接着されてもよく、これらの材料と共に用いられてもよい。繊維物品、例えば、不織布層は、ポリエチレンのような、水非分散性材料の軟質プラスチックフィルムまたは裏地に接着してもよい。このような集成体は、例えば使い捨ておむつの一部品として使用できる。さらに、上記繊維物品は、繊維をもう一つの支持体上に吹きだすことにより、工学設計されたメルトブロー、スパンボンド、フィルム状、または膜状構造物を高度に取り合わせた組合せ物とすることで作製してもよい。
【0130】
本発明の繊維物品は、不織布とウェブを含む。不織布は、製織または編成操作なしに繊維状ウェブから直接作られた布地と定義される。The Textile Instituteは、不織布を糸でなく繊維から直接作られた布構造物と定義している。通常これらの布地は、各種手技を用い結合により強化された連続フィラメントまたは繊維ウェブあるいはバットから作られる。それらの手技には、接着剤による結合、針操作または流体ジェット絡み合いによる機械的インターロッキング、熱結合、およびステッチ結合が含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明の多成分繊維はどのような既知の布地形成法により布地に形成してもよい。得られた布地またはウェブは、充分な力を施して多成分繊維が分割されるようにするか、またはウェブを水と接触させてスルホポリエステルを除去し、残存するマイクロデニール繊維を後に残すようにして、マイクロデニール繊維ウェブに変換してもよい。
【0131】
したがって、本発明は、マイクロデニール繊維ウェブの製造法において、以下の工程:
(A) 少なくとも57℃のガラス転移温度(Tg)を持つ水分散性スルホポリエステルと、当該スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを紡糸して多成分繊維にする工程であって、前記スルホポリエステルが
(i) 全酸残基に対し約50〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸残基と;
(ii) 全酸残基に対し、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも25モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約20モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、これら官能基はヒドロキシル、カルボキシルまたはそれらの組合せである残基と、
を含んでなるスルホポリエステルであり;
前記多成分繊維は、前記水非分散性重合体を含んでなる複数のセグメントを持ち、前記セグメントは前記セグメント間に介在する前記スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており、前記繊維は、前記繊維の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有する、工程と;
(B) 工程Aの多成分繊維を積層し、集めて、不織ウェブを形成する工程と;
(C) 前記不織ウェブを水と接触させて前記スルホポリエステルを除去することにより、マイクロデニール繊維ウェブを形成する工程と、
を含んでなる方法を提供する。
【0132】
本発明の他の態様において、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法であって、以下の工程:
(A) 少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと、前記スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを紡糸して、多成分繊維にする工程において、前記多成分繊維は前記水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインを有し、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記水分散性スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されており;前記繊維はフィラメント当り約6デニール未満の紡糸時デニールを有し;前記水分散性スルホポリエステルは、240℃、1rad/秒のひずみ速度で測定すると、約12,000ポアズ未満の溶融粘度を示し、前記スルホポリエステルは、二酸またはジオール残基の総モルに対し少なくとも1種のスルホ単量体の残基約25モル%未満を含んでなる、工程と;
(B) 工程(A)の多成分繊維を集めて、不織ウェブにする工程と;
(C) 前記不織ウェブを水と接触させて、前記スルホポリエステルを除去することにより、マイクロデニール繊維ウェブを形成する工程と、
を含んでなる方法が提供される。
【0133】
本発明の他の態様において、マイクロデニール繊維ウェブの製造方法であって、以下の工程:
(A) 少なくとも1種の水分散性スルホポリエステルと、前記水分散性スルホポリエステルと混和しない1種以上の水非分散性重合体とを押出して、多成分押出物にする工程において、前記多成分押出物は前記水非分散性重合体を含んでなる複数のドメインを有し、前記ドメインは前記ドメイン間に介在する前記水分散性スルホポリエステルにより実質的に互いに分離されている、工程と;
(B) 少なくとも約2000m/分の速度で前記多成分押出物を溶融延伸して、多成分繊維を製造する工程と;
(C) 工程(B)の多成分繊維を集めて、不織ウェブを形成する工程と;
(D) 前記不織ウェブを水と接触させて、前記スルホポリエステルを除去することにより、マイクロデニール繊維ウェブを形成する工程と、
を含んでなる方法が提供される。
【0134】
上記方法は、工程(C)の前に、不織ウェブの多成分繊維を水力交絡する工程を含んでなるのが好ましい。また、水力交絡工程は多成分繊維に含有されているスルホポリエステルの約20重量%未満の喪失をもたらすのが好ましく、より好ましくは、この喪失は15重量%未満、最も好ましくは、この喪失が10重量%未満である。水力交絡中のスルホポリエステルの喪失を低下させるという目標を推進するには、このプロセス中で用いる水は、好ましくは約45℃未満、より好ましくは約35℃未満、最も好ましくは約30℃未満の温度を持つ。水力交絡中に用いる水はできるだけ室温に近くして、多成分繊維からのスルホポリエステルの喪失を最小限にするのが好ましい。逆に、工程(C)中でスルホポリエステル重合体除去を実施するには、好ましくは、少なくとも約45℃、より好ましくは少なくとも約60℃、最も好ましくは少なくとも約80℃の温度を持つ水を用いる。
【0135】
水力交絡後で工程(C)の前に、不織ウェブは熱硬化工程に付してもよく、この熱硬化工程は不織ウェブを少なくとも約100℃、より好ましくは少なくとも約120℃の温度に加熱することを含んでなる。熱硬化工程は、内部繊維応力を緩和除去し、寸法が安定した布地製品を製造しやすくする。熱硬化材料が熱硬化工程中の加熱温度に再加熱されると、元々の表面積の約5%未満の表面積収縮率を示すのが好ましい。より好ましくは、この収縮率は元々の表面積の約2%未満で、最も好ましくは、収縮率が約1%未満である。
【0136】
多成分繊維に用いられるスルホポリエステルは上述のもののうちいずれでも可能であるが、スルホポリエステルが240℃、1rad/秒のひずみ速度で測定すると、約6,000ポアズ未満の溶融粘度を示し、全反復単位に対し少なくとも1種のスルホ単量体の残基約12モル%未満を含んでなるのが好ましい。これらの種類のスルホポリエステルは本明細書中で既に述べた。
【0137】
さらに、本発明の方法は、多成分繊維を好ましくは少なくとも2000m/分、より好ましくは少なくとも約3000m/分、いっそう好ましくは少なくとも約4000m/分、最も好ましくは少なくとも約5000m/分の繊維速度で延伸する工程を含んでなる。
【0138】
本発明の他の態様において、水非分散性重合体微小繊維を含んでなる不織物品が製造できる。この不織物品は水非分散性重合体微小繊維を含んでなり、乾式堆積法および湿式堆積法からなる群から選ばれた方法により製造される。多成分繊維、および水非分散性重合体微小繊維の製造法は既に本明細書中に開示した。
【0139】
本発明の一つの態様においては、水非分散性重合体微小繊維の少なくとも1%は不織物品中に含有されている。不織物品中に含有されている水非分散性重合体微小繊維の他の量は、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%である。
【0140】
本発明の他の側面では、不織物品は少なくとも1種の他の繊維をさらに含んでなることができる。他の繊維とは、製造される不織物品の種類に応じ当業界で知られているどのようなものでもよい。本発明の1つの態様では、他の繊維は、セルロース系繊維パルプ、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、セルロースエステル繊維、およびそれらの混合物からなる群から選ぶことができる。
【0141】
不織物品は、さらに少なくとも1種の添加剤を含んでなることができる。添加剤には、澱粉、充填剤、結合剤が含まれるが、これらに限定されない。他の添加剤については、本開示中の他の部分に述べてある。
【0142】
一般に、多成分繊維から製造された水非分散性微小繊維から不織物品を製造する製造法は、以下の群に分けることができる: 乾式堆積ウェブ、湿式堆積ウェブ、これらの方法を互いにまたは他の不織方法と組合わせたもの。
【0143】
一般に、乾式堆積不織物品は、繊維を乾燥状態で操作するように考えられたステープルファイバ加工機を用いて作られる。これらの方法には、カーディング、空気力学的、および他の空気堆積経路による方法のような機械的方法が含まれる。このカテゴリーには、トウの形状のフィラメントから作られる不織物品、ステープルファイバから構成される布地、およびステッチ用フィラメントまたはヤード(すなわち、ステッチボンド式不織布)も含まれる。カーディングは、繊維をほぐし、洗浄し、混ぜ合わせて、さらに不織物品に加工するためのウェブを作る方法である。この方法は主として、機械的絡み合いと繊維同士の摩擦によりウェブとしてまとめられた繊維を整合させる。カードは一般的に、1つ以上の主筒、ローラまたは静止こま、1つ以上のドッファ、またはこれら主部品の各種組合せで構成されている。カードの1例はローラーカードである。カーディング作用は、一連の相互に作用するカードローラ上のカードの箇所同士の間で水非分散性重合体微小繊維を梳いたり加工したりすることである。カードの他の種類には、羊毛、綿および無作為のカードが含まれる。これらの繊維を整合させるには、くず繊維再生機も使用できる。
【0144】
乾式堆積法における水非分散性重合体微小繊維は、空気堆積によっても整合できる。これらの繊維は、空気流により、平コンベアまたはドラムであることができる集束機上に送られる。
【0145】
押出成形ウェブも、本発明の多成分繊維から製造できる。それらの例には、スパンボンドおよびメルトブロー品が含まれる。押出技術は、スパンボンド、メルトブロー、および多孔フィルム不織物品を製造するのに用いられる。これらの不織物品は、溶融紡糸、フィルム流延、押出被覆のような重合体押出法に伴う機械で作成される。次に、不織物品を水と接触させと水分散性スルホポリエステルを取除いて、水非分散性重合体微小繊維を含んでなる不織物品を製造する。
【0146】
スパンボンド法においては、水分散性スルホポリエステルと水非分散性重合体とを布地に直接変換する。これは、多成分フィラメントを押出し、束または組として配向し、搬送スクリーン上に積層し、互いに連結させることにより行う。連結は、熱融合、機械的絡み合わせ、水力交絡、化学バインダ、またはこれらの方法の組合せにより実施できる。
【0147】
メルトブロー布は水分散性スルホポリエステルと水非分散性重合体からも直接作られる。これらの重合体を溶融し、押出す。溶融物が押出オリフィスを通過するとすぐに高温の空気を吹き付ける。空気流は溶融重合体を細長化させ、固化させる。次に、多成分繊維をウェブとして空気流から分離させ、加熱ロール同士の間で圧縮できる。
【0148】
スパンボンド法とメルトボンド法の併用も不織物品の製造に利用できる。
【0149】
湿式堆積法は、不織物品を製造するのに製紙技術を用いる。これらの不織物品は、パルプ繊維化に関連する機械(例えば、ハンマーミル)および抄紙に関連する機械(例えば、短繊維を流体中で操作するように考えられた連続スクリーン上にスラリーを噴出する)を用いて作製する。
【0150】
湿式堆積法の1つの態様では、水非分散性重合体微小繊維を水中に懸濁させ、懸濁した繊維は成形スクリーンを通して水が排出される成形部に送られ、繊維がスクリーンワイヤ上に堆積される。
【0151】
湿式堆積法の他の態様では、水非分散性重合体微小繊維を、脱水モジュール(吸込箱、箔、curatures)上の油圧成形機の始部で1500m/分までの高速で回転する篩または金網上で脱水する。この金網上でシートが固化し、脱水はほぼ20〜30%の固形分になるまで進行する。次に、このシートを加圧し、乾燥することができる。
【0152】
湿式堆積法の他の態様では、以下の工程を含んでなる方法が提供される:
(a) 必要であれば、水非分散性重合体微小繊維を水ですすぎ洗いし;
(b) 水非分散性重合体微小繊維に水を加えて、水非分散性重合体微小繊維スラリーを作製し;
(c) 必要であれば、水非分散性重合体微小繊維スラリーに他の繊維および/または添加剤を加え;
(d) 水非分散性重合体微小繊維含有スラリーを湿式堆積不織域に移して、不織物品を製造する。
【0153】
工程(a)では、すすぎ洗い回数は水非分散性重合体微小繊維のために選んだ特定の用途によって決まる。工程(b)では、この微小繊維に充分の水を加えて、この微小繊維が湿式堆積不織域に移送できるようにする。
【0154】
上記湿式堆積不織域は、湿式堆積不織物品を製造するための、当業界で知られた設備を含んでなる。本発明の1つの態様では、湿式堆積不織域は、水非分散性重合体微小繊維スラリーから水を除去するための少なくとも1つのスクリーン、メッシュ、または篩を含んでなる。
【0155】
本発明の他の態様では、水非分散性重合体微小繊維スラリーは湿式堆積不織域に移される前に混合される。
【0156】
不織物品を製造するのにウェブ結合法も利用できる。これらの方法は化学的方法と物理的方法に分けることができる。化学的結合とは、水系重合体や溶媒系重合体を用いて繊維および/または繊維ウェブを互いに結合することを意味する。これらの結合剤は、飽和、含浸、噴霧、捺染、または泡としての適用により、施すことができる。物理的結合方法には、カレンダ加工や熱風結合のような熱的方法、ニードリングや水力交絡のような機械的方法が含まれる。ニードリングまたはニードルパンチング法は、ほぼ水平の位置からほぼ垂直の位置に繊維の一部を物理的に移動させることにより、繊維を機械的に絡み合わせるものである。ニードルパンチングは、ニードル織機により実施できる。ニードル織機は一般的に、ウェブ送り機構、ニードルを保持するニードルボードを含んでなるニードルビーム、抜取板、ベッドプレート、および布地巻取機構を含む。
【0157】
ステッチボンドは、糸と共に又は糸無しで編成部品を用いて、繊維ウェブを互いに結合する機械的結合法である。ステッチボンド機の例には、Maliwatt、Arachne、Malivlies、Arabevaが含まれるが、これらに限定されない。
【0158】
不織物品は、以下の方法により一体化できる: 1)機械的繊維抱合と絡み合わせでウェブまたはマットに収める;2)バインダ繊維の使用や、何らかの重合体および重合体配合物の熱可塑性を利用することを含む、繊維融合の各種手技;3)澱粉、カゼイン、セルロース誘導体のような結合樹脂、または、アクリルラテックスまたはウレタンのような合成樹脂の使用;4)粉末接着バインダ;または5)これらの組合せ。繊維は、一方向への配向は可能であるが、無作為に堆積されることが多く、その後に、上に述べた方法のいずれかを用いて結合させる。
【0159】
本発明の不織物品は、1層以上の水分散性繊維、多成分繊維、またはマイクロデニール繊維をさらに含んでなってもよい。繊維層は、1つ以上の不織布層、緩く結合した積層繊維の層、またはそれらの組合せでよい。さらに、繊維物品は、幼児用おむつのような小児用ケア製品;小児練習用パンツ;大人用おむつや成人失禁パッドのような成人用ケア製品;女性用ナプキン、パンティー裏地、タンポンのような女性用ケア製品;清拭具;繊維含有洗浄用製品;医療用清拭具、ティシュ、ガーゼ、診断用ベッドカバー、外科用マスク、ガウン、包帯、傷包帯のような医療用・外科用製品;布地;弾性糸、拭き取り布、テープ、その他の保護遮蔽具、包装材料のようなパーソナルケア製品やヘルスケア製品を含んでよいが、これらに限定されない。繊維物品は液体の吸収に用いてよく、あるいは各種液体組成物で事前に湿らせて、これらの組成物を表面に運ぶのに用いてもよい。液体組成物の非限定例には、洗剤;湿潤剤;洗浄剤;化粧品、軟膏、薬品、皮膚軟化剤、芳香剤のようなスキンケア製品が含まれる。繊維物品は、吸収性を高めたり、送達用ビヒクルとしての各種粉末や微粒子を含んでもよい。粉末や微粒子の例には、タルク、澱粉、各種吸水性、水分散性または水膨潤性重合体(超吸収性重合体、スルホポリエステル、ポリ(ビニルアルコール)等)、シリカ、顔料、マイクロカプセルが含まれるが、これらに限定されない。特定の用途に必要とされるような添加剤も存在してよいが、要求はされない。添加剤の例には、酸化安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、色素、不透明剤(艶消剤)、蛍光増白剤、充填剤、核剤、可塑剤、粘度調整剤、表面改質剤、抗菌剤、消毒剤、常温流れ阻害剤、枝分かれ剤、および触媒が含まれるが、これらに限定されない。
【0160】
水分散性であることに加え、上記の繊維物品は水で流せてよい。本明細書中で用いられる用語“水で流せる”とは、従来のトイレで流せて、都市下水または居住地域の汚水処理システム内に導入でき、しかもトイレや下水システムの閉鎖、閉塞を起こさないことを意味する。
【0161】
不織物品は、第2の水分散性重合体を含んでなる水分散性被膜をさらに含んでなってもよい。第2の水分散性重合体は、本発明の繊維および繊維物品に用いられた前述の水分散性重合体と同一または異なっていてよい。例えば1つの態様では、第2の水分散性重合体は追加のスルホポリエステルでよく、この追加のスルホポリエステルは以下を含んでなる:
(A) 全酸残基に対し、約50〜約96モル%の1種以上のイソフタル酸またはテレフタル酸残基;
(B) 全酸残基に対し、約4〜約30モル%のソジオスルホイソフタル酸残基;
(C) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し、少なくとも15モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)であるジオール残基;
(D) 全反復単位に対し、0〜約20モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、これら官能基はヒドロキシル、カルボキシルまたはそれらの組合せである残基。追加のスルホポリエステルは、上述のように1種以上の補足的重合体と混合して、得られる繊維物品の特性を改変させてもよい。補足的重合体は、用途に応じ水分散性であってもなくてもよい。補足的重合体は、追加のスルホポリエステルと混和性でも非混和性でもよい。
【0162】
追加のスルホポリエステルは、イソフタル酸残基を他の濃度、例えば約60〜約95モル%、約75〜約95モル%、で含有してもよい。イソフタル酸残基濃度範囲のいっそうの例は、約70〜約85モル%、約85〜約95モル%、約90〜約95モル%である。追加のスルホポリエステルは、約25〜約95モル%のジエチレングリコール残基を含んでなってもよい。ジエチレングリコール残基濃度範囲のいっそうの例は、約50〜約95モル%、約70〜約95モル%、約75〜約95モル%を含む。追加のスルホポリエステルは、エチレングリコールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノールの残基を含んでもよい。CHDM残基の典型的濃度範囲は、約10〜約75モル%、約25〜約65モル%、約40〜約60モル%である。エチレングリコール残基の典型的濃度範囲は、約10〜約75モル%、約25〜約65モル%、約40〜約60モル%である。他の態様では、追加のスルホポリエステルは、約75〜約96モル%のイソフタル酸残基と約25〜約95モル%のジエチレングリコール残基を含んでなる。
【0163】
本発明によると、繊維物品のスルホポリエステル被膜成分は単層または多層被膜として製造してよい。単層被膜は従来の流延法により製造してよい。多層被膜は従来の積層法などにより製造してよい。被膜はどのような便利な厚さでもよいが、全厚さは通常約2ミルと約50ミルとの間であろう。
【0164】
被膜含有繊維物品は上述のように水分散性繊維の1つ以上の層を含んでよい。繊維層は、1つ以上の不織布層、緩く結合した積層繊維の層、またはそれらの組合せでよい。さらに、被膜含有繊維物品は上述のようなパーソナルケアおよびヘルスケア製品を含んでよい。
【0165】
前述のように、繊維物品は、吸収性を高めたり、送達用ビヒクルとしての各種粉末や微粒子を含んでもよい。したがって、1つの態様では、本発明の繊維物品は、本明細書中で既に述べたような水分散性重合体成分と同一または異なってよい第3の水分散性重合体を含んでなる粉末を含んでなる。粉末や微粒子の他の例には、タルク、澱粉、各種吸水性、水分散性または水膨潤性重合体(ポリ(アクリロニトリル)、スルホポリエステル、ポリ(ビニルアルコール)等)、シリカ、顔料、マイクロカプセルが含まれるが、これらに限定されない。
【0166】
本発明の新規な繊維および繊維物品は、上述の用途に加え多くの用途が可能である。1つの新規な用途は、平坦、湾曲または付形された表面上に被膜または不織布をメルトブローして、保護層を設けることである。このような層により、運送中、耐久性のある設備に表面保護が与えられよう。目的地では、この設備を使用に供する前に、スルホポリエステルの外層を洗い落とすことができる。この一般的な用途の概念のさらなる態様は、再使用可能なまたは限定的用途の衣料または外被のための一時的遮断層をもたらす個人保護品である。軍隊には、活性炭と化学吸収剤を収集装置の直前の細長フィラメント模様上に噴霧して、メルトブローした母材がこれらの物質を露出面に定着させることができる。脅威が発生した際、他の層上にメルトブローすることにより前方の作戦領域で化学吸収剤を変えることもできる。
【0167】
スルホポリエステルに固有の主な利点は、イオン部分(すなわち、塩)を添加することにより、凝集または沈殿を介して水性分散液から重合体を除去または回収が容易にできることである。pH調整、非溶剤の添加、凍結等のような他の方法を用いてもよい。したがって、外出着保護衣料のような繊維物品は、保護遮蔽使用がうまくいき、重合体が有害廃棄物になった場合でも、焼却のような承認済み手順を用いてはるかに少ない処分量で安全に取り扱うことができよう。
【0168】
未溶または乾燥スルホポリエステルは、広範な基体との強力な接着結合部を形成することが知られており、これらの基体には、毛羽パルプ、綿、アクリル、レーヨン、リオセル、PLA(ポリラクチド)、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ポリ(エチレン)テレフタレート、ポリ(ブチレン)テレフタレート、ポリ(トリメチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキシレン)テレフタレート、コポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ステンレススチール、アルミニウム、処理ポリオレフィン、PAN(ポリアクリロニトリル)、およびポリカーボネートが含まれるが、それらに限定されない。したがって、本発明の不織布は、熱、高周波(RF)、マイクロ波、および超音波法のような既知の手技により結合してよい積層接着剤またはバインダとして用いてよい。スルホポリエステルを適用してRF賦活できることが多くの最近の特許で開示されている。したがって、本発明の新規な不織布は、接着性に加え、二重の機能またはそれより多機能さえ示すと思われる。例えば、本発明の不織布が水反応性接着剤と最終組立品の流体管理部品との両方の役割を果たす、使い捨てベビーおむつを得ることができる。
【0169】
本発明は、水分散性繊維を製造する方法において、以下の工程:
(A) 水分散性重合体組成物をその流動点より高い温度に加熱する工程において、前記重合体組成物が
(i) 1種以上のジカルボン酸の残基と;
(ii) 全反復単位に対し約4〜約40モル%の、2つの官能基と、芳香族環または脂環式環に結合した1つ以上の金属スルホン酸基とを持つ少なくとも1種のスルホ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも20モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と、
を含んでなり、
前記重合体組成物は、前記重合体組成物の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有する、
工程と;
(B) フィラメントを溶融紡糸する工程と;
からなる方法も提供する。上述のように、水分散性重合体は、必要であれば前記スルホポリエステルと配合されてよい。さらに、水非分散性重合体は、必要であれば、前記スルホポリエステルと配合されて、非混和性配合物となる配合物を形成してもよい。本明細書中で用いる用語“流動点”とは、重合体組成物の粘度のために、紡糸口金または押出ダイを通る押出、その他の形態の加工ができる温度を意味する。スルホ単量体の種類と濃度によっては、ジカルボン酸残基は約60〜約100モル%の酸残基を含んでなってもよい。ジカルボン酸残基の濃度範囲の他の例は、約60モル%〜約95モル%と約70モル%〜約95モル%である。好ましいジカルボン酸残基は、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、またはジエステルが用いられるならば、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、およびジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレートで、イソフタル酸とテレフタル酸の残基が特に好ましい。
【0170】
スルホ単量体は、スルホン酸基を含有するジカルボン酸またはそのエステル、スルホン酸基を含有するジオール、またはスルホン酸基を含有するヒドロキシ酸でよい。このスルホ単量体残基の濃度範囲の追加例は、全反復単位に対し約4〜約25モル%、約4〜約20モル%、約4〜約15モル%、および約4〜約10モル%である。スルホン酸塩の陽イオンは、Li、Na、K、Mg++、Ca++、Ni++、Fe++等のような金属イオンでよい。あるいは、スルホン酸塩の陽イオンは、既に記載されたように窒素塩基のような非金属陽イオンでよい。本発明の方法において用いてよいスルホ単量体残基の例としては、スルホフタル酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸の金属スルホン酸塩、またはそれらの組合せがある。用いてよいスルホ単量体の他の例は、5−ソジオスルホイソフタル酸またはそのエステルである。スルホ単量体残基が5−ソジオスルホイソフタル酸に由来するものであれば、典型的なスルホ単量体濃度範囲は、総酸残基に対し約4〜約35モル%、約8〜約30モル%、約10〜約25モル%である。
【0171】
本発明のスルホポリエステルは1種以上のジオール残基を含み、これらの残基は脂肪族、脂環式、そしてアラルキルグリコールを含んでよい。脂環式ジオール、例えば1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、は純粋なシスまたはトランス異性体として、またはシス異性体とトランス異性体の混合物として存在してよい。低分子量ポリエチレングリコール(例えばnは2〜6である)の非限定的な例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールである。これらの低分子量グリコールのうち、ジエチレンおよびトリエチレングリコールが最も好ましい。スルホポリエステルは必要であれば枝分かれ単量体を含んでもよい。枝分かれ単量体の例は前述の通りである。枝分かれ単量体濃度範囲のさらなる例は、0〜約20モル%と0〜約10モル%である。本発明の新規な方法のスルホポリエステルは、少なくとも25℃のTgを持つ。スルホポリエステルにより示されるガラス転移温度のさらなる例は、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃、そして少なくとも90℃である。他のTgも可能であるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの典型的ガラス転移温度は、約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃、約90℃である。
【0172】
水分散性繊維はメルトブロー法により作られる。重合体を押出機で溶融し、ダイから押出す。ダイから出た押出物を高温、高速空気により急速に超微細直径に細長化させる。繊維の配向、冷却速度、ガラス転移温度(Tg)、結晶化速度は、細長化中の重合体の粘度や加工性に影響するので重要である。得られたフィラメントを移動ベルト、円筒形ドラム、回転マンドレル等のような更新可能な表面上に集める。ペレットの予備乾燥(必要であれば)、押出域温度、溶融温度、スクリューデザイン、押出量、空気温度、空気流(速度)、ダイ空隙とセットバック、ノーズ先端穴サイズ、ダイ温度、ダイと収集装置(DCP)との距離、急冷環境、収集装置速度、および後処理は全て、フィラメント直径、坪量、ウェブ厚さ、細孔径、軟度および収縮率のような製品特性に影響を及ぼす因子である。高速空気を用いて、フィラメントを幾分無作為に動かして大規模な交錯をもたらしてもよい。移動ベルトをダイ下方に通すと、フィラメントの積層、機械的まとまり、熱結合の組合せにより不織布が製造できる。スパンボンドまたは裏地層のような他の基材上に吹き出すことも可能である。フィラメントを回転マンドレルに巻き取ると、円筒状製品が形成される。水分散性繊維積層物もスパンボンド法により作成することができる。
【0173】
したがって、本発明は、水分散性不織布を製造する方法において、以下の工程:
(A) 水分散性重合体組成物をその流動点より高い温度に加熱する工程において、前記重合体組成物が
(i) 1種以上のジカルボン酸の残基と;
(ii) 全反復単位に対し約4〜約40モル%の、2つの官能基と、芳香族環または脂環式環に結合した1つ以上の金属スルホン酸基とを持つ少なくとも1種のスルホ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と;
(iii) 1種以上のジオール残基であって、全ジオール残基に対し少なくとも20モル%が構造H−(OCH−CH−OH(式中、nは2〜約500の範囲の整数である)を持つポリ(エチレングリコール)である残基と;
(iv) 全反復単位に対し0〜約25モル%の、3つ以上の官能基を持つ枝分かれ単量体の残基であって、前記官能基がヒドロキシル、カルボキシル、またはそれらの組合せである、前記残基と、
を含んでなり、
前記スルホポリエステルは少なくとも25℃のガラス転移温度(Tg)を持ち、
前記重合体組成物は、前記重合体組成物の総重量に対し10重量%未満の顔料または充填剤を含有する、
工程と;
(B) フィラメントを溶融紡糸する工程と;
(C) 工程(B)のフィラメントを積層し、収集して、不織布を形成する工程と、
からなる方法もさらに提供する。上述のように、水分散性重合体は、必要であれば前記スルホポリエステルと配合されてよい。さらに、水非分散性重合体は、必要であれば、前記スルホポリエステルと配合されて、非混和性配合物となる配合物を形成してもよい。上記ジカルボン酸、スルホ単量体、枝分かれ単量体残基は前述の通りである。スルホポリエステルは少なくとも25℃のTgを持つ。スルホポリエステルにより示されるガラス転移温度のさらなる例は、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも80℃、そして少なくとも90℃である。他のTgも可能であるが、本発明の乾燥スルホポリエステルの典型的ガラス転移温度は、約30℃、約48℃、約55℃、約65℃、約70℃、約75℃、約85℃、約90℃である。本発明を以下の実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0174】
全てのペレット試料を少なくとも12時間室温で真空下に予備乾燥した。表3に示した分散時間は不織布試料の完全分散または溶解のためである。表2と3で用いた略語“CE”は“比較例”を意味する。
【0175】
試験法
レンジ1上にセットしたM/K Formation Tester(エム/ケーシステムズ社,ピーボディー、マサチューセッツ州、米国)を用いて地合を測定した。M/K Formation Indexを報告する。この指数では、数値が高いほど、不織シート中の地合/均一性がより良好であることを示す。
【0176】
平均孔径は、Porometer 3G Through−Pore Size Analyzer(クオンタクロムインスツルメンツ社、ボイントンビーチ,フロリダ州、米国)を用いて測定した。
【0177】
実施例1
イソフタル酸76モル%、ソジオスルホイソフタル酸24モル%、ジエチレングリコール76モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール24モル%を含有し、0.29の固有粘度と48℃のTgを持つスルホポリエステルを、表1に示した条件を用い公称6インチのダイ(ノーズ部分に30穴/インチ)を通して円筒形収集装置上にメルトブローした。あい紙は必要なかった。やわらかく取り扱いやすい軟質ウェブが得られ、ロール巻取操作中にくっつくことはなかった。物性を表2に示す。不織布の小片(1インチx3インチ)は、表3のデータに示すようにわずかな攪拌で室温(RT)の水と50℃の水の両方に容易に分散した。
【0178】
【表2】
【0179】
【表3】
【0180】
【表4】
【0181】
実施例2
イソフタル酸89モル%、ソジオスルホイソフタル酸11モル%、ジエチレングリコール72モル%、エチレングリコール28モル%を含有し、0.4の固有粘度と35℃のTgを持つスルホポリエステルを、表1に示した条件と同様の条件を用い6インチのダイを通してメルトブローした。やわらかく取り扱いやすい軟質ウェブが得られ、ロール巻取操作中にくっつくことはなかった。物性を表2に示す。不織布の小片(1インチx2インチ)は、50℃と80℃で容易かつ完全に分散した。RT(23℃)では、この布は表3のデータに示すように完全分散にはより長時間を要した。
【0182】
実施例1と2の組成物は他の不織基材上に吹き出しできることが判った。従来のウェブ収集装置の代わりに用いられる造形もしくは輪郭付けされた形状部に集め、巻きつけることも可能である。したがって、ウェブの円形“ロービング”またはプラグを得ることができる。
【0183】
比較実施例1〜3
イソフタル酸89モル%、ソジオスルホイソフタル酸11モル%、ジエチレングリコール72モル%、エチレングリコール28モル%を含有し、0.4の固有粘度と35℃のTgを持つスルホポリエステルのペレットをポリプロピレン(Basell PF008)ペレットと以下の複合比(重量%)で組合わせた:
75 PP:25 スルホポリエステル(例3)
50 PP:50 スルホポリエステル(例4)
25 PP:75 スルホポリエステル(例5)
PPは800のMFR(溶融流量)を有した。24インチ幅のダイを備えたライン上でメルトブロー操作を実施し、取り扱いやすい柔かく軟質であるが粘着しないウェブが得られ、その物性は表2に示す通りである。不織布の小片(1インチx4インチ)は、表3で示すように簡単に砕解した。しかしながら、不溶性のポリプロピレン成分のために、繊維はいずれも完全に水分散性ではなかった。
【0184】
実施例3
実施例2で製造された不織布の円形片(直径4インチ)を綿布2枚の間の接着剤層として用いた。Hannifinメルトプレスを用いて、200℃で30秒間35psigの圧力をかけて2枚の綿を融合させた。得られた集成体は格別に高い結合強さを示した。綿基材は接着または結合が壊れる前にずたずたになった。他のセルロース系材料やPETポリエステル基材でも同様な結果が得られている。超音波結合法でも強力な結合が得られた。
【0185】
比較例4
1200のMFRを持つPP(Exxon 3356G)を24インチのダイを用いてメルトブローして、柔軟な不織布が得られ、粘着せずロールから容易に巻き出せた。小片(1インチx4インチ)は、RTまたは50℃の水に15分間浸漬したところ、何の反応も示さなかった(すなわち、砕解せず、坪量の損失もなかった)。
【0186】
実施例4
イソフタル酸82モル%、ソジオスルホイソフタル酸18モル%、ジエチレングリコール54モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール46モル%を含有し、55℃のTgを持つスルホポリエステルの単成分繊維を実験室のステープル紡糸ライン上で245℃(473°F)の溶融温度で溶融紡糸した。紡糸時デニールは約8d/fであった。巻取管上である程度粘着が起こったが、10−フィラメントストランドは82℃、pH5〜6の未攪拌脱イオン水に10〜19秒以内に容易に溶解した。
【0187】
実施例5
イソフタル酸82モル%、ソジオスルホイソフタル酸18モル%、ジエチレングリコール54モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール46モル%を含有するスルホポリエステル(Tg 55℃)と、イソフタル酸91モル%、ソジオスルホイソフタル酸9モル%、ジエチレングリコール25モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール75モル%を含有するスルホポリエステル(Tg 65℃)との配合物(75:25)から得た単成分繊維を実験室のステープル紡糸ライン上で溶融紡糸した。この配合物は、両スルホポリエステル成分のTgの重量平均値を取って算出すると57℃のTgを持つ。10−フィラメントストランドは巻取管上で粘着を示さなかったが、82℃、pH5〜6の未攪拌脱イオン水に20〜43秒以内に容易に溶解した。
【0188】
実施例6
実施例5に記載した配合物をPETと共に同時紡糸して、二成分海島繊維を得た。スルホポリエステル“海”が80重量%のPET“島”を含有する繊維の20重量%である形状が得られた。紡糸された糸の延伸率は紡糸直後で190%であった。ボビンから糸が良好に巻き出され、紡糸から1週間後に加工されたので、粘着は起こらなかった。その後の操作において、糸を88℃の軟水浴を通すことにより“海”は溶解され、微細なPETフィラメントだけが残った。
【0189】
実施例7
この理論実験例は、本発明の多成分繊維およびマイクロデニール繊維が特殊紙の調製に適用できる可能性を示すものである。実施例5に記載した配合物をPETと共に同時紡糸して、二成分海島繊維を得る。この繊維は、ほぼ35重量%のスルホポリエステル“海”成分とほぼ65重量%のPET“島”とを含有している。未けん縮繊維を1/8インチの長さに切断する。模擬的製紙において、これらの短カット二成分繊維を精製操作に付す。スルホポリエステル“海”は攪拌した水性スラリー中で除去され、マイクロデニールPET繊維を配合物中に放出する。同等の重量で、マイクロデニールPET繊維(“島”)は、粗大PET繊維の添加に比べ、紙の引張強さを増強するのにより有効である。
【0190】
比較例8
ダイプレート中に合計2222個のダイ穴を持つ、24インチ幅の二成分紡糸口金ダイ(ヒルズ社,メルバーン、フロリダ州)を用いて、スパンボンドライン上で海構造中に108個の島を持つ二成分繊維を作製した。押出機2機を溶融ポンプに接続し、このポンプを繊維紡糸ダイ中の両成分の入口に接続した。一次押出機(A)はイーストマン F61HC PETポリエステル流を計量する入口に接続して、海繊維断面構造中の島の島ドメインを形成した。押出区域は、ダイに入るPETを285℃で溶融するように設定した。二次押出機(B)は、Rheometric Dynamic Analyzer RDAII(レオメトリックス社,ピスカタウェイ、ニュージャージー州)流動計において固有粘度が約0.35で、溶融粘度が約15,000ポアズ(240℃、1rad/秒の剪断速度で測定)と9,700ポアズ(240℃、100rad/秒の剪断速度で測定)のイーストマン AQ 55Sスルホポリエステル重合体(イーストマンケミカルカンパニー,キングスポート、テネシー州)を加工した。溶融粘度測定を行う前に、試料を60℃の真空炉で2日間乾燥させた。粘度試験は、1mm間隙を設けた直径25mmの平行板配置を用いて行った。1〜400ラジアン毎秒のひずみ速度範囲、10%のひずみ振幅で動的周波数掃引を行った。その後、240℃、1ラジアン毎秒のひずみ速度で粘度を測定した。その後の実施例で用いるスルホポリエステル材料の粘度を測定する際、上記手順にしたがった。二次押出機がAQ55S重合体を255℃の溶融温度で溶融し、紡糸口金ダイに供給するようにセットした。これら2種の重合体は0.6g/穴/分の処理量で押出すことにより二成分押出物に形成した。二成分押出物中のAQ55Sに対するPETの容積比は60/40および70/30となるように調節した。
【0191】
吸引装置を用いて二成分押出物を溶融延伸して、二成分繊維を製造した。吸引室を通る空気流は得られた繊維を引き下ろした。吸引装置組立体を通って下方に流れる空気の量は、吸引装置に入る空気の圧力により制御した。この実施例では、二成分押出物を溶融延伸するために吸引装置で用いられた空気の最大圧力は25psiであった。吸引装置を通る空気流がこの数値より高いと、この溶融延伸紡糸法の実施中に押出物が破壊された。二成分押出物にかけられた溶融延伸速度が二成分押出物の固有延性より大であったからである。二成分繊維は堆積させて95g/m(gsm)の布地重量を持つ不織ウェブにした。この不織ウェブ中の二成分繊維を光学顕微鏡で評価すると、PETが繊維構造の中央に島として存在したが、二成分繊維の外周の周りのPET島はほぼ合体して、繊維周辺の周りにPET重合体のほぼ連続した環を形成しており、これは望ましくなかった。顕微鏡検査の結果、不織ウェブ中の二成分繊維の直径は一般的に15〜19ミクロンであり、約2.5デニール/フィラメント(dpf)の平均繊維紡糸時デニールに相当した。これは、約2160メートル/分の溶融延伸繊維速度を表す。紡糸時デニールとは、溶融押出および溶融延伸工程により得られた繊維のデニール(繊維の長さ9000メートル当たりの重量(g))として定義される。二成分繊維直径のばらつきは、繊維の紡糸延伸における不均一性を示した。
【0192】
不織ウェブ試料は強制通風炉内で5分間120℃で状態調整した。この熱処理ウェブは著明な収縮を示し、不織ウェブの面積は加熱前のウェブの初期面積の約12%程度に減少した。理論に縛られるつもりはないが、繊維中に用いられたAQ55Sスルホポリエステルの高い分子量と溶融粘度に起因して、二成分押出物は、繊維中のPETセグメントの歪による結晶化を引起すのに必要な程度までには溶融延伸できなかった。全体として、この特定の固有粘度と溶融粘度を持つAQ55Sスルホポリエステルは不合格であった。二成分押出物は所望の微細なデニールまで均一に溶融延伸できなかったからである。
【0193】
実施例8
市販のイーストマン AQ55S重合体と同一の化学組成を持つスルホポリエステル重合体を製造したが、分子量は約0.25の固有粘度を特徴とするより低い数値に制御した。この重合体の溶融粘度は、240℃、1rad/秒の剪断速度で測定すると3300ポアズであった。
【0194】
実施例9
24インチ幅のダイプレート中に合計2222個のダイ穴を持つ、二成分紡糸口金ダイ(ヒルズ社,メルバーン、フロリダ州)を用いて、スパンボンド設備上で16セグメントのセグメント化パイ構造を持つ二成分押出物を作製した。2種の重合体を溶融し、この紡糸口金ダイに供給するのに押出機2機を用いた。一次押出機(A)はイーストマン F61HC PETポリエステル溶融液を送る入口に接続して、セグメント化パイ断面構造中のドメインまたはセグメントスライスを形成した。押出区域は、紡糸口金ダイに入るPETを285℃の温度で溶融するように設定した。二次押出機(B)は、実施例8のスルホポリエステル重合体を溶融し、送った。二次押出機はスルホポリエステル重合体を255℃の溶融温度で紡糸口金ダイに押出すようにセットした。用いた紡糸口金ダイとスルホポリエステル重合体の溶融粘度を除けば、本実施例で用いられた手順は比較例8と同様であった。1穴当たりの溶融液処理量は0.6g/分であった。二成分押出物中のスルホポリエステルに対するPETの容積比は70/30に設定しており、これは約70/30の重量比を表す。
【0195】
比較例8で用いた吸引装置と同様の吸引装置を用いて二成分押出物を溶融延伸して、二成分繊維を製造した。はじめ、吸引装置への導入空気は25psiに設定し、繊維は約2.0の紡糸時デニールを持ち、二成分繊維は約14〜15ミクロンの均一な直径分布を示した。溶融延伸中に溶融押出物を破壊せずに、吸引機への空気は45psiの最大有効圧力に増加した。45psiの空気を用いて、二成分押出物を約1.2の繊維紡糸時デニールに溶融延伸したところ、この二成分繊維は顕微鏡で見ると11〜12ミクロンの直径を示した。溶融延伸中の速度は約4500m/分と算出した。理論に縛られるつもりはないが、この速度に近い溶融延伸速度では、溶融延伸法の過程で歪が誘因であるPET結晶化が起こり始めると考えられる。上記のように、繊維溶融延伸法においてPET繊維セグメントにある程度の配向結晶性を形成することは望ましい。後の加工において不織ウェブがさらに寸法が安定すると思われるからである。
【0196】
45psiの吸引機の空気圧を用いて、二成分繊維を堆積させて、140グラム/m(gsm)の重量を持つ不織ウェブにした。得られた材料を120℃で5分間強制通風炉内で状態調整することにより、不織ウェブの収縮率を測定した。この実施例は、比較例8の繊維および布地と比較し著明な収縮率の低下を表す。
【0197】
140gsm布地重量を持つ不織ウェブを各種温度の静的脱イオン水浴内に5分間漬けた。浸漬した不織ウェブを乾燥し、各種温度の脱イオン水内の浸漬に起因する減量率(%)を測定し、表4に示す結果を得た。
【0198】
【表5】
【0199】
スルホポリエステルは約25℃の温度の脱イオン水中にきわめて容易に散逸した。不織ウェブ中の二成分繊維からのスルホポリエステルの除去を減量率(%)で示す。33℃以上の温度で二成分繊維からのスルホポリエステルの大規模または完全な除去が認められた。実施例8の本スルホポリエステル重合体を含んでなる二成分繊維の不織ウェブを製造するのに水力交絡法を用いれば、水温が周囲温度より高い場合、このスルホポリエステル重合体は水力交絡用ジェット水流により大規模または完全に除去されることが予想される。水力交絡工程中にこれら二成分繊維からのスルホポリエステル重合体の除去を極めて少なくしたければ、低い水温、すなわち約25℃未満、を用いるべきである。
【0200】
実施例10
スルホポリエステル重合体を以下の二酸およびジオール組成物から調製した: 二酸組成物(テレフタル酸71モル%、イソフタル酸20モル%、5−(ソジオスルホ)イソフタル酸9モル%)とジオール組成物(エチレングリコール60モル%、ジエチレングリコール40モル%)。スルホポリエステルは真空下、高温ポリエステル化により作られた。エステル化条件は、約0.31の固有粘度を持つスルホポリエステルを製造するように制御した。このスルホポリエステルの溶融粘度を測定したところ、240℃、1rad/秒の剪断速度で約3000〜4000ポアズの範囲内であった。
【0201】
実施例11
実施例10のスルホポリエステル重合体を、実施例9に記載された手順と同様の手順に従い二成分セグメント化パイ繊維に紡糸して、不織ウェブにした。一次押出機(A)はイーストマン F61HC PETポリエステル溶融液を送入して、セグメント化パイ構造内の比較的大きなセグメントスライスを形成した。押出区域は、紡糸口金ダイに入るPETを285℃の温度で溶融するように設定した。二次押出機(B)は、実施例10のスルホポリエステル重合体を処理して、255℃の溶融温度で紡糸口金ダイに送入した。溶融押出量/孔は0.6グラム/分であった。二成分押出物におけるスルホポリエステルに対するPETの容積比は70/30に設定したが、この比は約70/30の重量比を表す。二成分押出物の横断面はPETのくさび形ドメインを示し、これらのドメインをスルホポリエステル重合体が分離していた。
【0202】
比較例8に用いられたと同様の吸引集成装置を用いて二成分押出物を溶融延伸して、二成分繊維を製造した。延伸中に二成分繊維を破壊せずに吸引機に取入れた空気の最大有効圧力は45psiであった。45psiの空気を用いて、二成分押出物を約1.2の紡糸時デニールで二成分繊維に溶融延伸したところ、この二成分繊維は顕微鏡で見ると約11〜12ミクロンの直径を示した。溶融延伸中の速度は約4500m/分と算出した。
【0203】
二成分繊維は堆積させて、140gsmおよび110gsmの重量を持つ不織ウェブにした。得られた材料を120℃で5分間強制通風炉内で状態調整することにより、これらのウェブの収縮率を測定した。収縮後の不織ウェブの面積は、ウェブの開始時の面積の約29%であった。
【0204】
溶融延伸繊維の断面と不織ウェブから採取した繊維の断面を顕微鏡で調べると、非常に良好なセグメント化パイ構造が示され、この構造中、個々のセグメントは明らかに画定され、同様の大きさと形を示した。PETセグメント同士は完全に互いに分離されていたので、二成分繊維からスルホポリエステルを除去した後はパイスライス形状を持つ8つの別個のPET単成分繊維が形成されよう。
【0205】
110gsm布地重量を持つ不織ウェブを各種温度の静的脱イオン水浴内に8分間漬けた。浸漬した不織ウェブを乾燥し、各種温度の脱イオン水内の浸漬に起因する減量率(%)を測定し、表5に示す結果を得た。
【0206】
【表6】
【0207】
スルホポリエステル重合体は約46℃より高温の脱イオン水中にきわめて容易に散逸し、減量率で示されたように、51℃より高温では繊維からのスルホポリエステル重合体の除去はきわめて大規模かまたは完全であった。約30%の減量率は、不織ウェブ中の二成分繊維からのスルホポリエステルの完全な除去を表した。このスルホポリエステルを含んでなる二成分繊維の不織ウェブを処理するのに水力交絡法を用いれば、この重合体は40℃より低い水温では水力交絡用ジェット水流により大規模に除去されないことが予想される。
【0208】
実施例12
140gsmと110gsmの坪量を持つ実施例11の不織ウェブをフライスナー社(エーゲルスバッハ、ドイツ)製の水力交絡装置を用いて水力交絡させた。この装置には水力交絡台が合計5台備えられ、3組の噴射口が不織ウェブの上側に接触し、2組の噴射口が不織ウェブの反対側に接触していた。この水噴射口は、2フィート幅の噴射片に機械加工された直径約100ミクロンの一連の微細なオリフィスを含んでなっていた。噴射口への水圧は60バール(噴射片1番)、190バール(噴射片2番と3番)、230バール(噴射片4番と5番)に設定した。水力交絡中、噴射口への水の温度は約40〜45℃の範囲内にあることが判った。水力交絡装置を出た不織布は強力に結束されていた。連続繊維同士は結ばれて、水力交絡不織布が製造され、この布は両方向に延伸したところ、高い引裂抵抗を示した。
【0209】
次に、周囲に一連のピンを備えた剛性矩形フレームを含んでなる幅出機上に水力交絡不織布を締結した。この布はそれらのピンに締結して、加熱される際に収縮しないようにした。布試料を固定したフレームを強制通風炉内に130℃で3分間入れて、布を拘束しながら熱硬化させた。熱硬化後、状態調整した布を実測サイズの試験片に裁断し、この試験片を幅出機により拘束せずに130℃で状態調整した。この状態調整後の水力交絡不織布の寸法を測定したところ、ほんのわずかな収縮(寸法が0.5%未満減少)が認められた。水力交絡不織布の熱硬化は寸法が安定な不織布を製造するのに充分であることが明らかとなった。
【0210】
上記のように熱硬化させた後の水力交絡不織布を90℃の脱イオン水で洗浄して、スルホポリエステル重合体を除去し、PET単成分繊維セグメントを水力交絡布中に残存させておいた。繰返し洗浄した後、乾燥させた布はほぼ26%の減量を示した。水力交絡前の不織ウェブを洗浄すると、31.3%の減量を示した。したがって、水力交絡法は不織ウェブからスルホポリエステルの幾分かを除去したが、この量は比較的小さかった。水力交絡中に除去されるスルホポリエステルの量を減らすためには、水力交絡噴射流の水温は40℃より低温に下げるべきである。
【0211】
実施例10のスルホポリエステルは、良好なセグメント分布を有するセグメント化されたパイ繊維をもたらし、このパイ繊維においては、スルホポリエステル重合体の除去後、水非分散性重合体セグメントは同様の大きさと形状の個々の繊維を形成することが判った。スルホポリエステルの流動性は、二成分押出物が高率に溶融延伸されて、約1.0という低値の紡糸時デニールを持つ微細デニール二成分繊維を得るのに適していた。これらの二成分繊維は堆積させて不織ウェブにすることができ、この不織ウェブは水力交絡すると、スルホポリエステル重合体の顕著な喪失を経ずに不織布を製造できる。不織ウェブを水力交絡することにより製造された不織布は、高い強度を示し、約120℃以上の温度で熱硬化でき、優れた寸法安定性の不織布が製造される。スルホポリエステル重合体は洗浄工程において、水力交絡不織布から除去した。この結果、より軽い布重量、より大きい柔軟性、よりしなやかな手ざわりを持つ強力な不織布製品が得られた。この不織布製品中の単成分PET繊維は楔形であり、約0.1デニールの平均繊度を示した。
【0212】
実施例13
スルホポリエステル重合体を以下の二酸およびジオール組成物から調製した: 二酸組成物(テレフタル酸69モル%、イソフタル酸22.5モル%、5−(ソジオスルホ)イソフタル酸8.5モル%)とジオール組成物(エチレングリコール65モル%、ジエチレングリコール35モル%)。スルホポリエステルは真空下、高温ポリエステル化により作られた。エステル化条件は、約0.33の固有粘度を持つスルホポリエステルを製造するように制御した。このスルホポリエステルの溶融粘度を測定したところ、240℃、1rad/秒の剪断速度で約3000〜4000ポアズの範囲内であった。
【0213】
実施例14
実施例13のスルホポリエステル重合体を紡糸して、スパンボンドライン上に16個の島を持つ海島型断面形状の二成分構造物を作った。一次押出機(A)はイーストマン F61HC PETポリエステル溶融液を送入して、海島構造中の島を形成した。押出区域は、紡糸口金ダイに入るPETを約290℃の温度で溶融するように設定した。二次押出機(B)は、実施例13のスルホポリエステル重合体を処理し、約260℃の溶融温度で紡糸口金ダイに供給した。二成分押出物におけるスルホポリエステルに対するPETの容積比は70/30に設定したが、この比は約70/30の重量比を表す。紡糸口金での溶融押出量は0.6g/穴/分であった。二成分押出物の横断面はPETの円形島状ドメインを示し、これらのドメイン同士をスルホポリエステル重合体が分離していた。
【0214】
二成分押出物を吸引集成装置を用いて溶融延伸した。溶融延伸中に二成分繊維を破壊せずに吸引機に取入れた空気の最大有効圧力は50psiであった。50psiの空気を用いて、二成分押出物を約1.4デニールの紡糸時繊度で二成分繊維に溶融延伸したところ、この二成分繊維は顕微鏡で見ると約12ミクロンの直径を示した。延伸中の速度は約3900m/分と算出した。
【0215】
実施例15
二成分押出ラインを用いて、実施例13のスルホポリエステル重合体を紡糸することにより、64個の島繊維を持つ二成分海島型断面繊維を作った。一次押出機はイーストマン F61HC ポリエステル溶融液を送入して、海島型繊維断面構造中の島を形成した。二次押出機は、スルホポリエステル重合体溶融液を送入して、海島型二成分繊維中の海を形成した。ポリエステルの固有粘度は0.61dL/gであり、一方、既に述べた溶融粘度測定手順を用いて240℃、1rad/秒の歪速度で測定した乾燥スルホポリエステルの溶融粘度は約7000ポアズであった。これらの海島型二成分繊維は、198個の穴を持ち0.85グラム/分/穴の押出量の紡糸口金を用いて作製した。“島”ポリエステルと“海”スルホポリエステルとの重合体比は65%:35%であった。これらの二成分繊維は、ポリエステル成分については280℃の、スルホポリエステル成分については260℃の押出温度を用いて紡糸した。二成分繊維は多数のフィラメント(198本のフィラメント)を含有しており、約530m/分の速度で溶融紡糸され、フィラメント1本当たりの公称繊度が約14デニールのフィラメントを形成した。ゴールストンテクノロジーズ社製PT769仕上剤24重量%の仕上溶液をキスロールアプリケータを用いて二成分繊維に施した。次に、二成分繊維のフィラメントを1組2基のゴデットロールを用いて直列に延伸し、90℃と130℃にそれぞれ加熱し、最終延伸ロールは約1,750メートル/分の速度で操作して、約3.3倍のフィラメント延伸比を与えて、フィラメント1本当たりの公称繊度が約4.5デニールまたは約25ミクロンの平均直径を持つ延伸された海島型二成分フィラメントを形成した。これらのフィラメントは、約2.5ミクロンの平均直径を持つポリエステル微小繊維“島”を含んでなっていた。
【0216】
実施例16
実施例15の延伸された海島型二成分繊維をカット長3.2mmと6.4mmの短尺繊維に裁断することにより、海中に64島を持つ断面形状の短尺二成分繊維を製造した。これらの短尺二成分繊維は、ポリエステルの“島”と水分散性スルホポリエステル重合体の“海”とを含んでなっていた。島々と海の断面分布は、これらの短尺二成分繊維の長さに沿って本質的に一貫していた。
【0217】
実施例17
実施例15の延伸された海島型二成分繊維を約24時間軟水に漬け、次にカット長3.2mmと6.4mmの短尺繊維に裁断した。短尺繊維に裁断する前、水分散性スルホポリエステルは少なくとも部分的に乳化されていた。したがって、海成分からの島々の部分的分離がなされ、この結果、部分的に乳化された短尺の海島型二成分繊維が製造された。
【0218】
実施例18
実施例16の短く裁断した海島型二成分繊維を80℃の軟水を用いて洗浄して、水分散性スルホポリエステル“海”成分を除去し、これにより、二成分繊維の“島”成分であるポリエステル微小繊維を開放した。洗浄したポリエステル微小繊維は25℃の軟水を用いてすすぎ洗いして、“海”成分のほとんどを実質的に除去した。洗浄したポリエステル微小繊維を光学顕微鏡で観察すると、約2.5ミクロンの平均直径と3.2および6.4mmの長さが認められた。
【0219】
実施例19
実施例17の短く裁断され部分的に乳化された海島型二成分繊維を80℃の軟水を用いて洗浄して、水分散性スルホポリエステル“海”成分を除去し、これにより、繊維の“島”成分であるポリエステル微小繊維を開放した。洗浄したポリエステル微小繊維は25℃の軟水を用いてすすぎ洗いして、“海”成分のほとんどを実質的に除去した。洗浄したポリエステル微小繊維を光学顕微鏡で観察すると、約2.5ミクロンの平均直径と3.2および6.4mmの長さのポリエステル微小繊維が認められた。
【0220】
比較例20
以下の手順で湿式堆積手すき紙を作製した: インターナショナルペーパー社(メンフィス、テネシー州、米国)のAlbacel Southern Bleached Softwood Kraft(SBSK)7.5グラムと188グラムの室温水を1,000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して、パルプ化混合物を製造した。このパルプ化混合物は7,312グラムの室温水と共に8リットルの金属ビーカーに移し入れて、粘稠度約0.1%(7500グラムの水と7.5グラムの繊維材料)のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを高速インペラミキサーを用いて60秒間攪拌した。このパルプスラリーから手すき紙を作る手順は以下の通りであった: パルプスラリーを攪拌し続けながら25cmx30cmの手すき紙金型に注ぎいれた。落下弁を引いて、パルプ繊維をスクリーン上に流出させて、手すき紙を作製した。750g/m(gsm)の吸取紙を得られた手すき紙の頂部に置き、吸取紙を手すき紙の上に均した。スクリーンフレームを持上げ、清浄な剥離紙上に逆さまに置き、10分間放置した。スクリーンを得られた手すき紙から離して、垂直に持上げた。750gsmの吸取紙2枚を得られた手すき紙の頂部に置いた。手すき紙を3枚の吸取紙と共にNorwood Dryerを用いて約88℃で15分間乾燥させた。1枚の吸取紙を取除いて、手すき紙の両側に1枚ずつの吸取紙を残した。手すき紙をWilliams Dryerを用いて65℃で15分間乾燥させた。次に、手すき紙を40kgの乾燥プレスを用いて12〜24時間さらに乾燥させた。吸取紙を取除いて、乾燥した手すき紙試料を得た。手すき紙をトリミングして、試験用の21.6cmx27.9cmの寸法にした。
【0221】
比較例21
以下の手順で湿式堆積手すき紙を作製した: インターナショナルペーパー社(メンフィス、テネシー州、米国)のAlbacel Southern Bleached Softwood Kraft(SBSK)7.5グラムと、予備ゲル化第四級カチオン性ジャガイモ澱粉Solivitose N(ジャガイモデンプン協同組合、フォクホル、オランダ国)0.3グラムと、188グラムの室温水を1,000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して、パルプ化混合物を製造した。このパルプ化混合物を7,312グラムの室温水と共に8リットルの金属ビーカーに移し入れて、粘稠度を約0.1%(7500グラムの水と7.5グラムの繊維材料)にしてパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを高速インペラミキサーを用いて60秒間攪拌した。このパルプスラリーから手すき紙を作る手順の残りは比較例20と同様であった。
【0222】
実施例22
以下の手順で湿式堆積手すき紙を作製した: インターナショナルペーパー社(メンフィス、テネシー州、米国)のAlbacel Southern Bleached Softwood Kraft(SBSK)6.0グラムと、予備ゲル化第四級カチオン性ジャガイモ澱粉Solivitose N(ジャガイモデンプン協同組合、フォクホル、オランダ国)0.3グラムと、実施例16の3.2mmの長さにカットした海島型繊維1.5グラムと、188グラムの室温水とを1,000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して、繊維混合物スラリーを製造した。この繊維混合物スラリーは82℃で10秒間加熱して、海島型繊維中の水分散性スルホポリエステル成分を乳化、除去し、ポリエステル微小繊維を開放した。次に、この繊維混合物スラリーをろ過して、スルホポリエステルを含んでなるスルホポリエステル分散液と、パルプ繊維とポリエステル微小繊維とを含んでなる微小繊維含有混合物を製造した。微小繊維含有混合物をさらに500gの室温水を用いてすすぎ洗いして、微小繊維含有混合物から水分散性スルホポリエステルをさらに除去した。この微小繊維含有混合物を7,312グラムの室温水と共に8リットルの金属ビーカーに移し入れて、粘稠度を約0.1%(7500グラムの水と7.5グラムの繊維材料)にして微小繊維含有スラリーを調製した。この微小繊維含有スラリーを高速インペラミキサーを用いて60秒間攪拌した。この微小繊維含有スラリーから手すき紙を作る手順の残りは比較例20と同様であった。
【0223】
比較例23
以下の手順で湿式堆積手すき紙を作製した: 米国コロラド州デンバーのジョンズ・マンビル社から入手できる極細ガラス繊維MicroStrand 475−106を7.5グラムと、予備ゲル化第四級カチオン性ジャガイモ澱粉Solivitose N(ジャガイモデンプン協同組合、フォクホル、オランダ国)0.3グラムと、188グラムの室温水とを1,000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して、ガラス繊維混合物を製造した。このガラス繊維混合物を7,312グラムの室温水と共に8リットルの金属ビーカーに移し入れて、粘稠度を約0.1%(7500グラムの水と7.5グラムの繊維材料)にしてガラス繊維スラリーを調製した。このガラス繊維スラリーを高速インペラミキサーを用いて60秒間攪拌した。このガラス繊維スラリーから手すき紙を作る手順の残りは実施例20と同様であった。
【0224】
実施例24
以下の手順で湿式堆積手すき紙を作製した: 3.8グラムの極細ガラス繊維MicroStrand 475−106(米国コロラド州デンバーのジョンズ・マンビル社から入手可能)と、実施例16の3.2mmの長さにカットした海島型繊維3.8グラムと、予備ゲル化第四級カチオン性ジャガイモ澱粉Solivitose N(ジャガイモデンプン協同組合、フォクホル、オランダ国)0.3グラムと、188グラムの室温水とを1,000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して、繊維混合物スラリーを製造した。この繊維混合物スラリーを82℃で10秒間加熱して、海島型二成分繊維中の水分散性スルホポリエステル成分を乳化、除去し、ポリエステル微小繊維を開放した。次に、この繊維混合物スラリーをろ過して、スルホポリエステルを含んでなるスルホポリエステル分散液と、ガラス微小繊維とポリエステル微小繊維とを含んでなる微小繊維含有混合物を製造した。微小繊維含有混合物をさらに500gの室温水を用いてすすぎ洗いして、微小繊維含有混合物からスルホポリエステルをさらに除去した。この微小繊維含有混合物を7,312グラムの室温水と共に8リットルの金属ビーカーに移し入れて、粘稠度を約0.1%(7500グラムの水と7.5グラムの繊維材料)にして微小繊維含有スラリーを調製した。この微小繊維含有スラリーを高速インペラミキサーを用いて60秒間攪拌した。この微小繊維含有スラリーから手すき紙を作る手順の残りは実施例20と同様であった。
【0225】
実施例25
以下の手順で湿式堆積手すき紙を作製した: 実施例16の3.2mmの長さにカットした海島型繊維7.5グラムと、予備ゲル化第四級カチオン性ジャガイモ澱粉Solivitose N(ジャガイモデンプン協同組合、フォクホル、オランダ国)0.3グラムと、室温水188グラムとを1,000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化して、繊維混合物スラリーを製造した。この繊維混合物スラリーを82℃で10秒間加熱して、海島型繊維中の水分散性スルホポリエステル成分を乳化、除去し、ポリエステル微小繊維を開放した。次に、この繊維混合物スラリーをろ過して、スルホポリエステル分散液とポリエステル微小繊維を製造した。スルホポリエステル分散液は水分散性スルホポリエステルを含んでなっていた。ポリエステル微小繊維を500gの室温水を用いてすすぎ洗いして、ポリエステル微小繊維からスルホポリエステルをさらに除去した。このポリエステル微小繊維を7,312グラムの室温水と共に8リットルの金属ビーカーに移し入れて、粘稠度を約0.1%(7500グラムの水と7.5グラムの繊維材料)にして微小繊維スラリーを調製した。この微小繊維スラリーを高速インペラミキサーを用いて60秒間攪拌した。この微小繊維スラリーから手すき紙を作る手順の残りは実施例20と同様であった。
【0226】
実施例20〜25の手すき紙試料を試験し、特性を以下の表に示す。
【0227】
【表7】
【0228】
手すき紙の坪量は、手すき紙の重量を計り、平方メートル当たりの重量g(gsm)を計算することにより決定した。手すき紙厚さは、小野測器の厚さ計EG−233を用いて測定し、厚さmmで報告した。密度は、立法センチ当たりの重量gで算出した。多孔性は、1.9x1.9cmの開口ヘッドと100ccの容量を持つグライナー多孔性マノメータを用いて測定した。多孔性は、100ccの水が試料を通過する平均時間(秒;4回反復)として報告する。引張特性は、6つの30mmx105mmの試験片についてインストロン試験機TMを用いて測定した。6回の測定値の平均値を各試料について報告する。本発明のポリエステル微小繊維の添加により、湿式堆積による繊維構造の引張特性の顕著な向上が得られることが試験結果から認められる。
【0229】
実施例26
二成分押出ラインを用いて、実施例13のスルホポリエステル重合体を紡糸することにより、37個の島を持つ二成分海島型断面繊維を作った。一次押出機はイーストマン F61HCポリエステルを送入して、海島型断面構造中の“島”を形成した。二次押出機は水分散性スルホポリエステル重合体を送入して、海島型二成分繊維中の“海”を形成した。ポリエステルの固有粘度は0.61dL/gであり、一方、既に述べた溶融粘度測定手順を用いて240℃、1rad/秒の歪速度で測定した乾燥スルホポリエステルの溶融粘度は約7000ポアズであった。これらの海島型二成分繊維は、72個の穴を持ち押出量が1.15グラム/分/穴の紡糸口金を用いて作製した。“島”ポリエステルと“海”スルホポリエステルとの重合体比は2:1であった。これらの二成分繊維は、ポリエステル成分については280℃の、水分散性スルホポリエステル成分については255℃の押出温度を用いて紡糸した。この二成分繊維は多数のフィラメント(198本のフィラメント)を含有しており、約530m/分の速度で溶融紡糸され、フィラメント1本当たりの公称繊度が19.5デニールのフィラメントを形成した。グールストンテクノロジーズ社のPT769仕上剤24重量%の仕上溶液をキスロールアプリケータを用いて二成分繊維に施した。次に、二成分繊維のフィラメントを1組2基のゴデットロールを用いて直列に延伸し、95℃と130℃にそれぞれ加熱し、最終延伸ロールは約1,750メートル/分の速度で操作して、約3.3倍のフィラメント延伸比を与えて、フィラメント1本当たりの公称繊度が約5.9デニールまたは約29ミクロンの平均直径を持つ延伸された海島型二成分フィラメントを形成した。これらのフィラメントは、約3.9ミクロンの平均直径を持つポリエステル微小繊維島を含んでなっていた。
【0230】
実施例27
実施例26の延伸された海島型二成分繊維をカット長3.2mmと6.4mmの短尺二成分繊維に裁断することにより、海中に37島を持つ断面形状の短尺繊維を製造した。これらの繊維は、ポリエステルの“島”と水分散性スルホポリエステル重合体の“海”を含んでなっていた。“島々”と“海”の断面分布は、これらの二成分繊維の長さに沿って本質的に一貫していた。
【0231】
実施例28
実施例27の短く裁断した海島型繊維を80℃の軟水を用いて洗浄して、水分散性スルホポリエステル“海”成分を除去し、これにより、二成分繊維の“島”成分であるポリエステル微小繊維を開放した。洗浄したポリエステル微小繊維は25℃の軟水を用いてすすぎ洗いして、“海”成分のほとんどを実質的に除去した。洗浄したポリエステル微小繊維を光学顕微鏡で観察すると、約3.9ミクロンの平均直径と3.2および6.4mmの長さが認められた。
【0232】
実施例29
二成分押出ラインを用いて、実施例13のスルホポリエステル重合体を紡糸することにより、37個の島を持つ二成分海島型断面繊維を作った。一次押出機はポリエステルを送入して、海島型繊維断面構造中の“島”を形成した。二次押出機は水分散性スルホポリエステル重合体を送入して、海島型二成分繊維中の“海”を形成した。ポリエステルの固有粘度は0.52dL/gであり、一方、既に述べた溶融粘度測定手順を用いて240℃、1rad/秒の歪速度で測定した乾燥水分散性スルホポリエステルの溶融粘度は約3,500ポアズであった。これらの海島型二成分繊維は、各175個の穴を持ち押出量が1.0グラム/分/穴の紡糸口金2個を用いて作製した。“島”ポリエステルと“海”スルホポリエステルとの重合体比は70%:30%であった。これらの二成分繊維は、ポリエステル成分については280℃の、スルホポリエステル成分については255℃の押出温度を用いて紡糸した。二成分繊維は多数のフィラメント(350本のフィラメント)を含有しており、100℃に加熱した引取ロールを用いて約1,000m/分の速度で溶融紡糸され、フィラメント1本当たりの公称繊度が約9デニールで平均繊維直径が約36ミクロンのフィラメントを形成した。PT769仕上剤24重量%の仕上溶液をキスロールアプリケータを用いて二成分繊維に塗った。二成分繊維のフィラメントを組合わせて、次に延伸ライン上で100m/分の延伸ロール速度、38℃の温度で3.0倍に延伸して、フィラメント1本当たりの平均繊度が約3デニールで約20ミクロンの平均直径を持つ延伸された海島型二成分フィラメントを形成した。これらの延伸された海島型二成分繊維を約6.4mm長さの短尺繊維に裁断した。これらの短尺海島型二成分繊維は、約2.8ミクロンの平均直径を持つポリエステル微小繊維“島”を含んでなっていた。
【0233】
実施例30
実施例29の短く裁断した海島型二成分繊維を80℃の軟水を用いて洗浄して、水分散性スルホポリエステル“海”成分を除去し、これにより、繊維の“島”成分であるポリエステル微小繊維を開放した。洗浄したポリエステル微小繊維は25℃の軟水を用いてすすぎ洗いして、“海”成分のほとんどを実質的に除去した。洗浄した繊維を光学顕微鏡で観察すると、約2.8ミクロンの平均直径と約6.4mmの長さのポリエステル微小繊維が認められた。
【0234】
実施例31
以下の手順で湿式堆積微小繊維手すき紙素材を作製した: 実施例16の3.2mmの長さにカットした海島型二成分繊維56.3グラムと、予備ゲル化第四級カチオン性ジャガイモ澱粉Solivitose N(ジャガイモデンプン協同組合、フォクホル、オランダ国)2.3グラムと、室温水1,410グラムとを2リットルのビーカーに入れ、繊維スラリーを製造した。この繊維スラリーを攪拌し、その1/4量、すなわち約352ml、を1,000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化した。この繊維スラリーを82℃で10秒間加熱して、海島型二成分繊維中の水分散性スルホポリエステル成分を乳化、除去し、ポリエステル微小繊維を開放した。次に、この繊維スラリーをろ過して、スルホポリエステル分散液とポリエステル微小繊維を製造した。これらのポリエステル微小繊維を500グラムの室温水を用いてすすぎ洗いして、ポリエステル微小繊維からスルホポリエステルをさらに除去した。充分の室温水を添加して、352mlの微小繊維スラリーを製造した。この微小繊維スラリーを7000rpmで30秒間再パルプ化した。これらの微小繊維を8リットルの金属ビーカーに移し入れた。上記繊維スラリーの残りの3/4を同様にパルプ化、洗浄、すすぎ洗い、再パルプ化し、8リットルの金属ビーカーに移した。次に、6,090グラムの室温水を添加して、粘稠度を約0.49%(7500グラムの水と36.6グラムのポリエステル微小繊維)にして微小繊維スラリーを調製した。この微小繊維スラリーを高速インペラミキサーを用いて60秒間攪拌した。この微小繊維スラリーから手すき紙を作る手順の残りは実施例20と同様であった。坪量約490gsmの微小繊維手すき紙素材は、平均直径約2.5ミクロン、平均長さ約3.2mmのポリエステル微小繊維を含んでなっていた。
【0235】
実施例32
以下の手順で湿式堆積手すき紙を作製した: 実施例31のポリエステル微小繊維手すき紙素材7.5グラムと、予備ゲル化第四級カチオン性ジャガイモ澱粉Solivitose N(ジャガイモデンプン協同組合、フォクホル、オランダ国)0.3グラムと、室温水188グラムとを1,000mlのパルプ製造機に入れ、7000rpmで30秒間パルプ化した。微小繊維を7,312グラムの室温水と共に8リットルの金属ビーカーに移し入れて、粘稠度を約0.1%(7500グラムの水と7.5グラムの繊維材料)にして微小繊維スラリーを調製した。この微小繊維スラリーを高速インペラミキサーを用いて60秒間攪拌した。このスラリーから手すき紙を作る手順の残りは実施例20と同様であった。約2.5ミクロンの平均直径を持つポリエステル微小繊維の湿式堆積手すき紙100gsmを得た。
【0236】
実施例33
実施例29の6.4mmの長さに裁断した海島型二成分繊維を80℃の軟水を用いて洗浄して、水分散性スルホポリエステル“海”成分を除去し、これにより、二成分繊維の“島”成分であるポリエステル微小繊維を開放した。洗浄したポリエステル微小繊維は25℃の軟水を用いてすすぎ洗いして、“海”成分のほとんどを実質的に除去した。洗浄したポリエステル微小繊維を光学顕微鏡で観察すると、約2.5ミクロンの平均直径と6.4mmの長さが認められた。
【0237】
実施例34
実施例16、実施例27および実施例29の短く裁断した海島型二成分繊維を、二成分繊維の重量に対し約1重量%のエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩(NaEDTA;シグマアルドリッチ社、アトランタ、ジョージア州)を含有する80℃の軟水を用いて別々に洗浄して、水分散性スルホポリエステル“海”成分を除去し、これにより、二成分繊維の“島”成分であるポリエステル微小繊維を開放した。NaEDTAのような少なくとも1種の水軟化剤の添加は、海島型二成分繊維からの水分散性スルホポリエステル重合体の除去を助ける。洗浄したポリエステル微小繊維は25℃の軟水を用いてすすぎ洗いして、“海”成分のほとんどを実質的に除去した。洗浄したポリエステル微小繊維を光学顕微鏡で観察すると、ポリエステル微小繊維の優れた開放と分離が認められた。水中でNaEDTAのような水軟化剤を使用すると、スルホポリエステルの水分散性に悪影響を与える可能性のあるスルホポリエステルに対するCa++イオン置換を防止する。典型的な軟水は15ppmまでのCa++イオン濃度を持つことがある。ここで記載されたプロセスに用いられた軟水は、Ca++イオン、その他の多価イオンの濃度が本質的にゼロであるか、または、Ca++イオン、その他の多価イオンと結合するのに充分な量であるNaEDTAのような水軟化剤を使用するのが望ましい。これらのポリエステル微小繊維は、既に開示した実施例の手順を用いて湿式堆積シートを作製するのに使用できる。
【0238】
実施例35
実施例16と実施例27の短く裁断した海島型二成分繊維を、以下の手順で別々に処理した: 予備ゲル化第四級カチオン性ジャガイモ澱粉Solivitose N(ジャガイモデンプン協同組合、フォクホル、オランダ国)17gを蒸留水に添加した。澱粉を充分に溶解または加水分解させた後、短く裁断した海島型二成分繊維429gを蒸留水に緩徐に添加して、繊維スラリーを製造した。Williams Rotary Continuous Feed Refiner(直径5インチ)を作動して、繊維スラリーを精製または混合して、ポリエステル微小繊維から分離される水分散性スルホポリエステルに充分の剪断作用を与える。素材室の中身を24リットルのステンレススチール容器に注ぎいれて、蓋を固着した。ステンレススチール容器をプロパン釜の上に置き、繊維スラリーが約97℃で沸騰し始めるまで加熱して、海島型繊維中のスルホポリエステル成分を除去し、ポリエステル微小繊維を開放した。繊維スラリーが沸騰に至った後、手動の攪拌櫂で攪拌した。ステンレススチール容器の中身を30目の網を持つ27インチx15インチx6インチ深さのFalse Bottom Knucheに注ぎいれて、スルホポリエステル分散液とポリエステル微小繊維を製造した。スルホポリエステル分散液は、水と水分散性スルホポリエステルとを含んでなっていた。ポリエステル微小繊維はKnuche中15秒間17℃の軟水10リットルですすぎ洗いし、絞って、余分の水を除去した。
【0239】
20gのポリエステル微小繊維(乾燥繊維基準)を70℃の水2,000mlに添加し、ヘルマンマニュファクチャリングカンパニーにより製造された2リットルの3000rpm3/4馬力ハイドロパルパーを用いて3分間(9,000回転)攪拌して、粘稠度1%の微小繊維スラリーを調製した。実施例20で既に記載した手順を用いて手すき紙を作製した。
【0240】
これらの手すき紙を光学顕微鏡と走査電子顕微鏡で観察すると、ポリエステル微小繊維の優れた分離と形成が認められた。
【0241】
実施例36
以下の二酸組成物とジオール組成物を用いてスルホポリエステル重合体を調製した: 二酸組成物(テレフタル酸69モル%、イソフタル25酸22.5モル%、5−(ソジオスルホ)イソフタル酸8.5モル%)およびジオール組成物(エチレングリコール65モル%、ジエチレングリコール35モル%)。スルホポリエステルは真空下、高温ポリエステル化により作られた。エステル化条件は、約0.33の固有粘度を持つスルホポリエステルを製造するように制御した。このスルホポリエステルの溶融粘度を測定したところ、240℃、1rad/秒の剪断速度で約3000〜4000ポアズの範囲内であった。
【0242】
実施例37
二成分押出ラインを用いて、実施例36のスルホポリエステル重合体を紡糸することにより、37個の島を持つ二成分海島型断面繊維を作った。一次押出機(A)はイーストマン F61HC PETポリエステルを送入して、海島型断面構造中の“島”を形成した。二次押出機(B)は水分散性スルホポリエステル重合体を送入して、海島型二成分繊維中の“海”を形成した。ポリエステルの固有粘度は0.61dL/gであり、一方、既に述べた溶融粘度測定手順を用いて240℃、1rad/秒の歪速度で測定した乾燥スルホポリエステルの溶融粘度は約7000ポアズであった。これらの海島型二成分繊維は、72個の穴を持つ紡糸口金を用いて作製した。“島”ポリエステルと“海”スルホポリエステルとの重合体比は2.33:1であった。
【0243】
これらの二成分繊維は、ポリエステル成分については280℃の、水分散性スルホポリエステル成分については255℃の押出温度を用いて紡糸し、次に約3.3:1の延伸比で延伸して、二成分繊維に約2.5ミクロンの最終島直径を与えた。
【0244】
実施例38
二成分押出ラインを用いて、実施例36のスルホポリエステル重合体を紡糸することにより、37個の島を持つ二成分海島型断面繊維を作った。一次押出機(A)はイーストマン F61HC PETポリエステルを送入して、海島型断面構造中の“島”を形成した。二次押出機(B)は水分散性スルホポリエステル重合体を送入して、海島型二成分繊維中の“海”を形成した。ポリエステルの固有粘度は0.61dL/gであり、一方、既に述べた溶融粘度測定手順を用いて240℃、1rad/秒の歪速度で測定した乾燥スルホポリエステルの溶融粘度は約7000ポアズであった。これらの海島型二成分繊維は、72個の穴を持つ紡糸口金を用いて作製した。“島”ポリエステルと“海”スルホポリエステルとの重合体比は2.33:1であった。
【0245】
これらの二成分繊維は、ポリエステル成分については280℃の、水分散性スルホポリエステル成分については255℃の押出温度を用いて紡糸し、次に約3.3:1の比率で延伸して、二成分繊維に約4.0ミクロンの最終島直径を与えた。
【0246】
実施例39
実施例37の延伸された海島型二成分繊維を1.5mmの短尺二成分繊維に裁断し(島アスペクト比600になる)、実施例38の二成分繊維を1.5mmと3.0mmの短尺二成分繊維に裁断する(島アスペクト比はそれぞれ375と750になる)ことにより、海中に37島を持つ断面形状の短尺繊維を製造した。これらの繊維は、ポリエステルの“島”と水分散性スルホポリエステル重合体の“海”を含んでなっていた。“島々”と“海”の断面分布は、これらの二成分繊維の長さに沿って本質的に一貫していた。
【0247】
実施例40
実施例39の短く裁断した海島型繊維を80℃の軟水を用いて個々に洗浄して、水分散性スルホポリエステル“海”成分を除去し、これにより、二成分繊維の“島”成分であるポリエステル微小繊維を開放した。洗浄したポリエステル微小繊維は25℃の軟水を用いてすすぎ洗いして、“海”成分のほとんどを実質的に除去した。
【0248】
実施例41
実施例40の“海”成分除去法から一括して得られた、アスペクト比600:1で直径2.5ミクロンの微小繊維とアスペクト比750:1と375:1で直径4.0ミクロンの微小繊維との配合物を含んでなる湿式堆積手すき紙を、以下の手順で作製した: 2.0gのポリエステル微小繊維(乾燥繊維基準)を水2000mlに添加し、改良配合機を用いて1〜2分間攪拌して、粘稠度0.1%の微小繊維スラリーを調製した。このパルプスラリーから手すき紙を作る手順は以下の通りであった: このパルプスラリーを攪拌し続けながら25cmx30cmの手すき紙金型に注ぎいれた。落下弁を引いて、パルプ繊維をスクリーン上に流出させておいて、手すき紙を作製した。750g/m(gsm)の吸取紙を得られた手すき紙の頂部に置き、吸取紙を手すき紙の上に均した。スクリーンフレームを持上げ、清浄な剥離紙上に逆さまに置き、10分間放置した。スクリーンを得られた手すき紙から離して、垂直に持上げた。750gsmの吸取紙2枚を得られた手すき紙の頂部に置いた。手すき紙を3枚の吸取紙と共にNorwood Dryerを用いて約88℃で15分間乾燥させた。1枚の吸取紙を取除いて、手すき紙の両側に1枚ずつの吸取紙を残した。手すき紙をWilliams Dryerを用いて65℃で15分間乾燥させた。次に、手すき紙を40kgの乾燥プレスを用いて12〜24時間さらに乾燥させた。吸取紙を取除いて、乾燥した手すき紙試料を得た。手すき紙をトリミングして、試験用の21.6cmx27.9cmの寸法にした。得られた手すき紙の特性を図1から3に詳細に示す。
【0249】
図1と2は、より直径の大きい繊維の重量分率が増加するほど、得られた紙の細孔径と多孔率が予想可能に増加することを示す。この増加は、より大きな繊維の裁断長さ(またはアスペクト比)とはほとんど無関係である。アスペクト比のより低い4.0ミクロンの繊維(すなわち長さ1.5ミクロン)は、アスペクト比のより高い類似の繊維(すなわち長さ3.0ミクロン)と比べ、合成手すき紙の地合(すなわち視覚的均一性)を顕著に向上させることを図3は示している。実際、アスペクト比750:1(すなわち3.0mm)の4.0ミクロン繊維をアスペクト比600:1(すなわち1.5mm)の2.5ミクロン繊維と配合すると、手すき紙の均一性はやや減少するが、アスペクト比750:1の4.0ミクロン繊維の量を増加すると顕著に減少することが認められる。逆に、アスペクト比375:1(すなわち1.5mm)の4.0ミクロン繊維をアスペクト比600:1(すなわち1.5mm)の2.5ミクロン繊維と配合すると、手すき紙の地合/均一性の劇的な増加が認められる。
【0250】
実施例42
アスペクト比600:1で直径2.5ミクロンの微小繊維とアスペクト比375:1で直径4.0ミクロンの微小繊維とAlbacell Softwoodパルプ(ショッパー・リグラー型ろ水度50に精錬)との配合物を含んでなる湿式堆積手すき紙を、実施例41に略述した手順を用いて作製した。得られた手すき紙の特性を図4と5に詳細に示す。
【0251】
図4は、より大きな直径4.0ミクロンの繊維の重量分率を増加すると、2.5ミクロンの繊維に比べ紙の平均細孔径がより速やかに増加することを示している。しかしながら、直径4.0ミクロンの繊維と2.5ミクロンの繊維との両方でパルプと合成微小繊維の50/50配合物について極めて類似した細孔径が認められることは注目に値する。
【0252】
図5は、アスペクト比600:1で直径2.5ミクロンの繊維の配合量を増加させると均一性/地合がわずかではあるが有意に改善され、アスペクト比375:1で直径4.0ミクロンの繊維の配合量を増加させると均一性/地合が劇的に増大することを示している。
図1
図2
図3
図4
図5