(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らは、典型的にはポリブタジエン含有耐衝撃性改良剤の使用に付随する耐衝撃強度を実質的に低下させることなく、加水分解耐性が向上した特別なブタジエンフリーのポリ(フェニレンエーテル)組成物を見出した。従って、一実施形態は、特に明記されない限り組成物の合計質量に対して、約25〜約50質量%のポリ(フェニレンエーテル)と、約25〜約55質量%のポリスチレンと、約5〜約35質量%のガラス繊維と、を含み、前記ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量が前記ポリスチレンおよび前記ガラス繊維と混合後で少なくとも70,000原子質量単位であり、組成物の質量1kg当たり1mg以下のブタジエンを含む組成物を、含む流体工学物品である。
【0008】
別の実施形態は、特に明記されない限りその合計質量に対して、約25〜約50質量%のポリ(フェニレンエーテル)と、約25〜約55質量%のポリスチレンと、約5〜約35質量%のガラス繊維と、を含み、前記ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量が前記ポリスチレンおよび前記ガラス繊維と混合後で少なくとも70,000原子質量単位であり、その質量1kg当たり1mg以下のブタジエンを含む組成物である。
【0009】
組成物はポリ(フェニレンエーテル)を含む。好適なポリ(フェニレンエーテル)類としては、下式の繰り返し構造単位を含むものが挙げられる:
【化1】
式中、Z
1はそれぞれ独立に、ハロゲン、ヒドロカルビル基が第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C
1−C
12ヒドロカルビル、C
1−C
12ヒドロカルビルチオ、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC
2−C
12ハロヒドロカルビルオキシであり;Z
2はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル基が第三級ヒドロカルビルではない未置換または置換C
1−C
12ヒドロカルビル、C
1−C
12ヒドロカルビルチオ、C
1−C
12ヒドロカルビルオキシ、あるいは少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを分離しているC
2−C
12ハロヒドロカルビルオキシである。本明細書において、「ヒドロカルビル」は、単独であるいは別の用語の接頭辞、接尾辞またはフラグメントとして使用されたとしても、炭素と水素だけを含む残基を指す。残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、飽和または不飽和であり得る。それはまた、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝鎖、飽和および不飽和の炭化水素部分の組み合わせも含み得る。しかしながら、ヒドロカルビル残基が置換であると記載された場合、それは任意に、置換残基の炭素と水素員上にヘテロ原子を含んでいてもよい。従って、置換であると特定的に記載された場合、ヒドロカルビル残基は、1個または複数個のカルボニル基、アミノ基、水酸基なども含み得、あるいは、ヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含み得る。一例として、Z
1は、末端の3,5−ジメチル−1,4−フェニル基と酸化重合触媒のジ−n−ブチルアミン成分との反応で形成されたジ−n−ブチルアミノメチル基であり得る。
【0010】
ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量は、ポリスチレンおよびガラス繊維と混合後で少なくとも70,000原子質量単位である。一部の実施形態では、ポリスチレンおよびガラス繊維と混合後のポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量は、70,000〜約110,000原子質量単位であり、具体的には70,000〜約100,000原子質量単位であり、より具体的には70,000〜約90,000原子質量単位である。ポリスチレンおよびガラス繊維と混合後のポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量が70,000原子質量単位未満の場合、組成物で成形された物品の静水力学安定性(hydrostatic stability)は不十分になり得る。質量平均分子量は、実施例で詳細に説明するように、ゲル透過クロマトグラフィによって求められる。
【0011】
一部の実施形態では、ポリスチレンおよびガラス繊維と混合前のポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量は、約60,000〜約90,000原子質量単位であり、具体的には約60,000〜約80,000原子質量単位であり、より具体的には約60,000〜約70,000原子質量単位である。こうした混合前分子量によって、上記の所望の混合後分子量が得られる。
【0012】
一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、組み込まれたジフェノキノン残基を本質的に含まない。この文脈において、「本質的に含まない」とは、ジフェノキノンの残基を含むポリ(フェニレンエーテル)分子が1質量%未満であることを意味する。Hayの米国特許第3,306,874号に記載されているように、一価フェノールの酸化重合によるポリ(フェニレンエーテル)の合成では、所望のポリ(フェニレンエーテル)だけでなく、ジフェノキノンも副生成物として生成される。例えば、一価フェノールが2,6−ジメチルフェノールの場合、3,3’,5,5’−テトラメチルジフェノキノンが生成される。ジフェノキノンは典型的には、前記重合反応混合物を加熱して末端または内部ジフェノキノン残基を含むポリ(フェニレンエーテル)を生成することによって、ポリ(フェニレンエーテル)内に「再平衡される」(すなわち、ジフェノキノンがポリ(フェニレンエーテル)構造内に取り込まれる)。例えば、ポリ(フェニレンエーテル)を2,6−ジメチルフェノールの酸化重合で調製してポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と3,3’,5,5’−テトラメチルジフェノキノンを生成する場合、反応混合物の再平衡によって、取り込まれたジフェノキノンの末端および内部残基を有するポリ(フェニレンエーテル)が生成され得る。しかしながら、こうした再平衡によって、ポリ(フェニレンエーテル)の分子量が低減する。従って、より高分子量のポリ(フェニレンエーテル)が望ましい場合、ジフェノキノンをポリ(フェニレンエーテル)鎖へ再平衡させずに、ポリ(フェニレンエーテル)から分離することが望ましいものであり得る。こうした分離は、例えば、ポリ(フェニレンエーテル)は不溶だがジフェノキノンが可溶の溶媒または溶媒混合物に、ポリ(フェニレンエーテル)を沈殿させることによって実現される。例えば、トルエン中の2,6−ジメチルフェノールの酸化重合によってポリ(フェニレンエーテル)を調製して、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)と3,3’,5,5’−テトラメチルジフェノキノンとを含むトルエン溶液を生成する場合、ジフェノキノンを本質的に含まないポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)は、トルエン溶液1容積とメタノールまたはメタノール/水混合物約1〜約4容積とを混合することによって得られる。あるいは、酸化重合中に生成されるジフェノキノン副生成物の量は、(例えば、10質量%未満の一価フェノールの存在下で酸化重合を開始し、少なくとも50分の間に少なくとも95質量%の一価フェノールを添加することによって)最小化でき、およびまたは、ポリ(フェニレンエーテル)鎖へのジフェノキノンの再平衡は、(例えば、酸化重合終了後200分以内にポリ(フェニレンエーテル)を単離することによって)最小化できる。これらの方法は、Delsmanらの国際特許出願第2009/104107A1号に記載されている。トルエン中のジフェノキノンの温度依存性の溶解度を利用する代替方法では、ジフェノキノンとポリ(フェニレンエーテル)とを含むトルエン溶液の温度を、ジフェノキノンはほとんど不溶だがポリ(フェニレンエーテル)は可溶である約25℃に調整して、不溶のジフェノキノンを固液分離(例えばろ過)によって除去できる。
【0013】
一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位、2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位あるいはこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、25℃のクロロホルム中で測定した固有粘度が約0.5〜約1dL/gの、具体的には約0.5〜約0.7dL/gの、より具体的には約0.55〜約0.65dL/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む。
【0014】
一部の実施形態では、ポリ(フェニレンエーテル)は、典型的にはヒドロキシ基に対してオルト位置に存在するアミノアルキル含有末端基(類)を有する分子を含む。また、テトラメチルジフェニルキノン(TMDQ)副生成物が存在する2,6−ジメチルフェノール含有反応混合物から典型的に得られるTMDQ末端基類も存在することが多い。ポリ(フェニレンエーテル)は、ホモポリマー、コポリマー、グラフトコポリマー、イオノマー、ブロックコポリマー、あるいはこれらのものを少なくとも1つ含む組合せの形態であり得る。
【0015】
一部の実施形態では、組成物は、その合計質量に対して約25〜約50質量%の、具体的には約30〜約45質量%の、より具体的には約35〜約40質量%のポリ(フェニレンエーテル)を含む。
【0016】
組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)に加えて、ポリスチレンを含む。本明細書において、「ポリスチレン」は、スチレン重合から誘導された繰り返し単位を少なくとも90質量%含むポリマーを指す。一部の実施形態では、ポリスチレンは、スチレン重合から誘導された繰り返し単位を少なくとも95質量%、具体的には少なくとも98質量%含む。一部の実施形態では、ポリスチレンは、スチレンホモポリマーである。スチレンホモポリマーは、アタクチック、アイソタクチックあるいはシンジオタクチックであり得る。
【0017】
一部の実施形態では、ポリスチレンの数平均分子量は、約10,000〜約200,000原子質量単位であり、具体的には約30,000〜約100,000原子質量単位である。特別の実施形態では、ポリスチレンは、数平均分子量が約30,000〜約100,000原子質量単位のアタクチックホモポリスチレンである。
【0018】
一部の実施形態では、ポリスチレンはアタクチックポリスチレンを含む。アタクチックポリスチレンはホモポリスチレンである。一部の実施形態では、アタクチックポリスチレンのメルトフローインデックスは、ASTM D1238−10に準拠し、温度200℃、荷重5kgで測定して、約0.5〜約10g/10分であり、具体的には約1〜約5g/10分である。
【0019】
一部の実施形態では、組成物は、その合計質量に対して約25〜約55質量%の、具体的には約30〜約50質量%の、より具体的には約30〜約45質量%の、さらにより具体的には約30〜約40質量%の、さらにより具体的には約30〜約35質量%のポリスチレンを含む。
【0020】
組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)とポリスチレンに加えて、ガラス繊維を含む。好適なガラス繊維としては、E、A、C、ECR、R、S、DおよびNEガラス系のもの、および石英系のものが挙げられる。一部の実施形態では、ガラス繊維の径は約2〜約30μmであり、具体的には約5〜約25μmであり、より具体的には約10〜約15μmである。一部の実施形態では、混合前のガラス繊維の長さは約2〜約7mmであり、具体的には約3〜約5mmである。ガラス繊維は、ポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレンとの相溶性向上のために、いわゆる接着促進剤を任意に含み得る。接着促進剤としては、クロム錯体、シラン、チタン酸塩、ジルコアルミネート、プロピレン無水マレイン酸コポリマー、反応性セルロースエステルなどが挙げられる。好適なガラス繊維は、例えば、Owens Corning社、日本電気硝子(株)、PPG社およびJohns Manville社などを含む供給者から販売されている。
【0021】
一部の実施形態では、組成物は、その合計質量に対して約5〜約35質量%の、具体的には約10〜約35質量%の、より具体的には約15〜約35質量%の、さらにより具体的には約20〜約35質量%の、さらにより具体的には約25〜約35質量%のガラス繊維を含む。
【0022】
一部の実施形態では、組成物は、離型剤として少量のポリエチレンをさらに含む。一部の実施形態では、ポリエチレンのメルトフローレートは、ISO1133に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定して、約15〜約30g/cm
3であり、具体的には約18〜約26g/cm
3である。ポリエチレンが存在する場合、その量は、組成物の合計質量に対して約0.5〜2質量%であり得、具体的には約1〜2質量%であり得る。
【0023】
組成物は任意に、1種または複数種の添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、安定剤、離型剤、潤滑剤、加工助剤、防滴剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤およびブロッキング防止剤などが挙げられる。添加剤が存在する場合、その合計量は、組成物の合計質量に対して、典型的には約10質量%以下であり、具体的には約6質量%以下であり、より具体的には約4質量%以下であり、さらにより具体的には約2質量%以下である。
【0024】
組成物は、その質量1kg当たり1mg以下のブタジエンを含む。この文脈において、「ブタジエン」はブタジエンモノマーを指し、重合化ブタジエン残基を含まない。一部の実施形態では、組成物は、その質量1kg当たり0.1mg以下の、具体的には0.05mg以下の、より具体的には0.01mg以下の、さらにより具体的には0.001mg以下のブタジエンを含む。ブタジエンのこうした低濃度は、ブタジエンの水素化ホモポリマーおよびコポリマーを含む、ブタジエンのホモポリマーおよびコポリマーの使用を低減あるいは削減することにより達成できる。
【0025】
組成物の利点の1つはその簡便性である。一部の実施形態では、組成物は、例えば、ポリ(フェニレンエーテル)およびポリスチレン以外の任意のポリマーを2質量%以下含む。一部の実施形態では、組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)、ポリスチレンおよび任意のポリエチレン以外のいかなるポリマーも含まない。
【0026】
非常に特定的な実施形態では、組成物は、約30〜約40質量%の、具体的には約32〜約38質量%の、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含むポリ(フェニレンエーテル)と、約47〜約57質量%の、具体的には約49〜約55質量%の、アタクチックポリスチレンを含むポリスチレンと、約5〜約15質量%の、具体的には約7〜約13質量%のガラス繊維と、その質量1kg当たり0.05mg以下のブタジエンと、を含む。一部の実施形態では、組成物はさらに、ISO1133に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが約15〜約30g/cm
3のポリエチレンを約0.5〜2質量%含む。一部の実施形態では、組成物は、前記ポリ(フェニレンエーテル)と、前記ポリスチレンと、前記ガラス繊維と、任意に、安定剤、離型剤、潤滑剤、加工助剤、防滴剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤およびこれらの組み合わせから構成される群から選択された、10質量%以下の、具体的には6質量%以下の、より具体的には4質量%以下の、さらにより具体的には2質量%以下の添加剤と、のみからなる。
【0027】
別の非常に特定的な実施形態では、組成物は、約25〜約35質量%の、具体的には約27〜約33質量%の、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含むポリ(フェニレンエーテル)と、約42〜約52質量%の、具体的には約44〜約50質量%の、アタクチックポリスチレンを含むポリスチレンと、約15〜約25質量%の、具体的には約17〜約23質量%のガラス繊維と、その質量1kg当たり0.05mg以下のブタジエンと、を含む。一部の実施形態では、組成物はさらに、ISO1133に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが約15〜約30g/cm
3のポリエチレンを約0.5〜2質量%含む。一部の実施形態では、組成物は、前記ポリ(フェニレンエーテル)と、前記ポリスチレンと、前記ガラス繊維と、任意に、安定剤、離型剤、潤滑剤、加工助剤、防滴剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤およびこれらの組み合わせから構成される群から選択された、10質量%以下の、具体的には6質量%以下の、より具体的には4質量%以下の、さらにより具体的には2質量%以下の添加剤と、から構成される。
【0028】
別の非常に特定的な実施形態では、組成物は、約32〜約42質量%の、具体的には約34〜約40質量%の、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含むポリ(フェニレンエーテル)と、約25〜約35質量%の、具体的には約27〜約33質量%の、アタクチックポリスチレンを含むポリスチレンと、約25〜約35質量%の、具体的には約27〜約33質量%のガラス繊維と、その質量1kg当たり0.05mg以下のブタジエンと、を含む。一部の実施形態では、組成物はさらに、ISO1133に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが約15〜約30g/cm
3のポリエチレンを約0.5〜2質量%含む。一部の実施形態では、組成物は、前記ポリ(フェニレンエーテル)と、前記ポリスチレンと、前記ガラス繊維と、任意に、安定剤、離型剤、潤滑剤、加工助剤、防滴剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤およびこれらの組み合わせから構成される群から選択された、10質量%以下の、具体的には6質量%以下の、より具体的には4質量%以下の、さらにより具体的には2質量%以下の添加剤と、から構成される。
【0029】
組成物は、これらの成分の溶融混合によって調製できる。溶融混合は、リボンブレンダ、Henschelミキサー、Banburyミキサー、ドラムタンブラー、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機、共混練機などの一般的な装置を用いて行える。例えば、本組成物は、温度が約280〜約360℃の、具体的には約300〜約330℃の二軸押出機で成分を溶融混合することによって調製できる。
【0030】
組成物は流体工学物品の製造に有用である。こうした物品としては、例えば、配管、配管ライナー、配管接合、冷温水器部品、ボイラー部品(煙道コネクタ、油圧ブロックおよび熱交換器筐体を含む)、セントラルヒーティング装置部品、給湯器とセントラルヒーティング装置との複合機の部品、熱交換器部品、ヒートポンプ筐体、送水ポンプ筐体(スイミングプールポンプ筐体を含む)、フィルター筐体、水道メータ筐体、送水バルブ(蛇口アンダーボディバルブおよび蛇口ポストバルブを含む)、インペラおよび蛇口スパウトが挙げられる。熱可塑性プラスチック流体工学物品の詳細は当分野では既知である。例えば、Kohleの米国特許第6,129,121号には、本体が熱可塑性プラスチックから形成され得る配管接合、すなわち「ニップル」が記載されており、Prattらの米国特許第6,241,840B1号には、飲料水用の熱可塑性ライナー配管が記載されており、Parkisonらの米国特許第3,906,983号には、熱可塑性バスタブスパウトが記載されており、Gallagherらの米国特許第7,845,688B2号には、本体が熱可塑性の配管部品が記載されており、Murrayの米国特許第7,891,572号には、熱可塑性の絶縁体を備えたボイラー温度モニタリングおよび低水モニタリングシステムが記載されており、Seitzの米国特許第7,616,873B1号には、熱可塑性熱交換器が記載されており、McMinnの米国特許第6,274,375号には、熱可塑性スプレーノズルを備えたベントフードクリーニングシステムが記載されており、Dalquist IIIらの米国特許第5,040,950号には、熱可塑性ベアリング筐体部材を備えた電源洗浄機が記載されており、Dickertmannの米国特許出願第2009/0304501A1号には、熱可塑性ポンプ筐体を有する池ポンプが記載されており、Kargenianの米国特許出願第2008/0185323A1号には、熱可塑性の上部および下部マニホールドを備えた水処理システムが記載されており、Swartleyらの米国特許出願第2008/0197077A1号には、熱可塑性供給圧調整器を備えた低圧飲料水浄化器が記載されており、Swensonの米国特許第3,811,323号には、熱可塑性の入口ハブ組立体を備えた液体計量器が記載されており、Willemsの米国特許出願第2008/0029172A1号には、種々の熱可塑性部品を備えた一体型耐圧性流体容器が記載されており、Quinnらの米国特許出願第2009/0084453A1号には、熱可塑性筐体を備えた流体処理システム制御バルブが記載されており、Moonの米国特許第5,960,543号には、熱可塑性ポンプインペラが記載されている。組成物は、温水に接触する物品の製造には特に好適である。流体工学物品は、組成物の射出成形により形成できる。実例となる射出条件については、後述の実施例で説明する。
【0031】
組成物の文脈で説明した組成上の変形はすべて、組成物で製造した物品にも同様に当てはまる。
【0032】
本発明は少なくとも以下の実施形態を含む。
【0033】
実施形態1:特に明記されない限り組成物の合計質量に対して、約25〜約50質量%のポリ(フェニレンエーテル)と、約25〜約55質量%のポリスチレンと、約5〜約35質量%のガラス繊維と、を含み、前記ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量が前記ポリスチレンおよび前記ガラス繊維と混合後で少なくとも70,000原子質量単位であり、組成物の質量1kg当たり1mg以下のブタジエンを含む組成物を、含む流体工学物品。
【0034】
実施形態2:配管、配管ライナー、配管接合、冷温水器部品、ボイラー部品、セントラルヒーティング装置部品、給湯器とセントラルヒーティング装置との複合機の部品、熱交換器部品、ヒートポンプ筐体、送水ポンプ筐体、フィルター筐体、水道メータ筐体、送水バルブ、インペラおよび蛇口スパウトから構成される群から選択された実施形態1に記載の流体工学物品。
【0035】
実施形態3:前記ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量は、前記ポリスチレンおよび前記ガラス繊維と混合後で70,000〜約110,000原子質量単位である実施形態1または実施形態2に記載の流体工学物品。
【0036】
実施形態4:前記ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量は、前記ポリスチレンおよび前記ガラス繊維と混合前で約60,000〜約90,000原子質量単位である実施形態1乃至実施形態3のいずれかに記載の流体工学物品。
【0037】
実施形態5:前記組成物は、前記ポリ(フェニレンエーテル)と前記ポリスチレン以外の任意のポリマーを2質量%以下含む実施形態1乃至実施形態4のいずれかに記載の流体工学物品。
【0038】
実施形態6:前記組成物はさらに、ISO1133に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが約15〜約30g/cm
3のポリエチレンを約0.5〜2質量%含む実施形態1乃至実施形態5のいずれかに記載の流体工学物品。
【0039】
実施形態7:前記組成物は、前記ポリ(フェニレンエーテル)、前記ポリスチレンおよび前記ポリエチレン以外のいかなるポリマーも含まない実施形態6に記載の流体工学物品。
【0040】
実施形態8:前記組成物は、約30〜約40質量%の、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む前記ポリ(フェニレンエーテル)と、約47〜約57質量%の、アタクチックポリスチレンを含む前記ポリスチレンと、約5〜約15質量%の前記ガラス繊維と、組成物の質量1kg当たり0.05mg以下のブタジエンと、を含む実施形態1に記載の流体工学物品。
【0041】
実施形態9:前記組成物はさらに、ISO1133に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが約15〜約30g/cm
3のポリエチレンを約0.5〜2質量%含む実施形態8に記載の流体工学物品。
【0042】
実施形態10:前記組成物は、前記ポリ(フェニレンエーテル)と、前記ポリスチレンと、前記ガラス繊維と、任意に、安定剤、離型剤、潤滑剤、加工助剤、防滴剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤およびこれらの組み合わせから選択された、10質量%以下の添加剤と、から構成される実施形態8に記載の流体工学物品。
【0043】
実施形態11:前記組成物は、約25〜約35質量%の、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む前記ポリ(フェニレンエーテル)と、約42〜約52質量%の、アタクチックポリスチレンを含む前記ポリスチレンと、約15〜約25質量%の前記ガラス繊維と、組成物の質量1kg当たり0.05mg以下のブタジエンと、を含む実施形態1に記載の流体工学物品。
【0044】
実施形態12:前記組成物はさらに、ISO1133に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが約15〜約30g/cm
3のポリエチレンを約0.5〜2質量%含む実施形態11に記載の流体工学物品。
【0045】
実施形態13:前記組成物は、前記ポリ(フェニレンエーテル)と、前記ポリスチレンと、前記ガラス繊維と、任意に、安定剤、離型剤、潤滑剤、加工助剤、防滴剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤およびこれらの組み合わせから選択された、10質量%以下の添加剤と、から構成される実施形態11に記載の流体工学物品。
【0046】
実施形態14:前記組成物は、約32〜約42質量%の、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む前記ポリ(フェニレンエーテル)と、約25〜約35質量%の、アタクチックポリスチレンを含む前記ポリスチレンと、約25〜約35質量%の前記ガラス繊維と、組成物の質量1kg当たり0.05mg以下のブタジエンと、を含む実施形態1に記載の流体工学物品。
【0047】
実施形態15:前記組成物はさらに、ISO1133に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが約15〜約30g/cm
3のポリエチレンを約0.5〜2質量%含む実施形態14に記載の流体工学物品。
【0048】
実施形態16:前記組成物は、前記ポリ(フェニレンエーテル)と、前記ポリスチレンと、前記ガラス繊維と、任意に、安定剤、離型剤、潤滑剤、加工助剤、防滴剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤およびこれらの組み合わせから選択された、10質量%以下の添加剤と、から構成される実施形態14に記載の流体工学物品。
【0049】
実施形態17:特に明記されない限りその合計質量に対して、約25〜約50質量%のポリ(フェニレンエーテル)と、約25〜約55質量%のポリスチレンと、約5〜約35質量%のガラス繊維と、を含み、前記ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量が前記ポリスチレンおよび前記ガラス繊維と混合後で少なくとも70,000原子質量単位であり、その質量1kg当たり1mg以下のブタジエンを含む組成物。
【0050】
実施形態18:前記ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量は、前記ポリスチレンおよび前記ガラス繊維と混合後で70,000〜約110,000原子質量単位である実施形態17に記載の組成物。
【0051】
実施形態19:前記ポリ(フェニレンエーテル)の質量平均分子量は、前記ポリスチレンおよび前記ガラス繊維と混合前で約60,000〜約90,000原子質量単位である実施形態17または実施形態18に記載の組成物。
【0052】
実施形態20:前記ポリ(フェニレンエーテル)と前記ポリスチレン以外の任意のポリマーを2質量%以下含む実施形態17乃至実施形態19のいずれかに記載の組成物。
【0053】
実施形態21:さらに、ISO1133に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが約15〜約30g/cm
3のポリエチレンを約0.5〜2質量%含む実施形態17乃至実施形態20のいずれかに記載の組成物。
【0054】
実施形態22:前記ポリ(フェニレンエーテル)、前記ポリスチレンおよび前記ポリエチレン以外のいかなるポリマーも含まない実施形態21に記載の組成物。
【0055】
実施形態23:約30〜約40質量%の、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む前記ポリ(フェニレンエーテル)と、約47〜約57質量%の、アタクチックポリスチレンを含む前記ポリスチレンと、約5〜約15質量%の前記ガラス繊維と、その質量1kg当たり0.05mg以下のブタジエンと、を含む実施形態17に記載の組成物。
【0056】
実施形態24:さらに、ISO1133に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが約15〜約30g/cm
3のポリエチレンを約0.5〜2質量%含む実施形態23に記載の組成物。
【0057】
実施形態25:前記ポリ(フェニレンエーテル)と、前記ポリスチレンと、前記ガラス繊維と、任意に、安定剤、離型剤、潤滑剤、加工助剤、防滴剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤およびこれらの組み合わせから選択された、10質量%以下の添加剤と、から構成される実施形態23に記載の組成物。
【0058】
実施形態26:前記組成物は、約25〜約35質量%の、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む前記ポリ(フェニレンエーテル)と、約42〜約52質量%の、アタクチックポリスチレンを含む前記ポリスチレンと、約15〜約25質量%の前記ガラス繊維と、その質量1kg当たり0.05mg以下のブタジエンと、を含む実施形態17に記載の流体工学物品。
【0059】
実施形態27:さらに、ISO1133に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが約15〜約30g/cm
3のポリエチレンを約0.5〜2質量%含む実施形態26に記載の組成物。
【0060】
実施形態28:前記ポリ(フェニレンエーテル)と、前記ポリスチレンと、前記ガラス繊維と、任意に、安定剤、離型剤、潤滑剤、加工助剤、防滴剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤およびこれらの組み合わせから選択された、10質量%以下の添加剤と、から構成される実施形態26に記載の組成物。
【0061】
実施形態29:約32〜約42質量%の、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む前記ポリ(フェニレンエーテル)と、約25〜約35質量%の、アタクチックポリスチレンを含む前記ポリスチレンと、約25〜約35質量%の前記ガラス繊維と、その質量1kg当たり0.05mg以下のブタジエンと、を含む実施形態17に記載の組成物。
【0062】
実施形態30:さらに、ISO1133に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレートが約15〜約30g/cm
3のポリエチレンを約0.5〜2質量%含む実施形態29に記載の組成物。
【0063】
実施形態31:前記ポリ(フェニレンエーテル)と、前記ポリスチレンと、前記ガラス繊維と、任意に、安定剤、離型剤、潤滑剤、加工助剤、防滴剤、成核剤、UVカット剤、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤およびこれらの組み合わせから選択された、10質量%以下の添加剤と、から構成される実施形態29に記載の組成物。
【0064】
以下の非限定的実施例によって、本発明をさらに例証する。
【0065】
実施例1、比較実施例1〜5
発明的組成物および比較組成物の形成に用いた成分を表1に示す。
【表1】
【0066】
内径が120mmのWerner & Pfleiderer ZSK−120二軸押出機で組成物を混合した。供給口からダイまでの押出機バレル温度は、260℃、260℃、280℃、290℃、290℃、270℃、270℃、250℃、250℃、330℃、330℃、330℃、330℃および340℃であった。混合前に、全ての成分を乾燥混合し、ガラス繊維を除いた成分は押出機の供給口に添加し、ガラス繊維は、サイドフィーダ経由で下流側で供給した。押出品は水浴中で冷却してペレット化し、100℃×2時間で乾燥した後に射出成形した。
【0067】
バレルゾーン温度が60℃、270℃、290℃、300℃および290℃、金型温度が100℃のEngel75T射出成型機で射出成形した部品を用いて、物理試験を行った。
【0068】
引張破断応力(MPa)と引張破断ひずみ(%)は、ISO527−2−1993に準拠し、温度23℃、試験速度5mm/分で測定した。引張弾性率(MPa)は、ISO527−2−1993に準拠し、温度23℃、試験速度1mm/分で測定した。ニットライン引張破断応力(MPa)とニットライン引張破断ひずみ(%)は、ISO527−2−1993に準拠し、温度23℃、試験速度5mm/分で測定した。ニットライン引張弾性率(MPa)は、ISO527−2−1993に準拠し、温度23℃、試験速度1mm/分で測定した。曲げ破断応力(MPa)と曲げ弾性率は、ISO178−2001(改正1、2004)に準拠し、温度23℃で測定した。ノッチなしアイゾッド衝撃強度(kJ/m
2)は、ISO180−2001(改正1、2006)に準拠し、温度23℃で測定した。ビカット軟化温度(℃)は、ISO306−2004に準拠し、力50N、加熱速度120℃で測定した。密度(g/cm
3)は、ISO1183−2004 方法Aに準拠し、温度23℃で測定した。メルトボリュームフローレート(mL/10分)は、ISO1133−2005 手順Bに準拠し、温度300℃、荷重10kgで測定した。
【0069】
混合後分子量および遊離ブタジエン分析に使用する材料は、温度をホッパからバレルまで60℃、270℃、280℃、290℃、300℃、295℃、295℃および290℃に、金型温度を120℃に設定したKraus Maffei200射出成型機で射出成形する圧力容器から採取した。耐内圧性を測定する圧力容器の目標サイズは、長さ199mm、径47.3mm、肉厚3.0mmである。各圧力容器の実サイズを測定し、実際のフープ応力算出に用いた。各圧力容器は、1つの半球状閉止端と、静水力学強度試験の間、ステンレス鋼シリンダに取り付けられてo−リングでシールされ、サンプルの開放端の端部リブに係合するように容器上を摺動するナットで固定される1つの開放端とを有する。圧力容器は、ISO1167−2(2006)に準拠したものである。サンプルは、圧力容器の底にゲートがあり、ウェルドラインが形成される。長期の耐内圧性は、ISO1167−1:2006に準拠し、温度90℃のウォータ−イン−ウォータ試験で測定した。破損が記録されるまで、異なるフープ応力および時間でサンプルを試験した。破損までの時間はクリープ破断試験機で求め、データ収集ソフトで記録した。傾向線(線形回帰)は、フープ応力(Y軸)と時間(h)の常用対数(log
10)(X軸)とに基づいて求め、この傾向線を用い、フープ応力10MPaを破損基準として、各組成物の破損までの時間を予測した。
【0070】
ポリスチレン標準を用いたゲル透過クロマトグラフィによって、混合後のポリ(フェニレンエーテル)の数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)とを求めた。クロマトグラフは、5μm×10
3ÅPLゲルカラムと、5μm×10
5ÅPLゲルカラムと、500ÅSTYRAGELプレカラムと、を備えたHewlett Packard HPLC1100を用いた。固体サンプル(混合前サンプル用のポリ(フェニレンエーテル)、あるいは混合後サンプル用の完全な組成物)20mgを、流動マーカーとして2000質量ppmのトルエンを含むクロロホルム20mLに溶解してサンプルを調製した。検出は280nmで行った。分子量がそれぞれ900,000、400,000、170,000、90,000、65,000、50,000、25,000、13,000、5,780、4,000、2,500および1,300のポリスチレン標準(すべて、Pressure Chemical社(ピッツバーグ、ペンシルベニア州、米国)から入手)を用いて、システムを校正した。サンプルの注入量は75μLとした。カラム温度は35℃とした。ランタイムは16分とした。
【0071】
遊離ブタジエン濃度は、長さ27.5m、内径0.32mmおよび膜厚10μmのCHROMPACKキャピラリカラムCP−PoraPLOT Q−HTを備えたヘッドスペースガスクロマトグラフを用いたガスクロマトグラフィによって、注入量25μLで求めた。1,3−ブタジエンの保存溶液を調製するために、25mLバイアル瓶用の隔壁を中空針で2度穿孔し、中空針は1つの穿孔内に残した。隔壁とねじ蓋を備えたバイアル瓶を秤量した。N,N−ジメチルアセトアミド20mLをピペットでバイアル瓶に採取した。バイアル瓶を再度秤量した。中空針と第2の穿孔を含むバイアル瓶をねじ蓋で閉じた。換気フード内で作業して、1,3−ブタジエン約0.3gを細いチューブ経由で第2の穿孔からバイアル瓶に導入した。ねじ蓋と中空針を備えたバイアル瓶を再秤量した。バイアル瓶中の1,3−ブタジエンの濃度を、溶液1g当たりの1,3−ブタジエンのmg量として求めた。1,3−ブタジエンの標準溶液を調製するために、隔壁と蓋を備えたサンプルバイアル瓶を4個秤量した。N,N−ジメチルアセトアミド20mLをピペットで各バイアル瓶に採取した。0.1mL、0.5mL、1.0mLおよび2.0mLの1,3−ブタジエン保存溶液をそれぞれ、ピペットで4つのバイアル瓶に採取した。バイアル瓶を再秤量した。各バイアル瓶中の1,3−ブタジエンの濃度を、溶液1g当たりの1,3−ブタジエンのmg量として求めた。N,N−ジメチルアセトアミド20mLをピペットで25mLバイアル瓶に採取して蓋をし、シリンジ経由でn‐ペンタン40μLを添加して、内部標準溶液を調製した。分析用サンプルを以下の方法で調製した。空の25mLサンプルバイアル瓶を精製窒素でパージした。隔壁と蓋を含むヘッドスペースバイアル瓶を秤量した。質量を正確に記録した固体サンプル約1.00gをバイアル瓶に導入した。N,N−ジメチルアセトアミド5mLをピペットでバイアル瓶に採取し、蓋をした。内部標準溶液20μLをシリンジ経由で隔壁からバイアル瓶に添加した。この手順を繰り返して、合計4つのバイアル瓶サンプルを生成した。1,3−ブタジエン標準溶液A、B、CおよびDのそれぞれ20μLを4つのバイアル瓶に導入した。これらのバイアル瓶をシェーカに入れて、一晩振動させた。各サンプルのヘッドスペースの1μL容積をガスクロマトグラフィで分析し、n‐ペンタン内部標準と1,3−ブタジエンとのピーク面積を記録した。各サンプルについて、1,3−ブタジエンの濃度を、1,3−ブタジエンのピーク面積とn‐ペンタンのピーク面積の比として求めた。ピーク面積と添加した1,3−ブタジエン濃度との比をプロットし、方程式y=ax+b(y:1,3−ブタジエンとn‐ペンタンとのピーク面積比、a:回帰の勾配(kg/mg)、x:固体中の1,3−ブタジエンの濃度(mg/kg)、b:は回帰線の切片)に適合させた。固体中のブタジエンの濃度をb/a(a:回帰線の勾配(kg/mg)、b:回帰線の切片)として求める。結果は、ポリマー1kg当たりの1,3−ブタジエンのmg単位で表した、固体中の1,3−ブタジエンの濃度(すなわち、1,3−ブタジエンの質量ppm)である。分析の検出限界は0.03質量ppmであった。
【0072】
これらの組成物と特性を表2に示す。成分量は、組成物の合計質量に対する質量%である。特性結果は第1に、すべての組成物は、検知可能量の遊離ブタジエンを含まない(すなわち、各サンプルは、0.03質量ppm以下のブタジエンを含む)ことを示している。第2に、低固有粘度のポリ(フェニレンエーテル)を含み、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロックコポリマーを含まない比較実施例1のノッチなしアイゾッド衝撃強度は、その他の組成物のものより著しく低かった(劣っていた)。第3に、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロックコポリマーを含む組成物の静水力学試験における破損までの時間は、コポリマーを含まない組成物より著しく短かった(劣っていた)。第4に、より高い固有粘度のポリ(フェニレンエーテル)を含む組成物の溶融流動性は、より低い固有粘度のポリ(フェニレンエーテル)を含む組成物のものより低かったが、より高い固有粘度のポリ(フェニレンエーテル)を含む組成物の溶融流動性でも、射出成形目的には十分であった。すべての特性結果を考慮すると、高い固有粘度のポリ(フェニレンエーテル)を含み、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロックコポリマーを含まない実施例1の組成物が最良の特性バランスを示している。組成物が、最高の加水分解耐性、良好な延性、剛性および耐熱性、および十分な溶融流動性を示した。
【表2】
【0073】
本明細書で開示された範囲はすべて終点を含むものであり、終点は互いに独立に組み合わせできる。本明細書で開示した範囲はそれぞれ、この開示範囲内の任意の点またはサブ範囲の開示を構成する。
【0074】
本発明の記述文脈(特に以下の請求項の文脈)における単数表現は、本明細書で別途明示がある場合または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、単数および複数を含むものと解釈される。また、本明細書で用いられる、「第1の」「第2の」などの用語は、いかなる順序や量あるいは重要度を表すものではなく、ある成分と他の成分とを区別するために用いられるものである。量に関連して用いた「約」は、記載された数値を含むものであり、文脈上決定される意味(例えば、特定の量の測定に関連した誤差の程度を含む)を有するものである。