特許第6170505号(P6170505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6170505同調された通気配分システムを有する空気濾過装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6170505
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】同調された通気配分システムを有する空気濾過装置
(51)【国際特許分類】
   A62B 18/04 20060101AFI20170713BHJP
   A62B 7/10 20060101ALI20170713BHJP
   A42B 3/28 20060101ALN20170713BHJP
【FI】
   A62B18/04
   A62B7/10
   !A42B3/28
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-547362(P2014-547362)
(86)(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公表番号】特表2015-504001(P2015-504001A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】US2012069090
(87)【国際公開番号】WO2013090330
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】13/326,377
(32)【優先日】2011年12月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168734
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ビリングスリー, ブリトン ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ブロムベルグ, デーヴィッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】マンスク, ジョイ エル.
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/153455(WO,A1)
【文献】 特開2002−282633(JP,A)
【文献】 特表2013−527331(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/028467(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/28
A62B 7/10、18/04
B01D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸用保護具内で使用される空気濾過装置であって、
(a)フィルタエレメントを受容するようにそれぞれが構成される複数の小区画を含むハウジングと、
(b)前記ハウジング上の第1の位置に配置される入口と、
(c)前記入口、及び前記小区画のそれぞれと流体連通している上流側通気配分システムと、
(d)それぞれの小区画と流体連通するように位置する下流側通気配分システムと、
(e)前記下流側通気配分システムと流体連通している出口と、
を備え、前記上流側及び/又は下流側の通気配分システムは、それぞれの小区画を通じて実質的に同一の気流速度を生じさせるように構成され、前記ハウジングは、ヘルメットの頭頂空間内に配置されるように長手軸線に沿って湾曲している、空気濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、国防総省との契約、契約第W911SR−09−C−0037号に基づく政府支援で成された。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、各小区画がフィルタエレメントを受容するようになっている複数の小区画を含むハウジングを有する濾過装置に関する。ハウジングは、各ハウジング小区画を通じて同一の気流速度を生じさせるように構成される1つ以上の通気配分システムを有する。
【背景技術】
【0003】
呼吸のための空気を濾過する呼吸用保護具は、汚染された空気が存在する区域において作業する個人により着用されることが多い。呼吸用保護具は、着用者の肺がフィルタを通じて空気を引き込む力を供給する負圧下で動作する(例えば、米国特許第RE35,062号(Brostromら)を参照のこと)場合があるか、又は、ファン又は他の装置がフィルタを通じて周囲空気を推進する正圧を使用して動作する(例えば、米国特許第7,748,381号(Croll他)を参照のこと)場合がある。電動式空気呼吸用保護具(PAPR)は、空気フィルタを通じて周囲空気を推進するのに必要とされるエネルギーを着用者が供給する必要がないのでユーザーにより望まれることが多い。したがって、着用者は、より高い快適さを感じるとともに、節減されたエネルギーを他のタスクに使用することができる。
【0004】
PAPRは、通常は、(i)空気をフィルタに推進する電動モーター及び送風ユニットと、(ii)ユーザーに清浄な空気を送る面体と、(iii)装置に電源を供給するために必要とされるエネルギーを供給するバッテリーパックなど電源と、を有する。公知のPAPRは、様々な構成で組み立てられるが、2つの一般的な種類は、ベルトパックPAPR及びヘルメットPAPRである。ベルトパックPAPRは、通常は、ユーザーの腰に着用される濾過ユニットを有し、一方、ヘルメットPAPRは、ヘルメット内に収容される濾過ユニットを有する。両方のシステムでは、電動ファンが、フィルタカートリッジを通じて空気を推進するか又はホースを通じて空気を引き込んで、面体内部に入れる。ファンはPAPRシステムを通じて空気移動に必要とされる作業を行うので、ユーザーは清浄な空気の供給を容易かつ快適に受けることができる。
【0005】
ヘルメットスタイルのPAPRは、通常は、空気が呼吸のための内部ガス空間に入る前に、支持されたフィルタバッグを使用して空気を濾過する。フィルタバッグホルダは、時には、フィルタ層を分離された状態に保つのに気流のみで十分であるので、フィルタバッグの中心を通じて限定的な支持のみを有するか又は支持を有さない。図1は、一部のヘルメット取付け式の呼吸用保護具内で使用されるフィルタ支持体を示す。フィルタバッグホルダ110は、ヘルメットの頭頂空間内に収まるように円弧状形態で平らなフィルタバッグを支持するように設計される。ホルダ110は、2つの部材112及び114で構成され、小さい方の部材114は、その一端にて2つの部材間の開口部116を設けるように圧縮状態で保持される。両方の部材112及び114は、それぞれ、ホルダ110の長手方向に整列される複数の開口部118及び120を含む。フィルタバッグホルダ110は、主として、フィルタバッグを円弧状形状に維持するように設計される。ヘルメット取付け式のPAPRシステムの例は、米国特許第4,280,491号(Bergら)に開示されている。
【0006】
濾過バッグを円弧状形状に維持する別の製品は、米国特許第6,279,570号(Mittelstadtら)で開示されている。図2に示すように、このフィルタ支持体200は、一般的に装置の長手軸線と一直線をなすリブ210及び220を有する。支持リブ210の一部は、隣り合うリブ220から横方向に偏位している。図3は、濾過バッグ310がどのようにヘルメット300内で支持体200の周りに設置されることができるかを示す。
【0007】
別のPAPRは、国際公開第2011/126884号(Ausen)で説明されている。この装置では、送風装置は、濾過材、及び、フィルタに周囲空気を送るプレナムとともにヘルメット内に設置される。その後、濾過材を出た空気は、別のプレナムに入り、空気は、ヘルメット内で中央に位置する送風アセンブリに引き込まれる。その後、送風アセンブリを通過した後に、濾過空気は、濾過空気出口及び濾過空気通路を通じて着用者に送られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの従来の濾過装置が濾材の有効な支持を行い、かつ、装置を通過する空気の良好な濾過を実証したが、装置は、濾過材を通じる空気の流れの制御には対応していない。そのような流れの制御及び制御可能性がないと、濾過材の特定の部分が、他の部分よりも早く使い尽くされる場合があり、その結果、耐用年数の早期の終了となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ハウジングと、入口と、第1の又は上流側通気配分システムと、第2の又は下流側通気配分システムと、出口と、を含む新しいフィルタカートリッジを提供する。ハウジングは、それぞれがフィルタエレメントを収容するように適しているか又は構成される複数の小区画を含む。入口は、ハウジング上の第1の位置にて配置される。上流側通気配分システムは、入口及び小区画のそれぞれと流体連通している。下流側通気配分システムは、それぞれの小区画と流体連通するように位置し、出口は、下流側通気配分システムと流体連通している。第1及び/又は第2の通気配分システムは、それぞれの小区画を通じて同一の気流速度を生じさせるように構成される。
【0010】
本発明は、それぞれの小区画が同一の気流速度を受けることからフィルタ耐用年数を伸ばすことができるという点において有益である。それぞれフィルタエレメントを類似の容量の気流及び汚染物質に晒すことができ、その結果、どのフィルタエレメントも他のフィルタエレメントの前に耐用年数の終了に実質的に届かない。全体的な製品耐用年数を伸ばすことができる。気流が等しく濾過材の全てを通過することができるのでフィルタ全体の圧力抵抗を最小限に抑えることができ、その結果、(全ての気流が利用可能な濾過材の小さい部分を通じて押される気流分布の問題を有するフィルタと比較して)使用中の濾過材の量が増大する。
【0011】
用語
下記に説明する用語は以下に定義された意味を有する。
「活性粒子」は、収着(吸着及び/又は吸収)、触媒作用及びイオン交換などの何らかの作用又は機能を行うのに特に適している粒子又は細粒を意味する。
「通気配分システム」は、気流を制御するのを手助けする部分又は部分の組み合わせを意味する。
「気流」は、取るに足らない以上の又は測ることができない以上の空気の移動を意味する。
「気流速度」は、基準圧力に対して移動中の空気により示される圧力を意味する。
「基準圧力」は、大気圧にて測定される圧力、又は他の位置への又は他の位置からの気流に共通の、圧力が測定される位置にて測定される圧力を意味する。
「清浄な空気」は、汚染物質を除去するために濾過された周囲空気の塊を意味する。
「汚染物質」は、粒子(埃、ミスト、及び煙霧を含む)及び/又は、通常では粒子(例えば、有機蒸気など)であるとみなすことができないが、周囲空気中に浮遊する場合がある他の物質を意味する。
「頭頂空間」は、着用者の頭部とヘルメットの内側との間の空間を意味する。
「下流側」は、気流が示す基準点より後の時点にて気流内に位置することを意味する。
「呼気」は、人により吐き出される空気を意味する。
「濾過装置」は、空気から汚染物質を除去するように設計される装置を意味する。
「濾過材」又は「フィルタエレメント」は、通過する空気から汚染物質を除去するように設計される通気性材料を意味する。
「流体入口」は、空気が入ることができる区域、表面、又は空間容積を意味する。
「フィルタ層」は、1つ以上の層を含み、かつ、通過する空気から汚染物質を除去するように設計される通気性構造体を意味する。
「流体出口」は、空気が出ることができる区域又は部分を意味する。
「HEPAクラス」及び「高効率粒子空気クラス」は、42 C.F.R.§84(1995年)に定められているようなフィルタ材料の性能を定義する。
「ヘルメット」は、頭部を衝撃から保護することを目的として人の頭部に着用されるようになっている装置を意味する。
「ハウジング」は、全体的であるか、部分的であるかを問わず、別の品目を収納するか又は収容するように作製される部分の構造体又は部分の組み合わせを意味する。
「内部ガス空間」は、清浄な空気を吸入することができる、人の顔の前の空間を意味する。
「長手軸線」は、通常、濾過装置の長手方向に沿って延在する軸線を意味する。
「マニホールド」は、プレナムに又はそこから空気を配分する2つ以上の溝若しくは通路を意味する。
「プレナム」は、空気が2つ以上の位置から流入するか、又は、空気が2つ以上の位置に流れる共通の空間容積を意味する。
「電動式空気呼吸用保護具」つまり「PAPR」は、着用者以外の供給源からエネルギーを用いることにより着用者の上で空気が濾過される場合に着用者に清浄な空気を供給することができる装置を意味する。
「実質的に同一の」は、別のものの10%以内を意味する。
「横軸線」は、長手軸線に全体的に垂直に延在する軸線を意味する。
「上流側」は、気流が示す基準点より前の時点にて気流内に位置することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ヘルメット取付け式の呼吸用保護具において有用な従来技術によるフィルタ支持体110の斜視図である。
図2】公知の濾過バッグを円弧状形状に維持する公知の装置200の斜視図である。
図3】ヘルメット300の領域内に設置された従来技術による濾過装置200の側面図である。
図4】本発明による濾過装置10の斜視図である。
図5】ハウジング12の上半分14が除去されている濾過装置10’の斜視図である。
図6図5の線6−6に沿って切り取られた濾過装置10’の横断面である。
図7】ヘルメット70内に位置決めされた濾過装置10の側面図である。
図8】濾過10’の様々な小区画の圧力を測定するポート90〜96が上部に位置する濾過装置10’の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態は、ハウジングと、入口と、第1の通気配分システムと、第2の通気配分システムと、出口と、を含む濾過装置を提供する。ハウジングは、それぞれの小区画が少なくとも1つのフィルタエレメントを受容するように適合された複数の小区画を含む。入口は、ハウジング上の第1の位置に配置される。第1の通気配分システムは、入口、及び、小区画のそれぞれと流体連通している。第2の通気配分システムは、それぞれの小区画と流体連通するように位置する。出口は、第2の通気配分システムと流体連通している。第1及び/又は第2の通気配分システムは、それぞれの小区画を通じて実質的に同一の気流速度を生じさせるように構成される。これは、そのような実質的に類似の気流速度を達成するように、通気配分システムを構成するプレナム、マニホールド及び/又は(小区画を出入りする)ポートを設計することにより達成することができる。小区画における圧力降下が小さすぎる場合、例えば、小区画に対して出入りするポートの横断面の拡大に関連して、そのような小区画に至る溝若しくは通路を拡大することができる。圧力降下が大きすぎる場合、実質的に同一の気流速度が達成されるように圧力降下を減じるために、逆のことを行うことができる。
【0014】
図4は、吸い込むための清浄な空気をユーザーに供給するために、個人用呼吸保護装置内で使用することができるフィルタカートリッジ10などの濾過装置を示す。濾過装置10は、上部つまり上半分14と下半分の下部16とを有するハウジング12を含む。濾過されるべき空気は、入口18にてハウジング12に入り、出口20にて装置を出る。空気はこのようにして矢印22の方向に装置を通過する。入口18にて装置10に入る空気は、濾過されておらず、一方、出口20にて装置を出る空気は、濾過されている−即ち、装置のユーザーが吸い込むのに安全な清浄な空気である。空気がハウジング内部を通過するとき、空気は、汚染物質を空気流から除去することができる1つ以上のフィルタエレメントを通過する。ハウジング12は、装置がヘルメットの頭頂空間に位置するカートリッジとして使用することができるように、示されるように長手方向寸法において、すなわち横軸線の周りに、湾曲していてもよい。ハウジング12は、ヘルメット内の頭頂空間に更に対応するために長手方向寸法と垂直に、又は長手方向軸線つまり長手方向寸法に沿って、湾曲させることができる。ハウジング12の第1の部分14及び第2の部分16は、中線24にて共に接合される。装置は、望まれる場合には、フィルタエレメントを交換するためにライン24に沿って分離することができる。
【0015】
図5〜6は、湾曲構成ではなく平面構成の濾過装置を示す。これらの図では、ハウジング12の頂部14(図4)が、ハウジング内部、並びに、それぞれ、小区画32、34、及び36に位置するフィルタエレメント26、28、及び30がわかるように除去されている。小区画32、34及び36は、フィルタエレメント26、28及び30がハウジング12内に常駐する画定された区域をもたらす。小区画32、34、及び36は、相互に流体連通していない。ハウジング12に加えて、濾過装置10’は、入口18と、第1のプレナム38と、第2のプレナム40と、出口20と、を含む。第1のプレナムは、入口18、及び小区画32、34、及び36のそれぞれと流体連通している。第2のプレナム40も、それぞれの小区画32、34、及び36と流体連通するように位置する。出口20も、第2のプレナム40と流体連通している。第1及び第2のプレナム38、40及びこれらのプレナムに関連する空気マニホールドは、それぞれの小区画32、34、及び36を通じて同一の気流速度を生じさせるように構成される。入口18から第1のプレナム38に入る空気は、3つの小区画32、34、及び36のうちの1つに向かって3つの異なる方向のうちの1つの方向を通過する。空気は、第1の端部42の小区画32の開口部つまりポート41を通じて第1の小区画32に進むことができる。小区画32の開口部は、小区画側壁44及び46及びハウジング12の上半分14(図4)により第1の端部42に形成される。第2のフィルタエレメント28及び第3のフィルタエレメント30に通じる周囲空気は、気流の線51及び53により示されているように、それぞれ、上部溝48及び50を通じて、フィルタエレメント28及び30に進むことができる。第1の小区画32の第1の端部42にて開口部41を通過する空気は、第1のフィルタエレメント26の面56を通過し、第2の小区画34の開口部54を通過する空気は、第2のフィルタエレメント28の面58を通過し、第3の小区画36の開口部59を通過する空気は、第3のフィルタエレメント30の面60を通過する。濾過された後に第2及び第3の小区画を出る空気は、プレナム40に入るために、それぞれ、通路52及び開口部61を通過する。
【0016】
図6は、特に、それぞれの小区画が第1及び第2のフィルタエレメントを収容することができることを示す。例示する中央小区画34は、例えば、対向するフィルタエレメント28及び62を収容する。先述したように上部溝48を通ってフィルタエレメント28に到着する空気と同様に、下部溝64を通ってフィルタエレメント62に空気が到着する。それぞれのフィルタエレメント28及び62は、空気がより良好に濾過材を通過することを可能にするために小区画に入る空気に対して傾斜される。フィルタエレメント28及び62を通過する空気は、プレナム64に入り、その後、通路52を通過し、その後、出口ポート66(図5)に導かれて、プレナム40に入る。小区画32(図5)内の空気は、同様に、対向するフィルタエレメントを通過して、中央プレナムに入り、その後、通路68内に導かれる。空気流の分割流は、分割流濾過装置という名称の米国特許出願第USSN 13/310、881号(Billingsleyら)で説明されているように実施することができる。本発明の濾過装置は3つの小区画を付して示されているが、装置は、2個、3個、4個、5〜10個、20個又はそれ以上の小区画を有するように構成され得る。それぞれの小区画を通過する気流速度は、実質的に同一の、好ましくはお互いの約5%以内である。
【0017】
図7は、PAPR72のヘルメット70の頭頂空間内で使用される本発明による湾曲濾過装置10の実施例を示す。濾過装置10を出る清浄な空気74は、清浄な空気を着用者が吸い込むことができるヘルメット70の内部ガス空間76に入る。大気が導管78を通じて装置10の流体入口18に供給される。送風装置80が、濾過されてない空気82を導管78を通して本発明の濾過装置10に推進するか又は強制的に推し進める。送風装置80には、受動態化を示すことができる(米国特許第,7,947,109号(Sayersら)を参照のこと)電池などの適切な電源により動作的に電源を供給することができる。送風装置80は、着用者により着用されるベルト上に位置決めすることができる。外部環境から隔離させることもできる(米国特許第6,796,304号(Odellら)を参照、米国特許第6,823,867号(Averyら)も参照のこと)。気流を呼吸用保護具システムにおいて較正することができ(米国特許第6,666,209号(Bennettら)を参照のこと)、並びに、その他の方法で管理することができる(米国特許第7,197,774号(Curranら)を参照のこと)。気流が所定値を下回った場合にはフローインジケータを使用して着用者に警告することができる。空気が複数の小区画を通過するので、より多くの表面積が濾過に利用可能であり、その結果、圧力降下が装置10全体にわたって減じられる。より小さい圧力降下は、周囲空気を推進して濾過材に通すために必要とされるエネルギーが少なくなることを意味する。更に、表面積の増大は、濾過材の孔が様々な汚染物質で詰まるのにもっと長い時間が掛かると考えられることから濾過材の耐用年数を伸ばすことがあり得る。ヘルメットは、例えば、ヘッドサスペンションシステム(米国特許第6,367,085号(Berg))を有する溶接用ヘルメット−例えば、米国特許第6,934,967号(Miyashitaら)及び米国特許第7,637,622号(Magnussonら)を参照のこと−とすることができる。本発明は、フード付き装置において使用することができる(米国特許第7,104,264号(Leeら)を参照のこと)。
【0018】
通気配分システムのプレナム及びマニホールドは、ハウジング並びに第1、第2、第3、及び他の小区画の形状及び構成により形成することができる。プレナムは、装置全体に対する構造をもたらすことを手助けする物理的構造を含むことができ、マニホールドは、2つ以上の独立して作用する濾過材収容用小区画に向う2つ以上のフローストリームに流体フローを分割するのを手助けする溝及び通路を形成するために使用される物理的構造を含むことができる。
【0019】
ハウジングは、様々な材料から様々な形状に作製することができる。ハウジングを作製することができる材料の例としては、プラスチック、金属、圧縮された又は接合された繊維複合構造体が挙げられる。使用される材料及び結果として得られるデバイスの所望の構造によって、ハウジングは、射出成形、真空成形、ダイス切断、高速プロトタイピング、3次元コンピュータ支援製造、打抜加工、ダイス押出及び鋳造を含む、様々な技法により作製することができる。ハウジングは、ロールをベースとした製品とすることもできる(例えば、米国特許出願第12/784,182号(Billingsleyら)を参照のこと)。ハウジング及び小区画の構造は、お互い及び全体的な構造に対するフィルタ層の位置を画定することができる。
【0020】
本発明に関連して使用されるフィルタエレメントは、粒状濾過材及び/又はガス濾過材の1つ以上の層を含むことができる。粒状濾過材は、周囲空気中に浮遊する粒子を除去するために作製され、ガス濾過材は、中で浮遊している蒸気を除去するために作製される。濾過層は、様々な形状及び形態があり得、呼吸用保護具用途については、約0.2ミリメートル(mm)〜2センチメートル(cm)又は0.5〜1.5cmの厚さを有することができ、かつ、全体的に平面フィルタとすることができるか、又は、表面積を拡張させるために波形とすることができる(例えば、米国特許第5,804,295号及び同第5,656,368号(Braunら)を参照のこと)。それぞれの濾過層は、接着剤又は任意の他の手段により共に接合された複数の濾過層を含むこともできる。フィルタ層は、米国特許第6,752,889号及び同第6,280,824号(Insleyら)で説明されているように、並行の溝を含むことができる。濾過材は、HEPAクラスフィルタとすることもできる。濾過層を形成することが既知である(又は後に作製される)本質的にあらゆる好適な材料が、濾材に使用され得る。特に持続的な帯電(エレクトレット)形態であるときの、Van A.Wente著、Superfine Thermoplastic Fibers,48 Indus.Engn.Chem.,1342 et seq.(1956)において教示されたものなど、メルトブローン繊維の織物は、特に有用である(例えば、米国特許第4,215,682号(Kubikら)を参照のこと)。これらのメルトブローン繊維は、約20マイクロメートル(μm)未満の有効な繊維直径を有するマイクロファイバ(「ブローンマイクロファイバ」の代わりにBMFという)とすることができる。有効な繊維直径は、Davies,C.N.,The Separation Of Airborne Dust Particles,Institution Of Mechanical Engineers,London,Proceedings 1B,1952に従って決定され得る。ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)及びその組み合わせで形成された繊維を含むBMFウェブが、一般に使用されている。米国特許第Re 31,285号(van Turnhout)で教示されているような帯電解繊(electrically charged fibrillated-film)繊維、並びに、樹脂ウール繊維ウェブ及びガラス繊維ウェブ、もしくは、特にマイクロフィルムの形の原液ブロー(solution-blown)又は静電噴霧繊維も適切とすることができる。電荷は、米国特許第6,824,718号(Eitzmanら)、同第6,783,574号(Angadjivandら)、同第6,743,464号(Insleyら)、同第6,454,986号及び同第6,406,657号(Eitzmanら)、並びに同第6,375,886号及び同第5,496,507号(Angadjivandら)に開示されているように、繊維を水と接触させることにより、繊維に付与することができる。電荷はまた、米国特許第4,588,537号(Klasseら)に開示されているようなコロナ帯電により、又は、同第4,798,850号(Brown)に開示されているような摩擦帯電(tribocharging)により、繊維に付与されてもよい。また、水帯電(hydro-charging)プロセスを通して製造されるウェブの濾過性能を高めるために、添加剤を繊維に含むことができる(米国特許第5,908,598号(Rousseauら)を参照のこと)。特に、フッ素原子はフィルタ層の繊維表面に配置され得、油性ミスト環境での濾過性能を改善することができる(Jonesらの米国特許第6,398,847 B1号、同第6,397,458 B1号、同第6,409,806 B1号を参照)。エレクトレットBMFフィルタ層の典型的な坪量は、1平方メートルあたり約10〜100グラムである。活性粒子の充填層が、例えば、PSA微粒子(米国特許第6,391,429号(Senkusら)を参照のこと)とともに保持される活性粒子の、又は、米国特許第5,033,465号(Braunら)で説明されているような接合吸着粒子の、浸透性の成形構造体として使用することもできる。活性粒子を含む繊維マトリクスの実施例は、米国特許出願第2005/0169820(A1)号に示されている。吸着粒子をウェブ内で網目に絡ませることができ、典型的には、ウェブ内に少なくとも約60重量パーセントの吸着粒子がある。粒子含有ウェブに使用される繊維は、典型的には、同様の繊維より十分に大きい結晶化収縮率を有する。それらの繊維は典型的にはポリプロピレンを含み、吸着粒子は典型的にはウェブが少なくとも1.6×10/ミリメートル(mm)の水の吸着係数を有するようにウェブ内で均一に分布される。多孔質シート物品は、小さい圧力低下を呈し、長い有効寿命を有し、その吸着係数Aは充填層炭素のそれを上回る。吸着係数Aは、Wood、Journal Of The American Industrial Hygiene Association,55(1):11〜15(1994)に記載されているものと同様のパラメータ又は測定値を使用して計算することができる。吸着係数Aに関する更なる情報は、このパラグラフにおいて先に引用した米国特許出願に見ることができる。本発明のフィルタ内で使用することができる活性粒子は、反応、触媒作用及びイオン交換などの化学変化特性及び/又は大きな表面積、気孔及び相対的に小さいサイズ及び形状などの物理特性を含め、何らかの特徴又は特性に起因する何らかの作用又は機能を行うのに適している粒子又は細粒を含む。活性粒子の1つの実施例は、組成物を除去するか又は変えるために流体中の成分と相互作用する粒子である。流体内の成分は活性粒子上に若しくは活性粒子内に吸着され得るか、又は反応することによってそれらの組成物の有害性を減らすことができる。したがって、活性粒子は吸着性、触媒性、又は反応性である場合がある。発明との関係において使用可能な活性粒子材料の例としては、活性炭、化学的に表面処理された活性炭、アルミナ、シリカゲル、ベントナイト、カオリンケイソウ土、粉末状ゼオライト(天然及び合成)、イオン交換樹脂及びモレキュラーシーブのような吸着性微粒子顆粒、触媒粒子のような粒子、及びカプセル化化合物含有粒子が挙げられる。一般的な活性粒子としては、活性炭、化学処理された炭素、及びアルミナ粒子が挙げられる。本発明に使用可能な市販の活性炭の例としては、Kuraray 12×20型GG(Kuraray Chemical Corporation,Osaka,Japanより入手可能)及びCalgon 12×30 URC(Calgon Carbon Corporation,Pittsburgh,PA)より入手可能)が挙げられる。本発明において使用することができる様々な種類の活性粒子を説明している特許としては、米国特許第7,309,513号(Breyら)、同第7,004,990号及び第6,391,429号(Senkusら)、同第6,767,860号(Hernら)、同第5,763,078号(Braunら)、及び同第5,496,785号(Abler)が挙げられる。
【0021】
溶接ヘルメット及びPAPRのような個人用呼吸保護装置に関連した使用について本発明を説明及び図示してきたが、本発明は、建物及びテントのような集合的な保護システム又は設備と共に使用することもできる。そのような実例では、複数の同調された濾過装置、又は、そのような装置のスタックを使用して、空気が建物又は設備に入る前に空気を濾過することができ、例えば、米国特許第7,995,570号(Insleyら)を参照のこと。
【実施例】
【0022】
気流テスト
フィルタの小区画を通過する気流速度が実質的に等しいことを確認するために、フィルタの小区画と大気圧との差圧を測定する。大気圧が使用されない場合、基準又は基礎圧力では、小区画のサブセットでなくフィルタ気流の全ての空気速度を測定しなければならない。圧力測定は、小区画における濾過材の有無を問わず行うことができる。濾過材が測定中に小区画に位置する場合、使用する濾過材は、本発明に関係する小区画のそれぞれにおいて本質的に同一でなければならない。測定対象外の小区画の圧力測定ポートは、栓をしなければならない。基準値とそれぞれの小区画との差を記録する。
【0023】
空気フィルタの構造
図5〜6を参照して図示及び説明した濾過装置と同様に3つの小区画に位置する6つのフィルタエレメントを収容するフィルタハウジングを設計して作製した。3つの小区画のそれぞれの通気配分システムを、それぞれの小区画が小区画に至りかつ小区画から離れる等しい気流を有するように設計した。圧力測定ポート90、92、及び94を、それぞれ、3つの小区画のそれぞれに設置し、並びに、ポート96を図8に示すようにフィルタの出口プレナムに設置した。ポート96では基準圧力を測定した。それぞれの小区画において使用されたフィルタエレメントは、ガス汚染物質を濾過するために粒子濾過材及び炭素充填ウェブを含むものであった。使用された濾過材は、米国特許出願第2005/0169820(A1)号(Tatarchukら)で説明されている。この濾過材は、測定可能な気流抵抗を示し、かつ、マイクロファイバのマトリクス内に混入された活性粒子を含むものであった。
【0024】
25リットル/分の空気をフィルタハウジング12に通した。Extech 755携帯用デバイスを使用して、気流テストに従って出口96と小区画90〜94のそれぞれとの間の圧力差を測定した。3つの区画間の圧力測定結果が、以下の表1に示されている。
【0025】
【表1】
【0026】
表1のデータは、それぞれのフィルタリング小区画において測定された圧力が他の小区画と同様であることを示す。したがって、濾過装置の3つの小区画のそれぞれを通過する相対的な気流速度は、実質的に同一である。同様の気流速度を有するので、この濾過装置であれば、サービスの拡大の利点を示すことが予想される。
【0027】
本発明には、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な改変及び変更を行うことができる。したがって本発明は上記の記載によって限定されるものではないが、以下の「特許請求の範囲」及びそのあらゆる均等物において記載される限定条件によって規制されるものである。
【0028】
更に本発明は、ここに具体的に開示されていない要素がなくとも適切に実施可能であり得る。
【0029】
上記に引用したすべての特許及び特許出願を、「背景技術」の項において引用したものを含め、その全容にわたって本文書に援用するものである。そのような組み込まれる文献の開示と上記明細書との間に不一致又は矛盾がある限りにおいては、上記明細書が優先する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8