(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6170648
(24)【登録日】2017年7月7日
(45)【発行日】2017年7月26日
(54)【発明の名称】昇圧システム、及び気体の昇圧方法
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20170713BHJP
F04C 29/04 20060101ALI20170713BHJP
F04D 27/00 20060101ALI20170713BHJP
F25B 19/00 20060101ALI20170713BHJP
B01J 3/00 20060101ALI20170713BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20170713BHJP
【FI】
F04B49/06 331Z
F04C29/04 N
F04D27/00 Z
F25B19/00 Z
B01J3/00 A
B01J19/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-528590(P2017-528590)
(86)(22)【出願日】2016年9月14日
(86)【国際出願番号】JP2016077083
【審査請求日】2017年5月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】永尾 英樹
(72)【発明者】
【氏名】米村 直人
【審査官】
冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5826265(JP,B2)
【文献】
国際公開第2015/107615(WO,A1)
【文献】
特表2013−519864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
B01J 3/00
B01J 19/00
F04C 29/04
F04D 27/00
F25B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を臨界圧力より高圧の目標圧力に圧縮する複数段の圧縮機と、
前記複数段の圧縮機の段間で、前段の圧縮機から吐出された前記気体を冷却する中間クーラと、
最終段の圧縮機と該最終段の前段の圧縮機との段間で、前記気体を冷却するサブクーラと、
前記最終段の圧縮機の入口に接続され、前記最終段の圧縮機の入口での前記気体を抽気し、前記サブクーラに冷媒として供給するバイパスラインと、
前記バイパスラインに設けられて、抽気された前記気体を前記サブクーラの上流で減圧する流量調整弁と、
前記最終段の圧縮機の入口での前記気体の温度及び圧力のうちの少なくとも一方が一定となるように、前記流量調整弁の開度を調節する制御部と、
を備える昇圧システム。
【請求項2】
前記バイパスラインは、前記最終段の圧縮機の入口と、前記最終段の前段の圧縮機の入口とを接続し、
前記制御部は、前記最終段の前段の圧縮機でのサージングの発生を抑制するように、前記流量調整弁の開度を調節する請求項1に記載の昇圧システム。
【請求項3】
前記最終段の圧縮機の入口での前記気体の温度及び圧力のうちの少なくとも一方を計測するセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記センサの計測値に基づいて前記流量調整弁の開度を調節する請求項1又は2に記載の昇圧システム。
【請求項4】
前記最終段の圧縮機の出口と前記サブクーラの入口とを接続して、前記最終段の圧縮機の出口からの前記気体を、前記サブクーラを介して前記最終段の圧縮機の入口に供給可能とするリサイクルラインをさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載の昇圧システム。
【請求項5】
気体が臨界圧力より高圧の目標圧力となるように、前記気体の圧縮と冷却とを段階的に繰り返す圧縮冷却工程と、
前記圧縮冷却工程における前記気体の最後の圧縮の前に、前記気体をさらに冷却可能なサブクーリング工程と、
前記圧縮冷却工程における最後の圧縮の前に、前記気体を抽気して減圧し、前記サブクーリング工程での前記気体を冷却する冷媒として用いる抽気工程と、
前記圧縮冷却工程における最後の圧縮の直前の前記気体の温度及び圧力のうちの少なくとも一方が一定となるように、前記抽気工程で抽気される前記気体の流量を調整する流量調整工程と、
を含む気体の昇圧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体の昇圧を行う昇圧システム、及び昇圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇圧システムは、対象となる気体を目標圧力まで昇圧する装置である。
近年、温室効果ガスとして知られる二酸化炭素の排出量増大によって地球温暖化等の問題が顕在化してきている。特に火力発電所の排気ガスには大量の二酸化炭素が含まれており、この二酸化炭素を分離・回収した後に、昇圧システムによって昇圧し、地中や海底へ貯留することで大気中の二酸化炭素を低減する技術が知られている。
【0003】
より具体的には、昇圧システムでは、多段に設けられた圧縮機及び中間冷却器によって二酸化炭素の圧縮と冷却を繰り返し行い、臨界圧力以上、かつ、臨界温度以上の状態となった二酸化炭素を、その後さらに冷却等することで、輸送及び貯留に最適な温度及び圧力の二酸化炭素を得ている。
【0004】
ここで特許文献1に開示された昇圧システムでは、臨界圧力以上の状態となった二酸化炭素(中間超臨界圧液体)の一部を、ポンプ部の手前で抽出して臨界圧力近傍まで減圧し、自ガスである二酸化炭素の冷却に冷媒として用いている。特許文献1に開示された昇圧システムでは、このように自ガスを冷媒として用いることで、一般的な冷却器(シェルアンドチューブ型の熱交換器)のみを用いて二酸化炭素を冷却する場合に比べて、さらにポンプ部での昇圧に適した臨界温度近傍まで二酸化炭素を冷却できるので、昇圧に要する動力(ヘッド)を低減することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5826265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最終的に必要な二酸化炭素の圧力が10[MPa]程度であれば、上記特許文献1の昇圧システムに開示されたようなポンプを最終の昇圧段で用いることなく、圧縮機のみで二酸化炭素の昇圧を行うことが可能である。この場合、一般的に圧縮機の最終段入口は臨界圧力以上の状態となるので、臨界圧力以上かつ、臨界温度近傍の領域は物性変化しやすい領域のため、安定した圧縮機での昇圧を可能とするためには、最終段の圧縮機に供給する二酸化炭素は物性変化しやすい領域(遷移域)を避けて、ある一定温度以上(例えば60℃以上)でなければならない。
しかしながら、特許文献1のように中間冷却器で冷却後、さらに自ガスを冷媒として用いて二酸化炭素を冷却した場合、二酸化炭素の温度が下がりすぎ、温度が上記の遷移域に入り、圧縮機での圧縮に適さない状態となってしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、超臨界圧力の気体を十分に、かつ、安定して冷却し、冷却後に圧縮機での圧縮に適した状態の気体を得ることが可能な昇圧システム、及び気体の昇圧方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に係る昇圧システムは、気体を臨界圧力より高圧の目標圧力に圧縮する複数段の圧縮機と、前記複数段の圧縮機の段間で、前段の圧縮機から吐出された前記気体を冷却する中間クーラと、最終段の圧縮機と該最終段の前段の圧縮機との段間で、前記気体を冷却するサブクーラと、前記最終段の圧縮機の入口に接続され、前記最終段の圧縮機の入口での前記気体を抽気し、前記サブクーラに冷媒として供給するバイパスラインと、前記バイパスラインに設けられて、抽気された前記気体を前記サブクーラの上流で減圧する流量調整弁と、前記最終段の圧縮機の入口での前記気体の温度及び圧力のうちの少なくとも一方が一定となるように、前記流量調整弁の開度を調節する制御部と、を備えている。
【0009】
サブクーラとバイパスラインとを設け、最終段の圧縮機の入口から抽気して減圧した気体をサブクーラで冷媒として用い、制御部でバイパスラインに設けられた流量調整弁の開度を調節することで、自ガスのフラッシュガスによって最終段の圧縮機の入口へ供給する気体の温度及び圧力の少なくとも一方を調整することができる。このため、中間クーラの冷媒温度が外気温度等の外的要因などの影響により変化し、中間クーラで冷却された気体の温度が変化した場合や、その結果、圧力が変化した場合にも、最終段の圧縮機の入口へ供給する気体の温度及び圧力のうちの少なくとも一方を一定に保つことが容易となる。よって、気体の大きな物性の変化を抑え、気体を十分に、かつ、安定して冷却することが可能である。よって、大きく物性変化しやすい領域を避けて、例えば従来は中間冷却器で60℃までしか冷却していなかった気体を、本発明では40℃まで冷却することが可能となり、最終段の圧縮機で昇圧する際の動力(ヘッド)を低減できる。
【0010】
本発明の第二の態様に係る昇圧システムでは、上記第一の態様における前記バイパスラインは、前記最終段の圧縮機の入口と、前記最終段の前段の圧縮機の入口とを接続し、前記制御部は、前記最終段の前段の圧縮機でのサージングの発生を抑制するように、前記流量調整弁の開度を調節してもよい。
【0011】
最終段の前段の圧縮機で圧縮された気体は、バイパスラインを通して該最終段の前段の圧縮機の入口に戻る。このため、バイパスラインはリサイクルラインとなり、バイパスラインの流量調整弁の開度を調節することで、流量調整弁を最終段の前段の圧縮機でのサージングの発生を抑制するためのアンチサージ弁として使用できる。
また、流量調節弁の下流のサブクーラ(冷媒側)は、流量調整弁で減圧して低温となった気体を加熱した状態で、該最終段の前段の圧縮機へ供給することができる。よって、サブクーラをリサイクルガス(バイパスラインを流通する気体)のリサイクルヒータとして用いることができる。このため、リサイクルガスを加熱するために別途のリサイクルヒータを設けることなく、該最終段の前段の圧縮機に供給する気体を加熱し、サージングを回避するためのリサイクル運転ができる。
【0012】
本発明の第三の態様に係る昇圧システムでは、上記第一又は第二の態様における昇圧システムが前記最終段の圧縮機の入口での前記気体の温度及び圧力のうちの少なくとも一方を計測するセンサをさらに備え、前記制御部は、前記センサの計測値に基づいて前記流量調整弁の開度を調節してもよい。
【0013】
このようなセンサの計測値を基に流量調整弁の開度を調節することができるため、最終段の圧縮機の入口へ供給する気体の温度及び圧力のうちの少なくとも一方を一定に保ち、気体の大きな物性変化を回避できる。
【0014】
本発明の第四の態様に係る昇圧システムでは、上記第一から第三の態様のいずれかの態様における昇圧システムが、前記最終段の圧縮機の出口と前記サブクーラの入口とを接続して、前記最終段の圧縮機の出口からの前記気体を、前記サブクーラを介して前記最終段の圧縮機の入口に供給可能とするリサイクルラインをさらに備えていてもよい。
【0015】
このようなリサイクルラインが設けられていることで、最終段の圧縮機で圧縮された気体をリサイクルガスとして最終段の圧縮機の入口へ戻すことで、最終段の圧縮機を流通する気体の流量を増大させることができる。よって最終段の圧縮機でサージングの発生を抑制することが可能である。またリサイクルラインを通じて、最終段の圧縮機で圧縮された気体をサブクーラを介して最終段の圧縮機の入口へ戻すことで、リサイクルラインからの気体をサブクーラで冷却した状態で、最終段の圧縮機に供給することができる。よって、サブクーラをリサイクルガスのリサイクルクーラとして用いることができる。このため、リサイクルガスを冷却するために別途のリサイクルクーラを設けることなく、最終段の圧縮機に供給する気体を冷却し、サージングを回避するためのリサイクル運転ができる。
【0016】
本発明の第五の態様に係る気体の昇圧方法は、気体が臨界圧力より高圧の目標圧力となるように、前記気体の圧縮と冷却とを段階的に繰り返す圧縮冷却工程と、前記圧縮冷却工程における前記気体の最後の圧縮の前に、前記気体をさらに冷却可能なサブクーリング工程と、前記圧縮冷却工程における最後の圧縮の前に、前記気体を抽気して減圧し、前記サブクーリング工程での前記気体を冷却する冷媒として用いる抽気工程と、前記圧縮冷却工程における最後の圧縮の直前の前記気体の温度及び圧力のうちの少なくとも一方が一定となるように、前記抽気工程で抽気される前記気体の流量を調整する流量調整工程と、を含んでいる。
【0017】
最終段の圧縮機の入口から抽気して減圧した気体をサブクーリング工程で冷媒として用い、流量調整工程を実行することで、自ガスのフラッシュガスによって最終段の圧縮機の入口へ供給する気体の温度及び圧力のうちの少なくとも一方を一定に調整することができる。このため、最終段の圧縮機の入口へ供給する気体を十分に、かつ、安定して冷却することが可能である。よって最終段の圧縮機で昇圧する際の動力(ヘッド)を低減できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の昇圧システム及び気体の昇圧方法によれば、超臨界圧力の気体を十分に、かつ、安定して冷却でき、冷却後に圧縮機での圧縮に適した状態の気体を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る昇圧システムの概略を示す系統図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る昇圧システムで昇圧される二酸化炭素の状態を示すP−h線図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る昇圧システムを用いた昇圧方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る昇圧システム1について説明する。本実施形態の昇圧システム1は、地中や海底へ貯留可能となるように気体の二酸化炭素Fを所定の圧力、温度まで昇圧するギアド圧縮機である。このギアド圧縮機は、複数のインペラを、歯車を介して連動させた多軸多段構成の圧縮機である。
【0021】
図1に示すように、昇圧システム1は、気体の二酸化炭素Fを取り込んで圧縮する複数段に設けられた圧縮機2と、圧縮機2の段間に設けられた中間クーラ4と、最終段の圧縮機2と最終段の前段の圧縮機2との段間に設けられたサブクーラ5をと備えている。
また、昇圧システム1は、最終段の圧縮機2の入口と、サブクーラ5とを接続するバイパスライン6と、バイパスライン6に設けられた流量調整弁7と、流量調整弁7の開度を調節する制御部8とを備えている。
【0022】
本実施形態では七段の圧縮機2が設けられている。即ち、低段側から高段側に向かって第一段圧縮機11、第二段圧縮機12、第三段圧縮機13、第四段圧縮機14、第五段圧縮機15、第六段圧縮機16(最終段の前段の圧縮機2)、及び第七段圧縮機17(最終段の圧縮機2)が設けられている。各々の圧縮機2は気体を回転によって圧縮するインペラを有している。
【0023】
本実施形態では、第二段圧縮機12と第三段圧縮機13とが組となって同軸に設けられ、第四段圧縮機14と第五段圧縮機15とが組となって同軸に設けられ、第六段圧縮機16と第七段圧縮機17とが組となって同軸に設けられている。そして第一段圧縮機11の軸と、上記各々の組の軸とが歯車10を介して接続されている。
【0024】
中間クーラ4は、圧縮機2同士の段間を接続する管路9に一ずつ設けられている。中間クーラ4は、本実施形態では全ての圧縮機2の段間に設けられている。即ち、中間クーラ4は、低段側から高段側に向かって、管路9aに設けられた第一中間クーラ21、管路9bに設けられた第二中間クーラ22、管路9cに設けられた第三中間クーラ23、管路9dに設けられた第四中間クーラ24、管路9eに設けられた第五中間クーラ25、及び管路9fに設けられた第六中間クーラ26である。
【0025】
各々の中間クーラ4は、例えば、シェルアンドチューブ型の熱交換器である。
中間クーラ4では、冷媒として冷却水が使用される。各々の中間クーラ4は、前段の圧縮機2から吐出された二酸化炭素Fを冷却し、後段の圧縮機2に供給する。
【0026】
このような複数段の圧縮機2と中間クーラ4とによって、第一段圧縮機11に吸い込んだ二酸化炭素Fを、臨界圧力の7.4[MPa]よりも高圧の目標圧力となるように圧縮して昇圧する。本実施形態では、第六段圧縮機16によって臨界圧力以上の圧力に昇圧され、その後さらに、第七段圧縮機17によって目標圧力となる例えば12[MPa]程度まで昇圧される。
【0027】
サブクーラ5は、第六段圧縮機16と第七段圧縮機17との間を接続する管路9fに、第六中間クーラ26の出口と、第七段圧縮機17の入口との間に設けられている。サブクーラ5は、例えば複数のプレートが積層されたいわゆるマルチチャンネルプレート型の熱交換器が用いられる。このような熱交換器は、冷媒が流通する流路が形成されたプレートと、被冷却流体(本実施形態では二酸化炭素F)が流通する流路が形成されたプレートとが交互に積層された構造を有している。
【0028】
バイパスライン6の一端は、第六段圧縮機16と第七段圧縮機17とを接続する管路9fに接続されている。より具体的には、この一端は、第七段圧縮機17の入口とサブクーラ5の出口との間で、管路9fに接続されている。
【0029】
バイパスライン6の他端は、第五段圧縮機15と第六段圧縮機16とを接続する管路9eに接続されている。より具体的には、この他端は、第六段圧縮機16の入口と、第五中間クーラ25の出口との間で、管路9eに接続されている。また、バイパスライン6はサブクーラ5を通過するようにサブクーラ5にも接続されている。バイパスライン6は第七段圧縮機17の入口での二酸化炭素Fを抽気して、この抽気した二酸化炭素Fを冷媒として、サブクーラ5に供給可能となっている。
【0030】
流量調整弁7は、バイパスライン6の一端と、サブクーラ5との間に設けられている。流量調整弁7の開度が調節されることによって、第七段圧縮機17の入口から抽気された二酸化炭素Fがジュールトムソン効果によって減圧され、低温の冷媒が生成される。本実施形態では、二酸化炭素Fは臨界圧力以下の5[MPa]程度まで減圧される。そして、減圧された二酸化炭素Fは、サブクーラ5において、第六段圧縮機16と第七段圧縮機17とを接続する管路9fを流通する二酸化炭素Fとの間で熱交換を行った後、第五段圧縮機15と第六段圧縮機16とを接続する管路9e内の相当圧力の位置で、この管路9eにバイパスライン6の他端から流入するようになっている(
図2の破線参照)。
【0031】
制御部8は、第七段圧縮機17の入口での二酸化炭素Fの温度及び圧力のうちの少なくとも一方が一定となるように流量調整弁7の開度を調整し、バイパスライン6を流通する二酸化炭素F、即ち、サブクーラ5での冷媒の流量を調整する。
【0032】
ここで、バイパスライン6の一端と、第七段圧縮機17の入口との間で、管路9fには温度センサ31、及び圧力センサ32の少なくとも一方が設けられている。そして温度センサ31で計測した温度の計測値(又は、圧力センサ32で計測した圧力の計測値)に基づいて制御部8が流量調整弁7の開度を調整する。
【0033】
本実施形態では、昇圧システム1は、さらに、第五段圧縮機15と第六段圧縮機16とを接続する管路9eに設けられたディハイドレータ41と、第一段圧縮機11の入口に設けられた一段インレットガイドベーン51と、第六段圧縮機16の入口に設けられた六段インレットガイドベーン52と、第五段圧縮機15の出口と第一段圧縮機11の入口とを接続する低段側リサイクルライン61と、第七段圧縮機17の出口と第六段圧縮機16の入口を接続する高段側リサイクルライン62と、第七段圧縮機17の出口に設けられたアフタークーラ71とを備えている。
【0034】
ディハイドレータ41は、第五中間クーラ25の出口と第六段圧縮機16の入口との間に設けられて、管路9eを流通する二酸化炭素Fの除湿を行う。
【0035】
一段インレットガイドベーン51は、第一段圧縮機11の入口に設けられて、第一段圧縮機11へ供給される二酸化炭素Fの流量を調整する。六段インレットガイドベーン52は、第六段圧縮機16の入口に設けられて、第六段圧縮機16へ供給される二酸化炭素Fの流量を調整する。六段インレットガイドベーン52は、第六段圧縮機16とディハイドレータ41との間に配置されている。
【0036】
低段側リサイクルライン61の一端は第五段圧縮機15の出口であって、かつ、第五中間クーラ25の出口に接続されている。低段側リサイクルライン61の他端は第一段圧縮機11の入口であって、一段インレットガイドベーン51の入口に接続されている。
【0037】
低段側リサイクルライン61には調整弁63が設けられている。調整弁63の開度が調整されることで、低段側リサイクルライン61を通じて第五中間クーラ25の出口から第一段圧縮機11の入口に向かって流通する二酸化炭素F、即ち、リサイクルガスの流量が調整される。
【0038】
高段側リサイクルライン62の一端は第七段圧縮機17の出口に接続されている。高段側リサイクルライン62の他端は第六段圧縮機16の出口であって、第六中間クーラ26の出口で、かつ、サブクーラ5の入口で管路9fに接続されている。高段側リサイクルライン62には調整弁64が設けられている。調整弁64の開度が調整されることで、高段側リサイクルライン62を通じて第七段圧縮機17の出口からサブクーラ5の入口に向かって流通する二酸化炭素F、即ち、リサイクルガスの流量が調整される。
【0039】
アフタークーラ71は、第七段圧縮機17の出口であって、高段側リサイクルライン62の一端よりも下流側に設けられている。アフタークーラ71は、第七段圧縮機17から吐出された二酸化炭素Fをさらに冷却する。本実施形態では、第七段圧縮機17から吐出された二酸化炭素Fは臨界温度(31.1[℃])よりも高い40〔℃〕程度まで冷却される。
【0040】
次に、
図2のP−h線図を参照して、二酸化炭素Fの状態変化の様子、及び二酸化炭素Fの昇圧方法について説明する。
【0041】
第一段圧縮機11に導入された二酸化炭素F(状態1S)は、第一段圧縮機11によって圧縮されて状態1Sよりも高圧で、かつ高温の状態1Dとなる。その後、第一中間クーラ21によって等圧で冷却されて状態2Sとなる。そして二酸化炭素Fは、圧縮機2と中間クーラ4とによって圧縮と冷却を繰り返して、状態2S→状態2D→状態3S→状態3D→状態4S→状態4D→状態5S→状態5D→状態6S→状態6Dと変化する。そして、二酸化炭素Fの圧力は第六段圧縮機16によって臨界圧力以上となる(圧縮冷却工程ST1)。
【0042】
状態6Dとなった二酸化炭素Fは、その後、第六中間クーラ26とサブクーラ5とに順に流入して、状態Xを経て40〔℃〕程度まで等圧で冷却され、状態7Sとなる(圧縮冷却工程ST1、サブクーリング工程ST2)。即ち、二酸化炭素Fはサブクーラ5へ供給されることで一定の温度(一定の圧力)となるように、ある設定値(本実施形態では40〔℃〕程度)に一定に保たれるように制御され、状態7Sとなる。
状態Xは、超臨界圧力、かつ超臨界温度の二酸化炭素のうち、物性が安定な領域のうちの最も物性が不安定な線Z上に位置している。線Zから
図2の紙面に向かって右側へ離れる程(温度が高いほど)、物性が安定している。
【0043】
サブクーラ5で冷却されて状態7Sとなった二酸化炭素Fの一部は、バイパスライン6によって抽気されて減圧され、状態6Sと同等の圧力(本実施形態では5[MPa]程度)で、かつ、状態6Sよりも低温の状態Yの二酸化炭素Fとなる。この二酸化炭素Fはサブクーラ5で冷媒に用いられることで昇温し、状態6Sと同等の圧力、及び温度となって、第六段圧縮機16の入口で管路9e内の二酸化炭素Fと合流する(抽気工程ST3)。
【0044】
また抽気工程ST3で抽気されて冷媒としてバイパスライン6を流通する二酸化炭素Fの流量は、サブクーラ5で冷却されて生成され、第七段圧縮機17に供給される二酸化炭素F(状態7S)の温度及び圧力のうちの少なくとも一方が一定となるように、制御部8によって流量が調整される(流量調整工程ST4)。
【0045】
そして、二酸化炭素F(状態7S)は、第七段圧縮機17でさらに圧縮されて状態7Dとなり((圧縮冷却工程ST1)、アフタークーラ71によって等圧で冷却されて、臨界温度以上の温度(本実施形態では40〔℃〕程度)で、かつ超臨界圧力状態(目標圧力の状態)の二酸化炭素Fが生成される。
【0046】
このような昇圧システム1によると、最終段の圧縮機2である第七段圧縮機17の入口から抽気して減圧した二酸化炭素Fを、バイパスライン6によってサブクーラ5に供給し、サブクーラ5で冷媒として用い、制御部8がバイパスライン6に設けられた流量調整弁7の開度を調節している。よって、自ガスのフラッシュガスによって第七段圧縮機17の入口へ供給する二酸化炭素Fの温度(圧力)を一定に調節しながら冷却を行うことができる。
【0047】
このため、第六中間クーラ26による冷却後の二酸化炭素Fの温度が変化した場合、また、その結果、圧力が変化した場合にも、第七段圧縮機17の入口へ供給する二酸化炭素Fの温度(圧力)を十分に、かつ、安定して制御することが可能である。よって二酸化炭素Fを大きな物性変化が起こる領域まで冷却して、第七段圧縮機17で昇圧する際の動力(ヘッド)を低減でき、昇圧システム1の圧縮機2の段数低減が可能となる。
【0048】
さらに本実施形態では、制御部8が温度センサ31及び圧力センサ32のうちの少なくとも一方の計測値を基に、バイパスライン6に設けられた流量調整弁7の開度を調節することができる。このため、より精度よく、第七段圧縮機17の入口へ供給する二酸化炭素Fの温度及び圧力のうちの少なくとも一方を設定できる。よって第七段圧縮機17の入口へ供給する二酸化炭素Fの大きな物性変化を回避できる。よって第七段圧縮機17での効率のよい圧縮が可能である。
【0049】
さらに本実施形態では、制御部8は、第六段圧縮機16でのサージングの発生を抑制するように、流量調整弁7の開度を調節してもよい。
本実施形態ではバイパスライン6が設けられていることで、第六段圧縮機16で圧縮された二酸化炭素Fをリサイクルガスとして第六段圧縮機16の入口に戻すことで、第六段圧縮機16を流通する二酸化炭素Fの流量を増大させることができる。よって制御部8によって、高段側となる第六段圧縮機16でサージングの発生を抑制することが可能であり、昇圧システム1を安定して運転可能である。即ち、流量調整弁7を第六段圧縮機16でのサージングの発生を抑制するためのアンチサージ弁として使用できる。また流量調整弁7の開度を調節することで、高段側となる第六段圧縮機16のリサイクルガスの流量を運転状態に応じて調整可能である。
また、バイパスライン6を通じて、サブクーラ5の冷媒側入口に第六段圧縮機16で圧縮された二酸化炭素Fをリサイクルガスとして戻すことで、このリサイクルガスをサブクーラ5で加熱した状態で、第六段圧縮機16に供給することができる。よって、サブクーラ5をリサイクルガス用のヒータ(リサイクルヒータ)として用いることができる。このため、リサイクルガスを加熱するために別途のヒータを設けることなく、第六段圧縮機16に供給する前にリサイクルガスである二酸化炭素Fの加熱が可能である。よって、サージングを回避するためのリサイクル運転ができる。
【0050】
さらに本実施形態では、高段側リサイクルライン62が設けられていることで、第七段圧縮機17で圧縮された二酸化炭素Fをリサイクルガスとして第七段圧縮機17の入口に戻すことで、第七段圧縮機17を流通する二酸化炭素Fの流量を増大させることができる。よって高段側となる第七段圧縮機17でサージングの発生を抑制することが可能であり、昇圧システム1を安定して運転可能である。また調整弁64の開度を調整することで、高段側となる第七段圧縮機17のリサイクルガスの流量を運転状態に応じて調整可能である。
【0051】
同様に、低段側リサイクルライン61が設けられていることで、第五段圧縮機15で圧縮された二酸化炭素Fをリサイクルガスとして第一段圧縮機11の入口に戻すことで、第一段圧縮機11から第五段圧縮機15を流通する二酸化炭素Fの流量を増大させることができる。よって低段側の第一段圧縮機11から第五段圧縮機15でも、サージングの発生を抑制することが可能である。また調整弁63の開度を調整することで、低段側のリサイクルガスの流量を運転状態に応じて調整可能である。
【0052】
また、高段側リサイクルライン62を通じて、サブクーラ5の入口に第七段圧縮機17で圧縮された二酸化炭素Fをリサイクルガスとして戻すことで、このリサイクルガスをサブクーラ5で冷却した状態で、第七段圧縮機17に供給することができる。よって、サブクーラ5をリサイクルガス用のクーラとして用いることができる。このため、リサイクルガスを冷却するために別途のクーラを設けることなく、第七段圧縮機17に供給する前にリサイクルガスである二酸化炭素Fの冷却が可能である。よって、サージングを回避するためのリサイクル運転ができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【0054】
第六中間クーラ26は必ずしも設けられなくともよい。
【0055】
また、圧縮機2の段数は上述の実施形態に限定されない。
【0056】
また、上述の昇圧システム1では二酸化炭素を対象としたシステムであるが、他の気体を昇圧するシステムであってもよい。
【0057】
またアフタークーラ71は必ずしも設けられなくともよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は気体の昇圧を行う昇圧システム、及び気体の昇圧方法に関する。本発明の昇圧システム、及び気体の昇圧方法によれば、超臨界圧の気体を十分に、かつ、安定して冷却でき、冷却後に圧縮機での圧縮に適した状態の気体を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 昇圧システム
2 圧縮機
4 中間クーラ
5 サブクーラ
6 バイパスライン
7 流量調整弁
8 制御部
9 管路
10 歯車
31 温度センサ
32 圧力センサ
41 ディハイドレータ
51 一段インレットガイドベーン
52 六段インレットガイドベーン
61 低段側リサイクルライン
62 高段側リサイクルライン
63 調整弁
64 調整弁
71 アフタークーラ
F 二酸化炭素
ST1 圧縮冷却工程
ST2 サブクーリング工程
ST3 抽気工程
ST4 流量調整工程
【要約】
二酸化炭素(F)を臨界圧力より高圧の目標圧力に圧縮する複数段の圧縮機(2)と、複数段の圧縮機(2)の段間で、前段の圧縮機(2)から吐出された二酸化炭素(F)を冷却する中間クーラ(4)と、最終段の第七段圧縮機(17)とその前段の第六段圧縮機(16)との段間で、二酸化炭素(F)を冷却するサブクーラ(5)と、第七段圧縮機(17)の入口に接続され、第七段圧縮機(17)の入口での二酸化炭素(F)を抽気して減圧し、サブクーラ(5)に冷媒として供給するバイパスライン(6)と、バイパスライン(6)に設けられた流量調整弁(7)と、第七段圧縮機(17)の入口での二酸化炭素(F)の温度及び圧力のうちの少なくとも一方が一定となるように、流量調整弁(7)の開度を調節する制御部(8)と、を備える昇圧システム(1)である。